JP6213453B2 - レアアースイオンの分離方法 - Google Patents

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Description

本明細書は、レアアースイオンの分離方法に関する。
近年、レアアースを中心とした無機元素の活用が必須となってきている。一方、レアアースの安定供給やレアアースによる環境への影響も懸念されている。そのため、レアアース類を自然界から効率的に収集する技術の開発や、廃棄された製品や排水中に含まれる希薄なレアアースを低エネルギーで選択的かつ効率良く回収してリサイクルする技術の確立が望まれている。
こうしたレアアース回収手法として、N,N−ジオクチルジグリコールアミド酸(DODGAA)等を活用した溶媒抽出や還元微生物を利用して回収する方法が報告されている。一方、ランタノイドイオンなどのレアアースイオンと結合するペプチドが報告されている(特許文献1、2)。
米国特許公開公報第2003/0228622号 特開2014−51449号公報
上記した溶媒抽出法や還元微生物を利用した回収方法は、コスト面の採算を取ることが困難である。また、特許文献1、2の方法では、ランタノイドイオンと結合したとしても、ランタノイドイオンをそのままの状態で捕捉するに過ぎず、その回収は依然困難である。
また、レアアースイオンは、天然においては、複数のレアアースイオンや他の金属イオンの混合状態で存在しており、複数のメタルイオンの夾雑物から特定のレアアースイオンを分離したり、レアアースイオンを相互に分離することも依然困難であった。
本明細書の開示は、レアアースイオンを識別し、分離する方法を提供する。
本発明者らは、酸化ジスプロシウムや酸化ネオジムを捕捉又は回収できるペプチドを探索したところ、レアアースイオンをミネラリゼーション(ミネラル化)してレアアースミネラル(水酸化物等)とし、沈殿物として分離回収ができることを見出した。また、ある種のレアアースイオンをミネラル化するには、それらのレアアースイオンに適合したミネラリゼーションのための構造が存在することも見出した。本明細書は、こうした知見に基づき以下の手段を提供する。
(1)レアアースイオンの分離方法であって、
1又は2以上のレアアースイオンと、レアアースイオンをミネラリゼーション可能なミネラリゼーション剤とを、接触させる工程と、
を備え、
前記ミネラリゼーション剤のレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション傾向に基づいて、前記1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離する、方法。
(2)前記ミネラリゼーション剤は、レアアースイオンに近接したときに環状構造を形成可能である又はそれ自体が環状構造を有する、(1)に記載の方法。
(3)前記レアアースミネラリゼーション剤は、ペプチド領域を備える、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記ペプチド領域は、8以上14以下のアミノ酸残基のアミノ酸配列を備える、(3)に記載の方法。
(5)前記ペプチド領域は、両末端アミノ酸残基としてシステイン残基を有し、両末端アミノ酸残基以外に8以上12以下のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有する、(4)に記載の方法。
(6)前記ペプチド領域は、1又は2以上の酸性アミノ酸残基を含む、(3)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記ペプチド領域は、2以上の酸性アミノ酸残基を含む、(6)記載の方法。
(8)前記酸性アミノ酸残基は、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選択される、(6)又は(7)に記載の方法。
(9)前記ペプチド領域は、以下のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する、(3)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(1)−X1−X2−X3−A1−X4−X5−A2−X6−A3−X7−X8−(配列番号1)
(ただし、A1は酸性アミノ酸、チロシン、アラニン、メチオニン又はグリシンであり、A2は、酸性アミノ酸又はロイシンであり、A3は、酸性アミノ酸、グリシン、プロリン、グルタミン又はアラニンであり、X1は、ロイシン、イソロイシン、バリン又はスレオニンであり、X2は、トリプトファン、システイン、アスパラギン酸、グリシン、又はバリンでありX3は、グリシン、イソロイシン、システイン、セリン、アルギニンであり、X4は、バリン、セリン、アルギニン、メチオニン、フェニルアラニン又はロイシンであり、X5はセリン、ロイシン、アルギニン、グリシン、システイン、アスパラギン又はリジンであり、X6は、ロイシン、リジン、バリンセリン又はグリシンであり、X7は、フェニルアラニン、グリシン、ロイシン、トレオニン、イソロイシン、バリン、トリプトファン又はヒスチジンであり、X8は、ロイシン、バリン、スレオニン、セリン、アスパラギン、フェニルアラニン、グルタミン酸であり、少なくとも1つの酸性アミノ酸を有する。)
(2)−X11−X12−X13−X14−X15−X16−A4−X17−X18−X19−(配列番号2)
(ただし、A4は、酸性アミノ酸であり、X11は、ロイシン、トレオニン、グルタミン酸、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、システイン又はチロシンであり、X12は、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、アルギニン、フェニルアラニン又はバリンであり、X13は、プロリン、セリン、グリシン、ロイシン、アラニン、トレオニン、バリン又はフェニルアラニンであり、X14は、セリン、グルタミン酸、アルギニン又はイソロイシンであり、X15は、トリプトファン、アラニン、グリシン、システイン、メチオニン又はチロシンであり、X16は、セリン、グリシン、トレオニン、アラニン、アルギニン又はシステインであり、X17はチロシン、システイン、セリン、イソロイシン、アスパラギン酸、セリン、グリシニン、リジン又はヒスチジンであり、X18は、アラニン、グリシン、トレオニン、プロリン、システイン又はセリンであり、X19は、フェニルアラニン、アルギニン、バリン、ロイシン、システイン、アラニン又はセリンである。)
(3)X21−X22−X23−X24−X25−A26−X6−X27−A6−X28−X29−X30(配列番号3)
(ただし、A5及びA6は、それぞれ独立して酸性アミノ酸であり、X1は、プロリンであり、X2は、バリンであり、X3は、トリプトファンであり、X4はセフェニルアラニンであり、X5は、セリンであり、X6は、バリンであり、X7は、グリシンであり、X8は、フェニルアラニンであり、X9は、メチオニンであり、X10は、バリンである。)
(10)2以上のレアアースイオンの混合物から、1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離する、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)1又は2以上のライトレアアースイオンを分離する、(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)ネオジムイオンを分離する、(11)に記載の方法。
(13)1又は2以上のへビィレアアースイオンを分離する、(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(14)ジスプロシウムイオンを分離する、(13)に記載の方法。
(15)ライトレアアースイオンの1又は2以上とへビィレアアースイオンの1又は2以上とを相互に分離する、(1)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)レアアースイオンの検出方法であって、
1又は2以上のレアアースイオンと、レアアースイオンをミネラリゼーションするミネラリゼーション剤とを、接触させる工程、
を備え、
前記ミネラリゼーション剤のレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション傾向に基づいて、前記1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離し、前記レアアースミネラル又はレアアースミネラル中のレアアース種を検出する、方法。
ファージディスプレイ法によるバイオパンニングの概要を示す図である。 バイオパンニングのラウンド数と酸化ジスプロシウム結合ファージ力価測定結果を示す図である。 バイオパンニングのラウンド数と酸化ネオジム結合ファージ力価測定結果を示す図である。 酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジムに対する結合性の確認結果を示す図である。 Lamp−1〜Lamp−3ペプチドの結合特異性の評価結果を示す図である。 レアアースイオン混合物からのジスプロシウムイオンの分離結果を示す図である。 レアアースイオン混合物からのジスプロシウムイオンの分離結果を示す図である。 Lamp−1のレアアースミネラルに対する結合特異性評価結果を示す図である。 Lamp−2のレアアースミネラルに対する結合特異性評価結果を示す図である。 Lamp−1ペプチドのアラニン置換変異体のアミノ酸配列を示す図である。 Lamp−1ペプチドの部分変異ライブラリから酸化ジスプロシウムに対する結合能を示す図である。 Lamp−1ペプチドの部分変異ライブラリから酸化ジスプロシウムに対する結合能を指標としてスクリーニングされたペプチドのアミノ酸配列解析結果を示す図である。 Lamp−2ペプチドの部分変異ライブラリから酸化ジスプロシウムに対する結合能を指標としてスクリーニングされたペプチドのアミノ酸配列解析結果を示す図である。 Lamp−1ペプチドとジスプロシウムイオンとの接触後に得られる生成粒子のTEM観察結果を示す図である。 Lamp−1ペプチドとジスプロシウムイオンとの接触後に得られる生成粒子のEDX解析結果を示す図である。 Lamp−1ペプチドのミネラリゼーション活性におけるインキュベーションpHの影響を示す図である。 Lamp−1ペプチドのミネラリゼーション活性におけるインキュベーションpHの影響を示す図である。 Lamp−1ペプチドのミネラリゼーション活性におけるインキュベーション温度の影響を示す図である。 Lamp−1ペプチドのミネラリゼーション活性におけるインキュベーション温度の影響を示す図である。 Lamp−1ペプチドによるミネラリゼーションによって得られた酸化ジスプロシウムのTEM観察結果を示す図である。 Lamp−1ペプチド(直鎖型)によるジスプロシウムのミネラリゼーション能を示す図である。
本開示は、レアアースイオンを分離する方法に関する。本開示の分離方法は、レアアースをミネラリゼーションするミネラリゼーション剤を用いる。ミネラリゼーション剤は、レアアースイオンのそれぞれに対して当該ミネラリゼーション剤に特徴的なレアアースミネラリゼーション能(以下、単にミネラリゼーション能という。)を有し、レアアースをミネラル化して分離回収する。
本開示は、さらに、ミネラリゼーション剤は、それが採りうると考えられる環状構造の大きさ等に応じて各種のレアアースイオンに対して異なるミネラリゼーション能を有していることに基づいている。
本明細書において、ミネラリゼーション能とは、レアアースイオンを捕捉して、その水酸化物などにミネラル化する能力である。レアアースのミネラリゼーションは、本発明者らより初めて見出された事象である。レアアースのミネラリゼーション能は、より具体的には、レアアースイオンが存在する液性媒体中において、ミネラリゼーション剤が、レアアースイオンと液性媒体中におけるカウンターイオン等とからレアアースの水酸化物などのレアアースミネラルを生成する能力である。
本明細書において、レアアースイオン系列の2以上のレアアースイオンに対するミネラリゼーション能の組み合わせをミネラリゼーション傾向というものとする。なお、ミネラリゼーション傾向には、どのレアアースイオンに対してミネラリゼーション能力を発揮するかというミネラリゼーション対象に関する点と、ミネラリゼーション対象となるレアアースイオンに対してどの程度ミネラリゼーションできるかというミネラリゼーション能力の強さ(しやすさ)に関する点との双方を含んでいる。
本開示によれば、例えば、スカンジウム(Sc)からからルテチウム(Lu)にいたる17元素のレアアースのイオンからなるレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション傾向が異なるミネラリゼーション剤を提供できる。
本開示を理論的に拘束するものではないが、本発明者らによれば、ミネラリゼーション剤のレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション能及びミネラリゼーション傾向の相違は、ミネラリゼーション剤が形成可能な環状構造と、レアアースイオンのイオン半径、水和エンタルピー、酸解離定数等との関係に基づくものと推測している。
例えば、ミネラリゼーション剤は、自身の形成可能な環状構造の大きさに応じてミネラリゼーション可能なレアアースイオンが規定される傾向がある。例えば、より大きな環状構造によれば、より大きなイオン半径のレアアースイオンをミネラリゼーションミネラリゼーション可能であり、より小さい環状構造によれば、より小さいイオン半径のレアアースイオンをミネラリゼーション可能であり、さらに小さい環状構造によれば、さらに小さいイオン半径のレアアースイオンをミネラリゼーション可能であると推測している。
本開示によれば、こうしたミネラリゼーション剤のミネラリゼーション傾向を利用することで、レアアースイオン系列の1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離、検出することができる。
さらに、本開示によれば、1又は2以上のミネラリゼーション剤のミネラリゼーション傾向の相違を利用して、効率的にレアアースイオンを分離、検出できる。
本明細書において「レアアース」とは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタノイドのランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミニウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)が挙げられる。
本明細書において、「レアアースイオン」又は「レアアースのイオン」には、各レアアースに関し可能性ある酸化数の価数のイオンが包含される。本明細書において「レアアースイオン系列」とは、スカンジウムからルテチウムに至るまでの全17種のレアアースのイオンの集合を意味している。
本明細書において、「レアアースミネラル」には、各レアアースに関し可能性ある酸化数での酸化物、水酸化物、無機酸塩及び有機酸塩が包含される。水系媒体中におけるレアアースイオンのミネラリゼーション剤によって生成されるレアアースミネラルは、典型的には、水酸化物である。
本明細書において、「ライトレアアース」とは、スカンジウム(Sc)、ランタノイドのランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)及びガドリニウム(Gd)が挙げられる。ネオジムは、磁石材料等として有用である。本明細書において「ライトレアアースイオン系列」とは、9種類のライトレアアースの可能性ある酸化数の価数のイオンの集合を意味している。
本明細書において、「メディアムレアアース」とは、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)及びガドリニウム(Gd)が挙げられる。本明細書において「メディアムレアアースイオン系列」とは、3種類のメディアムレアアースの可能性ある酸化数の価数のイオンの集合を意味している。
また、本明細書において、「ヘビィレアアース」とは、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミニウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)が挙げられる。ジスプロシウムは、ネオジム磁石に添加することによりその性能を向上させることができる。本明細書において「へビィレアアースイオン系列」とは、8種類のへビィレアアースの可能性ある酸化数の価数のイオンの集合を意味している。
なお、本明細書において、「レアアース種」とは、レアアースイオン及びレアアースミネラルを含んでいる。
本開示のレアアースイオンの分離方法は、ミネラリゼーション剤を用いるレアアースイオンの分離方法である。すなわち、1又は2以上のレアアースイオンと、ミネラリゼーション剤とを接触させる工程を備えることができる。以下、ミネラリゼーション剤について説明する。
(ミネラリゼーション剤)
ミネラリゼーション剤は、1又は2以上のレアアースイオンをミネラル化するミネラリゼーション能を有している。
ミネラリゼーション剤は、レアアースイオン系列に対して各種態様のミネラリゼーション傾向を発現することができる。ミネラリゼーション傾向は、既に説明したように、レアアースイオン系列のレアアースイオンに対するミネラリゼーション能で規定できる。
ミネラリゼーション傾向の1つの態様として、例えば、レアアースイオン系列の一部のレアアースイオンに対して選択的にミネラリゼーションする選択的なミネラリゼーション傾向である。例えば、レアアースイオン系列のうち、へビィレアアースイオン系列に対してミネラリゼーション能を有するという傾向が挙げられる。また、へビィレアアースイオン系列のうち一部のへビィレアアースイオンに対して高いミネラリゼーション能を有するという傾向が挙げられる。さらに、レアアースイオン系列のおおよそ全体にわたってミネラリゼーション能を有するという傾向が挙げられる。
ミネラリゼーション剤のミネラリゼーション傾向は、分離、識別等しようとする対象であるレアアースイオンの種類や、ミネラリゼーション剤の適用対象であるレアアースイオンの混合物において含まれる可能性のあるレアアースイオンの種類に応じて適宜選択すればよい。
各種のミネラリゼーション傾向を有するミネラリゼーション剤は、レアアース酸化物などのレアアースミネラルの捕捉能に基づき取得することができる。また、レアアースイオンのミネラリゼーション能に基づき取得することもできる。レアアースミネラル捕捉能やレアアースイオンのミネラリゼーション能に基づくミネラリゼーション剤のスクリーニングについては後述する。
(ミネラリゼーション領域)
ミネラリゼーション剤は、レアアースイオンに近接したときに環状構造を形成可能である又はそれ自体が環状構造を有することができる。ミネラリゼーション剤が形成可能な環状構造の領域がミネラリゼーション能に関連していると推測される。かかる環状構造に関連する領域を、以下、ミネラリゼーション領域ともいう。このようなミネラリゼーション領域を構成可能な化合物としては、回転可能な結合で複数のユニットが連結されたポリマー等が挙げられる。
ミネラリゼーション領域は、例えば、ペプチド鎖として構成される。ペプチド結合によってアミノ酸が連結されたペプチド鎖は、その結合角度(φ、ψ)が側鎖や周囲との相互作用等に基づいて変化可能であり、各種の立体構造を採ることができ、アミノ酸残基数等によって環状構造の大きさも制御可能である。
本明細書において、ペプチドとは、通常、数個以上の天然アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸を酸アミド結合で連結したポリマーである。ペプチドは、概して、アミノ酸残基数が100個以下程度である。なお、ペプチドは、L体のアミノ酸残基のポリマーであることが好ましいが、D体ポリマーであることを排除するものではない。
ミネラリゼーション領域がペプチド鎖であるとき、ミネラリゼーション領域は、直鎖状であってもよいし、分子内ジスルフィド結合等によって環状化されていてもよい。環状化されていると、より効率的にミネラリゼーション能を発揮できる。
ミネラリゼーション領域をペプチド鎖で構成することは、以下の点において有利である。すなわち、ペプチド鎖は、その一次構造が直鎖であっても、二次構造として環状構造(共有結合によって閉じてはいないが)を形成可能である。また、ペプチド鎖は、予め、システインなどのS含有アミノ残基のS(イオウ原子)を利用してジスルフィド結合を形成でるため、所定の部位で環状化が可能であり、閉じた環状構造を容易に形成することができる。さらに、その残基数やアミノ酸残基を適宜選択することで、所望の内径で所望のミネラリゼーション傾向を発揮する環状構造を形成可能なミネラリゼーション領域を構築できる。
なお、システイン残基によるミネラリゼーション領域の環状化は、システイン残基を含むペプチドにヨウ素や過酸化水素などの酸化剤を付与することで、容易に実現される。
(ミネラリゼーション配列)
ペプチド鎖からなるミネラリゼーション領域は、8以上14以下のアミノ酸残基のアミノ酸配列をミネラリゼーション能を発揮するためのアミノ酸配列(ミネラリゼーション配列)として備えることができる。かかる残基数のミネラリゼーション領域によれば、レアアースイオン系列に対して種々のミネラリゼーション傾向を備えるミネラリゼーション剤を設計できる。8未満であると、有効な環状構造を形成不可能であり、14を超えると、レアアースイオン系列に対して選択的なミネラリゼーション能が低下する一方、他イオンに対するミネラリゼーション能を呈するようになる。
ミネラリゼーション領域は、ミネラリゼーション配列をその一部に有していてもよいし、ミネラリゼーション配列のみからなっていてもよい。ミネラリゼーション配列は、より好ましくは、10以上14以下のアミノ酸残基からなる。
環状構造の形成を考慮すると、ミネラリゼーション配列の両末端がシステイン残基であることが好ましい。例えば、10以上の14以下のアミノ酸残基からなるミネラリゼーション配列の場合、両末端がシステイン残基とすると、両側のシステイン残基の間にあるアミノ酸配列は、8以上12以下のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列となる。
ミネラリゼーション配列は、1又は2以上の酸性アミノ酸残基を含むことが好ましい。酸性アミノ酸残基としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸等が挙げられる。好ましくは、アスパラギン酸、グルタミン酸である。2以上の酸性アミノ酸残基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。酸性アミ酸残基は1〜3個以下とすることもできるが、酸性アミノ酸残基は3個以上であってもよい。
ミネラリゼーション配列が2以上の酸性アミノ酸残基を有している場合、最も近接する酸性アミノ酸残基は、直接隣り合っていてもよいし、1又は2以上4以下程度のアミノ酸残基を介して隣接していてもよい。当該介在されるアミノ酸残基(介在アミノ酸残基)の種類は特に限定されないが、中性アミノ酸残基、芳香族アミノ酸残基などで介在されていることが好ましい。介在アミノ酸残基は、より好ましくは中性アミノ酸残基を含んでいる。
なお、ここで中性アミノ酸残基とは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、ノルバリンが挙げられる。また、塩基性アミノ酸残基としては、リジン、アルギニン、オルニチン、ノルロイシン、2−アミノブタン酸、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニンが挙げられる。また、酸アミドアミノ酸残基としては、アスパラギン、グルタミンが挙げられる。環状アミノ酸残基としては、プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリンが挙げられる。OH含有アミノ酸残基としては、セリン、スレオニン、ホモセリンが挙げられる。芳香族アミノ酸残基としては、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンが挙げられる。
例えば、アミノ酸残基数が10個であるアミノ酸配列の両端にシステインを有するミネラリゼーション配列は、両末端のシステインにおけるS−S結合により、おおよそ、約1.31nmの内径の環状構造を形成することができる。こうしたミネラリゼーション領域を有するミネラリゼーション剤は、既に記載のように、レアアースイオン系列においても最も原子番号の大きいYbやLuに対する高いミネラリゼーション能を有するミネラリゼーション傾向を備えることができる。
また、例えば、アミノ酸残基数が11個であるアミノ酸配列の両端にシステインを有するミネラリゼーション領域は、両端のシステインのS−S結合により、約1.50nmの内径の環状構造を形成することができる。こうしたミネラリゼーション領域を有するミネラリゼーション剤は、既に記載のように、へビィレアアースイオン系列に対して高いミネラリゼーション能を有するミネラリゼーション傾向を備えることができる。
さらに、例えば、アミノ酸残基数が12個であるアミノ酸配列の両端にシステインを有するミネラリゼーション領域は、両端のシステインのS−S結合により、約1.58nmの内径の環状構造を形成することができる。こうしたミネラリゼーション領域を有するミネラリゼーション剤は、既に記載のように、レアアースイオン系列全体にわたって高いミネラリゼーション能を有するミネラリゼーション傾向を備えることができる。
ミネラリゼーション領域は、水系媒体中において、レアアースイオンと共有結合以外の相互作用により、レアアースイオンをミネラル化する。ミネラル化にあたり、レアアースイオンとミネラリゼーション領域とはレアアースイオンを捕捉可能な程度に複合体を少なくとも一時的に形成できると考えられる。非共有結合性の相互作用としては、静電的結合、イオン結合、水素結合等が挙げられるが、本明細書における「捕捉」に関わる相互作用は、これらに限定されるものではない。
ミネラリゼーション剤のミネラリゼーション領域は、少なくとも1つのレアアースイオンをミネラル化できるものであればよいが、既述のとおり、ミネラリゼーション剤は、2以上、あるいは3以上、あるいは4以上、あるいは5以上のレアアースイオンをミネラル化するものであってもよい。
なお、ミネラリゼーション領域は、レアアースミネラルの捕捉能を備えることもできる。ミネラリゼーション能を備えていると、レアアースイオンを含む液性媒体中から、レアアースの水酸化物などのレアアースミネラルを生成させることができる。このため、イオン化したレアアースを分離するとともに、当該イオンから一挙にレアアースミネラルを生成できて、分離及び回収も容易となりレアアース種の分離回収に効率化に大きく寄与することができる。また、ミネラリゼーション領域は、レアアースの酸化物などのレアアースミネラルの捕捉能を備えることもできる。
ペプチド鎖からなるミネラリゼーション配列は、例えば、以下の(1)〜(3)のいずれかからなるアミノ酸配列を備えることができる。
(1)−X1−X2−X3−A1−X4−X5−A2−X6−A3−X7−X8−(配列番号1)
(ただし、A1は酸性アミノ酸、チロシン、アラニン、メチオニン又はグリシンであり、A2は、酸性アミノ酸又はロイシンであり、A3は、酸性アミノ酸、グリシン、プロリン、グルタミン又はアラニンであり、X1は、ロイシン、イソロイシン、バリン又はスレオニンであり、X2は、トリプトファン、システイン、アスパラギン酸、グリシン、又はバリンでありX3は、グリシン、イソロイシン、システイン、セリン、アルギニンであり、X4は、バリン、セリン、アルギニン、メチオニン、フェニルアラニン又はロイシンであり、X5はセリン、ロイシン、アルギニン、グリシン、システイン、アスパラギン又はリジンであり、X6は、ロイシン、リジン、バリンセリン又はグリシンであり、X7は、フェニルアラニン、グリシン、ロイシン、トレオニン、イソロイシン、バリン、トリプトファン又はヒスチジンであり、X8は、ロイシン、バリン、スレオニン、セリン、アスパラギン、フェニルアラニン、グルタミン酸であり、少なくとも1つの酸性アミノ酸を有する。)
ミネラリゼーション配列(1)のミネラリゼーション傾向は以下のとおりである。すなわち、ライトレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション能が概して低く、これらライトレアアースイオンをその水酸化物等にミネラル化して捕捉するには不向きであるかもしれない。すなわち、ミネラリゼーション配列(1)は、イットリウム、テルビウム〜ルテチウムまでのへビィレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション能が高く、ランタン〜ガドリニウムまでのライトレアアースイオン系列に対しては、ミネラリゼーション能は弱いが、サマリウム〜ガドリニウムまでのミディアムレアアースイオン系列に対してはへビィレアアースイオン系列に対するよりも低いがミネラリゼーション能を有する。
(2)−X11−X12−X13−X14−X15−X16−A4−X17−X18−X19−(配列番号2)
(ただし、A4は、酸性アミノ酸であり、X11は、ロイシン、トレオニン、グルタミン酸、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、システイン又はチロシンであり、X12は、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、アルギニン、フェニルアラニン又はバリンであり、X13は、プロリン、セリン、グリシン、ロイシン、アラニン、トレオニン、バリン又はフェニルアラニンであり、X14は、セリン、グルタミン酸、アルギニン又はイソロイシンであり、X15は、トリプトファン、アラニン、グリシン、システイン、メチオニン又はチロシンであり、X16は、セリン、グリシン、トレオニン、アラニン、アルギニン又はシステインであり、X17はチロシン、システイン、セリン、イソロイシン、アスパラギン酸、セリン、グリシニン、リジン又はヒスチジンであり、X18は、アラニン、グリシン、トレオニン、プロリン、システイン又はセリンであり、X19は、フェニルアラニン、アルギニン、バリン、ロイシン、システイン、アラニン又はセリンである。)
ミネラリゼーション配列(2)のミネラリゼーション傾向は以下のとおりである。すなわち、ライトレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション能が概して低いか、有しておらず、これらライトレアアースイオン系列に対するミネラリゼーションには相当不向きであるかもしれない。また、ミネラリゼーション配列(2)は、テルビニウムからエルビウムまでのまでのレへビィレアアースイオンにたいしてもミネラリゼーション能は低い。一方、へビィレアアースイオン系列中のイッテルビウム及びルテチウムのへビィレアアースイオンには、高いミネラリゼーション能を呈する。
(3)X21−X22−X23−X24−X25−A5−X26−X27−A6−X28−X29−X30(配列番号3)
(ただし、A5及びA6は、それぞれ独立して酸性アミノ酸であり、X21は、プロリンであり、X22は、バリンであり、X23は、トリプトファンであり、X24はセフェニルアラニンであり、X25は、セリンであり、X26は、バリンであり、X27は、グリシンであり、X28は、フェニルアラニンであり、X29は、メチオニンであり、X30は、バリンである。)
ミネラリゼーション配列(3)は、ライトレアアースイオン系列からヘビィレアアースイオン系列にわたって広くレアアースイオンに対するミネラリゼーション能を有している。
また、ミネラリゼーション配列(3)は、ライトレアアースであるランタノイドのランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)及びユウロピウム(Eu)のレアアース種に対するレアアース種捕捉能を有し、なかでも、ランタン、ネオジム、サマリウムのレアアース種に対する捕捉能を有している。ミネラリゼーション配列(3)は、ライトレアアース種に対するレアアースミネラル捕捉能及びレアアースイオン捕捉能を有し、特に、ライトレアアース種に対するミネラリゼーション能を有している。
ミネラリゼーション配列(1)のX1は好ましくはロイシン、イソロイシン又はバリンであり、X2は、好ましくはトリプトファン又はシステインであり、X3は好ましくはグリシンであり、A1は好ましくはアスパラギン酸又はグルタミン酸であり、X4は好ましくはバリンであり、A2は好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸であり、X5は好ましくはセリン、アルギニン、アスパラギン又はリジンであり、X6は好ましくロイシン又はバリンであり、X7は好ましくはフェニルアラニン又はロイシンであり、X8は好ましくはロイシン、バリン又はトレオニンである。
ミネラリゼーション配列(2)のX11は好ましくはロイシン、イソロイシン、バリン又はトレオニンであり、X12は好ましくはチロシン、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン又はグルタミン酸であり、X13は好ましくはプロリン、アラニン、セリン又はグリシンであり、X14は好ましくはセリン、アルギニン又はイソロイシンであり、X15は好ましくはトリプトファンであり、X16は好ましくはセリン、グリシン又はトレオニンであり、X17は好ましくはチロシン、アスパラギン酸又はセリンであり、X18はアラニン、スレオニン又はグリシンであり、X19は好ましくはフェニルアラニン又はロイシンである。
ミネラリゼーション配列(1)は、好ましくは、
Leu/Val-Trp/Cys-Gly/Arg-Asp/Glu-Val-Ser/Asn/Lys/Arg-Asp/Glu-Leu/Val-Asp/Glu-Phe/Leu/Val-Leu/Val/Thrで表され、より好ましくは、
Cys-Leu/Val-Trp/Cys-Gly/Arg-Asp/Glu-Val-Ser/Asn/Lys/Arg-Asp/Glu-Leu/Val-Asp/Glu-Phe/Leu/Val-Leu/Val/Thr-Cysで表され、さらに好ましくは、
Ser-Cys-Leu/Val-Trp/Cys-Gly/Arg-Asp/Glu-Val-Ser/Asn/Lys/Arg-Asp/Glu-Leu/Val-Asp/Glu-Phe/Leu/Val-Leu/Val/Thr-Cys-Serで表される。
ミネラリゼーション配列(2)は、好ましくは、
Leu-Tyr-Pro/Ala-Ser/Arg-Trp-Ser/Gly/Thr/Arg-Asp/Glu-Tyr/Asp-Ala/Gly/Ser/Thr-Phe/Leuで表され、より好ましくは、
Cys-Leu-Tyr-Pro/Ala-Ser/Arg-Trp-Ser/Gly/Thr/Arg-Asp/Glu-Tyr/Asp-Ala/Gly/Ser/Thr-Phe/Leu-Cysで表され、さらに好ましくは、
Ser-Cys-Leu-Tyr-Pro/Ala-Ser/Arg-Trp-Ser/Gly/Thr/Arg-Asp/Glu-Tyr/Asp-Ala/Gly/Ser/Thr-Phe/Leu-Cys-Serで表される。
ミネラリゼーション配列(3)は、より具体的には、Pro−Val−Trp−Phe−Ser−Asp/Glu−Val−Gly−Asp/Glu−Phe−Met−Valからなることができる。
ミネラリゼーション配列は、さらにそのN末端やC末端に1又は複数個のアミノ酸残基を備えていてもよい。例えば、1個又は2個のアミノ酸残基が付加されていてもよいし、1個以上3個以下のアミノ酸残基が付加されていてもよいし、1個以上5個以下のアミノ酸残基が付加されていてもよいし、1個以上7個以下のアミノ酸残基が付加されていてもよいし、1個以上19個以下のアミノ酸残基が付加されていてもよいし、1個以上10個以下のアミノ酸残基が付加されていてもよい。
ミネラリゼーション配列が末端に備えうるアミノ酸残基としては、例えば、セリン、システイン、アスパラギン等が挙げられる。また、両末端にシステインを導入することで、ミネラリゼーション領域を容易に環状化することが可能となる。
ミネラリゼーション配列(1)としては、例えば、以下が挙げられる。以下に示すアミノ酸配列中、ミネラリゼーション配列は、好ましくはN末端及びC末端の各1つのアミノ酸残基を除く配列であり、より好ましくは、両末端の各2つのアミノ酸残基、すなわち、SC−及び-CSを除く配列である。さらに好ましくは両末端の1アミノ酸基(S)を除く配列である。
SerCys-LeuTrpGlyAspValSerGluLeuAspPheLeu-CysSer(配列番号4)
SerCys-LeuTrpIleGluSerLeuAspLeuAspGlyLeu-CysSer(配列番号5)
SerCys-LeuCysCysGluValSerAspLeuGlyLeuVal-CysSer(配列番号6)
SerCys-ValCysIleGluArgArgGluLeuAspLeuLeu-CysSer(配列番号7)
SerCys-IleAspSerTyrValGlyGluLeuGluThrLeu-CysSer(配列番号8)
SerCys-LeuTrpArgAlaValCysAspLeuGlyIleGlu-CysSer(配列番号9)
SerCys-LeuGlyGlyAspMetSerAspLysProValSer-CysSer(配列番号10)
SerCys-ThrCysGlyMetValAsnAspValAspLeuThr-CysSer(配列番号11)
SerCys-IleValGlyGluValArgLeuSerAspLeuVal-CysSer(配列番号12)
SerCys-ThrCysGlyMetValAsnAspValAspLeuThr-CysSer(配列番号13)
SerCys-ValTrpArgGlyPheLysAspGlyGlnTrpPhe-CysSer(配列番号14)
SerCys-ValCysArgGlyLeuArgAspLeuAlaHisAsn-CysSer(配列番号15)
ミネラリゼーション配列(2)としては、例えば、以下が挙げられる。以下に示すアミノ酸配列中、ミネラリゼーション配列は、好ましくはN末端の3アミノ酸残基及びC末端の2アミノ酸残基を除く配列であり、より好ましくは両末端のSC−及び−CSを除く配列である。さらに好ましくは両末端の1アミノ酸基を除く配列である。
SerCys-LeuTyrProSerTrpSerAspTyrAlaPhe-CysSer(配列番号16)
SerCys-ThrAspProSerTrpGlyGluTyrGlyPhe-CysSer(配列番号17)
SerCys-GluTyrSerSerAlaSerGluTyrAlaArg-CysSer(配列番号18)
SerCys-IleTyrGlyGluTrpArgAspTyrAlaPhe-CysSer(配列番号19)
SerCys-ValTyrLeuSerGlySerGluCysThrPhe-CysSer(配列番号20)SerCys-LeuAsnAlaArgTrpSerAspSerProVal-CysSer(配列番号21)SerCys-LeuAsnThrIleTrpAlaAspTyrGlyLeu-CysSer(配列番号22)
SerCys-LysAspValSerTrpGlyAspIleAlaCys-CysSer(配列番号23)
SerCys-PheGluPheSerTrpSerGluAspCysAla-CysSer(配列番号24)SerCys-GluArgGlySerTrpCysGluAspAlaCys-CysSer(配列番号25)
SerCys-ValTyrThrGlyTrpArgGluAspAlaSer-CysSer(配列番号26)
SerCys-CysPheAlaSerCysThrAspSerAlaLeu-CysSer(配列番号27)
SerCys-ThrArgSerArgCysGlyAspGlyAlaPhe-CysSer(配列番号28)
SerCys-TyrValAlaIleMetSerGluLysSerPhe-CysSer(配列番号29)
SerCys-IleGluAlaArgTyrThrAspHisAlaLeu-CysSer(配列番号30)
ミネラリゼーション配列(3)としては、例えば、以下が挙げられる。以下に示すアミノ酸配列中、ミネラリゼーション配列は、好ましくはN末端の3アミノ酸残基及びC末端の2アミノ酸残基を除く配列であり、より好ましくは両末端のSC−及び−CSを除く配列である。さらに好ましくは両末端の1アミノ酸基(S)を除く配列である。
SerCys-Pro-Val-Trp-Phe-Ser-Asp-Val-Gly-Asp-Phe-Met-Val-CysSer(配列番号31)
SerCys-Pro-Val-Trp-Phe-Ser-Asp-Val-Gly-Glu-Phe-Met-Val-CysSer(配列番号32)
SerCys-Pro-Val-Trp-Phe-Ser-Glu-Val-Gly-Asp-Phe-Met-Val-CysSer(配列番号33)
SerCys-Pro-Val-Trp-Phe-Ser-Glu-Val-Gly-Glu-Phe-Met-Val-CysSer(配列番号34)
ミネラリゼーション剤が、全体としてペプチドである場合、公知の化学合成法のほか、遺伝子工学的な方法等、当業者において周知の方法により取得することができる。
ミネラリゼーション剤は、標識物質を備えていてもよい。標識物質を備えていることにより、レアアースイオンをミネラル化したミネラリゼーション剤を容易に識別できるようになり、分離・回収等に都合がよい。標識物質としては特に限定しないで公知の各種標識物質を用いることができる。標識物質は、目視にて識別可能なものであってもよいし、所定の波長の光によって発光等するものであってもよい。また、それ自体、着色しているもののほか、他の化合物との反応等により発色可能なものであってもよい。また、標識物質はビーズ等の担体に保持されていてもよい。こうした標識物質としては、たとえば、着色ビーズ、金コロイド、蛍光化合物、酵素タンパク質が挙げられる。また、標識物質には、抗体−抗体反応を利用したもの、ビオチン−アビジン結合を利用したものなどの標識結合物質を包含する。標識結合物質は、標識物質を結合する物質であり、こうした標識結合物質も標識物質として機能できる。
標識物質は、ミネラリゼーション剤の種類に応じて公知の方法で結合される。ミネラリゼーション剤がペプチドの場合、典型的には、ミネラリゼーション剤に対して適数個のリンカーペプチドを介してミネラリゼーション領域のN末端及び/又はC末端に付与される。
さらに、ミネラリゼーション剤は、アフィニティークロマトグラフィー等を用いて回収可能なように、タグを備えていてもよい。タグは、抗原(エピトープ)等であってもよいし、公知のHisタグのほか、ビオチン等を用いることができる。こうしたタグは適当なリンカーを介して結合されていてもよい。
また、ミネラリゼーション剤に対する抗体を取得し当該抗体を用いることで、ミネラリゼーション剤を何ら標識することなく、ミネラリゼーション剤を識別し検出できる。
(ミネラリゼーション剤のスクリーニング方法及び生産方法)
ミネラリゼーション剤がペプチドからなるミネラリゼーション領域を有するとき、以下の方法でミネラリゼーション剤を取得できる。すなわち、ミネラリゼーション剤は、捕捉したいレアアースイオンやレアアースミネラル等を対象として、ファージディスプレイ法等による各種ペプチドライブラリを適用して、所望の選択性を有するミネラリゼーション剤を得ることができる。
ミネラリゼーション剤をスクリーニングするのにあたっては、特定のレアアースの酸化物などのレアアースミネラルの捕捉能を指標としてもよいし、レアアースイオンのミネラリゼーション能を指標としてもよい。レアアースイオンのミネラリゼーション能を指標とするほか、レアアースミネラルの捕捉能を指標としても、レアアースイオンに対してミネラリゼーション能を有するペプチドをスクリーニングできる。既に説明したように、ミネラリゼーション配列は、レアアースミネラルの捕捉能を有するからである。以下、レアアースミネラルの捕捉能とレアアースイオンのミネラリゼーション能を併せてレアアース種に対する捕捉能(レアアース種捕捉能)と称する。
ミネラリゼーション剤を取得するには、レアアースイオン又はレアアースミネラルであるレアアース種と、1又は2以上の被験ペプチドと、を接触させて、前記1又は2以上の被験ペプチドの前記レアアース種に対する捕捉能を評価する工程を備えることができる。このスクリーニング方法によれば、レアアース種に対するミネラリゼーション能を有するペプチドをスクリーニングできる。換言すれば、ミネラリゼーション配列をスクリーニングないし同定することができる。
レアアース種は、既に記載したとおり、レアアースイオン及びレアアースミネラルを含む。これらは、それぞれ独立してスクリーニング標的となりうる。レアアースイオンの場合、硝酸塩又は塩酸塩等の溶液とすることができる。また、レアアースミネラルの場合、分散液等とすることができる。
被験ペプチドは、特に限定しないで、天然のアミノ酸残基及び/又は人工のアミノ酸残基で構成されうる。また、被験ペプチドのアミノ酸配列も天然であってもよいし人工的であってもよい。ペプチド長は特に限定しないが、既に説明したように、概してアミノ酸残基数が100個以下程度とすることができ、典型的には、アミノ酸残基数が5個以上であることが好ましく、より好ましくは7以上であり、さらに好ましくは8個以上である。また、25個以下であってもよいし、20個以下であってもよいし、15個以下であってもよい。また、被験ペプチドは直鎖状であってもよいし、環状ペプチドであってもよい。環状ペプチドは、2以上のシステイン残基によるジスルフィド結合により形成できる。
被験ペプチドは、既に説明したように、好適なアミノ酸残基数や、酸性アミノ酸残基の存在、システイン残基の配置等を考慮して設計することもできる。
被験ペプチドは、天然のL体のポリマーであってもよいし、非天然のD体のポリマーであってもよい。さらに、被験ペプチドは、人工的なアミノ酸残基を含んでいてもよい。
被験ペプチドは、例えば、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、インビトロウイルス法などを用いて多様なペプチドを提示させる方式のほか、化学合成や、無細胞タンパク質合成系等を含む遺伝子工学的な合成により取得し、スクリーニングに供することができる。被験ペプチドは、また、一定のアミノ酸配列を元に公知の手法により作製した変異体ライブラリに属するものであってもよい。さらに、被験ペプチドは、例えば、固相担体や生物担体に保持された形態であってもよい。
被験ペプチドには、レアアース種の捕捉能の評価に都合がよいように、標識物質やタグを付与しておくことができる。あるいは、被験ペプチドのアミノ酸配列が既に知得されている場合には、予め被験ペプチドに特異的に結合する抗体を準備しておくこともできる。このような付加物のある被験ペプチドの利用は、レアアース種の捕捉能をさらに評価する二次スクリーニングに好適である。
被験ペプチドとレアアース種との接触は、後述するように、被験ペプチドの変性が抑制された状態でレアアース種と接触させればよい。典型的には、後述するミネラリゼーション条件を備える水系媒体などの液性媒体内において、被験ペプチドとレアアース種とを接触させる。
1又は2以上のレアアース種と被験ペプチドとの接触形態は特に限定しないが、特に、高精度にレアアース種の捕捉能を評価する二次スクリーニングにおいては、例えば、レアアース種をアレイ状に固相担体に固定するなどした、レアアース種固定化固相担体を用いることもできる。こうしたレアアース種固定化固相担体を用いることで、複数のレアアース種及び複数の被験ペプチドについて、一挙に捕捉能を評価することができる。レアアース種固定化固相担体は、例えば、シート(プレート)状の固相担体に形成されたウェル内にレアアース種が固定化されていてもよい。レアアース種は、レアアース種の分散液をガラスやプラスチックなどの表面に対して供給し、例えば、真空下などでの乾燥などにより固着される。
次いで、レアアース種と被験ペプチドとが接触して被験ペプチドがレアアース種を捕捉して形成した複合体を回収する。複合体は、ペプチド自体、ペプチドを提示したファージ等、又はこれらに付与した標識物質を介して識別し回収できる。なお、レアアース種を固定化したアレイの場合には、当該アレイを洗浄することで、結合していない被験ペプチドを分離して、複合体をアレイ上に保持させておくことができる。
複合体の回収にあたり、複合体と、複合体を形成しないレアアース種及び被験ペプチド等は、その質量が複合体より小さいため、遠心分離等の質量差を利用した分離法で上清等として除去することで、遠沈物として複合体を精製することもできる。
複合体を回収するのにあたり、さらに、回収した複合体に対して、界面活性剤溶液などを付与して、被験ペプチドとレアアース種との弱い又は非特異的な捕捉状態を解除した後、再び遠心分離してこれを上清等として除去することで、レアアース種をより強く及び/又はより高い特異性で捕捉した被験ペプチドによる複合体を選別回収できる。
こうした洗浄操作を行うことで、より高い確度でレアアース種を強く及び/又は特異的に捕捉する被験ペプチドをスクリーニングできる。また、こうした洗浄操作を組み合わせたスクリーニングを複数回行うことにより、レアアース種に対する被験ペプチドの濃度が高まり、レアアース種に対してより強く及び/又はより特異的に捕捉能を有する被験ペプチドをスクリーニングできるようになる。こうしたスクリーニングのセットは、3回以上行うことが好ましく、より好ましくは4回以上であり、さらに好ましくは5回以上であり、一層好ましくは6回以上である。10回程度までは概して洗浄操作による効果を認めることができる。
レアアース種捕捉能の評価は、複合体又は複合体を形成した被験ペプチドを特定するとともに、レアアース種の捕捉量を測定することにより行う。レアアース種の捕捉量をレアアースミネラルによる濁度やレアアース種の種類に応じた定量法により取得する。これにより、標的としたレアアース種に対して捕捉能を有する被験ペプチドをスクリーニングできる。被験ペプチドのアミノ酸配列が既に特定されている場合、当該アミノ酸配列を、標的としたイオン種に対して捕捉能を肯定し、捕捉配列として同定又はスクリーニングすることができる。被験ペプチドがファージディスプレイ法などによって取得されたものである場合など、そのアミノ酸配列が不知の場合には、被験ペプチドの配列解析を行うことで、当該アミノ酸配列を標的としたイオン種に対して捕捉能を肯定し、同定又はスクリーニングすることができる。
例えば、レアアース種として、レアアースの酸化物などのレアアースミネラルを標的として、当該標的に対する捕捉能が強い被験ペプチドをスクリーニングすることができる。こうしてスクリーニングされた被験ペプチドは、そのレアアースについてのレアアースミネラル捕捉能のほか、そのレアアースイオンのミネラリゼーション能も有することがある。すなわち、ミネラリゼーション配列を有することがある。
また、レアアースイオンを標的としてレアアースイオンと被験ペプチドとを接触させて、直接レアアースイオンのミネラリゼーション能を指標としてミネラリゼーション配列候補を有する被験ペプチドをスクリーニングしてもよい。
以上のようなスクリーニング方法は、例えば、特定のレアアース種に対する一次スクリーニング方法として行うことができる。特に、一次スクリーニングには、多様なアミノ酸配列のペプチドを被験ペプチドとすることができるファージディスプレイ法等を用いて行うことが好ましい。また、上記のような洗浄操作のセットの繰り返し(後述する実施例におけるパンニング)を伴うことが好ましい。
また、本スクリーニング方法は、一次スクリーニングでレアアース種捕捉能を確認できた被験ペプチドやその変異体についての二次スクリーニングにも有効である。また、特定のレアアース種又は複数のレアアース種に対する捕捉能を評価するなどの二次スクリーニングには、標的とするレアアース種を固相担体等に固定化した固相担体(アレイ等)を用いて行うことが精度の良好な評価に有用である。
本スクリーニング方法によれば、レアアースイオン系列に対して意図したミネラリゼーション傾向を備えるミネラリゼーション剤を取得することができる。すなわち、特定のレアアース種や2以上のレアアース種に対する捕捉能を有するミネラリゼーション配列を同定・スクリーニングできる。また、特定のレアアース種に対して強い及び/又は特異的にミネラリゼーション能を有するミネラリゼーション配列を同定・スクリーニングできる。
以上、ミネラリゼーション剤のスクリーニング方法について説明したが、本スクリーニング方法は、ミネラリゼーション剤の生産方法としても実施できる。例えば、上記した特定のミネラリゼーション傾向を有するペプチドを、化学的に又は遺伝子工学的に生産することで、ミネラリゼーション剤を製造することができる。
(レアアースイオンの分離方法)
ミネラリゼーション剤によるレアアースイオンの分離又は識別は、1又は2以上のレアアースイオンと、ミネラリゼーション剤とを接触させる工程を備えることができる。ミネラリゼーション剤が有するミネラリゼーション傾向に基づいて、1又は2以上のレアアースイオンをミネラリゼーションして、この1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離することができる。
ミネラリゼーション剤によるレアアースイオンからのレアアースミネラルの生成のための条件は、ミネラリゼーション剤のミネラリゼーション能が発揮される限り特に限定されない。分離対象とレアアースイオンとを適当な条件下で接触させ、必要に応じてインキュベートすればよい。
ミネラリゼーション剤によるレアアースイオンのミネラリゼーションの場合、レアアースミネラルを生成するためのレアアースイオンと、当該レアアースイオンとミネラルを形成する無機酸イオンや水酸化イオンなどの陰イオン(これらを併せてミネラリゼーション原料という場合がある。)が供給される必要がある。こうした陰イオン類のうち、無機酸イオンは酸あるいは塩の添加により、ミネラリゼーションに用いる液性媒体中に存在させるようにすることができる。また、水酸化物イオンは、水の電離等により水を含む液性媒体に含まれうる。
ミネラリゼーション条件は、液性媒体のpH、温度、塩濃度において条件を異ならせて、分離対象とミネラリゼーション剤とを接触させて、ミネラリゼーション剤によるレアアースイオンからのレアアースミネラルの生成状態を確認することで取得できる。
例えば、液性媒体としては、ミネラリゼーション剤のミネラリゼーション能を発揮できる限り、いかなる液体媒体であってもよい。液性媒体は、水性媒体であっても有機溶媒であってもよく、これらの混合媒体であってもよい。ミネラリゼーション剤がペプチド鎖を有する場合には、ペプチドの変性が考慮される。
液性媒体としては、典型的には、中性付近のバッファ等やそれらを含む混液等用いることができる。また、例えば、pHは、特に限定されないが、5以上8以下程度とすることができ、塩濃度も特に限定されないが、10mM以上1M以下とすることができる。さらに、温度も、特に限定されないで、温度制御なくて容易に結合を実現できるが、典型的には、4℃以上80℃以下、より好ましくは10℃以上40℃以下とすることができ、さらに好ましくは15℃以上30℃以下とすることができる。
レアアースイオンとミネラリゼーション剤との接触のためには、適宜撹拌して接触効率を高めることもできる。また、接触のための時間は、特に限定しないが、10分程度から数時間程度とすることができ、好ましくは30分以上8時間以下とすることができ、上限時間はより好ましくは6時間以下、さらに好ましくは4時間以下程度とすることができる。また、より好ましくは1時間以上3時間以下程度とすることができる。
なお、pH、温度及び/又はインキュベート時間によりミネラリゼーションによるレアアースミネラルの生成状況や析出状況が異なるため、pH調節、温度調節及び/又はインキュベート時間を適宜延長したり短縮したりするなど適宜調節することが好ましい。
ミネラリゼーション剤のミネラリゼーション能を発揮させるための液体媒体中のミネラリゼーション剤濃度及びミネラリゼーション原料濃度も特に限定されないが、例えば、ミネラリゼーション剤が5μM以上の濃度であることが好ましく、レアアースイオン濃度が100μM以上であることが好ましい。また、レアアースイオン以外の他のミネラリゼーション原料についても、レアアースイオン濃度と同様であることが好ましい。
本分離方法によれば、分離したいレアアースイオンをミネラリゼーションできるミネラリゼーション傾向を有するミネラリゼーション剤を用いることで、レアアースイオンを分離することができる。例えば、へビィレアアースイオン系列の1又は2以上のレアアースイオンを分離したいときには、そのようなミネラリゼーション傾向を有するミネラリゼーション剤を用いる。また、ライトレアアースイオン系列の1又は2以上のレアアースイオンを分離したいときには、そのようなミネラリゼーション傾向を有するミネラリゼーション剤を用いる。
例えば、へビィレアアースイオン系列のレアアースイオンであるYbイオン及び/又はLuイオンを含む可能性のある分離対象からこれらを分離したい場合には、既に説明したミネラリゼーション配列(2)をミネラリゼーション領域に備えるミネラリゼーション剤を用いることができる。このミネラリゼーション剤は、Yb及びLuに対して高いミネラリゼーション能を有するというミネラリゼーション傾向を備えているため、効果的にこれらをミネラリゼーションしてレアアースミネラル(水酸化物等)として分離できる。
また、へビィレアアース系列のレアアースイオンであるDyイオンを含む可能性のある分離対象からDyイオンを分離するときには、ミネラリゼーション配列(1)をミネラリゼーション領域に備えるミネラリゼーション剤を用いることができる。このミネラリゼーション剤は、ライトレアアースイオン系列に対してミネラリゼーション能が低く、へビィレアアースイオン系列に対してミネラリゼーション能が高いというミネラリゼーション傾向を備えるため、効果的にDyイオンをミネラリゼーションしてレアアースミネラル(水酸化物等)として分離できる。したがって、分離対象にライトレアアースイオン系列が含まれていても有効なDyイオン等の分離が可能である。
さらに、ライトレアアースイオン系列のNdイオンなどの1又は2以上のレアアースイオンを含む可能性のある分離対象からNdイオン等を分離したい場合には、ミネラリゼーション配列(3)をミネラリゼーション領域を備えるミネラリゼーション剤を、分離対象に適用して、1又は2以上のライトレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離する。
また、本分離方法によれば、ミネラリゼーション剤のミネラリゼーション傾向を利用して、2以上のレアアースイオンが混在する可能性のある分離対象から、1以上のレアアースイオンを選択的に分離することもできる。例えば、ライトレアアースイオン系列の1又は2以上のレアアースイオンとへビィレアアースイオン系列の1又は2以上のレアアースイオンとが混在する分離対象から、1又は2以上のへビィレアアースイオンを分離したいときには、分離したいへビレアアースイオンに応じてミネラリゼーション配列(1)や(2)を備えるミネラリゼーション剤を用いることができる。
同様にして、ライトレアアースイオン系列の1又は2以上のレアアースイオンとへビィレアアースイオン系列の1又は2以上のレアアースイオンとが混在する可能性のある分離対象から、1又は2以上のライトレアアースイオンを分離することもできる。この場合には、分離したいライトレアアースイオンに対して高いミネラリゼーション能を有するミネラリゼーション配列を備えるミネラリゼーション剤を用いることができる。
例えば、ライトレアアースであるNdイオンとへビィレアアースイオンであるDyイオンとを含む可能性ある分離対象から、Dyイオンを分離するときには、ミネラリゼーション配列(1)を備えるミネラリゼーション剤を用いることができる。このミネラリゼーション剤は、Ndイオンに対してミネラリゼーション能が低く、Dyイオンに高いミネラリゼーション能を有するというミネラリゼーション傾向を有するため、効果的にDyイオンをミネラリゼーションしてレアアースミネラル(水酸化物)として分離できる。例えば、ネオジム磁石には、ジスプロシウムが添加されている。本分離態様は、ネオジム磁石の製造工程におけるジスプロシウムの回収やネオジム磁石スクラップからのジスプロシウムの回収に有用である。
また、例えば、ライトレアアースであるLaイオンとへビィレアアースイオンであるDyイオンとを含む可能性ある分離対象から、Dyイオンを分離するときにも、上記と同様ミネラリゼーション配列(1)を備えるミネラリゼーション剤を用いることができる。このミネラリゼーション剤は、Laイオンに対してミネラリゼーション能が低く、Dyイオンに高いミネラリゼーション能を有するというミネラリゼーション傾向を有するため、効果的にDyイオンをミネラリゼーションしてレアアースミネラル(水酸化物)として分離できる。
また、本分離方法によれば、2以上のミネラリゼーション剤の異なるミネラリゼーション傾向を利用して、2以上のレアアースイオンが混在する可能性のある分離対象から、2以上のレアアースイオンを選択的に分離することもできる。例えば、ライトレアアースイオン系列とへビィレアアースイオン系列のレアアースイオンが混在する分離対象から、ライトレアアースイオンとへビィレアアースイオンとを分離したいときには、例えば、まず、へビィレアアースイオン系列に対して高いミネラリゼーション能を有するミネラリゼーション剤によってへビィレアアースイオンをミネラリゼーションしてレアアースミネラルとして媒体から分離後、さらにライトレアアースイオン系列に対してミネラリゼーション能を有するミネラリゼーション剤でライトレアアースイオンをミネラリゼーションしてレアアースミネラルといて分離できる。
例えば、NdイオンとDyイオンとを含む可能性のある分離対象から、それぞれのイオンを分離したいときには、まず、ミネラリゼーション配列(1)を有するミネラリゼーション剤を用いてDyイオンをレアアースミネラルとして分離後、残存した分離対象に対してミネラリゼーション配列(3)を有するミネラリゼーション剤を用いてNdイオンをレアアースミネラルとして分離できる。
以上、本開示の分離方法について各種態様を説明したが、本開示によれば、ミネラリゼーション剤が形成可能な環状構造を設計することでミネラリゼーション剤のミネラリゼーション傾向をデザインすることができる。また、意図するミネラリゼーション傾向を有するミネラリゼーション剤をスクリーニングすることもできる。したがって、本開示によれば、意図した態様でレアアースイオンを分離するように、ミネラリゼーション剤を設計し、当該ミネラリゼーション剤を用いてレアアースイオンをミネラリゼーションしてレアアースミネラルとして分離することができる。
したがって、本開示によれば、ミネラリゼーション剤を分離したいレアアースイオンの分離態様に応じてデザインして取得する工程と、得られたミネラリゼーション剤を用いて1又は2以上のレアアースイオンから前記分離したいレアアースイオンをミネラリゼーションしてレアアースミネラルとして分離する工程と、を備えるミネラリゼーションの分離方法も提供される。
ミネラリゼーションにより生成するレアアースミネラルは、インキュベーション中の液性媒体において不溶物(沈殿物)等として取得することができる。遠心分離等の公知の固液分離手段により固相を回収し、必要に応じて界面活性剤等を利用してミネラリゼーション剤等を分離することで、ミネラリゼーション剤と分離したレアアースミネラルを得ることができる。また、必要に応じ、乾燥及び/又は焼成によりレアアースミネラルを得ることができる。
結晶化のための焼成工程は、公知の非晶質化合物を結晶化するための公知の条件に基づいて行うことができる。例えば、加熱温度を、300℃以上1500℃以下とすることができる。レアアースミネラルが炭酸塩などの無機塩類の場合、当該無機塩の状態を維持して結晶化するための加熱温度を設定することができる。また、水酸化物からの脱水や炭酸塩などからの脱炭酸等など無機酸を脱離させて酸化物を得る場合には、当該脱離が生じる温度を適宜選択することができる。
ミネラリゼーション剤によるレアアースイオンの分離は、簡易な低コスト条件で実現できる点において有利である。また、ミネラリゼーション剤により、nmレベルのレアアースミネラルの粒子を取得できる点において有利である。
ミネラリゼーション剤のミネラリゼーション能に基づいて生成するレアアースミネラルは、レアアースが検出される粒子として生成される。生成したレアアースミネラルは、レアアース水酸化物、レアアースの塩、レアアース酸化物(又はその水和物)であると推定される。生成するレアアースミネラルは、生成時点においては結晶質であってもよいし、非晶質であってもよい。非晶質の場合、必要に応じて焼成工程を実施することで結晶質化することができる。
(レアアースイオンの検出方法)
本明細書によれば、レアアースイオンの検出方法が提供される。レアアースイオンの検出方法は、1又は2以上のレアアースイオンと、レアアースイオンをミネラリゼーションするミネラリゼーション剤とを、接触させる工程、を備える。この検出方法によれば、前記ミネラリゼーション剤のレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション傾向に基づいて、前記1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離する。そして、さらに、前記レアアースミネラル又はレアアースミネラル中のレアアース種を検出する工程を備えることにより、レアアースイオンを検出することができる。
レアアースイオンの分離方法は、さらに、レアアースミネラル又はレアアースミネラル中のレアアース種の検出工程を備えることで、レアアースイオンの検出方法としても実施できる。この検出方法によれば、レアアースイオン系列の1又は2以上のレアアースイオンが含まれる可能性のある混合物の中にどのようなレアアースイオンが含まれているかを検出することができる。こうすることで、当該混合物を分離対象として、1又は2以上のレアアースイオンを分離するのにあたって、当該分離に好適なミネラリゼーション傾向を有するミネラリゼーション剤を選択できるようになる。
検出工程としては、ミネラリゼーション剤が生成したレアアースミネラルを、レアアースに基づく検出手法で検出するほか、ミネラリゼーション剤に付与した特定のための情報(例えば、標識物質や、ビーズ、アレイ上等における位置情報など)やミネラリゼーション剤と特異的に結合する抗体などミネラリゼーション剤に基づく検出手法によって検出することができる。
(その他)
なお、本明細書によれば、ペプチドからなるミネラリゼーション配列及び当該配列を含むミネラリゼーション領域並びにこれらを含むミネラリゼーション剤をコードするヌクレオチドなどのDNAや、こうしたDNAを所定のアミノ酸配列のペプチドとして発現させるためのDNA及び当該DNAを含むベクターも提供される。こうしたDNAの取得や発現用ベクターの構築は、当該分野において周知の手法によって当業者であれば容易に実施できる。発現用ベクターは、ミネラリゼーション配列やミネラリゼーション領域をコードするDNAを発現させるための宿主細胞の種類に応じてその要素が選択される。
また、本明細書によれば、ミネラリゼーション剤を固相担体に保持する保持体も提供される。ミネラリゼーション剤は、例えば、各種ビーズ等の粒状体や、各種材料からなるシート状体に保持されていてもよい。こうした固相担体は、公知であり、当業者であれば適宜選択して利用できる。こうした固相担体の表面へのペプチド等の固定化形態や手法は公知である。当業者であれば、適宜固定化手法を選択し、所望の形態(シート状の固相担体への固定化パターンなど)を選択し、ペプチド固相担体を得ることができる。粒子状固相担体は、典型的にはディッピング等により固相担体表面全体に本ペプチドを保持させた形態を採ることができる。また、シート状固相担体は、ディッピング、コーティングあるいはスポッティング等により、膜状にあるいは任意のパターンで本ペプチドを保持させた形態を採ることができる。こうした保持体は、レアアースイオンの分離、検出のためのカラム、ビーズ及びアレイデバイスとして有用である。
また、ミネラリゼーション剤を生物担体に保持する保持体も提供される。具体的には、ミネラリゼーション配列を有するペプチドが細胞等の生物担体の表層に提示された状態又は表層を構成する状態であってもよい。生物担体は、各種微生物、植物細胞、動物細胞のほか、ウイルスやファージ等が挙げられる。ペプチドであるミネラリゼーション剤は、例えば、酵母や大腸菌等の微生物の表層に提示されてもよいし、ファージやウイルスに外殻タンパク質として構成したものであってもよい。こうした保持体も、レアアースイオンの分離、検出のためのデバイスとして有用である。
以下、本明細書の開示を実施例を挙げて具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
(ランダムペプチド提示型T7ファージライブラリの構築)
2種類のオリゴヌクレオチドプライマーT7-Libup(ATG ATT ACC AGG ATC CGA ATT CAG GTG GAG GTT CG、配列番号35,T7-Libdownt(ACT ATC GTC GGC CGC AAG CTT TTA GCT、配列番号36を用いて、PCR反応を行い、テンプレートDNA(CGA ATT CAG GTG GAG GTT CGT GT(配列番号37)+(NNK)9-12+TGT AGC TAA AAG CTT GCG GCC GA(配列番号38))を増幅した。
N=A25%、T25%、G25%、C25%(A/T/G/Cの等量混合塩基)
K=A0%、T50%、G50%、C0%の混合塩基
増幅したDNA断片は、一般的なプロトコールに従ってフェノール処理、ブタノール濃縮を行った後、QIAquick PCR Purificationkit(QIAGEN)を用いて精製した。精製したDNAは、制限酵素Hind III、Eco RI(タカラバイオ)で処理した後、T7 select 10-3 vector arm(Novagen)にライゲーションし、T7ファージゲノムを構築した。
構築したファージゲノムを、T7select packaging溶液(Novagen)と混合することで、ランダムペプチド遺伝子導入型のT7ゲノムDNAを有するT7ファージを構築した。この際、一部を用いて構築されたファージ集団の数を計測したところ、1.0×106〜4.0×107の配列多様性を有するファージライブラリが構築されていることを確認した。
構築したファージ集団は、OD660nm=0.6〜1.0まで培養した大腸菌E.coli BLT5403株に感染させ増幅後、8%ポリエチレングリコール、0.22μmフィルター処理を行うことで濃縮・精製した。精製後にファージ数を計測した結果、各ライブラリは約1.0×1012pfu/mlのファージを有しており、ペプチドファージ1種あたり100,000〜1,000,000倍に増幅していることを確認した。
(ランダムペプチド提示型T7ファージライブラリを用いた酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジムに対するバイオパンニング)
実施例1にて作製したランダムペプチド提示型T7ファージライブラリにより、酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジム(Nd23)(シグマ−アルドリッチ社)に結合するペプチドを提示するT7ファージの単離を試みた。一連のスキームを図1に示す。
酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジムを、それぞれをメタノール:アセトン混液(1:1)で洗浄し、次いでイソプロパノールにて洗浄後、TBSに分散させた。
500μgの酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジムをそれぞれ分散させた溶液とT7ファージライブラリを混合し、1時間室温にて反応後、遠心(6000rpm、3分)により粒子を沈殿させ上清を除去することで、非結合ファージを除去した。
上清除去後、TBSTを加えて酸化ジスプロシウムを分散させ、再度遠心操作して粒子に非特異的に結合したファージの除去を試みた。本操作(洗浄操作)を、3〜10回繰り返すことで,酸化ジスプロシウムに非特異的に結合するペプチドファージの除去を行った。
非結合ファージ、非特異的に結合しているファージを洗浄により除去した後、OD660nm =0.6〜1.0まで培養した大腸菌E.coli BLT 5403溶液10mlと混合し、大腸菌が完全に溶菌するまで37℃で培養を行った。
大腸菌が完全に溶菌した後、培養溶液に対して1/10量の5M NaClを加えて遠心(3500rpm、15分)を行い、大腸菌の細胞壁などの不溶性画分を沈殿させ、上清を回収した。
回収した上清に対して、1/6量の50%ポリエチレングリコール6000溶液を加え、撹拌後3500rpmで15分遠心しT7ファージを沈殿させた。沈殿したT7ファージ集団は、TBS溶液で溶解後、0.22μmフィルター処理を行い、使用まで4℃で保存した。
(バイオパンニングにより酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジム結合ファージの濃縮確認)
実施例2の一連の操作について5回繰り返した後、各ラウンド後のファージについて酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジムに対する結合ファージ数を測定した。
まず、酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジムをそれぞれをメタノール・アセトン混液(1:1)で洗浄し、次いでイソプロパノールにて洗浄後TBSに分散させた。
500μgの酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジムをそれぞれ分散させた溶液と各ラウンド後のファージプールをそれぞれ混合し、1時間室温下にて反応後、遠心分離(6000rpmで3分)し、上清を除去した。次いで、TBSTにて10回洗浄操作を行った。
洗浄後、酸化ジスプロシウム粒子及び酸化ネオジム粒子にそれぞれ結合したファージ数をプラークアッセイにより測定した。結果を図2A及び図2Bに示す。図2Aに示すように、パンニングのラウンドを重ねるにつれ、酸化ジスプロシウム粒子に対する結合ファージ数の上昇が確認された。酸化ネオジム粒子についても、同様に、図2Bに示すように、パンニングのラウンドを重ねるにつれ、酸化ネオジム粒子に対する結合ファージ数の上昇が確認された。これらの結果から、ラウンドを重ねることで酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジムに対する結合能に優れたペプチドを提示するファージをスクリーニングできることがわかった。
酸化ジスプロシウムについて5ラウンドのパンニングを行った後のファージプールについて、単クローン化を行い、ランダムに選択した35種のファージについて提示ペプチド配列解析を行った結果、31種の配列が確認された。
また、酸化ネオジムについて5ラウンドのパンニングを行った後のファージプールについて、単クローン化を行い、得られた96種のファージについて、酸化ネオジム粒子への結合を測定し、11種のクローンについて酸化ネオジムへの結合性が確認された。これらのクローンについて、提示ペプチドの配列解析を行った。以下に特徴的な1種のアミノ酸配列(配列番号31)を示す。
表1に示すように、9−4(配列番号16及び10−20(配列番号4)配列は、それぞれ4クローン及び2クローンで重複が確認され、また、その他のアミノ酸配列とは異なり塩基性アミノ酸(K、R及びH)が含まれていなかった。また、11−77(配列番号31)は、10クローンで重複が確認された。このアミノ酸配列にも塩基性アミノ酸(K、R及びH)が含まれていなかった。
(重複が確認されたファージの各ランタノイド酸化物に対する結合確認)
本実施例では、表1に示すファージについて、各ランタノイド酸化物に対する結合を確認した。まず、各ランタノイドSNか物(酸化ジスプロシウム、酸化ネオジム)を、メタノール・アセトン(1:1)混液で洗浄し、次いでイソプロパノールにて洗浄後、TBS(50mM Tris,150mM NaCl)に分散させた。
500μgの各ランタノイド酸化物を分散させたTBS溶液と各ファージを混合して、1時間室温下にて反応後、遠心分離(6000rpm、3分)し、上清を除去した。次いで、TBST(50mM Tris,150mM NaCl、0.1% Tween)にて10回洗浄操作を行った。
洗浄後、各ランタノイド酸化物に結合したファージ数をプラークアッセイ法により測定した。結果を図3に示す。
図3に示すように、酸化ジスプロシウムへのバイオパンニングより単離された9−4、10−20、酸化ネオジムへのバイオパンニングにより単離された11−77は、各酸化物への結合が再現された。これらのペプチドをそれぞれ、Lamp−2、Lamp−1及びLamp−3(Lanhtanoid Minelarization Peptide)と命名した。
(合成ペプチドの調製)
酸化ジスプロシウム及び酸化ネオジムへの結合が確認されたLamp−1、Lamp−2及びLamp−3の各ペプチドにつて、Fmoc固相合成法により、合成ペプチドを調製した。なお、合成ペプチドのN末端には、g10配列由来のGGGを介してビオチン化を行った。
樹脂より切り出し脱保護したペプチドは、ヨウ素等の適当な酸化剤で分子内ジスルフィド結合を形成させて環状化した後、逆相HPLCにて精製し、凍結乾燥した。
(合成ペプチドのミネラリゼーション評価)
実施例6にて調製した合成ペプチド(Lamp−1、2、3)を用いて、ミネラリゼーション能を評価した。
MESバッファ(MES50mM、 pH6)にペプチドを150μM(DMSO5%)になるように希釈し、レアアースイオン系列に含まれるレアアースイオン13種を個別に加えた。ランタノイドイオンは、硝酸塩の形態で供給した。
1時間後、吸光度計を用いて、各溶液の濁度(Abs.600nm)を測定した。結果を図4に示す。
図4に示すように、Lamp−2は、ライトレアアースイオン系列については有効なミネラリゼーション能を有しておらず、へビィレアアースイオン系列に有効なミネラリゼーション能を有するとともに、特に、Yb及びLuに対して高いミネラリゼーション能を有していた。
Lamp−1は、全体として、ライトレアアースイオン系列よりもへビィレアアースイオン系列に対してミネラリゼーション能を有し、ライトレアアース系列中のメディアムレアアースイオン系列には有効なミネラリゼーション能を有し、さらにへビィレアアースイオン系列に対しては概して高いミネラリゼーション能を有していた。
Lamp−3は、レアアースイオン系列全てに対してミネラリゼーション能を有していた。
なお、Lamp−1〜3の各ペプチドを用いたミネラリゼーションによって生じた粒子については、EDXにて元素分析を行い、それぞれのレアアースイオンに由来する粒子であることを確認できた。
以上の結果から、これらのペプチドは、いずれも、レアアースイオン系列に対して異なるミネラリゼーション傾向を有していることがわかった。また、レアアースイオン系列のレアアースイオンに対して異なるミネラリゼーション能を有するミネラリゼーション傾向を利用して、レアアースイオン系列のレアアースイオンを相互に分離できる可能性が示唆された。また、これらのペプチドが有するそれぞれ異なるミネラリゼーション傾向の相違を利用して、レアアースイオン系列のレアアースイオンを相互に分離できる可能性も示唆された。
(2種類のランタノイドイオン混合物からのジスプロシウムイオンの分離)その1
1mM硝酸ジスプロシウム及び1mM硝酸ネオジムの混合溶液にLamp−1ペプチド20μM添加した。5時間静置した後、生成した沈殿物を15000rpm、10分遠心分離して沈降させて上清を除去し、100μlの超純水を加えてよく撹拌洗浄した。こうした洗浄をさらに2回繰り返した後、20μl超純水で沈殿物を分散させ、カーボンテープ上に10μl滴下し、クリンベンチ内で完全に乾燥するまで放置した。乾燥物をSEM/DEX(日立ハイテクノロジーズ社)で沈殿物を解析した。結果を図5に示す。
図5に示すように、沈殿物にはジスプロシウムのピークのみが観察され、ネオジムのピークは観察されなかった。以上のことから、Lamp−1ペプチドによれば、ジスプロシウムイオンとネオジムイオンとの相互分離が可能であることがわかった。
(2種類のランタノイドイオン混合物からのジスプロシウムイオンの分離)その2
1mM硝酸ジスプロシウム及び1mM硝酸ランタンの混合溶液にLamp−1ペプチド20μM添加した。5時間静置した後、生成した沈殿物を15000rpm、10分遠心分離して沈降させて上清を除去し、100μlの超純水を加えてよく撹拌洗浄した。こうした洗浄をさらに2回繰り返した後、20μl超純水で沈殿物を分散させ、カーボンテープ上に10μl滴下し、クリンベンチ内で完全に乾燥するまで放置した。乾燥物をSEM/DEX(日立ハイテクノロジーズ社)で沈殿物を解析した。結果を図6に示す。
図6に示すように、沈殿物にはジスプロシウムのピークのみが観察され、ランタンのピークは観察されなかった。以上のことから、Lamp−1ペプチドによれば、ジスプロシウムイオンとランタンイオンとの相互分離が可能であることがわかった。
(合成ペプチドの結合特異性評価)
Lamp−2及びLamp−1の各合成ペプチドと、マイクロプレートに固定したレアアースの金属酸化物粒子(La23、CeO2、Nd23、Sm23、Gd23、Tb47、Dy23、Ho23、Er23、Yb23、Y23、TiO2、ハイドロキシアパタイト、Ag)の総合評価を行った。Lamp−2及びLamp−1についての結果を、図7及び図8に示す。
図7に示すように、Lamp−1(配列番号4)、La23、CeO2、Nd23、Sm23、Gd23、Dy23、Ho23、Er23に対して高い結合能を有していた。なかでも、CeO2、Nd23、Gd23、Dy23に対して高い結合能を有し、さらには、CeO2、Nd23に対して高い結合能を有し、Nd23に対して最も高い結合能を有していた。なお、La−BPは、La23にはほとんど結合せず、CeO2には若干結合性を示したが、Lamp−1の結合能とは比較にならない程度であった。
図8に示すように、Lamp−2(配列番号16)は、La23、CeO2、Nd23、Sm23、Gd23、Tb47、Dy23、Ho23、Er23に対して高い結合能を有していた。なかでも、CeO2、Nd23、Gd23、Dy23に対して高い結合能を有し、さらには、La23、CeO2、Ho23に対して高い結合能を有し、La23、CeO2に対して最も高い結合能を有していた。
以上の結果から、合成ペプチドLamp−2及びLamp−1は、ランタノイド系のレアアースの複数の酸化物に対して結合能を有する一方、それぞれ、それらの酸化物に対しては異なる結合特異性を示すことがわかった。
(Lamp−1ペプチドのアラニン置換試験)
Lamp−1ペプチド(配列番号4)のアミノ酸配列の各位置において、アラニンに置換されたペプチド配列を提示するT7ファージを、実施例1に示すT7−Libup、T7−Libdownと表2に示すオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号39〜53)を用いて実施例1と同様の手法で作製した。作製したファージの提示するペプチド配列を図9に示す。
作製したLamp−1−ala置換体ファージについて、実施例7と同様の方法でDy23に対する結合を評価した。結果を図10に示す。
図10に示すように、第3位、4位、10位、12〜14位において、アラニン置換の影響が大きく結合量が低下した。また、第2位、6位及び9位のアラニン置換の影響も大きかった。以上のことから、第3位、4位、10位、12〜14位においては、それぞれ、ロイシン、トリプトファン、ロイシン、フェニルアラニン、ロイシン及びシステインであることが好ましいことがわかった。また、第2位、6位、9位については、それぞれ、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸であることが好ましいことがわかった。
(部分変異ライブラリの構築)
Lamp−2及びLamp−1にならい、14残基又は15残基のペプチドライブラリの各位置において、1,2残基目はSer、Cysで、13、14残基目又は14、15残基目は、Cys、Serで固定して、それ以外の位置は、酸化ジスプロシウム結合ペプチド由来のアミノ酸が30%前後の確率で出現するようなライブラリを作製した。
2種類のテンプレートDNA(Lamp−2-2nd、Lamp−1-2nd)を用いて実施例1と同様の手法で部分変異ライブラリを作製した。
Lamp−2-2nd:CGA ATT CAG GTG GAG GTT CGT GTN JFJ OOE ONO FNE JNF ONO FNN JFO FNJ JNN JFT GTA GCT AAA AGC TTG CGG CCG A(配列番号54)
Lamp−1-2nd:CGA ATT CAG GTG GAG GTT CGT GTN JFJ OOE ONO FNE JNF ONO FNN JFO FNJ JNN JFT GTA GCT AAA AGC TTG CGG CCG A(配列番号55)
2種類のテンプレートDNAにおけるF、J、O、X、N、B、E及びPは、それぞれ以下の塩基配列の偏りになるようにランダムに合成されたDNA配列を示す。
F=A70%、T10%、G10%、C10%の混合塩基
J=A10%、T70%、G10%、C10%の混合塩基
O=A10%、T10%、G70%、C10%の混合塩基
X=A10%、T10%、G10%、C70%の混合塩基
N=A、T、G、Cの等量混合塩基
B=T、G、Cの等量混合塩基
E=A20%、T20%、G40%、C20%の混合塩基
P=A20%、T20%、G20%、C40%の混合塩基
構築されたファージ集団の数を計測したところ、Lamp−2部分変異ライブラリで3.0×107、Lamp−1部分変異ライブラリで8.0×107の多様性を有するファージライブラリが構築されていることを確認した。
(部分変異ライブラリを用いたバイオパンニングと単離ファージの提示ペプチド配列解析)
実施例2と同様にして、実施例13にて作製した部分変異ライブラリを用いたて酸化ジスプロシウムに対するバイオパンニングを5回行った。その後、得られたファージプールを単クローン化し、実施例4と同様に、得られたファージが提示するペプチドのアミノ酸配列を解析した。Lamp−1ライブラリ及びLamp−2ライブラリにおいてクローン化されたファージのペプチドのアミノ酸配列を図11及び図12に、それぞれ示す。
図11に示すように、Lamp−1ペプチドの部分変異ライブラリでは、Lamp−1に本来存在していた酸性アミノ酸残基が保存される傾向があった。なかでも、9残基目の酸性アミノ酸残基(グルタミン酸)は、グルタミン酸又はアスパラギン酸として11クローン中10クローンで維持されていた。次いで、11残基目の酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸)は、アスパラギン酸又はグルタミン酸として、11クローン中6クローンで維持されていた。6残基目の酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸)も、アスパラギン酸又はグルタミン酸として11クローン中5クローンで維持されていた。他の位置についても、Lamp−1ペプチドが備えているアミノ酸残基の特性(中性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、芳香族アミノ酸、環状アミノ酸、含硫アミノ酸、酸アミドアミノ酸)の特性を維持する傾向があった。
図12に示すように、Lamp−2ペプチドの部分変異ライブラリでは、Lamp−2に本来存在していた酸性アミノ酸残基が保存される傾向があった。すなわち、9残基目の酸性アミノ酸残基(グルタミン酸)は、グルタミン酸又はアスパラギン酸として全クローン(14クローン)で維持されていた。他の位置についても、Lamp−2ペプチドが備えているアミノ酸残基の特性(中性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、芳香族アミノ酸、環状アミノ酸、含硫アミノ酸、酸アミドアミノ酸)の特性を維持する傾向があった。
(Lamp−1ペプチドのミネラリゼーション活性評価)
Lamp−1ペプチドとジスプロシウムイオンとの結合について評価した。HEPESバッファ(HEPES 1mM、pH6.2)に硝酸ジスプロシウム(ジスプロシウムはイオンとして存在)とDMSOに溶解したペプチドをそれぞれ1mM、10μM(DMSO5%)になるように希釈し、エッペンドルフチュ中に室温下で静置した。
5時間経過後、15000rpmで10分遠心し、上清を除去後、100μlの超純水を加えてよく撹拌洗浄した。こした遠心と撹拌洗浄を2回繰り返した後、20μlの超純水で沈殿をよく分散させ、TEM、EDX(日立ハイテクノロジーズ)による解析結果を図13及び図14に示す。
図13に示すように、TEMによれば、Lamp−1ペプチドとジスプロシウムイオンと接触によりなんらかの粒子が生成していることが確認できた。図14に示すように、また、その生成粒子は、EDXによりジスプロシウムを含んでいることがわかった。
以上のことから、Lamp−1ペプチドは、酸化ジスプロシウムと結合するほか、ジスプロシウムイオンから、水酸化ジスプロシウムを析出させる能力(ミネラリゼーション能)を有していることがわかった。
(Lamp−1ペプチドのミネラリゼーション能に対するインキュベーションpHの影響)
HEPS緩衝液(HEPES 1mM、pH7.5)にLamp−1ペプチド(環状化したもの)を10μM(DMSO 3%)になるように希釈し、0.1NHCl又は0.1MNaOHを用いてpHを3.9〜8.0に調整後、硝酸ジスプロシウムイオンを加えて室温下で揺らしながらインキュベートした。
5時間インキュベート後、15000rpmで10分間遠心して上清を除去後、100μlの超純水を加えて良く撹拌洗浄した。こうした遠心と撹拌洗浄を2回繰り返した後、20μlの超純水で沈殿を分散させ、カーボンテープ上に10μl滴下し、クリーンベンチ内で完全に乾燥するまで放置し、SEM/EDX解析した。結果を図15A及び図15Bに示す。
図15A及び図15Bに示すように、広い範囲のpHでミネラリゼーション活性を呈し、水酸化ジスプロシウムを取得できることがわかった。本実施例においては、pH5.0以上pH8.0以下の範囲で良好なミネラリゼーション能を確認できた。
(Lamp−1ペプチドのミネラリゼーション活性に対する反応温度の影響)
HEPS緩衝液(HEPES 1mM、pH7.5)にLamp−1ペプチド(環状化したもの)を10μM(DMSO 3%)になるように希釈し、硝酸ジスプロシウムイオンを加えて4℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃及び80℃の温度下で静置してインキュベートした。
5時間インキュベート後、実施例9と同様に、遠心及び撹拌洗浄して、最終的に沈殿を取得し、SEM/EDXで解析した。結果を図16A及び図16Bに示す。
図16A及び図16Bに示すように、広い温度範囲でミネラリゼーション活性を呈し、水酸化ジスプロシウムを取得できることがわかった。本実施例においては、4℃以上80℃以下の範囲で良好なミネラリゼーションを確認できた。
(Lamp−1ペプチドのミネラリゼーション活性により生成する粒子の粒径)
HEPSバッファ(HEPES 1mM、pH7.5)にLamp−1ペプチド(環状化したもの)を10μM(DMSO 3%)になるように希釈し、硝酸ジスプロシウムイオンを加えて室温下で揺らしながら5時間インキュベートした。
5時間経過後、実施例9と同様に、遠心及び撹拌洗浄して、最終的に沈殿を取得し、TEMで解析した。結果を図17に示す。
図17に示すように、得られた水酸化ジスプロシウム粒子は、概して5nm以下であり、ナノメータレベルの粒子が得られていることを確認できた。
(Lamp−1直鎖型ペプチドによるDyのミネラリゼーション能)
本実施例では、分子内ジスルフィド結合を形成していない直鎖型Lamp−1ペプチドによるジスプロシウムイオンのミネラリゼーション能を評価した。すなわち、1mM硝酸ジスプロシウムの水溶液に、直鎖型のLamp−1ペプチドを20μMとなるように添加した。
5時間後、反応液を15000rpmで10分間遠心して上清を除去して、沈殿物に100μlの超純水を加えて良く撹拌して洗浄した。この遠心と撹拌洗浄を2回繰り返した後、20μlの超純水で沈殿を分散させて、カーボンテープ上に10μl滴下し、クリンベンチ内で完全に乾燥するまで放置した。この乾燥物につき、SEM/EDX(日立ハイテク)を用いて解析した。結果を図18に示す。
図20に示すように、直鎖型Lamp−1は、ジスプロシウムのミネラリゼーション能を有していることがわかった。
以上のことから、本開示のペプチドは、環状化されていても直鎖であっても、固有のレアアース種捕捉能を発揮できることがわかった。
配列番号1〜34:合成ペプチド
配列番号35〜55:合成ヌクレオチド

Claims (11)

  1. レアアースイオンの分離方法であって、
    1又は2以上のレアアースイオンと、レアアースイオンをミネラリゼーション可能な1又は2以上のミネラリゼーション剤とを、接触させる工程と、
    を備え、
    前記1又は2以上のミネラリゼーション剤のレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション傾向に基づいて、前記1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離し、
    前記1又は2以上のミネラリゼーション剤は、それぞれペプチド領域を備え、レアアースイオンに近接したときに環状構造を形成可能である又はそれ自体が環状構造を有し、
    前記ペプチド領域は、以下の(1)〜(3)のアミノ酸配列から選択され、これらのアミノ酸配列のC末端にのみCysを有するか又はN末端及びC末端にそれぞれCysを有する、方法。
    (1)Leu/Val-Trp-Gly-Asp/Glu-Val-Ser/Asn/Lys-Asp/Glu-Leu/Val-Asp/Glu-Phe/Leu/Val-Leu/Val/Thr
    (2)Leu-Tyr-Pro/Ala-Ser-Trp-Ser/Gly/Thr-Asp/Glu-Tyr-Ala/Gly/Ser/Thr-Phe/Leu
    (3)Pro-Val-Trp-Phe-Ser-Asp/Glu-Val-Gly-Asp/Glu-Phe-Met-Val
  2. レアアースイオンの分離方法であって、
    1又は2以上のレアアースイオンと、レアアースイオンをミネラリゼーション可能な1又は2以上のミネラリゼーション剤とを、接触させる工程と、
    を備え、
    前記1又は2以上のミネラリゼーション剤のレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション傾向に基づいて、前記1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離し、
    前記1又は2以上のミネラリゼーション剤は、それぞれペプチド領域を備え、レアアースイオンに近接したときに環状構造を形成可能である又はそれ自体が環状構造を有し、
    前記ペプチド領域は、以下のアミノ酸配列からなる群から選択され、これらのアミノ酸配列のC末端にのみCysを有するか又はN末端及びC末端にそれぞれCysを有する、方法。
    (1)LeuTrpGlyAspValSerGluLeuAspPheLeu
    LeuTrpIleGluSerLeuAspLeuAspGlyLeu
    LeuCysCysGluValSerAspLeuGlyLeuVal
    ValCysIleGluArgArgGluLeuAspLeuLeu
    IleAspSerTyrValGlyGluLeuGluThrLeu
    LeuTrpArgAlaValCysAspLeuGlyIleGlu
    LeuGlyGlyAspMetSerAspLysProValSer
    ThrCysGlyMetValAsnAspValAspLeuThr
    IleValGlyGluValArgLeuSerAspLeuVal
    ThrCysGlyMetValAsnAspValAspLeuThr
    ValTrpArgGlyPheLysAspGlyGlnTrpPhe
    ValCysArgGlyLeuArgAspLeuAlaHisAsn
    (2)LeuTyrProSerTrpSerAspTyrAlaPhe
    ThrAspProSerTrpGlyGluTyrGlyPhe
    GluTyrSerSerAlaSerGluTyrAlaArg
    IleTyrGlyGluTrpArgAspTyrAlaPhe
    ValTyrLeuSerGlySerGluCysThrPhe
    LeuAsnAlaArgTrpSerAspSerProVal
    LeuAsnThrIleTrpAlaAspTyrGlyLeu
    LysAspValSerTrpGlyAspIleAlaCys
    PheGluPheSerTrpSerGluAspCysAla
    GluArgGlySerTrpCysGluAspAlaCys
    ValTyrThrGlyTrpArgGluAspAlaSer
    CysPheAlaSerCysThrAspSerAlaLeu
    ThrArgSerArgCysGlyAspGlyAlaPhe
    TyrValAlaIleMetSerGluLysSerPhe
    IleGluAlaArgTyrThrAspHisAlaLeu
    (3)ProValTrpPheSerAspValGlyAspPheMetVal
    ProValTrpPheSerAspValGlyGluPheMetVal
    ProValTrpPheSerGluValGlyAspPheMetVal
    ProValTrpPheSerGluValGlyGluPheMetVal
  3. 前記ペプチド領域は、いずれかの末端にアミノ酸残基としてシステイン残基を有する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 2以上のレアアースイオンの混合物から、1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 1又は2以上のライトレアアースイオンを分離する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. ネオジムイオンを分離する、請求項5に記載の方法。
  7. 1又は2以上のへビィレアアースイオンを分離する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. ジスプロシウムイオンを分離する、請求項7に記載の方法。
  9. ライトレアアースイオンの1又は2以上とへビィレアアースイオンの1又は2以上とを相互に分離する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. レアアースイオンの検出方法であって、
    1又は2以上のレアアースイオンと、レアアースイオンをミネラリゼーションする1又は2以上のミネラリゼーション剤とを、接触させる工程、
    を備え、
    前記1又は2以上のミネラリゼーション剤のレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション傾向に基づいて、前記1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離し、前記レアアースミネラル又はレアアースミネラル中のレアアース種を検出し、
    前記1又は2以上のミネラリゼーション剤は、それぞれペプチド領域を備え、環状構造を形成可能である又はそれ自体が環状構造を有し、
    前記ペプチド領域は、以下のアミノ酸配列からなる群から選択され、これらのアミノ酸配列のC末端にのみCysを有するか又はN末端及びC末端にそれぞれCysを有する、方法。
    (1)Leu/Val-Trp-Gly-Asp/Glu-Val-Ser/Asn/Lys-Asp/Glu-Leu/Val-Asp/Glu-Phe/Leu/Val-Leu/Val/Thr
    (2)Leu-Tyr-Pro/Ala-Ser-Trp-Ser/Gly/Thr-Asp/Glu-Tyr-Ala/Gly/Ser/Thr-Phe/Leu
    (3)Pro-Val-Trp-Phe-Ser-Asp/Glu-Val-Gly-Asp/Glu-Phe-Met-Val
  11. レアアースイオンの検出方法であって、
    1又は2以上のレアアースイオンと、レアアースイオンをミネラリゼーションするミネラリゼーション剤とを、接触させる工程、
    を備え、
    前記ミネラリゼーション剤のレアアースイオン系列に対するミネラリゼーション傾向に基づいて、前記1又は2以上のレアアースイオンをレアアースミネラルとして分離し、前記レアアースミネラル又はレアアースミネラル中のレアアース種を検出し、
    前記ミネラリゼーション剤は、ペプチド領域を備え、レアアースイオンに近接したときに環状構造を形成可能である又はそれ自体が環状構造を有し、
    前記ペプチド領域は、以下の(1)〜(3)のアミノ酸配列から選択され、これらのアミノ酸配列のC末端にのみCysを有するか又はN末端及びC末端にそれぞれCysを有する、方法。
    (1)LeuTrpGlyAspValSerGluLeuAspPheLeu
    LeuTrpIleGluSerLeuAspLeuAspGlyLeu
    LeuCysCysGluValSerAspLeuGlyLeuVal
    ValCysIleGluArgArgGluLeuAspLeuLeu
    IleAspSerTyrValGlyGluLeuGluThrLeu
    LeuTrpArgAlaValCysAspLeuGlyIleGlu
    LeuGlyGlyAspMetSerAspLysProValSer
    ThrCysGlyMetValAsnAspValAspLeuThr
    IleValGlyGluValArgLeuSerAspLeuVal
    ThrCysGlyMetValAsnAspValAspLeuThr
    ValTrpArgGlyPheLysAspGlyGlnTrpPhe
    ValCysArgGlyLeuArgAspLeuAlaHisAsn
    (2)LeuTyrProSerTrpSerAspTyrAlaPhe
    ThrAspProSerTrpGlyGluTyrGlyPhe
    GluTyrSerSerAlaSerGluTyrAlaArg
    IleTyrGlyGluTrpArgAspTyrAlaPhe
    ValTyrLeuSerGlySerGluCysThrPhe
    LeuAsnAlaArgTrpSerAspSerProVal
    LeuAsnThrIleTrpAlaAspTyrGlyLeu
    LysAspValSerTrpGlyAspIleAlaCys
    PheGluPheSerTrpSerGluAspCysAla
    GluArgGlySerTrpCysGluAspAlaCys
    ValTyrThrGlyTrpArgGluAspAlaSer
    CysPheAlaSerCysThrAspSerAlaLeu
    ThrArgSerArgCysGlyAspGlyAlaPhe
    TyrValAlaIleMetSerGluLysSerPhe
    IleGluAlaArgTyrThrAspHisAlaLeu
    (3)ProValTrpPheSerAspValGlyAspPheMetVal
    ProValTrpPheSerAspValGlyGluPheMetVal
    ProValTrpPheSerGluValGlyAspPheMetVal
    ProValTrpPheSerGluValGlyGluPheMetVal
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