JP6051702B2 - 希土類金属特異的ペプチド、希土類金属分離回収材、希土類金属の分離回収方法、及び、希土類金属の相互分離回収方法 - Google Patents
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〔1〕タンパク質の立体構造単位EFハンドのカルシウム結合ループ領域の配列であって配列番号1のモチーフ配列を含む希土類金属結合配列と、前記希土類金属結合配列を挟んでβシート構造を形成するβシート構造形成配列を含み、希土類金属に特異的に結合する希土類金属特異的ペプチド。
〔2〕前記希土類金属結合配列が、以下の(i)〜(iii)の何れかのアミノ酸配列からなる希土類金属特異的ペプチド。
(i)配列番号2〜20の何れかの配列番号のアミノ酸配列
(ii)上記(i)のアミノ酸配列のうち、第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目の1若しくは数個のアミノ酸が、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン及びグルタミン酸の何れかの他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(iii)上記(i)又は(ii)のアミノ酸配列の第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列
〔3〕前記希土類金属結合配列が、以下の(イ)〜(ハ)の何れかのアミノ酸配列からなる希土類金属特異的ペプチド。
(イ)配列番号21又は22の配列番号のアミノ酸配列
(ロ)配列番号21又は22のアミノ酸配列のうち、第8番目、第10番目、第12番目、第16番目、第19番目の1若しくは数個のアミノ酸が、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン及びグルタミン酸の何れかの他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(ハ)配列番号21又は22のアミノ酸配列のうち、第8番目、第10番目、第12番目、第16番目、第19番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列
上記〔2〕〜〔3〕の構成によれば、希土類金属に対して高い特異的結合性を示す、実用性が特に高い希土類金属特異的ペプチドを提供することができる。
〔6〕前記希土類金属特異的ペプチドが、固相担体に固定化されている。
〔7〕前記酸が、酢酸又は硝酸である。
〔8〕前記酸の濃度が、10〜1000mMである。
特に、上記〔6〕の構成によれば、上記希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化した希土類金属分離回収材を利用した希土類金属の分離回収方法を提供することができる。固相担体に固定化したことにより、特に非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質からの分離が容易かつ簡便となり、更に実用性の高い希土類金属の分離回収技術を提供することができる。
前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属を結合させる結合工程と、
前記結合工程で形成された前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属の結合を結合親和性の相違に従って順に有機酸により解離させる解離工程と、
前記解離工程で解離した前記希土類金属を元素ごとに回収する回収工程を有する希土類金属の相互分離回収方法。
〔10〕前記希土類金属特異的ペプチドが、固相担体に固定化されている。
〔11〕前記有機酸の濃度が、10〜1000mMである。
特に、上記〔10〕の構成によれば、上記希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化した希土類金属分離回収材を利用した希土類金属の相互分離回収方法を提供することができる。固相担体に固定化したことにより、特に非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質からの分離が容易かつ簡便となり、かつ、希土類金属の元素ごとの相互分離も容易かつ簡便となり、更に実用性の高い希土類金属の分離回収技術を提供することができる。
(本発明の希土類金属特異的ペプチド)
本発明の「希土類金属特異的ペプチド」は、希土類金属と特異的に結合する希土類金属結合配列を少なくとも1つ含んで構成される。希土類金属結合配列としては、EFハンドと称されるタンパク質の立体構造単位中のカルシウム結合ループ領域の配列を好適に利用することができる。ここで、EFハンドとは、カルシウム結合タンパク質に存在するタンパク質の立体構造単位であり、細胞内カルシムの結合に関与することが公知である。一般には、へリックス−ループ−へリックス構造からなり、詳細にはαへリックスとその間に挟まれたカルシウム結合ループ領域とからなる。そして、カルシウム結合ループ領域は、カルシウム結合に関与する12アミノ酸前後の配列からなり、その配列には一定の規則性があることが知られている。EFハンドからカルシウム結合ループ領域を切り出すとその立体構造を保てなくなり、カルシウムに対する結合性は失われるか、若しくは著しく低下する。一方で、一部の配列は、希土類金属への特異的結合性を示すようになることが知られていた。
上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドは、固相担体に固定化して「希土類金属分離回収材」として構成することが好ましく、かかる「希土類金属分離回収材」も本発明の一部を成す。このように構成することにより、希土類金属の分離回収技術における利便性を向上させることができる。固相担体としては、任意の不溶性材料を利用でき、例えば、ガラス、シリカ、ベンナイト等の無機物質、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成高分子物質、アガロース、デキストラン、セルロース、ポリサッカライド等の不溶性多糖、また、これらの組み合わせ等が例示されるが、これらに限定されるものではない。また、固相担体の形状についても、特に制限はなく、あらゆる形状のものを利用することができる。例えば、中空管状、球状、粒子状、棒状、シート状、板状、箱状等であってよい。したがって、カラム、磁気ビーズ、ナノビーズ、メンブラン、マクロプレート等の公知のいずれの形態をも利用することができる。特には、セルロース、セルロース誘導体やシリカ等の適当なクロマトグラフィー担体に固定化して、クロマトグラフィーカラムとすることが好ましい。
本発明の「希土類金属の分離回収方法」は、「本発明の希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を含有する検体とを接触させる接触工程」と、「希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を結合させる結合工程」と、「結合工程で形成された希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合を酸により解離させる解離工程」と、「解離工程で解離した希土類金属を回収する回収工程」を有して構成される。
好適な実施形態として、固相担体に上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドを固定化した形態について説明する。希土類金属特異的ペプチドと希土類金属との接触が、上述の本発明の希土類金属分離回収材と希土類金属を含有する検体を接触させることにより行なわれる点を除いては、上述の本発明の希土類金属の分離回収方法に準じて行うことができる。
本発明の「希土類金属の相互分離回収方法」は、「本発明の希土類金属特異的ペプチドと複数種の希土類金属元素を含有する検体とを接触させる接触工程」と、「希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を結合させる結合工程」と、「結合工程で形成された希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合を親和性の相違に従って順に有機酸により解離させる解離工程」と、「解離工程で解離した希土類金属を元素ごとに回収する回収工程」を有して構成される。このように構成することにより、本発明の希土類金属特異的ペプチドに対する結合親和性の相違に従って希土類金属を元素ごとに相互に分離して回収することができる。
好適な実施形態として、固相担体に希土類金属特異的ペプチドを固定化した形態について説明する。希土類金属特異的ペプチドと希土類金属との接触が、上述の本発明の希土類金属分離回収材と希土類金属を含有する検体を接触させることにより行なわれる点を除いては、上述の希土類金属の相互分離回収方法に準じて行うことができる。固相担体としては、適当なクロマトグラフィーカラムに充填した適当なクロマトグラフィー担体を使用することが好ましい。クロマトグラフィー担体等の固相担体の種類や希土類金属特異的ペプチドの固定化密度、クロマトグラフィー条件等は、上述の「希土類金属分離回収材を用いた希土類金属の分離回収方法」に準じて設定することができる。
本実施例において、希土類金属特異的ペプチドを利用することにより、希土類金属と非希土類金属の分離できるか否かを評価するに当たって、まず、希土類金属特異的ペプチドの各種希土類金属及び非希土類金属に対する結合性を検討した。なお、希土類金属特異的ペプチドとしてVAATAGIDTDNDGWIEGDEGDVFI(配列番号21)を用いた。このペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列からなる希土類金属結合配列とβシート構造形成配列を含んで構成されている。
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において、評価の対象とした金属としては、希土類金属として、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ルテチウム(Lu)であり、非希土類金属としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)である。そして、これらを1nM〜100μM濃度に調製した希土類金属溶液として用いた。
上記ペプチドの各金属に対する結合性(Kd[μM])を求めた。具体的には、各金属に対するペプチドのKd値は、まずテルビウムに対するKd値をテルビウムの蛍光を基に測定し、その後テルビウムとその他金属の競合試験によりその他の金属のKd値を求めた。テルビウムに対するKd値は、0.05μM〜0.1μMのペプチド存在下、テルビウム濃度を0.001μM〜100μMで共存させ、280nmの励起光照射時の543nmの蛍光強度を測定し、蛍光強度とテルビウム濃度の関係から算出した。次に、ペプチドおよびテルビウムを一定濃度(0.1μM〜2μM)存在下、各金属を0.001μM〜100μMで共存させ、280nmの励起光照射時の543nmの蛍光強度を測定し、蛍光強度と各金属濃度の関係から各金属のKd値を算出した。溶液の調製には、100 mM NaClを含む10 mM MOPS(pH7.0)を用いた。各金属溶液の調製には、各金属の塩化物を用いた。
結果を表3に示す。表3は、希土類金属特異的ペプチド(VAATAGIDTDNDGWIEGDEGDVFI:配列番号21)の各金属に対する結合性(Kd〔μM〕)を要約したものである。この結果から、上記ペプチドは希土類金属と強く結合する一方、非希土類金属に対する結合性は示さなかった。上記ペプチドは、非希土類金属に対しては、その構築の基礎としたEFハンドに結合するカルシウムに対する結合性もが消失している。つまり、上記ペプチドは希土類金属に特異的に結合できる性質を有していることを確認した。
希土類金属特異的ペプチドを利用した希土類金属と非希土類金属の分離−2。
本実施例においては、希土類金属特異的ペプチドの希土類金属の分離回収能について評価した。なお、希土類金属特異的ペプチドとして、SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)を用いた。このペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列からなる希土類金属結合配列とβシート構造形成配列を含んで構成されている。
まず、ここでは、希土類金属特異的ペプチドを利用することにより、希土類金属と非希土類金属の分離できるか否かを評価するに当たって、まず、希土類金属特異的ペプチドの各種希土類金属及び非希土類金属に対する結合性を検討した。
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において評価の対象とした金属は実施例1と同じであり、希土類金属として、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ルテチウム(Lu)であり、非希土類金属としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)である。実施例1と同様にして、金属塩溶液を調製した。
実施例1と同様にして、上記ぺプチドの各金属に対する結合性(Kd[μM])を算出した。
結果を表4に示す。表4は、希土類金属特異的ペプチド(SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN:配列番号22)の各金属に対する結合性(Kd〔μM〕)を要約したものである。実施例1と同様に、上記ペプチドは希土類金属と強く結合する一方、非希土類金属に対する結合性は示さなかった。一方、上記ペプチドは、非希土類金属に対しては、その構築の基礎としたEFハンドに結合するカルシウムに対する結合性もが消失している。つまり、上記ペプチドは希土類金属に特異的に結合できる性質を有していることを確認した。
実施例2−Aにおいて、希土類金属特異的ペプチド(SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN:配列番号22)が希土類金属と特異的に結合することが確認されたことに続いて、ここでは、希土類金属特異的ペプチドの希土類金属の分離回収能について、希土類金属と非希土類金属の単一金属溶液を調製し、希土類金属特異的な分離回収が可能か否かを評価した。
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において、希土類金属の特異的分離回収能の評価対象とした金属塩溶液としては、希土類金属溶液として、塩化ネオジム(NdCl3)、塩化プラセオジム(PrCl3)、塩化セリウム(CeCl3)水溶液を夫々調製し、また、非希土類金属塩溶液として、塩化コバルト(CoCl2)、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化クロム(CrCl3)水溶液を夫々調製した。
希土類金属分離回収材として、希土類金属特異的ペプチドを固定化したカラムを作製した。ここでは、上記した通り、希土類金属特異的ペプチドとして、(SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)を用いた。そして、カラム樹脂への固定化のため、上記ペプチドのC末端にリジン残基を付加したペプチドを化学合成により調製した。カラムに充填する樹脂としては、N−ヒドロキシスクシンイミド基を持つアガロース担体を利用し、上記ペプチドを固定化した。最終的には、1ml容量のカラムに5mgのペプチドを固定化した。樹脂当たりのペプチド濃度は、33μmol/gであった。
なお、比較として、上記ペプチドを固定化せずに不活性化した1ml容量のカラムを、未修飾カラムとして作製した(比較例)。
上記1−2で作製したカラムをHPLCポンプに接続し、移動相として100mMのNaClを含む10mMのMOPS緩衝液(pH7.0)を流速1ml/minで送液した。続いて、上記1−1で調製した20mMの各種金属塩溶液を20μlずつ注入した。上記ペプチドに結合できない金属はカラムを素通りしていく。金属塩溶液の注入の3分後から移動相中の酢酸濃度を上昇させることにより、上記ペプチドに結合しカラムに吸着した金属を溶出した。各金属の検出は、吸光分光光度計により、各金属の極大吸収波長付近の吸光度を測定することにより行った。詳細には、コバルトは490nm、ニッケルは390nm、ネオジムは572nm、プラセオジムは440nm、セリウムは260nm、塩化クロムは430nmでの吸光度を測定することにより検出した。そして、カラムから流出する各金属の濃度変化を記録した。
結果を図1に示す。図1は、カラムからの各流出液について、対応する各金属の濃度変化を記録したクロマトグラムである。この結果から、非希土類金属であるコバルト、ニッケルは、カラムに吸着することなく素通りした。一方、希土類金属であるネオジム、プラセオジム、セリウムはカラムに吸着した。そして、移動相中の酢酸濃度を500mMまで上昇させることによって、これらの希土類金属は溶出し、回収することができることを確認した。以上の結果から、上記ペプチドカラムは希土類金属のみを特異的に吸着すると共に、酢酸によって上記ペプチドカラムから希土類金属を溶出でき、これを利用することにより、希土類金属のみ選択的に分離回収できることが理解できる。
実施例2−Bの溶出に際して、酢酸に代えて金属塩溶液の注入の5分後に硝酸濃度を500mMに上昇させて検討を行った。塩化クロムについてはここで検討を行い、一方、塩化セリウムについては検討を行わなかった。結果を図2に示す。図2は、カラムからの各流出液について、対応する各金属の濃度変化を記録したクロマトグラムである。この結果より、硝酸によっても、上記ペプチドカラムから希土類金属を回収することができることを確認した。なお、移動相のみの場合には、いずれの位置にもピークは認められなかったことから、本実施例で確認されたピークはいずれも金属塩溶液由来のピークであることが判明した。
上記実施例2−B、2−Cの評価に続き、ここでは、希土類金属と非希土類金属の混合液から、希土類金属特異的な分離回収が可能か否かを評価した。
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
ここで、希土類金属の特異的分離回収能の評価対象として金属塩溶液としては、希土類金属として塩化ネオジム、そして、非希土類金属として、塩化コバルト、塩化ニッケルを等濃度に含む金属塩混合水溶液を調製した。
上記実施例2−Bと同様にして、希土類金属分離回収材の作製及び希土類金属分離回収評価を行った。なお、金属塩混合溶液のカラムへの注入は、夫々の金属塩が最終濃度20mMとなるように行った。
結果を図3に示す。図3は、カラムからの流出液の各金属の濃度変化を記録したクロマトグラムである。非希土類金属であるコバルト(490nm)、ニッケル(390nm)は、カラムに吸着することなく素通りすることを確認した。一方、希土類金属であるネオジム(572nm)は、実施例2−Bと同様に、カラムに吸着し、移動相中の酢酸濃度を500mMにすることにより回収することができることを確認した。なお、572nmでの測定のクロマトグラムにおいて、金属塩混合水溶液注入直後に低いピークが認められるが、実施例1−Cと同様、ネオジムではなくコバルト由来のピークであると理解できる。以上の結果より、非希土類金属と希土類金属が共存する混合溶液中であっても、上記ペプチドカラムを利用することにより、希土類金属のみを選択的に分離回収できることが理解できる。
実施例2において、本発明の希土類金属特異的ペプチドの希土類金属の分離回収能について評価し、本発明の希土類金属特異的ペプチドが、非希土類金属と区別して希土類金属のみを選択的に分離回収可能であることが判明した。本実施例では、希土類金属特異的ペプチドを利用した希土類金属の元素ごとの相互分離回収について検討を行った。
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において、希土類金属の特異的分離回収能の評価対象とした金属塩溶液としては、塩化セリウム(CeCl3)、塩化テルビウム(TbCl3)を水溶液を調製した。
上記実施例2の方法に準じて、希土類金属分離回収材を作成した。続いて、カラムをHPLCポンプに接続し、移動相として400mM酢酸及び100mMのNaClを含む10mMのMOPS緩衝液(pH7.0)を流速2ml/minで送液しているところに、1−1で調整した金属塩溶液を各金属塩の最終濃度が1mMとなるよう注入した。セリウムとテルビウムはカラムに吸着すると共に、有機酸である酢酸により溶出される。溶出したセリウムの検出は、吸光分光光度計により極大吸収波長付近の吸光度を測定することにより行った。詳細には、260nmでの吸光度を測定することにより検出した。一方、テルビウムの検出は、誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry :ICP-MS)により行った。そして、カラムから流出する各金属の濃度変化を記録した
結果を図4に示す。図4は、カラムからの各流出液について、対応する各金属の濃度変化を記録したクロマトグラムである。セリウムは1.8分に、テルビウムは5.8分にピークを持つ溶出を確認した。両者の溶出速度には差異があることから、これを利用することにより両者を相互に分離して回収できることが理解できる。
また、本発明の希土類金属特異的ペプチドと希土類金属との結合の解離に際して、有機酸を用いると、希土類金属の元素ごとの希土類金属特異的ペプチドに対する親和性を反映した結合解離が行われることが判明した。そのため、希土類金属特異的ペプチドとの親和性が低い希土類金属元素は速く、一方、親和性の高い希土類金属元素は解離が遅くなる。つまり、本発明の希土類金属特異的ペプチドに対する親和性の相違に従って希土類金属を元素ごとに分別して回収することができる。そして、非希土類金属や希土類金属元素を複数種含む金属混合溶液からであっても、容易に非希土類金属と区別して希土類金属のみを選択的に分離回収できると共に、希土類金属をも元素ごとに相互に分離して回収できる。したがって、当該希土類金属特異的ペプチドを利用した本発明の希土類金属の分離回収方法は、容易、簡便、かつ効率よく希土類金属を回収でき、極めて実用性の高い希土類金属の分離回収技術であると結論付けることができる。また、有機溶媒などの環境負荷の高い試薬を用いず環境に配慮した安全性の高い技術でもあり、また高価な試薬をも使用せずコストパフォーマンスの面からも優れた技術である。
本実施例においては、希土類金属特異的ペプチドと希土類金属結合配列のみからなるペプチドについて、希土類金属への結合性を比較した。なお、希土類金属特異的ペプチドとしてSLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)を用い、希土類金属結合配列のみからなるペプチドとしてDTNNDGWIEGDE(配列番号2)を用いた。
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において評価の対象とした金属は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、ルテチウム(Lu)である。実施例1、2と同様にして、金属塩溶液を調製した。
実施例1、2と同様にして、上記ぺプチドの各金属に対する結合性(Kd[μM])を算出した。
結果を表5に示す。表5は、希土類金属特異的ペプチド(SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN:配列番号22)、及び希土類金属結合配列からなるペプチド(DTNNDGWIEGDE:配列番号2)の各金属に対する結合性(Kd〔μM〕)を要約したものである。希土類金属特異的ペプチドは希土類金属と強く結合する一方、βシート構造形成配列を含まない希土類金属結合配列のみでは希土類金属とは弱くしか結合しなかった。つまり、希土類金属結合配列にβシート構造配列を付加することにより、希土類金属への結合性の大幅な向上が認められた。
Claims (9)
- 以下の(イ)又は(ロ)の何れかのアミノ酸配列からなる希土類金属特異的ペプチド。
(イ)配列番号21又は22の配列番号のアミノ酸配列
(ロ)配列番号21又は22のアミノ酸配列のうち、第8番目、第10番目、第12番目、第16番目、第19番目の1若しくは数個のアミノ酸が、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン及びグルタミン酸の何れかの他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列 - 請求項1に記載の希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化した希土類金属分離回収材。
- 請求項1に記載の希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を含有する検体とを接触させる接触工程と、
前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属を結合させる結合工程と、
前記結合工程で形成された前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属の結合を酸により解離させる解離工程と、
前記解離工程で解離した前記希土類金属を回収する回収工程を有する希土類金属の分離回収方法。 - 前記希土類金属特異的ペプチドが、固相担体に固定化されている請求項3に記載の希土類金属の分離回収方法。
- 前記酸が、酢酸又は硝酸である請求項3又は4に記載の希土類金属の分離回収方法。
- 前記酸の濃度が、10〜1000mMである請求項3〜5の何れか一項に記載の希土類金属の分離回収方法。
- 請求項1に記載の希土類金属特異的ペプチドと複数種の希土類金属元素を含有する検体とを接触させる接触工程と、
前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属を結合させる結合工程と、
前記結合工程で形成された前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属の結合を結合親和性の相違に従って順に有機酸により解離させる解離工程と、
前記解離工程で解離した前記希土類金属を元素ごとに回収する回収工程を有する希土類金属の相互分離回収方法。 - 前記希土類金属特異的ペプチドが、固相担体に固定化されている請求項7に記載の希土類金属の相互分離回収方法。
- 前記有機酸の濃度が、10〜1000mMである請求項7又は8の何れか一項に記載の希土類金属の相互分離回収方法。
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