JP2004000092A - 重金属を特異的に結合するポリペプタイドおよび当該ポリペプタイドをコードする遺伝子 - Google Patents

重金属を特異的に結合するポリペプタイドおよび当該ポリペプタイドをコードする遺伝子 Download PDF

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Hiroshi Sano
佐野 浩
Nozomi Koizumi
小泉 望
Nobuaki Suzuki
鈴木 伸昭
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Abstract

【課題】効率のよい重金属除去方法および効率のよい重金属を濃縮採取する方法、およびそのためのポリペプチド、生物を提供すること。
【解決手段】上記課題は、重金属に選択的に結合し、かつ、形質膜に結合する能力を有するポリペプチドをはじめて見出したことによって達成された。そのような重金属的に選択的に結合するポリペプチドの領域は、たとえば、CXXCというアミノ酸配列を有する。ここで、Cはシステインであり、そしてXは任意のアミノ酸をいう。上記形質膜に結合する能力は、例えば機能的な(例えば、疎水性結合性を有する)ファルネシル化領域を有することによって達成される。ファルネシル化領域は、代表的に、CaaYというアミノ酸配列を有する。ここで、aは脂肪族アミノ酸であり、Yは、C末端アミノ酸である。C末端アミノ酸は、好ましくは、メチオニンであり得る。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重金属を処理することに関する。より詳細には、本発明は、重金属を環境より除去する生物、方法およびシステムならびにそれに有用なポリペプチド、ならびに希少重金属を濃縮および採取するための生物、方法およびシステムならびにそれに有用なポリペプチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、生物に対して有害な重金属類に汚染された土壌は、取り除いて地中深く埋めるか、または長期にわたる放置により流失を待つなどの方法がとられている。汚染された水は、限外濾過膜による濃縮、活性炭またはイオン交換樹脂による吸着など、膨大な設備および経費を要する方法しか安全に処理する方法がなく、現実には、十分に対策が行われていないことも多い。
【0003】
重金属(例えば、カドミウムなど)が土壌や水系など環境中に存在する場合、動植物にとって著しく有害である(Sanita di Toppi,L.およびGabbrielli,R.(1999)Environ.Exp.Bot.41:105−130)。しかしながら、現実には、有害重金属は、発電所、金属関連の工場、および焼却場より排出される廃棄物中に広く存在し、土壌汚染の原因となっている。有害重金属によってもたらされる毒性は、食物連鎖を介して生体に蓄積される可能性を有する。そのため、環境中の有害重金属は、現代社会における重要な健康上の問題である。
【0004】
例えば、重金属(例えば、カドミウムなど)は、非必須重金属であり、そして生細胞に対する毒性は、非常に低濃度においてもたらされる。また、カドミウムは、ヒトに対する発癌物質であると考えられる(Clemensら、(1990)EMBO Journal 18、3325−3333)。
【0005】
従って、土壌中の重金属(例えば、カドミウムなどの有害重金属)、を効率的に除去することが、望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
効率のよい重金属除去方法が確立されていないという上記現状に鑑み、当該分野において、そのような効率のよい、重金属除去方法の確立が待ち望まれている。従って、そのような方法およびシステム、ならびにこの方法およびシステムにおい使用するポリペプチド、細胞、および生物(特に植物)を提供することを本発明の課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、重金属に選択的に結合し、かつ、形質膜に結合する能力を有するポリペプチドをはじめて見出したことによって達成された。
【0008】
具体的には、本明細書において、本発明者らは、CdI19が、原形質膜に局在するメタロシャペロンとして機能すること、およびカドミウムに直接結合し、そして重金属ストレスの際に増加することの実質的な証拠を提供する。
【0009】
このようなポリペプチドは、例えば、植物が有する有害重金属の無毒化機構の遺伝子レベルにおける解明を進めることにより、特定の重金属を捕捉する特殊なポリペプチドを同定し、その機能を利用することにより達成された。このようなポリペプチドを植物に利用して、ファイトレメディエーション(植物による環境修復)を行うことにより、省エネルギーで、低コスト、かつ広範囲で低レベルの汚染処理を行うことが達成された。
【0010】
本発明において、有害な重金属を土壌中から効率的に除去するための植物体が提供される。このような植物体は、人体に有害な重金属に対して選択的に結合する膜タンパク質をコードする遺伝子を単離し、この遺伝子を用いて植物を形質転換することによって可能となった。
【0011】
植物において、カドミウムは、光合成において活性である、集光性複合体II(light harvesting complex II)(Krupa、(1988)Physiologia Plantarum 73,518−524)ならびに光化学系Iおよび光化学系II(SiedleckaおよびBaszynsky(1993)Physiologia Plantarum 87、199−202)に対して、損傷を与える。総クロロフィル含量は、カドミウム処理によって減少し、非光化学クエンチングは、Brassica napusにおいて増加する(Larsson,E.ら、(1998)Journalof Experimental Botany 49,1031−1039)。おそらくカドミウムは、気孔の開放を阻害する一方で、孔辺細胞中のK、Ca2+およびアブシジン酸の動きもまた妨げる。
【0012】
そのような重金属的に選択的に結合するポリペプチドの領域は、たとえば、CXXCというアミノ酸配列を有する。ここで、Cはシステインであり、そしてXは任意のアミノ酸をいう。上記形質膜に結合する能力は、ファルネシル化領域を有することによって達成される。ファルネシル化領域は、代表的に、CaaYというアミノ酸配列を有する。ここで、aは脂肪族アミノ酸であり、Yは、C末端アミノ酸である。C末端アミノ酸は、好ましくは、メチオニンであり得る。
【0013】
従って、本発明は以下を提供する。
【0014】
1. 重金属を結合する領域およびファルネシル化領域を含む、ポリペプチド。
【0015】
2. 形質膜結合能を有する、項目1に記載のポリペプチド。
【0016】
3. 前記重金属を結合する領域は、少なくとも1つのCXXCを含み、ここでCはシステイン残基を表し、Xは任意のアミノ酸を表す、項目1に記載のポリペプチド。
【0017】
4. 前記重金属を結合する領域は、少なくとも2つのCXXCを含み、ここでCはシステイン残基を表し、Xは任意のアミノ酸を表す、項目1に記載のポリペプチド。
【0018】
5. 前記重金属を結合する領域は、2つのCXXCを含み、ここでCはシステイン残基を表し、Xは任意のアミノ酸を表す、項目1に記載のポリペプチド。
【0019】
6. 前記ファルネシル化領域は、アミノ酸配列CaaYを含み、ここでCはシステイン残基を表し、aは脂肪族アミノ酸を表し、YはC末端残基を表す、項目1に記載のポリペプチド。
【0020】
7. グリシンリッチ領域をさらに含む、項目1に記載のポリペプチド。
【0021】
8. 前記重金属を結合する領域は、配列番号2に示す配列のアミノ酸25位〜84位および155位〜215位と、少なくとも70%の相同性を有する、項目1に記載のポリペプチド。
【0022】
9. 前記ファルネシル化領域は、配列番号2に示す配列のアミノ酸389位〜392位と、少なくとも70%の相同性を有する、項目1に記載のポリペプチド。
【0023】
10.
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列の対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、項目1に記載のポリペプチド。
【0024】
11. 項目1〜10に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0025】
12.
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAの対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、ポリヌクレオチド。
【0026】
13. 配列番号1に示す配列のヌクレオチド73位〜252および463位〜645位と、少なくとも70%の相同性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド。
【0027】
14. 配列番号1に示す配列のヌクレオチド1165位〜1176位と、少なくとも70%の相同性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド。
【0028】
15. 項目11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【0029】
16. 項目11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは項目15に記載のベクターを含む、細胞。
【0030】
17. 植物細胞である、項目16に記載の細胞。
【0031】
18. 前記細胞は、前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターで形質転換された、項目16に記載の細胞。
【0032】
19. 項目11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは項目15に記載のベクターを含む、組織。
【0033】
20. 植物組織である、項目19に記載の組織。
【0034】
21. 前記組織は、前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターで形質転換された、項目19に記載の組織。
【0035】
22. 項目11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは項目15に記載のベクターを含む、トランスジェニック生物。
【0036】
23. 植物である、項目22に記載のトランスジェニック生物。
【0037】
24. 前記生物は、前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターで形質転換された、項目22に記載のトランスジェニック生物。
【0038】
25. 有害重金属を環境から除去するためのトランスジェニック植物であって、該植物は、
項目11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは項目15に記載のベクターを含む、
トランスジェニック植物。
【0039】
26. 重金属を濃縮採取するためのトランスジェニック植物であって、該植物は、
項目11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは項目15に記載のベクターを含む、
トランスジェニック植物。
【0040】
27. 重金属結合システムであって、
1)項目1〜10のいずれか1項に記載のポリペプチド;および
2)支持体、
を備える、システム。
【0041】
28. 有害重金属を環境から除去するために使用される、項目27に記載のシステム。
【0042】
29. 重金属を濃縮採取するために使用される、項目27に記載のシステム。
【0043】
30. 前記支持体は、固体支持体である、項目27に記載のシステム。
【0044】
31. 前記支持体は、膜または球状である、項目27に記載のシステム。
【0045】
32. 環境から重金属を除去する方法であって、項目25に記載のトランスジェニック植物を提供する工程、そのトランスジェニック植物を栽培する工程、およびそのトランスジェニック植物を収集する工程を包含する、方法。
【0046】
33. 希少重金属を濃縮採取する方法であって、項目26に記載のトランスジェニック植物を提供する工程、そのトランスジェニック植物を栽培する工程、およびそのトランスジェニック植物を収集する工程を包含する、方法。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0048】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0049】
本明細書において「重金属」とは、周期表の第四周期以降の金属元素をいう。そのような重金属としては、カドミウム、水銀、鉛、鉄、銅、亜鉛などが含まれる。重金属元素は、カドミウム、水銀、鉛などのように、ほとんどが動植物を含む生物に深刻な影響を与えることが知られている。しかし、鉄、銅および亜鉛などのように、必須元素として生体内で重要な役割を果たす重金属も存在する。従って、好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、そのような生体内で必須の重金属をのぞいた重金属を選択的に結合する活性を有する。本明細書において、「重金属」は、結合について言及されるとき、「重金属イオン」と互換的に使用される。
【0050】
本明細書において、「有害重金属」とは、重金属のうち、微量で、生体内において有害な作用を有するものをいい、一般に5g/cm以上の密度を持つ金属元素であり、生物に取り込まれると生物反応を阻害し、細胞機能の低下、ヒトにおいては健康被害などを引き起こす金属である。そのような有害重金属の代表としては、カドミウム(カルシウム再吸収阻害)、水銀(神経細胞への影響)およびクロム(細胞内反応の異常による発癌性)などがあるがそれらに限定されない。
【0051】
本明細書において、「重金属を結合する領域」とは、重金属と相互作用するポリペプチドの部分をいう。好ましくは、この領域は、重金属とキレートし、捕捉する。この重金属を結合する領域は、代表的に、CXXCというアミノ酸配列を有する。ここで、Cはシステインであり、そしてXは任意のアミノ酸である。好ましくは、この重金属を結合する領域は、CXXCを少なくとも2つ含む。より好ましくは、この重金属を結合する領域は、2つのCXXCを含む。さらに好ましくは、この2つのCXXCの間の距離は、110〜140アミノ酸であり得る。好ましい実施形態において、重金属を結合する領域は、ZXCXXCであり得る。ここで、Zは、メチオニンまたはロイシンであり得る。本明細書において好ましい実施形態では、重金属を結合する領域は、配列番号2の25位〜84位および155位〜215位に示す配列(好ましくは、32位〜40位および163位〜171位)と、それぞれ少なくとも70%相同なアミノ酸配列を含む。より好ましくは、重金属を結合する領域は、配列番号2の25位〜84位および155位〜215位に示す配列(好ましくは、32位〜40位および163位〜171位)に示す配列、またはその配列に保存的置換を含むもの、あるいは1以上または1もしくは数個の置換、付加もしくは欠失を含むものであり得る。より好ましくは、そのような保存的置換は、1または数個であり得る。好ましくは、CXXCにおけるシステインは置換されない。
【0052】
本明細書において、重金属を「結合(bind)」または「結合(associate)」するとは、2つ以上の系に相互作用をもたせて結びつけることをいう。本発明のポリペプチドは、そのポリペプチド中のシステイン残基中の硫黄原子が重金属イオンと配位することによって結合する。従って、本発明のポリペプチドにおいて含まれるCXXCは、そのポリペプチド中に少なくとも2つ存在し、ここに含まれる少なくとも4つのシステインは、重金属と配位することができる立体位置にあることが好ましい。
【0053】
このような重金属の結合または、結合後の代謝に関わるポリペプチドは多数報告されてきている(Pufahl,R.et al.,(1997)Science,278,853−856;Himelblau,H.,et al.(1998)Plant Physiol.117,1227−1234)これらのほとんどは、ポリペプチド内にβαββαβ(αはαへリックス、βはβストランドというタンパク質の二次構造を意味する)からなるモチーフ構造を有する。このモチーフ内に、上記CXXCというコア配列が存在する。
【0054】
本明細書において、「αヘリックス」とは、タンパク質またはポリペプチドの二次構造の一つであり、アミノ酸が3.6残基ごとに1回転したピッチが5.4Åの螺旋構造を有するエネルギー的に最も安定な構造の1つをいう。αヘリックスを形成しやすいアミノ酸としては、グルタミン酸、リジン、アラニン、およびロイシンなどが挙げられる。逆に、αヘリックスを形成しにくいアミノ酸としては、バリン、イソロイシン、プロリン、およびグリシンなどが挙げられる。また、本明細書において、「βシート」とは、タンパク質またはポリペプチドの二次構造の一つであり、ジグザグに伸びたコンホメーションを有する二本以上のポリペプチド鎖が平行に並び、ペプチドのアミド基およびカルボニル基が、それぞれ隣接するペプチド鎖のカルボニル基およびアミド基との間に水素結合を形成することによりエネルギー的に安定なシート状により合わさった構造をいう。なお、「平行βシート」とは、βシートのうち、隣接するポリペプチド鎖のアミノ酸配列の並び方が同じ方向のものをいい、「逆平行βシート」とは、βシートのうち、隣接するポリペプチド鎖のアミノ酸の並び方が逆方向のものをいう。さらに、本明細書において、「βストランド」とは、βシートを形成するジグザグに伸びたコンフォメーションを有する1本のペプチド鎖をいう。
【0055】
本明細書において、「ファルネシル化領域」とは、細胞内でファルネシル化され得る特定のアミノ酸配列を有する領域をいう。本明細書においてファルネシル化領域は、イソプレニル化領域(または部位)とも称する。ファルネシル化とは、ポリペプチドがファルネシル化ピロリン酸と反応することにより、C末端側に長鎖脂肪酸を付加し、そのポリペプチドの疎水性を増す現象をいう。疎水性を増すことにより、そのポリペプチドは、形質膜などの膜部分または他のタンパク質の疎水性部分と相互作用し、それらの部位へ局在する性質を示す。そのようなファルネシル化領域を示すアミノ酸配列は、CaaYという配列を含む。ここで、Cはシステインであり、aは脂肪族アミノ酸であり、YはC末端アミノ酸である。ここで、Yは好ましくは、メチオニンであり得る。本明細書において、機能的なファルネシル化部位は、例えば、形質膜などに結合し、局在化する機能を示すものをいう。本明細書において好ましい実施形態では、ファルネシル化領域は、配列番号2のC末端の4アミノ酸(389位〜392位)を含む。
【0056】
ファルネシル化領域は、通常、「膜結合」特性を示す。従って、この膜結合性を利用することにより、本発明のポリペプチドは、重金属の環境からの除去または希少重金属の濃縮を提供する。あるいは、ファルネシル化領域が疎水性部分に親和性を示すことから、この性質を利用して、重金属を疎水性分子にトラップするシステムを作製することに適用することができる。
【0057】
本明細書において、「膜結合領域」とは、タンパク質を細胞の膜(形質膜、ゴルジ体の膜、小胞体の膜、ミトコンドリアの膜、液胞の膜、葉緑体の膜を含む)にアンカーする領域をいう。本明細書において使用する場合、「膜結合領域」としては、「ファルネシル化領域」、「GPIアンカー結合領域」が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書において、「メタロシャペロン(metallochaperon)」とは、重金属イオンと結合し、相互作用し、重金属イオンの運搬、隔離、分配などの代謝に関与する(例えば、ポリペプチド)をいう。メタロシャペロンには、ファイトケラチンおよびメタロチオネインが含まれるがそれらに限定されない。メタロシャペロンは、重金属と錯体を形成し、通常、この錯体がトランスポーターなどを通じて液胞に運搬される。液胞に重金属が運搬されることにより、重金属の細胞に対する毒性が抑制される。ファイトケラチン生合成に関与する酵素としては、RSC1〜4が公知である。
【0059】
本明細書において、「液胞」とは、当該分野において使用されるのと同じ意味で使用され、細胞内で周囲の原形質から明確に区画され,水溶液を満たした空間をいう。動物細胞では空胞といわれることが多い。多くの正常な動物細胞や若い未分化の植物細胞では認められないかまたは小形のものがいくつかある。生長した植物細胞では細胞容積の大部分を占める大きさになる。一重の単位膜(液胞膜)で仕切られている。液胞を満たす細胞液は、無機イオン、有機酸、炭水化物、蛋白質、アミノ酸のほかに、配糖体、アルカロイドなどを含む。機能的には代謝産物の貯蔵や分解あるいは解毒を行うとともに、膨圧を発生させ植物体に力学的強度を与える。また、重金属を隔離する機能も有する。構造的には、動・植物細胞を問わず、電子顕微鏡によって観察された細胞内の諸種の袋状の構造(嚢)を形状によって区別し、大きい球状のものを液胞という(例えば、ゴルジ液胞、貪食液胞など)。本発明では、本発明のポリペプチドにより捕捉された重金属は、メタロシャペロンポリペプチドによって、液胞に運ばれ、そこで細胞の他の部分から隔離される。その隔離の過程においてメタロシャペロンポリペプチドによって運搬された重金属は、ABCトランスポーターにより液胞内に取り込まれる。そのようなABCトランスポーターは公知である。液胞に蓄積した重金属は、スルフィド(S2−)などにより、さらに安定な高分子クラスター(高分子量重金属(例えば、Cd)/S複合体)を形成し(Toppi LS et al(1999),Environ.Exp.Bot.41,105−130)、最終的に液胞内に閉じこめられたまま落葉などにより植物体外へと処理されるか、根などに蓄積される。
【0060】
このように、重金属を生体内で処理する機構には、本発明のポリペプチドのような疎水性相互作用により一定箇所に局在化させることのほか、従来知られるように、メタロシャペロンにより排出または別の安全な箇所へと移動させること、および生体内の生命維持に必要な部分から重金属を隔離させることなどの機構があった。
【0061】
本発明のポリペプチドにより膜に一時的または恒常的に固定された重金属は、そのままにしておいて重金属を処理することも可能であるし、あるいはさらなる処理または生体内の機構を利用することによって処理をすることも可能である。そのようなさらなる機構を組み合わせたシステムとしては、例えば、上述のメタロシャペロン(例えば、メタロチオネインまたはファイトケラチンなど)と本発明のポリペプチドとの組み合わせを含むシステムが挙げられる。
【0062】
そのようなシステムを本明細書の開示に従って利用することにより、例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列と、そのようなメタロシャペロンをコードする核酸配列、および/またはそのような重金属の生合成に関与する酵素をコードする核酸配列とを別々にまたは一緒に発現するようなベクターを作製し、そのベクターを生物(例えば、植物)の細胞に導入して、機能的に重金属を液胞に運搬することによって、さらにより効率的な重金属の排除または濃縮を行うことができる。
【0063】
本明細書において使用される用語「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0064】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。用語「核酸」はまた、本明細書において、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を暗黙に包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
【0065】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、その発現を左右する調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/あるいは「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0066】
本明細書では塩基配列の同一性の比較および相同性の算出は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0067】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
【0068】
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体である。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
【0069】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
【0070】
本明細書中において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。
【0071】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。
【0073】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。本発明の1実施形態である重金属を結合する機能を有するタンパク質の場合は、その生物学的活性は、少なくとも重金属を結合する活性を包含する。別の実施形態では、生物学的活性としては、重金属に結合する活性および形質膜のような疎水性部分に結合する能力の両方が挙げられる。
【0074】
そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。重金属に結合する活性は、本明細書に記載されるように測定することができ、例えば、円偏光色性(CD)測定法を利用することができる。具体的にはタンパク質は、金属イオンと相互作用(結合を含む)すると、ほぼ間違いなくその構造を変化させる。よって構造変化をモニターすることで、金属イオンとの結合を測定することができる。
【0075】
円偏光二色性スペクトルは、タンパク質の構造により独特のスペクトルを与える。スペクトルは、おもにタンパク質を作るペプチド結合の繰り返し構造に由来する。スペクトルが変化したということは、すなわちタンパク質主鎖の繰り返し構造が変化したということになる。金属イオンが存在しないとするときとで、タンパク質のスペクトルを比べることにより、タンパク質が金属イオンと相互作用して構造を変化させた(すなわち結合した)ということを判断することができる。形質膜への結合能力は、例えば、目的のポリペプチドに緑色蛍光タンパク質(GFP)のようなマーカー部分をコードするアミノ酸配列を融合させたものを細胞内で発現させ、その局在状況をそのマーカーの検出により測定することができる。また、疎水性部分への結合は、このほかに、疎水性部分への結合を担うタンパク質内部のアミノ酸配列を人工的に改変し、機能しなくなるようにすることでも確かめられる。結合領域が機能しているタンパク質と、機能していないタンパク質とをそれぞれ細胞内で発現させ、局在部位をモニターして比べることで確認することもできる。
【0076】
本発明のポリペプチドを製造する方法としては、例えば、そのポリペプチドを産生する初代培養細胞または株化細胞を培養し、培養上清などから単離または精製することによりそのポリペプチドを得る方法が挙げられる。あるいは、遺伝子操作手法を利用して、そのポリペプチドをコードする遺伝子を適切な発現ベクターに組み込み、これを用いて発現宿主を形質転換し、この形質転換細胞の培養上清または細胞抽出物から組換えポリペプチドを得ることができる。上記宿主細胞は、生理活性を保持するポリペプチドを発現するものであれば、特に限定されず、従来から遺伝子操作において利用される各種の宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母、動物細胞など)を用いることが可能である。このようにして得られた細胞に由来するポリペプチドは、天然型のポリペプチドと実質的に同一の作用を有する限り、アミノ酸配列中の1以上のアミノ酸が置換、付加および/または欠失していてもよく、糖鎖が置換、付加および/または欠失していてもよい。
【0077】
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0078】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol. 157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0079】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0080】
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0081】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0082】
「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。より好ましくは、本発明のポリペプチドは、重金属結合領域および/またはファルネシル化領域におけるシステインが保存されるように改変され得る。
【0083】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0084】
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログが付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
【0085】
本明細書において使用されるポリペプチドの核酸形態は、そのポリペプチドのタンパク質形態を発現し得る核酸分子をいう。この核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性(重金属を結合する活性、膜のような疎水性部分に結合する活性などを含む)を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
【0086】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0087】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、癌マーカー、神経疾患マーカーなど)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0088】
高分子構造(例えば、ポリペプチド構造)は種々のレベルの構成に関して記述され得る。この構成の一般的な議論については、例えば、Albertsら、MolecularBiology of the Cell(第3版、1994)、ならびに、CantorおよびSchimmel、Biophysical Chemistry PartI:The Conformation of Biological Macromolecules(1980)を参照。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」とは、ポリペプチド内の局所的に配置された三次元構造をいう。これらの構造はドメインとして一般に公知である。ドメインは、ポリペプチドの緻密単位を形成し、そして代表的には50〜350アミノ酸長であるそのポリペプチドの部分である。代表的なドメインは、βシート(βストランドなど)およびα−ヘリックスのストレッチ(stretch)のような、部分から作られる。「三次構造」とは、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。「四次構造」とは、独立した三次単位の非共有的会合により形成される三次元構造をいう。異方性に関する用語は、エネルギー分野において知られる用語と同様に使用される。したがって、本発明のポリペプチドは、重金属結合能および形質膜結合能を有するような高次構造を有する限り、どのようなアミノ酸配列のポリペプチドをも包含し得る。
【0089】
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。
【0090】
本発明において利用され得る一般的な分子生物学的手法としては、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols inMolecular Biology、 Wiley、 New York、NY;Sambrook Jら (1987) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYなどを参酌して当業者であれば容易に実施をすることができる。
【0091】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターとしては、原核生物細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体等の宿主細胞において自律複製が可能であるか、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0092】
「発現ベクター」は、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子など)のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、植物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。植物の場合、本発明に用いる植物の発現ベクターはさらにT−DNA領域を有し得る。T−DNA領域は、特にアグロバクテリウムを用いてその植物を形質転換する場合に遺伝子の導入の効率を高める。
【0093】
「組換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体等の宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0094】
原核細胞に対する「組換えベクター」としては、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもRoche Molecular Biochemicalsより市販)、pKK233−2(Pharmacia)、pSE280(Invitrogen)、pGEMEX−1(Promega)、pQE−8(QIAGEN)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200(Agric.Biol.Chem.,48,669(1984))、pLSA1(Agric.Biol.Chem.,53,277(1989))、pGEL1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985))、pBluescript II SK+(Stratagene)、pBluescript II SK(−)(Stratagene)、pTrs30(FERM BP−5407)、pTrs32(FERM BP−5408)、pGHA2(FERM BP−400)、pGKA2(FERM B−6798)、pTerm2(特開平3−22979、US4686191、US4939094、US5160735)、pEG400[J.Bacteriol.,172,2392(1990)]、pGEX(Pharmacia)、pETシステム(Novagen)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pTrxFus(Invitrogen)、pMAL−c2(NewEngland Biolabs)、pUC19[Gene,33,103(1985)]、pSTV28(宝酒造)、pUC118(宝酒造)、pPA1(特開昭63−233798)などが例示される。
【0095】
酵母細胞に対する「組換えベクター」としては、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15などが例示される。
【0096】
動物細胞に対する「組換えベクター」としては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107(特開平3−22979、Cytotechnology,3,133(1990))、pREP4(Invitrogen)、pAGE103(J.Biochem.,101,1307(1987))、pAMo、pAMoA(J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993))などが例示される。
【0097】
植物細胞に対する「組換えベクター」としては、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクターなどが例示される。
【0098】
昆虫細胞に対する「組換えベクター」としては、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(すべてInvitrogen)などが例示される。
【0099】
「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。ターミネーターとしては、CaMV35Sターミネーター、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Tnos)、タバコPR1a遺伝子のターミネーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0100】
本明細書において用いられる「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
【0101】
本明細書において、遺伝子の発現について用いられる場合、一般に、「部位特異性」とは、生物(例えば、植物)の部位(例えば、植物の場合、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実など)におけるその遺伝子の発現の特異性をいう。「時期特異性」とは、生物(たとえば、植物)の発達段階(例えば、植物であれば生長段階(例えば、発芽後の芽生えの日数))に応じたその遺伝子の発現の特異性をいう。そのような特異性は、適切なプロモーターを選択することによって、所望の生物に導入することができる。
【0102】
本明細書において、本発明のプロモーターの発現が「構成的」であるとは、生物のすべての組織において、その生物の生長の幼若期または成熟期のいずれにあってもほぼ一定の量で発現される性質をいう。具体的には、本明細書の実施例と同様の条件でノーザンブロット分析したとき、例えば、任意の時点で(例えば、2点以上(例えば、5日目および15日目))の同一または対応する部位のいずれにおいても、ほぼ同程度の発現量がみられるとき、本発明の定義上、発現が構成的であるという。構成的プロモーターは、通常の生育環境にある生物の恒常性維持に役割を果たしていると考えられる。本発明のプロモーターの発現が「ストレス応答性」であるとは、少なくとも1つのストレスが生物体に与えられたとき、その発現量が変化する性質をいう。特に、発現量が増加する性質を「ストレス誘導性」といい、発現量が減少する性質を「ストレス減少性」という。「ストレス減少性」の発現は、正常時において、発現が見られることを前提としているので、「構成的」な発現と重複する概念である。これらの性質は、生物の任意の部分からRNAを抽出してノーザンブロット分析で発現量を分析することまたは発現されたタンパク質をウェスタンブロットにより定量することにより決定することができる。ストレス誘導性のプロモーターを本発明のポリペプチドをコードする核酸とともに組み込んだベクターで形質転換された植物または植物の部分(特定の細胞、組織など)は、そのプロモーターの誘導活性をもつ刺激因子を用いることにより、ある条件下での重金属の除去または濃縮を行うことができる。
【0103】
「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ得る。植物において使用する場合、エンハンサーとしては、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域が好ましい。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
【0104】
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0105】
本発明を植物において利用する場合、植物細胞への植物発現ベクターの導入には、当業者に周知の方法、例えば、アグロバクテリウムを介する方法および直接細胞に導入する方法、が用いられ得る。アグロバクテリウムを介する方法としては、例えば、Nagelらの方法(Nagel ら(1990)、 Microbiol. Lett.,67,325)が用いられ得る。この方法は、まず、例えば植物発現ベクターでエレクトロポレーションによってアグロバクテリウムを形質転換し、次いで、形質転換されたアグロバクテリウムをGelvinら(Gelvinら編(1994)、 Plant Molecular Biology Manual (Kluwer Academic Press Publishers))に記載の方法で植物細胞に導入する方法である。植物発現ベクターを直接細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション法(Shimamotoら(1989)、 Nature、 338:274−276;およびRhodesら(1989)、 Science、 240:204−207を参照のこと)、パーティクルガン法(Christouら(1991)、Bio/Technology9:957−962を参照のこと)ならびにポリエチレングリコール(PEG)法(Dattaら(1990)、 Bio/Technology 8:736−740を参照のこと)が挙げられる。これらの方法は、当該分野において周知であり、形質転換する植物に適した方法が、当業者により適宜選択され得る。
【0106】
植物発現ベクターを導入された細胞は、まずカナマイシン耐性などの薬剤耐性で選択される。次いで、当該分野で周知の方法により、植物組織、植物器官および/または植物体に再分化され得る。さらに、植物体から種子が取得され得る。導入した遺伝子の発現は、ノーザンブロット法またはPCR法により、検出し得る。必要に応じて、遺伝子産物たるタンパク質の発現を、例えば、ウェスタンブロット法により確認し得る。
【0107】
植物において本発明を利用する場合、ベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、以下を用いた形質転換などが挙げられる:アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977、特開2001−29075、特開2000−245485)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等が例示される。
【0108】
本発明は、動物または微生物など、他の生物においても利用することができる。そのような動物または微生物における利用のための技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら (1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。
【0109】
「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれ、本明細書においてそれらの形態をすべて包含するが、特定の文脈において特定の形態を指し得る。
【0110】
原核細胞としては、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属等に属する原核細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485、Escherichiacoli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli NY49、Escherichia coli BL21(DE3)、Escherichia coli BL21(DE3)pLysS、Escherichia coli HMS174(DE3)、Escherichia coli HMS174(DE3)pLysS、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium ammmoniagenes、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticumATCC14066、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacteriumammoniaphilum ATCC15354、Pseudomonassp.D−0110などが例示される。
【0111】
酵母細胞としては、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、クルイベロミセス属、トリコスポロン属、シワニオミセス属、ピチア属等に属する酵母菌株を挙げることができ、具体的には、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Trichosporon pullulans、Schwanniomycesalluvius、Pichia pastoris等を挙げることができる。組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法等が例示される。
【0112】
動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト大腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト大腸癌細胞株としてはHCT−15などが例示される。
【0113】
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞、Trichoplusia niの卵巣細胞、カイコ卵巣由来の培養細胞などを用いることができる。Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞としてはSf9、Sf21(バキュロウイルス・イクスプレッション・ベクターズ ア・ラボラトリー・マニュアル)など、Trichoplusia niの卵巣細胞としてはHigh 5、BTI−TN−5B1−4(インビトロジェン社製)など、カイコ卵巣由来の培養細胞としてはBombyx mori N4などが例示される。
【0114】
植物細胞としては、本明細書において以下に記載されるものが挙げられ、ポテト、タバコ、トウモロコシ、イネ、アブラナ、大豆、トマト、ニンジン、小麦、大麦、ライ麦、アルファルファ、亜麻、シダ、ペチュニア、ホテイアオイ、アズキのほか、木本植物(例えば、ポプラ、コーヒー、スギ、ヒノキ、ユーカリ、マングローブなど)の細胞などを挙げることができる。組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であれば、本明細書において他の場所で詳述したように、いずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977、特開2001−29075、特開2000−245485)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等が例示される。
【0115】
本明細書において用いられる「植物」とは、植物界に属する生物の総称であり、クロロフィル、かたい細胞壁、豊富な永続性の胚的組織の存在,および運動する能力がない生物により特徴付けられる。代表的には、植物は、細胞壁の形成・クロロフィルによる同化作用をもつ顕花植物をいう。「植物」は、単子葉植物および双子葉植物のいずれも含む。好ましい植物としては、樹木、芝生、雑草などが挙げられ、例えば、シロイヌナズナ、アブラナおよびヒマワリが挙げられるがそれらに限定されない。本発明の植物は、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、ソルガムなどのイネ科に属する単子葉植物、、タバコ、ピーマン、ナス、メロン、トマト、サツマイモ、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、ニンジン、キウリ、柑橘類、白菜、レタス、モモ、ジャガイモおよびリンゴであってもよい。好ましい植物は樹木、芝生、雑草などに限られず、花、作物も含まれる。特に他で示さない限り、植物は、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、および種子のいずれをも意味する。植物器官の例としては、根、葉、茎、および花などが挙げられる。植物細胞の例としては、カルスおよび懸濁培養細胞が挙げられる。特定の実施形態では、植物は、植物体を意味し得る。
【0116】
別の実施形態において、本発明において使用され得る植物種の例としては、ナス科、イネ科、アブラナ科、バラ科、マメ科、ウリ科、シソ科、ユリ科、アカザ科、セリ科、イネ科、アブラナ科の植物が挙げられる。
【0117】
アブラナ科の植物の例としては、Raphanus、Brassica、Arabidopsis、Wasabia、またはCapsellaに属する植物が挙げられ、例えば、大根、アブラナ、シロイヌナズナ、ワサビ、ナズナなどを含む。
【0118】
イネ科の植物の例としては、Oryza、Hordenum、Secale、Scccharum、Echinochloa、またはZeaに属する植物が挙げられ、例えば、イネ、オオムギ、ライムギ、ヒエ、モロコシ、トウモロコシなどを含む。
【0119】
木本植物の例としては、ポプラ、コーヒー、スギ、ヒノキ、ユーカリ、マングローブなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0120】
本発明の方法およびシステムに用いられる植物は、好ましくは木本植物であり、より好ましくは、ポプラ、ユーカリなどであるがこれらに限定されない。
【0121】
本明細書において「動物」は、当該分野において最も広義で用いられ、脊椎動物および無脊椎動物を含む。動物としては、哺乳綱、鳥綱、爬虫綱、両生綱、魚綱、昆虫綱、蠕虫綱などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0122】
本発明のポリペプチド、システム、組成物および方法は、単子葉植物だけでなく双子葉植物を含む植物全体、および動物を含む他の生物において機能することが企図される。なぜなら、本発明のポリペプチドは、疎水性相互作用を通じて形質膜に結合すること、および重金属への結合の機構は生物においてほぼ共通すると考えられるからである。
【0123】
本明細書において、生物の「組織」とは、細胞の集団であって、その集団において一定の同様の作用を有するものをいう。従って、組織は、臓器(器官)の一部であり得る。臓器(器官)内では、同じ働きを有する細胞を有することが多いが、微妙に異なる働きを有するものが混在することもあることから、本明細書において組織は、一定の特性を共有する限り、種々の細胞を混在して有していてもよい。
【0124】
本明細書において、「器官(臓器)」とは、1つ独立した形態をもち、1種以上の組織が組み合わさって特定の機能を営む構造体を形成したものをいう。植物では、カルス、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実などが挙げられるがそれらに限定されない。動物では、胃、肝臓、腸、膵臓、肺、気管、鼻、心臓、動脈、静脈、リンパ節(リンパ管系)、胸腺、卵巣、眼、耳、舌、皮膚等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0125】
本明細書において、「トランスジェニック」とは、特定の遺伝子をある生物に組み込むことまたはそのような遺伝子が組み込まれた生物(例えば、植物または動物(マウスなど)を含む)をいう。
【0126】
本明細書では、植物の栽培は当該分野において公知の任意の方法により行うことができる。植物の栽培方法は、例えば、モデル植物の実験プロトコール−イネ・シロイヌナズナ編−」:細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ4;イネの栽培法(奥野員敏)pp.28−32、およびアラビドプシスの栽培法(丹羽康夫)pp.33−40(監修 島本功、岡田清孝)に例示されており、当業者であれば容易に実施することができることから本明細書では詳述する必要はない。例えば、シロイヌナズナの栽培は土耕、ロックウール耕、水耕いずれでも行うことができる。白色蛍光灯(6000ルクス程度)の下、恒明条件で栽培すれば播種後4週間程度で最初の花が咲き、開花後16日程度で種子が完熟する。1さやで40〜50粒の種子が得られ、播種後2〜3ケ月で枯死するまでの間に10000粒程度の種子が得られる。種子の休眠期間は短く、完熟種子は1週間程度乾燥させれば吸水後2〜3日で発芽する。
【0127】
木本植物の栽培方法もまた当該分野において周知慣用技術であり、たとえば、Molecular Biology of Woody Plants(Vol.I,II)(ed.S.Mohan Jain,Subhash C.Minocha)、Kluwer Academic Publishers、2000に記載されている。
【0128】
植物細胞の培養、分化および再生のためには、当該分野で公知の手法および培地が用いられる。このような培地には、例えば、Murashige−Skoog(MS)培地、GaMborg B5(B)培地、White培地、Nitsch&Nitsch(Nitsch)培地などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらの培地は、通常、植物生長調節物質(植物ホルモン)などが適当量添加されて用いられる。
【0129】
本明細書において、植物の場合、その植物を「再分化」するとは、個体の一部分から個体全体が復元される現象を意味する。例えば、再分化により、細胞(葉、根など)のような組織片から器官または植物体が形成される。
【0130】
形質転換体を植物体へと再分化する方法は当該分野において周知である。そのような方法としては、Rogers et al.,Methods in Enzymology 118:627−640 (1986); Tabataet al.,PlantCell Physiol.,28:73−82(1987);Shaw,PlantMolecular Biology:A practical approach.IRL press (1988);Shimamoto et al.,Nature 338:274 (1989); Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1995)など。木本植物については、Molecular Biologyof Woody Plants(Vol.I,II) (ed.S.Mohan Jain,Subhash C.Minocha)、Kluwer Academic Publishers、(2000)に記載されている。木本植物では、たとえば、コーヒーについては、Plant Cell Reports(1999)19:106−110に詳細に記載されており、具体的には、本明細書において実施例において記載されるように実施することができる。従って、当業者は、上記周知方法を目的とするトランスジェニック植物に応じて適宜使用して、再分化させることができる。このようにして得られたトランスジェニック植物には、目的の遺伝子が導入されており、そのような遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
【0131】
本発明の生物が、動物の場合、トランスジェニック生物は、マイクロインジェクション法(微量注入法)、ウィルスベクター法、ES細胞法(胚性幹細胞法)、精子ベクター法、染色体断片を導入する方法(トランスゾミック法)、エピゾーム法などを利用したトランスジェニック動物の作製技術を使用して作製することができる。そのようなトランスジェニック動物の作成技術は当該分野において周知である。
【0132】
形質転換体が本発明における所望の活性(例えば、重金属を結合する活性、形質膜結合活性など)を有するかどうかは、本明細書に記載したアッセイを用いて測定することができる。
【0133】
本明細書において「環境」とは、対象生物(例えば、ヒト)が生活をしていくうえで関わりをもつ自然界の空間をいう。従って、そのような環境には、いわゆる自然環境、社会環境といった生体外の環境から、血液循環や神経伝達系などの生体内環境が包含され得る。
【0134】
本明細書において使用される「支持体」とは、本発明のポリペプチドを担持することができる物質をいう。支持体の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用されるポリペプチドに結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
【0135】
支持体として使用するための材料には、固体表面を形成し得る任意の物質が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)以下が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、支持体は、疎水性結合を行う部分を含む。支持体は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。あるいは、支持体として、ニトロセルロース膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。
【0136】
(本発明のポリペプチドの分離)
重金属は、生物にとって高度に毒性である可能性がある。植物は損傷を最小限にする能力を有するが、その分子メカニズムは詳細にはわかっていない。アラビドプシスにおいてカドミウム応答性遺伝子をスクリーニングして、本発明者らは、金属結合タンパク質であると推定されるCdI19をコードする遺伝子を同定した。この遺伝子は、酵母細胞に導入された場合、カドミウム曝露に対する顕著な耐性を付与する。本件明細書において、本発明者らは、円偏光二色性(CD)分析によって明らかなように、細菌において発現させたCdI19が、そのCXXCモチーフにおいて直接カドミウムと相互作用し、そしてグリーン蛍光タンパク質との融合タンパク質のBY2細胞における異種発現によって、CdI19がもっぱら形質膜に局在することを、開示する。ノーザンブロット分析によって、CdI19転写物が、カドミウムばかりではなく、Hg、FeおよびCuの2価カチオン形態によっても誘導されることを示した。CdI19プロモーター::GUSを発現するトランスジェニックアラビドプシスを使用する組織化学的アッセイによって、CdI19が葉柄、花柄、および根組織の維管束において発現することが示された。CdI19 cDNAの過剰発現によって、トランスジェニックアラビドプシスがカドミウム耐性となった。これらの結果は、CdI19が重金属の恒常性の維持、および/または遊離の重金属イオンの細胞内への流入に対する最初の障壁として作用する能力を形質膜に与えることによる解毒において重要な役割を担うことを示唆する。
【0137】
多くの遷移金属は、植物の栄養のために必須である。しかし、毒性の可能性があるために、これらイオンの厳密な調節が、植物細胞にとって重要である。金属の恒常性を維持するために、植物は、必須金属イオンの適切な濃度を確保するため、そして非必須形態の金属の蓄積、分布および隔離を制御することによる、その除去のための多様なメカニズムを進化させた。(Clemens,S.(2001)Planta,212,475−486.;di Toppi,L.S.およびGabbrielli,R.(1999)Environmental and experimental botany,41,105−130.17;Zenk,M.H.(1996)Gene,179,21−30)。例えば、植物は、キレート剤(小ペプチド、有機酸、およびアミノ酸を含む)を含み、このキレート剤は、遊離の金属イオンに結合する。これらキレート剤は、細胞質内の金属イオンを緩衝化することによって、金属の解毒に寄与する(Clemens,S.(2001)Planta,212,475−486)。公知の金属器レート剤の第1のクラスは、ファィトケラチンおよびメタロチオネインである。ファィトケラチンのチオール部分であるシステインに富む小ペプチドを、グルタチオンおよびキレート金属イオン(例えば、Cd、Cu、ZnおよびAg)から酵素合成した。例えば、無細胞抽出液内において、97%までのカドミウムがファィトケラチンと結合することが、実験的に示されている(Zenk,M.H.(1996)Gene,179,21−30)。メタロチオネインは、同様にシステインに富むタンパク質であり、おもに遊離のCu(代表的には、その細胞質濃度が金属排除によって非常に低レベルに維持される(10−18M))に結合する低分子量のタンパク質である(O’Halloran,T.V.およびCulotta,V.C.(2000)J.Biol.Chem.275,25057−25060;Rae,T,D,.Schmidt,P.J.,Pufhal,R.A.,Culotta,V.C.およびO’Halloran,T.V.(1999)Science.284,805−808)。ファィトケラチンおよびメタロチオネインが金属の解毒の最終工程において機能することが、一般的に認められているが、吸収された金属イオンが植物細胞においてどのような経路を通るのかについては、限られた情報しかない。
【0138】
金属イオンの細胞内輸送において、可溶性の金属レセプタータンパク質は、「メタロシャペロン」として知られる。ATX1は、Saccharomycescerevisiaeにおいて酸化防止タンパク質として最初に単離され(Lin,S.およびCulotta,V.C.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,3784−3788)、そしてCuイオンを、細胞質内のポストゴルジ小胞の膜中の銅トランスポーターに送達することが報告された。ATX1は、MXCXXC配列中の2つのシステインによって、1つのCuイオンに結合する(ここで、Mはメチオニンであり、Xは任意のアミノ酸、そしてCはシステインである(Pufahi,R.,Singer,C.,Peariso,K.L.,Lin,S.J.,Schmidt,P.,Fahrni,C.,Culotta,V.C.,Penner−Hahn,J.E.およびO’Halloran,T.V.(1997)Science,278,853−856)。このモチーフは、多くの金属結合タンパク質(CCC2、P型銅トランスポーター(Yuan,D.S.,Stearman,R.,Dancis,A.,Dunn,T.,Beeler,T.およびKlausner,R.D.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,2632−2636)、MerP水銀イオンの細菌のキャリア(Powlowski,J.およびSahlman,L.(1999)J Biol.Chem.274,33320−33326;Silver,S.およびPhung,L.T.(1996)Annu.Rev.Microbiol.50,753−789)、およびCCSSOD1の銅シャペロン(Culotta,V.C.,Klomp,L.W.,Strain,J.,Casareno,R.L.,Krems,B.およびGitlin,J.D.(1997)J.Biol.Chem.272,23469−23472)において見出された。
【0139】
重金属代謝がどのように調節されているのかを解明するために、本発明者らは以前に、カドミウムストレスに供されたアラビドプシスの実生におけるカドミウム誘導性遺伝子をスクリーニングした(Suzuki,N.,Koizumi,N.およびSano,H.(2001)Plant Cell and Environment,24,1177−1189)。同定した31個の遺伝子のうち、本発明者らは、カドミウム耐性を酵母細胞に付与する金属結合タンパク質推定されるタンパク質をコードする特定のクローンを見出した(Suzuki,N.,Koizumi,N.およびSano,H.(2001)前出)。
【0140】
本明細書において、その産物CdI19を構造分析したことによって、CdI19が2つの金属結合モチーフCXXC、およびカルボキシル末端にコンセンサスファルネシル化領域(イソプレニル化部位)を含むことが示された。本明細書において、本発明者らは、CdI19が、原形質膜に局在するメタロシャペロンとして機能すること、およびカドミウムに直接結合し、そして重金属ストレスの際に増加することの実質的な証拠を提供する。
【0141】
(好ましい実施形態の説明)
1つの局面において、本発明は、重金属を結合する領域およびファルネシル化領域を含む、ポリペプチドを提供する。従来、重金属を結合する領域を含むポリペプチドは知られていたが、ファルネシル化領域コンセンサス配列を含むものはあまり知られていない。また、そのファルネシル化領域が機能するポリペプチドはまったく知られていなかった。従って、本発明は、重金属を結合し、かつ、機能的なファルネシル化部位を含むポリペプチドとしてははじめてのポリペプチドを提供する。重金属を結合する能力は、本明細書において記載される技術または当該分野において周知であり、慣用される技術を用いて測定することができる。従って、本発明の好ましい実施形態において、そのような重金属を結合する能力は、モル比で約0.2以上、より好ましくは約0.5以上、さらにより好ましくは約0.8以上、もっとも好ましくは約0.9以上であり得る。
【0142】
好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、形質膜結合能を有する。形質膜結合能は、本明細書において記載される技術または当該分野において周知であり、慣用される技術をもちいて測定することができる。形質膜結合能は、形質膜への局在化を、例えば、GFPのような標識タンパク質との融合したものを発現させ、その標識を見ることによって観測することができる。従って、好ましい実施形態では、形質膜結合能を有するポリペプチドは、形質膜において、拡散による単純分布を超える分布を呈示する。好ましくは、形質膜と細胞内の形質膜以外の部分との分布比が約2:1以上のもの、より好ましくは、約5:1以上のもの、さらに好ましくは約10:1以上のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、形質膜結合能を有するポリペプチドには、形質膜における存在が見られるポリペプチドもまた含まれ得る。
【0143】
本発明のポリペプチドにおいて、上記重金属を結合する領域は、少なくとも1つのCXXCを含み、ここでCはシステイン残基を表し、Xは任意のアミノ酸を表す。システイン残基の硫黄原子が重金属イオンと配位することによってこの領域は重金属への結合能を示す。このCXXC配列は、好ましくはMXCXXCという配列であり得、ここでMはメチオニンを表す。このCXXC配列は、好ましくは、上記重金属を結合する領域において、少なくとも2つ含まれる。より好ましくは、上記重金属を結合する領域において、2つのCXXC配列が含まれる。2つ以上のCXXC配列を含むことにより、少なくとも4つの硫黄原子が金属イオンとの配位に利用され得、それにより、金属イオンとポリペプチドとの強固な結合を生じる。
【0144】
1つの好ましい実施形態において、この重金属を結合する領域は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列のうち、配列番号2の25位〜84位および155位〜215位に示す配列(好ましくは、32位〜40位および163位〜171位)と、少なくとも約70%の、好ましくは約80%の、より好ましくは約90%の相同性を有する配列を含む。もっとも好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号2の25位〜84位および155位〜215位に示す配列(さらに好ましくは、32位〜40位および163位〜171位)の配列を含む。
【0145】
1つの実施形態において、上記ファルネシル化領域は、アミノ酸配列CaaYを含み得る。ここで、Cはシステインであり、aは脂肪族アミノ酸(天然のアミノ酸である場合、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)であり、YはC末端の任意のアミノ酸である。好ましくは、Yは、メチオニンであり得る。
【0146】
1つの好ましい実施形態において、この重金属を結合する領域は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列のうち、配列番号2の25位〜84位および155位〜215位に示す配列(好ましくは、32位〜40位および163位〜171位)と、少なくとも約70%の、好ましくは約80%の、より好ましくは約90%の相同性を有する配列を含む。もっとも好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号2の25位〜84位および155位〜215位に示す配列(好ましくは、32位〜40位および163位〜171位)の配列を含む。
【0147】
別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、グリシンリッチ領域をさらに含む。
【0148】
別の実施形態において、ファルネシル化領域は、配列番号2の389位〜392位に示す配列とそれぞれ、少なくとも約70%の、好ましくは約80%の、より好ましくは約90%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0149】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、25位〜84位および155位〜215位に示す配列(好ましくは、32位〜40位および163位〜171位)およびに配列番号2の389位〜392位(ファルネシル化領域)を含む。
【0150】
別の好ましい実施形態において、本発明は、以下のポリペプチドを提供する:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列の対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド。
【0151】
そのような配列としては、配列番号20、22に記載される配列が挙げられるがそれらに限定されない。また、ゲノムデータベース(例えば、イネゲノム、アラビドプシスゲノム、ヒトゲノムなどのデータベース)に対して、本発明のポリペプチドの配列のすべてまたは一部をもとに相同性検索を行って得られた相同配列であって、本発明のポリペプチドの生物学的活性(重金属を結合する活性、疎水性部分への結合能力などを含む)を有するものもまた、本発明の範囲内にあることが当業者には理解される。
【0152】
他の実施形態において、本発明のポリペプチドは、天然のアミノ酸以外のアミノ酸またはアミノ酸アナログを含み得る。本発明のポリペプチドはまた、ペプチドアナログであり得る。好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号2のポリペプチドの配列に対して、同一性が少なくとも約70%、より好ましくは約80%、さらに好ましくは約90%、さらにより好ましくは約95%であるアミノ酸配列を有し得る。
【0153】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、生物学的活性として、重金属を結合する活性および形質膜に結合する能力を有する。好ましくは、本発明のポリペプチドは、重金属を選択的に結合する。そのような選択的に結合される重金属は、生体にとって有害な重金属であり得る。
【0154】
別の局面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0155】
好ましくは、本発明は、(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAの対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0156】
そのようなポリヌクレオチドの配列としては、配列番号19、21のような配列が挙げられるがそれらに限定されない。
【0157】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に示す配列のヌクレオチド73位〜252位および463位〜645位(好ましくは、94位〜120位および487位〜513位)と、少なくとも約70%の、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは約90%、さらに好ましくは約95の相同性を有する配列を含む。別の好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に示す配列のヌクレオチド73位〜252位および463位〜645位(好ましくは、94位〜120位および487位〜513位)において、1または数個の置換、付加もしくは置換を、好ましくは保存的置換またはサイレント置換をコードする配列を含む配列を含み得る。より好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に示す配列のヌクレオチドヌクレオチド73位〜252位および463位〜645位(好ましくは、94位〜120位および487位〜513位)を含む。
【0158】
別の好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に示す配列のヌクレオチド1165位〜1176位と、少なくとも約70%の、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは約90%、さらに好ましくは約95の相同性を有する配列を含む。別の好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に示す配列のヌクレオチド1165位〜1176位において、1または数個の置換、付加もしくは置換を、好ましくは保存的置換またはサイレント置換をコードする配列を含む配列を含み得る。より好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に示す配列のヌクレオチド1165位〜1176位を含む。
【0159】
より好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に示す配列のヌクレオチド73位〜252位および463位〜645位(好ましくは、94位〜120位および487位〜513位)およびヌクレオチド1165位〜1176位と、それぞれ少なくとも約70%の、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは約90%、さらに好ましくは約95の相同性を有する配列を含む。別の好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に示す配列のヌクレオチド1165位〜1176位において、それぞれ1または数個の置換、付加もしくは置換を、好ましくは保存的置換またはサイレント置換をコードする配列を含む配列を含み得る。より好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に示す配列のヌクレオチドヌクレオチド73位〜252位および463位〜645位(好ましくは、94位〜120位および487位〜513位)およびヌクレオチド1165位〜1176位を含む。
【0160】
別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードする配列のアンチセンス配列を含むポリヌクレオチドであり得る。アンチセンス配列を含むことにより、そのようなポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドの発現を低減させることができる。
【0161】
他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、ヌクレオチドのアナログを含み得る。ヌクレオチドアナログを含むそのようなポリヌクレオチドは、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドへと翻訳され得るが、翻訳されなくてもよい。
【0162】
別の局面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。そのようなベクターは、本発明のポリヌクレオチドを含むことができるものであれば、どのようなポリヌクレオチドでもよい。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体など、好ましくは植物の宿主細胞において自律複製が可能であるか、または染色体中への組込みが可能なベクターあるいは一過性のベクターが挙げられる。そのようなベクターとしては、発現ベクター、組換えベクターまたはクローニングベクターが挙げられる。好ましくは、そのようなベクターは発現ベクターであり得る。そのようなベクターは、プロモーターを含み得る。プロモーターとしては、宿主細胞において、プロモーター活性を有するか、または転写誘導活性を有するように誘導され得るものであれば、どのようなものでも使用可能である。そのようなプロモーターは、構成的に誘導性であるものも、特異的に誘導性であるものでもよい。そのような特異性は、部位(組織)(例えば、葉、根、果実など)特異的なものであっても、時期特異的なものであってもよい。あるいは、そのような特異性は、ストレス特異的(例えば、ある薬剤に対する特異性など)なものであってもよい。
【0163】
本発明のベクターはまた、エンハンサーなどの他の転写調節エレメントおよび/または翻訳調節エレメント、および/または翻訳後調節エレメントを含み得る。これらプロモーターなどの転写、翻訳および翻訳後の調節エレメントは、ベクター中で、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは本発明のポリヌクレオチドと作動可能に連結されるように配置される。
【0164】
本発明のベクター中に本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは本発明のポリヌクレオチドを導入する方法は、当該分野において周知慣用の技術を用いて過度の実験を要することなく、当業者が実施することができる。そのような周知慣用技術(例えば、分子生物学の技術、微生物学技術など)は、本明細書において記載されているか、または本明細書において参考として援用される文献において記載されている。また、そのような技術の例示は、本明細書の実施例において記載されているが、そのような技術は、周知慣用技術の例示であり、本発明において用いられる方法は、そのような技術に限定されると解釈されるべきではない。
【0165】
別の局面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む細胞を提供する。そのような細胞は、そのポリヌクレオチドまたはベクターが機能するような形態でそのポリヌクレオチドまたはベクターを含む。従って、そのポリヌクレオチドまたはベクターが機能する限り、そのベクターは、細胞中で、染色体とは別個に存在してもよく、染色体内に組み込まれていてもよい。
【0166】
本明細書において、本発明の細胞に本発明のベクターまたはベクターを導入する技術は、当該分野において周知慣用されており、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターが所望の細胞(例えば、植物細胞)に導入される限り、どのような技術でも使用され得る。そのような技術としては、トランスフェクション、形質導入、アグロバクテリウムを利用した形質転換、エレクトロポレーション、直接導入、パーティクルガン、PEG法などが挙げられる。そのような周知慣用技術(例えば、分子生物学の技術、微生物学技術など)は、本明細書において記載されているか、または本明細書において参考として援用される文献において記載されている。また、そのような技術の例示は、本明細書の実施例において記載されているが、そのような技術は、周知慣用技術の例示であり、本発明において用いられる方法は、そのような技術に限定されると解釈されるべきではない。
【0167】
本発明の細胞が、所望のベクターまたはポリヌクレオチドを有するかどうかは、本明細書において記載されるかまたは周知慣用される技術(例えば、ノーザンブロット法またはウェスタンブロット法)を用いて確認することができる。具体的には、例えば、そのような細胞から、当該分野において周知の技術を用いてmRNAまたはタンパク質を抽出し、そのmRNAまたはタンパク質に対してそれぞれ特異的なオリゴヌクレオチドまたは抗体(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)との反応を検出することによって、所望のベクターまたはポリヌクレオチドがその細胞に入ったかどうかが確認され得る。
【0168】
本発明の細胞は、本発明のポリペプチドを発現することができるものであれば、どのような細胞でもよい。好ましくは、本発明の細胞は植物細胞である。より好ましくは、そのような植物細胞は、重金属への暴露後に回収可能な細胞であり得る。そのような植物細胞としては、ポプラ、ユーカリ、シダ植物が挙げられる。好ましくは、本発明の細胞は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで形質されたものであり得る。
【0169】
別の局面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む組織(または生体の部分、部位など)を提供する。本明細書では、植物の組織が好ましい。そのような植物の組織としては、例えば、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実などからの組織が挙げられるがそれらに限定されない。好ましい植物組織の起源としては、根、種子、葉、果実などが挙げられる。根、種子、葉、果実などであれば、本発明のポリペプチドが重金属を結合し、その後に形質膜に結合した後、回収することが容易であるからである。従って、結合後の回収が容易である組織であれば、どのような組織でも使用され得る。好ましくは、本発明の組織は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで形質されたものであり得る。本発明の組織は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで一過的に形質転換されていても恒常的に形質転換されていてもよい。そのような形質転換によって導入された本発明のポリヌクレオチドは、構成的にまたは特異的に発現され得る。
【0170】
他の局面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む器官(または臓器)を提供する。本明細書では、植物の器官が好ましい。そのような植物の器官としては、例えば、カルス、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましい植物器官としては、根、種子、葉、果実などが挙げられる。本発明のポリペプチドが重金属を結合し、その後に形質膜に結合した後、回収することが容易であるからである。従って、結合後の回収が容易である器官であれば、どのような器官でも使用され得る。
【0171】
他の好ましい局面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む生物を提供する。そのような生物は、本明細書においてトランスジェニック生物ともいう。好ましくは、そのような生物は、植物である。好ましい植物としては、アブラナ科、コーヒー科、ポプラ、ユーカリ、シダ植物の植物が挙げられる。好ましくは、本発明の植物は、木本植物(例えば、ポプラ)であり得る。
【0172】
そのような植物は、本明細書においてトランスジェニック植物ともいい、本発明の植物細胞または組織から当該分野において周知の技術を用いて再分化(再生)させることによって得ることができる。
【0173】
一旦所望のポリヌクレオチド(例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはベクター)で形質転換された細胞(例えば、植物細胞)が得られたなら、一定の割合以上でそのような形質転換細胞から所望のポリヌクレオチドを含むトランスジェニック生物(例えば、植物)が得られることは、当該分野において周知である。従って、形質転換することができる生物の細胞が利用可能な生物であれば、どのような生物でも本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含むトランスジェニック生物を生産することができる。
【0174】
そのようなトランスジェニック生物を作製する方法は、当該分野において周知である。本発明の生物が植物である場合、トランスジェニック植物は、例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された細胞を増殖させ、組織または器官とし、それを再分化させることによって植物体とすることができる。そのような組織または器官は、どのようなものでもよく、例えば、カルス、根、茎などが挙げられるがそれらに限定されない。植物はどのような器官であっても、基本的に全能性を有していることから、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む器官または組織であれば、どのような組織または器官であっても植物体の再分化に利用することができる。本発明が木本植物の場合、当該分野において慣用されるプロトコルを利用してトランスジェニック植物を作出することができる(Molecular Biology of Woody Plants(Vol.I,II) (ed.S.Mohan Jain,SubhashC.Minocha)、Kluwer Academic Publishers、2000)。
【0175】
このようなトランスジェニック生物は、重金属(例えば、有害重金属(特に、ヒトに対して有害である重金属(例えば、カドミウム、水銀、鉛などが含まれるがそれらに限定されない))を環境(陸、川、湖、海、住環境などが挙げられるがそれに限定されない)から除去するために使用することができる。従って、そのような場合、重金属を結合した後に、結合した生物体(例えば、植物体)を収集することが容易で、かつ、処理することが容易なものが好ましい。そのような植物としては、例えば、ポプラ、ユーカリ、シダ植物が挙げられるがそれらに限定されない。
【0176】
重金属を結合した後の生物の処理は、好ましくは、環境から隔離された閉鎖空間にその生物を隔離し、重金属を濃縮したり、無毒化したりすることによって環境に再循環されないようにすることによって行うことができる。
【0177】
1つの好ましい局面において、本発明は、有害重金属を環境から除去するためのトランスジェニック植物を提供する。このトランスジェニック植物は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む。従って、このようなトランスジェニック植物は、本発明のポリペプチドを発現する。好ましくは、そのようなポリペプチドの発現は、所望の時期または組織(または細胞、器官など)において行わせることができる。そのような詳細な制御の方法は、本明細書において詳述されており、例えば、時期または組織特異的なプロモーターを用いて遺伝子操作することにより達成され得る。そのような技術は、当該分野において周知慣用されている。
【0178】
そのようなトランスジェニック植物を利用することができる場所としては、重金属の除去が必要とされる土地または海底であればどのような土地または海底でもよく、例えば、工場跡地、工場排水が流れた後の土地または海底などが挙げられるがそれらに限定されない。所望の土地に本発明のトランスジェニック植物を重金属を結合するに十分な期間(例えば、数日間、数週間、数カ月から数年間)栽培した後、その植物を回収し、焼却するなどして、重金属を回収することができる。トランスジェニック植物の除去後の土地または海底などに含まれる重金属の濃度または含量は、一般に、顕著に減少している。そのような減少は、当該分野において慣用される土質調査または水質検査を行うことによって確認することができる。
【0179】
好ましくは、このようなトランスジェニック植物は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターに加え、生長を促進するポリペプチド(例えば、植物生長ホルモン、そのホルモンの分泌を促進するタンパク質またはそのようなホルモン(例えば、ジベレリン、2,4−Dなど)を合成するタンパク質など)、特殊な環境(例えば、乾燥、高湿など)での生存に適合させるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み得る。そのようなさらなるポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドと同じ調節エレメント(例えば、プロモーター)の制御下にあっても、別個の調節エレメントの制御下にあってもよい。そのようなさらなるポリヌクレオチドは、本発明のトランスジェニック植物中に1つまたは複数含まれ得る。
【0180】
別の好ましい局面において、本発明は、重金属を濃縮採取するためのトランスジェニック植物を提供する。このトランスジェニック植物は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む。従って、このようなトランスジェニック植物は、本発明のポリペプチドを発現する。好ましくは、そのようなポリペプチドの発現は、所望の時期または組織(または細胞、器官など)において行わせることができる。そのような詳細な制御の方法は、本明細書において詳述されており、例えば、時期または組織特異的なプロモーターを用いて遺伝子操作することにより達成され得る。そのような技術は、当該分野において周知慣用されている。
【0181】
そのようなトランスジェニック植物を利用することができる環境としては、目的とする希少重金属を含むことが予測される環境であればどのような環境(例えば、土地または海底)でもよい。そのような環境としては、例えば、鉱山または鉱山跡地、あるいは工場跡地などが挙げられるがそれらに限定されない。所望の土地に本発明のトランスジェニック植物を重金属を結合するに十分な期間(例えば、数日間、数週間、数カ月から数年間)栽培した後、その植物を回収し、焼却するなどして、希少重金属を回収し、その後目的の用途に利用することができる。そのような希少重金属としては、例えば、金、銀、ウラン、レアメタルのうち重金属(スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、イッテリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ランタノイド(例えば、ランタンなど)、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、白金、タンタル、ビスマスなど)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0182】
本発明のポリペプチドは、ある特定の重金属に対して選択性を有するように改変させることができる。そのような改変方法は、本明細書に記載されるかまたは当該分野において周知である。そのような改変方法によって得られたポリペプチドがどの重金属を結合するかは、本明細書において記載される方法において特定の金属を確認すべき重金属に置き換えることによって確認することができる。
【0183】
別の局面において、本発明は、本発明のトランスジェニック植物を利用した、環境から重金属(例えば、有害重金属)を除去する方法および重金属を濃縮採取する方法を提供する。
【0184】
本発明の環境から重金属を除去する方法は、本発明のトランスジェニック植物を提供する工程、そのトランスジェニック植物を栽培する工程、およびそのトランスジェニック植物を収集する工程を包含する。好ましくは、この方法は、収集されたトランスジェニック植物をさらに処理(例えば、焼却)する工程をさらに包含する。そのような収集は、環境から隔離された空間において行うことができる。
【0185】
本発明の希少重金属を濃縮採取する方法は、本発明のトランスジェニック植物を提供する工程、そのトランスジェニック植物を栽培する工程、およびそのトランスジェニック植物を収集する工程を包含する。好ましくは、この方法は、収集されたトランスジェニック植物をさらに処理(例えば、焼却、濃縮)する工程をさらに包含する。そのように濃縮採取された希少重金属は、当該分野において周知の精錬技術を用いて精錬することができる。
【0186】
別の局面において、本発明は、重金属結合システムを提供する。このシステムは、1)本発明のポリペプチド;および2)支持体、を備える。ある実施形態において、このシステムは、有害重金属を環境から除去するために使用される。別の実施形態において、このシステムは、重金属を濃縮採取するために使用される。好ましくは、本発明のシステムにおいて使用される支持体は、固体支持体である。別の実施形態では、この支持体は、膜または球状であり得る。そのようなシステムは、重金属結合膜として製造することができる。そのような重金属結合膜は、流体(液体または気体)に配置することによって、重金属(例えば、重金属)を除去するシステムを構成するために使用することができる。別の実施形態では、上記支持体には、本発明のトランスジェニック生物または形質転換細胞が付着されていてもよい。本発明のトランスジェニック生物が付着した支持体は、非生物を支持体として用いたときと同様に有害重金属を環境から除去するためまたは重金属を濃縮採取するために使用され得る。
【0187】
好ましい実施形態において、本発明のトランスジェニック植物は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのほか、メタロシャペロン(例えば、メタロチオネイン、ファイトケラチンなど)をコードするポリヌクレオチドまたはメタロシャペロンの生合成に関与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み得る。別の好ましい実施形態では、本発明のトランスジェニック植物は、液胞表面上のABCトランスポーター、金属吸収能を高めるトランスポーター(細胞外から細胞内に取り込む機能をもつ)(例えば、IRT1、ZIP1などの金属トランスポータータンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含み得る。本発明のトランスジェニック植物は、液胞を増大させるように改変され得る。
【0188】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【0189】
【実施例】
(実施例1:CdI19のクローニングおよび配列決定)
(材料および方法)
本発明のポリペプチドを単離するために、まず、CdI19の370−bp cDNAフラグメントを、RT−PCR FDD(Suzuki,Nら(2001) PlantCell and Environment,24,1177−1189)によって単離し、5’および3’配列それぞれを、製造業者の指示に従って(Marathon cDNA Amplification Kit,Clontech,CA,USA)5’および3’RACE法を使用して単離した。二本鎖cDNAを、遺伝子特異的プライマー5’−CGCCGCCAACAGCAACTTC−3’(配列番号9)および5’−GAAGTTGCTGTTGGCGGC−3’(配列番号10)を用いてPCRによって増幅し、pT7ブルークローニングベクター(Clontech)中にサブクローニングした。ヌクレオチド配列を、自動配列決定装置(Model 310,ABI)を用いて、ジデオキシチェーンターミネーション法(Big Dye Terminator Kit,ABI,CA,USA)によって決定し、Gene Works software (Intelli Genetics,CA,USA),を使用して予測されるアミノ酸配列を分析し、そしてBLASTアルゴリズム(Altschulら、1990)を用いて、比較した。
【0190】
(CdI19は、2つのCXXCモチーフ、およびファルネシル化部位を有する新規のタンパク質をコードする遺伝子である)
最初に5’および3’RACE PCR産物の配列を結合することによって、CdI19の1.7kbの全長cDNA(配列番号1)を得た。推定ORFは、推定分子量42.2kDおよび等電点9.16を有する392アミノ酸残基長のポリペプチド(配列番号2)をコードする。このORFは、2セットの重金属結合モチーフCXXC(Pufahi,R.,Singer,C.,Peariso,K.L.,Lin,S.J.,Schmidt,P.,Fahrni,C.,Culotta,V.C.,Penner−Hahn,J.E.およびO’Halloran,T.V.(1997)Science,278,853−856)およびC末端にファルネシル化(イソプレニル化)モチーフ(Dykema,P.E.,Sipes,P.R.,Brenda,A.M.,Biermann,J.,Crowell,D.N.およびRandall,S.K.(1999)Plant Molecular Biology,41,139−150)を含む(図1a)。このタンパク質は非常に疎水的であり、そして重金属結合領域およびファルネシルモチーフとの間に、グリシンに富む可撓性領域を有する。2つの重金属結合領域が、SSThreadプログラム(Ito,M.,Matsuo,Y.およびNishikawa,K.(1997)Comput.Appl.Biosci.13,415−423)を用いて、βαββαβ二次構造をとることが見出された。データベースのホモロジーサーチによって、CdI19がアラビドプシスのATFP3と類似する推定タンパク質(ID;CAB83295.1)と同一であることが示された。CdI19は、金属結合領域、ファルネシル化モチーフ、またはその両方について、他のタンパク質との部分的類似性を示す(図1b)。しかし、配列サーチは、CdI19がアラビドプシス中に単一コピーとして存在することを示唆した。
【0191】
(実施例2:CdI19改変体の調製)
(領域特異的変異誘発)
CdI19の領域特異的変異誘発を、Takara LA PCRTM in vitro Mutagenesis Kit(Takara,京都、日本)を使用して、pT7ブルークローニングベクター中で行った。クローンを含むDNAフラグメントを、直接配列決定することによって同定し、適切な制限酵素で消化し、そしてpBI121 (Clontech) or pGEX−4T−1(Amersham,NJ,USA) プラスミド中に連結した。ファルネシル化領域におけるシステイン389位をグリシンに変異したものを配列番号3および4に示す。金属結合部位におけるCXXCのすべてのシステインをグリシンに変異したものを配列番号5および6に示す。機能的に等価な置換を配列番号19〜22に示す。
【0192】
(グルタチオンSトランスフェラーゼ融合タンパク質)
CdI19 cDNAの675bp(1〜675)フラグメントを、その5’末端にEcoRI領域またはXhoI領域を有するプライマー:5’−GGAATTCATGGGTGAGAAAAAGGAAGAAAC−3’(配列番号11)および5’−CTCGAGGTCATCCTTTTTGGCCGGAA−3’(配列番号12)を用いてPCRによって調製した。増幅したフラグメントをpGEX−4T−1(Amersham)のEcoRI−XhoI領域にクローニングし、そして生じたプラスミドを、E.coli DH5α中に形質転換した。1mM IPTGを用いる4時間の誘導後、タンパク質を、製造業者の指示に従って(Amersham)、グルタチオンセファロース4Bを用いてバッチ精製した。グルタチオンセファロースに結合したGST融合タンパク質(野生型は配列番号27(核酸)および28(アミノ酸)、変異型は配列番号29(核酸)および30(アミノ酸))を、トロンビンプロテアーゼを用いて24時間22℃でインキュベーションすることによって切断した。細菌培養物1lあたり、約1〜2mgの純粋なCdI19タンパク質を得た。タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミンを標準とするブラッドフォード法(Bio−Rad,CA,USA) によって決定した。
【0193】
(実施例3:細胞内局在)
(材料および方法)
CaMV35S−sGFP(S65T)−NOS3’(Chiu,W.ら、(1996)Curr.Biol.6,325−330)から、PCRによって、XbaI領域またはXhoI領域を含むsGFP(S65T)フラグメントを調製した。その5’末端にそれぞれXhoI領域およびSacI領域を有する適切な正方向および逆方向プライマーを、PCRのために設計し、CdI19 cDNAを増幅した。pT7ブルーベクター中にサブクローニングした後、サブクローニングしたフラグメントを対応する制限酵素を用いて消化し、そしてpBI121ベクターのXbaI−SacI領域に一定の方向で、挿入した。この結果生じる構築物を、それぞれpGFP−CdI19W(配列番号23(核酸)および24(アミノ酸))およびpGFP−CdI19M(配列番号25(核酸)および26(アミノ酸))と称する。これらのベクターをAgrobacterium tumefaciens(C58)中に形質転換した。4日間LS培地(MS培地用混合塩類(1L分)、200mg KHPO、100mgミオイノシトール、1mgチアミンHCl、0.2mg 2,4−Dおよび30gスクロース、1Lの蒸留水に溶かした後、pHを5.8にあわせる)中で培養したBY2細胞懸濁液のアリコートを、LS培地のプレート(LS培地のプレートは、このLS培地に1%アガロースを加えて固めたものである)上に配置し、0.1 mlのAgrobacterium培養物(OD600,1.0)と混合し、2日間インキュベートした。3回洗浄し、そして、1mlの新鮮なLS培地に懸濁した。その後、細胞を、100mg/lのカナマイシンおよび250mg/lのカルベニシリンを含む固形LS培地にプレーティングし、3週間インキュベートした。生長するカルスを、27℃暗所にて維持し、その後の実験に使用した。GFP融合タンパク質の局在を、共焦点レーザースキャン顕微鏡(LSM 510,Carl Zeiss、東京)を用いて直接的に観察した。Zeiss Plan−NEOFLUARレンズ10×/0.3、20×/0.3、40×/0.3を用いてサンプルをスキャンし、画像化して、10μmの深度で収集した。
【0194】
(CdI19は、そのファルネシルモチーフによって、形質膜に局在化する)ファルネシル化は、疎水性のイソプレノイドの翻訳後の付着である。ファルネシル化は、しばしば、アンカーとして機能し、タンパク質を膜に固定化する(Rodriguez−Concepcion,M.,Toledo−Ortiz,G.,Yalovsky,S.,Caldelari,D.およびGruissem,W.(2000)Plant J.24,775−784)。CdI19の細胞内局在を決定するために、CaMV35Sプロモーターによって駆動されるGFP−CdI19融合ベクター(pGFP−CdI19W)を構築して、BY2細胞に形質転換した(図2)。コントロールとして、GFPのみを発現するトランスジェニックBY2細胞を使用した。レーザースキャン顕微鏡によって観察した場合、GFPのみを発現する細胞において、液胞以外の細胞質全体が、拡散して標識された(図2b)。対照的に、GFP−CdI19WのGFP蛍光は、形質膜のみにおいて見ることができた(図2b)。ファルネシル化モチーフがこの原因であることを確認するために、Cys389残基を、Glyに置換した変異ベクター(GFP−CdI19M)を構築した(この分子の核酸配列を配列番号3として、アミノ酸配列を配列番号4として示す)。このベクターによって形質転換された細胞は、コントロールと実質的に同一の蛍光イメージを示した(図2b)。従って、この結果は、そのファルネシルモチーフによって、形質膜に局在化することが明確に示された。Dykema P.E.,et al.は、Plant Molecular Biology,41,139−150において、重金属結合をする部位と、ファルネシル化領域に類似する部位とを有するポリペプチドを報告したが、このタンパク質は、可溶性であり細胞質に存在することが報告された。このように、重金属を結合するポリペプチドが形質膜に局在化する(すなわち、ファルネシル化領域本来の性質を発揮する)ということは従来報告されていなかったことであり、このことにより、本発明は、従来予想外の顕著な効果を提供する。
【0195】
(実施例4:CdI19の金属結合能)
(円偏光二色性測定)
CdI19アポタンパク質を、連続する攪拌のもとで、4℃での段階的な透析によって調製した。10mMのEDTAおよび飽和尿素を含有する3mlの組換えタンパク質溶液を、最初に2時間、1mM DTT、1mM EDTAおよび4M尿素を含有する200mlの50 mM Tris−HCl(pH7.0)に対して透析した。次に、溶液を、2M尿素を含む同一の緩衝液および尿素を含まない同一の緩衝液に対して、連続的に各2時間透析した。サンプルを、最後に、1mMのDTTを含む500mlの50mM Tris−HCl (pH7.0)に対して、12時間透析し、回収されたタンパク質を、25Cで、Jasco分光偏光計(J−720W)において1mmの石英セルを使用する円偏光二色性(CD)測定に供した。
【0196】
(CdI19は、そのCXXCモチーフとの相互作用によって、金属種に選択的に結合し得る)
CdI19の金属結合能力を試験するために、2つの金属結合領域を含む225アミノ酸のN末端フラグメントを、E.coli中で、GSTとの融合タンパク質とした発現した。2つの構築物を調製した:通常のCXXCモチーフを有する野生型(GST−CdI19W)(配列番号25(核酸)および配列番号26(アミノ酸))、およびGXXG(GST−CdI19M)モチーフを有する変異体(図3a;CdI19部分の核酸配列は配列番号5であり、アミノ酸配列は配列番号6に示され;融合タンパク質をコードする配列は配列番号25でありアミノ酸配列は配列番号26に示される)。精製後、生じたタンパク質を、25℃でのUV−CDスペクトルを試験することによって、金属結合についてモニターした。カドミウムの添加の際に、ΔCdI19Wのスペクトルが、大きく変化した。このことは、複合体形成を示す(図3b)。対照的に、そのようなスペクトルの変化は、ΔCdI19Mでは、ほとんど見られなかった(図3c)。このことは、CXXCモチーフが、金属結合の原因であることを示す。同様のスペクトルパターンが、CuおよびHgイオンにおいてもまた、観察された(図4c、d、e)CdI19が、そのCXXCモチーフとの相互作用によって、金属種に選択的に結合し得ると、結論づけられた。
【0197】
(実施例4.CdI19の発現およびその調節)
(組織化学的分析)
CdI19遺伝子のプロモーター領域を得るために、コード領域のすぐ上流の1kbフラグメントを、A.thaliana(Columbia品種)のゲノムDNAから、プライマー:5’−GCATGCAACTGAGGAGATCTTAGCGG−3’(配列番号13)および5’−TCTAGACGTAGTAGTAGTAGTAGAGAGAATC−3’(配列番号14)を使用して、PCRによって増幅した。生じたフラグメントを、XbaI領域およびHindIII領域でpBI121にクローニングし、Agrobacterium tumefaciens(C58)中に移入した。A.thaliana(Columbia品種)の形質転換を、浸潤法(CloughおよびBent、1998)によって、200mlのA.tumefaciens懸濁液中で行い、そして形質転換体を、50mg/lのカナマイシンおよび250mg/lのカルベニシリンを含む固体1/2 MS培地プレートで選択した。生じた植物を、1mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−グルクロン酸(X−Gluc)を基質として使用して、GUS活性についてアッセイした。金属処理を、37℃で、4時間500μM CdClを用いて4時間、その後、0.5mM KFe(CN)、0.5mM KFe(CN)、0.3%(w/v)Triton X−100および1.9mM X−Glucを用いて12時間行った。70%エタノール中で洗浄することによって反応を終了し、そしてクロロフィルを、100%エタノール中でインキュベーションすることによって除去した。3つのトランスジェニック株を、独立して、アッセイに使用し、そして各々の場合に、同様の結果を得た。
【0198】
(RNAブロットハイブリダイゼーション)
A.thaliana(Columbia品種)の種子の表面を、70%エタノール中で10分間インキュベートし、そして0.05%(v/v)Tween20を含有する5%(w/v)次亜塩素酸ナトリウム(活性な塩素8.5−13.5%、Nacalai Tesque)中で20分間インキュベーションすることによって滅菌した。蒸留水での3回の洗浄の後、種子を、温室中で23℃一定の光のもとで、10g/lのスクロースを補充した10mlの1/2強度のMurashige−Skoog培地中で培養した(10〜15種子/容器)。培地に浮かぶ2週齢の植物を、FeCl、CuCl、HgCl、CoCl、MnClまたはCaClを含む0.1M溶液50μlの添加によって、金属処理に供した。4時間のインキュベーションの後、サンプルを、収集して、総RNAを酸グアニジニウム−フェノール−クロロホルム法(AGCT)(Suzuki,Nら(2001) Plant Cell and Environment,24,1177−1189)によって単離した。総RNA(20μg)を、2.2M ホルムアルデヒドおよび1×MOPS(3−[N−モルホリノ]プロパンスルホン酸)緩衝液を含む1.2%アガロースゲルでサイズ分画し、キャピラリーブロッティング法によって、20×SSC中のナイロンメンブレン(Hybond−N,Amersham)にトランスファーした。UVでの照射による架橋後、ハイブリダイゼーションを、42℃で16時間、1mM EDTA、0.5% SDS、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、1×デンハルト溶液、3×SSC、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストランを含む溶液中で、ゆるやかに振盪して、行った。全長cDNAプローブを、M13/RVプライマーの対を用いるPCRによって、pT7ブルー−CdI19ベクターから調製し、ランダムプライミングキット(BcaBEST Labeling Kit、タカラ酒造)を用いて、[α−32P]dCTPを用いて標識した。ハイブリダイゼーションの後、メンブレンを、0.1×SSCおよび0.1%SDSを含む溶液中で62℃で洗浄して、最初に、バイオイメージ分析(bioimageanalysis)(BAS−2500,フジフィルム、東京)に供して、次にX線フィルムを用いてオートラジオグラフィーを行った。
【0199】
(転写物の蓄積)
カドミウムは、CdI19転写物を誘導することが示されたので、本発明者らは、他の金属(CdI19に結合する金属種を含む)を、転写誘導に対するその効果について試験した。ノーザンハイブリダイゼーションアッセイによって、CdI19転写物が、カドミウム処理の1時間以内に効率的に誘導されることが明らかとなった(図5a)。このことは、本発明者らの以前の観察と一致する(Suzuki,N.,Koizumi,N.およびSano,H.(2001)Plant CellおよびEnvironment,24,1177−1189)。使用した実験条件では、転写誘導は、Hg、Fe、およびCuでの処理においてもまた明らかであったが、MnおよびCoでの処理では、明らかでなかった。
【0200】
(組織特異的発現)
CdI19プロモーター::GUS融合構築物を発現するトランスジェニックアラビドプシス植物を生成し、CdI19の組織特異的局在化について試験した。GUS活性を、アッセイの4時間前に500μMのカドミウムを用いて処理した、1週齢および1月齢の形質転換体において分析した。未処理のコントロール植物において、低GUS活性が、胚軸のみにおいて検出された(データ示さず)。一方、カドミウム処理した植物において、強力なGUS活性が、葉柄、胚軸、花柄、維管束および根の分裂組織において観察された(図6)。1週齢の胚軸は、特に顕著なGUS反応を示した(図6h)。
【0201】
(実施例5:CdI19を過剰発現するトランスジェニック植物)
(材料および方法)
A.thaliana(Columbia品種)の形質転換に使用したベクターを、バイナリーベクターであるpBI21中にセンス方向で、XbaIおよびSacI領域中にクローニングしたCdI19の全長cDNAを用いて構築した。5’末端にそれぞれXbaIおよびSacI領域を含む、適切な正方向および逆方向プライマーをPCRのために設計し、CdI19のcDNAを増幅した。pT7ブルーベクターへのサブクローニング後、生じたフラグメントを、対応する制限酵素で消化し、pBI121ベクターに、方向を決めて挿入した。この構築したベクターを、A.tumefaciens(C58)中に形質転換した。形質転換および形質転換植物の選択を、CdI19プロモーター::GUSを用いたアラビドプシスの形質転換について記載される方法と同一の方法によって行った(Clough,SJ.,et al.、(1998)、Plant J.16:735−743)。
【0202】
(双子葉植物の形質転換および形質転換植物の選択)
導入したい遺伝子を有するアグロバクテリウムを培養し、培養液に開花直前のシロイヌナズナを数分間浸す。その後、ラップなどで植物体をくるみ、1−2日間、暗所に保管する。明所に戻し、通常の方法で栽培し、種を収穫する。得られた種は、抗生物質のカナマイシンを含む1/2MS寒天培地上にまき、抗生物質体制を持つ株のみを選抜する。
【0203】
(単子葉植物の形質転換および形質転換植物の選択)
アグロバクテリウムを用いる単子葉植物の形質転換方法は、例えば、HieiY.,et al.Plant J.6;271−282(1994)、特許公報第3141084号、および特許公報第2649287号に記載されるように周知である。
【0204】
(A)特許公報第3141084号に記載される方法に従って、以下のように形質転換および形質転換植物の選択を行う:
(1:種子の前処理)
イネの種子(例えば、代表的品種である日本晴)を、籾殻の除去後、無傷の状態で、2.5%次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)溶液中で殺菌した。水での十分な洗浄の後、イネを以下の無菌操作に供する。
【0205】
(2:前培養)
種子を、2,4−Dを含むN6D培地(30g/lスクロース、0.3g/lカザミノ酸、2.8g/lプロリン、2mg/l 2,4−D、4g/lゲルライト、pH5.8)に播種し、5日間、27℃〜32℃で保温する。この間に種子は発芽する。
【0206】
(3:アグロバクテリウム感染)
形質転換されたアグロバクテリウムの懸濁液に、前培養した上記種子を浸漬した後、2N6−AS培地(30g/lスクロース、10g/lグルコース、0.3g/lカザミノ酸、2mg/l 2,4−D、10mg/l アセトシリンゴン、4g/lゲルライト、pH5.2)に移植した。暗黒下で3日間、28℃で保温して共存培養する。
【0207】
(4:除菌および選抜)
共存培養の完了後、500mg/lカルベニシリンを含有するN6D培地を用いて、種子から、アグロバクテリウムを洗い流す。次いで、形質転換された種子の選抜を、以下の条件で行う。
【0208】
第1回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(25mg/l)を補充した、2mg/lの2,4−Dを含むN6D培地上に、種子を置き、7日間、27℃〜32℃で保温する。
【0209】
第2回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(25mg/l)を補充した、2〜4mg/lの2,4−Dを含むN6D培地上に、種子を置き、さらに7日間、27℃〜32℃で保温する。
【0210】
(5:再分化)
選抜された形質転換種子を、以下の条件で再分化させる。
【0211】
第1回目の再分化:再分化培地(カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(25mg/l)を補充したMS培地(30g/lスクロース、30g/lソルビトール、2g/lカザミノ酸、2mg/lカイネチン、0.002mg/l NAA、4g/lゲルライト、pH5.8)上に、選抜した種子を置き、2週間、27℃〜32℃で保温する。
【0212】
第2回目の再分化:第1回目の再分化において使用したのと同じ再分化培地を使用して、さらに2週間、27℃〜32℃で保温する。
【0213】
(6:鉢上げ)
再分化した形質転換体を、発根培地(ハイグロマイシン(25mg/l)を補充した、ホルモンを含まないMS培地)上に移して、根の発育を確認した後に、鉢上げする。
【0214】
(B)あるいは、特許公報第2649287号に記載される方法に従って、以下のように形質転換および形質転換植物の選択を行う:
(1:形質転換する培養組織の調製)
イネの完熟種子を70%エタノールに1分間、1%次亜塩素酸ナトリウムに30分間浸漬することによって消毒した後、2N6固体培地(N6の無機塩類及びビタミン類(Chu C.C.1978;Proc.Symp.Plant Tissue Culture,Science Press Peking,pp.43−50)、1g/lカザミノ酸、2mg/l 2,4−D、30g/lショ糖、2g/lゲルライト)に置床する。完熟種子を約3週間培養後、形成された胚盤由来のカルスを2N6培地に移植し、4〜7日経過したカルスを胚盤カルスとして用いる。
【0215】
(2:奇主アグロバクテリウム)
T−DNA領域を削除した菌系、LBA4404とEHA101とを寄主細菌として使用した。LBA4404はヘルパープラスミド(vir領域を完全な形で持つ)PAL4404を有する菌系であり、American Type Culture Colletionより入手可能である(ATCC 37349)。EHA101はヘルパープラスミドのvir領域が強病原性アグロバクテリウムA281由来であり、Hood E.E.et al.1986から入手可能である。種々の周知のバイナリーベクターをこれら2種類のアグロバクテリウムに導入し、以下の菌系を遺伝子導入用として用いる。これらのプラスミドをアグロバクテリウムに導入する方法は細菌の三系交雑手法(DittaG.etal.1980;Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:7347−7351)による。
LBA4404(pTOK232)
LBA4404(pIG121Hm)
EHA101(pIG121Hm)。
【0216】
(3:アグロバクテリウム懸濁液の調製)
ハイグロマイシン(50μg/ml)とカナマイシン(50μg/ml)を含むAB培地(Drlica K.A.and Kado C.I.1974;Proc.NatlAcad.Sci.USA71:3677−3681)上で3〜10日間培養したアグロバクテリウムのコロニーを白金耳でかきとり、修正AA培地(AA培地(AA液体培地(AA主要無機塩類、AAアミノ酸及びAAビタミン類(Toriyama and Hinata1985;Plant Science41:179−183,MS微量塩類(Murashige and Skoog 1962; Physiol.Plant,15:473−497)、0.5g/lカザミノ酸、1mg/l 2,4−D、0.2mg/lカイネチン、0.1mg/lジベレリン、20g/lショ糖))において、ショ糖を0.2M、グルコースを0.2Mに変更し、アセトシリンゴンを100μM添加、pH5.2)に懸濁し、菌濃度を3〜5×10細胞/mlに調整し接種に用いる。
【0217】
(4:接種条件)
供試組織を滅菌水で洗浄後、上述のアグロバクテリウムの懸濁液に3〜10分間浸漬した。浸漬処理後、茎頂組織は100μMアセトシリンゴン、10g/lグルコース、20g/lショ糖を含むN6S3固体培地(1/2N6主要無機塩類、N6微量塩類、N6ビタミン類、Chu C.C.1978、AAアミノ酸(Toriyama and Hinata1985),1g/lカザミノ酸、0.2mg/l NAA、1.0mg/lカイネチン、3g/lゲルライト)に、胚盤カルスなどのその他の培養組織はアセトシリンゴン、グルコース、ショ糖を同濃度で含む2N6固体培地に移植し、25℃、暗黒下で2〜5日間培養する。その後、接種組織を250mg/lセフォタキシムを含む滅菌水で洗浄し、同濃度のセフォタキシムを含むそれぞれの固体培地で培養を続ける。
【0218】
(5:GUS活性の調査方法)
共存培養処理直後、組織を0.1%Triton X−100を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に浸漬し、37℃で1時間静置する。リン酸緩衝液でアグロバクテリウムを洗浄除去した後、0.1mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルコン酸(X−gluc)及び20%メタノールを含むリン酸緩衝液を添加する。37℃で24時間処理した後、青色の呈色を示す組織を顕微鏡下で観察し、供試組織数に対する百分率で表す。なお、選抜処理後得られた形質転換体と考えられる植物体でのGUS活性の判定に際しては、植物体から葉片を採取し、同様な方法に従ってGUS染色を行う。個体ごとの発現様式で、葉片全体又は葉片の切り口が一様に青色に呈色するものを陽性個体、キメラ状に呈色するものをキメラ個体とする。
【0219】
(6:形質転換細胞、組織の選抜)
3日間共存培養した培養組織を、250mg/lセフォタキシムを含む2N6培地で1週間培養した後、同培養組織を50mg/lハイグロマイシンを含む2N6培地で3週間培養してハイグロマイシン抵抗性の培養組織を選抜する(1次選抜)。得られた抵抗性組織をさらに50mg/lハイグロマイシンを含むN6−12培地(N6無機塩類、N6ビタミン類、2g/lカザミノ酸、0.2mg/12,4−D、0.5mg/l 6BA、5mg/l ABA、30g/lソルビトール、20g/lショ糖、2g/lゲルライト)で2〜3週間培養し(2次選抜)、この培地上で増殖したカルスを0、20、50mg/lハイグロマイシンを含む個体再生用培地N6S3に移す。なお、共存培養後の培地には全て250mg/lセフォタキシムを添加する。
【0220】
(7:形質転換次世代における導入遺伝子の発現)
形質転換次世代の種子を70mg/lハイグロマイシンを含む400倍ホーマイ水和剤水溶液中に播種後、25℃で10日間処理し、ハイグロマイシン抵抗性を調査する。また、形質転換次世代の種子を各20粒づつ播種し、約3週間後の苗から葉片を採取し、GUS遺伝子の発現を調査する。
【0221】
(8:サザン法による導入遺伝子の分析)
品種、朝の光、月の光の形質転換体当代について、小鞠らの方法(Komari etal.,1989;Theoretical and Applied Genetics77:547−552)に従いDNAを抽出し、抽出したDNAに制限酵素HindIIIを処理し、HPT遺伝子をプローブとし、サザン法による導入遺伝子の検出を行う。なお、サザン法についてはMolecular Cloning(Sambrook et al.1989;ColdSpring Harbor Laboratory Press)に記載の方法に従って行う。
【0222】
(9:形質転換植物の再生)
得られた抵抗性カルスをさらに2次選抜にかけ、抵抗性カルスから個体を再生させる。再分化用の培地N6S3にハイグロマイシンを添加した区と無添加の区を設定したが、無添加の場合には、GUS活性がない個体あるいはキメラ状に活性を示す個体が多数出現する。しかし、再分化培地にハイグロマイシンを添加した場合はこのような個体は大幅に減少し、個体全体でGUS活性を示す再生個体が増加する。このようなハイグロマイシン抵抗性カルスから再生したGUS活性を全面に示す個体は形質転換体と考えられる。
【0223】
(灌木の形質転換および形質転換植物の選択)
灌木(例えば、コーヒー)の形質転換および形質転換体の選択を、以下のように実施する。
【0224】
(1:胚発生カルスの誘導)
コーヒー(C.canephora Conillon)の葉の外植片を、WoodyPlant Medium(WPM)無機塩、0.9%の寒天、ビタミンB5及び3%スクロースを含むWPM培地(pH5.7)上で培養した。3〜4カ月間培養した後に葉の外葉片より胚発生能を持つカルスが誘導される。そのカルスを増殖させるためにMS無機塩、ビタミンB、3%のスクロース及び0.25%ゲランガムを含むCM培地(pH5.7)に移植する。培養室は、25℃で16時間の日長に保つ。
【0225】
コーヒー植物の胚発生能を持つカルスの感染には、plG121Hmを持つ、アグロバクテリウムツメファシエンスの系EHA101などを使用する。
【0226】
(2:アグロバクテリウムによる形質転換)
細菌の懸濁液をAB寒天培地上で増殖させ、600nmにおける吸光度が0.6になるように液体WPM培地で希釈する。10μMの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)を含む上述CM培地中で胚発生能を持つカルスを3日間前培養する。このカルスに細菌の懸濁液を加えて、25℃で4日間暗所で共存培養する。残りの細菌を除去する目的でカルスを洗浄した後、300mg/lセフォタキシムと5μMのイソペンテニルアデノシン(2−iP)を含むWPMに植え換える。2週間後に同一培地に植え換えた後、1カ月後に5mg/lのハイグロマイシンを含むWPM(300mg/lセフォタキシムと5μMの2−iP共存下)に植え換えて、選抜を開始する。2カ月後に50mg/lのハイグロマイシンを含むWPM培地に植え換えた後、さらに1カ月後にハイグロマイシン濃度を100mg/lに上げ、選抜を確かなものとする。
【0227】
(3:組織化学的β−グルクロニダーゼアッセイ)
組織化学的β−グルクロニダーゼアッセイは5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド溶液中において、37℃で16時間インキュベートして染色することにより、Von Boxtelらの方法を以下のように改変して行う。すなわち、50mM NaHPO、10mM NaEDTA、0.3% Triton X−100、0.5mM KFe(CN)、0.5mM KFe(CN)および抗酸化物質(0.5%カフェイン、1%PVPおよび1%アスコルビン酸ナトリウム)を使用する。ハイグロマイシン耐性の胚発生のカルスは強いβ−グルクロニダーゼ活性を示す。しかし、共培養しなかった胚発生能を持つカルスは、β−グルクロニダーゼ活性を示さない。
【0228】
(4:体細胞胚の形成および植物の再生)
100mg/lのハイグロマイシンを含む培地中で生存している(ハイグロマイシン耐性)胚発生のカルスより体細胞胚を誘導する。ハイグロマイシン耐性の胚発生能を持つカルスより形成された体細胞胚のβ−グルクロニダーゼ活性は陽性を示す。形質転換していない胚発生のカルス由来の体細胞胚は、β−グルクロニダーゼ活性を示さない。2−iPを欠いたWPM培地(100mg/lのハイグロマイシンを含む)において、形質転換していない幼植物は全く生長しないが、形質転換した幼植物は非常に良く生長し、約1カ月後に多数の独立な幼植物体を得る。形質転換したと推定される幼植物の葉および根は、β−グルクロニダーゼ活性反応で深い青色を示す。形質転換していない幼植物由来の葉及び根は、β−グルクロニダーゼ活性を示さない。
【0229】
(5:β−グルクロニダーゼおよびHPT遺伝子のPCR解析)
β−グルクロニダーゼ活性が陽性であるコーヒー植物の葉からのDNA抽出は、改変(溶液1に3%2−メルカプトエタノールを添加)ベンジルクロライド法(ISOPLANTキット、和光)を用いて、Kikuchiらの方法(Kikuchi K et al.Plant Biotechnology 15:45−48)により行う。β−グルクロニダーゼ遺伝子を増幅するのに用いたプライマーは、5’−AATTGATCAGCGTTGGTGG−3’ (配列番号15)および、5’−ACGCGTGGTTACAGTCTTGC−3’(配列番号16)である。また、HPT遺伝子を増幅するのに用いたプライマーは、5’−GCGTGACCTATTGCATCTCC−3’ (配列番号17)および5’−TTCTACACAGCCATCGGTCC−3’ (配列番号18)である。PCRの反応溶液をDNAサーマルサイクラー(Perkin Elmer Cetus,9700)の中で、下記の条件でインキュベートする。すなわち、96℃で15分、続いて94℃で30秒間、58℃で30秒間、72℃で2分間を30サイクルそして最終的な伸長反応を72℃で5分間行う。β−グルクロニダーゼ活性が陽性である形質転換植物の葉をPCRにより試験したところ、β−グルクロニダーゼおよびHPTに相当する増幅断片が示される。形質転換していない幼植物においては、β−グルクロニダーゼ遺伝子もHPT遺伝子も検出されない。
【0230】
(実施例6:カドミウム耐性およびクロロフィル含量の測定)
トランスジェニックアラビドプシスの表面を滅菌した種子を、温室内で、23℃で、14時間/10時間−明所/暗所の光サイクル下で栽培した。植物を、150μMのCdClを含む1/2強度の固体上で6週間生長させた。クロロフィルを、30−40mgの植物から、1mlの80%アセトン(和光純薬、大阪)中に抽出した(Yang S.H.ら、(2001)Plant Physiol.127,23−32)。ホモジナイズした後に、サンプルを15分間インキュベートして、15,000gで10分間遠心し、そして上清画分のアリコートを回収して、分光光度計(DU640,Beckman,CA,USA)を用いて、A663を測定した。
【0231】
(CdI19過剰発現は、植物にカドミウム耐性を付与する)
センス配向のCdI19を、アラビドプシスに導入し、35Sプロモーターの制御下において構成的発現をした。15のトランスジェニック株の中で、12株を、カドミウムストレスに供し、そして6週間の栽培に後に、生存について分析した。野生型植物の生長は、著しく阻害され、重篤な白化が見られ、そして明らかな根の伸張が見られなかった(図7a)。トランスジェニック株の生長もまた影響を受けたが、阻害は、コントロール植物よりも軽度であった(図7a)。耐性は、トランスジーンの発現量の増加と比例しているようであった。このことは、代表的に、他の株との比較において、柱頭のより高度な生長を示す株3において見られた(図7c)。トランスジェニック植物のクロロフィル含量もまた、トランスジーンの転写レベルの増加と比例して、増加した(図7b、c)。例えば、株3において転写レベルおよびクロロフィル含量は、コントロール野生型植物の場合と比較して、それぞれ4倍および2倍であった。これらの結果は、CdI19がカドミウムを捕捉および固定化し、そして細胞におけるその毒性効果を低下させることを示すと結論付けられる。
【0232】
(考察)
本明細書は、金属結合ファルネシル化タンパク質であるアラビドプシスのCdI19の機能的特長について記載する。この高度に疎水的な42.2kDaタンパク質(各々がM/LXCXXCからなる、2セットの金属結合モチーフを有する)は、効率的にCd、Hg、およびCuに結合する。このモチーフを含む多数のタンパク質が、金属イオン代謝に関与することが見出されている。その例としては、MerP、ATX1、CCC2、CCSならびにウィルソン病およびメンケズ病の銅輸送ATPaseである(Culotta,V.C.,Klomp,L.W.,Strain,J.,Casareno,R.L.,Krems,B.およびGitlin,J.D.(1997)J.Biol.Chem.272,23469− 23472;Himelblau,H.,Mira,H.,Lin,J.S.,Cizewski,V.,Penarrubia,L.C.およびAmasino,M.R.(1998)Plant Physiol.117,1227−1234;Huffman,D.L.およびO’Halloran,T.V.(2001)Annu.Rev.Biochem.70,677−701;Pufahi,R.,Singer,C.,Peariso,K.L.,Lin,S.J.,Schmidt,P.,Fahrni,C.,Culotta,V.C.,Penner−Hahn,J.E.およびO’Halloran,T.V.(1997)Science,278,853−856;Yuan,D.S.,Stearman,R.,Dancis,A.,Dunn,T.,Beeler,T.およびKlausner,R.D.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,2632−2636)。細菌のMerPが、形質膜を横切ってHgを輸送することを示した(Powlowski,J.およびSahlman,L.(1999)J.Biol.Chem.274,33320−33326)。酵母のATX1、CCC2、CCSもまた、Cuに結合して、Cuを他のメタロチオネインに送達することが報告されている(Culotta,V.C.,Klomp,L.W.,Strain,J.,Casareno,R.L.,Krems,B.およびGitlin,J.D.(1997)J.Biol.Chem.272,23469− 23472;Pufahi,R.,Singer,C.,Peariso,K.L.,Lin,S.J.,Schmidt,P.,Fahrni,C.,Culotta,V.C.,Penner−Hahn,J.E.およびO’Halloran,T.V.(1997)Science,278,853−856;Yuan,D.S.,Stearman,R.,Dancis,A.,Dunn,T.,Beeler,T.およびKlausner,R.D.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,2632−2636)。ATX1はさらに、その2つのシステインの硫黄による金属イオン結合の際に、そのコンフォメーションを変化することが示された(Huffman,D.L.およびO’Halloran,T.V.(2001)Annu.Rev.Biochem.70,677−701)。本発明者らの結果は、この結果と一致し、さらに、CXXCモチーフ内の2つのシステインが、本当に金属結合の原因であるという証拠を提供する。
【0233】
CdI19タンパク質の別の独特な特徴は、そのC末端システイン残基におけるファルネシル化であり、そのような疎水性のイソプレノイドの翻訳後の付着は、真核生物が、生物学的機能(例えば、膜付着およびタンパク質間相互作用)のためにタンパク質を活性化することにおいて、必須である。例えば、小胞輸送において機能する多くの低分子Gタンパク質が、ファルネシル化によって修飾される(Zhang,F.L.およびCasey,P.J.(1996)Annu.Rev.Biochem.65,241−249)。本発明者らの結果は、ファルネシル化がCdI19の形質膜への局在化の原因であることを、明確に示す。CdI19の注目すべき特徴は、このCdI19が、金属結合モチーフと機能的なファルネシルモチーフの両方を備えるということである。この特徴は、本発明の特徴のひとつであり、この特徴によって、本願発明の種々の効果が奏される。
【0234】
(実施例7:別の変異体を用いたトランスジェニック植物)
CdI19と同様の機能を有する本発明のポリペプチドの変異体を上記の実施例に記載されるプロトコルと同様に作製した。その配列は、配列番号20および22に示す。このアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを配列番号19および21に示すように調製し、上記実施例と同様にベクターに導入し、細胞を形質転換し、そしてトランスジェニック植物を得た。このようにして得たトランスジェニック植物もまた、同様に、重金属を特異的に結合し、かつ、形質膜への局在化という特性を示すことが示された。従って、本発明は、機能を保持する改変体を利用することによっても達成され得ることが実証された。
【0235】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【0236】
【発明の効果】
本発明により、重金属(特に、有害重金属)を環境から効率よく除去することが可能になった。また、本発明により、希少重金属を濃縮採取することも可能になった。本発明のポリペプチドが提供されたことにより、このような除去または濃縮採取を省エネルギーで、低コスト、かつ広範囲で行うことが達成された。
【0237】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、CdI19タンパク質、およびCXXC型金属結合ドメインのアラインメントを図示する。
(a)模式図:
CdI19タンパク質(配列番号2)は、2つの金属結合領域(HMR)、ファルネシル化モチーフ、および重金属結合領域とファルネシルモチーフとの間のGlyに富む可撓性領域を有する。金属結合領域のコア配列およびファルネシルモチーフは、それぞれ、CXXC(Cはシステインであり、Xは任意のアミノ酸である)、およびCaaX(Cはシステインであり、aは脂肪族アミノ酸であり、Xは、C末端残基である)。
(b)アミノ酸アラインメント:
CXXC型金属結合ドメインを含むタンパク質配列を、GenBankから入手した。登録番号は、それぞれ、ATX1(P38636)、CCH(AAC33510)およびATFP3(AAD09507)である。HMRは、重金属結合領域を意味する。影を付けた残基は、保存されたシステイン残基および疎水性残基である。下線を引いた残基は、金属結合領域のコア配列である。
【図2】図2は、GFP−CdI19の細胞内局在を示す。
(a)GFP−CdI19融合タンパク質の模式図:
変異タンパク質は、Cys−389をGlyで置換した(配列番号4)。
(b)GFPのみを発現するBY2細胞(コントロール;上のパネル)、GFPと融合したCdI19(野生型;中央のパネル)、GFPと融合した変異CdI19(変異型;下のパネル):
蛍光を、共焦点レーザースキャン顕微鏡を使用して、蛍光を観察した。左のパネルは蛍光画像であり、中央のパネルはノマルスキー顕微鏡の写真であり、右のパネルは蛍光画像とノマルスキー顕微鏡写真とを合わせた合成画像である。
【図3】図3は、組換えCdI19タンパク質およびそのCDスペクトルを示す。
(a)E.coliにおいて発現された、野生型(GST−CdI19W)および変異型(GST−CdI19M)の金属結合領域を含む組換えタンパク質の模式図:
変異型(GST−CdI19M)は、金属結合領域内に、CysのGlyへの置換を含む。
(b)組換えタンパク質のCDスペクトル:
カドミウム存在下および非存在下での、GST−CdI19W(左)およびGST−CdI19M(右)を測定した。最終濃度として、0μM(黒)、300μM(灰色)、500μM(薄い灰色)を、30μMのタンパク質溶液に添加した。X軸およびY軸は、それぞれ、波長(nm)およびΘ(mdeg)である。
【図4】図4は、金属イオンの存在下および非存在下での組換えタンパク質のCDスペクトルである。Cu(a)、Hg(b)、Co(c)、Mn(d)およびCa(e)を、30μMのタンパク質溶液に添加した。カドミウム存在下および非存在下で、GST−CdI19W(左)およびGST−CdI19M(右)を25℃で測定した。金属イオンの濃度は、0μM(黒)、300μM(灰色)、500μM(薄い灰色)である。X軸およびY軸は、それぞれ、波長(nm)およびΘ(mdeg)である。
【図5】図5は、重金属処理をした際の、CdI19転写物の蓄積である。
総RNA(20μg)を、抽出して、電気泳動によってサイズ分画し、ノーザンハイブリダイゼーション分析に供した。5S rRNAを、RNAをロードする際の標準とした。使用した重金属の最終濃度は、500μMであった。
(a)2週齢の植物を、図中に示された期間、カドミウムに曝露した結果。
(b)4時間、図中に示された金属イオンに対して曝露した結果。
【図6】図6は、CdI19プロモーター::GUS融合遺伝子を発現するトランスジェニックアラビドプシスのGUS活性の組織化学的局在を示す。
植物を、500μMのカドミウムで、アッセイの4時間前に処理した。使用した植物は、1月齢(a、c〜g)、および1週齢(b、h〜k)であった。使用した組織は、植物全体(a、b)、葉(c)、花柄(g)、胚軸(h)、根の分裂組織(i)、維管束(j)および成熟した根の維管束(k)である。
【図7】図7は、CdI19を発現するトランスジェニックアラビドプシスの表現型および特性である。
(a)植物の生長に対するカドミウムの効果:
野生型植物およびトランスジェニック植物(株3)の両方を、150μMのCdCl2を補充した1/2強度のMurashige−Skoog培地を含む固体プレート上で、温室中で6週間、生長させた。
(b)CdI19転写物の蓄積:
6週齢のトランスジェニック植物および野生型植物の総RNA(20μg)を、ノーザン分析に供した。5S rRNAを、RNAをロードする標準として使用した。
(c)クロロフィル含量に対するカドミウムの効果:
クロロフィルを、80%アセトンを用いて抽出し、そしてアリコートの吸収(A663)を測定した。相対的なクロロフィル含量を、吸収に基づいて計算した。野生型植物およびトランスジェニック株のそれぞれを、WTおよび適切な番号によって示す。

Claims (33)

  1. 重金属を結合する領域およびファルネシル化領域を含む、ポリペプチド。
  2. 形質膜結合能を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 前記重金属を結合する領域は、少なくとも1つのCXXCを含み、ここでCはシステイン残基を表し、Xは任意のアミノ酸を表す、請求項1に記載のポリペプチド。
  4. 前記重金属を結合する領域は、少なくとも2つのCXXCを含み、ここでCはシステイン残基を表し、Xは任意のアミノ酸を表す、請求項1に記載のポリペプチド。
  5. 前記重金属を結合する領域は、2つのCXXCを含み、ここでCはシステイン残基を表し、Xは任意のアミノ酸を表す、請求項1に記載のポリペプチド。
  6. 前記ファルネシル化領域は、アミノ酸配列CaaYを含み、ここでCはシステイン残基を表し、aは脂肪族アミノ酸を表し、YはC末端残基を表す、請求項1に記載のポリペプチド。
  7. グリシンリッチ領域をさらに含む、請求項1に記載のポリペプチド。
  8. 前記重金属を結合する領域は、配列番号2に示す配列のアミノ酸25位〜84位および155位〜215位と、少なくとも70%の相同性を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
  9. 前記ファルネシル化領域は、配列番号2に示す配列のアミノ酸389位〜392位と、少なくとも70%の相同性を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
  10. (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
    (c)配列番号1に記載の塩基配列の対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
    (d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
    (e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
    を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
  11. 請求項1〜10に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  12. (a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
    (c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
    (d)配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAの対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
    (e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
    (f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
    (g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    を含む、ポリヌクレオチド。
  13. 配列番号1に示す配列のヌクレオチド73位〜252および463位〜645位と、少なくとも70%の相同性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド。
  14. 配列番号1に示す配列のヌクレオチド1165位〜1176位と、少なくとも70%の相同性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド。
  15. 請求項11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
  16. 請求項11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項15に記載のベクターを含む、細胞。
  17. 植物細胞である、請求項16に記載の細胞。
  18. 前記細胞は、前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターで形質転換された、請求項16に記載の細胞。
  19. 請求項11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項15に記載のベクターを含む、組織。
  20. 植物組織である、請求項19に記載の組織。
  21. 前記組織は、前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターで形質転換された、請求項19に記載の組織。
  22. 請求項11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項15に記載のベクターを含む、トランスジェニック生物。
  23. 植物である、請求項22に記載のトランスジェニック生物。
  24. 前記生物は、前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターで形質転換された、請求項22に記載のトランスジェニック生物。
  25. 有害重金属を環境から除去するためのトランスジェニック植物であって、該植物は、
    請求項11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項15に記載のベクターを含む、
    トランスジェニック植物。
  26. 重金属を濃縮採取するためのトランスジェニック植物であって、該植物は、
    請求項11〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項15に記載のベクターを含む、
    トランスジェニック植物。
  27. 重金属結合システムであって、
    1)請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリペプチド;および
    2)支持体、
    を備える、システム。
  28. 有害重金属を環境から除去するために使用される、請求項27に記載のシステム。
  29. 重金属を濃縮採取するために使用される、請求項27に記載のシステム。
  30. 前記支持体は、固体支持体である、請求項27に記載のシステム。
  31. 前記支持体は、膜または球状である、請求項27に記載のシステム。
  32. 環境から重金属を除去する方法であって、請求項25に記載のトランスジェニック植物を提供する工程、そのトランスジェニック植物を栽培する工程、およびそのトランスジェニック植物を収集する工程を包含する、方法。
  33. 希少重金属を濃縮採取する方法であって、請求項26に記載のトランスジェニック植物を提供する工程、そのトランスジェニック植物を栽培する工程、およびそのトランスジェニック植物を収集する工程を包含する、方法。
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