JP6212622B2 - セルロース多孔質体 - Google Patents
セルロース多孔質体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6212622B2 JP6212622B2 JP2016221720A JP2016221720A JP6212622B2 JP 6212622 B2 JP6212622 B2 JP 6212622B2 JP 2016221720 A JP2016221720 A JP 2016221720A JP 2016221720 A JP2016221720 A JP 2016221720A JP 6212622 B2 JP6212622 B2 JP 6212622B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cellulose
- water
- porous body
- mass
- repellent component
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
Description
本実施形態では、セルロースナノファイバーは、化学処理(改質)したセルロースナノファイバーを包含する。セルロースナノファイバーでは、セルロース分子鎖が2本以上の束を形成している。セルロース分子鎖が2本以上の束を形成しているとは、2本以上のセルロース分子鎖が集合してミクロフィブリルと呼ばれる集合体を形成している状態をいう。本実施形態では、セルロース分子鎖は、分子中のC6位水酸基の一部又は全部がアルデヒド基、カルボキシル基などに酸化されたもの、C6位以外の水酸基を含む水酸基の一部又は全部が酸化されたもの、硝酸エステル、酢酸エステル、リン酸エステルなどのようにエステル化されたもの、メチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、カルボキシメチルエーテルなどのようにエーテル化されたものなど他の官能基に置換されている形態を含む。
本発明でいう有機溶媒とは、常温常圧で液体である有機化合物のことをいう。また、水に溶解するとは、水と有機溶媒とを混合した混合分散媒において、水と有機溶媒との混合質量比が100:0〜60:40の範囲内で、両者が分子レベルで互いに混ざり合い、相分離しないことをいう。なお、混合分散媒とは、混合液中に含まれるセルロースナノファイバーや撥水性成分、及び、その他不揮発分を含まない液体部分のことを指す。本実施形態に係るセルロース多孔質体では、水と、有機溶媒と、セルロースナノファイバーと、撥水性成分とを混合して混合液とすることができる。混合分散媒中の有機溶媒の濃度は、好ましくは2〜40質量%である。より好ましくは、10〜30質量%である。有機溶媒の濃度が40質量%を超えると、疎水性の高い分散媒となり、親水性を有するセルロースナノファイバーが混合液中に均一に分散しなくなる可能性がある。また、有機溶媒の濃度が2質量%未満では、分散媒の凍結時に水の結晶(氷晶)のサイズが大きくなり、多孔質体の比表面積が低下することがある。分散媒を有機溶媒に完全置換した凍結乾燥では、多孔質体は得られるものの、その置換に大きな手間が掛かっていた。また、分散媒の疎水性が高くなり、親水性のセルロースナノファイバーを均一に分散できない場合があった。これに対して、分散媒が水と水に溶解する有機溶媒との混合分散媒であって、混合分散媒中の有機溶媒の濃度が2〜40質量%である混合分散媒を用いると、セルロースナノファイバーの凝集やゲル化が無く、分散媒に均一に分散した混合液を得ることができ、更には分散媒の完全置換を必要としない簡便な方法で高比表面積のセルロース多孔質体を得ることが可能である。
本発明でいう撥水性成分とは、物質の表面で水との接触角を高める成分のことをいう。セルロース多孔質体が撥水性成分を含むことで、該セルロース多孔質体が水を吸収または吸着しにくくなる。本実施形態では、撥水性成分も凍結乾燥させるので、撥水性成分が混合分散媒に均一分散した状態で乾燥される。そのため、撥水性成分自体も多孔質となり、ナノレベルでの表面粗さが増すことから撥水性も発現しやすい。また、本実施形態では、撥水性成分をセルロースナノファイバー質量に対して0.1〜1000質量%含むことが好ましい。より好ましくは、0.5〜500質量%、さらに好ましくは1〜100質量%である。撥水性成分が1000質量%を超えると、セルロース多孔質体中のセルロースナノファイバー分の比率が低くなるため、セルロース多孔質体の強度が低下する場合がある。一方、撥水性成分が0.1質量%未満であると、セルロース多孔質体中の撥水性成分の比率が低くなるため、撥水性が得られなくなる場合がある。
(数1)耐吸湿性(%)=吸湿後の体積/吸湿前の体積×100
本実施形態に係るセルロース多孔質体の製造方法では、水と、セルロースナノファイバーと、撥水性成分、必要に応じて、有機溶媒や後述する助剤等を混合して混合液とする。混合液中のセルロースナノファイバーの形態は、例えば、セルロースナノファイバーがバラバラに分散した形態である。混合液の調製は、(1)解繊工程で水にセルロースナノファイバーを分散させたセルロースナノファイバー分散液を調製した後、セルロースナノファイバー分散液に、撥水性成分と有機溶媒を添加して行う方法、(2)解繊工程で水と有機溶媒の混合液にセルロースナノファイバーを分散させたセルロースナノファイバー分散液を調製した後、セルロースナノファイバー分散液に、撥水性成分を添加して行う方法、(3)解繊工程で水と撥水性成分の混合液にセルロースナノファイバーを分散させたセルロースナノファイバー分散液を調製した後、セルロースナノファイバー分散液に、有機溶媒を添加して行う方法、(4)解繊工程で水と有機溶媒と撥水性成分の混合液にセルロースナノファイバーを分散させて行う方法がある。このうち、セルロースナノファイバーをより均一に分散させるためには、(1)の方法が好ましい。混合液の均一化方法は、特に限定は無いが、例えば、マグネティックスターラー、プロペラ型ミキサー、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサーを用いる方法である。さらに、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散機、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダーなどのより強力な装置を使用することもできる。混合液の調製工程において、有機溶媒にセルロースナノファイバー水分散液を加えると、凝集物が生じる場合がある。
本実施形態に係るセルロース多孔質体の製造方法は、混合液を凍結乾燥する。凍結乾燥とは、混合液を凍結し、凍結状態のまま減圧して分散媒を昇華させることによって乾燥する手法である。凍結乾燥における混合液の凍結方法は特に限定されないが、例えば、混合液を冷媒の中に入れて凍結させる方法、混合液を低温雰囲気下に置いて凍結させる方法、混合液を減圧下に置いて凍結させる方法などがある。好ましくは、混合液を冷媒に入れて凍結させる方法である。混合液の凍結温度は、混合液中の分散媒の凝固点以下としなければならず、−50℃以下であることが好ましく、−100℃以下であることがより好ましい。凍結温度が高い、つまり凍結速度が遅いと、水と有機溶媒とを混合した混合分散媒を用いても、分散媒の結晶が大きくなる場合があり、その結晶周囲にセルロースナノファイバーが濃縮され凝集体を生じてしまう場合がある。一方、凍結温度を低くすること、つまり凍結速度を速くすることで分散媒を非晶に近い状態で凍結することができる。
乾燥質量で2.00g相当分のNBKP(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成るもの)と、0.025gのTEMPO(2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐1‐オキシラジカル)と、0.25gの臭化ナトリウムと、を水150mlに分散した後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、パルプ(NBKP)1.00gに対して、次亜塩素酸ナトリウムの量が5.00mmolとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。反応中は、0.50mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10に保った。2時間反応した後、反応物をろ過し、十分水洗することで酸化セルローススラリーを得た。0.15質量%の酸化セルローススラリーを、バイオミキサー(BM−2、日本精機製作所社製)を用いて、15000回転で5分間解繊処理し、更に超音波分散機(型式US−300E、日本精機製作所社製)で20分間解繊処理した。その後、遠心分離によって粗大繊維の除去を行い、透明のセルロースナノファイバー水分散液を得た。この分散液を、TEM(JEM2000−EXII、日本電子社製)を用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維直径は4nmであった。また、SEM(SU8010、日立ハイテクノロジー社製)を用いて倍率10000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維長は0.8μmであった。得られたセルロースナノファイバー水分散液Aは、固形分濃度が0.50%となるまでロータリーエバポレーターで濃縮し、以降の工程で用いた。
セルロースナノファイバー水分散液Bとして、セルロースナノファイバーがバクテリアセルロース(BC)であるものを用いた。ナタデココ(フジッコ社製、約1cm角)をカッターナイフで2mm角程度に細かく刻み、ナタデココ内に含まれるシロップを水に置換した。これをバイオミキサー(BM−2、日本精機製作所社製)を用いて、10000回転にて2分間解繊し、超音波分散機(型式US−300E、日本精機製作所社製)で10分間解繊処理してBCの水分散液を得た。得られたBCの水分散液を、TEMを用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維直径は、24nmであった。セルロースナノファイバー水分散液B中のセルロースナノファイバーの固形分濃度は、0.50%に調整した。
NBKP(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成るもの)を水に分散した後、高圧ホモジナイザー(型式アルティマイザーHJP−25005、スギノマシン社製)を用いて、230MPa、30回処理を行った。得られたセルロースナノファイバー水分散液CをTEMを用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維直径は、31nmであった。セルロースナノファイバー水分散液C中のセルロースナノファイバーの固形分濃度は、10%に調整した。
撥水性成分Aは、フッ素系撥水剤(アサヒガードAG−E080、旭硝子社製)を不揮発分(105℃)濃度が1.0%となるよう水で希釈した。撥水性成分Bは、シリコーン系撥水剤(TSW831、モメンティブ社製)と触媒(CW80、モメンティブ社製)を有効成分比2:1で混合し、TSW831の不揮発分濃度が1.0%となるよう水で希釈した。撥水性成分Cは、ワックス系撥水剤(WR3936、星光PMC社製)を不揮発分濃度が1.0%となるよう水で希釈した。撥水性成分Dは、アルコキシシランの加水分解縮合物であり、メチルトリメトキシシラン(多摩化学工業株式会社製)200gを、触媒としての2%塩酸3.2gとともに、純水39.8gに少しずつ添加し、1時間攪拌したものを加水分解溶液とした。この溶液を固形分濃度が1.0%となるよう水で希釈した。各撥水性成分はそれぞれ以降の工程で用いた。
[混合液の調製工程]
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、24.0gの水、5.0gの撥水性成分A及び1.0gのt‐ブチルアルコールを加え、容器に蓋をしてマグネティックスターラーで5分間攪拌して混合液を得た。混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で98:2であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
混合液の調製工程で得られた混合液をナス型フラスコに入れ、回転させながら液体窒素(−196℃)に浸した。混合液が完全に凍結したら、凍結乾燥機(VD−250F TAITEC社製)を用いて、分散媒を昇華させることで乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。また、真空到達時の圧力は50Pa以下であった。さらに、得られたセルロース多孔質体に120℃、10分間の熱処理を加えた。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、20.0gの水、5.0gの撥水性成分A及び5.0gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で90:10であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、17.5gの水、5.0gの撥水性成分A及び7.5gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、15.0gの水、5.0gの撥水性成分A及び10.0gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で80:20であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、12.5gの水、5.0gの撥水性成分A及び12.5gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で75:25であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、10.0gの水、5.0gの撥水性成分A及び15.0gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で70:30であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、5.0gの水、5.0gの撥水性成分A及び20.0gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で60:40であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、17.5gの水、5.0gの撥水性成分A及び7.5gの2‐プロパノールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水と2‐プロパノールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液A0.20gに、43.1gの水、1.0gの撥水性成分A及び7.5gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.002%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は1000%であった。
セルロースナノファイバー分散液Aをロータリーエバポレーターにて、固形分濃度が2.0%となるまで濃縮した。このセルロースナノファイバー分散液25.0gに、7.6gの水、10.0gの撥水性成分A及び7.4gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は1.00%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は20%であった。
セルロースナノファイバー水分散液Aに替えてセルロースナノファイバー水分散液Bを用いた以外は実施例3と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液C23.8gに、16.8gの水、2.4gの撥水性成分A及び7.1gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は4.75%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は1%であった。
セルロースナノファイバー分散液C23.8gに、18.9gの水、0.24gの撥水性成分A及び7.1gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は4.75%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は0.1%であった。
撥水性成分Aに替えて撥水性成分Bを用いた以外は実施例3と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Bの不揮発分質量比率は50%であった。
撥水性成分Aに替えて撥水性成分Cを用いた以外は実施例3と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Cの不揮発分質量比率は50%であった。
撥水性成分Aに替えて撥水性成分Dを用いた以外は実施例3と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Dの不揮発分質量比率は50%であった。
[セルロースナノファイバー水分散液Aの調製工程]で得られた酸化セルローススラリー(ナノファイバー化していない)を固形分濃度で0.50%に調製し、この酸化セルローススラリー400gに、350gの水、100gの撥水性成分A及び150gのt‐ブチルアルコールを加え、高圧ホモジナイザー(型式アルティマイザーHJP−25005、スギノマシン社製)を用いて、230MPa、4回処理を行った。得られた混合液から50gを採取し、実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。尚、TEMを用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、セルロースナノファイバーの数平均繊維直径は、8nmであった。
得られたセルロース多孔質体に熱処理を加えなかった以外は実施例3と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Bの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、25.0gの水及び5.0gの撥水性成分Aを加え、t‐ブチルアルコールを加えなかった以外は実施例1と同様にして混合液を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で100:0であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。凍結乾燥工程では、予め液体窒素で冷やしておいたナス型フラスコに前記混合液を1gずつ、合計50g入れ、液体窒素中でナス型フラスコを回転させながら急速凍結させた以外は、実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、5.0gの水、5.0gの撥水性成分A及び25.0gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして混合液を得た。この混合液はセルロースナノファイバーの分散状態が悪く、ゲル状物が発生したが、この混合液を用いて実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で50:50であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、22.5gの水及び7.5gのt‐ブチルアルコールを加え、撥水性成分を加えなかった以外は実施例1と同様にして乾燥体を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は0%であった。
セルロースナノファイバー分散液C32.7gに、9.8gの撥水性成分A及び7.5gのt‐ブチルアルコールを加えた以外は実施例1と同様にして乾燥体(セルロース多孔質体)を得た。ここで、混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は6.54%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で84:16であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は3%であった。
各実施例及び各比較例で得られた乾燥体について、その形状を、SEM(SU8010、日立ハイテクノロジー製)を用いて観察した。なお、観察前にサンプルを、Ptターゲットを有するイオンスパッター(E−1045、日立ハイテクノロジー製)にて、20mA、120秒の条件で導電性コーティングを行った。図1に実施例3で得られたセルロース多孔質体をSEMにより観察した画像を、図2に実施例3で得られたセルロース多孔質体を耐吸湿試験後にSEMにより観察した画像を、図3に比較例1で得られたセルロース多孔質体をSEMにより観察した画像を、図4に比較例1で得られたセルロース多孔質体を耐吸湿試験後にSEMにより観察した画像をそれぞれ示す。図1と図2から、撥水性成分を付与したセルロース多孔質体は、高湿度雰囲気下に曝されてもセルロースナノファイバー1本1本が独立したような形態を維持している。一方、図3と図4から、撥水性成分を付与されていないセルロース多孔質体は、高湿度雰囲気下に曝されるとセルロースナノファイバーが凝集して一部が膜状になっており、セルロースナノファイバーの多孔性が減少していることが分かる。
窒素吸着BET法による比表面積を自動比表面積測定装置(TriStarII3020、Micromeritics社製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
セルロース多孔質体を、温度30℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に1時間入れ、その前後の体積変化を確認した。尚、体積は、セルロース多孔質体の断面積と高さを計測して求めた。耐吸湿性は、(数1)から求めた。
(数1)耐吸湿性(%)=吸湿後の体積/吸湿前の体積×100
○:セルロース多孔質体の形状変化は殆ど無く、体積は元の90%以上を維持(実用レベル)。
△:セルロース多孔質体は吸湿して収縮しているが、体積は元の40%以上90%未満を維持(実用下限レベル)。
×:セルロース多孔質体は吸湿して著しく収縮し、体積は元の40%未満(実用不適レベル)。
セルロース多孔質体を蒸留水上に落とし、5秒後の撥水状態を目視で確認した。
○:セルロース多孔質体は蒸留水上で浮いており、吸水しない(実用レベル)。
△:セルロース多孔質体は蒸留水上で浮いているが、若干吸水している(実用下限レベル)。
×:セルロース多孔質体は蒸留水を吸収し、水中に沈みかけている(実用不適レベル)。
セルロースナノファイバー分散液A20.0gに、17.5gの水、5.0gの撥水性成分A及び7.5gのt‐ブチルアルコールを加えた容器に蓋をしてマグネティックスターラーで5分間攪拌して混合液を得た。混合液の全質量に対するセルロースナノファイバーの固形分濃度は0.20%であった。また、混合溶媒中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で85:15であり、セルロースナノファイバー固形分質量に対する撥水性成分Aの不揮発分質量比率は50%であった。この混合液を、目付が64g/m2、比表面積が1.80m2/gのガラス繊維からなる不織布に、湿潤状態での付着量が100g/m2となるよう付着させた。この不織布を湿潤状態のまま液体窒素に入れて凍結させた。その後、実施例1と同様に凍結乾燥させ、ガラス繊維からなる不織布にセルロース多孔質体を付着させた多孔質体(以降、当該多孔質体を多孔質体Xという。)を得た。得られた多孔質体Xの比表面積は2.54m2/gであった。ここで、多孔質体Xにおいて、ガラス繊維からなる不織布に対するセルロースナノファイバーと撥水性成分の質量比率は0.47%であり、この比率から多孔質体Xの不織布に付着したセルロース多孔質体の比表面積を算出すると、161m2/gであった。
Claims (5)
- セルロースナノファイバー同士が絡み合って該セルロースナノファイバー間に空隙が形成されたセルロース多孔質体であって、
該セルロース多孔質体が、撥水性成分を含み、該撥水性成分が多孔質となっていることを特徴とするセルロース多孔質体。 - 前記撥水性成分を前記セルロースナノファイバー質量に対して0.1〜1000質量%含むことを特徴とする請求項1に記載のセルロース多孔質体。
- 前記セルロース多孔質体は、窒素吸着BET法による比表面積が、20m2/g以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロース多孔質体。
- 前記セルロース多孔質体が、多孔質の支持体の表面又は表面及び内部に付着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のセルロース多孔質体。
- 前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が1〜100nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のセルロース多孔質体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016221720A JP6212622B2 (ja) | 2016-11-14 | 2016-11-14 | セルロース多孔質体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016221720A JP6212622B2 (ja) | 2016-11-14 | 2016-11-14 | セルロース多孔質体 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2013249296A Division JP6073210B2 (ja) | 2013-12-02 | 2013-12-02 | セルロース多孔質体及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017040032A JP2017040032A (ja) | 2017-02-23 |
JP6212622B2 true JP6212622B2 (ja) | 2017-10-11 |
Family
ID=58203091
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016221720A Active JP6212622B2 (ja) | 2016-11-14 | 2016-11-14 | セルロース多孔質体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6212622B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110128694B (zh) * | 2019-05-13 | 2021-09-21 | 浙江工业大学 | 一种疏水吸油型纤维素基气凝胶的制备方法 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5213785B2 (ja) * | 2009-04-01 | 2013-06-19 | 大王製紙株式会社 | 複合体シートの製造方法 |
JP4905814B2 (ja) * | 2009-10-09 | 2012-03-28 | 国立大学法人 東京大学 | 複合多孔材料及びその製造方法 |
JP5781321B2 (ja) * | 2011-02-15 | 2015-09-16 | 旭化成せんい株式会社 | 蛋白質吸着性セルロース不織布 |
JP2012167218A (ja) * | 2011-02-15 | 2012-09-06 | Seiko Pmc Corp | 微小管集合構造体及びその製造方法 |
JP6104139B2 (ja) * | 2013-12-02 | 2017-03-29 | 北越紀州製紙株式会社 | セルロース多孔質体及びその製造方法 |
-
2016
- 2016-11-14 JP JP2016221720A patent/JP6212622B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2017040032A (ja) | 2017-02-23 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5827178B2 (ja) | セルロース多孔質体及びその製造方法 | |
JP6073210B2 (ja) | セルロース多孔質体及びその製造方法 | |
JP6104139B2 (ja) | セルロース多孔質体及びその製造方法 | |
JP4998981B2 (ja) | 微細セルロース繊維 | |
JP5855337B2 (ja) | 多孔質体及びその製造方法 | |
JP6522396B2 (ja) | セルロース多孔質体の製造方法 | |
CN107630385B (zh) | 微细纤维状纤维素聚集体及其制造方法、以及微细纤维状纤维素分散液的再制造方法 | |
JP5852681B2 (ja) | 多孔質体及びその製造方法 | |
CN107847834B (zh) | 空气过滤器用过滤材料的制造方法 | |
JP2012007247A (ja) | 微細繊維状セルロースと無機化合物ナノ粒子のコンポジットシート | |
JP5993411B2 (ja) | 多孔質体及びその製造方法 | |
Wang et al. | Ultraviolet light enhanced sodium persulfate oxidation of cellulose to facilitate the preparation of cellulose nanofibers | |
JP6201027B2 (ja) | セルロース多孔質体及びその製造方法 | |
JP6212622B2 (ja) | セルロース多孔質体 | |
JP7266235B2 (ja) | セルロースナノファイバー及びハロイサイトナノチューブを含む組成物、それを含むフィルム及び複合体 | |
JP6299939B1 (ja) | 増粘剤、組成物及びシート | |
JP5883478B2 (ja) | 多孔質体及びその製造方法 | |
JP6882157B2 (ja) | エアフィルタ用濾材の製造方法 | |
JP2023115733A (ja) | セルロース多孔質体の製造方法 | |
JP7232072B2 (ja) | 変性セルロースナノファイバー、ガスバリア用材料及びガスバリア性成形体 | |
JP7350570B2 (ja) | 修飾セルロースナノファイバーおよびその製造方法 | |
JPWO2017208600A1 (ja) | セルロース微細繊維の製造方法 | |
JP2023105988A (ja) | 粉体の製造方法および粉体 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20170905 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20170915 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6212622 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |