JP6212065B2 - セリアジルコニア複合酸化物粒子とその製造方法 - Google Patents

セリアジルコニア複合酸化物粒子とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セリアジルコニア複合酸化物粒子とその製造方法に関する。
セリア(CeO)は、セリウム(Ce)の4価(Ce4+)と3価(Ce3+)との間の価数変化に伴い酸素を吸蔵および放出し得る。このような特性は、環境雰囲気の酸素濃度に応じて容易に発現されることから、セリアは自動車等の車両の排気ガス浄化用触媒の酸素吸蔵材料(助触媒)等として広く利用されている。しかしながら、セリアは4価から3価へ価数変化するときに体積膨張を伴うため、セリア単独では酸素の放出が行われ難い場合がある。そこで、セリアにCeよりもイオン半径の小さなZrを添加してセリアジルコニア固溶体からなる複合酸化物粒子とすることで、Ceの価数変化に伴う安定的な体積変化を可能とし、酸素吸蔵能を向上させることが行われている。このようなセリアジルコニア複合酸化物粒子に関する従来技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
特許第2947449号公報 特許第5330047号公報
特許文献1においては、熱加水分解の手法により、例えば80℃〜350℃程度の比較的低い温度環境でセリアジルコニア固溶体を生成し得ることが開示されている。しかしながら、実用に供し得る程度に結晶性の良好なセリアジルコニア固溶体を得るには、例えば800℃程度での焼成が必要であった。
また、従来より、水熱法、共沈法等によりセリアジルコニア複合酸化物粒子を製造し得ることが知られている。しかしながら、例えば排気ガス浄化用触媒等としてのセリアジルコニア複合酸化物粒子の開発は未だ発展段階にあり、新しい製造方法が提供されればこの酸化物粒子の新規の特性開発等の可能性が広がるために好ましい。例えば、自動車の排気ガスの浄化に用いる触媒の助触媒等として好適なセリアジルコニア微粒子を製造できれば有用である。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、新規なセリアジルコニア複合酸化物粒子の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明は、セリアジルコニア複合酸化物粒子の製造方法を提供する。この製造方法は、セリウム源とジルコニウム源とを含む溶液を用意すること;上記溶液中にラジカルを発生させること、これにより上記溶液中に上記セリウム源と上記ジルコニウム源とが酸化されてなる複合酸化物粒子を生成する;を含むことを特徴としている。
すなわち、ここに開示される技術においては、セリウム源とジルコニウム源とを原子レベルで均一化した状態を創り出し、ラジカルの作用によりこれらの原料を酸化して酸化物を得るようにしている。このような構成により、例えば室温環境において、セリウムとジルコニウムとが均一に配合されてなるセリアジルコニア複合酸化物粒子を製造することができる。
なお、特許文献2には、セラミックス粉末の分散性を向上させることを目的として、媒質中に原料セラミックス粉末と分散剤とを投入し、媒質中にラジカルを発生させることが開示されている。しかしながら、ここに開示される技術においては、セリアジルコニア複合酸化物の粒子そのものを製造するためにラジカルを利用する点において、上記特許文献2に開示される技術とは本質的に区別され得る。
ここに開示される製造方法における好ましい一態様では、上記ラジカルは、上記溶液中でプラズマを生じさせることにより発生させることを特徴としている。
これにより、比較的簡便な構成で溶液中にラジカルを供給することができ、セリアジルコニア複合酸化物粒子を効率的に製造することが可能とされる。
ここに開示される製造方法における好ましい一態様において、上記複合酸化物粒子は、平均粒子径が50nm以上500nm以下であることを特徴としている。
これにより、例えば、ナノレベル(50nm〜100nm程度)ないしはサブミクロンレベル(100nm〜500nm程度)の大きさの粒子(典型的には粉末)として、セリアジルコニア複合酸化物粒子を製造することができる。
なお、本明細書において、セリアジルコニア複合酸化物粒子の平均粒子径は、特にことわりの無い限り、電子顕微鏡等の観察手段により観察される100個以上の粒子について計測される円相当径の算術平均値を意味する。
ここに開示される製造方法における好ましい一態様において、上記複合酸化物粒子は、X線回折パターンにおける29°近傍の回折ピークの半値幅(FWHM)が0.45°以下であることを特徴としている。この構成により、例えば室温環境において、結晶性の良好なセリアジルコニア複合酸化物粒子を得ることができる。
ここに開示される製造方法における好ましい一態様において、上記複合酸化物粒子は、BET法により測定される比表面積が40m/g以上であることを特徴としている。この構成により、例えば室温環境において、比表面積の大きいセリアジルコニア複合酸化物粒子を得ることができる。
ここに開示される製造方法における好ましい一態様において、上記セリウム源と上記ジルコニウム源とに加え、さらに、ネオジウム,ランタンおよびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属源を含む上記溶液を用意することを特徴としている。
これにより、上記金属元素が結晶構造内に導入されたセリアジルコニア複合酸化物粒子を得ることができる。
ここに開示される製造方法における好ましい一態様において、さらに、上記複合酸化物粒子が生成された上記溶液中に分散剤を添加してラジカルを発生させることを含むことを特徴としている。
これにより、製造されたセリアジルコニア複合酸化物粒子の表面に均一に分散剤を接触させることができ、例えば極めて微細であっても分散性に優れたセリアジルコニア複合酸化物粒子を得ることができる。
他の側面において、ここに開示される製造方法は、セリアジルコニア複合酸化物粒子を提供する。このセリアジルコニア複合酸化物粒子は、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物からなる粒子であって、上記のいずれかに記載の製造方法により製造されたものであることを特徴としている。これにより、例えば、微細な粒子形状を有しつつ、結晶性の高いセリアジルコニア複合酸化物粒子が提供される。
また、さらに他の側面において、ここに開示される製造方法は、セリアジルコニア複合酸化物粒子を提供する。このセリアジルコニア複合酸化物粒子は、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物からなる粒子であって、BET法により測定される比表面積が40m/g以上であり、X線回折パターンにおける29°近傍の回折ピークの半値幅(FWHM)が0.45°以下であることを特徴としている。これにより、上記のような比較的大きい比表面積を有しつつ、結晶性の高いセリアジルコニア複合酸化物粒子が提供される。
ここに開示される複合酸化物粒子の好ましい一態様について、上記複合酸化物からなる粒子は、一般式:CeZr1−x−y;で表される組成を有することを特徴としている。ここで、式中、MはCeおよびZr以外の金属元素からなる群から選択される少なくとも1種である。また、xおよびyは、それぞれ0<x≦0.6,0≦y≦0.3を満たす。
これにより、例えば、内燃機関の排気ガス浄化反応を触媒するスリーウエイ(three way)転化触媒(TWC)の働きを助ける反応促進機能をもつ成分、すなわち助触媒等として好適な組成のセリアジルコニア複合酸化物粒子を提供することができる。
ここに開示される複合酸化物粒子の好ましい一態様について、前記金属元素は、希土類元素およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含むことを特徴としている。
これにより、上記助触媒としてより一層有用な組成のセリアジルコニア複合酸化物粒子が提供される。
ここに開示される複合酸化物粒子の好ましい一態様について、更に分散剤を含み、上記複合酸化物からなる粒子が上記分散剤により被覆されていることを特徴としている。
これにより、分散性に優れたセリアジルコニア複合酸化物粒子が提供される。
また、ここに開示される技術は、上記のいずれかに記載の複合酸化物粒子からなる粉末を提供する。この粉末において、上記複合酸化物粒子は、全体の50個数%以上が、平均アスペクト比が1.2以下の略球形粒子からなる、セリアジルコニア複合酸化物粉末であることを特徴としている。これにより、粒子形状が均質で、例えば、高温環境に晒された場合であっても粒子同士の凝集や粒成長が生じ難く、粒子形状を保ち得るセリアジルコニア複合酸化物粉末が提供される。また、粒子が略球形であることで、分散性や塗布性、充填性等の特性の良好なセリアジルコニア複合酸化物粉末が提供される。
なお、本明細書において平均アスペクト比は、電子顕微鏡等の観察手段により観察された100個以上の複合酸化物粒子の平面視像(二次電子像等)について求められたアスペクト比の算術平均値を意味する。このアスペクト比は、当該複合酸化物粒子に外接する長方形における長辺の長さをa、短辺の長さをbとしたとき、a/bで定義される。
以上のように、ここに開示される技術によると、結晶性が高く微細なセリアジルコニア複合酸化物粒子または粉末を、例えば400℃以下の低い温度領域(典型的には、10℃〜30℃の室温領域)で製造することができる。このようなセリアジルコニア複合酸化物粒子は、例えば比表面積が大きく、酸素吸蔵放出能力に優れたものであり得る。したがって、例えば、自動車等の内燃機関から排出される排気ガスを浄化する三元触媒の排ガス浄化能力を高めるために用いられる、助触媒等の触媒用材料として好適に使用することができる。このような観点において、ここに開示される技術は、このセリアジルコニア複合酸化物粒子を備えた排ガス浄化装置をも提供することができる。
一実施形態に係るセリアジルコニア複合酸化物粒子の製造方法を説明する模式図である。 実施例で得られたセリアジルコニア複合酸化物粒子のX線回折パターンを例示した図である。 実施例で得られたセリアジルコニア複合酸化物粒子の(A)加熱前および(B)加熱後の走査型電子顕微鏡(SEM)像を例示した図である。 実施例で得られたセリアジルコニア複合酸化物粒子の(a)STEM暗視野像、(b)同一視野におけるCe元素マップ、(c)同一視野におけるO元素マップおよび(d)Zr元素マップである。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、セリアジルコニア複合酸化物粒子の製造のための手順、条件、得られた該粒子の性状等)以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、原料等の入手・調製方法、ラジカルに関する一般的事項等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示されるセリアジルコニア複合酸化物粒子の製造方法は、本質的に、以下の工程1および工程2を含んでいる。また、必須ではないが、工程2の後に、工程3を実施することもできる。
1.調製溶液の用意
2.ラジカルによるセリアジルコニア複合酸化物粒子の生成
3.高分散処理
以下、各工程について説明する。
[1.調製溶液の用意]
工程1では、セリウム源とジルコニウム源とを含む溶液(以下、調製溶液という場合がある)を用意する。
この調製溶液は、例えば、液状媒体に、上記のセリウム源およびジルコニウム源が分散された分散液の形態であり得る。なお、液状媒体は、蒸留水、イオン交換水等の水を主体とする水系媒体と有機溶媒とのいずれであっても良い。例えば、後述の工程2において、プラズマを利用してラジカルを発生させる場合には、必ずしもこれに限定されるものではないが、水系媒体を用いるのが好ましい。水系媒体としては、水を主体とし(50質量%以上が水である)、水と均一に混ざり合うアルコールやケトン等の有機溶媒等が混合されたものを用いることができる。
セリウム源およびジルコニウム源としては、後述するラジカルの作用により酸化され得、セリアおよびジルコニアを形成し得る化学種であれば特に制限されない。
セリウム源としては、典型的には、調製溶液中でセリウム(III)イオン,セリウム(IV)イオン等のセリウムイオンの形態で存在するものであってよく、価数は制限されない。また、これらのセリウムイオンは任意の配位種が配位したセリウム錯体の形態であってよい。これらセリウム源は、いずれか1種が単独で含まれていても良いし、2種以上が混合して含まれていても良い。
ジルコニウム源としては、典型的には、調製溶液中でジルコニウム(IV)イオンの形態で存在するものであってよく、価数は制限されない。またジルコニウムイオンに任意の配位種が配位したジルコニウム錯体の形態であっても良い。これらジルコニウム源は、いずれか1種が単独で含まれていても良いし、2種以上が混合して含まれていても良い。
なお、上記セリウムおよびジルコニウムの錯体の配位種については特に制限されないが、例えば、一例として、ヒドロキシ錯体、アンミン錯体、シアノ錯体、ハロゲノ錯体等が例示される。
セリウム源およびジルコニウム源を含む調製溶液は、例えば、セリウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物や、水酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、さらには、カリウム複合酸化物、アンモニウム複合酸化物、ナトリウム複合酸化物などの複合酸化物等と、ジルコニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物や、水酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、さらには、カリウム複合酸化物、アンモニウム複合酸化物、ナトリウム複合酸化物などの複合酸化物等を水に溶解することで用意することができる。これら水媒体に溶解される化学種についても、セリウム源およびジルコニウム源とでいずれか1種ずつを用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
調製溶液におけるセリウム源およびジルコニウム源との割合は、セリアジルコニア複合酸化物粒子におけるセリアとジルコニアとの所望の化学量論比とすることができる。調製溶液におけるセリウム源およびジルコニウム源の濃度について特に制限はなく、例えば、一例として、各々のセリウム源およびジルコニウム源が、例えば元素(CeまたはZr)を基準として、1mmol/L〜10mol/L程度、より限定的には0.01mol/L〜8mol/L程度、例えば、0.1mol/L〜5mol/L程度となるように調製することが例示される。以下、濃度の単位「mol/L」を単に「M」として表記する場合がある。
[2.ラジカルによるセリアジルコニア複合酸化物粒子の生成]
工程2では、上記のように用意した調製溶液中に、ラジカルを発生させる。ラジカル(遊離基)は、不対電子を有し、一般には不安定で反応性に富む短寿命の中間体として存在し得る化学種(反応性ラジカルともいう)であり得る。そして典型的には、不対電子を反応対象に供給することで安定化する酸化性ラジカルであり得る。また、空気中の酸素および水分等として、通常の環境において酸素は自然に存在し得る元素である。したがって、調製溶液中に含まれるセリウム源およびジルコニウム源は、このラジカルの存在下で酸素と共に互いに反応してセリアジルコニア複合酸化物を生成する。ラジカルは調製溶液中に分散し得るため、セリアジルコニア複合酸化物は微細な粒子の形態で形成され得る。これにより、調製溶液中にセリアジルコニア複合酸化物粒子を製造することができる。
ここに開示される技術において、ラジカルを発生させる手段については特に制限されない。例えば、ラジカルの形成が可能な化学種を、ラジカル開始剤の存在下で反応させる方法や、ラジカルの形成が可能な化学種に熱,光,放射線,電子,プラズマ,超音波などのエネルギーを供給してラジカル化させる方法などが挙げられる。ナノレベルの大きさで均質なセリアジルコニア複合酸化物粒子を製造するとの観点からは、なかでもプラズマを利用して調製溶液中に直にラジカルを発生させることが好ましい。
図1は、プラズマの作用によりセリアジルコニア複合酸化物粒子3を製造する様子を説明する模式図である。この図1では、ガラス製ビーカーなどの容器に収容された調製溶液1中でプラズマ2を発生させている。調製溶液1は、液状媒体にセリウム源およびジルコニウム源が分散されることで調製されている。また、プラズマ2は、一対の電極10間に発生される。この電極10は、この図の例においては、所定の間隔(例えば0.1〜5mm程度)を以て調製溶液1中に配設されている。一対の電極6は、例えば、一例として、タングステン(W)等の良導電性金属からなる線材からなるものを用いることができる。この線材の表面は、絶縁部材によりコーティングされて、プラズマ発生用の電源14に接続されている。そして、この電源14から所定の条件の電圧を電極10間に印加する。これにより、一対の電極10間にプラズマ2を発生させることができる。なお、調製溶液1の電気伝導度が約300μS/cm未満であると、この溶液中でプラズマを発生することが困難となり得る。したがって、調製溶液1の電気伝導度が300μS/cm未満の場合は、例えば、塩化カリウム(KCl)等の電解質を溶解させる等して、調製溶液1の電気伝導度を300μS/cm以上(好ましくは300μS/cm〜2500μS/cm程、例えば1000μS/cm〜2000μS/cm)に調整しておくのが好ましい。
ここでプラズマ2により発生されるラジカル種は、例えば調製溶液1を構成する液状媒体の種類等により変化し得る。例えば、調製溶液1が水系溶媒を用いて調製された場合には、典型的には、水分子の化学結合が切断されて生じる水素ラジカル(・H),酸素ラジカル(・O),ヒドロキシラジカル(・OH),スーパーオキサイドアニオン(・O )等であり得る。これらの中でも、ヒドロキシラジカルは強い酸化力を示すため、かかるヒドロキシルラジカルを発生し得る液状媒体の使用が好ましい。なお、水系溶媒中でプラズマを発生させた場合には、上記ラジカル種以外にも、電子,水素イオン,水酸化物イオン,酸素イオン等が、活性が高められた状態で発生され得る。ここに開示される技術においては、ラジカル種に限らず、これらの活性イオン種による作用をセリウム源およびジルコニウム源の酸化反応に利用することができるために好ましい。
そして調製溶液1に含まれるセリウム源およびジルコニウム源は、ラジカル等の作用に基づき、例えば一例として、次式に従って反応する。ここでは、セリウム源およびジルコニウム源は、酸素ラジカルと結合することで酸化される。これにより、調製溶液1中に、セリアジルコニア複合酸化物粒子3を製造することができる。
Ce4++Zr4++2O2− → CeO・ZrO
Ce3++Zr4++O2−+2e→ CeO・ZrO
なお、液媒体中でプラズマを発生させることで複数の金属イオンから合金粒子を形成し得ることが知られている。しかしながら、液媒体中でプラズマを発生させることで、セリウム源およびジルコニウム源を酸化して酸化物粒子を形成することは、本発明者らにより初めて提案される事項である。
電極10の形状としては、例えば、平板状電極や棒状電極およびその組み合わせ等の様々な形態であってよい。電界を局所的に集中させ得るとの観点から、例えば直径が0.5mm〜3mm程度、好ましくは1mm〜2mm程度の線状電極10を好ましく用いることができる。この線状電極10は、電界集中を妨げる余分な電流を抑えるために、先端部(例えば、数mm程度)のみを露出させ、後の部分は絶縁部材等で絶縁しておくことが望ましい。絶縁部材は、例えばゴム製あるいは樹脂(例えば、フッ素樹脂)製であることが例示される。
プラズマを発生させるための電圧の印加条件は、電極10の形状、電極10間の距離、調製溶液1に含まれるセリウム源およびジルコニウム源の種類やその濃度等の条件等にもよるものの、例えば、以下の条件を目安に調整することができる。この様に比較的高い周波数の電圧をパルス状に印加することで、液媒体中に安定してプラズマを発生させることができるために好ましい。
電圧:約1000V〜2000V(好ましくは1400V〜1800V)
周波数:約1kHz〜100kHz(好ましくは10kHz〜90kHz)、
パルス幅:約1μs〜10μs(好ましくは1μs〜5μs)
調製溶液1中でプラズマ2を発生させる場合、気相中で発生させる場合よりも、高いエネルギー状態にある反応活性種(ラジカルおよびイオン)がプラズマ2を中心に高密度で生成され得る。そのため、ラジカル等の反応活性種を調製溶液1中のセリウム源およびジルコニウム源と確実に反応させることができ、比較的寿命の短いラジカルであっても反応に有効に寄与させることができる。これにより、高効率にセリアジルコニア複合酸化物粒子3を製造することができる。
なお、ここでは、調製溶液1中でプラズマ2を発生させることにより、ラジカルを生成させる例に従い本発明について説明した。しかしながら、上述のとおり、調製溶液1中にラジカルを生成させる手法がこれに限定されないことは、当業者であれば理解し得る。例えば、具体的な一例として、水を含む調製溶液1に超音波を照射することで、調製溶液1中にキャビテーションバブルとともに水素ラジカル(・H),酸素ラジカル(・O),ヒドロキシラジカル(・OH),スーパーオキサイドアニオン(・O )等を発生させることができる。また、含酸素雰囲気または含酸素液媒体に波長200nm以下程度の紫外線(Ultra Violet:UV)、遠紫外線、真空紫外線(Vacuum Ultra Violet:VUV)等を照射することで、酸素ラジカル(・O)を始めとして媒質に応じた各種ラジカルを生成することができる。このように発生されたラジカルも、本発明のセリアジルコニア複合酸化物粒子3の製造に利用することができる。
また、調製溶液1中には、セリウム源およびジルコニウム源に加えて、CeおよびZr以外の金属元素からなる金属源を含ませることができる。かかる金属元素としては特に制限はなく、典型金属元素、半金属元素、遷移金属元素、希土類元素等の中から任意に選択することができる。ここに開示される技術においては、なかでも3価の陽イオンとなり得る金属元素であるのが好ましく、例えば希土類元素やアルミニウムであることが好ましい。なかでも、ネオジウム(Nd),ランタン(La)およびアルミニウム(Al)等の金属源を特に好ましく含ませることができる。調製溶液1中にこれらの金属源を含ませた状態でラジカルを発生させることで、これら金属元素を結晶構造中に均一に含むセリアジルコニア複合酸化物粒子3を作製することができる。このような金属元素を結晶構造中に均一に含むセリアジルコニア複合酸化物粒子3は、熱安定性が向上されるために好ましい。
これらの付加的な金属源は、上記のセリウム源およびジルコニウム源と同様に、ラジカルの作用によりこれら金属を形成し得る化学種であれば特に制限されない。典型的には、希土類元素およびアルミニウムのイオンであってよく、より好ましくはネオジウム,ランタンおよびアルミニウムのイオンであり、イオンの価数等は制限されない。典型的には、3価のイオンであり得る。また、これらのイオンは任意の配位種が配位した錯体の形態であってよい。これら金属源は、いずれか1種が単独で含まれていても良いし、いずれか2種以上が組み合わされて含まれていても良い。例えば、上記のネオジウム,ランタンおよびアルミニウムの種全てが組み合わされて含まれていても良い。この金属源は、所望の組成のセリアジルコニア複合酸化物粒子3が得られるように、調製溶液1中に化学量論比で含ませることができる。
また、調製溶液1中には、セリウム源およびジルコニウム源に加えて、任意の成分として、分散剤を添加することができる。ここで分散剤とは、調製溶液1中に形成されたセリアジルコニア複合酸化物粒子3の分散安定性を向上させることができる化合物一般をいう。この分散剤は、例えば、セリアジルコニア複合酸化物粒子3に作用し、該酸化物粒子3の凝集や粒成長を抑制・阻害する作用を有する化合物であることが好ましい。これにより、製造される酸化物粒子3の粒径や形状が均質でかつ微細なものとなり、例えば、比表面積の大きい酸化物粒子3を製造することができる。
この分散剤としてその種類等は特に制限されず、例えば、調製溶液1を構成する液状媒体の性状に応じて水系分散剤と非水系分散剤とから適宜選択して用いることができる。また、このような分散剤としては、高分子型分散剤、界面活性剤型分散剤(低分子型分散剤ともいう)または無機型分散剤等であってよく、また、これらはアニオン性、カチオン性または非イオン性のいずれであってもよい。例えば、水系の液状媒体を用いる場合に使用し得る分散剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC),ポリビニルピロリドン(PVP),アクリル樹脂エマルジョン,水溶性アクリル系ポリマー,スチレンエマルジョン,シリコンエマルジョン,アクリルシリコンエマルジョン,フッ素樹脂エマルジョン,エチレンビニルアルコール(EVA)エマルジョン,酢酸ビニルエマルジョン,塩化ビニルエマルジョン,ウレタン樹脂エマルジョン等からなる分散剤が挙げられる。また、有機系の液状媒体を用いる場合に使用し得る分散剤としては、ポリビニルアセタール,ポリビニルピロリドン(PVP),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),アクリル樹脂,アルキド樹脂,ウレタン樹脂等からなる分散剤が挙げられる。調製溶液1に添加される分散剤の量は、分散剤として使用する化合物や、セリウム源およびジルコニウム源の濃度等に応じて、所望の目的が達成され得るように適宜調整することができる。おおよその目安として、例えば、調製溶液1中に0.5g/L〜50g/L程度の割合で分散剤を添加することが例示される。
なお、より大量の調製溶液1を用いてセリアジルコニア複合酸化物粒子3を製造する場合においては、ラジカル等の反応活性種とセリウム源およびジルコニウム源との接触効率を高めるために、マグネチックスターラー等の撹拌手段12を用いて調製溶液1を撹拌するようにしても良い。また、図1では、調製溶液1中の1カ所でプラズマ2を発生させているが、電極10を複数用いて調製溶液1中の複数の箇所においてプラズマ2を発生するようにしても良い。これにより、高効率にセリアジルコニア複合酸化物粒子3を製造することができる。
なお、以上のセリアジルコニア複合酸化物粒子3の製造は、室温環境において実施することができる。また、調製溶液1中で発生させるプラズマは低温プラズマであり、プラズマ相以外の液相温度は比較的低温(例えば50℃以下、好ましくは10℃〜30℃程度の室温領域)に保つことができる。なお、発生するプラズマ量と調製溶液1の量との関係によっては、プラズマの発熱により調製溶液1が加熱されることがあり得るが、このような場合は調製溶液1を冷却しても良い。したがって、生成されたセリアジルコニア複合酸化物粒子3の粒成長は抑制される。すなわち、ここに開示されるセリアジルコニア複合酸化物粒子3の製造においては、該複合酸化物粒子の核生成を促す一方で、生成した粒子核についての粒成長は抑制され得る。これらのことから、ここで開示されるセリアジルコニア複合酸化物粒子3の製造方法においては、微細な(例えば50nm〜500nm程度)の複合酸化物粒子を簡便かつ高効率に形成することが可能となる。
[3.高分散処理]
なお、ここに開示される技術においては、任意工程として、セリアジルコニア複合酸化物粒子3の高分散処理を実施することができる。この工程3では、上記のとおり複合酸化物粒子3が生成された後の調製溶液1中に、分散剤を添加してラジカルを発生させる。これにより、ラジカルの作用によりセリアジルコニア複合酸化物粒子3の表面に分散剤を強固に固定することができ、セリアジルコニア複合酸化物粒子3の分散性を高めることができる。例えば、乾燥状態および湿潤状態におけるセリアジルコニア複合酸化物粒子3の凝集を抑制し得ることに加え、任意の液状媒体中における凝集性をも抑制し得る。これにより、例えば、任意の分散媒中にセリアジルコニア複合酸化物粒子3が高度に分散された分散液を調製することが可能となる。
ここで用いる分散剤についても特に制限はなく、調製溶液1中に形成されたセリアジルコニア複合酸化物粒子3の分散安定性を向上させることができる化合物一般を使用することができる。例えば、上記の工程2で使用し得る分散剤と同種のものから適宜選択して使用することができる。分散剤の濃度についても特に制限はなく、形成されたセリアジルコニア複合酸化物粒子3の量に応じて適切な量の分散剤を加えればよい。
以上のようにして調製溶液1中に形成されたセリアジルコニア複合酸化物粒子3は、例えば、ろ過等の公知の液媒体の分離手法を利用して回収することができる。必要に応じて、回収されたセリアジルコニア複合酸化物粒子3を水洗する等しても良い。また、セリアジルコニア複合酸化物粒子3が調製溶液1中に含まれた形態で使用に供したり、保存したりすることもできる。
以上のここに開示される技術により作製されるセリアジルコニア複合酸化物粒子は、典型的には、一般式:CeZr1−x−y;で表される組成を有している。ここで式中のMは、CeおよびZr以外の金属元素からなる群から選択される少なくとも1種であり得る。この金属元素としては特に制限はなく、上述の製造工程2の欄で説明したように、典型金属元素、半金属元素、遷移金属元素、希土類元素等の中から任意に選択することができる。ここに開示される技術においては、中でも3価の陽イオンとなり得る金属元素であるのが好ましく、例えば希土類元素やアルミニウムであることが好ましい。なかでも、ネオジウム(Nd),ランタン(La)およびアルミニウム(Al)等の金属元素を含むことが特に好ましい。この金属元素Mとしては、いずれか1種を単独で含んでも良いし、いずれか2種以上を組み合わせて含んでも良い。
また、式中のxはCe元素の割合を示し、0<x≦0.6を満たしている。セリアジルコニア複合酸化物粒子の環境雰囲気に対する耐性膨張の影響を低減するために、xは0.1≦x≦0.6であることが好ましく、0.1≦x≦0.5であることがより好ましい。また、式中のyは、上記金属元素Mの割合を示し、0≦y≦0.3を満たす。ここで、例えば高温環境(例えば、800℃以上1100℃以下程度の高温)における粒成長および比表面積減少を抑制するとの観点からは、0.01≦y≦0.3であることが好ましく、0.02≦y≦0.3であることがより好ましい。このような組成であることで、例えば、後述の助触媒としての用途に好適に使用し得るセリアジルコニア複合酸化物粒子が実現される。
以上のここに開示される技術により作製されるセリアジルコニア複合酸化物粒子は、調製溶液1での前記セリウム源と前記ジルコニウム源とが、ラジカルとの接触により誘起される酸化反応を介して形成される。したがって、酸化の起点は局所的で、セリアジルコニア複合酸化物粒子は比較的粒成長が抑制された環境で形成される。したがって、セリアジルコニア複合酸化物粒子は、典型的には複数の微細な粒子、つまり微細な粉末として形成され得る。このセリアジルコニア複合酸化物粒子の平均粒子径は、典型的には、約50nm以上500nm以下、好ましくは約55nm以上300nm以下、さらに好ましくは約60nm以上200nm以下であり得る。
また、セリアジルコニア複合酸化物粒子は、核生成と粒成長とが調製溶液1中で進行し、余分なストレスを受けないことから、結晶性が良好で、略球形状の粒子として得ることができる。
この結晶性については、例えば、CuKα線を用いて測定される粉末X線回折(X-Ray Diffraction)分析により評価した場合、X線回折パターンにおける29°近傍の回折ピークの半値幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)が0.45°以下であることにより把握することができる。29°近傍の回折ピークとは、セリアおよびセリアジルコニア複合酸化物(固溶体)に帰属されるメインピークであり得る。上記のとおりの微細な粒子でありながら、例えば400℃以上の熱処理を行うことなく、このように結晶性の良好なセリアジルコニア複合酸化物粒子はこれまでに知られていない。
また粒子が略球形状であることは、例えば、複合酸化物粒子からなる粉末について、平均アスペクト比が1.2以下の粒子の占める割合が全体の50個数%以上であることにより把握することができる。
さらに、上記のような微細な平均粒子径に由来して、ここで提供されるセリアジルコニア複合酸化物粒子は、BET法により測定される比表面積が約40m/g以上、典型的には約45m/g以上、好ましくは約50m/g以上、特に好ましくは約55m/g以上のものとして把握され得る。このように結晶性が良好ながら高比表面積を維持し得るセリアジルコニア複合酸化物粒子についても、これまでに知られていない材料であり得る。
以上のように、ここに開示されるセリアジルコニア複合酸化物粒子は、結晶性が良好ながら微細で、常温から高温にかけて(例えば、0℃〜1200℃程度の範囲において)高比表面積を維持し得る。したがって、このような温度域で使用される酸素吸蔵材料として特に好ましく用いることができる。
例えば、自動車等の内燃機関の排気ガス中には、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)等の有害成分が含まれており、排気ガスを放出する際にはこれらの有害成分を、酸化還元反応を用いて浄化する必要がある。このような内燃機関からの排気ガス処理のための触媒としては、CO、THC及びNOxの酸化および還元を同時に触媒することができる三元触媒(Three Way Catalysis:TWC)が用いられている。そしてこの三元触媒による上記三成分の浄化効率を高く維持するために、排ガス中の酸素濃度が高いときには酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低いときには酸素を放出する能力、すなわち酸素ストレージ能(Oxygen Storage Capacity:OSC)を有する助触媒の使用が欠かせない。ここに開示されるセリアジルコニア複合酸化物粒子は、このような排ガス浄化処理用の触媒材料(典型的には助触媒)として極めて有用であると言える。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
(例1)
硝酸セリウム(III)六水和物を用いて、1Mの濃度でCe3+イオンを含むCe含有水溶液を調製した。また、硝酸ジルコニウムを用いて、1Mの濃度でZr3+イオンを含むZr含有水溶液を調製した。そしてこのCe含有水溶液90mLと、Zr含有水溶液90mLとを容器内で混合し、CeイオンとZrイオンとを1:1のモル比で含む混合溶液(180mL)を用意した。
そしてこの混合溶液中に、直径が1.0mmのタングステンワイヤからなる一対の棒状電極の先端を浸漬し、電極間に高周波電圧を印加することで当該混合溶液中にプラズマを発生させた。プラズマ発生条件は、タングステン電極間距離を約2mmで一定とし、電圧1600V,周波数20kHz、パルス幅2μmの高周波パルス電圧を、印加時間10分間として印加した。また、プラズマ発生中、混合溶液はマグネチックスターラーを用いて撹拌した。混合溶液は無色透明であったが、プラズマの発生直後から白色に変色することが確認された。そして、プラズマを発生させた後の混合溶液を遠心分離し、80℃で乾燥させることで、微細な粉末状の生成物を得た。これを例1の粉末とよぶ。
(例2)
例1と同様にして180mLの混合溶液を用意し、この混合溶液に10gのポリビニルピロリドン(PVP)を溶解させてから、混合溶液中にプラズマを発生させた。そしてその他の条件は例1と同様にして、例2の粉末を得た。
(例3)
例1と同様にして180mLの混合溶液を用意し、この混合溶液にネオジウム(Nd)1.75gを溶解させてから、混合溶液中にプラズマを発生させた。そしてその他の条件は例1と同様にして、例3の粉末を得た。
(例4)
例1と同様にして180mLの混合溶液を用意し、この混合溶液にランタン(La)1.73gを溶解させてから、混合溶液中にプラズマを発生させた。そしてその他の条件は例1と同様にして、例4の粉末を得た。
(例5)
例1と同様にして180mLの混合溶液を用意し、この混合溶液にアルミニウム(Al)1.50gを溶解させてから、混合溶液中にプラズマを発生させた。そしてその他の条件は例1と同様にして、例5の粉末を得た。
(例6)
硝酸二アンモニウムセリウム(IV)を用いて、1Mの濃度でCe4+イオンを含むCe4+含有水溶液を調製した。次いで、このCe4+含有水溶液90mLと、例1と同様のZr含有水溶液90mLとを容器内で混合し、180mLの混合溶液を用意した。そしてこの混合溶液に対し、例1と同様にしてプラズマを発生させることで、例6の粉末を得た。
(例7)
例6と同様にして180mLの混合溶液を用意し、この混合溶液にネオジウム(Nd)1.75gを溶解させてから、混合溶液中にプラズマを発生させた。そして混合溶液に対し、例1と同様にしてプラズマを発生させることで、例7の粉末を得た。
(例8)
例1において、Ce含有水溶液54mLと、Zr含有水溶液126mLとを混合することで、CeイオンとZrイオンとを3:7のモル比で含む混合溶液を用意した。そしてその他の条件は例1と同様にして、例8の粉末を得た。
(例9)
公知の共沈法によりセリアジルコニア複合酸化物粒子を作製した。すなわち、例1と同様にして180mLの混合溶液を用意した。そしてこの混合溶液にアンモニアを添加することで、セリウムとジルコニウムを含む前駆体塩を共沈させた。そしてこの前駆体塩を含む混合溶液を80℃で乾燥させることにより、例9の粉末を得た。
(例10)
公知の焼成法によりセリアジルコニア複合酸化物粒子を作製した。すなわち、例1と同様にして180mLの混合溶液を用意した。そしてこの混合溶液を80℃で乾燥させて溶媒成分を蒸発させた後、500℃で2時間焼成した。これにより、例9の粉末を得た。
(例11)
公知の水熱合成法によりセリアジルコニア複合酸化物粒子を作製した。すなわち、例1と同様にして180mLの混合溶液を用意した。そしてこの混合溶液をオートクレーブ容器に収容し、150℃で24時間の処理を施した。容器内に得られた沈殿を水洗し乾燥させることにより、例11の粉末を得た。
[結晶性の評価]
各例の粉末について、粉末X線回折装置(株式会社リガク製,RINT−TTRIII)を用いてX線回折分析を行った。分析条件は以下のとおりとした。
なお、参考のために、例1,6,7,9〜11の粉末について取得したXRDパターンを図2に例示した。
また、XRDパターンの2θ=29°付近に現れる回折ピークについて、ピーク位置と半値全幅(full width at half maximum:FWHM)を調べた。その結果を、下記の表1の「ピーク位置」および「FWHM」の欄に示した。
励起X線:CuKα,50kV,50mA
測定範囲:2θ=20〜80°
ステップ幅:0.02°
スキャンスピード:5°/min
[比表面積]
各例の粉末の比表面積を下記条件で測定した。その結果を、下記の表1の「比表面積」の欄に示した。
測定装置;日本ベル株式会社製、自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−18PLUS」
測定方法;定容量式吸着法
吸着ガス;窒素
解析方法;BET多点法
XRD分析の結果から、例9および例11の粉末については、いずれもセリア相の回折ピークのみが検出され、ジルコニアはアモルファス相を形成していることがわかった。一方で、例1〜8および10の粉末については、セリアよりも高角度側にシフトした位置に、セリアジルコニア固溶体相に帰属されるピークが検出された。また他の結晶相は検出されていない。このことから、これらの粉末は、混合溶液と同じ化学量論比でセリウムとジルコニウムを含むセリアジルコニア相からなることが確認された。より具体的には、セリアの結晶構造にジルコニウムが組み入れられた置換型固溶体を構成していることがわかった。なお、表1中、検出相の欄の「C・Z」はセリアジルコニア固溶体相を意味し、「C」はセリア相を意味する。
また、例1〜8および11の粉末については、XRDパターンのメインピークにおける半値全幅が0.4度以下と小さく結晶性に優れているが、例9および例10の粉末についてはピークがブロードとなり、結晶性が若干劣ることが確認できた。なお、例9ではセリアジルコニア相からなる粉末が得られたものの、例1〜8の粉末よりも比表面積が大きく低減されてしまった。これは、例9では高温での焼成を伴うために粒成長が起こったことによるものと考えられる。すなわち、従来法によると、共沈法等の低温プロセスや、水熱合成法では、ジルコニアがアモルファスの状態で得られ、セリアとジルコニアの複合酸化物からなる粉末を得ることができない。また、高温プロセスの焼成法によると、セリアとジルコニアの複合酸化物からなる粉末が得ることができるものの、結晶性が劣ると共に、比表面積が低減され、品質の良い粉末が得られないことがわかった。
なお、例2の粉末は、粉末の調製に際し、例1と同様の混合溶液にPVPを添加して得たものである。例2の粉末は例1の粉末よりも比表面積が増大されていることから、PVPを添加することでより微細な粉末が得られることがわかった。また、セリウム源として、例1の硝酸セリウム(III)六水和物に代えて、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)を用いた例6および例7では、さらに比表面積の大きな粉末が得られることが確認された。混合溶液中でのセリウムの状態をCe3+からCe4+へと変更することで、核生成が促進され、粒成長が抑制される傾向があることがわかった。
[SEM観察]
例1〜8の粉末について、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)による観察を行った。図3(A)は、参考のために例1の粉末について得られた観察像である。SEM観察の結果、例1〜8の粉末は、平均粒子径が約80nmであることがわかった。また、観察の結果、略球形(円形)の粒子の割合が多いことがわかった。例えばアスペクト比が1.2以下の粒子が全体に占める割合は、ゆうに50個数%以上であることが確認できた。
[STEM−EDX]
例1で得られた粉末について、エネルギー分散型X線分光分析装置(Energy Dispersive X-ray Spectroscope:EDX)を併設した走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)により、粉末を構成する粒子の表面を構成する元素の定量分析を行った。図4(a)はSTEM観察によって得た暗視野像であり、かかる領域についてEDX分析を行い、(b)セリウム:Ce(L線),(c)酸素:O(K線)および(d)ジルコニア:Zr(L線)を定量することで得られた元素分布をそれぞれ元素マップ(b)〜(d)として示した。
図4(a)〜(d)に示されるように、粒子中にCe,O,Zrの各元素はほぼ均一に分散して存在していることが確認できた。上記のXRDの結果と併せると、ここに開示された技術による例1の粉末は、セリアジルコニア固溶体から構成されることが確認できた。
[耐熱性評価]
例1および例10で得られた粉末を、800℃で3時間加熱することで、加熱前後のセリアジルコニア粒子の状態を観察した。参考のため、加熱後の例1の粒子の状態をSEMで観察し、図3(B)に示した。また、加熱後のセリアジルコニア粒子の比表面積を上記と同様に測定し、その結果を下記の表2に示した。また、加熱前後での比表面積の変化から比表面積の減少率を算出し、併せて表2に示した。なお、比表面積の減少率Rは、加熱前の比表面積をA0、加熱後の比表面積をA1としたとき、次式:R=−(A1−A0)/A0×100;で算出される値とした。
例1の粉末はここに開示される技術により作製したセリアジルコニア複合酸化物であり、例10の粉末は、公知の焼成法により作製したセリアジルコニア複合酸化物である。表2に示されるように、組成は略同一のセリアジルコニアであっても、例10の粉末は、加熱後に凝集が認められ、比表面積が14m/gと大幅に低減したことが確認された。一方の、例1の粉末は、図3に示されるように、800度での加熱により粉末が焼成されて、例1の粉末についてはわずかに粒子の凝集が見られた。しかしながら、粉末の目立った凝集は認められず、比表面積も40m/gと、比表面積の減少はわずかに抑えられることがわかった。
セリアジルコニア複合酸化物粉末を、例えば、酸素吸蔵放出材料や、排気ガス浄化用触媒の助触媒等として利用する際には、使用環境が高温となることが考えられる。酸素吸蔵放出能や触媒性能は、性能と比表面積とが一義的に結び付くと考えられる。したがって、例えば、800℃近傍の高温環境でセリアジルコニア複合酸化物粉末を使用する場合、例1の粉末は、例えば公知の製法により製造された粉末よりも、加熱による凝集が生じ難く、長期に亘ってその性能を維持することができるといえる。これにより、従来よりも耐熱性に優れた、酸素吸蔵放出材料や排気ガス浄化用触媒の助触媒等として有用な、セリアジルコニア複合酸化物が得られたことが確認できた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (14)

  1. セリウム源とジルコニウム源とを含む溶液を用意すること;
    前記溶液中にラジカルを発生させること、これにより前記溶液中に前記セリウム源と前記ジルコニウム源とが酸化されてなる複合酸化物粒子を生成する;
    を含む、セリアジルコニア複合酸化物粒子の製造方法。
  2. 前記ラジカルは、前記溶液中でプラズマを生じさせることにより発生させる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記複合酸化物粒子は、平均粒子径が50nm以上500nm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記複合酸化物粒子は、X線回折パターンにおける29°近傍の回折ピークの半値幅(FWHM)が0.45°以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記複合酸化物粒子は、BET法により測定される比表面積が40m/g以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記セリウム源と前記ジルコニウム源とに加え、さらに、
    希土類元素およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属源を含む前記溶液を用意する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記セリウム源と前記ジルコニウム源とに加え、さらに、分散剤を含む前記溶液を用意する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. さらに、前記複合酸化物粒子が生成された前記溶液中に分散剤を添加してラジカルを発生させることを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物からなる粒子であって、
    BET法により測定される比表面積が40m/g以上であり、
    X線回折パターンにおける29°近傍の回折ピークの半値幅(FWHM)が0.45°以下である、セリアジルコニア複合酸化物粒子。
  10. 前記複合酸化物からなる粒子は、一般式:CeZr1−x−y(式中、MはCeおよびZr以外の金属元素からなる群から選択される少なくとも1種であり、xおよびyはそれぞれ0<x≦0.9,0≦y≦0.1を満たす);で表される組成を有する、請求項に記載のセリアジルコニア複合酸化物粒子。
  11. 前記金属元素は、ネオジウム,ランタンおよびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項または10に記載のセリアジルコニア複合酸化物粒子。
  12. 更に分散剤を含み、前記複合酸化物からなる粒子が前記分散剤により被覆されている、請求項11のいずれか1項に記載のセリアジルコニア複合酸化物粒子。
  13. 請求項12のいずれか1項に記載の複合酸化物粒子からなる粉末であって、
    前記複合酸化物粒子は、全体の50個数%以上が、平均アスペクト比が1.2以下の略球形粒子からなる、セリアジルコニア複合酸化物粉末。
  14. 請求項12のいずれか1項に記載のセリアジルコニア複合酸化物粒子が分散媒に分散されている、触媒用材料。
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