JP6210508B2 - α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの高温高圧水処理によるフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法 - Google Patents

α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの高温高圧水処理によるフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6210508B2
JP6210508B2 JP2013217513A JP2013217513A JP6210508B2 JP 6210508 B2 JP6210508 B2 JP 6210508B2 JP 2013217513 A JP2013217513 A JP 2013217513A JP 2013217513 A JP2013217513 A JP 2013217513A JP 6210508 B2 JP6210508 B2 JP 6210508B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
derivative
temperature
furanone
reaction
pressure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013217513A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014097980A (ja
Inventor
川波 肇
肇 川波
畑田 清隆
清隆 畑田
孝之 石坂
孝之 石坂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2013217513A priority Critical patent/JP6210508B2/ja
Publication of JP2014097980A publication Critical patent/JP2014097980A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6210508B2 publication Critical patent/JP6210508B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Furan Compounds (AREA)

Description

本発明は、フラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の新規製造方法に関するものである。さらに詳しくは、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを原料として、当該原料に高温高圧水を用いた処理を施すことによりフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体を合成する新技術を提供するものである。
従来、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸の一つとして知られている乳酸から得られる化合物は、以下に示したPath 1(経路1)〜Path 8(経路8)を経由して得られる化合物が知られているが、その中には、フラノン誘導体の生成に関する知見は一切知られていない[非特許文献1]。
Figure 0006210508
一方で、フラノン誘導体の合成方法には、例えば、3−メチル−2(5H)−フラノンの合成方法として、フランアルデヒド経由で、次に示す方法がある。フランアルデヒドを、1)酸化、2)〜3)保護基で保護、4)強塩基(BuLi)で3位のプロトンを引き抜き、かつMeIでMe基を導入する、4段階のプロセスで処理することにより、フラノン誘導体を合成する手法が1990年に確立されている[非特許文献2]。
しかし、この合成方法は、1段目で41%、2段目で60−65%、3段目で79−88%、4段目で64%の収率であることから、トータルの収率は12%〜15%と低収率である。
Figure 0006210508
また、メチルマレイン酸無水物経由で、3−メチル−2(5H)−フラノンを合成する方法が報告されている。例えば、原料のcitraconic anhydrideから、3段階のプロセスで、3−methyl−2(5H)−furanoneを合成する方法が知られているが、フラノン誘導体のトータルの収率は60%である。
また、メチルマレイン酸無水物経由による、以下に示す方法が報告されている[非特許文献3−4]。
Figure 0006210508
この方法では、1段目92−96%、2段目84%、3段目80%の収率であることから、フラノン誘導体のトータルの収率は62%である。
また、メチルマレイン酸無水物経由による、以下に示す方法が報告されている[非特許文献5]。
Figure 0006210508
この方法では、1段目85%、2段目80%の収率であることから、フラノン誘導体のトータルの収率は68%であり、かつ廃棄物が多い。
さらに、メチルフラン経由による、以下に示す方法で、3−メチル−2(5H)−フラノンを合成する方法が確立されている。[非特許文献6]。
Figure 0006210508
この合成法は、メチルフランを、1)臭素化、2)脱臭素と水素化で合成する方法であり、1990年に確立された。1段目で81%、2段目で77%の収率であることから、フラノン誘導体のトータルの収率は62%である。
このような状況の中で、昨今における世界情勢の大幅な変革によりサプライチェーンが大きく変わる現状を鑑みるに、本発明者らは、上記従来技術に頼らない手法で、環境にやさしく、かつ資源循環型の製造方法の開発を目標として、環境にやさしい水を媒体かつ触媒として用いながら、フラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の合成法を開発することを種々検討した結果、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを原料としたフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の新規合成方法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。
William Shu−Lai Mork and Michael Jerry Antal,Jr.,Formation of Acrylic Acid from Lactic Acid in Supercritical water,J.Org.Chem.1989,54,4596−4602 Organic Syntheses,Coll.Vol.8,p.396(1993);Vol.68,p.162(1990) An Efficient and Short Synthesis of 3−Methyl−2(5H)−furanone,a Synthon for Strigol Analogues,E.M.Mangnus,B.Zwanenburg,Synthetic Communications,1991,22(5),783−786 ChemInform,1992,23(32),page no,doi:10.1002/chin.199232133 A novel and convenient synthesis of 3−methylfuran−2(5H)−on,G.H.L.Nefkens,JWJF Thuring,B.Zwanenburg,Synthesis−Stuttgart−1997,3,290 A useful synthesis of 3−methyl−2(5H)−furanone,R.Cruzalmanza,F.P.Higareda,Synthetic Communications,1991,21(8−9),1097−1104
本発明は、フラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の新規製造方法を提供することを課題とするものである。即ち本発明は、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを原料とした場合、従来法では合成することができなかったフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体を合成する新規合成方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを温度200℃〜500℃の高温高圧水中で反応させることを特徴とする、フラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法。
(2)前記高温高圧水の圧力が20MPa〜50MPaの範囲である、前記(1)に記載のフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法。
(3)前記反応が0.1秒〜2分の範囲で行われる、前記(1)に記載のフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法。
(4)常温常圧下において、原料の水溶液の酸性度がpH1〜7の範囲である、前記(1)に記載のフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法。
(5)生成するフラノン誘導体が下記式(1)で示される化合物である、前記(1)に記載の製造方法。
Figure 0006210508
(6)生成するγ−ブチロラクトン誘導体が下記式(2)で示される化合物である、前記(1)に記載の製造方法。
Figure 0006210508
(R1〜R4は、それぞれ独立してHまたはCH3(メチル基)を示す。)
(7)前記ヒドロキシカルボン酸が下記式(3)で示される化合物である、前記(1)に記載のフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法。
Figure 0006210508
(R5〜R7は、それぞれ独立してHまたはアルキル基を示す。)
(8)前記α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを室温から200℃〜500℃まで1秒以内で加温して高温高圧水と反応させる、前記(1)に記載の製造方法。
本発明により、次のような効果が奏される。
1)α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを原料として1段階の反応により、フラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の新規合成法を提供することができる。
2)特別の触媒や有機溶媒を使用しないで、水を媒体かつ触媒として用いる環境低負荷型の合成技術を確立することができる。
3)水を媒体かつ触媒としているので、廃棄物が少ない。
4)LCの面積値から、高い収率であることが確認できる。
5)分離精製が簡便である、という利点を有する。
高温高圧マイクロリアクションシステムの反応部を示す。 酢酸エチルで抽出して得られたサンプル(表1:実験番号5)のGCチャートを示す。
次に、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す「〜」は「…以上…以下」の範囲であることを意味する。
本発明は、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの高温高圧水処理によりフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体を製造する方法であって、原料として、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを使用し、温度200℃〜500℃の高温高圧水中で反応させることによりフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体を合成することを特徴とするものである。
本発明では、原料として、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸もしくはそのオリゴマーが用いられる。
α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸としては、例えば、上記式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸もしくはそのオリゴマーが用いられる。この場合、式(3)において、R5〜R7がいずれもHのときは、乳酸に相当する。上記原料を用いて、温度200℃〜500℃の範囲に昇温させて反応を行うことにより、フラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体を合成することができる。
本発明では、原料がα位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーであることが必要である。前記原料は、2種以上のα位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーからなる混合物であってもよい。
前記原料は、式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸又は式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸のオリゴマーであることが好ましい。式(3)においてR5〜R7はそれぞれ独立してHまたはアルキル基を表す。前記アルキル基は、炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基であることがさらに好ましい。
前記原料は、乳酸、乳酸と乳酸のオリゴマー(ダイマー、トリマー及びテトラマー)の混合物、ラクチド(乳酸の環状二量体)、2−ヒドロキシブタン酸、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン酸または2−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸であることが最も好ましい。なお、乳酸のダイマーに環状ダイマー(ラクチド)と非環状ダイマーとが存在するが、原料として乳酸のオリゴマーの混合物(ダイマー、トリマーおよびテトラマーの混合物)を使用する場合は、特に言及しない限り、前記ダイマーにはラクチドは含まれない。
原料として乳酸を用いる場合は、乳酸だけでなく、乳酸を濃縮した際に不純物として生成する乳酸のオリゴマーの混合物(乳酸のダイマー、トリマーおよびテトラマーの混合物)が含まれる原料を用いた場合の方が、フラノン誘導体の収率がより向上し好ましい。
本発明の製造方法によるフラノン誘導体(3−メチル−2(5H)−フラノン)またはγ−ブチロラクトン誘導体の合成の例を下記に示す。
Figure 0006210508
また、本発明の製造方法により得られるフラノン誘導体およびγ−ブチロラクトン誘導体の例を下記に示す。
Figure 0006210508
Figure 0006210508
(R1〜R4は、それぞれ独立してHまたはCH3(メチル基)を示す。)
上記式(2)で表されるγ−ブチロラクトン誘導体としては、例えば、4,4−ジメチルジヒドロフラン−2(3H)−オン、4,5−ジメチルジヒドロフラン−2(3H)−オン及び5−メチルジヒドロフラン−2(3H)−オンが挙げられる。
本発明において、高温高圧水とは、一般に、超臨界状態ないし亜臨界状態の水をいい、水の超臨界状態とは、水の臨界点(臨界温度Tc=374度、臨界圧力Pc=22.1MPa)を超えて、液体と気体の境界線がなくなった状態のことをいう。また、亜臨界状態とは、温度が150℃以上374℃未満、圧力が0.4MPa以上22.1MPa未満の状態で、液体と気体が併存した状態のことをいう。
反応溶媒に使用する水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられるが、反応収率を向上させるためには、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水を使用することが好ましく、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水を脱気した状態で使用することがより好ましい。
本発明においては、温度200℃〜500℃の高温高圧水を用いる。
反応温度は、実際は、200℃〜500℃の範囲でフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体を合成することが可能であるが、好適には、反応温度は、300℃〜400℃の範囲、最も好適には水の臨界温度近傍(374℃〜400℃)で行うことで合成が可能である。
反応圧力は、本発明の製造方法を実施することができる範囲のものであれば特に限定されないが、20MPa〜50MPaの範囲が好ましく、20MPa〜45MPaの範囲がより好ましく、40MPa±5MPaの範囲であればフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体をさらに収率良く得ることができるため最も好ましい。
反応時間は、本発明の製造方法を実施することができる範囲のものであれば特に限定されない。好ましい反応時間は所定温度(200℃〜500℃)、所定圧力条件下(20MPa〜50MPa)によって変化するが、通常0.1秒以上の時間で反応を行うことがフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体をより効率よく合成することができるため好ましく、0.1秒〜2分の範囲が好ましく、1秒〜60秒の範囲がより好ましく、15秒〜60秒の範囲が最も好ましい。
常温常圧における原料の水溶液の酸性度は、本発明の製造方法を実施することができる範囲のものであれば特に限定されないが、高温高圧水の常温常圧における酸性度が中性〜酸性の範囲(pH1〜7)に調整することでフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体をより好適に合成することが可能であるため好ましい。フラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体をより高い収率で得ることができることから、前記酸性度はpHが1.0〜5.5の範囲であることが好ましく、2.0〜5.0の範囲であることがより好ましく、2.5〜5.0の範囲であることがさらに好ましく、2.8〜4.8の範囲であることが最も好ましい。
ここで、本発明における原料の水溶液とは、高温高圧にする前の原料の水溶液を意味する。例えば、1)α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマー及び水を混合して得られる水溶液を反応管に入れ、2)その反応管の中で前記水溶液の酸性度を調整し、3)前記酸性度を調整した水溶液を高温高圧水と混合し高温高圧条件にて反応させた場合は、前記反応管の中で酸性度を調整した水溶液が原料の水溶液である。
常温常圧における原料の水溶液の酸性度を調節する方法は特に限定されないが、例えば、高温高圧水の常温常圧における酸性度は水酸化ナトリウムを添加してアルカリ性側に調節する方法や、酢酸などの有機酸や、塩酸や硫酸などの無機酸を添加して酸性側に調節する方法が挙げられる。
但し、Inconel625(Ni系合金)、Hasteroy(Ni系合金)、SUS316(ステンレス系)のリアクターを用いる場合は、装置の耐腐食性と収率の兼ね合いで高温高圧水の常温常圧における原料の水溶液の酸性度を決定することが好ましい。
常温常圧における原料の水溶液におけるα位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの濃度は、本発明の製造方法を実施することができる範囲のものであれば特に限定されないが、0.01M〜10Mが好ましく、0.01M〜1Mがより好ましく、0.05M〜1Mが最も好ましい。上記濃度範囲とすることにより、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーと触媒として作用する高温高圧水との接触効率を向上させることができ、かつ、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーが分子間で縮合反応することを避けることができるため、収率が向上すると考えられる。
本発明では、高温高圧水自体が、ブレンステッドおよびルイスの酸と塩基の働きを有することを利用し、水自体の触媒作用を用いて効率的に反応を行うことができる。
本発明では、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを室温から200℃〜500℃まで1秒以内で加温して高温高圧水と反応させることが好ましい。上記加温に使用する装置は特に限定されないが、例えば、マイクロミキサーおよびマイクロリアクターなどを用いることができる。
上記α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの加温は、室温から目的温度(200℃〜500℃)への加温が1秒以内であれば、100℃〜200℃(場合により300℃)の領域で起こりやすい脱水反応および脱炭酸反応などの副反応がおこる時間を短くでき、副生成物の生成を抑制でき、その結果として収率がより向上するため好ましく、0.5秒以内であることがより好ましく、0.1秒以内であることが最も好ましい。
なお、加温に要する時間の下限は特に限定はないが、一般的には0.1ミリ秒以上である。
本発明において、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを室温から200℃〜500℃まで加温するための方法に特に制限はないが、前述の急速な加熱が可能であれば直接加熱、間接加熱、誘導加熱、マイクロ波照射加熱などいずれの手法でも採用することができる。例えば、マイクロミキサーを混合加熱器として用いると、所定圧力下における高温高圧水と原料溶液とを効率よく混合し、数ミリ秒で室温から200℃〜500℃への急速加熱を行って合成することができるため好ましい。更に、チューブ型マイクロリアクターを用いて合成することがより好ましい。
本発明において使用することができるマイクロミキサーおよびマイクロリアクターは、高温高圧水を使用する技術分野において通常マイクロミキサーおよびマイクロリアクターと認識することが可能なものであれば特に制限はない。
マイクロミキサーとは、例えば、複数の配管を介して導入される2流体以上を混合して混合流体を生成する混合器において、第一流体を導入または第一流体と第二流体以降の混合流体を導出するための接続配管を有し、該接続配管の外周に作られた空間を通じて、第二流体以降の流体を導入し、第一流体の接続配管の先端に設けられた空間で、第一流体と第二流体以降の流体を混合して混合流体にする構造を有することを少なくとも満たすマイクロ混合デバイスのことを指すことがあり、特開2013−039503号に開示されたマイクロ混合デバイスを例示することができる。
また、マイクロリアクターとは、通常、極小サイズの反応装置をいい、特開2011−224480号に開示されたマイクロリアクターを例示することができる。
マイクロミキサー、マイクロリアクターの材質は、耐高温高圧であれば特に限定されないが、例えば、Inconel625(Ni系合金)、Hasteroy(Ni系合金)、SUS316、SUS306、SUS304(ステンレス系)、Ti、Wなどが例示される。また、耐熱・耐圧がある材料であれば樹脂などを用いることも可能で、特に限定はされない。
本発明では、例えば、反応に高温高圧マイクロミキサーを使用することができ、より具体的な例としては、図1に示す高温高圧マイクロリアクションシステムを好適に使用することができる。また、これと同効のシステムであれば同様に使用することが可能である。
ここで、当該マイクロリアクションシステムは、高温高圧水と乳酸などの原料水溶液を混合する混合手段、反応管から構成される反応部、これらを収容するためのオーブン設備、反応液の温度条件を所定の温度にコントロールするための熱電対、反応管で、高温高圧水条件下で反応させた反応液を所定の温度に冷却するための冷却器(熱交換器)、冷却した後に脱圧するための背圧弁などを備えている。
本発明の製造方法を実施することができる範囲のものであれば特に限定されないが、反応は、例えば、Inconel625製またはSUS316製で、外径1/16インチ、内径0.5mm、長さ11mのチューブタイプの反応管を用いて行うことができる。この場合、反応管の外径、内径、長さなどは、その実施に当たり適宜設計することが可能であり、上記反応管の材質、外径、内径、長さの条件についても適宜設定することができる。
次に、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例などによって何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
流通式高温高圧マイクロリアクションシステムを用いて反応を行った。図1に、当該システムの反応部を示した。反応部のリアクターに用いられる材質は、Inconel625またはSUS316であり、反応管は、外径1/16インチ、内径0.5mm、長さ11mのチューブタイプを用いて行った。
乳酸水溶液(0.2M、0.2mL/分)を、高温高圧水(蒸留水またはイオン交換水、2.0mL/分)をマイクロミキサーで素早く混合し、室温(25℃)から所定の温度(300、325、350、375、400℃の各温度、圧力40MPa)へと急速に昇温させた。
昇温後、反応管で高温高圧条件下で反応させ、冷却器(熱交換器)で所定の温度(40℃)に冷却した後、背圧弁を介して脱圧した。得られたサンプルは、透明な水溶液で、分析は、そのまま液体クロマトグラフィーで分析を行い、目的生成物を分析した。
各反応温度において得られた目的物のフラノン誘導体(3−メチル−2(5H)−フラノン)の収率を表1にまとめた。300℃から400℃と反応温度が上昇するに従って、目的物のフラノン誘導体の収率が向上することが分かった。なお、用いた乳酸は、モノマー(乳酸、37%)、乳酸のダイマー(53%)、乳酸のトリマー(9%)、乳酸のテトラマー(1%)を含む。また、前記乳酸のダイマーには、ラクチドは含まれない。
Figure 0006210508
次に、得られた水溶液を酢酸エチルで抽出し、GC−MSで分析を行った。その結果、図2に示した様に、3−メチル−2(5H)−フラノン(収率:68%、選択率:95%)が得られた。化合物の構造は、Wiley275 MSデータベースとの照合でMSフラグメントが94%の一致を示したことと、1H−NMR、13C−NMR、FT−IR測定および標準物質も用いて確認した。
〔実施例2〕
反応圧力40MPa、反応温度400℃、反応時間30.8秒の条件下、原料として、乳酸の代わりにラクチドを用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、3−メチル−2(5H)−フラノンの収率は、13%であり、酢酸エチルを用いて抽出することで容易に目的物のフラノン誘導体を分離することができた。
〔実施例3〕
反応圧力40MPa、反応時間30.8秒の条件下、表2に示す各種ヒドロキシカルボン酸及び反応温度を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、各ヒドロキシカルボン酸に対して、対応するγ−ブチロラクトン誘導体が表2に示すような収率で得られた。また、同様に酢酸エチルで抽出することで、容易に目的物を分離することが出来た。
Figure 0006210508
〔実施例4〕
原料として乳酸(ほぼ純度100%)を用いて、反応温度380℃、反応圧力40MPaの条件で、反応管の長さを変えることで、反応時間を5秒、15秒、30秒、45秒、60秒と変化させて反応を行った。その結果、5秒で21%、15秒で22%、30秒で22%、45秒で23%、60秒で21%と、反応時間を変化させても目的物のフラノン誘導体(3−メチル−2(5H)−フラノン)の収率自体には変化が無かった。
〔実施例5〕
反応圧力40MPa、反応温度400℃、反応時間30.8秒の条件下、常温常圧における原料の水溶液の酸性度を表3のとおり変化させた以外は、実施例1と同様に反応を行い、目的物のフラノン誘導体(3−メチル−2(5H)−フラノン)を得た。用いた純粋な乳酸水溶液は、pH=3.8であり、各酸性度は、水酸化ナトリウムを加えてpHを調整した。
その結果を、表3に示す。pHが酸性側にあるほど目的物のフラノン誘導体の生成が顕著であることが分かった。
Figure 0006210508
〔実施例6〕
実施例1と同様の条件とし、流通式高温高圧マイクロリアクターの材質を、SUS316を用いた場合と、Inconel625を用いた場合で比較した。その結果、特に生成物の種類、選択率・収率において際立った違いは見られず、材質が触媒的に働き、乳酸から目的物のフラノン誘導体が生成しているのではなく、高温高圧水中で、所定の温度と圧力、そして反応時間により、目的物のフラノン誘導体(3−メチル−2(5H)−フラノン)が生成したことが分かった。
〔実施例7〕
反応時間30.8秒の条件下、純度90%以上の乳酸を原料として用いて、反応圧力及び反応温度を表4のとおり変化させた以外は、実施例1と同様に反応を行い、目的物のフラノン誘導体(3−メチル−2(5H)−フラノン)を得た。結果を表4にまとめた。
Figure 0006210508
〔実施例8]
純度90%以上の乳酸の濃度を表5のとおり変化させた以外は、実施例1と同様で、380℃、45MPaの圧力条件で反応を行った。結果として得られた目的物のフラノン誘導体(3−メチル−2(5H)−フラノン)の収率を表5にまとめた。
Figure 0006210508
〔比較例1〕
ナスフラスコ及び還流管を用いて100℃、常圧下で5分間反応させたこと以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、対応するフラノン誘導体は得られなかった。
以上詳述した通り、本発明は、α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸もしくはそのオリゴマーの高温高圧水処理によるフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法に係るものであり、本発明は、1)α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを原料として1段階の反応により、フラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の新規合成法を提供することができる、2)特別の触媒や有機溶媒を使用しないで、水を媒体かつ触媒として用いる環境低負荷型の合成技術を確立することができる、3)水を媒体かつ触媒としているので、廃棄物が少ない、4)LCの面積値から、高い収率であることが確認できる、5)分離精製が簡便である、という利点を有する点で、産業上の利用可能性がある。

Claims (4)

  1. α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーを室温から温度200℃〜500℃まで1秒以内で加温して、高温高圧水中で5秒〜2分の間反応させることを特徴とする、下記式(1)又は(2)で示される、フラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法
    Figure 0006210508
    又は
    Figure 0006210508
    (R 1 〜R 4 は、それぞれ独立してHまたはCH 3 (メチル基)を示す。)
  2. 前記高温高圧水の圧力が20MPa〜50MPaの範囲である、請求項1に記載のフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法。
  3. 常温常圧下において、原料の水溶液の酸性度がpH1〜7の範囲である、請求項1又は2に記載のフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法。
  4. 前記ヒドロキシカルボン酸が下記式(3)で示される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法。
    Figure 0006210508
    (R5〜R7は、それぞれ独立してHまたはアルキル基を示す。)
JP2013217513A 2012-10-19 2013-10-18 α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの高温高圧水処理によるフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法 Active JP6210508B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013217513A JP6210508B2 (ja) 2012-10-19 2013-10-18 α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの高温高圧水処理によるフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012232399 2012-10-19
JP2012232399 2012-10-19
JP2013217513A JP6210508B2 (ja) 2012-10-19 2013-10-18 α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの高温高圧水処理によるフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014097980A JP2014097980A (ja) 2014-05-29
JP6210508B2 true JP6210508B2 (ja) 2017-10-11

Family

ID=50940322

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013217513A Active JP6210508B2 (ja) 2012-10-19 2013-10-18 α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの高温高圧水処理によるフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6210508B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE3210705A1 (de) * 1982-03-24 1983-10-06 Basf Ag Verfahren zur herstellung von 3-alkyl-2,5-dihydrofuran-2-onen
US4968817A (en) * 1984-07-27 1990-11-06 National Distillers And Chemical Corporation Manufacture of gamma-crotonolactone by carbonylation of glycidol
DE3718527A1 (de) * 1987-06-03 1988-12-15 Basf Ag Verfahren zur herstellung von 2(5h)-furanonen
JPH08295687A (ja) * 1995-04-28 1996-11-12 Ube Ind Ltd 無水シトラコン酸の製造法
JP3873123B2 (ja) * 2002-09-30 2007-01-24 独立行政法人産業技術総合研究所 アクリル酸及び/又はピルビン酸の合成方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014097980A (ja) 2014-05-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Chia et al. Triacetic acid lactone as a potential biorenewable platform chemical
Min et al. A dual-catalysis approach to the kinetic resolution of 1, 2-diaryl-1, 2-diaminoethanes
Xu et al. Copper‐Catalysed Decarboxylative Trifluoromethylation of β‐Ketoacids
Cheng et al. Silver-catalyzed decarboxylative acylation of arylglyoxylic acids with arylboronic acids
Corsico et al. Sunlight decatungstate photoinduced trifluoromethylations of (hetero) aromatics and electron-poor olefins
Narayana et al. SO 4 2-/SnO 2-Catalyzed C3-alkylation of 4-hydroxycoumarin with secondary benzyl alcohols and O-alkylation with O-acetyl compounds
Krtschil et al. Flow Chemistry of the Kolbe‐Schmitt Synthesis from Resorcinol: Process Intensification by Alternative Solvents, New Reagents and Advanced Reactor Engineering
JP6210508B2 (ja) α位に水素と水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸またはそのオリゴマーの高温高圧水処理によるフラノン誘導体またはγ−ブチロラクトン誘導体の製造方法
US20140088325A1 (en) Method for synthesizing beta-dicarbonyl compounds
Prateeptongkum et al. Facile iron (III) chloride hexahydrate catalyzed synthesis of coumarins
Procopio et al. Reactive deep eutectic solvents for EDC-mediated amide synthesis
CN106892807B (zh) 一种采用有机咪唑系季铵强碱催化的异佛尔酮的制备方法
Zhao et al. A catalyst-free novel synthesis of diethyl carbonate from ethyl carbamate in supercritical ethanol
CN108276268B (zh) 一种1,3-二芳基丙炔酮的制备方法
CN112624915A (zh) 一种制备2,5-二羟基对苯二甲酸(dhta)的方法
JP2006151947A (ja) 末端オレフィンの二量化反応による線状化合物の製法
Jing et al. Direct Three‐Component Synthesis of α‐Cyano Acrylates Involving Cascade Knoevenagel Reaction and Esterification
Chen et al. Palladium-catalyzed stereoselective ring-opening reaction of aryl cyclopropyl ketones
Brazier Challenges in catalysis for pharmaceuticals and fine chemicals III
JP2008037852A (ja) ω−ブロモ長鎖カルボン酸の製造法
CN109824567B (zh) 一种芳香醛的合成方法
CN109384641B (zh) 1,2-邻二醇类化合物的合成方法
Soonthonhut et al. Ionic Liquid Driven Nucleophilic Substitution of Squaric Acid to Squaramides
CN106905128B (zh) 一种采用有机吡啶系季铵强碱催化的异佛尔酮的制备方法
JP5344293B2 (ja) 1,3,5−トリベンゾイルベンゼンの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160729

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170518

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170607

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170807

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170823

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170906

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6210508

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250