JP6209796B2 - 化合物半導体ナノ粒子による光吸収層の作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化合物半導体を用いた薄膜太陽電池の光吸収層を、低温かつ非真空プロセスで形成する作製方法に関する。
太陽電池は、太陽の光エネルギーを電力に変換する素子である。pn接合された半導体界面に照射した太陽光により、内部光電効果による光電子が発生し、pn接合による整流作用で一定の方向に光電子が移動するために、電極を取り付けて電流を外部に取りだすことで電池として機能させることができる。
p型半導体とn型半導体を接合すると、接合界面では拡散電流により伝導電子と正孔がお互いに拡散して結びつき、伝導電子と正孔が打ち消し合い、その結果、接合界面付近に伝導電子と正孔の少ない領域(空乏層)が形成される。伝導電子と正孔が相互に引きあうことから内部に電界が発生する。太陽光をpn接合部に照射し、接合領域で内部の電界よりも大きなエネルギーを持った光電子はn型半導体側に移動し、電子がn型半導体に蓄積されると、正孔がp型半導体に移動する。この光起電力による電子と正孔の移動は、n型半導体とp型半導体に電極を取り付けると、n型半導体側が負極、p型半導体側が正極となって、外部に取り出すことができる。
太陽電池は、概略シリコン系・化合物系・有機系の3つに分類され、最も広く用いられているのがシリコン系であるが、最近、化合物系太陽電池は薄くて経年変化が少なく光電変換効率が高くなると期待され開発が進んでいる。化合物系は、光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、銅(以下Cuという)、インジウム(以下Inという)、ガリウム(以下Gaという)、セレン(以下Seという)、イオウ(以下Sという)などから成るカルコパイライト系と呼ばれるI−III−VI族化合物を用いる。代表的なものは二セレン化銅インジウムCuInSe(以下CISという)、二セレン化銅インジウム・ガリウムCu(In,Ga)Se(以下CIGSという)や、二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウムCu(In,Ga)(S,Se)(以下CIGSSという)がある(特許文献1等参照)。
カルコパイライト型化合物半導体は、p型半導体にもn型半導体にもなる特性を有し、直接遷移半導体であるため光吸収特性に優れ、禁制帯幅はイオウ化アルミニウム銅CuAlSの3.5eVから、テレル・インジウム銅CuInTeの0.8eVと幅広い波長をカバーしており赤外域から紫外域までの発光、受光素子の作製も可能である。特に多結晶CIGS太陽電池は、優れた光吸収特性を生かして変換効率が20.3%という報告もある(非特許文献1参照)。
しかしながら、構成元素であるGa及びInは希少金属であること、Seは人体に有害であることから、コスト的にも安定供給の面からもGa、InやSeを使用しないp型化合物半導体の開発が行われている(特許文献2等参照)。
Ga、InやSeに代わる材料としては亜鉛,錫やイオウが注目され、銅Cu,亜鉛Zn,錫SnとイオウSを成分とするCuZnSnS(以下CZTSという。)は、現状での変換効率はCIGS太陽電池に比べて劣るものの、禁制帯幅が太陽光に対して最適な1.45〜1.6eVであること、光の吸収係数が10cm−1と大きいこと、特に、安価で豊富な材料を使用した組成であることから、太陽電池用の光吸収層の材料として期待されている。
一方、CZTSは、禁制帯幅が太陽光に対して最適な1.45〜1.6eVであり、特に、安価で豊富な材料を使用した組成である。このため、太陽電池用の光吸収層の材料として期待されている。
太陽電池の変換効率は、pn接合における半導体の禁制帯幅に依存し、光エネルギーが半導体の禁制帯幅より小さい場合、光は半導体で吸収されず、光エネルギーの方が大きい場合、光は半導体に吸収され、電子と正孔との対が生成される。したがって、半導体に吸収される太陽光の最低のエネルギーは、半導体の禁制帯幅によって決定され、最適な禁制帯幅は1.45〜1.6eVとなっている。
光吸収の程度を表す量としての吸収係数は、物質中を進む光強度の吸収を示し、吸収が強く起こる物質では光は急に弱くなるため、吸収係数は小さくなる。従って、変換効率を上げようとすると、光吸収係数を小さくするために、CZTSの成分であるSを、Seと混合した材料であるCuZnSn(SSe1−x(以下CZTSSeという。)、ここで0<x<1、が用いられている。
太陽電池の光吸収層となるCZTS膜の作製方法としては、例えば化学析出法(以下CBD法という。)、スパッタ法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法等があり、基板上にCu、Sn、及びZnSが所定の順序で積層された前駆体を形成し、この前駆体を硫化水素HS存在雰囲気下(例えば、5〜20%HS+N雰囲気下)で500〜600℃程度の温度で硫化させて製造する方法の提案もある(特許文献3参照)。
太陽電池の開発目標は、主として高い変換効率と低い製造コストであり、薄膜化、安価な材料の使用、希少金属を使用しない等が目標となっているが、製造方法においても真空プロセスから非真空プロセス、光吸収層の印刷技術の適用等の低コスト化が提案されている。
単結晶シリコン太陽電池や多結晶シリコン太陽電池の光吸収層の厚みが少なくとも200μm必要なのに対して、数μmと薄膜化可能なCIGS、CZTSでは、光吸収層の材料となる硫化物及びセレン化物を粉体化して溶媒に溶かして基板に塗布し、加熱焼成して光吸収層を形成する非真空プロセスでの製造方法がある。
例えば、硫化物及びセレン化物の粉体の合成方法としては、溶媒として用いるグリコールと原料を、冷却塔を備えた反応容器に投入した上で、グリコールの沸点まで反応容器を加熱し、加熱によって蒸発したグリコール溶媒を、冷却塔を介して反応容器に還流させつつ原料を反応させ、その反応の結果として所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物及び硫化物を反応容器内に得る方法が特許文献4に開示されている。
溶媒としては、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールを使用し、そこで用いるCIGS太陽電池の光吸収層用原料として、金属Cu及びCuClからなるグループ、金属In、InCl、金属Ga及びGaClからなるグループ、S及びSeからなるクループの4つのグループから夫々少なくとも1種類ずつ選択してなる原料を用いる。
また、この原料は、所望の組成物と同一のCu:In:Ga:Se:S比を実現する組成比に調合したものを使用する。これを、グリコールに投入して溶解し、析出によって所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物の粉体を得る。冷却塔を使った還流という手段を用いることで、圧力容器を用いることなく溶媒の蒸発に伴う放散を抑止することができる。
CZTS太陽電池の光吸収層用原料とするには、金属Cu及びCuClからなるグループと金属Zn及びZnClからなるグループと金属Sn及びSnClからなるグループとSe及びSからなるグループから夫々少なくとも1種類の物質を原料として溶媒に投入する。
CZTS太陽電池の光吸収層用の複合硫化物を得る方法として、特許文献5には以下の方法が開示されている。
複合硫化物粉体の製造方法は、銅イオン、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンを含み、亜鉛イオンと錫イオンとのモル比(亜鉛イオン:錫イオン)が40:60〜60:40の範囲にあり、銅イオンと、亜鉛イオン及び錫イオンの合計とのモル比〔銅イオン:(亜鉛イオン+錫イオン)〕が40:60〜60:40の範囲にある金属イオン含有溶液と、硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを反応させる工程を有する。
例えば、銅イオンを含む化合物としては硫酸銅、亜鉛イオンを含む化合物としては硫酸亜鉛、錫イオンを含む化合物としては硫酸錫が好ましく硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液は、硫化物イオンや水硫化物イオンを含む化合物を溶媒に溶解させることで得られる。さらに、50〜300℃で2〜24時間加熱し、複合硫化物粉体を得ている。
ソルボサーマル法を用いたCZTS太陽電池の光吸収層用の複合硫化物を得る方法は、特許文献6に開示されている。
ソルボサーマル法は、エチレンジアミン等の有機溶媒中において高圧下で複数の原料物質を反応させて、反応生成物の結晶を得る方法であり、Cu源とZn源とSn源とを、種々のモル数の硫黄粉末と一緒に有機溶媒に分散させ、オートクレーブに充填して30分間撹拌する。Cu源,Zn源及びSn源は、金属の形態であっても塩の形態であってもよい。得られた生成物を濾過し、大気中、50℃、22時間の条件で乾燥処理し硫化物系化合物半導体(CZTS)粒子を得ている
このように製造技術的にも低コスト化の技術が開発されているが、さらなる低コスト化に対して、原材料に着目した提案がある。
非特許文献2には、有機高分子(ポリマー)塗布型有機薄膜太陽電池のポリマー(PSiF−DBT)中にCISナノ粒子を含有させて光起電力を生成させて変換効率を向上させる試みが開示されている。このCISナノ粒子は、金属キサンテートである銅エチルキサンテート及びインジウムエチルキサンテートを有機溶媒に溶解させて作製されるが、有機溶媒に溶けにくく、アルキル基の一部を2,2−ジメチルペンタン−3−ylグループで置換している。これにより、クロロホルム、トルエンやクロロベンゼンに溶解するようになり、CISナノ粒子を実現している。
非特許文献3には、金属キサンテートを用いてCZTS太陽電池の光吸収層用薄膜形成を、単独の金属キサンテート、即ち、銅キサンテート、亜鉛キサンテートとスズキサンテートを使用して作製する方法が開示されている。金属キサンテートは、キサンテートの分枝したアルキルサイドチェーン(3,3−ジメチル−2−ブチル)を金属にしており、低い分解温度で溶解度の高いキサンテートである。これらの前駆体は硫化物を含有しているため、イオウ源を必要としない。スズキサンテートは、純粋な金属キサンテートではなく、塩化スズ水溶液(SnCl・5HO)とポタジウムキサンテートからスズチオキサンテートを作製している。これはスズキサンテーの中間生成物である。
CZTS薄膜は、銅キサンテート、亜鉛キサンテートとスズチオキサンテートを、クロロベンゼンに溶解してスピンコート法により塗布し、真空にして190℃で加熱してCZTS粉末を作製し、さらに350℃で加熱焼成することで形成される。
特開平10−135498号公報 特開2009−135316号公報 特開2010−129660号公報 特開2012−076976号公報 特開2012−230953号公報 特開2013−お14498号公報
Philip Jackson, Dimitrios Hariskos,Erwin Lotter, Stefan Paetel, Roland Wuerz,Richard Menner, Wiltraud Wischmann and Michael Powalla:Prog. Photov. Res. Appl. 2011;19:pp894−897 Thomas Rath, Michael Edler, Wernfried Haas, Achim Fischereder ,Stefan Moscher, Alexander Schenk, Roman Trattnig, Meltem Sezen, Gernot Mauthner, Andreas Pein,Dorith Meischler, Karin Bartl, Robert Saf, Neha Bansal, Saif A. Haque, Ferdinand Hofer, Emil J.W.List, and Gregor Trimmel:Adv. Energy Mater; 2011, 1: pp1046−1050 Achim Fischereder, Alexander Schenk, Thomas Rath, Wernfried Haas,Sebastien Delbos, Corentin Gougaud, Negar Naghavi, Angelika Pateter,Robert Saf, Dorith Schenk, Michael Edler, Kathrin Bohnemann, Angelika Reichmann, Boril Chernev, Ferdinand Hofer, Gregor Trimmel:Monatsh; Chem (2013) 144: pp273−283
太陽電池の光吸収層作製に対してさまざまな製膜技術プロセスの技術提案が行われているが、安全性の問題や高精度の温度制御を必要とする等、化合物半導体材料を使用することによる製造技術の難しさと、高価な製造設備が必要となることによる生産性が低いことが問題となっている。
光吸収層の形成は、スパッタ法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法等を用いて、基板上にCu、Sn、及びZnSが所定の順序で積層された前駆体を形成し、この前駆体を硫化水素HS存在雰囲気下(例えば、5〜20%HS+N雰囲気下)で500〜600℃程度の温度で硫化させて製造するが、製造プロセスが複雑で真空プロセスあること、高温を必要とすることから、製造装置のコストが高い問題がある。
このため、簡単な製造プロセスで作製可能とするために、複合硫化物半導体粉末を作製して、溶媒に分散させて塗布液を調整して、スクリーン印刷法、スピンコート法等により基板に塗布し、加熱焼成して成膜する。この方法では非真空プロセスで成膜できるために、製造コストの低減は図れるが、加熱焼成での温度は数百度の高温を必要とする。さらに、複合硫化物半導体粉末を使用した薄膜形成は、均一な成膜が得られるものの結晶粒界が充分に成長せず、焼結補助剤を用いているが、なお光吸収層としての機能は充分ではない。
光吸収層としての機能向上のためには、化合物半導体粉末の超微粒化が望まれている。ソルボサーマル法での複合硫化物半導体粉末の超微粒化に適した方法であり、粒径が数nm〜数百nmのナノ粒子を得ることができる。しかしながら、ソルボサーマル法は、本質的に有機溶媒中での高圧下において、原料物質を反応させて反応物の結晶を得る方法であり、アミン等の毒性物質を扱うことや、圧力容器が必要なこと、温度が250℃〜350℃と高温であることが製造コストを低減するための課題となる。さらには未反応の物質が残る欠点がある。
金属錯体である金属キサンテートを原料として、イオウ成分を含む化合物半導体粉末を作成する方法では、原料となるキサンテートが不安定であるために、安定的に硫化物ナノ粒子を得ることが困難である。非特許文献2には、金属キサンテートからCZTS薄膜を形成する方法が開示されているが、この方法は、原材料の全てを金属キサンテートで作製したものではなく、Snキサンテートの代わりにSnClを使用して中間体を生成している。
非特許文献2での開示内容は、ITOがコートされたガラス上へのCZTSパウダー作製と、太陽電池用に下部電極となるモリブデンがコートされたガラス上へのCZT薄膜の作製方法である。ITOがコートされたガラス上へのCZTSパウダー作製は、Cuキサンテート、ZnキサンテートとSnキサンテート(中間体)をクロロホルムCHClに溶解させて、溶解液をスピンコート法により塗布した後、真空下で180℃〜350℃の温度で加熱焼成したCZTS粉末を得ている。
太陽電池としてのCZTS薄膜の形成については、まず、モリブデン電極がコートされたガラス上に、Cu/(Zn+Sn)の分子量比が0.6でZn/Snの分子量比が1の金属キサンテートをクロロベンゼンに溶解して、窒素雰囲気中において温度190℃で前駆体を形成する。その後、350℃で15分間加熱焼成してCZTS薄膜を作製している。
ここで開示されているのは、金属キサンテートを使用した薄膜形成でも、前駆体となるCZTS粉末の作製でも真空プロセスで180℃〜350℃の高温を必要としていること、また、太陽電池としてのCZTS薄膜の形成についても、非真空プロセスではあるが、加熱焼成に350℃の高温を必要としていることに問題がある。
本発明は、太陽電池の光吸収層を非真空プロセスで、かつ、低温で容易に作製する方法を提供することを目的としている。
太陽電池の光吸収層を作製する方法において、キサンテートを配位した金属錯体を、複数混合して溶媒に溶かして溶解液とする第一工程と、溶解液を電極が形成された基板に塗布する第二工程と、基板に塗布された溶解液の溶媒を、不活性ガス雰囲気で70℃〜90℃の温度で蒸発させる第三工程と、溶媒を蒸発させた後、不活性ガス雰囲気で100℃〜300℃の温度で加熱焼成する第四工程とから成ることを特徴とする光吸収層の作製方法である。金属錯体は、金属イオンにキサンテートを配位させた分子構造であり、金属原子は、銅、亜鉛、インジウム、スズのいずれかである。
金属錯体の一般的分子式は以下のようになる。
銅を原子とする金属錯体の分子式は、
一般式(1)
である。
亜鉛を原子とする金属錯体の分子式は、
一般式(2)
である。
スズを原子とする金属錯体の分子式は、
一般式(3)
であり、スズキサンテートを合成後、粉体(ナノ粒子)にしないで液状のまま使用する。
インジウムを原子とする金属錯体の分子式は、
一般式(4)
である。
溶媒は、テトラヒドロフロンを使用して金属錯体を溶解させる。第三工程と第四工程での不活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム等である。また、第三工程での溶媒蒸発は、電極が塗布された基板を70℃〜90℃の温度にしてから溶解液を塗布することにより、効率的な溶媒の蒸発が行なえる。そして第四工程は、溶媒蒸発のために第三工程で設定した温度から、徐々に昇温して、所定の加熱焼成温度にする。
また、膜厚を厚くするためには、溶解液を電極が形成された基板に塗布する第二工程と、基板に塗布された溶解液の溶媒を、不活性ガス雰囲気で70℃〜90℃の温度で蒸発させる第三工程と、溶媒を蒸発させた後、不活性ガス雰囲気で100℃〜300℃の温度で加熱焼成する第四工程とを複数回繰り返す。
本発明によれば、キサンテートを配位した金属錯体を溶媒に溶かして溶解液とし、不活性ガス雰囲気下で、溶媒の蒸発と加熱焼成を行なうため、非真空プロセス、かつ、低温で容易に光吸収層を形成することができ、このため複雑で大規模な製造設備を必要とせず、低コストでの光吸収層の作製が可能となる。
本発明による金属キサンテートを用いた光吸収層作製方法を示したフローチャート。 各金属キサンテートの外観を示す図。 金属キサンテートの熱重量分析結果 CuInS薄膜の各加熱温度における外観状態。 CuInS薄膜のXRD評価結果。 CuInS薄膜の原子組成比評価結果。 CuInS薄膜の成分組成比評価結果。 Snキサンテート(液体)の熱重量分析結果 CuSnS薄膜の各加熱温度における外観状態。 CuSnS薄膜のXRD評価結果。 CuSnS薄膜の原子組成比評価結果。 CuSnS薄膜の成分組成比評価結果。 Znキサンテートの熱重量分析結果。 CuZnSnS薄膜の各加熱温度における外観状態。 CuZnSnS薄膜のXRD測定結果。 CuZnSnS薄膜の原子組成比評価結果。 CuZnSnS薄膜の成分組成比評価結果。
化合物半導体を使用した薄膜太陽電池の光吸収層として機能するp型半導体の材料は、元素周期表においてIV族(Si,Geなど)を挟んでIV族から等間隔にある2種の元素で化合物をつくると、同様の化学結合ができて半導体になる性質を利用しており、アダマンティン系列に属するI−III−VI族元素である。結晶構造はカルコパイライト型構造で、I族のCu,III族のGaやIn,VI族のSやSe各原子が4配位になっており、正方晶系の結晶構造を有している。
本発明は、薄膜太陽電池の光吸収層を作製する方法であり、非真空プロセスで低温での作製により、容易な作製方法による低コスト化を目的としている。
CIS系の太陽電池の光吸収層は、CISがCu,InとSe、CIGSがCu,In、GaとSe、CIGSSeがCu,In、Ga,SeとSを原子構成としている。また、CISにおけるSeをSに置き換えたCuInSの原子構成もある。CZTSは、Cu,Zn,SnとSから成り、さらにCZTSの組成成分にSeを加えたCZTSSeがある。
本発明においては、光吸収層の成膜を、金属原子にキサンテートを配意した金属錯体(以下、金属キサンテートという。)を使用することを特徴としている。
金属キサンテートの合成は、キサンテートを可溶性の溶液、例えばシンクロデキストリンまたは固形担持体に結合されたシンクロデキストリンと会合させることで作製できる。シンクロデキシタン−キサンテート会合物は、特に一般式XZYの金属錯体が適している。この一般式では、XとYの両方、またはXのみあるいはYのみがキサンテートの残基を表している。XとYは同じであってもよい。Zはキサンテート類との錯体を形成することができる金属、例えば、Cu、Zn、Sn等を表す。
本発明で使用した銅キサンテートは、Zを銅として、XとYは同じキサンテートを配位しており、次の分子式を持っている。
である。
亜鉛キサンテートもXとYは同じキサンテートを配位しており、次の分子式を持っている。
スズキサンテートもXとYは同じキサンテートを配位しており、溶媒への溶解度を上げるために炭素の量を多く配位し、次の分子式を持っている。
スズ(Sn)キサンテートは、シンクロデキシタン−キサンテート会合物である一般式XZYの金属錯体で、XとYは同じであり、ZをSnにして液体状のSnキサンテートを合成する。Snキサンテートは、Sn原子にジチオ炭酸ジエチルを配位した、液体キサンテートを粉末(ナノ粒子)にしないで、液体のまま使用することで本発明が可能となった。
インジウムキサンテートは、金属であるインジウムに、3つのキサンテートを配位しており、次の分子式となっている、
図1は、これらの金属キサンテートを用いた光吸収層作製方法10を示すフローチャートである。ステップS1では、金属キサンテートを目的の組成比となるように秤量する。例えばCZTS薄膜を作製する場合は、分子式がCuZnSnSであるために、化学量論的組成比Cu:Zn:Snが2:1:1となるように、Cuキサンテート、Znキサンテート、Snキサンテートを秤量する。S原子は、各キサンテートに含まれている成分で組成される。
これらの秤量した金属キサンテートは、ステップS2で、溶媒の入った容器に入れて溶解させ、溶解液を作製する。この溶解液は、基板上に塗布する塗布液となる。溶媒は、テトラヒドロフロンやクロロホルム等を使用する。ステップS3で、この塗布液を下部電極が形成された基板に塗布する。例えば、この基板にはガラスが用いられ、下部電極としてはモリブデン電極が用いられる。塗布液を塗布する方法については特に制限されず、例えば、ディップコート法、スピンコート法、インクジェット法などの既知の塗布方法を用いることができる。
次にステップS4で、不活性ガス雰囲気で金属キサンテートの溶解液が塗布された基板を加熱し、溶媒を蒸発させる。蒸発設定温度は70℃〜90℃とする。溶媒は蒸発しやすく、安定な反応により高品質の結晶を得るためには、ステップS4において、不活性ガス雰囲気下で基板を溶媒蒸発設定温度に加熱しておくのが望ましい。また、溶媒を蒸発させる時間は、2〜3分程度である。ここで使用する不活性ガスとしては、窒素ガスが適している。なお、不活性ガスを使用するのは、塗布液と酸素との接触を避けるためであり、窒素ガスに含まれる不純物としての酸素は、数%以下で、望ましくは1%以下とする。
ステップS5で薄膜形成のために加熱する。加熱は不活性ガス雰囲気で行い、蒸発設定温度からの加熱設定温度へは、徐々に昇温し、時間的には加熱設定温度にも依存するが、数数分以内で昇温させる、加熱温度は100℃〜300℃で充分であるが、さらなる高温においての成膜も可能である。加熱設定温度に達してからの加熱時間は20分〜30分程度であるが、特に制限されるものではない。最後にステップS6で、室温まで冷却して金属キサンテートを用いた成膜が終了する。
膜厚は、ステップS3からステップS6を複数回繰り返すことによって厚くでき、目的の膜厚となるまで行なえばよい。
図2は、本発明に使用する各金属キサンテートの外観20を示す図である。Cuキサンテート22、Znキサンテート24、Inキサンテート26とSnキサンテート28示している。外観での色は、Cuキサンテート22は濃い黄色をしている。Znキサンテート24は白色であり、Inキサンテート28も色は薄く、僅かに灰色がかった黄色である。
Snキサンテートは液体であり、濃い茶色である。Snキサンテートを粉末にすると低温での薄膜形成ができず、液体のままのSnキサンテートを使用することにより低温での薄膜生成が可能となる。
次にこれらの金属キサンテートを用いた化合物半導体の薄膜形成について実施例を説明する。
(実施例1)
まず、CuInS薄膜の成膜を行なった。CuInS薄膜は、金属キサンテートとしてCuキサンテートとInキサンテートを使用する。各金属キサンテートに含有されたS原子がCuInS薄膜のS成分となる。
各金属キサンテートの熱分解を含めた熱反応過程を知るために、熱重量分析(Thermogravimetric Analysis:TG)により、温度を変化させながら、あるいは一定の温度に保って、試料の重量変化を測定した。
図3は、Cuキサンテート(Cu)とInキサンテート(In)、さらに、CuキサンテートとInキサンテートを混合したCu−Inキサンテート(Cu+In)の熱重量分析結果32を示している。分解開始温度(重量が5%減少したときの温度)は、Cuキサンテート22が約170℃、Inキサンテート26が130℃である。Cu−Inキサンテートは、Cuキサンテート22とInキサンテート26より温度に対する分解開始温度約170℃近辺ではややなだらかな傾きであるが、その後はシャープな傾きとなっており、飽和分解温度は、Cuキサンテート22より低くなっている。
温度を高くして220℃以上とすると、全ての金属キサンテートの重量が飽和し、相対的重量損失は、Cuキサンテート22が約70%、Inキサンテート26が約65%で、Cu−Inキサンテートは、約75%となっている。金属キサンテートの重量飽和に生成されているのは、Cuキサンテート22からはCuS、Inキサンテート26からはIn、Cu−InキサンテートからはCuInSである。
次にCuInSを成膜するために、Cuキサンテート22とInキサンテート26を化学量論的組成比が1:1となるように秤量し、テトラヒドロフロンに溶解させて溶解液を作製した。
成膜はガラス基板上に行うため、溶媒の蒸発温度を75℃に設定して、窒素雰囲気下でガラス基板を加熱した。ガラス基板が75℃となった時点で、作製した溶解液をディップコート法で塗布し、2分間溶媒を蒸発させた。その後、溶解液が塗布されたガラス基板を加熱し、成膜した。
図4は、窒素雰囲気下でのCuInS薄膜の各加熱温度における外観状態34を示している。75℃は、溶媒蒸発後の状態であり、75℃で2分間、溶媒を蒸発させた。外観上は、黄色に着色しており、まだ反応が行なわれていない。加熱温度を150℃にすると、黒色に変色しており、CuキサンテートとInキサンテートの反応が開始されていることがわかる。さらに、250℃、300℃、350℃、400℃での外観状態を示しているが、いずれも黒色に変色しており、反応が進んでいる。
図5は、加熱処理後のCuInS薄膜のXRD評価結果36である。加熱温度は、100℃、150℃、250℃、300℃、350℃、400℃と500℃であり、それぞれの温度に対するXRDスペクトルを示している。また、基板としたガラスのXRDスペクトルも比較参考のために示した。
加熱温度が150℃以上では、回折角2θが約28度、46度と55度にXRDスペクトルのピークが観測されている。これは、CuInSのICDDカードに於ける(112)、(204)、(312)面のピーク位置と一致している。これより、Cu−Inキサンテートから、150℃以上でCuInSが成膜されているといえる。
図6は、EPMAによるCuInS薄膜の原子組成比評価結果38である。EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)は、照射する特性X線のスペクトルに注目して、電子線が照射されている微小領域(おおよそ1μm)に於ける構成元素の検出及び同定と、各構成元素の比率(濃度)を分析する。
化学量論的組成比は、CuとIn化学量論的組成比が1:1となるように秤量しており、原子濃度は、CuとInが25atm%、Sが50atm%である。加熱温度が150℃、250℃、300℃では、Inはほぼ25atm%となっているが、他の原子濃度は、Cu−rich、S−poorの濃度となった。350℃以上では、Inがより多くなる傾向がみられる。
図7は、CuInS薄膜の成分組成比評価結果40であり、図6の評価結果から算出した。化学量論的組成比としては、S/(Cu+In)とCu/Inとも1であるが、Cu−rich、S−poorの濃度のため、S/(Cu+In)は約1.2、また、Cu/Inは、約0.8となっている。
最終的な組成比を化学量論的組成比とするには、これらの結果をフィードバックして、金属キサンテーの秤量時に調整すればよい。
(実施例2)
次に、ガラス基板上へのCuSnS薄膜の成膜を行なった。CuSnS薄膜は、金属キサンテートとしてCuキサンテートとSnキサンテートを使用する。この実施例でのSnキサンテートは、Sn原子にジチオ炭酸ジエチルを配位した、液体キサンテートを使用している。
図8は、Snキサンテート(液体)の熱重量分析結果42を示している。参考としてCuキサンテートの結果も示した。Snキサンテートの分解開始温度は約110℃であり、温度を高くして130℃以上とすると重量が飽和し、相対的重量損失は約40%である。
次にCuSnSを成膜するために、CuキサンテートとSnキサンテートを化学量論的組成比が2:1となるように秤量し、テトラヒドロフロンに溶解させて溶解液を作製した。
溶媒の蒸発温度を75℃に設定して、窒素雰囲気下でガラス基板を加熱し、作製した溶解液をディップコート法で塗布し、2分間溶媒を蒸発させた。その後、溶解液が塗布されたガラス基板を加熱し、成膜した。
図9は、窒素雰囲気下でのCuSnS薄膜の各加熱温度における外観状態44を示している。75℃は、溶媒蒸発後の状態であり、75℃で2分間、溶媒を蒸発させた。外観上は、黄色に着色しており、まだ反応が行なわれていない。加熱温度を100℃にすると、黒色に変色しており、CuキサンテートとSnキサンテートの反応が開始されていることがわかる。さらに、250℃、300℃と加熱温度を上げると黒色が強くなって反応が促進されていくが、400℃、500℃では、色が薄くなって透明度が増してきている。
図10は、加熱処理後のCuSnS薄膜のXRD評価結果46である。加熱温度は、75℃、100℃、150℃、250℃、300℃、400℃と500℃であり、それぞれの温度に対するXRDスペクトルを示している。
加熱温度が100℃以上では、回折角2θが約30度、47度と56度にXRDスペクトルのピークが観測されている。これは、CuSnSのICDDカードに於ける(112)、(204)、(312)面のピーク位置と一致している。これより、Cu−Snキサンテートから、100℃以上でCuSnSが成膜されているといえる。
図11は、EPMAによるCuInS薄膜の原子組成比評価結果48である。化学量論的組成比は、CuとInの化学量論的組成比が1:1となるように秤量しており、原子濃度は、Cuが33atm%、Inが16.5atm%、Sが50atm%である。加熱温度が150℃、250℃、300℃、500℃について原子濃度を示しているが、150℃、250℃、300℃では、Cu−poor、In−rich、S−poorの結果となった。500℃では、CuのみがCu−poorから僅かにCu−richへと変化した。
図12は、CuSnS薄膜の成分組成比評価結果50であり、図11の評価結果から算出した。化学量論的組成比としては、S/(Cu+Sn)が1、Cu/Snが2であるが、Cu−rich、S−poorの濃度のため、S/(Cu+Sn)は各温度とも1以下であり、Cu/Snも2に対して1またはそれ以下であった。
最終的な組成比を化学量論的組成比とするには、これらの結果をフィードバックして、例えばSnキサンテートの量を2倍にする。
(実施例3)
CZTS太陽電池の光吸収層となるCuZnSnS薄膜の成膜を行なったCuZnSnS薄膜は、金属キサンテートとしてCuキサンテート、ZnキサンテートとSnキサンテートを使用する。各金属キサンテートに含有されたS原子がCuZnSnS薄膜のS成分となる。
図13は、Znキサンテート(Zn)の熱重量分析結果52を示している。分解開始温度(重量が5%減少したときの温度)は、130℃である。温度を高くして220℃以上とすると、金属キサンテートの重量が飽和し、相対的重量損失は約65%となっている。Cuキサンテートの熱重量分析結果は図3に、液状のSnキサンテートについての熱重量分析結果は図8に示す通りである。
金属キサンテートの重量飽和時に生成されているのは、CuキサンテートからはCuS、ZnキサンテートからはZnS、SnキサンテートからはSnSである。
次にCuZnSnSを成膜するために、Cuキサンテート、ZnキサンテートとSnキサンテートを化学量論的組成比Cu:Zn:Sn=2:1:1となるように秤量し、テトラヒドロフロンに溶解させて溶解液を作製した。
成膜はガラス基板上に行うため、溶媒の蒸発温度を75℃に設定して、窒素雰囲気下でガラス基板を加熱した。ガラス基板が75℃となった時点で、作製した溶解液をディップコート法で塗布し、2分間溶媒を蒸発させた。その後、溶解液が塗布されたガラス基板を加熱し、成膜した。
図14は、窒素雰囲気下でのCuZnSnS薄膜の各加熱温度における外観状態54を示している。75℃は、溶媒蒸発後の状態であり、75℃で2分間、溶媒を蒸発させた。各温度での加熱時間は20分行い、そのときの外観を示している。75℃における溶媒蒸発後の状態は、まだ黄色に着色しており、反応が行なわれていない。加熱温度を100℃にすると、黒色に変色し始めており、金属キサンテートの反応が開始されていることがわかる。さらに、250℃、300℃と加熱温度を上げた状態では、より黒く着色しているが、400℃、500℃になるにつれ、透明化していった。
図15は、加熱処理後のCuZnSnS薄膜のXRD評価結果56である。加熱温度が、75℃、100℃、250℃、300℃、400℃と500℃の結果であり、それぞれの温度に対するXRDスペクトルを示している。
加熱温度が100℃において、すでに回折角2θが約28度、47度と56度にXRDスペクトルのピークが観測されている。これは、CuZnSnSのICDDカードにおける(112)、(204)、(312)面のピーク位置と一致している。加熱温度を高くするほどピークは鋭くなった。これより、Cu−Inキサンテートから、100℃以上でCuInSが成膜されているといえる。
図16は、EPMAによるCuZnSnS薄膜の原子組成比評価結果58である。化学量論的組成比は、Cu、ZnとSnの化学量論的組成比が2:1:1となるように秤量しており、原子濃度は、Cuが25atm%、ZnとSnが12.5atm%、Sが50atm%である。Cuは、加熱温度が150℃、250℃、300℃、400℃、500℃と高くなるに従い、僅かなCu−poorからCu−richへと変化した。Znは、各温度で約15atm%前後、Snは各温度で約16atm%前後であった。Sは、100℃ではS−richであったが、温度が高くなるほど原子濃度は低くなり、500℃では45atm%でS−poorとなった。
図17は、CuZnSnS薄膜の成分組成比評価結果60であり、図16の評価結果から算出した。化学量論的組成比としては、S/(Cu+Zn+Sn)、Zn/Sn、Cu/(Zn+Sn)とも1である。加熱温度が300℃でS/(Cu+Zn+Sn)、Zn/Sn、Cu/(Zn+Sn)ともほぼ1となっているが、100℃ではいずれも1以上であり、400℃と500℃ではS/(Cu+Zn+Sn)が低く1に対して0.6となった。
CuZnSnSの場合、加熱温度が300℃以下では、理論値の原子濃度と評価結果に大きな差は無く、金属キサンテートの秤量での微調整で、最終的には目的とする原子濃度が得られる。CZTS太陽電池は、Cu/(Zn+Sn)の比を変えた変換効率の改善が図られており、この試みに対しても比較的容易に対応可能である。
本発明の実施例を説明したが、太陽電池として完成させるためには、光吸収層上に、n型半導体として機能させるバッファ層、表面電極を形成し、さらに取り出し用の電極を設ける。基板に使用されるガラスはソーダガラスで、下部電極はモリブデンが使用されている場合が多い。また、バッファ層は、硫化カドミウムCdSが使用され、最上部に設ける表面電極はZnO(酸化亜鉛)等が使用される。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
10 金属キサンテートを用いた光吸収層の作製方法
20 各種金属キサンテートの外観
22 Cuキサンテート
24 Znキサンテート
26 Inキサンテート
28 Snキサンテート
32 金属キサンテートの熱質量分析結果
34 CuInS薄膜の各加熱温度における外観状態
36 CuInS薄膜のXRD評価結果
38 CuInS薄膜の原子組成比評価結果
40 CuInS薄膜の成分組成比評価結果
42 Snキサンテートの熱重量分析結果
44 CuSnS薄膜の各加熱温度における外観状態
46 CuSnS薄膜のXRD評価結果
48 CuInS薄膜の原子組成比評価結果
50 CuSnS薄膜の成分組成比評価結果
52 Znキサンテートの熱重量分析結果
54 CuZnSnS薄膜の各加熱温度における外観状態
56 CuZnSnS薄膜のXRD評価結果
58 CuZnSnS薄膜の原子組成比評価結果
60 CuZnSnS薄膜の成分組成比評価結果

Claims (12)

  1. 太陽電池の光吸収層を作製する方法において、
    キサンテートを配位した金属錯体を、複数混合して溶媒に溶かして溶解液とする第一工程と、
    前記溶解液を電極が形成された基板に塗布する第二工程と、
    基板に塗布された前記溶解液の前記溶媒を、不活性ガス雰囲気で70℃〜90℃の温度で蒸発させる第三工程と、
    前記溶媒を蒸発させた後、不活性ガス雰囲気で100℃〜300℃の温度で加熱焼成する第四工程と、
    から成ることを特徴とする光吸収層の作製方法。
  2. 請求項1に記載の光吸収層の作製方法において、
    前記金属錯体の金属原子は、銅、亜鉛、インジウム、スズのいずれかであること、
    を特徴とする光吸収層の作製方法。
  3. 請求項2に記載の光吸収層の作製方法において、
    銅を原子とする金属錯体の分子式は、
    一般式(1)
    であることを特徴とする光吸収層の作製方法。
  4. 請求項2に記載の光吸収層の作製方法において、
    亜鉛を原子とする金属錯体の分子式は、
    一般式(2)
    であることを特徴とする光吸収層の作製方法。
  5. 請求項2に記載の光吸収層の作製方法において、
    スズを原子とする金属錯体の分子式は、
    一般式(3)
    であることを特徴とする光吸収層の作製方法。
  6. 請求項5に記載の光吸収層の作製方法において、
    スズを原子とする金属錯体は、金属錯体合成後の液体状態で使用すること、
    を特徴とする光吸収層の作製方法。
  7. 請求項2に記載の光吸収層の作製方法において、
    インジウムを原子とする金属錯体の分子式は、
    一般式(4)
    であることを特徴とする光吸収層の作製方法。
  8. 請求項1に記載の光吸収層の作製方法において、
    前記溶媒は、テトラヒドロフロンであること、
    を特徴とする光吸収層の作製方法。
  9. 請求項1に記載の光吸収層の作製方法において、
    前記第三工程と第四工程での不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴンであること、
    を特徴とする光吸収層の作製方法。
  10. 請求項1に記載の光吸収層の作製方法において、
    前記第三工程は、前記電極が塗布された前記基板を70℃〜90℃にしてから前記溶解液を塗布すること、
    を特徴とする光吸収層の作製方法。
  11. 請求項1に記載の光吸収層の作製方法において、
    前記第四工程は、前記第三工程での設定温度から徐々に昇温して加熱焼成温度とすること、
    を特徴とする光吸収層の作製方法。
  12. 請求項1に記載の光吸収層の作製方法において、
    前記溶解液を電極が形成された基板に塗布する第二工程と、
    基板に塗布された前記溶解液の前記溶媒を、不活性ガス雰囲気で70℃〜90℃の温度で蒸発させる第三工程と、
    前記溶媒を蒸発させた後、不活性ガス雰囲気で100℃〜300℃の温度で加熱焼成する第四工程と、
    を複数回繰り返して膜厚を厚くすること、
    を特徴とする光吸収層の作製方法。

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