JP6208774B2 - 光電変換素子 - Google Patents

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Description

本発明は、光電変換素子に関する。
光電変換素子として、安価で、高い光電変換効率が得られることから色素増感太陽電池素子などの色素を用いた光電変換素子が注目されており、このような光電変換素子に関して種々の開発が行われている。
色素を用いた光電変換素子は一般に、少なくとも1つの光電変換セルを備えており、光電変換セルは、導電性基板と、対極などの対向基板と、導電性基板と対向基板とを連結する環状の封止部とを備えている。そして、導電性基板は、透明基板と、その上に形成された透明導電層とを有し、導電性基板と対向基板との間には酸化物半導体層が設けられている。
このような光電変換素子として、例えば下記特許文献1記載のものが知られている。下記特許文献1には、透明導電性基板と、透明導電性基板に対向する対極と、透明導電性基板上に設けられ、所定の色を呈する多孔質酸化チタン層と、透明導電性基板と対極との間に設けられる封止材とを有する光電変換セルからなる光電変換素子が開示されている。
特開2010−3468号公報
しかし、上記特許文献1に記載の光電変換素子は、以下に示す課題を有していた。
すなわち、上記特許文献1に記載の光電変換素子では、光電変換素子を基板の光入射面側から見た場合に、封止部を通して酸化物半導体層の周囲に望ましくない色や形状等が見える場合があった。すなわち、外観が良好でない場合があった。
ここで、封止部に着色剤を含有させることも考えられるが、この場合、着色剤は封止性能に寄与しないため、封止部の封止性能が低下して耐久性が低下するものと考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な外観を実現しながら優れた耐久性を有する光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。例えば上記特許文献1の光電変換素子において良好な外観を得るために、封止部を通して見える対極の色を変更することを考えた。しかし、対極の色は、光電変換素子の性能を発揮するために好適な材料を用いた結果として得られるものであるため、外観を重視して対極の色を変更しようとすると、光電変換素子の耐久性などを低下させるおそれがある。そこで、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、少なくとも1つの光電変換セルを有し、前記光電変換セルが、透明基板および前記透明基板の上に設けられる透明導電層を有する導電性基板と、前記導電性基板に対向する対向基板と、前記導電性基板又は前記対向基板上に設けられる酸化物半導体層と、前記導電性基板及び前記対向基板を接合させる環状の封止部とを備えており、少なくとも前記導電性基板と前記封止部との間に絶縁材が設けられており、前記絶縁材が着色されたガラスフリットで構成されており、前記封止材が樹脂で構成されている、光電変換素子である。
この光電変換素子によれば、絶縁材が着色されているため、光電変換素子を導電性基板側から見た場合に、絶縁材の裏側にある封止部や対向基板の色や形状を隠すことが可能となる。さらに、絶縁材を着色させることにより、光電変換素子の導電性基板に所望の文字やデザインを自由に表示させることが可能となる。このため、良好な外観を実現することができる。また、封止部に着色剤を導入することによって封止部を着色させ、対向基板の色を隠すことも可能であるが、この場合に比べて、光電変換素子の耐久性を向上させることができる。
上記光電変換素子において、前記絶縁材は、前記封止部の外形に沿って、全周に渡って設けられていることが好ましい。
この場合、外部からの水分の侵入経路を全周に渡って遮断することができるため、より優れた耐久性を有することが可能となる。
また上記光電変換素子は、前記透明基板のうち前記透明導電層と反対側の表面に被覆層をさらに有し、前記被覆層が、前記透明基板の厚さ方向に前記被覆層を見た場合に前記酸化物半導体層を覆っており、前記被覆層の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長と、前記酸化物半導体層の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長とが互いに異なることが好ましい。
この場合、被覆層の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長が、酸化物半導体層の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長と異なる。このため、酸化物半導体層で十分に吸収されるべき光が被覆層で十分に吸収されることを抑制することができる。従って、光電変換素子における光電変換特性の低下を抑制できる。また光電変換素子の酸化物半導体層の色を所望の色に調整することもできる。
上記光電変換素子において、前記透明導電層が、前記封止部の内側に配置される本体部を有し、前記透明導電層に溝が形成され、少なくとも一部の前記溝が、前記封止部の外形に沿って形成される第1の溝を有し、前記絶縁材が、前記第1の溝に入り込むとともに、連続して前記本体部の縁部をも覆っていることが好ましい。
この光電変換素子によれば、透明導電層に溝が形成され、この溝が、環状の封止部の外形に沿って形成される第1の溝を有する。そして、その第1の溝に、絶縁材が入り込むとともに、この絶縁材が、連続して本体部の縁部をも覆っている。このため、透明基板の内部であって溝の下方の位置に溝に沿ってクラックが形成され、そのクラックが本体部の縁部にまでつながっていたとしても、そのクラックを経た封止部の外部からの水分の侵入が絶縁材によって十分に抑制される。このため、本発明の光電変換素子によれば、優れた耐久性を有することが可能となる。
上記光電変換素子が、前記導電性基板の上において、前記光電変換セルを前記透明基板のうち前記透明導電層が設けられている面側で覆うバックシートをさらに備える場合には、前記溝が、前記第1の溝と、前記透明導電層のうち前記本体部を除く部分の縁部に沿って形成され、前記バックシートの周縁部と交差する第2の溝とを有し、前記絶縁材が、前記第2の溝に入り込むとともに前記透明導電層のうち前記本体部を除く部分の縁部をも覆っていることが好ましい。
上記第2の溝が前記バックシートの周縁部と交差していると、その第2の溝を通じて水分がバックシートと透明導電性基板との間の空間に侵入することが可能となる。この場合、第2の溝に絶縁材が入り込み、絶縁材が、透明導電層のうち前記本体部を除く部分の縁部をも覆っていることで、バックシートの外側から内側への水分の侵入が十分に抑制される。このため、バックシートと透明導電性基板との間の空間に侵入した水分が封止部を通じて封止部の内側に入り込むことが十分に抑制される。このため、光電変換素子の耐久性の低下を十分に抑制することが可能となる。
上記光電変換素子において、前記導電性基板上であって、前記バックシートの周縁部全周に沿って連続して前記絶縁材が設けられていることが好ましい。
この場合、バックシートの外側からバックシートの内側に水分が侵入することを、十分に抑制することができる。また絶縁材が着色されているため、絶縁材によってバックシートの色や表面形状を隠すことが可能となる。また、絶縁材を着色させることにより、光電変換素子の導電性基板に所望の文字やデザインを自由に表示させることが可能となる。このため、光電変換素子がバックシートを備える場合でも良好な外観を実現することができる。
上記光電変換素子は、前記光電変換セルを複数具備し、前記導電性基板が、複数の光電変換セルの共通の導電性基板で構成されており、前記第1の溝を含む前記溝によって、前記複数の光電変換セルは絶縁されていることが好ましい。
複数の光電変換セルの間では、隣り合う2つのセルの透明導電層同士の間に溝を設けて絶縁していても、汚れ等により透明導電層同士の間で微小な電流が流れてしまい絶縁が不十分な可能性がある。この場合、少なくとも第1の溝に絶縁材が入り込んでいることで、透明導電層同士の間に流れる漏れ電流を抑制することができ絶縁性を十分に確保することができる。このため、光電変換特性を向上させることができる。
上記光電変換素子においては、前記導電性基板上であって前記封止部と、前記導電性基板の縁部との間の領域のうち、前記絶縁材が設けられていない領域に前記透明導電層と接触するように設けられる少なくとも1つの端子部を有する導電部と、前記導電性基板上であって前記封止部と、前記導電性基板の縁部との間の領域のうち、前記絶縁材が設けられていない領域に、少なくとも前記端子部と隣接するように設けられ、光の透過を防止する光透過防止層とをさらに備え、前記端子部の少なくとも一部及び前記光透過防止層がそれぞれ着色されていることが好ましい。
この光電変換素子では、端子部の少なくとも一部が着色されるとともに、端子部の少なくとも一部に隣接する光透過防止層が着色されるため、光電変換素子を導電性基板の厚さ方向に見た場合、端子部が際立って見えることを十分に抑制することが可能となる。このため、良好な外観を実現することができる。また、本発明の光電変換素子によれば、透明導電層を着色させないで済むため、光電変換素子の光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。
上記光電変換素子においては、前記酸化物半導体層と前記光透過防止層との間におけるL色空間のL*の差が5以下であり、前記酸化物半導体層と着色されている前記端子部との間におけるL色空間のL*の差が5以下であることが好ましい。
この場合、端子部及び光透過防止層の各々の色を酸化物半導体層の色により近づけることが可能となる。別言すると、端子部、光透過防止層及び酸化物半導体層の色を単一色に近づけることが可能となる。このため、端子部及び光透過防止層が酸化物半導体層に対して際立って見えることがより十分に抑制される。このため、より良好な外観を実現できる。
上記光電変換素子においては、前記導電部が、前記導電性基板のうちの前記封止部側に設けられる少なくとも1本の配線材と、前記配線材の一端に接続され且つ前記光電変換素子を前記透明基板側から前記導電性基板の厚さ方向に見た場合に前記封止部の外側に配置される第1接続部と、前記配線材の他端に接続される第2接続部とを有し、前記光透過防止層が、前記配線材と前記導電性基板との間に、前記導電性基板の厚さ方向において前記配線材と重なるように設けられていることが好ましい。
この場合、導電性基板と配線材との間で配線材と光透過防止層とが重なるように設けられているため、光電変換素子を導電性基板の厚さ方向に見た場合、光透過防止層の裏側にある配線材を隠すことが可能となる。このため、良好な外観を実現することができる。
上記光電変換素子においては、前記対向基板が、金属基板を有する電極で構成され、前記第2接続部のうちの少なくとも1つが前記金属基板で構成されることが好ましい。
上記光電変換素子においては、前記第2接続部のうちの少なくとも1つが前記封止部の外側に配置され、前記第1接続部及び前記第2接続部が共通の前記透明導電層上に直接設けられていていてもよい。
上記光電変換素子においては、前記光透過防止層が、前記導電性基板の前記封止部側の表面において、前記封止部と、前記導電性基板の縁部との間の領域のうち、前記光電変換素子を前記導電性基板の厚さ方向に見た場合に前記絶縁材及び前記導電部以外の領域の全てを覆うように設けられていることが好ましい。
この場合、光電変換素子を透明基板側から導電性基板の厚さ方向に見た場合に、封止部と、導電性基板の縁部との間の領域のうち、少なくとも絶縁材及び導電部以外の領域が光透過防止層によって隠されるので、より良好な外観を実現できる。
上記光電変換素子においては、前記光電変換素子を前記透明基板側から前記導電性基板の厚さ方向に見た場合に、前記導電性基板に前記光透過防止層と異なる色を有する異色部が設けられていることが好ましい。
この場合、異色部は光透過防止層と異なる色を示すため、光電変換素子を透明基板側から導電性基板の厚さ方向に見た場合にその異色部によって所望の文字やデザインを表示させることが可能となる。
上記光電変換素子においては、前記光透過防止層が、前記導電性基板の前記封止部側の表面において、前記封止部と、前記導電性基板の縁部との間の領域のうち、前記光電変換素子を前記導電性基板の厚さ方向に見た場合に少なくとも前記絶縁材、前記導電部及び前記異色部以外の領域の全てを覆うように設けられていることが好ましい。
この場合、光電変換素子を透明基板側から導電性基板の厚さ方向に見た場合に、封止部と、導電性基板の縁部との間の領域のうち少なくとも絶縁材、導電部及び異色部以外の領域が光透過防止層によって隠されるので、より良好な外観を実現できる。
なお、本発明において、「着色されている」とは、L色空間のL*が35未満であることを言う。ここで、Lは、CIEのD65標準光に対する700nmの分光反射率をx、546.1nmの分光反射率をy、435.8nmの分光反射率をzとしたときに下記式で定義される。
=116×(0.2126z+0.7152y+0.0722x)1/3−16
また「光透過防止層」とは、可視光の波長領域における光の平均透過率が50%以下である層を言う。また可視光の波長領域とは、380〜800nmの波長域を言う。
さらに本発明において、「光電変換素子」には、光増感色素を用いて発電が行われる色素増感光電変換素子が含まれる。また「色素増感光電変換素子」には、太陽光によって発電が行われる色素増感光電変換素子、及び、屋内灯などの太陽光でない光によって発電が行われる色素増感光電変換素子が含まれる。
また本発明において、「光電変換セル」には、光増感色素を用いて発電が行われる色素増感光電変換セルが含まれる。また「色素増感光電変換セル」には、太陽光によって発電が行われる色素増感光電変換セル、及び、屋内灯などの太陽光でない光によって発電が行われる色素増感光電変換セルが含まれる。
本発明によれば、良好な外観を実現しながら優れた耐久性を有する光電変換素子が提供される。
本発明の光電変換素子の第1実施形態を示す切断面端面図である。 本発明の光電変換素子の第1実施形態の一部を示す平面図である。 図1の光電変換素子における透明導電層のパターンを示す平面図である。 図1の第1一体化封止部を示す平面図である。 図1の第2一体化封止部を示す平面図である。 図1の光電変換素子を導電性基板側から見た平面図である。 図2のVII−VII線に沿った切断面端面図である。 絶縁材およびバックシートを固定するための連結部を形成した作用極を示す平面図である。 図4の第1一体化封止部を形成するための第1一体化封止部形成体を示す平面図である。 本発明の光電変換素子の第2実施形態を示す切断面端面図である。 本発明の光電変換素子の第2実施形態の一部を示す平面図である。 図11のXII−XII線に沿った切断面端面図である。 絶縁材、及び、バックシートを固定するための光透過防止層を形成した作用極を示す平面図である。 図10の光電変換素子を導電性基板側から見た平面図である。 本発明の光電変換素子の第11実施形態の一部を導電性基板側から見た状態を示す平面図である。 本発明の光電変換素子の第3実施形態の一部を示す平面図である。 本発明の光電変換素子の第4実施形態の一部を示す平面図である。 本発明の光電変換素子の第5実施形態の一部を示す平面図である。 本発明の光電変換素子の第6実施形態の一部を示す平面図である。 本発明の光電変換素子の第7実施形態を導電性基板側から見た状態を示す平面図である。 本発明の光電変換素子の第8実施形態の一部を示す切断面端面図である。 本発明の光電変換素子の第9実施形態の一部を示す切断面端面図である。 本発明の光電変換素子の第10実施形態の一部を示す平面図である。 本発明の光電変換素子の第11実施形態の一部を示す切断面端面図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の光電変換素子の好適な第1実施形態について図1〜図7を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の光電変換素子の第1実施形態を示す切断面端面図、図2は、本発明の光電変換素子の第1実施形態の一部を示す平面図、図3は、図1の光電変換素子における透明導電層のパターンを示す平面図、図4は、図1の第1一体化封止部を示す平面図、図5は、図1の第2一体化封止部を示す平面図、図6は、図1の光電変換素子を導電性基板側から見た平面図、図7は、図2のVII−VII線に沿った切断面端面図である。
図1に示すように、光電変換素子100は、複数(図1では4つ)の光電変換セル(以下、単に「セル」と呼ぶことがある)50と、セル50を覆うように設けられるバックシート80とを有している。図2に示すように、複数のセル50は、導電材としての配線材60Pによって直列に接続されている。以下、説明の便宜上、光電変換素子100における4つのセル50をセル50A〜50Dと呼ぶことがある。
図1に示すように、複数のセル50の各々は、導電性基板15と、導電性基板15に対向する対向基板20と、導電性基板15及び対向基板20を接合させる環状の封止部30Aと、導電性基板15と対向基板20との間に設けられる酸化物半導体層13とを備えている。導電性基板15、対向基板20及び環状の封止部30Aによって形成されるセル空間には電解質40が充填されている。また酸化物半導体層13には色素が担持されている。
対向基板20は、本実施形態では対極で構成されており、基板と電極を兼ねる金属基板21と、金属基板21の導電性基板15側に設けられて触媒反応を促進する触媒層22とを備えている。また隣り合う2つのセル50において、対向基板20同士は互いに離間している。
図1および図2に示すように、導電性基板15は、透明基板11と、透明基板11の上に設けられる電極としての透明導電層12とを有している。透明基板11は、セル50A〜50Dの共通の透明基板として使用されている。導電性基板15の透明導電層12の上には少なくとも1つの酸化物半導体層13が設けられている。酸化物半導体層13は、環状の封止部30Aの内側に配置されている。また導電性基板15の透明導電層12上には接続端子16が設けられている。また導電性基板15と封止部30Aとの間には、着色された絶縁材33が設けられている。本実施形態では、導電性基板15及び酸化物半導体層13によって作用極10が構成されている。
図2および図3に示すように、透明導電層12は、互いに絶縁された状態で設けられる透明導電層12A〜12Fで構成されている。すなわち、透明導電層12A〜12Fは互いに溝90を介在させて配置されている。ここで、透明導電層12A〜12Dはそれぞれ複数のセル50A〜50Dの透明導電層12を構成している。また透明導電層12Eは、封止部30Aに沿って折れ曲がるようにして配置されている。透明導電層12Fは、バックシート80の周縁部80aを固定するための環状の透明電極層12である(図1参照)。
図3に示すように、透明導電層12A〜12Dはいずれも、側縁部12bを有する四角形状の本体部12aと、本体部12aの側縁部12bから側方に突出する突出部12cとを有している。
図2に示すように、透明導電層12A〜12Dのうち透明導電層12Cの突出部12cは、セル50A〜50Dの配列方向Xに対して側方に張り出す張出し部12dと、張出し部12dからセル50A〜50Dの配列方向Xに沿って延びて、隣りのセル50Dの本体部12aに溝90を介して対向する対向部12eとを有している。
セル50Bにおいても、透明導電層12Bの突出部12cは、張出し部12dと対向部12eとを有している。またセル50Aにおいても、透明導電層12Aの突出部12cは、張出し部12dと対向部12eとを有している。
なお、セル50Dは、既にセル50Cと接続されており、他に接続されるべきセル50が存在しない。このため、セル50Dにおいて、透明導電層12Dの突出部12cは対向部12eを有していない。すなわち透明導電層12Dの突出部12cは張出し部12dのみで構成される。
但し、透明導電層12Dは、光電変換素子100で発生した電流を外部に取り出すための第1電流取出し部12fと、第1電流取出し部12fと本体部12aとを接続し、透明導電層12A〜12Cの側縁部12bに沿って延びる接続部12gとをさらに有している。第1電流取出し部12fは、セル50Aの周囲であって透明導電層12Aに対して透明導電層12Bと反対側に配置されている。
一方、透明導電層12Eも、光電変換素子100で発生した電流を外部に取り出すための第2電流取出し部12hを有しており、第2電流取出し部12hは、セル50Aの周囲であって透明導電層12Aに対して透明導電層12Bと反対側に配置されている。そして、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hは、セル50Aの周囲において溝90を介して隣り合うように配置されている。ここで、溝90は、環状の封止部30Aの外形に沿って形成される第1の溝90Aと、透明導電層12のうち本体部12aを除く部分の縁部に沿って形成され、バックシート80の周縁部80aと交差する第2の溝90Bとで構成されている。具体的には、第1の溝90Aは、透明導電層12の本体部12aの縁部に沿って形成されている。
また、透明導電層12A〜12Cの各突出部12cおよび透明導電層12Eの上には、接続端子16が設けられている。接続端子16は具体的には、光電変換素子100を透明基板11側から導電性基板15の厚さ方向に見た場合に封止部30Aの外側に設けられている。各接続端子16は、配線材60Pと接続され、封止部30Aの外側で封止部30Aに沿って延びる導電材接続部である配線材接続部16Aと、配線材接続部16Aから封止部30Aの外側で封止部30Aに沿って延びる導電材非接続部である配線材非接続部16Bとを有する。本実施形態では、透明導電層12A〜12Cにおいては、接続端子16のうち少なくとも配線材接続部16Aは、突起部12cの対向部12e上に設けられており、接続される隣りのセル50の本体部12aに対向している。透明導電層12Eにおいては、接続端子16のうちの配線材接続部16Aは、接続される隣りのセル50Aの本体部12aに対向している。そして、配線材非接続部16Bの幅は、配線材接続部16Aの幅より狭くなっている。ここで、配線材接続部16Aおよび配線材非接続部16Bの幅はそれぞれ一定となっている。なお、配線材接続部16Aの幅とは、配線材接続部16Aの延び方向に直交する方向の長さであって配線材接続部16Aの幅のうち最も狭い幅を意味し、配線材非接続部16Bの幅とは、配線材非接続部16Bの延び方向に直交する方向の長さであって配線材非接続部16Bの幅のうち最も狭い幅を意味するものとする。
そして、セル50Cにおける透明導電層12Cの突出部12c上に設けられる接続端子16の配線材接続部16Aと隣りのセル50Dにおける対向基板20の金属基板21とが配線材60Pを介して接続されている。配線材60Pは、封止部30Aの上を通るように配置されている。同様に、セル50Bにおける接続端子16の配線材接続部16Aと隣りのセル50Cにおける対向基板20の金属基板21とは配線材60Pを介して接続され、セル50Aにおける接続端子16の配線材接続部16Aと隣りのセル50Bにおける対向基板20の金属基板21とは配線材60Pを介して接続され、透明導電層12E上の接続端子16の配線材接続部16Aと隣りのセル50Aにおける対向基板20の金属基板21とは配線材60Pを介して接続されている。別言すると、配線材60Pの一端はセル50Cの接続端子16に接続され、配線材60Pの他端はセル50Dの対向基板20の金属基板21に接続されている。ここで、金属基板21が第2接続部を構成し、接続端子16が第1接続部を構成している。即ち、端子部としての接続端子16が第1接続部を兼ねている。同様に、配線材60Pの一端がセル50Bの接続端子16に接続され、配線材60Pの他端がセル50Cの対向基板20の金属基板21に接続されている。さらに配線材60Pの一端がセル50Aの接続端子16に接続され、配線材60Pの他端がセル50Bの対向基板20の金属基板21に接続されている。さらに配線材60Pの一端が透明導電層12E上の接続端子16に接続され、配線材60Pの他端がセル50Aの対向基板20の金属基板21に接続されている。
また第1電流取出し部12f、第2電流取出し部12h上にはそれぞれ、外部接続端子18a,18bが設けられている。
図1に示すように、封止部30Aは、導電性基板15と対向基板20との間に設けられる環状の第1封止部31Aと、第1封止部31Aと重なるように設けられ、第1封止部31Aと共に対向基板20の縁部20aを挟持する第2封止部32Aとを有している。そして、図4に示すように、隣り合う第1封止部31A同士は一体化されて第1一体化封止部31を構成している。別言すると、第1一体化封止部31は、隣り合う2つの対向基板20の間に設けられていない環状の部分(以下、「環状部」と呼ぶ)31aと、隣り合う2つの対向基板20の間に設けられており、環状の部分31aの内側開口31cを仕切る部分(以下、「仕切部」と呼ぶ)31bとで構成されている。また図5に示すように、第2封止部32A同士は、隣り合う対向基板20の間で一体化され、第2一体化封止部32を構成している。第2一体化封止部32は、隣り合う2つの対向基板20の間に設けられていない環状の部分(以下、「環状部」と呼ぶ)32aと、隣り合う2つの対向基板20の間に設けられており、環状の部分32aの内側開口32cを仕切る部分(以下、「仕切部」と呼ぶ)32bとで構成されている。なお、本実施形態では、第1封止部31Aの内壁面と酸化物半導体層13との間には隙間が設けられている。別言すると、第1封止部31Aの内壁面と酸化物半導体層13とは互いに離間している。
また図1に示すように、第1封止部31Aと導電性基板15との間には、隣り合う透明導電層12A〜12F同士間の溝90に入り込み且つ隣り合う透明導電層12にまたがるように、環状の封止部30Aの外形に沿って全周に絶縁材33が設けられている。詳しく述べると、絶縁材33は、溝90のうち透明導電層12の本体部12aの縁部に沿って形成される第1の溝90Aが形成されている部分においては、第1の溝90Aに入り込むとともに、連続して第1の溝90Aを形成している本体部12aの縁部をも覆っている。一方、第1の溝90Aが形成されていない本体部12aと突出部12cとの間においても、透明導電層12上に絶縁材33が形成され、封止部30Aの外形に沿って、全周に渡って絶縁材33が形成されている。また、絶縁材33は、第1の溝90Aを挟んで本体部12aと反対側の透明導電層12の縁部も連続して覆っており、封止部30Aの外側まで設けられている。なお、本実施形態では、溝90のうち第2の溝90Bや、第1の溝90Aと第2の溝90Bとを接続する溝は絶縁材33で覆われていない。
図1に示すように、導電性基板15の上にはバックシート80が設けられている。バックシート80は、セル50を、透明基板11のうち透明導電層12が設けられている面側で覆うように設けられている。バックシート80は、耐候性層と、金属層とを含む積層体80Aと、積層体80Aに対し金属層と反対側に設けられ、着色された絶縁性の連結部14(以下、「絶縁材14」と呼ぶ)を介して導電性基板15と接着する接着部80Bとを含む。ここで、接着部80Bは、バックシート80を導電性基板15に接着させるためのものであり、図1に示すように、積層体80Aの周縁部に形成されていればよい。但し、接着部80Bは、積層体80Aのうちセル50側の面全体に設けられていてもよい。バックシート80の周縁部80aは、接着部80Bによって、絶縁材14を介して透明導電層12のうち透明導電層12D,12E,12Fと接続されている。ここで、接着部80Bはセル50の封止部30Aと離間している。また絶縁材14も封止部30Aと離間している。なお、バックシート80より内側で且つ封止部30Aの外側の空間に電解質40は充填されていない。
また図2に示すように、透明導電層12Dにおいては、本体部12a、接続部12gおよび電流取出し部12fを通るように、配線材17が延びている。ここで、配線材17は集電配線であり、透明導電層12Dよりも低い抵抗及び集電機能を有する。この配線材17は、バックシート80と導電性基板15との間の絶縁材14と交差しないように配置されている。別言すると、配線材17は、絶縁材14よりも内側に配置されている。
なお、図2に示すように、各セル50A〜50Dにはそれぞれ、バイパスダイオード70A〜70Dが並列に接続されている。具体的には、バイパスダイオード70Aは、セル50Aとセル50Bとの間の第2一体化封止部32の仕切部32b上に固定され、バイパスダイオード70Bは、セル50Bとセル50Cとの間の第2一体化封止部32の仕切部32b上に固定され、バイパスダイオード70Cは、セル50Cとセル50Dとの間の第2一体化封止部32の仕切部32b上に固定されている。バイパスダイオード70Dは、セル50Dの封止部30A上に固定されている。そして、バイパスダイオード70A〜70Dを通るように対向基板20の金属基板21に配線材60Qが固定されている。またバイパスダイオード70A,70B間、バイパスダイオード70B,70C間、バイパスダイオード70C,70D間の配線材60Qからはそれぞれ配線材60Pが分岐し、透明導電層12A上の配線材接続部16A、透明導電層12B上の配線材接続部16A、透明導電層12C上の配線材接続部16Aにそれぞれ接続されている。またセル50Aの対向基板20の金属基板21にも配線材60Pが固定され、この配線材60Pは、バイパスダイオード70Aと、透明導電層12E上の接続端子16の配線材接続部16Aとを接続している。さらにバイパスダイオード70Dは、配線材60Pを介して透明導電層12Dに接続されている。
また、図1に示すように、各セル50の対向基板20上には、乾燥剤95が設けられている。
上記光電変換素子100では、溝90が設けられており、溝90は、環状の封止部30Aの外形に沿って形成される第1の溝90Aを有する。そして、その第1の溝90Aに、絶縁材33が入り込むとともに、この絶縁材33が、連続して本体部12aの縁部をも覆っている。このため、透明基板11の内部であって溝90の下方の位置に溝90に沿ってクラックが形成され、そのクラックが本体部12aの縁部にまでつながっていたとしても、そのクラックを経た封止部30Aの外部からの水分の侵入が絶縁材33によって十分に抑制される。このため、光電変換素子100によれば、優れた耐久性を有することが可能となる。また光電変換素子100によれば、絶縁材33が着色されているため、光電変換素子100を図6に示すように、導電性基板15から見た場合に、絶縁材33の裏側にある第1封止部31Aや対向基板20の色や形状を隠すことが可能となる。さらに、絶縁材33を着色させることにより、光電変換素子100の導電性基板15に所望の文字やデザインを自由に表示させることが可能となる。このため、良好な外観を実現することができる。また、封止部30Aに着色剤を導入することによって封止部30Aを着色させ、対向基板20の色を隠すことも可能であるが、この場合に比べて、光電変換素子100の耐久性を向上させることができる。
また光電変換素子100では、絶縁材33は、封止部30Aの外形に沿って、全周に渡って設けられているため、外部からの水分の侵入経路を全周に渡って遮断することができ、より優れた耐久性を有することが可能となる。
さらに光電変換素子100では、第1の溝90Aが、本体部12aの縁部に沿って設けられている。このため、第1の溝90Aが本体部12aの縁部よりも外側に形成される場合に比べ、第1の溝90Aで囲まれる領域を小さくすることができ、光電変換素子100を小型化することができる。
また光電変換素子100では、バックシート80の周縁部80aの全周に、絶縁材14が設けられているため、バックシート80の外側からバックシート80の内側に水分が侵入することを、十分に抑制することができる。
さらに光電変換素子100は、隣接するセル50の透明導電層12の間の第1の溝90Aにも絶縁材33が入り込んでいるため、透明導電層12同士の間に流れる電流を抑制することができ絶縁性を十分に確保することができる。このため、光電変換特性を向上させることができる。
また光電変換素子100では、封止部30Aと絶縁材33とが重なるように配置されている。このため、絶縁材33が封止部30Aと重ならないように配置されている場合に比べて、光電変換素子100の受光面側から見た、発電に寄与する部分の面積をより増加させることができる。このため、開口率をより向上させることができる。
また光電変換素子100では、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hは、セル50Aの周囲であって透明導電層12Aに対し透明導電層12Bと反対側に配置され、透明導電層12Aの第1電流取出し部12fおよび透明導電層12Fの第2電流取出し部12hは互いに溝90を介して隣り合うように配置されている。このため、光電変換素子100においては、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hのそれぞれに外部接続端子18a,18bを隣り合うように配置することが可能となる。従って、外部接続端子18a,18bから電流を外部に取り出すためのコネクタの数を1つとすることが可能となる。すなわち、仮に、第1電流取出し部12fが透明導電層12Dに対し透明導電層12Cと反対側に配置されている場合、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hが互いに大きく離れて配置されるため、外部接続端子18a,18bも大きく離れて配置されることになる。この場合、光電変換素子100から電流を取り出すには、外部接続端子18aに接続するコネクタと、外部接続端子18bに接続するコネクタの2つのコネクタが必要になる。しかし、光電変換素子100によれば、外部接続端子18a,18bを隣り合うように配置することが可能となるため、コネクタは1つで済む。このため、光電変換素子100によれば、省スペース化を図ることができる。また、光電変換素子100は、低照度下で使用されると、発電電流が小さい。具体的には、発電電流は2mA以下である。このため、セル50A〜50Dの両端のセル50A,50Dのうち一端側のセル50Dの透明導電層12Dの一部を、他端側のセル50Aの対向基板20の金属基板21に電気的に接続された第2電流取出し部12hの隣りに溝90を介して第1電流取出し部12fとして配置しても、光電変換素子100の光電変換性能の低下を十分に抑制することができる。
また、光電変換素子100では、セル50A〜50DがX方向に沿って一列に配列されており、セル50A〜50Dの両端のセル50A,50Dのうち一端側のセル50Dの透明導電層12Dが、封止部30Aの内側に設けられる本体部12aと、第1電流取出し部12fと、本体部12aと第1電流取出し部12fとを接続する接続部12gとを有する。このため、セル50A〜50Dの一部であるセル50C、50Dを途中で折り返し、セル50Aとセル50Dとをそれらが互いに隣り合うように配置する場合に比べて、隣り合う2つのセル50同士を接続するためにセル50A〜50Dの配列方向(図2のX方向)に沿って設けられる接続端子16の設置領域をより短くすることが可能となり、より省スペース化を図ることが可能となる。また、光電変換素子100によれば、当該光電変換素子100が低照度環境下で使用される場合、通常、発電電流が小さいため、光電変換素子100が、本体部12aと第1電流取出し部12fとを接続する接続部12gをさらに有していても、光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。
さらに、光電変換素子100では、配線材17が、バックシート80と導電性基板15との間の絶縁材14と交差しないように配置されている。配線材17は一般に、多孔質であるため通気性を有しており、水蒸気等のガスが透過可能となっているところ、配線材17が、バックシート80と導電性基板15との間の絶縁材14と交差しないように配置されていると、配線材17を通してバックシート80と導電性基板15との間の空間に外部から水蒸気等が侵入することを防止することができる。その結果、光電変換素子100は優れた耐久性を有することが可能となる。また配線材17は、透明導電層12Dよりも低い抵抗を有するため、発電電流が大きくなっても、光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。
さらに、光電変換素子100が温度変化の大きい環境下に置かれた場合、接続端子16の幅が狭いほど、接続端子16は、透明導電層12の突出部12cから剥離しにくくなる。その点、光電変換素子100では、接続端子16のうち配線材非接続部16Bが、配線材60Pと接続される配線材接続部16Aより狭い幅を有する。このため、接続端子16のうち配線材非接続部16Bは、透明導電層12の突出部12cから剥離しにくくなる。従って、仮に配線材接続部16Aが透明導電層12の突出部12cから剥離しても、配線材非接続部16Bは透明導電層12から剥離せず透明導電層12に対する接続を維持することが可能となる。また配線材接続部16Aが透明導電層12の突出部12cから剥離しても、光電変換素子100は正常に動作することが可能である。従って、光電変換素子100によれば、接続信頼性を向上させることが可能となる。また、隣り合う2つのセル50のうち一方のセル50における対向基板20の金属基板21に接続された配線材60Pは、他方のセル50における突出部12c上の配線材接続部16Aと接続され、配線材接続部16Aは、突出部12c上で封止部30Aの外側に設けられている。すなわち、隣り合う2つのセル50同士の接続が封止部30Aの外側で行われる。このため、光電変換素子100によれば、開口率を向上させることが可能となる。
また光電変換素子100では、セル50A〜50Dのうち隣りのセル50と接続されるセル50において、突出部12cが、本体部12aから側方に張り出す張出し部12dと、張出し部12dから延びて、隣りのセル50の本体部12aに対向する対向部12eとを有し、接続端子16のうち少なくとも配線材接続部16Aが対向部12e上に設けられている。
この場合、接続端子16のうち少なくとも配線材接続部16Aが、隣りのセル50の本体部12aに対向する対向部12e上に設けられているため、接続端子16のうち少なくとも配線材接続部16Aが、隣りのセル50の本体部12aに対向する対向部12e上に設けられていない場合と異なり、配線材接続部16Aに接続される配線材60Pが、隣りのセル50の対向基板20の金属基板21を横切ることを十分に防止することが可能となる。その結果、隣り合うセル50同士間の短絡を十分に防止することが可能となる。
また光電変換素子100では、配線材接続部16Aおよび配線材非接続部16Bはいずれも封止部30Aに沿って配置されている。このため、配線材接続部16Aおよび配線材非接続部16Bを封止部30Aから遠ざかる方向に沿って配置する場合に比べて、接続端子16のために要するスペースを省くことができる。
さらに光電変換素子100では、バックシート80の接着部80Bは、セル50の封止部30Aと離間している。このため、接着部80Bが、低温時において収縮することにより封止部30Aを引っ張って、封止部30Aと導電性基板15又は対向基板20との界面に過大な応力が加わることが十分に抑制される。また、高温時においても、接着部80Bが、膨張することにより封止部30Aを押して、封止部30Aと導電性基板15又は対向基板20との界面に過大な応力を加えることが十分に抑制される。すなわち、高温時でも低温時でも、封止部30Aと導電性基板15又は対向基板20との界面に過大な応力が加わることが十分に抑制される。このため、光電変換素子100は、優れた耐久性を有することが可能となる。
次に、導電性基板15、接続端子16、酸化物半導体13、絶縁材14、33、色素、対向基板20、封止部30A、電解質40、配線材60P,60Q、バックシート80および乾燥剤95について詳細に説明する。
(導電性基板)
導電性基板15に含まれる透明基板11を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、および、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板11の厚さは、光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜10000μmの範囲にすればよい。
導電性基板15に含まれる透明導電層12に含まれる材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電層12は、単層でも、異なる導電性金属酸化物を含む複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電層12が単層で構成される場合、透明導電層12は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOを含むことが好ましい。透明導電層12は、ガラスフリットをさらに含んでもよい。透明導電層12の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
また透明導電層12のうち透明導電層12Dの接続部12gの抵抗値は、特に制限されるものではないが、下記式(1)で表される抵抗値以下であることが好ましい。
抵抗値=直列接続されるセル50の数×120Ω (1)
この場合、接続部12gの抵抗値が、上記式(1)で表される抵抗値を超える場合と比べて、光電変換素子100の性能低下を十分に抑制することができる。本実施形態では、セル50の数は4であるから、上記式(1)で表わされる抵抗値は480Ωとなるので、接続部12gの抵抗値は480Ω以下であることが好ましい。
なお、透明導電層12に形成される溝90は、第1の溝90Aと第2の溝90Bとを有しているが、溝90は、必ずしも第2の溝90Bを有していなくてもよい。
(接続端子)
接続端子16は、金属材料を含む。金属材料としては、例えば銀、銅およびインジウムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いてもよい。
また接続端子16は、配線材60Pと同一の材料で構成されていても異なる材料で構成されていてもよいが、同一の材料で構成されていることが好ましい。
この場合、接続端子16および配線材60Pが同一の材料で構成されているため、接続端子16と配線材60Pとの密着性をより十分に向上させることができる。このため、光電変換素子100における接続信頼性をより向上させることが可能となる。
接続端子16においては、配線材非接続部16Bの幅は、配線材接続部16Aの幅より狭ければ特に制限されないが、配線材接続部16Aの幅の1/2以下であることが好ましい。
この場合、配線材非接続部16Bの幅が配線材接続部16Aの幅の1/2を超える場合に比べて、光電変換素子100における接続信頼性をより向上させることが可能となる。
配線材接続部16Aの幅は特に制限されないが、好ましくは0.5〜5mmであり、より好ましくは0.8〜2mmである。
また接続端子16の配線材接続部16Aおよび配線材非接続部16Bの幅は、一定でなくてもよい。例えば配線材接続部16Aおよび配線材非接続部16Bの幅はそれぞれ、接続端子16の延び方向に沿って変化してもよい。例えば配線材非接続部16Bのうち配線材接続部16Aから最も遠い側の端部から最も近い側の端部に向かって幅が単調に増加し、配線材接続部16Aのうち配線材非接続部16B側の端部から導電部材非接続部16Bより最も遠い側の端部に向かって幅が単調に増加してもよい。
また配線材接続部16Aおよび配線材非接続部16Bはそれぞれ封止部30Aに沿って設けられているが、これらは、封止部30Aから遠ざかる方向に延びるように形成されていてもよい。但し、この場合、配線材接続部16Aが配線材非接続部16Bよりも封止部30Aに近い位置に配置されていることが好ましい。この場合、配線材60Pをより短くすることができる。
あるいは、透明導電層12A〜12C上に形成される接続端子16においては、配線材非接続部16Bは、配線材接続部16Aに直交するように配置されてもよい。
(酸化物半導体層)
酸化物半導体層13は、酸化物半導体粒子で構成される。酸化物半導体粒子は、例えば酸化チタン(TiO)、酸化シリコン(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)又はこれらの2種以上で構成される。
酸化物半導体層13は通常、光を吸収するための吸収層で構成されるが、吸収層と吸収層を透過した光を反射して吸収層に戻す反射層とで構成されてもよい。
酸化物半導体層13の厚さは通常は、0.5〜50μmとすればよいが、18〜35μmとすることが好ましい。この場合、厚さが18μm未満である場合に比べて、酸化物半導体層13からの反射光又は散乱光により、光電変換素子100を導電性基板15側から見た場合に、酸化物半導体層13の周囲が明るく見えることを十分に抑制することができる。一方、厚さが18〜35μmであると、厚さが35μmを超える場合に比べて、透明導電層12からの酸化物半導体層13の剥離や、酸化物半導体層13におけるひび割れの発生をより十分に抑制できる。
(絶縁材)
絶縁材33としては、着色されたガラスフリット等の無機材料や、着色された樹脂を用いることができる。中でも、絶縁材33は、着色されたガラスフリットであることが好ましい。着色されたガラスフリットは樹脂材料に比べて高い封止能を有するため、第1の溝90Aからの水分等の侵入を効果的に抑制することができる。絶縁材33の厚さは通常、10〜30μmであり、好ましくは15〜25μmである。また、絶縁材33が透明導電層12の縁部を覆う幅は、0.2mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。透明導電層12の縁部を覆う幅を0.2mm以上とすることで、隣接するセル50の透明導電層12の間の絶縁性を十分に確保することができる。但し、絶縁材33が透明導電層12の縁部を覆う幅は、5mm以下であることが好ましい。
絶縁材33の色は特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の色を用いることが可能である。例えば導電性基板15に文字やデザインを表示させないのであれば、絶縁材33の色は、酸化物半導体層13と同系統の色にすればよい。ここで、酸化物半導体層13と同系統の色とは、絶縁材33と酸化物半導体層13との間において、L色空間のL、a、bの差がそれぞれ5以下になる色を言う。
絶縁材14を構成する材料は、バックシート80と透明導電層12とを接着させることができ、着色されており且つ絶縁性を有するものであれば特に制限されず、絶縁材14を構成する材料としては、例えば色付きのガラスフリット、封止部31Aに用いられる樹脂材料と同様の樹脂材料に着色剤を配合してなるものなどを用いることができる。中でも、絶縁材14は、色付きのガラスフリットであることが好ましい。色付きのガラスフリットは樹脂材料に比べて高い封止能を有するため、バックシート80の外側からの水分等の侵入を効果的に抑制することができる。
絶縁材14は着色されているので、絶縁材14によってバックシート80の色や表面形状を隠すことが可能となる。また、絶縁材14を着色させることにより、光電変換素子100の導電性基板15に所望の文字やデザインを自由に表示させることが可能となる。このため、光電変換素子100がバックシート80を備える場合でも良好な外観を実現することができる。
(色素)
色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素などの光増感色素や、ハロゲン化鉛系ペロブスカイトなどの有機−無機複合色素などが挙げられる。ハロゲン化鉛系ペロブスカイトとしては、例えばCHNHPbX(X=Cl、Br、I)が用いられる。ここで、色素として、光増感色素を用いる場合には、光電変換素子100は色素増感光電変換素子となる。
上記色素の中でも、ビピリジン構造又はターピリジン構造を含む配位子を有するルテニウム錯体からなる光増感色素が好ましい。この場合、光電変換素子100の光電変換特性をより向上させることができる。
(対向基板)
対向基板20は、上述したように、基板と電極を兼ねる金属基板21と、金属基板21のうち導電性基板15側に設けられて対向基板20の表面における還元反応を促進する導電性の触媒層22とを備える。
金属基板21は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、アルミ、ステンレス等の耐食性の金属材料で構成される。金属基板21の厚さは、光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜0.1mmとすればよい。
触媒層22は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。中でも、光電変換素子100を導電性基板15の光入射側から見た場合に、酸化物半導体層13と封止部30との間の隙間から見える対向基板20の色や形状等を目立たなくするという観点からは、炭素系材料が好ましい。ここで、炭素系材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びケッチェンブラックなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
(封止部)
封止部30Aは、第1封止部31Aと、第2封止部32Aとで構成される。
第1封止部31Aを構成する材料としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を含む変性ポリオレフィン樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。
第1封止部31Aの厚さは通常、40〜90μmであり、好ましくは60〜80μmである。
第2封止部32Aを構成する材料としては、第1封止部31Aと同様、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を含む変性ポリオレフィン樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。
第2封止部32Aの厚さは通常、20〜45μmであり、好ましくは30〜40μmである。
なお、封止部30Aにおいて第2封止部32Aは省略されてもよい。
対向基板20と仕切部31bとの接着部の幅Pは、対向基板20と第1一体化封止部31の環状部31aとの接着部の幅Qの25%以上100%未満であることが好ましい。この場合、接着部の幅Pが、接着部の幅Qの25%未満である場合と比べて、より優れた耐久性を有することが可能となる。接着部の幅Pは、接着部の幅Qの30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
光電変換素子100においては、第1一体化封止部31の仕切部31bの幅Rは、第1一体化封止部31の環状部31aの幅Tの100%以上200%未満であることが好ましく、120〜180%であることがより好ましい。
この場合、大きな開口率と優れた耐久性とをバランスさせることができる。
図7に示すように、対向基板20のうち導電性基板15側の面と第1一体化封止部31の仕切部31bとの接着部の幅Pは、対向基板20のうち導電性基板15側の面と第1一体化封止部31の環状部31aとの接着部の幅Qよりも狭くなっていることが好ましい。
この場合、光電変換素子100における開口率をより十分に向上させることができる。但し、接着部の幅Pは、接着部の幅Q以上であってもよい。
また光電変換素子100では、隣り合う第1封止部31A同士、及び、隣り合う第2封止部32A同士が、隣り合う対向基板20の間で一体化されていることが好ましい。
ここで、隣り合う第1封止部31A同士が一体化されなければ、隣り合うセル50の間においては、大気に対して露出される封止部が2箇所となる。これに対し、光電変換素子100においては、隣り合う第1封止部31A同士が一体化されているため、隣り合うセル50の間において、大気に対して露出される封止部が1箇所となる。すなわち、第1一体化封止部31は、環状部31aと、仕切部31bとで構成されているため、隣り合うセル50の間において、大気に対して露出される封止部が仕切部31bの1箇所のみとなる。また第1封止部31A同士が一体化されることで、大気から電解質40までの水分等の侵入距離が延びる。このため、隣り合うセル50間において、セル50の外部から侵入する水分や空気の量を十分に低減することができる。すなわち、光電変換素子100の封止能を十分に向上させることができる。また光電変換素子100によれば、隣り合う第1封止部31A同士が一体化されている。このため、対向基板20のうち導電性基板15側の面と第1一体化封止部31の仕切部31bとの接着部の幅Pが、対向基板20のうち導電性基板15側の面と第1一体化封止部31の環状部31aとの接着部の幅Qよりも狭くても、その仕切部31bにおいて十分な封止幅を確保することが可能となる。すなわち、光電変換素子100によれば、開口率を向上させながら、第1封止部31Aと導電性基板15との接着強度、及び、第1封止部31Aと対向基板20との接着強度を十分に大きくすることが可能となる。その結果、開口率を向上させることができると共に、光電変換素子100が高温下で使用される場合に電解質40が膨張して第1封止部31Aの内側から外側に向かう過大な応力が加えられても、導電性基板15及び対向基板20からの第1封止部31Aの剥離を十分に抑制することができ、優れた耐久性を有することが可能となる。
さらに、第1一体化封止部31の仕切部31bの幅Rは、第1一体化封止部31の環状部31aの幅Tの100%以上200%未満となっていることが好ましい。
この場合、第1一体化封止部31の仕切部31bにおいて、仕切部31bの幅が環状部31aの幅Tの100%以上であるため、第1一体化封止部31の仕切部31bにおいて、仕切部31bの幅Rが環状部31aの幅Tの100%未満である場合と比べて、大気から電解質40までの水分等の侵入距離がより延びることになる。このため、隣り合うセル50間にある仕切部31bを通して外部から水分が侵入することをより十分に抑制することができる。一方、仕切部31bの幅Rが環状部31aの幅Tの200%を超える場合と比べて、開口率をより向上させることができる。但し、仕切部31bの幅Rは、第1一体化封止部31の環状部31aの幅Tの100%未満であってもよく、200%以上であってもよい。
また、第2一体化封止部32は、対向基板20のうち作用極10と反対側に設けられる本体部32dと、隣り合う対向基板20同士の間に設けられる接着部32eとを有している。第2一体化封止部32は、接着部32eによって第1一体化封止部31に接着されていることが好ましい。
このため、対向基板20に対して作用極10から離れる方向の応力が作用しても、その剥離が第2封止部32Aによって十分に抑制される。また、第2一体化封止部32の仕切部32bは、隣り合う対向基板20同士間の隙間Sを通って第1封止部31Aに接着されているため、隣り合うセル50の対向基板20同士が接触することが確実に防止される。
ここで、対向基板20の縁部20aが第1封止部31Aと第2封止部32Aとによって挟持されていることがより好ましい。
なお、但し、第2封止部32Aは第1封止部31Aに接着されていなくてもよい。また隣り合うセル50の環状の第1封止部31A同士は必ずしも一体化されていなくてもよい。すなわち、環状の第1封止部31A同士は互いに離間されていてもよい。
(電解質)
電解質40は、例えばI/I などの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、グルタロニトリル、メタクリロニトリル、イソブチロニトリル、フェニルアセトニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、オキサロニトリル、ペンタニトリル、アジポニトリルなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI/I のほか、臭素/臭化物イオン、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。また電解質40は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、エチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ブチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、メチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
また、電解質40は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
また電解質40には添加剤を加えることができる。添加剤としては、LiI、I、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート、1−メチルベンゾイミダゾール、1−ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
さらに電解質40としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
なお、電解質40は、I/I からなる酸化還元対を含み、I の濃度が0.006mol/リットル以下であることが好ましい。この場合、電子を運ぶI の濃度が低いため、漏れ電流をより減少させることができる。このため、開放電圧をより増加させることができるため、光電変換特性をより向上させることができる。特に、I の濃度は0.005mol/リットル以下であることが好ましく、0〜6×10−6mol/リットルであることがより好ましく、0〜6×10−8mol/リットルであることがさらに好ましい。この場合、光電変換素子100を導電性基板15の光入射側から見た場合に、電解質40の色を目立たなくすることができる。
(配線材)
配線材60P,60Qとしては、例えば金属膜が用いられる。金属膜を構成する金属材料としては、例えば銀又は銅などを用いることができる。
(バックシート)
バックシート80は、上述したように、耐候性層と、金属層とを含む積層体80Aと、積層体80Aのセル50側の面に設けられ、積層体80Aと絶縁材14とを接着する接着部80Bとを含む。
耐候性層は、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートで構成されていればよい。
耐候性層の厚さは、例えば50〜300μmであればよい。
金属層は、例えばアルミニウムを含む金属材料で構成されていればよい。金属材料は通常、アルミニウム単体で構成されるが、アルミニウムと他の金属との合金であってもよい。他の金属としては、例えば銅、マンガン、亜鉛、マグネシウム、鉛、及び、ビスマスが挙げられる。具体的には、98%以上の純アルミニウムにその他の金属が微量添加された1000系アルミニウムが望ましい。これは、この1000系アルミニウムが、他のアルミニウム合金と比較して、安価で、加工性に優れているためである。
金属層の厚さは特に制限されるものではないが、例えば12〜30μmであればよい。
積層体80Aは、さらに樹脂層を含んでいてもよい。樹脂層を構成する材料としては、例えばブチルゴム、ニトリルゴム、熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。樹脂層は、金属層のうち耐候性層と反対側の表面全体に形成されていてもよいし、周縁部にのみ形成されていてもよい。
接着部80Bを構成する材料としては、例えばブチルゴム、ニトリルゴム、熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。接着部80Bの厚さは特に制限されるものではないが、例えば300〜1000μmであればよい。
なお、バックシート80と透明導電層12とは、必ずしも絶縁材14を介して接着されている必要はない。また光電変換素子100は、必ずしもバックシート80を有していなくてもよい。
(乾燥剤)
乾燥剤95は、シート状であっても、粒状であってもよい。乾燥剤95は、例えば水分を吸収するものであればよく、乾燥剤95としては、例えばシリカゲル、アルミナ、ゼオライトなどが挙げられる。
次に、光電変換素子100の製造方法について図3、図8および図9を参照しながら説明する。図8は、溝を覆う絶縁材およびバックシートを固定するための連結部を形成した作用極を示す平面図、図9は、図4の第1一体化封止部を形成するための第1一体化封止部形成体を示す平面図である。
まず1つの透明基板11の上に透明導電層を形成してなる積層体を用意する。
透明導電層の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法又はCVD法などが用いられる。
次に、図3に示すように、透明導電層に対して溝90を形成し、互いに溝90を介在させて絶縁状態で配置される透明導電層12A〜12Fを形成する。具体的には、セル50A〜50Dに対応する4つの透明導電層12A〜12Dは、四角形状の本体部12a及び突出部12cを有するように形成する。このとき、セル50A〜50Cに対応する透明導電層12A〜12Cについては、突出部12cが張出し部12dのみならず、張出し部12dから延びて、隣りのセル50の本体部12aに対向する対向部12eをも有するように形成する。また透明導電層12Dについては、四角形状の本体部12a及び張出し部12dのみならず、第1電流取出し部12fと、第1電流取出し部12fと本体部12aとを接続する接続部12gとを有するように形成する。このとき、第1電流取出し部12fは、透明導電層12Aに対し、透明導電層12Bと反対側に配置されるように形成する。さらに、透明導電層12Eは、第2電流取出し部12hが形成されるように形成する。このとき、第2電流取出し部12hは、透明導電層12Aに対し、透明導電層12Bと反対側に配置され、且つ、第1電流取出し部12fの隣りに溝90を介して配置されるように形成する。
溝90は、例えばYAGレーザ又はCOレーザ等を光源として用いたレーザスクライブ法によって形成することができる。
こうして、透明基板11の上に透明導電層12を形成してなる導電性基板15が得られる。
次に、透明導電層12A〜12Cのうちの突出部12c上に、配線材接続部16Aと配線材非接続部16Bとで構成される接続端子16の前駆体を形成する。具体的には、接続端子16の前駆体は、配線材接続部16Aが対向部12e上に設けられるように形成する。また透明導電層12Eにも接続端子16の前駆体を形成する。また配線材非接続部16Bの前駆体は、配線材接続部16Aの幅よりも狭くなるように形成する。接続端子16の前駆体は、例えば銀ペーストを塗布し乾燥させることで形成することができる。
さらに、透明導電層12Dの接続部12gの上には配線材17の前駆体を形成する。配線材17の前駆体は、例えば銀ペーストを塗布し乾燥させることで形成することができる。
また、透明導電層12Aの第1電流取出し部12f,第2電流取出し部12h上にはそれぞれ外部に電流を取り出すための外部接続用端子18a,18bの前駆体を形成する。外部接続用端子の前駆体は、例えば銀ペーストを塗布し乾燥させることで形成することができる。
さらに、本体部12aの縁部に沿って形成される第1の溝90Aに入り込み且つ本体部12aの縁部をも覆うように、絶縁材33の前駆体を形成する。絶縁材33は、例えば着色されたガラスフリットを含むペーストを塗布し乾燥させることによって形成することができる。
またバックシート80を固定するために、絶縁材33と同様にして、絶縁材33を囲むように且つ透明導電層12D、透明導電層12E、透明導電層12Fを通るように環状の絶縁材14の前駆体を形成する。
さらに透明導電層12A〜12Dの各々の本体部12aの上に、酸化物半導体層13の前駆体を形成する。酸化物半導体層13の前駆体は、酸化物半導体粒子を含む多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷した後、乾燥させることで形成することができる。
酸化物半導体層形成用ペーストは、酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。
酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、又はバーコート法などを用いることができる。
そして、接続端子16の前駆体、絶縁材33の前駆体、絶縁材14の前駆体、酸化物半導体層13の前駆体を一括して焼成し、接続端子16、絶縁材33、絶縁材14、および酸化物半導体層13を形成する。
このとき、焼成温度は酸化物半導体粒子やガラスフリットの種類により異なるが、通常は350〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子やガラスフリットの種類により異なるが、通常は1〜5時間である。
こうして、図8に示すように、絶縁材33とバックシート80を固定するための絶縁材14が形成された作用極10が得られる。
次に、作用極10の酸化物半導体層13に色素を担持させる。このためには、作用極10を、色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その色素を酸化物半導体層13に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、色素を酸化物半導体層13に吸着させればよい。但し、色素を含有する溶液を酸化物半導体層13に塗布した後、乾燥させることによって色素を酸化物半導体層13に吸着させても、色素を酸化物半導体層13に担持させることが可能である。
次に、酸化物半導体層13の上に電解質40を配置する。
次に、図9に示すように、第1一体化封止部31を形成するための第1一体化封止部形成体131を準備する。第1一体化封止部形成体131は、第1一体化封止部31を構成する材料からなる1枚の封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムにセル50の数に応じた四角形状の開口131aを形成することによって得ることができる。第1一体化封止部形成体131は、複数の第1封止部形成体131Aを一体化させてなる構造を有する。
そして、この第1一体化封止部形成体131を、作用極10の上に接着させる。このとき、第1一体化封止部形成体131は、絶縁材33と重なるように作用極10に接着する。第1一体化封止部形成体131の作用極10への接着は、第1一体化封止部形成体131を加熱溶融させることによって行うことができる。また第1一体化封止部形成体131は、透明導電層12の本体部12aが第1一体化封止部形成体131の内側に配置されるように作用極10に接着する。
一方、セル50の数と同数の対向基板20を用意する。
対向基板20は、金属基板21上に、対向基板20の表面における還元反応を促進する導電性の触媒層22を形成することにより得ることができる。
次に、上述した第1一体化封止部形成体131をもう1つ用意する。そして、複数の対向基板20の各々を、第1一体化封止部形成体131の各開口131aを塞ぐように貼り合わせる。
次に、対向基板20に接着した第1一体化封止部形成体131と、作用極10に接着した第1一体化封止部形成体131とを重ね合わせ、第1一体化封止部形成体131を加圧しながら加熱溶融させる。こうして作用極10と対向基板20との間に第1一体化封止部31が形成される。このとき、対向基板20のうち導電性基板15側の面と第1一体化封止部31の仕切部31bとの接着部の幅Pが、対向基板20のうち導電性基板15側の面と第1一体化封止部31の環状部31aとの接着部の幅Qよりも狭くなるように第1一体化封止部31を形成する。また第1一体化封止部31の仕切部31bの幅Rは、第1一体化封止部31の環状部31aの幅Tの100%以上200%未満となるように第1一体化封止部31を形成する。第1一体化封止部31の形成は、大気圧下で行っても減圧下で行ってもよいが、減圧下で行うことが好ましい。
次に、第2一体化封止部32を準備する(図5参照)。第2一体化封止部32は、複数の第1封止部32Aを一体化させてなる構造を有する。第2一体化封止部32は、1枚の封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムにセル50の数に応じた四角形状の開口32cを形成することによって得ることができる。第2一体化封止部32は、第1一体化封止部31と共に対向基板20の縁部20aを挟むように対向基板20に貼り合わせる。第2一体化封止部32の対向基板20への接着は、第2一体化封止部32を加熱溶融させることによって行うことができる。
封止用樹脂フィルムとしては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を含む変性ポリオレフィン樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。第2一体化封止部32の形成のための封止用樹脂フィルムの構成材料は、第1一体化封止部31の形成のための封止用樹脂フィルムの構成材料よりも高い融点を有することが好ましい。この場合、第2封止部32Aは、第1封止部31Aよりも硬くなるため、隣り合うセル50の対向基板20同士の接触を効果的に防止することができる。また第1封止部31Aは第2封止部32Aよりも軟らかくなるため、封止部30Aに加わる応力を効果的に緩和することができる。
次に、第2封止部32の仕切部32bにバイパスダイオード70A,70B,70Cを固定する。またセル50Dの封止部30A上にもバイパスダイオード70Dを固定する。
そして、バイパスダイオード70A〜70Dを通るように配線材60Qをセル50B〜50Cの対向基板20の金属基板21に固定する。さらにバイパスダイオード70A,70B間、バイパスダイオード70B,70C間、バイパスダイオード70C,70D間の各配線材60Qと、透明導電層12A上の配線材接続部16A、透明導電層12B上の配線材接続部16A、透明導電層12C上の配線材接続部16Aとをそれぞれ接続するように配線材60Pを形成する。また、透明導電層12E上の配線材接続部16Aとバイパスダイオード70Aとを接続するようにセル50Aの対向基板20の金属基板21に配線材60Pを固定する。さらに、透明導電層12Dとバイパスダイオード70Dとを配線材60Pによって接続する。
このとき、配線材60Pは、配線材60Pを構成する金属材料を含むペーストを用意し、このペーストを、対向基板20から、隣りのセル50の接続端子16の配線材接続部16Aにわたって塗布し、硬化させる。配線材60Qは、配線材60Qを構成する金属材料を含むペーストを用意し、このペーストを、各対向基板20上に隣り合うバイパスダイオードを結ぶように塗布し、硬化させる。このとき、上記ペーストとしては、色素への悪影響を避ける観点から、90℃以下の温度で硬化させることが可能な低温硬化型のペーストを用いることが好ましい。
最後に、バックシート80を用意し、このバックシート80の周縁部80aを絶縁材14に接着させる。このとき、バックシート80の接着部80Bとセル50の封止部30Aとが離間するようにバックシート80を配置する。
以上のようにして光電変換素子100が得られる。
なお、上述した説明では、接続端子16、配線材17、絶縁材33、絶縁材14、および酸化物半導体層13を形成するために、接続端子16の前駆体、配線材17の前駆体、絶縁材33の前駆体、絶縁材14の前駆体、酸化物半導体層13の前駆体を一括して焼成する方法を用いているが、接続端子16、配線材17、絶縁材33、絶縁材14、および酸化物半導体層13はそれぞれ別々に前駆体を焼成して形成してもよい。
<第2実施形態>
次に、本発明の光電変換素子の第2実施形態について図10〜14を参照しながら詳細に説明する。図10は、本発明の光電変換素子の第2実施形態を示す切断面端面図、図11は、本発明の光電変換素子の第2実施形態の一部を示す平面図、図12は、図11のXII−XII線に沿った切断面端面図、図13は、絶縁材、及び、バックシートを固定するための光透過防止層を形成した作用極を示す平面図、図14は、図10の光電変換素子を導電性基板側から見た平面図である。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図10〜図14に示すように、本実施形態の光電変換素子200は、配線材17の一端が、透明導電層12Dに直接接続される端子部35aに接続され、配線材17の他端が、透明導電層12Dに直接接続される端子部35bに接続される点で第1実施形態の光電変換素子100と相違する。
また本実施形態の光電変換素子200は、導電性基板15上であってセル50A〜50Dの第1封止部31Aと導電性基板15の縁部との間の領域のうち、絶縁材14及び絶縁材33が設けられていない領域に、少なくとも接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bと隣接するように設けられ、光の透過を防止する絶縁性の光透過防止層34をさらに備える点でも第1実施形態の光電変換素子100と相違する。
ここで、光透過防止層34は着色されている。また接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bは、導電性基板15上であってセル50A〜50Dの第1封止部31Aと導電性基板15の縁部との間の領域のうち、絶縁材14及び絶縁材33が設けられていない領域に、透明導電層15と接触するように設けられている。接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bは着色されており、本発明における端子部及び導電部を構成している。また本実施形態では、配線材17及び配線材60Pも導電部を構成している。さらに本実施形態では、端子部35aが第1接続部を構成し、端子部35bが第2接続部を構成している。
ここで、光透過防止層34は、導電性基板15のうち封止部30A側の表面において、セル50A〜50Dの第1封止部31Aと導電性基板15の縁部との間の領域のうち、光電変換素子200を導電性基板15の厚さ方向に見た場合に少なくとも絶縁材14、絶縁材33及び導電部以外の領域の全てを覆うように設けられている。ここで、絶縁材14が着色され、光透過防止層34と同一材料で構成される場合、絶縁材14は光透過防止層34を兼ねることになる。この場合、光透過防止層34は絶縁材33を包囲するように設けられることになる。ここで、光透過防止層34は絶縁材33と一体になっている。従って、光透過防止層34は、封止部30Aの外側に設けられる透明導電層12同士間の第2の溝90Bをも覆っている。
また本実施形態では、光透過防止層34は、導電性基板15の厚さ方向において、導電部としての配線材60Pと重なるように配線材60Pと導電性基板15との間に設けられている。また光透過防止層34は、導電性基板15の厚さ方向において、導電部としての配線材17とも重なるように配線材17と導電性基板15との間に設けられている。ここで、光電変換素子200では、端子部35a,35bの間において、配線材17の少なくとも一部が光透過防止層34上に直接設けられていていてもよく、光透過防止層34上に直接設けられていなくてもよい。
なお、「全てを覆う」とは、絶縁材14が光透過防止層34を兼ねる場合、光透過防止層34が、導電性基板15のうち封止部30A側の表面を導電性基板15の厚さ方向に見た場合に、セル50A〜50Dの第1封止部31Aと導電性基板15の縁部との間の領域の90%以上を覆っていることを言うものとする。ここで、仮に導電性基板15に開口が形成される場合には、開口の縁部も導電性基板15の縁部を構成するため、その開口の面積は、セル50A〜50Dの第1封止部31Aと導電性基板15の縁部との間の領域の面積から除外される。
上記光電変換素子200では、本発明における端子部を構成する接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bが着色されるとともに、光透過防止層34も着色されている。そして、光透過防止層34が接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bに隣接している。このため、光電変換素子200を導電性基板15の厚さ方向に見た場合、接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bが際立って見えることを十分に抑制することが可能となる。このため、良好な外観を実現することができる。また、光電変換素子200によれば、透明導電層12を着色させないで済むため、光電変換素子200の光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。
また光電変換素子200では、導電性基板15と配線材60Pとの間において、光電変換素子200を導電性基板15の厚さ方向に見た場合に配線材60Pと光透過防止層34とが重なるように光透過防止層34が設けられている。また、導電性基板15と配線材17との間には、配線材17と光透過防止層34とが重なるように光透過防止層34が設けられている。このため、光透過防止層34の裏側にある配線材60P及び配線材17を隠すことが可能となる。従って、より良好な外観を実現することができる。
また光電変換素子200では、光透過防止層34が絶縁性であるため、透明導電層12A〜12C及び12Eの第1接続部である接続端子16同士が短絡することを防止することができる。
また光電変換素子200では、絶縁材33が、光透過防止層34と一体となって、光の透過を防止する層として機能する。このため、光電変換素子200を図14に示すように、導電性基板15からその厚さ方向に見た場合に、絶縁材33の裏側にある第1封止部31Aや対向基板20の色や形状を隠すことも可能となる。このため、良好な外観を実現することができる。また、封止部30Aに着色剤を導入することによって封止部30Aを着色させ、対向基板20の色を隠すことも可能であるが、この場合に比べて、光電変換素子200の耐久性を向上させることができる。また、光電変換素子200では、絶縁材33及び光透過防止層34が一体化されている。このため、バックシート80内に水分が侵入したとしても、絶縁材33と光透過防止層34との間に界面が生じないので、一体となって水分の侵入を防止することができ。このため、より一層優れた耐久性を有することが可能となる。
また光電変換素子200では、絶縁材14が光透過防止層34を兼ねる場合、導電性基板15のうち封止部30A側の表面において、セル50A〜50Dの第1封止部31Aと導電性基板15の外周縁との間の領域のうち、光電変換素子200を導電性基板15の厚さ方向に見た場合に少なくとも絶縁材14、絶縁材33及び導電部以外の領域の全てを覆うように、光の透過を防止する絶縁性の光透過防止層34が環状に設けられている。このため、光電変換素子200を透明基板11側から導電性基板15の厚さ方向に見た場合に、封止部30Aと、導電性基板15の縁部との間の領域のうち、絶縁材14、絶縁材33及び導電部以外の領域が光透過防止層34によって隠されるので、より良好な外観を実現できる。
また光電変換素子200では、バックシート80の周縁部80aの全周にわたって、絶縁性の光透過防止層34が設けられているため、バックシート80の外側からバックシート80の内側に水分が侵入することを、十分に抑制することができる。特に、光電変換素子200では、バックシート80の周縁部80aと交差する第2の溝90Bが、光透過防止層34で覆われている。このため、次の効果が得られる。すなわち、光電変換素子200では、第2の溝90Bに光透過防止層34が入り込み、光透過防止層34が、透明導電層12のうち本体部12aを除く部分の縁部をも覆っているため、第2の溝90Bを通じて水分がバックシート80の周縁部80aの内側に侵入した場合でも、バックシート80の外側からバックシート80と導電性基板15との間の空間への水分の侵入が十分に抑制される。このため、バックシート80と導電性基板15との間の空間に侵入した水分が封止部30Aを通じて封止部30Aの内側に入り込むことが十分に抑制される。このため、光電変換素子200の耐久性の低下を十分に抑制することが可能となる。
次に、光透過防止層34及び導電部について説明する。
(光透過防止層)
光透過防止層34を構成する材料は、光の透過を防止することが可能で且つ着色されている絶縁材料で構成されていればよい。このような絶縁材料としては、着色された樹脂や着色された無機絶縁材料が挙げられるが、中でも、着色された無機絶縁材料が好ましい。この場合、次の効果が得られる。すなわち、光透過防止層34は第2の溝90Bをも覆っている。ここで、光透過防止層34が樹脂ではなく無機絶縁材料で構成されると、第2の溝90Bからの水分の侵入をより十分に抑制できる。
着色された無機絶縁材料としては、例えば着色されたガラスフリット等の無機絶縁材料が用いられる。
ここで、着色されている端子部と、光透過防止層34との間におけるL色空間のL*の差は特に制限されるものではないが、3以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。この場合、光透過防止層34の色が接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bの色により近づくことになるため、接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bが際立って見えることをより十分に抑制することが可能となる。
また酸化物半導体層13と光透過防止層34との間におけるL色空間のL*の差も特に制限されるものではないが、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
光透過防止層34の色は着色されている限り特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の色を用いることが可能である。光透過防止層34の厚さは通常、10〜30μmであり、好ましくは15〜25μmである。
(導電部)
端子部及び導電部としての接続端子16は、金属材料、カーボンなどの導電材料を含む。金属材料としては、例えば銀、銅およびインジウムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いてもよい。中でも、導電材料はカーボンで構成されることが好ましい。カーボンは優れた導電性を有しながらも黒色であるため、銀などの金属材料を含む場合に比べて、接続端子16が際立って見えることがより十分に抑制される。
接続端子16は、上記導電材料のほか、樹脂も含む。樹脂としては、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられるが、中でも、高温になっても熱膨張しにくく、抵抗の経時的変化をより小さくできることから、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂が好ましい。
酸化物半導体層13と、着色されている端子部である接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bとの間におけるL色空間のL*の差は特に制限されるものではないが、酸化物半導体層13と光透過防止層34との間におけるL色空間のL*の差が5以下である場合には、5以下であることが好ましい。この場合、接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35b、並びに、光透過防止層34の各々の色を酸化物半導体層13の色により近づけることが可能となる。別言すると、接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35b、光透過防止層34並びに酸化物半導体層13の色を単一色に近づけることが可能となる。このため、接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35b、並びに、光透過防止層34が酸化物半導体層13に対して際立って見えることがより十分に抑制される。ここで、酸化物半導体層13と、接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bとの間におけるL色空間のL*の差は3以下であることがより好ましい。
端子部及び導電部としての外部接続端子18a,18bは、着色されている限り、接続端子16と同一の材料で構成されても異なる材料で構成されてもよいが、同一の材料で構成されることが好ましい。
端子部及び導電部としての端子部35a,35bも、着色されている限り、接続端子16と同一の材料で構成されても異なる材料で構成されてもよいが、同一の材料で構成されることが好ましい。
配線材17及び配線材60Pは、光透過防止層34のうち導電性基板15と反対側に、光透過防止層34と重なるように設けられている場合には、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。配線材17及び配線材60Pが着色されている場合には、配線材17及び配線材60Pは、接続端子16と同一の材料で構成されても異なる材料で構成されてもよいが、同一の材料で構成されることが好ましい。ここで、配線材17及び配線材60Pはいずれも、色付きの着色導電層と、着色されていない非着色導電層との積層体で構成されてもよい。
また配線材17は、導電性基板15の透明導電層12上に直接設けられていてもよい。すなわち、配線材17は、光透過防止層34のうち導電性基板15と反対側に、光透過防止層34と重ならないように設けられていてもよい。この場合、配線材17は、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよいが、着色されていることが好ましい。
次に、本実施形態の光電変換素子200の製造方法について説明する。
本実施形態の光電変換素子200の製造方法は、作用極10の製造方法の点でのみ第1実施形態の光電変換素子100の製造方法と相違する。そこで、以下、作用極10の製造方法について説明する。
まず第1実施形態と同様にして導電性基板15を得る。
次に、導電性基板15の透明導電層12A〜12Cのうちの突出部12c上に、配線材接続部16Aと配線材非接続部16Bとで構成される接続端子16の前駆体を形成する。具体的には、接続端子16の前駆体は、配線材接続部16Aが対向部12e上に設けられるように形成する。また透明導電層12Eにも接続端子16の前駆体を形成する。また配線材非接続部16Bの前駆体は、配線材接続部16Aの幅よりも狭くなるように形成する。接続端子16の前駆体は、例えば導電材を含むペーストを塗布し乾燥させることで形成することができる。ここで、導電材がカーボンで構成される場合には、カーボンと樹脂とを含む着色されたマスターバッチをペーストに含めることが好ましい。樹脂としては、上述したように、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂が好ましい。
また、透明導電層12Dの第1電流取出し部12f、透明導電層12Fの第2電流取出し部12h上にはそれぞれ、第1実施形態と同様にして外部に電流を取り出すための外部接続用端子18a,18bの前駆体を形成する。
また、透明導電層12Dの本体部12a及び第1電流取出し部12fの上には端子部35a,35bの前駆体を形成する。端子部35a,35bの前駆体としては、接続端子16の前駆体と同様のものを用いることができる。端子部35a,35bの前駆体は、例えば銀ペーストを塗布し乾燥させることで形成することができる。
さらに、本体部12aの縁部に沿って形成される第1の溝90Aに入り込み且つ本体部12aの縁部をも覆うように、且つ、導電性基板15の透明導電層12側の表面のうち、接続端子16、外部接続端子18a,18b、及び端子部35a,35bの前駆体を除く領域を覆うように絶縁材33及び光透過防止層34の前駆体を形成する。絶縁材33及び光透過防止層34の前駆体は、例えば着色されたガラスフリットを含むペーストを塗布し乾燥させることによって形成することができる。
さらに光透過防止層34の上に、端子部35a,35bを接続するように、配線材17の前駆体を形成する。配線材17の前駆体としては、接続端子16の前駆体と同様のものを用いることができる。
さらに透明導電層12A〜12Dの各々の本体部12aの上に、第1実施形態と同様にして酸化物半導体層13の前駆体を形成する。
そして、接続端子16の前駆体、外部接続端子18a,18bの前駆体、端子部35a,35bの前駆体、配線材17の前駆体、絶縁材33の前駆体、光透過防止層34の前駆体及び酸化物半導体層13の前駆体を一括して焼成し、接続端子16、外部接続端子18a,18b、端子部35a,35b、配線材17、絶縁材33及び光透過防止層34および酸化物半導体層13を形成する。
このとき、焼成温度は酸化物半導体粒子やガラスフリットの種類により異なるが、通常は350〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子やガラスフリットの種類により異なるが、通常は1〜5時間である。
こうして、図13に示すように、絶縁材33とバックシート80を固定するための光透過防止層34とが形成された作用極10が得られる。
作用極10の酸化物半導体層13に色素を担持させるには、第1実施形態と同様にして行えばよい。このとき、接続端子16の前駆体、外部接続用端子の前駆体、及び、端子部35a,35bの前駆体が、カーボンと樹脂とを含む着色されたマスターバッチを含むペーストで構成される場合には、作用極10を、色素溶液中に浸漬する前に、接続端子16の前駆体、外部接続用端子の前駆体、及び、端子部35a,35bの前駆体を保護フィルムで予め覆うことが好ましい。この場合、作用極10が、色素溶液中に浸漬されても、着色されたマスターバッチやカーボンが色素溶液中に溶け出すことが十分に防止され、色素が劣化することを十分に抑制することができる。このとき、保護フィルムとしては、例えばリニアポリエチレンフィルムなどを用いることができる。
なお、本実施形態では、導電性基板15のうち封止部30A側の表面において、セル50A〜50Dの第1封止部31Aと導電性基板15の外周縁との間の領域のうち、光電変換素子を導電性基板15の厚さ方向に見た場合に少なくとも絶縁材14、絶縁材33及び導電部以外の領域の全てを覆うように光透過防止層34が環状に設けられているが、光透過防止層34は、導電性基板15のうち封止部30A側の表面において、セル50A〜50Dの第1封止部31Aと導電性基板15の外周縁との間の領域のうち、光電変換素子を導電性基板15の厚さ方向に見た場合に少なくとも絶縁材14、絶縁材33及び導電部以外の領域の全てを覆っていることは必ずしも必要ではない。要するに、光透過防止層34は、少なくとも接続端子16、外部接続端子18a,18b、端子部35a,35bで構成される端子部に隣接していさえすればよい。
また本実施形態では、端子部である接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bの全てが着色されているが、接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bのうちいずれか一つのみが着色されていてもよい。例えば光電変換素子が筐体内に収容される場合、接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bのうち光電変換素子を外から見た場合に筐体によって隠される部分については、着色されていなくてもよい。但し、接続端子16、外部接続端子18a,18b及び端子部35a,35bのうち筐体によって隠されていない部分については着色されていることが好ましい。例えば端子部35aや端子部35bは筐体によって隠される場合があるので、その場合には、端子部35a,35bは着色されていなくてもよい。
また端子部35a,35bは筐体によって隠されなくても、導電性が最も必要な部分であるため、接続端子16及び外部接続端子18a,18bが着色されている場合には、必ずしも着色されていなくてもよい。
また本実施形態では、配線材60Pの一端は、接続端子16を介して透明導電層12に接続されているが、配線材60Pの一端は、透明導電層12に直接接続されていてもよい。この場合は、透明導電層12が第1接続部となる。
また本実施形態では、配線材17の一端は、端子部35aを介して透明導電層12に接続されているが、配線材17の一端は透明導電層12に直接接続されていてもよい。この場合は、端子部35aは不要となり、透明導電層12が第1接続部となる。また本実施形態では、配線材17の他端は、第2接続部としての端子部35bを介して透明導電層12に接続されているが、配線材17の他端は透明導電層12に直接接続されていてもよい。この場合は、端子部35bは不要となり、透明導電層12が第2接続部となる。
また本実施形態では、光電変換素子100が配線材17を有しているが、本発明の光電変換素子は、必ずしも配線材17を有していなくてもよい。この場合は端子部35a,35bも不要となる。この場合、導電部は、接続端子16及び外部接続端子18a,18bのみで構成されることになる。
さらに本実施形態では、光透過防止層34と絶縁材33とが同一の材料で構成され、一体となっているが、絶縁材33と光透過防止層34とは別々の材料で構成されていてもよい。例えば光透過防止層34は着色させず、絶縁材33は着色させるようにしてもよい。この場合、絶縁材33は、例えば酸化物半導体層13と同系統の色とされる。また絶縁材33は着色されていさえすればよく、必ずしも光透過防止機能を有していなくてもよい。
さらに本実施形態では、配線材60Pと対向基板20の金属基板21とが接続されているが、配線材60Pが、対向基板20の金属基板21の一部で構成されてもよい。
また本実施形態では、図15に示すように、導電性基板15において、光電変換素子を透明基板11側から導電性基板15の厚さ方向に見た場合に、導電性基板15に光透過防止層34と異なる色を有する異色部Mが設けられていることが好ましい。この場合、異色部Mは光透過防止層34と異なる色を示すため、光電変換素子を導電性基板15の厚さ方向から見た場合にその異色部Mによって所望の文字やデザインを表示させることが可能となる。ここで、導電性基板15に異色部Mが設けられる場合、光透過防止層34は、導電性基板15のうち封止部30A側の表面において、セル50A〜50Dの第1封止部31Aと導電性基板15の縁部との間の領域のうち、光電変換素子200を導電性基板15の厚さ方向に見た場合に少なくとも絶縁材14、絶縁材33、導電部及び異色部M領域以外の領域の全てを覆うように設けられることが好ましい。
図15に示す異色部Mは、導電性基板15の透明導電層12の上に直接設けられており、その上に光透過防止層34が重なるように設けられている。異色部Mは、透明導電層12の上に直接印刷することなどによって形成することが可能である。ここで、「光透過防止層34と異なる色」とは、異色部MのL色空間のL*と光透過防止層34のL色空間のL*との差の値が5以上であることを言う。
なお、異色部Mの上には、光透過防止層34が設けられていなくてもよい。さらに異色部Mは、光透過防止層34によって空間を包囲することによって形成することも可能である。
さらに本実施形態では、光透過防止層34は絶縁材料で構成されているが、光透過防止層34は、溝90をまたぐように設けられないならば、導電性材料で構成されてもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1実施形態では、セル50A〜50Dが図2のX方向に沿って一列に配列されているが、図16に示す光電変換素子300のように、セル50A〜50Dの一部であるセル50C、50Dを途中で折り返し、セル50Aとセル50Dとをそれらが互いに隣り合うように配置してもよい。なお、図16において、バックシート80は省略してある。この場合、透明導電層12Dは、光電変換素子100と異なり、本体部12aと第1電流取出し部12fとの間に接続部12gを設ける必要がない。このため、配線材17も設ける必要がない。第2実施形態の光電変換素子200においても、光電変換素子300のように、セル50A〜50Dの一部であるセル50C、50Dを途中で折り返し、セル50Aとセル50Dとをそれらが互いに隣り合うように配置してもよい。
また上記第1実施形態では、バックシート80と導電性基板15との間の絶縁材14と交差する第2の溝90Bが、絶縁材33で覆われていないが、図17に示す光電変換素子400のように、第2の溝90Bは、絶縁材33で覆われていることが好ましい。なお、図17において、バックシート80は省略してある。図17に示すように、第2の溝90Bが絶縁材14と交差していると、その第2の溝90Bを通じて水分がバックシート80と導電性基板15との間の空間に侵入することが可能となる。この場合、第2の溝90Bに絶縁材33が入り込み、絶縁材33が、透明導電層12のうち本体部12aを除く部分の縁部をも覆っていることで、バックシート80の外側から内側への水分の侵入が十分に抑制される。このため、バックシート80と導電性基板15との間の空間に侵入した水分が封止部30Aを通じて封止部30Aの内側に入り込むことが十分に抑制される。このため、光電変換素子400の耐久性の低下を十分に抑制することが可能となる。
さらに上記第1実施形態では、溝90の一部は絶縁材33によって覆われていないが、図17に示す光電変換素子400のように、絶縁材33が溝90のすべてに入り込むとともに、すべての溝90の両側の透明導電層12の縁部を覆っていることが好ましい。この場合、絶縁材33がすべての溝90に入り込むとともにすべての溝90の両側の透明導電層12の縁部を覆っているため、そもそも溝90に水分が侵入できず、溝90に形成されたクラックにも水分が侵入できなくなるため、溝90を介して水分が侵入することをより一層抑制することができる。また、絶縁材33がすべての溝90の両側の透明導電層12の縁部も覆っているため、溝90の両側の透明導電層12の間での絶縁性も十分に確保することができる。また、光電変換素子100は、隣接するセル50の透明導電層12の間の第1の溝90Aのすべてにも絶縁材33が入り込んでいるため、透明導電層12同士の間に流れる電流をより抑制することができ絶縁性を十分に確保することができる。このため、光電変換特性をより向上させることができる。
また上記第1実施形態では、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hが、セル50A側の周囲に配置されているが、図18に示す光電変換素子500に示すように、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hは、セル50D側の周囲に配置されていてもよい。この場合、第1電流取出し部12fは、透明導電層12Dの本体部12aに対しセル50Cと反対側に封止部30Aの外側まで突出するように設けられる。一方、第2電流取出し部12hは、透明導電層12Dの本体部12aに対しセル50Cと反対側に設けられる。また透明導電層12A〜12Dに沿って第2接続部としての接続部12iが延びており、この接続部12iが、第2電流取出し部12fとセル50Aの対向基板20の金属基板21とを接続している。具体的には、接続部12iの上に、接続部12iに沿って透明導電層12よりも低い抵抗を有し且つ集電機能を有する配線材417が設けられ、この配線材417とバイパスダイオード70Aから延びる配線材60Pとが接続されている。この光電変換素子500によれば、優れた光電変換特性を有しながら省スペース化を図ることができる。なお、この場合に、接続部12iの抵抗値が、下記式(1)で表される抵抗値以下であることが好ましいのは、上記第1実施形態と同様である。
抵抗値=直列接続されるセル50の数×120Ω (1)
また上記第2実施形態では、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hが、セル50A側の周囲に配置されているが、図19に示す光電変換素子600に示すように、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hは、セル50D側の周囲に配置されていてもよい。この場合、第1電流取出し部12fは、透明導電層12Dの本体部12aに対しセル50Cと反対側に封止部30Aの外側まで突出するように設けられる。一方、第2電流取出し部12hは、透明導電層12Dの本体部12aに対しセル50Cと反対側に設けられる。また透明導電層12A〜12Dに沿って第2電流取出し部12hとセル50Aの対向基板20の金属基板21とを接続するための接続部12iが延びている。具体的には、光透過防止層34の上には、接続部12iに沿って透明導電層12よりも低い抵抗を有し且つ集電機能を有する配線材417が設けられ、この配線材417の一端とバイパスダイオード70Aから延びる配線材60Pとが接続され、配線材417の他端は、光透過防止層34を貫通する貫通孔に設けられ、第1電流取出部12hと直接接続される端子部635と接続されている。光電変換素子600においては、配線材417が導電部を構成し、セル50Aの金属基板21が第2接続部を構成し、端子部635が第1接続部、端子部及び導電部を構成している。この光電変換素子600において、端子部635が着色されている場合には、着色した光透過防止層34が端子部635に隣接して設けられることになる。この場合、端子部635の色を目立たなくすることができる。またこの光電変換素子600によれば、優れた光電変換特性を有しながら省スペース化を図ることができる。なお、この場合に、接続部12iの抵抗値が、下記式(1)で表される抵抗値以下であることが好ましいのは、図18に示す光電変換素子500と同様である。
抵抗値=直列接続されるセル50の数×120Ω (1)
なお、光電変換素子600では、配線材417の他端が端子部635を介して透明導電層12Eの第2電流取出し部12hに間接的に接続されているが、光電変換素子600では、端子部635が省略され、配線材417の他端が透明導電層12Eの第2電流取出し部12hに直接接続されてもよい。この場合、透明導電層12Eが第1接続部を構成することになる。また光電変換素子600では、セル50Aの金属基板21と端子部635との間において、配線材417の少なくとも一部が光透過防止層34上に直接設けられていていてもよく、光透過防止層34上に直接設けられていなくてもよい。
また上記第1実施形態では、第1封止部31Aの内壁面と酸化物半導体層13との間には隙間が設けられているが、図20に示す光電変換素子700のように、第1封止部31Aの内壁面と酸化物半導体層13との間には隙間が設けられていなくてもよい。すなわち、第1封止部31Aの内壁面と酸化物半導体層13とは互いに接していてもよい。この場合、第1封止部31Aの内壁面と酸化物半導体層13との間の隙間を通じて見える電解質40の色や、対向基板20の色又は形状を隠すことができる。第2実施形態の光電変換素子200においても、第1封止部31Aの内壁面と酸化物半導体層13との間には隙間が設けられていなくてもよい。
また上記第1実施形態では、透明基板11のうち透明導電層12と反対側の表面に何らの膜も形成されていないが、図21に示す光電変換素子800のように、透明基板11のうち透明導電層12と反対側の表面に被覆層96がさらに設けられてもよい。ここで、被覆層96は、透明基板11の厚さ方向に被覆層96を見た場合に酸化物半導体層13を覆っており、被覆層96の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長と、酸化物半導体層13の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長とが互いに異なることが好ましい。この場合、被覆層96の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長(λ1)が、酸化物半導体層13の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長(λ2)と異なる。このため、酸化物半導体層13で十分に吸収されるべき光が被覆層96で十分に吸収されることを抑制することができる。すなわち、光電変換素子800における光電変換特性の低下を抑制できる。また光電変換素子800の酸化物半導体層13の色を所望の色に調整することもできる。λ1−λ2は0でなければよく、特に限定されないが、好ましくは50〜300nmであり、より好ましくは100〜300nmである。ここで、被覆層96の色は、酸化物半導体層13の補色であることが好ましい。すなわち、酸化物半導体層13と被覆層96とを重ねてみた場合に見える色が黒色であることが好ましい。この場合、酸化物半導体層13で十分に吸収されるべき光が被覆層96で十分に吸収されることをより十分に抑制することができる。ここで、黒色とは、L値が26以下となる色を言う。また被覆層96の屈折率は導電性基板15の屈折率と同程度にすることが好ましい。具体的には、導電性基板15と被覆層96との屈折率の差が0〜0.5とすることが好ましい。この場合、導電性基板15と被覆層96との界面反射がより十分に抑制され、色をよりきれいに調整することができる。
被覆層96の上には、被覆層96を保護する観点から、さらにオーバーコート層が設けられてもよい。
なお、第2実施形態の光電変換素子200においても、図21に示す光電変換素子800のように、透明基板11のうち透明導電層12と反対側の表面に被覆層96がさらに設けられてもよい。
さらに上記実施形態では、第1の溝90Aは、透明導電層12の本体部12aの縁部に沿って形成されているが、図22に示す光電変換素子900のように、環状の封止部30Aの外形に沿ってさえいれば、透明導電層12の本体部12aの縁部に沿って形成されていなくてもよい。具体的には、透明導電層12上の環状の封止部30Aよりも外側に離れた位置おいて第1の溝90Aが形成されている。この場合でも、絶縁材33は、環状の封止部30Aの外形に沿って形成された第1の溝90Aに入り込むとともに、連続して本体部12aの縁部を覆っている。第2実施形態の光電変換素子200においても、第1の溝90Aは、環状の封止部30Aの外形に沿ってさえいれば、図22に示す光電変換素子900のように、透明導電層12の本体部12aの縁部に沿って形成されていなくてもよい。
また、上記第1実施形態では、絶縁材33と絶縁材14は、離間していたが、図22に示す光電変換素子900のように、同一の材料で構成され一体化されていることが好ましい。この場合、絶縁材33と絶縁材14が同一材料からなり一体化されているため、バックシート80内に水分が侵入したとしても、絶縁材14と絶縁層33の間に界面が生じないので、一体となって水分の侵入を防止することができ。このため、より一層優れた耐久性を有することが可能となる。
さらに上記第1実施形態では、複数のセル50が用いられているが、図23に示す光電変換素子1000のように、本発明では、セルは1つのみ用いてもよい。なお、図23に示す光電変換素子1000は、光電変換素子100においてセル50A〜セル50Cを省略し、第2電流取出部12h上に設けられた接続端子16と、セル50Dの対向基板20の金属基板21とが配線材60Pを介して電気的に接続したものである。また光電変換素子1000においては、接続端子16が配線材接続部16Aのみで構成され、この配線材接続部16Aは、封止部30Aと絶縁材14との間に配置されている。すなわち、配線材接続部16Aは、セル50Dの透明導電層12Dのうちの本体部12aの側縁部12bに対向する位置に配置されていない。このため、第1実施形態の光電変換素子100において配線材接続部16Aが配置されていた部分のスペースまで酸化物半導体層13を拡大することが可能となる。この場合、無駄なスペースが有効利用されるとともに発電面積を拡大することができる。なお、第2実施形態の光電変換素子200においても、図23に示す光電変換素子1000のように、セルが1つのみ用いられていてもよい。
さらに上記実施形態では、複数のセル50が直列接続されているが、並列接続されていてもよい。
また上記実施形態では、対向基板20が対極で構成されているが、図24に示す光電変換素子1100のように、対向基板としては、対極に代えて、絶縁性基板1101を用いてもよい。この場合、絶縁性基板1101と封止部30Aと導電性基板15との間の空間に酸化物半導体層13、多孔質絶縁層1103及び対極1120で構成される構造体1102が配置される。構造体1102は、導電性基板15のうち絶縁性基板1101側の面上に設けることができる。構造体1102は、導電性基板15側から順に、酸化物半導体層13、多孔質絶縁層1103及び対極1120で構成される。また上記空間には電解質40が配置されている。電解質40は、酸化物半導体層及び多孔質絶縁層の内部にまで含浸される。ここで、絶縁性基板1101としては、例えばガラス基板又は樹脂フィルムなどを用いることができる。また対極1120としては、上記実施形態の対向基板20と同様のものを用いることができる。あるいは、対極1120は、例えばカーボン等を含む多孔質の単一の層で構成されてもよい。多孔質絶縁層1103は、主として、酸化物半導体層13と対極1120との物理的接触を防ぎ、電解質40を内部に含浸させるためのものである。このような多孔質絶縁層1103としては、例えば酸化物の焼成体を用いることができる。なお、図24に示す光電変換素子1100においては、封止部31と導電性基板15と絶縁性基板1001との間の空間に構造体1102が1つのみ設けられているが、構造体1102は複数設けられていてもよい。また、多孔質絶縁層1103は、酸化物半導体層13と対極1120との間に設けられているが、酸化物半導体層13と対極1120との間に設けず、酸化物半導体層13を囲むように、導電性基板15と対極1120の間に設けてもよい。この構成でも、酸化物半導体層13と対極1120との物理的接触を防ぐことができる。
本発明の光電変換素子は、ディスプレイなどの電子機器の近傍に設置する場合に特に有用である。
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まずガラスからなる厚さ1mmの透明基板の上に、厚さ1μmのFTOからなる透明導電層を形成してなる積層体を準備した。次に、図3に示すように、COレーザ(ユニバーサルシステム社製V−460)によって透明導電層12に溝90を形成し、透明導電層12A〜12Fを形成した。このとき、溝90の幅は1mmとした。また透明導電層12A〜12Cはそれぞれ、4.6cm×2.0cmの四角形状の本体部と、本体部の片側側縁部から突出する突出部とを有するように形成した。また透明導電層12Dは、4.6cm×2.1cmの四角形状の本体部と、本体部の片側側縁部から突出する突出部とを有するように形成した。また透明導電層12A〜12Dのうち3つの透明導電層12A〜12Cの突出部12cについては、本体部12aの片側縁部12bから張り出す張出し部12dと、張出し部12dから延びて、隣りの透明導電層12の本体部12aに対向する対向部12eとで構成されるようにした。また透明導電層12Dの突起部12cについては、本体部12aの片側縁部12bから張り出す張出し部12dのみで構成されるようにした。このとき、張出し部12dの張出し方向(図2のX方向に直交する方向)の長さは2.1mmとし、張出し部12dの幅は9.8mmとした。また対向部12eの幅は2.1mmとし、対向部12eの延び方向の長さは9.8mmとなるようにした。
また透明導電層12Dについては、本体部12aおよび突出部12cのみならず、第1電流取出し部12fと、第1電流取出し部12fと本体部12aとを接続する接続部12gとを有するように形成した。透明導電層12Eについては、第2電流取出し部12hを有するように形成した。このとき、接続部12gの幅は、1.3mmとし、長さは59mmとした。また接続部12gの抵抗値を四端子法にて測定したところ、100Ωであった。
次に、透明導電層12A〜12Cのうちの突出部12c上に、配線材接続部16Aと配線材非接続部16Bとで構成される接続端子16の前駆体を形成した。具体的には、接続端子16の前駆体は、配線材接続部16Aの前駆体が対向部12e上に設けられるように、配線材非接続部16Bの前駆体が張出し部12d上に設けられるように形成した。このとき、配線材非接続部16Bの前駆体は、配線材接続部16Aの幅よりも狭くなるように形成した。接続端子16の前駆体は、スクリーン印刷により銀ペースト(福田金属箔粉工業社製「GL−6000X16」)を塗布し乾燥させることで形成した。
さらに、透明導電層12Dの接続部12gの上に配線材17の前駆体を形成した。配線材17の前駆体は、スクリーン印刷により銀ペーストを塗布し乾燥させることで形成した。
また、透明導電層12Aの第1電流取出し部12f,第2電流取出し部12h上にそれぞれ外部に電流を取り出すための外部接続用端子18a,18bの前駆体を形成した。外部接続用端子の前駆体は、スクリーン印刷により銀ペーストを塗布し乾燥させることで形成した。
さらに、絶縁材33の前駆体を、第1の溝90Aに入り込み且つ第1の溝90Aの両側の透明導電層の縁部を覆うように形成した。絶縁材33の前駆体は、スクリーン印刷によりガラスフリットを含むペーストを塗布し乾燥させることによって形成した。このとき、ガラスフリットとしては、赤色のガラスエナメル(鉛ガラス系、ジョンソン・マッセイ・インコーポレイテッド製)と、黒色のガラスエナメル(鉛ガラス系、ジョンソン・マッセイ・インコーポレイテッド製)とを95:5の質量比で配合したものを用いた。また、このとき、絶縁材33で覆った透明導電層の縁部の幅は、溝90から0.2mmであった。
またバックシート80を固定するために、絶縁材33と同様にして、絶縁材33を囲むように且つ透明導電層12D、透明導電層12E、透明導電層12Fを通るようにガラスフリットからなる環状の絶縁材14の前駆体を形成した。またこのとき、絶縁材14の前駆体は、その内側に配線材17の前駆体が配置されるように形成した。また絶縁材14は、その外側に、第1電流取出し部および第2電流取出し部が配置されるように形成した。絶縁材14は、スクリーン印刷によりガラスフリットを含むペーストを塗布し乾燥させることによって形成した。
さらに透明導電層12A〜12Dの各々の本体部12aの上に、酸化物半導体層13の前駆体を形成した。酸化物半導体層13の前駆体は、平均粒径21nmのチタニア粒子を含む多孔質酸化物半導体層形成用ペースト(日揮触媒化成社製「PST−21NR」)をスクリーン印刷により3回塗布し、乾燥させた後、乾燥させることで形成した。
次に、接続端子16の前駆体、配線材17の前駆体、外部接続用端子18a,18bの前駆体、絶縁材33の前駆体、絶縁材14の前駆体、絶縁材33の前駆体、酸化物半導体層13の前駆体を500℃で15分間焼成し、接続端子16、配線材17、外部接続用端子18a,18b、絶縁材14及び絶縁材33を形成した。さらに酸化物半導体層13の前駆体を絶縁材33の一部を覆うように4回繰り返し塗布した後、500℃で15分間焼成した。こうして酸化物半導体層13を形成した。このとき、接続端子16のうち配線材接続部の幅は1.0mmであり、配線材非接続部の幅は0.3mmであった。また配線材接続部の延び方向に沿った長さは7.0mmであり、配線材非接続部の延び方向に沿った長さは7.0mmであった。また配線材17、外部接続用端子18a,18b、絶縁材14、および酸化物半導体層13の寸法はそれぞれ以下の通りであった。

配線材17:厚さ4μm、幅200μm、図2のX方向に沿った長さ79mm、図2のX方向に直交する方向に沿った長さ21mm
外部接続用端子18a,18b:厚さ20μm、幅2mm、長さ7mm
絶縁材14:50μm、幅3mm
酸化物半導体層13:厚さ18μm、図2のX方向の長さ56mm、図2のX方向に直交する方向の長さ91mm
次に、作用極を、N719からなる光増感色素を0.2mM含み、溶媒を、アセトニトリルとtertブタノールとを1:1の体積比で混合してなる混合溶媒とした色素溶液中に一昼夜浸漬させた後、取り出して乾燥させ、酸化物半導体層に光増感色素を担持させた。
次に、酸化物半導体層の上に、3−メトキシプロピオニトリルからなる溶媒中に、へキシルメチルイミダゾリウムヨージド2M、n−メチルベンゾイミダゾール0.3M、グアニジウムチオシアネート0.1Mからなる電解質を塗布し乾燥させて電解質を配置した。
次に、第1封止部を形成するための第1一体化封止部形成体を準備した。第1一体化封止部形成体は、8.0cm×4.6cm×50μmの無水マレイン酸変性ポリエチレン(商品名:バイネル、デュポン社製)からなる1枚の封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに、4つの四角形状の開口を形成することによって得た。このとき、各開口が1.7cm×4.4cm×50μmの大きさとなるように、且つ、環状部の幅が2mm、環状部の内側開口を仕切る仕切部の幅が2.6mmとなるように第1一体化封止部形成体を作製した。
そして、この第1一体化封止部形成体を、作用極上の絶縁材33に重ね合わせた後、第1一体化封止部形成体を加熱溶融させることによって作用極上の絶縁材33に接着させた。
次に、4枚の対極を用意した。4枚の対極のうち2枚の対極は、4.6cm×1.9cm×40μmのチタン箔の上にスパッタリング法によって厚さ5nmの白金からなる触媒層を形成することによって用意した。4枚の対極のうち残りの2枚の対極は、4.6cm×2.0cm×40μmのチタン箔の上にスパッタリング法によって厚さ5nmの白金からなる触媒層を形成することによって用意した。また、上記第1一体化封止部形成体をもう1つ準備し、この第1一体化封止部形成体を、対極のうち作用極と対向する面に、上記と同様にして接着させた。
そして、作用極に接着させた第1一体化封止部形成体と、対極に接着させた第1一体化封止部形成体とを対向させ、第1一体化封止部形成体同士を重ね合わせた。そして、この状態で第1一体化封止部形成体を加圧しながら第1一体化封止部形成体を加熱溶融させた。こうして作用極と対極との間に第1封止部を形成した。このとき、第1一体化封止部の仕切部と対極のうち透明導電性基板側の面との接着部の幅P、第1一体化封止部のうちの環状部と対極のうち透明導電性基板側の面との接着部の幅Q、第1一体化封止部の仕切部の幅Rおよび環状部の幅Tはそれぞれ以下の通りであった。

P=1.0mm
Q=2.0mm
R=2.6mm
T=2.2mm
次に、第2一体化封止部を準備した。第2一体化封止部は、8.0cm×4.6cm×50μmの無水マレイン酸変性ポリエチレン(商品名:バイネル、デュポン社製)からなる1枚の封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに、4つの四角形状の開口を形成することによって得た。このとき、各開口が、1.7cm×4.4cm×50μmの大きさとなるように且つ、環状部の幅が2mmで、環状部の内側開口を仕切る仕切部の幅が2.6mmとなるように第2一体化封止部を作製した。第2一体化封止部は、第1一体化封止部と共に対極の縁部を挟むように対極に貼り合わせた。このとき、第2一体化封止部を対極に押しつけながら第1一体化封止部及び第2一体化封止部を加熱溶融させることによって対極及び第1一体化封止部に貼り合せた。
次に、各対極の金属基板上に、乾燥剤シートを両面テープで貼り付けた。乾燥剤シートの寸法は、厚さ1mm×縦3cm×横1cmであり、乾燥剤シートとしては、ゼオシート(商品名、品川化成社製)を用いた。
次に、図2に示すように、第2一体化封止部の3つの仕切部にそれぞれバイパスダイオード70A〜70Cを、低温硬化型の銀ペースト(藤倉化成社製、ドータイトD500)を、バイパスダイオードの両端の端子から対向基板20の金属基板21につながるように塗布することによって固定した。また4つのセル50A〜50Dのうちセル50Dの第2一体化封止部の環状部上にバイパスダイオード70Dを、上記低温硬化型の銀ペーストを、ダイオードの両端の端子のうち一方の端子から対極につながるように塗布することによって固定した。こうして、4つのバイパスダイオード70A〜70Dに対して、隣り合う2つのバイパスダイオード同士を結ぶように配線材60Qを形成した。このとき、配線材60Qは、上記低温硬化型の銀ペーストを30℃で12時間硬化させることによって形成した。バイパスダイオードとしては、ローム社製RB751V−40を用いた。
またバイパスダイオード間の各配線材60Qと、3つの透明導電層12A〜12C上の配線材接続部とをそれぞれ接続するように低温硬化型の銀ペースト(藤倉化成社製、ドータイトD−500)を塗布し、硬化させることによって配線材60Pを形成した。さらにバイパスダイオード70Aについては、透明導電層12E上の配線材接続部と接続するように上記低温硬化型の銀ペーストを塗布し硬化させることによって配線材60Pを形成した。このとき、配線材60Pは、上記低温硬化型の銀ペーストを、30℃で12時間硬化させることによって形成した。
次に、ブチルゴム(アイカ工業社製「アイカメルト」)を200℃で加熱しながらディスペンサで絶縁材14上に塗布し、接着部の前駆体を形成した。一方、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂フィルム(厚さ50μm)、アルミ箔(厚さ25μm)、バイネル(商品名、デュポン社製)からなるフィルム(厚さ50μm)をこの順に積層した積層体を用意した。そして、この積層体80Aの周縁部と接着部80Bの前駆体の上に重ね合わせ、10秒間加圧した。こうして、絶縁材14に、接着部80Bと積層体80Aとで構成されるバックシート80を得た。以上のようにして光電変換素子を得た。
(実施例2)
ガラスフリットからなる絶縁材33が第2の溝90Bに入り込むとともに、第2の溝90Bを形成する透明導電層12の縁部をも覆うようにしたこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。なお、絶縁材33で覆った透明導電層の縁部の幅は、溝から0.2mmとした。
(実施例3)
環状の連結部の前駆体を形成する際、ガラスフリットとして、着色していないガラスフリット(酸化ビスマス系低融点ガラスフリット)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
(実施例4)
酸化物半導体層13の厚さを25μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
(実施例5)
酸化物半導体層13の厚さを32μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
(実施例6)
バックシート80を得た後、透明基板のうち透明導電層と反対側の表面に水色の塗料(エピライトピンク藍色、十条ケミカル社製)を塗布して乾燥することにより被覆層を形成した後、反射防止フィルム(製品名:BSIP6N01FH、株式会社バッファロー製)を貼り付けたこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。このとき、酸化物半導体層の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長は700nmであり、被覆層の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長は550nmであった。
(実施例7)
チタン箔の上に厚さ1000nmのカーボン(商品名:ケッチェンブラック、ライオン社製)からなる触媒層を形成することによって対極を用意したこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
(比較例1)
絶縁材33の前駆体を形成する際、ガラスフリットとして、着色していないガラスフリット(酸化ビスマス系低融点ガラスフリット)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
(比較例2)
第1一体化封止部形成体を準備する際に使用した封止用樹脂フィルムとして、着色剤(製品名:ダイピロキサイド、大日精化工業社製)を5質量%含むものを用いたこと以外は比較例1と同様にして光電変換素子を作製した。
(特性評価)
(耐久性)
実施例1〜7および比較例1〜2で得られた光電変換素子について、初期出力(η)を測定した。続いて、実施例1〜7および比較例1〜2で得られた光電変換素子について、JIS C 8938に準じたヒートサイクル試験を行った後の出力(η)も測定した。そして、下記式:
出力の保持率(%)=η/η×100
に基づき、出力の保持率(出力保持率)を算出した。結果を表1に示す。
(外観)
また実施例1〜7および比較例1〜2で得られた光電変換素子について、光入射側から見たときの外観を評価した。結果を表1に示す。なお、表1において、「A」、「B」、「C」はそれぞれ外観について以下のように評価したものである。
A・・・電解質の色や対極の色又は形状が全く見えない
B・・・電解質の色や対極の色又は形状がわずかに見える
C・・・電解質の色や対極の色又は形状がよく見える
Figure 0006208774
表1に示すように、実施例1〜7の光電変換素子は、比較例2の光電変換素子に比べて、高い出力保持率を示すことが分かった。また、実施例1〜7の光電変換素子は、比較例1の光電変換素子に比べて、良好な外観を実現できることも分かった。
以上より、本発明の光電変換素子によれば、良好な外観を実現しながら優れた耐久性を有することが確認された。
11…透明基板
12…透明導電層
12a…本体部
13…酸化物半導体層
14…絶縁材
15…透明導電性基板(導電性基板)
16…接続端子(導電部、端子部、第1接続部)
17,417…配線材(導電部)
18a,18b…外部接続端子(導電部、端子部)
20…対極(対向基板)
21…金属基板(導電部、第2接続部)
30A…封止部
33…絶縁材
34…光透過防止層
35a…端子部(導電部、第1接続部)
35b…端子部(導電部、第2接続部)
50,50A〜50D…光電変換セル
60P…配線材(導電部)
80…バックシート
90…溝
90A…第1の溝
90B…第2の溝
100〜1100…光電変換素子
635…端子部

Claims (15)

  1. 少なくとも1つの光電変換セルを有し、
    前記光電変換セルが、
    透明基板および前記透明基板の上に設けられる透明導電層を有する導電性基板と、
    前記導電性基板に対向する対向基板と、
    前記導電性基板又は前記対向基板上に設けられる酸化物半導体層と、
    前記導電性基板及び前記対向基板を接合させる環状の封止部とを備えており、
    少なくとも前記導電性基板と前記封止部との間に絶縁材が設けられており、
    前記絶縁材が着色されたガラスフリットで構成されており、
    前記封止材が樹脂で構成されている、光電変換素子。
  2. 前記絶縁材は、前記封止部の外形に沿って、全周に渡って設けられている、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記透明基板のうち前記透明導電層と反対側の表面に被覆層をさらに有し、前記被覆層が、前記透明基板の厚さ方向に前記被覆層を見た場合に前記酸化物半導体層を覆っており、前記被覆層の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長と、前記酸化物半導体層の可視光の波長領域における最大吸収ピーク波長とが互いに異なる、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記透明導電層が、前記封止部の内側に配置される本体部を有し、
    前記透明導電層に溝が形成され、少なくとも一部の前記溝が、前記封止部の外形に沿って形成される第1の溝を有し、
    前記絶縁材が、前記第1の溝に入り込むとともに、連続して前記本体部の縁部をも覆っている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  5. 前記導電性基板の上において、前記光電変換セルを前記透明基板のうち前記透明導電層が設けられている面側で覆うバックシートをさらに備え、
    前記溝が、
    前記第1の溝と、
    前記透明導電層のうち前記本体部を除く部分の縁部に沿って形成され、前記バックシートの周縁部と交差する第2の溝とを有し、
    前記絶縁材が、前記第2の溝に入り込むとともに前記透明導電層のうち前記本体部を除く部分の縁部をも覆っている、請求項4に記載の光電変換素子。
  6. 前記導電性基板上であって、前記バックシートの周縁部全周に沿って連続して前記絶縁材が設けられている、請求項5に記載の光電変換素子。
  7. 前記光電変換セルを複数具備し、
    前記導電性基板が、複数の光電変換セルの共通の導電性基板で構成されており、
    前記第1の溝を含む前記溝によって、前記複数の光電変換セルの間は絶縁されている、請求項4〜6のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  8. 前記導電性基板上であって前記封止部と、前記導電性基板の縁部との間の領域のうち、前記絶縁材が設けられていない領域に前記透明導電層と接触するように設けられる少なくとも1つの端子部を有する導電部と、前記導電性基板上であって前記封止部と、前記導電性基板の縁部との間の領域のうち、前記絶縁材が設けられていない領域に、少なくとも前記端子部と隣接するように設けられ、光の透過を防止する光透過防止層とをさらに備え、
    前記端子部の少なくとも一部及び前記光透過防止層がそれぞれ着色されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  9. 前記酸化物半導体層と前記光透過防止層との間におけるL色空間のL*の差が5以下であり、
    前記酸化物半導体層と着色されている前記端子部との間におけるL色空間のL*の差が5以下である、請求項8に記載の光電変換素子。
  10. 前記導電部が、
    前記導電性基板のうちの前記封止部側に設けられる少なくとも1本の配線材と、
    前記配線材の一端に接続され且つ前記光電変換素子を前記透明基板側から前記導電性基板の厚さ方向に見た場合に前記封止部の外側に配置される第1接続部と、
    前記配線材の他端に接続される第2接続部とを有し、
    前記光透過防止層が、前記配線材と前記導電性基板との間に、前記導電性基板の厚さ方向において前記配線材と重なるように設けられている、請求項8又は9に記載の光電変換素子。
  11. 前記対向基板が、金属基板を有する電極で構成され、前記第2接続部のうちの少なくとも1つが前記金属基板で構成される、請求項10に記載の光電変換素子。
  12. 前記第2接続部のうちの少なくとも1つが前記封止部の外側に配置され、前記第1接続部及び前記第2接続部が共通の前記透明導電層上に直接設けられている、請求項10又は11に記載の光電変換素子。
  13. 前記光透過防止層が、前記導電性基板の前記封止部側の表面において、前記封止部と、前記導電性基板の縁部との間の領域のうち、前記光電変換素子を前記導電性基板の厚さ方向に見た場合に少なくとも前記絶縁材及び前記導電部以外の領域の全てを覆うように設けられている、請求項8〜12のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  14. 前記光電変換素子を前記透明基板側から前記導電性基板の厚さ方向に見た場合に、前記導電性基板に前記光透過防止層と異なる色を有する異色部が設けられている、請求項8〜12のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  15. 前記光透過防止層が、前記導電性基板の前記封止部側の表面において、前記封止部と、前記導電性基板の縁部との間の領域のうち、前記光電変換素子を前記導電性基板の厚さ方向に見た場合に少なくとも前記絶縁材、前記導電部及び前記異色部以外の領域の全てを覆うように設けられている、請求項14に記載の光電変換素子。
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