以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
〔第1実施形態〕
図1に例示するように、第1実施形態の映像表示装置1は、X軸直線運動生成部11(第1直線運動生成部)、Y軸直線運動生成部12(第2直線運動生成部)、鉛直軸回転運動生成部13(第1回転運動生成部)、水平軸回転運動生成部14(第2回転運動生成部)、及び表示部16を有する。なお、X軸直線運動生成部11及びY軸直線運動生成部12は「平面運動生成部」を構成する。特許文献1の装置と比較して、X軸方向とY軸方向への直線運動を制御できる機構が備わっている点が異なる。
表示部16は、動画や静止画等の映像を表示する装置である。表示部16は、ディスプレイ等の自発光型の表示装置であってもよいし、特許文献1と同じく別途設けられたプロジェクタ等の映像投影装置からの映像を投影するスクリーンであってもよい。図1では表示部16の表示面が略長方形として描かれているが、表示面の形状はこれに限られるものではなく、円形や多角形などであってもよいし、表示されるオブジェクト(人物等)の輪郭に合わせた形状に加工されていてもよい。また、表示部16の表示面は平面でなくても曲面であってもよい。スクリーンとは、投射される映像を映し出す平面または曲面を備える部材を意味する。スクリーンは、剛体であってもよいし、非剛体であってもよい。剛体のスクリーンは、その素材自体が剛体で構成されていてもよいし、剛体の素材に非剛体の素材を貼りつけたり、コーティングしたりして構成されていてもよい。スクリーンは、半透明であってもよいし、非透過なものであってもよい。透過性の高い半透明のスクリーンは、背面側(閲覧面の裏側)からA方向に映像投影装置で映像を投影するためのものであってもよいし、正面側(閲覧面側)からB方向に映像投影装置で映像を投影するためのものであってもよい。非透過なスクリーンは、正面側からB方向に映像投影装置で映像を投影するためのものである。図1は、表示部16として、映像投影装置で映像を投影するためのスクリーンを採用した例を示している。図1に例示しているスクリーンは、半透明の剛体からなり、背面161からA方向に投射される映像を映し出す平面を備えた板状のスクリーンである。その裏面である閲覧面162(表示面)側からB方向に映像を閲覧する。
X軸直線運動生成部11は、床面と略水平な面上において、任意の直線軸(「X軸(第1軸)」と呼ぶ)に沿った方向の運動を生成する。本実施形態のX軸直線運動生成部11は、X軸に対する相対位置が固定され(例えば、床等に対する相対位置が固定され)、X軸に沿った方向の直線運動を案内するリニアガイド111(ベース部)と、リニアガイド111によって移動可能に支持され、リニアガイド111上を直線状に移動するリニアステージ112(第1移動部)と、この直線運動を生成するモータ113を含む。例えば、モータ113は回転モータであり、これによって生成される回転運動を直線運動に変換する機構を用いることで、リニアステージ112をX軸に沿った方向に動かす。回転運動を直線運動に変換する手段としては、ボールねじ、ラックとピニオン、プーリーとベルトなどを用いることができるが、それらに限られない。また、モータとしてリニアモータを用いることもできる。この場合には、回転運動を直線運動に変換する手段を用いることなく、リニアステージ112をX軸に沿った方向に動かすことができる。
Y軸直線運動生成部12は、X軸直線運動生成部11のリニアステージ112上部に固定、または、リニアステージ112と一体化され、リニアステージ112と略水平な面上にあり、かつ、X軸直線運動生成部11の運動方向(X軸)と略直交する直線軸(「Y軸(第2軸)」と呼ぶ)に沿った方向の運動を生成する。本実施形態のY軸直線運動生成部12は、リニアステージ112に固定、または、リニアステージ112と一体化され、Y軸に沿った方向の直線運動を案内するリニアガイド121と、リニアガイド121によって移動可能に支持され(すなわち、リニアステージ112によって移動可能に支持され)、リニアガイド121上を直線状に移動するリニアステージ122(第2移動部)と、この直線運動を生成するモータ123を含む。モータ113と同様、モータ123には、回転モータ、または、リニアモータを用いることができ、回転モータを用いる場合には、回転運動を直線運動に変換する手段を用いて直線運動が生成される。
なお、X軸とY軸は、表示部16を閲覧面162側から閲覧する人から見て、概ね左右方向の動きと前後方向の動きに対応する動きが生成できるように配置されていれば、正確に直交していても、していなくてもよい。
鉛直軸回転運動生成部13は、Y軸直線運動生成部12のリニアステージ122上部に固定、または、リニアステージ122上部と一体化され、略鉛直軸周りの回転運動を生成する。本実施形態の鉛直軸回転運動生成部13は、リニアステージ122に固定、または、リニアステージ122と一体化され、鉛直回転軸を中心とした回転運動を案内する回転ガイド131と、回転ガイド131によって回転可能に支持され(すなわち、リニアステージ122によって回転可能に支持され)、回転ガイド131に沿って回転する回転ステージ132(回転部)と、この回転運動を生成するモータ(図示せず)を含む。このモータには、回転モータ、又は、ダイレクトドライブモータを使用できる。
水平軸回転運動生成部14は、鉛直軸回転運動生成部13の回転ステージ132上に固定、又は、回転ステージ132と一体化され、床面に略水平な面上にある直線軸周りの回転運動を生成する。本実施形態の水平軸回転運動生成部14は、回転ステージ132に固定、又は、回転ステージ132と一体化され、水平回転軸を中心として一定半径にある円周に沿った運動を案内するゴニオガイド141と、ゴニオガイド141によって傾斜可能に支持され(すなわち、回転ステージ132によって傾斜可能に支持され)、ゴニオガイド141により案内される円周上を運動するゴニオステージ142(傾斜部)と、その円周上の運動を生成するモータ(図示せず)と、表示部支持部143を含む。この円周上の運動を生成するモータには、回転モータ、又は、ダイレクトドライブモータを使用できる。
表示部支持部143は、ゴニオステージ142上に固定、または、ゴニオステージ142と一体化され、表示部16を支持する。本実施形態の表示部支持部143は、表示部16の下部に位置する1つの辺縁部を挟み込むことで表示部16を支持する機構である。ただし、表示部支持部143の機構はこれに限るものではなく、表示部支持部143が表示部16の一部と接触し、接着、ボルト締結などにより、表示部16に固定されてもよい。
以上の構成により、X軸直線運動生成部11は、表示部16をX軸に沿った方向成分(例えば、X軸と略平行な方向成分)を持つ方向に移動させることができ、Y軸直線運動生成部12は、X軸と向きが異なるY軸に沿った方向成分(例えば、Y軸と略平行な方向成分)を持つ方向に表示部16を移動させることができ、これにより、X軸及びY軸を含む平面(X−Y平面:基準となる平面)に沿って表示部16を移動させことができる(2次元方向に移動させることができる)。鉛直軸回転運動生成部13は、X軸及びY軸を含む平面に沿った方向に(X軸及びY軸を含む平面に沿って)表示部16を回転(パン)させることができ、水平軸回転運動生成部14は、表示部16をX軸及びY軸を含む平面に対して回転させ、それによって表示部16をこの平面に対して傾斜(チルト)させることができる。
本形態の映像表示装置1は、例えば、表示部16の閲覧面162(表示面)又は背面161(表示面の背面)がY軸(第2軸)に沿った方向(例えば、Y軸と略平行な方向)を向くとき、閲覧面162に沿った方向がX軸(第1軸)に沿った方向(例えば、X軸と略平行な方向)となるように構成される。すなわち、閲覧面162に沿った方向(例えば、閲覧面162と略平行な方向)がX軸に沿った方向となったとき、閲覧面162又は閲覧面162の背面161がY軸に沿った方向を向く(例えば、Y軸と略垂直となる)。言い換えると、例えば、閲覧面162が向く方向がY軸に沿った方向となったとき、閲覧面162に沿った方向がX軸に沿った方向となる。例えば、回転ガイド131に対して回転ステージ132が特定の位置及び姿勢にあるときに、X軸直線運動生成部11の運動方向(X軸方向)が表示部16の閲覧面162と略平行となり、X軸直線運動生成部11による直線運動の方向が表示部16の閲覧面162と略平行になり、かつ、Y軸直線運動生成部12による直線運動の方向が表示部16の閲覧面162に略鉛直となるように配置する。このように配置し、かつ、表示部16に表示する対象を人物の顔を含む正面像とした場合、人物の左右の動きがX軸に沿った方向の直線運動に相当し、人物の前後の動きがY軸に沿った方向の直線運動に相当する(後述する図6参照)。
また本形態では、X軸直線運動生成部11のリニアガイド111(ベース部)が床面に近い側に配置され、リニアガイド111がリニアステージ112(第1移動部)を支持し、リニアステージ112がY軸直線運動生成部12のリニアステージ122(第2移動部)を支持し、リニアステージ122が鉛直軸回転運動生成部13の回転ステージ132(回転部)を支持し、回転ステージ132が水平軸回転運動生成部14のゴニオステージ142(傾斜部)を支持し、ゴニオステージ142が表示部16を支持している。すなわち、X軸直線運動生成部11、Y軸直線運動生成部12、鉛直軸回転運動生成部13、水平軸回転運動生成部14、表示部16と順に積層されるように配置されている。この順番は、表示部16での表示対象を人物の顔とした場合、その身体の構造、及び、その構造により許容される運動を大まかに反映した順番になっている。つまり、X軸直線運動生成部11、及び、Y軸直線運動生成部12は、主に、胴体、及び、胴体より下の部分による運動の表現を担当し、身体の前後左右方向の動きを再現できる。椅子に座っている人物の身体動作にとって、前後の動きの方が左右の動きよりも頻度が高い。そのため、左右方向の運動を実現する機構(X軸直線運動生成部11)の上に前後方向の運動を実現する機構(Y軸直線運動生成部12)を配置することで、人物の身体動作を提示する際の動力学的な機構に対する負荷を小さくし、応答を高速にすることができる。なぜなら、X軸直線運動生成部11のリニアステージ112がY軸直線運動生成部12のリニアステージ122を支持する構成の場合、Y軸直線運動生成部12が支持する部位の総重量は、X軸直線運動生成部11が支持する部位の総重量よりも小さく、その結果、人物の身体動作を提示するには、Y軸直線運動生成部12に対する動力学的な負担が、X軸直線運動生成部11に対する動力学的な負担よりも小さくなるからである。また、鉛直軸回転運動生成部13、及び、水平軸回転運動生成部14は、主に、頭部の運動(首振りや頷き)を再現する。このような配置は頭部が胴体の上に位置するという人体の構造を反映する合理性を有する。椅子に座っている人物の身体動作にとって、頭部の動きの方が胴体及び胴体より下の部分の動きよりも頻度が高い。そのため、主に頭部の動きを再現する機構(鉛直軸回転運動生成部13及び水平軸回転運動生成部14)の上に、主に胴体及び胴体より下の部分の動きを再現する機構(X軸直線運動生成部11及びY軸直線運動生成部12)を配置することで、人物の身体動作を提示する際の動力学的な機構に対する負荷を小さくし、応答を高速にすることができる。
なお、鉛直軸回転運動生成部13と水平軸回転運動生成部14との配置が逆であってもよい。すなわち、リニアステージ122上に水平軸回転運動生成部14のゴニオガイド141(傾斜部)が固定又は一体化され、ゴニオガイド141がゴニオステージ142(傾斜部)を支持し(すなわち、リニアステージ122(第2移動部)がゴニオステージ142(傾斜部)を傾斜可能に支持し)、ゴニオステージ142上に鉛直軸回転運動生成部13の回転ガイド131が固定又は一体化され、回転ガイド131が回転ステージ132(回転部)を支持し(すなわち、ゴニオステージ142(傾斜部)が回転ステージ132(回転部)を回転可能に支持し)、回転ステージ132が表示部16を支持してもよい。このような配置でも図1の配置の場合と同様な効果を得ることができる。なお、鉛直軸回転運動生成部13と水平軸回転運動生成部14との配置が逆の場合、水平軸回転運動生成部14が表示部16をX軸及びY軸を含む平面に対して傾斜(チルト)させた状態で鉛直軸回転運動生成部13が駆動すると、表示部16は鉛直回転軸から傾斜した回転軸を中心とした回転を行う。このような場合であっても、表示部16の閲覧面162がX軸及びY軸と平行に配置されないかぎり、この回転にはX軸及びY軸を含む平面に沿った方向の回転成分も含まれる。
また、人体の運動は、関節を基点とする回転運動が組み合わさって生成されるものであり、一部の擬人化ロボットでは、その構造を模した多関節構造により、身振りや並進運動を行う。また、他のロボットでは並進運動のために車輪を用いる。これら従来の運動生成法では、前後左右方向の並進運動を生成するためには、複数の関節やアクチュエータを複雑かつ精巧に連動させる必要があり、滑らかな運動や即応性の高い運動を生成することが機構的にも制御的にも困難であった。それに対して、本実施形態の機構は、並進運動のために直線運動機構を用いるため、より直接的かつ効率的に並進運動を生成できる。
なお、表示部16によって映像を表示し、X軸直線運動生成部11、Y軸直線運動生成部12、鉛直軸回転運動生成部13、及び水平軸回転運動生成部14によって動きを提示する対象は人に限定されず、自然環境、人工物、キャラクター、動物、植物など様々な対象に適用が可能である。キャラクターや動物などは、人物の映像と同様に物理的な動きが加わることでより実在感が増して感じられる効果がある。また、例えば草花の映像などを表示部16に表示し、風に揺られる動きをX軸直線運動生成部11、Y軸直線運動生成部12、鉛直軸回転運動生成部13、及び水平軸回転運動生成部14により物理的に動きを再現することで、表示された映像の動きに、よりリアリティが感じられるという効果がある。
また、表示部16に表示する主たる対象と、X軸直線運動生成部11、Y軸直線運動生成部12、鉛直軸回転運動生成部13、及び水平軸回転運動生成部14によって動きを物理的に再現する対象とが同一でなくともよい。例えば、表示部16によって人物を表示し、X軸直線運動生成部11、Y軸直線運動生成部12、鉛直軸回転運動生成部13、及び水平軸回転運動生成部14によって、人物が存在する環境にある動き、例えば、車両の振動や風による空気の揺らぎなどを再現してもよい。それにより、臨場感の高い人物、及び、その環境を閲覧者に提示することができる。
〔第2実施形態〕
第2実施形態は第1実施形態の変形例であり、鉛直軸回転運動生成部と水平軸回転運動生成部を第1実施形態と異なる機構により実現した例である。以下では、すでに説明した部位については、それまでの説明に用いたのと同じ参照番号を用いて説明を省略する。
図2に例示するように、第2実施形態の映像表示装置2は、X軸直線運動生成部11(第1直線運動生成部)、Y軸直線運動生成部12(第2直線運動生成部)、鉛直軸回転運動生成部23(第1回転運動生成部)、水平軸回転運動生成部24(第2回転運動生成部)、及び表示部16を有する。
鉛直軸回転運動生成部23は、Y軸直線運動生成部12のリニアステージ122上部に固定、または、リニアステージ122上部と一体化され、略鉛直軸周りの回転運動を生成する。本実施形態の鉛直軸回転運動生成部23は、リニアステージ122に固定、または、リニアステージ122と一体化され、鉛直回転軸を中心とした回転運動を案内する回転ガイド231と、回転ガイド231によって回転可能に支持され、回転ガイド231に沿って回転する回転ステージ232(回転部)と、この回転運動を生成するモータ(図示せず)を含む。このモータには、回転モータ、又は、ダイレクトドライブモータを使用できる。
水平軸回転運動生成部24は、鉛直軸回転運動生成部23の回転ステージ232上に固定、又は、回転ステージ232と一体化され、床面に略水平な面上にある直線軸周りの回転運動を生成する。本実施形態の水平軸回転運動生成部24は、回転ステージ232に固定、又は、回転ステージ232と一体化され、モータ(図示せず)によって水平回転軸を中心とした回転動力を与える回転駆動部241と、回転駆動部241によって水平回転軸を中心として回転する回転軸242と、回転軸242に固定された(すなわち、回転ステージ232によって傾斜可能に支持された)表示部支持部243を含む。その他、同等の機能を実現する機構であれば、形状や装置構成が異なっていてもよい。
〔第1,2実施形態の変形例1〕
表示部16の位置・姿勢を制御する機構として、X軸直線運動生成部11、Y軸直線運動生成部12、鉛直軸回転運動生成部13又は23、及び、水平軸回転運動生成部14又は24に加えて、表示部16の高さを変化させるZ軸直線運動生成部を備えてもよい。Z軸直線運動生成部は、X軸及びY軸を含む平面に対して略鉛直なZ軸に沿った方向に表示部16を直線移動させる。例えば、Z軸直線運動生成部は、X軸直線運動生成部11の下部に設置され、X軸直線運動生成部11を下部から支持する。すなわち、X軸直線運動生成部11のリニアガイド111が、Z軸直線運動生成部によって、Z軸に沿った方向に移動可能に支持される。その他、Z軸直線運動生成部が、X軸直線運動生成部11とY軸直線運動生成部12との間に設置され、X軸直線運動生成部11のリニアステージ112がZ軸直線運動生成部を支持し、Z軸直線運動生成部がY軸直線運動生成部12のリニアガイド121をZ軸に沿った方向に移動可能に支持してもよい。或いは、Z軸直線運動生成部が、Y軸直線運動生成部12と鉛直軸回転運動生成部13又は23との間に設置され、Y軸直線運動生成部12のリニアステージ122がZ軸直線運動生成部を支持し、鉛直軸回転運動生成部13又は23の回転ガイド131又は231をZ軸に沿った方向に移動可能に支持してもよい。ただし、Z軸に沿った方向(例えば、上下方向)への移動は機構的な負荷が大きく、それを実現するためのZ軸直線運動生成部の自体の重量も大きくなり易い。また、椅子に座っている人物の身体動作にとって上下方向の運動の頻度は、左右前後等のその他の運動の頻度よりも小さいことが多い。そのため、Z軸直線運動生成部をX軸直線運動生成部11の下部に配置するほうが、人物の身体動作を提示する際の動力学的な機構に対する負荷を小さくし、応答を高速にすることができるため、望ましい。その他は第1,2実施形態と同じである。
〔第1,2実施形態の変形例2〕
第1,2実施形態の表示部16を、音響信号を拡散するスピーカとしても機能させるために、剛体の表示部16(例えば、平面のディスプレイやスクリーン等)を用い、その表示部16に音響振動を与えるための超磁歪アクチュエータ(音響振動部)を取り付けてもよい。
図3に例示する超磁歪アクチュエータ17は、音響信号に応じた交流の電気信号を入力とし、磁界を発生させるためのコイル173と、コイル173で発生した磁界を受けてその形状やサイズを変動させることで音響信号に応じた振動を行う超磁歪素子172と、超磁歪素子172で発生した振動を表示部16に伝達する接触部171とを有する。
コイル173に入力される電気信号は、例えば、表示部16での表示対象が発し、マイクロホンなどにより取得された音響信号に対応する電気信号又はそれを増幅した電気信号である。
接触部171は、超磁歪素子172の先端に取り付けられた凸曲面領域1711を有するプラスティックなどの剛体である。本形態の超磁歪アクチュエータ17は、表示部16の辺縁領域面(表示面の辺縁領域、例えば、下方領域)に斜めに設置される。凸曲面領域1711を有する接触部171を用いることで、表示部16の表示面に対して超磁歪アクチュエータ17が斜めに設置された場合にも、超磁歪素子172の振動を表示部16に伝達することができる。なお、図3では接触部171が球体として描かれているが、表示部16との接触面が凸曲面をなす形状であれば楕円体や半球などでもよい。
超磁歪アクチュエータ17は、表示部16に対して圧力が加えられた状態で設置され、接触部171の凸曲面領域1711の一部がほぼ一定の圧力をもって表示部16の辺縁領域面に接触している。すなわち、表示部16の辺縁領域面と超磁歪素子172との間に接触部171が配置され、この辺縁領域面に対して斜めの方向の力(ほぼ一定の力)が表示部16の辺縁外方側から超磁歪素子172に加えられ、接触部171の凸曲面領域1711の一部がこの辺縁領域面に押し当てられた状態で設置されている。
図4A及び4Bは、図1の構成の表示部16に超磁歪アクチュエータ17が取り付けられた様子を例示している。なお、表記の簡略化のため、図4Aおよび4Bでは、コイル173の表記を省略している。この例の表示部支持部143は、一端がゴニオステージ142に固定または一体化された支柱部1430と、支柱部1430の他端に固定または一体化された辺縁支持部1431と、辺縁支持部1431に固定または一体化された把持部1434,1432,1433と、辺縁支持部1431に固定または一体化された支持機構1435および1436を含む。表示部16の下部に位置する辺縁1612は辺縁支持部1431によって支持され、背面161および閲覧面162は把持部1434,1432,1433によって挟み込まれている。支持機構1435および1436には、それぞれサスペンション機構部18の支柱184,185の一端が固定されている。支柱184,185は、互いに平行であり、かつ、背面161に対して斜めの姿勢で固定されている。支柱184,185は留め板181の2個の貫通孔に挿入されており、留め板181は支柱184,185に沿ってスライド可能である。支柱184,185は、表示部16の下部に位置する辺縁1612の外方側まで延長されている。支柱184,185の他端はサスペンション機構部18の留め板182,183に固定され、留め板182,183と留め板181との間に2個のばね186,187が設置されている。留め板181の表示部16側の板面には超磁歪素子172の他端(接触部171の他端)が固定されており、接触部171が超磁歪素子172と表示部16の背面161との間に配置されている。これにより、超磁歪アクチュエータ17は、表示部16の背面161に対して斜めに設置され、サスペンション機構部18によって、辺縁1612外方側から方向C(背面161に対する斜めの方向)に力が加えられ、接触部171の凸曲面領域1711の一部がほぼ一定の圧力をもって背面161の辺縁領域面1611に接触している。
超磁歪アクチュエータ17で発生した振動は表示部16に伝達され、表示部16はその振動を音響信号として放出する。このように放出された音響信号は、表示部16の背面161および閲覧面162に正対する方向をピークとする指向性を持つ。加えて表示部16そのものが物理的に回転・並進する。これにより、音源の向きや位置が変化し、視聴者の知覚する音響に変化が生じる。この対象の物理的な動きと連動した音響の変化により、より高い実在感を視聴者が感じることが可能となる。表示部16での表示対象を人間の顔とし、表示部16がその人間の発話に伴う音響信号を放出する場合、視聴者はその人間の顔の位置から声が発せられているように感じる。また、人間の発話動作は頭部運動や身体の動作を伴うが、本変形例の装置によれば人間の身体の動作に伴う音源位置や方向の変化を再現することができるので、視聴者は提示された人間の実在感をよりリアルに感じることができる。
さらに、表示部16がその背面161側に設置されたプロジェクタから投影された映像を映し出すスクリーンである場合、超磁歪アクチュエータ17を背面161に対して斜めに配置することで(図4A及び4B等)、超磁歪アクチュエータ17がプロジェクタからの光線を遮ることを防止でき、かつ、閲覧面162側からは超磁歪アクチュエータ17を見えにくくすることができ、視聴者を映像と音響に集中させることができる。
なお、表示部支持部が表示部16の辺縁領域面1611付近を2点で挟み込むことで表示部16を支持し、それらの2点以外の領域に超磁歪アクチュエータ17の接触部171が接触する構成を採用してもよい。これにより、超磁歪アクチュエータ17により生成される振動を表示部16の全体に広く伝播させることができる。また、表示部16に設置される超磁歪アクチュエータ17の個数は1個に限定されず、複数個の超磁歪アクチュエータ17が表示部16に設置されてもよい。
なお、超磁歪アクチュエータ以外の振動素子を用いて、表示部16をスピーカとしても機能させることも可能である。しかしながら、例えば、表示部16に圧電フィルムを添付する方式の平面スピーカ等と比較して、超磁歪アクチュエータを用いた構成は表示部16に光学的な悪影響を及ぼさないため、画質の劣化を抑えることができるという利点がある。
〔第3実施形態〕
第3実施形態では、第1,2実施形態で例示した映像表示装置を用いた映像表示システムを例示する。図5に例示するように、本実施形態の映像表示システム3は、運動生成部31、X軸方向変位計測部321、Y軸方向変位計測部322、鉛直軸回転角計測部323、水平軸回転角計測部324、映像生成部33、プロジェクタ34(映像投影部)、及び表示部16を有する。
運動生成部31は、X軸直線運動生成部311(第1直線運動生成部)、Y軸直線運動生成部312(第2直線運動生成部)、鉛直軸回転運動生成部313(第1回転運動生成部)、及び水平軸回転運動生成部314(第2回転運動生成部)を含む。なお、X軸直線運動生成部311及びY軸直線運動生成部312は「平面運動生成部」を構成する。X軸直線運動生成部311(第1直線運動生成部)はX軸(第1軸)に沿った方向成分(例えば、X軸と略平行な方向成分)を持つ方向に表示部16を移動させ、Y軸直線運動生成部312(第2直線運動生成部)はY軸(第2軸)に沿った方向成分(例えば、Y軸と略平行な方向成分)を持つ方向に表示部16を移動させ、これにより、表示部16をX軸及びY軸を含む平面(X−Y平面)に沿って移動させことができる。鉛直軸回転運動生成部313(第1回転運動生成部)は、X軸及びY軸を含む平面に沿った方向に表示部16を回転させ、水平軸回転運動生成部314(第2回転運動生成部)は、X軸及びY軸を含む平面に対して回転させ、それによって表示部16をこの平面に対して傾斜させる。また、本形態の運動生成部31は、例えば、表示部16の閲覧面162(表示面)に沿った方向(例えば、閲覧面162と略平行な方向)がX軸に沿った方向となったとき、閲覧面162又は閲覧面162の背面161がY軸に沿った方向を向く(例えば、Y軸と略垂直となる)ように構成される。これらの例は、それぞれ、第1,2実施形態で説明したX軸直線運動生成部11、Y軸直線運動生成部12、鉛直軸回転運動生成部13,23、及び水平軸回転運動生成部14,24であるが、その他の構成であってもよい。
本実施形態の表示部16は、図1および図2に例示したものであり、背面161側からプロジェクタ34によって映像が投影される平面を備えた板状のスクリーンである。このスクリーンはプロジェクタスクリーンであり、透過性の高い素材に光線拡散のための成分が配合、または、添付されたものである。素材にはアクリル、ポリカーボネイトなどのプラスティック、ガラス、紙などが利用できる。
図6に例示するように、プロジェクタ34は表示部16の背面161側に設置される。プロジェクタ34は、例えば、床面上に設置されるがこれに限定されず、X軸およびY軸を含む平面に対し、プロジェクタ34の相対位置が固定されていればよい。プロジェクタ34の光線はA方向から表示部16の背面161に投影される。一方、閲覧者は表示部16の閲覧面162側から表示部16に映し出された映像をB方向から閲覧する。
映像生成部33は、記録媒体331、映像配信部332、及び映像変形部333を含み、プロジェクタ34から投影する映像を生成する。本形態の映像表示システム3において、プロジェクタ34に対する表示部16(スクリーン)の位置・姿勢は固定でなく、時々刻々と変化しうる。映像生成部33は、そうした変化に依らずに、常に映像を歪み無く、表示部16のスクリーン平面上に映し出すために、プロジェクタ34より投影する映像を変形させる。
記録媒体331には映像データが格納されている。この映像データはリアルタイムに格納されたものであってもよいし、過去に格納されたものであってもよい。映像配信部332は、カメラなどにより撮影され、送信された映像データを出力する。映像変形部333は、記録媒体331から読み出した映像データ(入力映像)、または、映像配信部332から出力された映像データ(入力映像)を入力とし、X軸直線運動生成部311、Y軸直線運動生成部312、鉛直軸回転運動生成部313、及び、水平軸回転運動生成部314によりもたらされる、表示部16の位置と姿勢(プロジェクタ34に対する相対的な位置と姿勢)に応じて入力映像を変形した出力映像を得る。この出力映像はプロジェクタ34に出力され、プロジェクタ34はこの出力映像を投影し、表示部16はこの出力映像が投影されることで投影映像を映し出す。
表示部16の位置と姿勢は、X軸直線運動生成部311によりもたらされる表示部16のX軸に沿った方向成分の変位(例えば、リニアステージ112の変位)を計測するX軸方向変位計測部321、Y軸直線運動生成部312によりもたらされる表示部16のY軸に沿った方向成分の変位(例えば、リニアステージ122の変位)を計測するY軸方向変位計測部322、鉛直軸回転運動生成部313によりもたらされるX軸及びY軸を含む平面に沿った方向の表示部16のパン回転角(例えば、回転ステージ132または232の回転角)を計測する鉛直軸回転角計測部323、水平軸回転運動生成部314によりもたらされるX軸及びY軸を含む平面に対する表示部16のチルト回転角(例えば、ゴニオステージ142又は回転軸242の回転角)を計測する水平軸回転角計測部324により得られ、映像変形部333へと入力される。これらの計測部321〜324は、それぞれ計測の対象となる機構に内蔵されていてもよいし、それらの機構の外部に存在していてもよい。
映像変形部333は、プロジェクタ34と表示部16との位置関係、並びに、X軸直線運動生成部311、Y軸直線運動生成部312、鉛直軸回転運動生成部313、及び、水平軸回転運動生成部314によって制御される表示部16の位置と姿勢に応じて、入力映像の写像(マッピング)を行い、出力映像を得る。この写像(マッピング)は、入力映像の座標値と出力映像の座標値との間の関係性を記述した数式に基づいて行われる。すなわち、映像変形部333は、出力映像の各画素について、対応する入力映像の座標値を計算し、その座標値から輝度値を取得し、出力映像の画素の輝度値に設定する操作を行う。これにより、映像変形部333は、入力映像に対し、プロジェクタ34に対する表示部16の位置及び姿勢に応じた投影映像の歪みを補正するための変形を行い、出力映像を得る。
入力映像は、表示部16であるスクリーン上の2次元座標系であるスクリーン座標系の映像に対応し、スクリーン座標系の映像そのものであってもよいし、さらにそのマッピングであってもよい。出力映像は、映像平面上の2次元座標系である映像座標系の映像に対応し、映像座標系の映像そのものであってもよいし、さらにそのマッピングであってもよい。なお、「映像平面」は、プロジェクタ34の投影方向の中心軸(光線の中心軸)に略直交し、かつ、プロジェクタ34の光線の中心軸に対して位置が固定された面(例えば、プロジェクタ34の光学中心に対する位置が固定された面)である。プロジェクタ34の光学中心と映像平面との距離は、プロジェクタ34の焦点距離またはその近傍である。
以下にこのマッピングの計算式を導出する。明瞭性の観点から関連する複数のマッピングに分解して記述するが、実際のマッピングをこれらの複数のマッピングに分解して行う必要はない。以下では、入力映像がスクリーン座標系の映像そのものであり、出力映像が映像座標系のマッピングであるウィンドウ座標系の画像である例を説明する。
以下で説明する複数のマッピングは、(1)上述のスクリーン座標系の座標(点)qからアクチュエータ座標系の座標pPTUへのマッピング、(2)アクチュエータ座標系の座標pPTUからプロジェクタ座標系(映像投影部座標系)の座標PProjへのマッピング、(3)プロジェクタ座標系の座標PProjから映像座標系の座標pImgへのマッピング、(4)上述の映像座標系の座標pImgからウィンドウ座標系の座標wへのマッピングから構成される。
q→pPTU→pProj→pImg→w
ただし、「アクチュエータ座標系」とは、前述したX軸及びY軸(及びZ軸)を基準とした3次元座標系のことである。「プロジェクタ座標系」とは、プロジェクタ34の光学中心を基準とした3次元座標を表す座標系のことである。「ウィンドウ座標系」とは、出力映像を生成する計算機上のフレームバッファ(あるいはウィンドウシステムを採用するOS上における画像表示窓)の座標系のことである。
図7に、これら座標系の関係性を図示する。
スクリーン座標系の座標q=[wq,hq]Tからアクチュエータ座標系の座標pPTU=[xPTU,yPTU,zPTU]Tへのマッピングは、以下のように記述できる。
[xPTU,yPTU,zPTU]T=Rθ・Rφ・[wq+Δx+ΔxPTU,Δy+ΔyPTU,hq+Δz]T
ただし、αTはαの転置であり、wqは表示部16の表示面である二次元平面を直交座標系で表現したときの水平方向の位置座標、hqは垂直方向の位置座標である。RθはZ軸(第1軸および第2軸を含む平面に略直行する軸)を中心とした回転角θのパン回転を表す3×3の回転行列であり、Rφが第X軸を中心とした回転角φのチルト回転を表す3×3の回転行列である。Δx,Δy,Δzが定数であり、アクチュエータ座標系の原点からスクリーン座標系の原点への並進成分を表す。ΔxPTUはX軸に沿った方向の表示部16の移動量を表し、ΔyPTUはY軸に沿った方向の表示部16の移動量を表す。
アクチュエータ座標系の座標p
PTU=[x
PTU,y
PTU,z
PTU]
Tからプロジェクタ座標系の座標p
Proj=[x
proj,y
proj,z
proj]
Tへのマッピングは、回転と並進からなる以下の線形変換となる。
ただし、{r
i,j|i=1,2,3,j=1,2,3}は回転を表す係数(定数)を表し、t
X,t
Y,t
Zは並進を表す係数(定数)を表す。これら係数はキャリブレーションにより決定される。
プロジェクタ34からの投影が透視投影であることを前提として、プロジェクタ座標系の座標pProj=[xproj,yproj,zproj]Tから映像座標系の座標pImg=[ximg,yimg]Tへのマッピングは、以下のように記述できる。
[ximg,yimg]T=(f/zproj)[xproj,yproj]T
ただし、fは定数であり、プロジェクタ34の焦点距離である。
映像座標系の座標pImg=[ximg,yimg]Tからウィンドウ座標系の座標w=[xw,yw]Tへのマッピングは、以下のように記述できる。
[xw,yw]T=[ximg+cx,−yimg+cy]T
ただし、(cx,cy)はウィンドウ座標系原点から映像座標系の映像中心への並進ベクトルを表す。これは典型的なプロジェクタの光学系がシフトレンズを採用していることに対応する。
以上より、入力映像をなすスクリーン座標系の各座標q=[wq,hq]Tを、出力映像をなすウィンドウ座標系の各座標w=[xw,yw]Tにマッピングでき、入力映像から出力映像への変形を行うことができる。
〔第3実施形態の変形例1〕
上述した運動生成部31に加え、第1,2実施形態の変形例1で説明したような表示部16の高さを変化させるZ軸直線運動生成部を備えてもよい。この場合には、スクリーン座標系の座標q=[wq,hq]Tからアクチュエータ座標系の座標pPTU=[xPTU,yPTU,zPTU]Tへのマッピングは、以下のように記述できる。
[xPTU,yPTU,zPTU]T=Rθ・Rφ・[wq+Δx+ΔxPTU,Δy+ΔyPTU,hq+Δz+ΔzPTU]T
ただし、ΔzPTUはZ軸に沿った方向の表示部16の移動量を表す。
〔第3実施形態の変形例2〕
第1,2実施形態の変形例2で説明したように、剛体の表示部16を用い、その表示部16に音響振動を与えるための超磁歪アクチュエータを取り付けてもよい。
〔第4実施形態〕
第4実施形態は第3実施形態またはその変形例1,2の変形例であり、表示部16での表示対象となる物体(人物等)の動作に基づいて表示部16の制御、及び、入力映像から出力映像へのマッピングを行う。
図8に例示するように、本実施形態の映像表示システム4は、運動生成部41、制御信号生成部42、映像生成部43、プロジェクタ34、及び表示部16を有する。
運動生成部41は、X軸直線運動生成部411(第1直線運動生成部)、Y軸直線運動生成部412(第2直線運動生成部)、鉛直軸回転運動生成部413(第1回転運動生成部)、及び水平軸回転運動生成部414(第2回転運動生成部)を含む。X軸直線運動生成部411(第1直線運動生成部)はX軸(第1軸)に沿った方向に表示部16を移動させ、Y軸直線運動生成部412(第2直線運動生成部)はY軸(第2軸)に沿った方向に表示部16を移動させ、鉛直軸回転運動生成部413(第1回転運動生成部)は、X軸及びY軸を含む平面に沿った方向に表示部16を回転させ、水平軸回転運動生成部414(第2回転運動生成部)は、X軸及びY軸を含む平面に対して表示部16を傾斜させる。運動生成部41が第3実施形態の運動生成部31と相違するのは、X軸直線運動生成部411、Y軸直線運動生成部412、鉛直軸回転運動生成部413、及び水平軸回転運動生成部414が、制御信号生成部42から出力される制御信号に基づいて駆動する点のみである。
映像生成部43は、記録媒体331、映像配信部332、及び映像変形部433を含む。映像変形部433は、制御信号生成部42から出力される制御信号から特定される表示部16の位置・姿勢に基づいて、入力映像から出力映像へのマッピングを行う。制御信号に基づいて表示部16の位置・姿勢を特定する以外は、第3実施形態の映像変形部333と同じである。
制御信号生成部42は、X軸直線運動生成部411、Y軸直線運動生成部412、鉛直軸回転運動生成部413、及び水平軸回転運動生成部414の各々を制御するための制御信号を生成する。図9に制御信号生成部42の詳細構成を例示する。図9に例示するように、制御信号生成部42は、表示部16での表示対象となる物体の位置と姿勢を表すデータを得る位置・姿勢計測部421、位置・姿勢計測部421により得られたデータを入力として、表示対象となる物体の床平面上の位置・姿勢を計算する位置計算部422、位置計算部422により得られた情報からX軸直線運動生成部411及びY軸直線運動生成部412の各々を制御するための制御信号を生成し、それをX軸直線運動生成部411及びY軸直線運動生成部412に出力する位置制御信号生成部423、及び、位置計算部422により得られた情報から鉛直軸回転運動生成部413及び水平軸回転運動生成部414の各々を制御するための制御信号を生成し、それを鉛直軸回転運動生成部413及び水平軸回転運動生成部414に出力する姿勢制御信号生成部424を有する。
位置・姿勢計測部421は、表示対象となる物体の位置と姿勢を表すデータ(以下「位置・姿勢データ」)を得るセンサ等からなるシステムであり、その一例は磁気式センサーシステムである。磁気式システムは、磁気を発生させる発信器と、表示対象となる物体(例えば、人物の頭部等)に装着され、発信器により生成された磁界の強度を計測する受信器とを含む。発信器は、図1のX軸及びY軸を含む平面(例えば床面)を基準としたデカルト座標系の直交3軸のそれぞれに沿ってコイルを配置し、それぞれのコイルから一定強度の交流磁界を発生させる。センサである受信器は、表示対象となる物体を基準としたデカルト座標系の直交3軸のそれぞれにコイルを配置し、それぞれのコイルにおいて磁界強度を計測する。各軸のコイルにより計測された磁界の強度、及び、その強度の差により、発信器に対する受信器の3次元相対座標、及び、発信器に対する受信器の直交3軸周りの回転角度が算出される。受信器は、表示対象となる物体の表面や内部に固定される。例えば、表示対象となる物体が人物である場合、受信器はヘアバンドなどによりこの人物の頭部や他の身体部位に固定される。また、位置・姿勢計測部421の他の例として、カメラにより撮影された物体の画像を入力とし、その画像上の物体の位置、及び、姿勢を視覚的に特定して位置・姿勢データを得るシステムを用いることもできる。位置・姿勢計測部421のさらに別の例として、表示対象となる物体の位置・姿勢データが記録されている記憶媒体と、その記憶媒体から逐次読み出した位置・姿勢データを出力するシステムを用いることができる。
位置計算部422は、位置・姿勢計測部421で得られた表示対象となる物体の位置・姿勢データを入力として、図1のX軸及びY軸を含む平面上の位置(例えば、床面上の位置)を計算する。例えば、位置・姿勢計測部421として前述の磁気式センサーシステムを利用し、表示対象となる物体の表面や内部に固定された受信器の3次元座標(図1のX軸及びY軸を含む平面(例えば床面)を基準とした3次元座標)、及び、その3次元座標での3自由度の回転角を、表示対象となる物体の位置・姿勢データとして計測する場合、受信器の位置と表示対象となる物体の回転中心とは必ずしも一致しない。そのため、この位置・姿勢データから得られたX座標値及びY座標値そのものを、X軸直線運動生成部411及びY軸直線運動生成部412の制御に用いたのでは、生成される運動に不自然さが生じる。例えば、表示対象となる物体が人物の頭部である場合、実際にはその人物が首振りのみを行ったにもかかわらず、同時に胴体も移動するような運動が表示部16に与えられ、実際の頭部の首振り運動とは異なる運動が提示されることになる。このような問題を回避するため、位置計算部422は、位置・姿勢計測部421で得られた位置・姿勢データを入力とし、概ね表示対象となる物体の回転中心の位置に相当するX座標値、及び、Y座標値を計算により求める。なお,表示対象となる物体が人物の場合、厳密に言うと、首振りや頷きによる頭部の回転には、複数の頸椎、及び、それらの関節が関わるため、その回転中心は体幹に対して不変とは言えない。しかしながら、本実施形態では、表示対象となる物体の回転を固定された一点を中心とする回転と仮定する。その上で、受信器の位置が表示対象となる物体表面の一点に固定され、受信器と回転中心との相対位置関係は、この物体の回転に依らず一定であると仮定する。位置・姿勢データとして、図1のX軸,Y軸,Z軸を基準とした受信器の3次元座標位置(x,y,z)、及び、姿勢(回転角度)(θ,φ,ρ)が得られているとする。ただし、θ,φ,ρは、それぞれ、受信器の方位角、仰角、横転角を表す。すると、表示対象となる物体の回転中心の3次元座標位置(X,Y,Z)(図1のX軸,Y軸,Z軸を基準とした3次元座標位置)を以下のように表記することができる。
X=x+R×cos(φ+Φ)×sin(θ+Θ) (1)
Y=y−R×cos(φ+Φ)×cos(θ+Θ) (2)
Z=z+R×sin(φ+Φ) (3)
ただし、Rは受信器と表示対象となる物体の回転中心との距離を表し、(Θ,Φ)は回転中心座標(X,Y,Z)に対する受信器の相対回転角(球極座標表示における方位角と天頂角)を表す。ここで受信器と回転中心座標(X,Y,Z)との位置関係を表す3つのパラメータR,Θ,Φは未知であり、表示対象となる物体の形状や受信器の装着の具合により様々であって、厳密な測定も困難である。ここでは、簡易的にこれらのパラメータR,Θ,Φをキャリブレーションにより計算する。例えば、表示対象となる物体が人物である場合、その人物が体幹を固定した状態で首振りを行う時の以下のような位置・姿勢データの時系列を用い、この計算を行う。
{(x
t,y
t,z
t,θ
t,φ
t,ρ
t)|t=1,・・・,T}
ただし、添え字のtは時刻を表すインデックスであり、Tは正の整数定数である。また、(x
t,y
t,z
t)はtの時刻での3次元座標位置(x,y,z)を表し、(θ
t,φ
t,ρ
t)は、tの時刻での姿勢(θ,φ,ρ)を表す。このときの頭部の運動に対し、x=x
t,y=y
t,z=z
t,θ=θ
t,φ=φ
tとして式(1)〜(3)で計算される回転中心座標の時系列(X
t,Y
t,Z
t)が、或る範囲に留まる傾向があると仮定する。この仮定のもと、位置・姿勢データの時系列に対する回転中心座標の時系列(X
t,Y
t,Z
t)の分散(式(4))が最小になるパラメータR,Θ,Φを最適化により計算する。
なお、表示対象となる物体が人物以外の場合でも、同様の手順によりパラメータR,Θ,Φを求めることが可能である。
位置計算部422は、予め上記の計算によってパラメータR,Θ,Φを計算しておき、そのメモリに保持しておく。その後、位置計算部422は、逐次、位置・姿勢計測部421から入力される位置・姿勢データに対し、式(1)〜(3)を用いて回転中心座標(X,Y,Z)を計算し、位置制御信号生成部423へ出力する。ただし、本実施形態ではZ軸方向の直線運動を制御しないため、(X,Y)のみが位置制御信号生成部423へ出力されてもよいし、式(3)が計算されなくてもよい。また本実施形態では、(X,Y,Z)または(X,Y)が制御信号として映像変形部433へ出力される。さらに、逐次、式(1)〜(3)で得られる値からノイズを除去するために、時間平均フィルタやウェーブレットフィルタなどを用いたスムージングやノイズ除去処理が行われ、(X,Y,Z)または(X,Y)が得られてもよい。
なお、受信器の回転中心が表示対象となる物体の実際の回転中心と一致、又は、その近傍となる場合、位置計算部422の処理を省くことができる。この場合、位置・姿勢計測部421で得られた位置・姿勢データを直接、位置制御信号生成部423に入力してもよい。
位置制御信号生成部423は、位置計算部422から出力されたX,Yを入力とし、表示部16の並進運動(床面に略水平な面上の運動、閲覧者からみて略前後左右の運動)を生成するためのX軸直線運動生成部411及びY軸直線運動生成部412を制御する制御信号を生成して出力する。なお、位置・姿勢計測部421で得られた位置・姿勢データが直接入力される場合には、位置計算部422から出力されたX,Yに代えて、その位置・姿勢データが表す図1のX軸に沿った座標値X及Y軸に沿った座標値Yが用いられる。以下では、位置計算部422から出力されたX,Yが位置制御信号生成部423に入力される例のみを説明する。
まず、X軸直線運動生成部411を制御するための制御信号の生成について述べる。なお、本実施形態では、X軸直線運動生成部411のアクチュエータの制御が速度コマンドによりなされる。位置制御信号生成部423には、位置計算部422により計算された対象の回転中心位置のX座標値であるXの時系列が入力される。まず、位置・姿勢計測部421でのデータのサンプリング間隔と制御の時間間隔との差がある場合、位置制御信号生成部423は、その差を補正するためのダウンサンプリングまたはアップサンプリングを行う。また、X軸直線運動生成部411の可動範囲には限りがあるため、その範囲を超える位置への移動が行われないように、位置制御信号生成部423は、位置制御信号生成部423に入力される座標値Xに対してクリッピング処理を行う。さらに、X軸直線運動生成部411による可動範囲の中央位置がX座標値0となるように、位置制御信号生成部423は、入力された座標値Xのシフト演算を行う。その後、位置制御信号生成部423は、一定の定数を用いて可動範囲の中央位置を基点とする振れ幅をスケーリングしてもよい。位置制御信号生成部423は、このような処理が施された座標値X’の時系列の時間差分(或いは時間微分)から、各時刻のX軸に沿った速度成分を得る。位置制御信号生成部423は、この速度成分を速度コマンドとしてX軸直線運動生成部411に出力する。
なお、位置制御信号生成部423は、上記の速度成分に含まれるノイズ成分を除去した速度成分を速度コマンドとしてX軸直線運動生成部411へ出力してもよい。例えば、位置制御信号生成部423は、座標値X’の時系列の時間差分等によって得られる速度成分の局所的極大値(「ピーク値」と呼ぶ)を検出し、その時刻(「ピーク時刻」と呼ぶ)の前後において速度成分がゼロになる(又はゼロに接近する)時刻(「ゼロ時刻」と呼ぶ)を探索する。位置制御信号生成部423は、1個のピーク時刻を含み2個のゼロ時刻で挟まれた区間(「ピーク区間」と呼ぶ)において、立ち上がり時の速度成分が一定値以上となり、かつ、最大の速度成分が既定値を超えないように速度成分を加工する。なお、立ち上がり時の速度成分を一定値以上にするためには、例えば、ピーク区間での速度成分に定数や変数を加算したり乗算したりすればよい。最大の速度成分が既定値を超えないようにするためには、例えば、既定値を超える速度成分を既定値以下に減じればよい。また、位置制御信号生成部423は、ピーク区間に挟まれた時間区間での速度成分を0にする。さらに、位置制御信号生成部423は、ピーク区間での立ち上がり時の速度成分を一定値以上にしたり(加工1)、ピーク区間に挟まれた時間区間での速度成分を0にしたり(加工2)することによって生じる移動量の誤差を次のピーク区間で相殺し、全体として移動量を保存するために、ピーク区間での速度成分を調整する。例えば、ピーク区間P0での加工1や、ピーク区間P0とその次のピーク区間P1とで挟まれた時間区間での加工2によって得られた速度成分の時間積分値をxAとし、それらの時間区間での加工1,2前の速度成分の時間積分値をxBとしたとき、xAがxBに近づくように、ピーク区間P0もしくはP1での速度成分を調整する。例えば、位置制御信号生成部423は、ピーク区間P0での速度成分をK=xB/xA倍することで速度成分を調整する。このように得られた速度成分は、ノイズや微小振動が抑制され、かつ、X軸直線運動生成部411の最高速度を超える速度成分に対して制約が課されたものとなる。
次に、Y軸直線運動生成部412を制御するための制御信号の生成について述べる。この制御信号の生成は、XがYに置換される以外、X軸直線運動生成部411を制御するための制御信号の生成と同じである。位置制御信号生成部423は、このように得られた速度成分を速度コマンドとしてY軸直線運動生成部412に出力する。
姿勢制御信号生成部424は、位置・姿勢計測部421で得られた位置・姿勢データのうち、姿勢(θ,φ,ρ)を表す姿勢データを入力とし、略Z軸周り(例えば、略鉛直軸周り)のパン回転角、略X軸周り(例えば、床面に略平行な軸周り)のチルト回転角、及び、それらの各速度を計算し、その結果を制御信号として、鉛直軸回転運動生成部413、水平軸回転運動生成部、及び映像変形部433へ出力する。なお、表示対象となる物体が人物の頭部である場合、前者の動きは、首振り方向に相当し、後者の動きは頷き方向に相当する。
姿勢制御信号生成部424は、位置・姿勢計測部421で取得された姿勢データのうち、方位角θ及び仰角φの2つの回転角のみを用いて制御信号を生成する。ここでは、表示対象となる物体が正面を向く場合にθ=0及び仰角φ=0となることを仮定する。そのため、まず姿勢制御信号生成部424は、位置・姿勢計測部421で取得された方位角θ及び仰角φを、表示対象となる物体が正面を向く場合にθ=0及び仰角φ=0となるように補正する。姿勢制御信号生成部424は、鉛直軸回転運動生成部413及び水平軸回転運動生成部414を構成するアクチュエータの物理的・機械的特性や、姿勢制御信号生成部424で得られた姿勢データのノイズの特性などを考慮し、さらに方位角θ及び仰角φに変形操作を加えて上記の制御信号を生成する。
まず、パン回転角を制御する制御信号の生成について述べる。本実施形態でのパン回転角の制御は、速度コマンドによりなされる。まず、位置・姿勢計測部421での方位角θのサンプリング間隔と制御の時間間隔との差がある場合、姿勢制御信号生成部424は、その差を補正するためのダウンサンプリングまたはアップサンプリングを行う。その後、姿勢制御信号生成部424は、一定の定数(例えば0.4)を乗じることで方位角θの可動幅をスケーリングする。このスケーリングは、閲覧者が好適に映像を閲覧できる範囲に表示部16の可動角度の範囲を制限するために行われる。姿勢制御信号生成部424は、このような処理が施された方位角θ’の時系列の時間差分(或いは時間微分)から、各時刻の方位角の角速度成分を得る。姿勢制御信号生成部424は、この方位角の角速度成分を速度コマンドとして鉛直軸回転運動生成部413に出力する。
なお、姿勢制御信号生成部424は、上記の方位角の角速度成分に含まれるノイズ成分を除去した方位角の角速度成分を速度コマンドとして鉛直軸回転運動生成部413へ出力してもよい。例えば、姿勢制御信号生成部424は、方位角θ’の時系列の時間差分等によって得られる方位角の角速度成分の局所的極大値(「ピーク値」と呼ぶ)を検出し、その時刻(「ピーク時刻」と呼ぶ)の前後において方位角の角速度成分がゼロになる(又はゼロに接近する)時刻(「ゼロ時刻」と呼ぶ)を探索する。姿勢制御信号生成部424は、1個のピーク時刻を含み2個のゼロ時刻で挟まれた区間(「ピーク区間」と呼ぶ)において、立ち上がり時の角速度成分が一定値以上となり、かつ、最大の角速度成分が既定値を超えないように方位角の角速度成分を加工する。また、姿勢制御信号生成部424は、ピーク区間に挟まれた時間区間での方位角の角速度成分を0にする。さらに、姿勢制御信号生成部424は、ピーク区間での立ち上がり時の角速度成分を一定値以上にしたり、ピーク区間に挟まれた時間区間での角速度成分を0にしたりすることによって生じる回転量の誤差を一つ前のピーク区間で相殺し、全体として回転量を保存するために、ピーク区間での角速度成分を調整する。このように得られた角速度成分は、ノイズや微小振動が抑制され、かつ、鉛直軸回転運動生成部413の最高角速度を超える角速度成分に対して制約が課されたものとなる。
次に、チルト回転角を制御する制御信号の生成について述べる。本実施形態でのチルト回転角の制御も、速度コマンドによりなされる。チルト回転角を制御する制御信号の生成は、方位角θが仰角φに置換される以外、パン回転角を制御する制御信号の生成と同様でよい。ただし、チルト回転角を制御に独自なものとして、チルト運動がない時刻において、常に表示部16の閲覧面162が略Z軸(略鉛直軸)に沿った角度(例えば、Z軸に対して0°)に配置されるように仰角の角速度成分を制御してもよい。例えば、姿勢制御信号生成部424は、一連の運動を行う時間区間における、正負の仰角の総和(角度変化量)が等しくなるように正負それぞれの仰角の角速度成分に個別の係数を乗じたものを、速度コマンドとしてもよい。生成された速度コマンドは水平軸回転運動生成部414へ出力される。
〔第4実施形態の変形例1〕
上述した運動生成部41に加え、第1,2実施形態の変形例1で説明したような表示部16の高さを変化させるZ軸直線運動生成部を備えてもよい。この場合には、位置計算部422で回転中心座標(X,Y,Z)を計算し、位置制御信号生成部423でX軸直線運動生成部411、Y軸直線運動生成部412、及びZ軸直線運動生成部を制御する制御信号を生成して出力する。X軸直線運動生成部411、Y軸直線運動生成部412、及びZ軸直線運動生成部は、これらの制御信号に基づいて可動する。なお、位置・姿勢計測部421で得られた位置・姿勢データが直接入力される場合には、位置・姿勢データに基づいてこれらの制御信号が生成される。
〔第4実施形態の変形例2〕
第1,2実施形態の変形例2で説明したように、剛体の表示部16を用い、その表示部16に音響振動を与えるための超磁歪アクチュエータを取り付けてもよい。
〔実装例〕
上述の実施形態の技術をTV会議装置に応用した例を説明する。この例の表示部16には遠隔地点で撮影された人物の上半身が表示される。図10A〜10Cは、3つの場面における表示部16の位置・姿勢の変化をそれぞれ2つの時刻tの映像を切り出して並べたものである。
図10Aは、人物が対面にいる人物に対して問いかけを行う場面である。身を乗り出して強い意志を表しつつ他者へ問いかけを行っているが、そのような前進及び前傾姿勢が、表示部16の物理運動(運動F,G)として表現されている。特許文献1の従来技術では、このような表示部16の並進運動Gは実現できず、結果、このような人物の姿勢変化や行動及びその背後の心的状態が見る者には伝わりにくい。
図10Bは、人物が他者の発話に対して深い頷きを行っている場面である。深い頷きは発話する人物への注意や傾聴、同意を示すサインとして現れており、これらが、表示部16の前進(運動J1,J2)及び頷き方向の回転(運動H)として表現されている。特許文献1の従来技術では、単にスクリーンの回転角のみによって動作を表現しおり、身体の前後の動きが表現されないため、その効果は限定的であった。それに対して、本実施形態の技術では、単に頭部の回転のみならず身体全体の動きも表示部16の運動として表現されるため、人物のより深い理解や共感など幅広い感情や態度の表現が可能となった。
図10Cは、或る人物が他者の発言に対して、笑いつつ、身を仰け反った反応を返している場面である。驚きや喜びなどの感情が全身の動きを伴い表現されているが、本実施形態の技術では、表示部16の合計4自由度の並進回転運動により人物の身体動作をよりリアルに表現することができる(運動K,L等)。一方、前の二例と同様に、従来技術では、このような複合的な動作を表現することができない。
〔その他の変形例等〕
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、第1軸と第2軸とが垂直でなくてもよいし、第1軸や第2軸が床面と略水平でなくてもよい。また、第4実施形態において位置制御信号生成部423や姿勢制御信号生成部424で得られた制御信号が映像変形部433に入力され、映像変形部433での処理に用いられてもよい。また、第4実施形態において、プロジェクタ34を用いることなく、映像を表示する表示部16が用いられてもよい。この場合には、映像変形部433は不要である。また、平面運動生成部が、第1直線運動生成部と第2直線運動生成部とから構成されるのではなく、単一の機構であってもよい。
上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
上述の映像変形部の構成をコンピュータによって実現する場合、それが有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例は、非一時的な(non-transitory)記録媒体である。このような記録媒体の例は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等である。