図1は、本発明の第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を示す図である。インクジェットプリンタ1は、複数の記録媒体9に対してインクジェット方式にて順次カラー印刷を行う(すなわち、カラーにて画像記録を行う)枚葉式の画像記録装置である。図1に示す例では、記録媒体9として印刷用紙が利用され、印刷用紙上にカラーにて画像が記録される。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、移動機構2と、印刷ヘッド3と、供給部51と、排出部52と、制御部4と、コンピュータ6とを備える。移動機構2は、複数の記録媒体9を予め定められた走査方向(すなわち、図1中の(+Y)方向)に移動する。印刷ヘッド3は、移動機構2による搬送途上の記録媒体9に向けてインクの微小液滴を吐出して定着させる。供給部51は、移動機構2に記録媒体9を供給する。排出部52は、印刷終了後の記録媒体9を移動機構2から受け取る。制御部4は、移動機構2、印刷ヘッド3、供給部51および排出部52等の機構を制御する。コンピュータ6は、制御部4に接続される。
移動機構2は、複数のステージ21と、ガイド22と、ベルト駆動機構(図示省略)とを備える。複数のステージ21はそれぞれ、1枚のシート状の記録媒体9を吸着保持する。ガイド22は、環状の部材であり、複数のステージ21を案内する。ベルト駆動機構は、ガイド22内のベルトを図1中における反時計回りに移動させることにより、記録媒体9を保持するステージ21を印刷ヘッド3の下方(すなわち、(−Z)側)において(+Y)方向に移動する。
印刷ヘッド3は、それぞれが複数の吐出口から記録媒体9に向けてインクの微小液滴を吐出する4つの吐出機構31a〜31dを備える。吐出機構31a〜31dは図1中のY方向に配列され、それぞれ異なる色のインクを吐出する。印刷ヘッド3において、図1中の最も(−Y)側に位置する吐出機構31aは、K(ブラック)の有色インクを吐出する。吐出機構31aの(+Y)側の吐出機構31bは、C(シアン)の有色インクを吐出する。吐出機構31bの(+Y)側の吐出機構31cは、M(マゼンタ)の有色インクを吐出する。吐出機構31cの(+Y)側の吐出機構31dは、Y(イエロー)の有色インクを吐出する。なお、印刷ヘッド3では、他の色のインクを吐出する吐出機構が設けられてもよい。
印刷ヘッド3では、吐出機構31dの(+Y)側にヒータ35が設けられる。ヒータ35の走査方向における位置は、吐出機構31a〜31dに対して相対的に固定されている。吐出機構31a〜31dから記録媒体9上に付与されたインクのドットは、ヒータ35により加熱されることにより記録媒体9に定着する。すなわち、ヒータ35は、記録媒体9上のインクを記録媒体9に定着させる定着処理部である。
インクジェットプリンタ1では、走査方向(Y方向)に垂直な幅方向(X方向)に関して、印刷ヘッド3の吐出機構31a〜31dおよびヒータ35が記録媒体9の全幅に亘って(すなわち、X方向の全長に亘って)設けられる。インクジェットプリンタ1では、記録媒体9を印刷ヘッド3に対して走査方向に相対的に移動し、印刷ヘッド3に対向する位置を1回のみ通過させることにより、記録媒体9に対する印刷が完了する。すなわち、インクジェットプリンタ1では、記録媒体9のX方向における相対的な往復移動を伴わない印刷(いわゆる、シングルパス印刷)が行われる。
図2は、印刷ヘッド3の底面の一部を示す図である。吐出機構31aは、幅方向に沿って千鳥状に配置される複数の第1ヘッド311aおよび複数の第2ヘッド312aを備える。第1ヘッド311aには、幅方向に沿って所定の配列ピッチにて配列された複数の第1吐出口317aが設けられる。第2ヘッド312aには、幅方向に沿って上記配列ピッチにて配列された複数の第2吐出口318aが設けられる。第1ヘッド311aおよび第2ヘッド312aに設けられる吐出口の個数は、実際には、図2に示すものよりも多い。また、第1ヘッド311aおよび第2ヘッド312aでは、複数の吐出口が幅方向に沿って千鳥状に(すなわち、各ヘッド内の(+Y)側と(−Y)側とに交互に)配列されてもよい。後述する他のヘッドにおいても同様である。
第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとは、幅方向において隣接するとともに走査方向において異なる位置に配置される。複数の第1ヘッド311aは、走査方向において同じ位置に配置される。複数の第2ヘッド312aも、走査方向において同じ位置に配置される。複数の第1ヘッド311aは、複数の第2ヘッド312aよりも(−Y)側、すなわち、記録媒体9に対する印刷が進行する方向の前側(以下、「上流側」ともいう。)に位置する。各第1ヘッド311aの複数の第1吐出口317aも、各第2ヘッド312aの複数の第2吐出口318aよりも(−Y)側に位置する。したがって、複数の第1吐出口317aとヒータ35との間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318aとヒータ35との間の走査方向の距離よりも長い。
吐出機構31b〜31dは、吐出機構31aと同様の構造を有する。吐出機構31b〜31dは、幅方向に沿って千鳥状に配置される複数の第1ヘッド311b〜311dおよび複数の第2ヘッド312b〜312dを備える。第1ヘッド311b〜311dには、幅方向に沿って上記配列ピッチにて配列された複数の第1吐出口317b〜317dが設けられる。複数の第1吐出口317b〜317dは、走査方向において、上述の複数の第1吐出口317aに対向する。第2ヘッド312b〜312dには、幅方向に沿って上記配列ピッチにて配列された複数の第2吐出口318b〜318dが設けられる。複数の第2吐出口318b〜318dは、走査方向において、上述の複数の第2吐出口318aに対向する。
吐出機構31b〜31dの第1ヘッド311b〜311dと第2ヘッド312b〜312dとはそれぞれ、幅方向において隣接するとともに走査方向において異なる位置に配置される。複数の第1吐出口317b〜317dとヒータ35との間の走査方向の距離はそれぞれ、複数の第2吐出口318b〜318dとヒータ35との間の走査方向の距離よりも長い。
ここで、吐出機構31a、第1ヘッド311a、第2ヘッド312a、複数の第1吐出口317aおよび複数の第2吐出口318aをそれぞれ、第1インクを吐出する前部吐出機構、第1前部ヘッド、第2前部ヘッド、第1前部吐出口群および第2前部吐出口群とする。また、吐出機構31b、第1ヘッド311b、第2ヘッド312b、複数の第1吐出口317bおよび複数の第2吐出口318bをそれぞれ、第1インクとは異なる第2インクを吐出する後部吐出機構、第1後部ヘッド、第2後部ヘッド、第1後部吐出口群および第2後部吐出口群とする。このとき、前部吐出機構の第1前部ヘッドに設けられた第1前部吐出口群とヒータ35との走査方向の距離は、前部吐出機構の第2前部ヘッドに設けられた第2前部吐出口群とヒータ35との走査方向の距離と異なる。また、第1前部吐出口群と後部吐出機構の第1後部ヘッドに設けられた第1後部吐出口群との間の走査方向の距離は、第2前部吐出口群と後部吐出機構の第2後部ヘッドに設けられた第2後部吐出口群との間の走査方向の距離に等しい。
インクジェットプリンタ1では、上述のヒータ35、第1前部吐出口群、第1後部吐出口群、第2前部吐出口群および第2後部吐出口群の位置関係は、吐出機構31aと吐出機構31bとの間のみならず、吐出機構31aと吐出機構31cとの間においても成立する。また、当該位置関係は、吐出機構31aと吐出機構31dとの間、吐出機構31bと吐出機構31cとの間、吐出機構31bと吐出機構31dとの間、および、吐出機構31cと吐出機構31dとの間においても成立する。
図3は、コンピュータ6により実現される機能構成を示すブロック図である。コンピュータ6は、記憶部61および画像データ変換部60を備える。画像データ変換部60は、第1画像変換部62および第2画像変換部63を備える。記憶部61には、インクジェットプリンタ1により印刷される予定の第1画像データ81、第1色変換テーブル851、第2色変換テーブル852、および、閾値マトリクス710が記憶される。第1画像データ81は、R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の3色からなるデータである。閾値マトリクス710は、網点形成用のデータであり、SPM(Screen Pattern Memory)データとも呼ばれる。
次に、図4を参照しつつインクジェットプリンタ1の動作について説明する。インクジェットプリンタ1では、まず、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852が取得され、記憶部61に記憶されることにより準備される(ステップS11)。色変換テーブルが取得される際には、まず、移動機構2により走査方向に移動する記録媒体9に対し、印刷ヘッド3からインクの微小液滴が吐出されてカラーパッチが記録媒体9上に記録される。そして、測色計によりカラーパッチを測色して得られるデータから色変換テーブルが取得される。
このとき、記録媒体9上において第1ヘッド311a〜311dにより記録された第1領域を測色して得られたデータから第1色変換テーブル851が取得される。また、記録媒体9上において第2ヘッド312a〜312dにより記録された第2領域を測色して得られたデータから、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852が取得される。なお、カラーパッチの測色は、インクジェットプリンタ1の外部に設けられた測色計により行われてもよく、インクジェットプリンタ1に測色計が設けられて行われてもよい。
続いて、図3に示す第1画像変換部62により、記憶部61に予め記憶され、画像記録(すなわち、描画)に用いられる第1画像データ81が、インクジェットプリンタ1にて使用されるK,C,M,Yの4色からなる第2画像データに変換される(ステップS12)。第2画像データは、第2画像変換部63に送られる。
第2画像変換部63では、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852を利用しつつ、第2画像データに対する微調整(すなわち、色変換)が行われ、K,C,M,Yの4色からなる第3画像データが生成される(ステップS13)。第2画像変換部63は、画像記録に用いられる画像データが示す色を変換する色変換部である。第2画像データに対する色変換の詳細については後述する。第3画像データは、閾値マトリクス710と共にコンピュータ6から制御部4(図3参照)へと送られる。
制御部4では、第3画像データおよび閾値マトリクス710に基づいて、第3画像データに対応する画像を表現する網点画像の信号(いわゆる描画データであり、以下、「網点画像データ」という。)が生成される(ステップS14)。網点画像データは、第3画像データをK,C,M,Yの各色に分版し、分版された画像データを閾値マトリクスにより網点化することにより生成されたK,C,M,Yの各色の網点画像データを有する。
網点化に際しては(すなわち、網点画像を生成する際には)、図5に示すように第3画像データに対応する画像70を同一の大きさの多数の領域に分割して網点化の単位となる繰り返し領域71が設定される。制御部4のSPMは、一の繰り返し領域71に相当する記憶領域であるマトリクス空間(マトリクス領域)を有し、マトリクス空間の各アドレス(すなわち、繰り返し領域71の各画素に対応するマトリクス空間の座標(画素))に閾値が設定されることにより閾値マトリクス710が生成される。
そして、概念的には画像70の各繰り返し領域71と閾値マトリクス710とを重ね合わせ、繰り返し領域71の各画素の階調レベルと閾値マトリクス710の対応する閾値とが比較されることにより、網点記録媒体である記録媒体9上のその画素の位置に描画を行うか否か(すなわち、インクの液滴を吐出するか否か)が決定される。したがって、仮に画像70の階調レベルが一様である場合は、閾値マトリクス710においてその階調レベルよりも小さな閾値が設定されているアドレスの画素に描画が行われ、巨視的には一様な網点が生成されることとなる。実際には画像70は濃淡(すなわち、様々な階調レベルの部位)を有するため、繰り返し領域71内において画像70の濃淡に応じて網点の状態が変化することとなる。
次に、図1に示す記録媒体9が供給部51からステージ21上に供給されて保持され、制御部4により制御される移動機構2により(+Y)方向に移動する。そして、網点画像データに基づいて、印刷ヘッド3の吐出機構31a〜31dが制御部4により制御されることにより、記録媒体9の移動に同期してK,C,M,Yのインクの微小液滴が吐出されて画像が記録される(ステップS15)。インクジェットプリンタ1では、複数の記録媒体9に対して連続して画像の記録が行われる。なお、ステップS11における第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の取得は、通常、インクジェットプリンタ1の出荷時等に行われる。
次に、上述の第2画像データに対する色変換の詳細について説明する。インクジェットプリンタ1では、第2画像データのうち、第1ヘッド311a〜311dの複数の第1吐出口317a〜317d(図2参照)に対応する画素群の色変換が、第1色変換テーブル851を利用して行われる。また、第2画像データのうち、第2ヘッド312a〜312dの複数の第2吐出口318a〜318d(図2参照)に対応する画素群の色変換が、第2色変換テーブル852を利用して行われる。換言すれば、第1色変換テーブル851は、複数の第1吐出口317a〜317dの色変換に利用され、第2色変換テーブル852は、複数の第2吐出口318a〜318dの色変換に利用される。
上述のように、インクジェットプリンタ1では、複数の第1吐出口317aとヒータ35との間の走査方向の距離が、複数の第2吐出口318aとヒータ35との間の走査方向の距離と異なる。複数の第1吐出口317b〜317d、および、複数の第2吐出口318b〜318dにおいても同様である。このため、仮に、第1吐出口317a〜317dおよび第2吐出口318a〜318dに同一の色変換テーブルを適用したとすると、第1吐出口317a〜317dから記録媒体9上に吐出されたインクと、第2吐出口318aから記録媒体9上に吐出されたインクとの間で発色に差異が生じ、色ムラとして認識されてしまう。
そこで、インクジェットプリンタ1では、上述のように、複数の第1吐出口317a〜317dに対応する画素群の色変換を、第1色変換テーブル851を利用して行い、複数の第2吐出口318a〜318dに対応する画素群の色変換を、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852を利用して行う。これにより、上述の発色の差異の発生を抑制することができ、その結果、記録媒体9に記録された画像における色ムラを抑制することができる。
図6は、吐出機構31aにおいて幅方向に隣接する第1ヘッド311aおよび第2ヘッド312aの端部近傍(すなわち、第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍)を示す底面図である。第1ヘッド311aの複数の第1吐出口317a、および、第2ヘッド312aの複数の第2吐出口318aは、上述の配列ピッチにて幅方向に配列される。また、第1ヘッド311aの最も(−X)側の第1吐出口317aと、第2ヘッド312aの最も(+X)側の第2吐出口318aとの間の幅方向の距離は、上記配列ピッチに等しい。以下、最も(−X)側の第1吐出口317aを他の第1吐出口317aと区別する場合は、「第1端部吐出口317e」という。また、最も(+X)側の第2吐出口318aを他の第2吐出口318aと区別する場合は、「第2端部吐出口318e」という。図6では、第1端部吐出口317eおよび第2端部吐出口318eに、当該符号を付す。
図6では、吐出機構31aの第1ヘッド311aおよび第2ヘッド312aの底面図の下方に、第1ヘッド311aの第1吐出口317aおよび第2ヘッド312aの第2吐出口318aから吐出されたインクの微小液滴により記録媒体9上に形成される複数のドット95を円にて示す。各ドット95は、図中において、その中心の真上に位置する第1吐出口317aまたは第2吐出口318aから吐出されたインクの微小液滴により形成される。図6では、第2吐出口318aからのドット95を、第1吐出口317aからのドット95よりも細い実線にて描く(図7においても同様)。各ドット95の幅方向の幅は、上記配列ピッチよりも大きい。図6に示す例では、各ドット95の幅方向の幅は、配列ピッチの約3倍である。他の吐出機構31b〜31dから吐出されたインクの微小液滴により形成されるドットについても同様である。
各ドット95は、幅方向の両側にそれぞれ隣接するドット95(すなわち、合計2つのドット95)と重なる。例えば、記録媒体9上において第1ヘッド311aの第1端部吐出口317e(すなわち、最も(−X)側の第1吐出口317a)に対応する画素では、第1ヘッド311aの第1端部吐出口317eおよび(−X)側から2番目の第1吐出口317a、並びに、第2ヘッド312aの第2端部吐出口318eから吐出されたインクが重なる。換言すれば、第1端部吐出口317eに対応する画素では、2つの第1吐出口317aからのインクと、1つの第2吐出口318aからのインクとが重なる。
第1ヘッド311aの(−X)側から2番目の第1吐出口317aに対応する画素では、第1端部吐出口317e、(−X)側から2番目の第1吐出口317a、および、(−X)側から3番目の第1吐出口317aから吐出されたインクが重なる。換言すれば、(−X)側から2番目の第1吐出口317aに対応する画素では、第1ヘッド311aの3つの第1吐出口317aからのインクが重なる。(−X)側から3番目以降の第1吐出口317aに対応する画素においても同様である。
一方、記録媒体9上において第2ヘッド312aの第2端部吐出口318e(すなわち、最も(+X)側の第2吐出口318a)に対応する画素では、第2ヘッド312aの第2端部吐出口318eおよび(+X)側から2番目の第2吐出口318a、並びに、第1ヘッド311aの第1端部吐出口317eから吐出されたインクが重なる。換言すれば、第2端部吐出口318eに対応する画素では、2つの第2吐出口318aからのインクと、1つの第1吐出口317aからのインクとが重なる。
第2ヘッド312aの(+X)側から2番目の第2吐出口318aに対応する画素では、第2端部吐出口318e、(+X)側から2番目の第2吐出口318a、および、(+X)側から3番目の第2吐出口318aから吐出されたインクが重なる。換言すれば、(+X)側から2番目の第2吐出口318aに対応する画素では、第2ヘッド312aの3つの第2吐出口318aからのインクが重なる。(+X)側から3番目以降の第2吐出口318aに対応する画素においても同様である。
インクジェットプリンタ1では、上述のように、第1ヘッド311aの第1端部吐出口317eに対応する画素群(すなわち、Y方向に並ぶ画素列あり、以下、「第1端部画素群」という。)と、他の第1吐出口317aに対応する画素群とでは、付与されるインクを吐出するヘッドが一部異なる。すなわち、第1端部画素群では、付与されるインクに第2吐出口318aからのインクが含まれる。したがって、付与されたインクの一部の定着までの時間が、他の第1吐出口317aに対応する画素群に比べて短い。このため、第2画像データに対する色変換において、仮に、全ての第1吐出口317aに対応する全ての画素群に第1色変換テーブル851を適用すると、上述の他の第1吐出口317aに対応する画素群に対しては適切な色変換が行われるが、第1端部画素群に対する色変換の精度が低下するおそれがある。このような部分的な色変換の精度低下は、記録媒体9上に吐出されたインクの発色差を生じさせ、当該発色差が色ムラとして認識されてしまう可能性がある。
また、上述のように、第2ヘッド312aの第2端部吐出口318eに対応する画素群(すなわち、Y方向に並ぶ画素列であり、以下、「第2端部画素群」という。)と、他の第2吐出口318aに対応する画素群とでは、付与されるインクを吐出するヘッドが一部異なる。すなわち、第2端部画素群では、付与されるインクに第1吐出口317aからのインクが含まれる。したがって、付与されたインクの一部の定着までの時間が、他の第2吐出口318aに対応する画素群に比べて長い。このため、第2画像データに対する色変換において、仮に、全ての第2吐出口318aに対応する全ての画素群に第2色変換テーブル852を適用すると、上述の他の第2吐出口318aに対応する画素群に対しては適切な色変換が行われるが、第2端部画素群に対する色変換の精度が低下するおそれがある。このような部分的な色変換の精度低下は、上述のように、記録媒体9上において色ムラとして認識されてしまう可能性がある。
そこで、図1に示すインクジェットプリンタ1では、ステップS13において、画像データ変換部60の第2画像変換部63(図3参照)により、複数の第1吐出口317aに対応する画素群の色変換を行う際に、第1端部画素群を除く他の画素群には、第1色変換テーブル851が適用される。また、第1端部画素群の色変換を行う際に、第1端部画素群の一部の画素に第1色変換テーブル851が適用され、第1端部画素群の他の画素に第2色変換テーブル852が適用される。複数の第2吐出口318aに対応する画素群の色変換を行う際も同様に、第2端部画素群を除く他の画素群には、第2色変換テーブル852が適用される。また、第2端部画素群の色変換を行う際には、第2端部画素群の一部の画素に第2色変換テーブル852が適用され、第2端部画素群の他の画素に第1色変換テーブル851が適用される。
このように、インクジェットプリンタ1では、第1端部画素群および第2端部画素群の色変換の際に、第1端部画素群および第2端部画素群に対して実際にインクを付与する吐出口群を考慮して色変換テーブルが適用される。これにより、第1端部画素群および第2端部画素群の色変換を適切に精度良く行うことができる。その結果、記録媒体9に記録された画像において、第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍に対応する領域における色ムラも抑制することができる。
第1端部画素群および第2端部画素群の色変換が行われる際の第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852のそれぞれの使用割合は、適宜設定されてよい。以下、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852のそれぞれの使用割合を、「テーブル使用割合」という。
第1端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合は、好ましくは、ドット95の幅Wと、吐出口境界と第1端部吐出口317eとの間の幅方向との距離D1とに基づいて決定される。第2端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合は、好ましくは、ドット95の幅Wと、吐出口境界と第2端部吐出口318eとの間の幅方向との距離D2とに基づいて決定される。吐出口境界とは、第1ヘッド311aの複数の第1吐出口317aと、第2ヘッド312aの複数の第2吐出口318aとの境界であり、図6中において、符号319を付す二点鎖線にて示す。具体的には、吐出口境界319は、第1端部吐出口317eと第2端部吐出口318eとの幅方向の中央に位置する。
第1端部画素群の色変換が行われる際には、例えば、第1色変換テーブル851の使用割合は、0.5+(D1/W)にて表され、第2色変換テーブル852の使用割合は、0.5−(D1/W)にて表される。この場合、第1色変換テーブル851の使用割合は、第1端部画素群に付与されるインクを吐出する全吐出口に含まれる第1吐出口317aの割合に等しい。また、第2色変換テーブル852の使用割合は、第1端部画素群に付与されるインクを吐出する全吐出口に含まれる第2吐出口318aの割合に等しい。図6に示す例では、第1色変換テーブル851の使用割合は約3分の2(約66.7%)であり、第2色変換テーブル852の使用割合は約3分の1(約33.3%)である。
第2端部画素群の色変換が行われる際には、例えば、第1色変換テーブル851の使用割合は、0.5−(D2/W)にて表され、第2色変換テーブル852の使用割合は、0.5+(D2/W)にて表される。この場合、第1色変換テーブル851の使用割合は、第2端部画素群に付与されるインクを吐出する全吐出口に含まれる第1吐出口317aの割合に等しい。また、第2色変換テーブル852の使用割合は、第2端部画素群に付与されるインクを吐出する全吐出口に含まれる第2吐出口318aの割合に等しい。図6に示す例では、第1色変換テーブル851の使用割合は約3分の1(約33.3%)であり、第2色変換テーブル852の使用割合は約3分の2(約66.7%)である。
このように、インクジェットプリンタ1では、第1端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合が、ドット95の幅Wと、吐出口境界319と第1端部吐出口317eとの間の幅方向との距離D1(すなわち、上記配列ピッチの半分の距離)とに基づいて決定される。これにより、第1端部画素群に対して第1吐出口317aから付与されるインクの量と第2吐出口318aから付与されるインクの量との比に基づいて、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の使用割合を決定することができる。
また、第2端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合が、ドット95の幅Wと、吐出口境界319と第2端部吐出口318eとの間の幅方向との距離D2(すなわち、上記配列ピッチの半分の距離)とに基づいて決定される。これにより、第2端部画素群に対して第1吐出口317aから付与されるインクの量と第2吐出口318aから付与されるインクの量との比に基づいて、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の使用割合を決定することができる。
その結果、インクジェットプリンタ1では、記録媒体9に記録された画像において、第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍に対応する領域に対する色変換を、第1ヘッド311aおよび第2ヘッド312aのそれぞれの中央部に対応する領域に対する色変換とおよそ同様に行うことができる。これにより、第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍に対応する領域における色ムラを、さらに抑制することができる。
ステップS13では、第1端部画素群のY方向に並ぶ複数の画素に対する第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の適用順は、適宜決定されてよい。第2端部画素群のY方向に並ぶ複数の画素に対する第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の適用順も、適宜決定されてよい。
好ましくは、第1端部画素群の色変換が行われる際に、第1端部画素群のY方向に並ぶ複数の画素に対して、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852が非周期的に適用される。また、第2端部画素群の色変換が行われる際には、第2端部画素群のY方向に並ぶ複数の画素に対して、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852が非周期的に適用される。これにより、記録媒体9に記録された画像において、第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍に対応する領域に、意図しない色の周期性が生じることを抑制することができる。 その結果、第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍に対応する領域における色ムラを、より一層抑制することができる。
上述の第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の非周期的適用は、例えば、乱数を利用して行われる。具体的には、第1端部画素群の各画素の色変換を行う際に、各画素について0以上1以下の乱数を発生させ、当該乱数が1/3以上であれば第1色変換テーブル851が画素に適用され、当該乱数が1/3未満であれば第2色変換テーブル852が画素に適用される。また、第2端部画素群の各画素の色変換を行う際も同様に、各画素について0以上1以下の乱数を発生させ、当該乱数が1/3以上であれば第2色変換テーブル852が画素に適用され、当該乱数が1/3未満であれば第1色変換テーブル851が画素に適用される。なお、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の非周期的適用は、例えば、疑似乱数を利用して行われてもよい。
図7は、吐出機構31aの第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍を示す底面図である。図7では、図6と同様に、インクの複数のドット95aを円にて示す。図7に示す例では、各ドット95aの幅は、図6に示すドット95の幅よりも大きい。各ドット95aの幅は、配列ピッチの約5倍である。他の吐出機構31b〜31dから吐出されたインクの微小液滴により形成されるドットについても同様である。
各ドット95aは、幅方向の両側にそれぞれ位置する2つのドット95a(すなわち、合計4つのドット95a)と重なる。例えば、記録媒体9上において第1ヘッド311aの第1端部吐出口317e(すなわち、最も(−X)側の第1吐出口317a)に対応する画素では、第1ヘッド311aの第1端部吐出口317e、(−X)側から2番目および3番目の第1吐出口317a、並びに、第2ヘッド312aの第2端部吐出口318eおよび(+X)側から2番目の第2吐出口318aから吐出されたインクが重なる。換言すれば、第1端部吐出口317eに対応する画素では、3つの第1吐出口317aからのインクと、2つの第2吐出口318aからのインクとが重なる。
第1ヘッド311aの(−X)側から2番目の第1吐出口317aに対応する画素では、第1ヘッド311aの第1端部吐出口317e、(−X)側から2番目ないし4番目の第1吐出口317a、並びに、第2ヘッド312aの第2端部吐出口318eから吐出されたインクが重なる。換言すれば、(−X)側から2番目の第1吐出口317aに対応する画素では、第1ヘッド311aの4つの第1吐出口317aからのインクと、第2ヘッド312aの1つの第2吐出口318aからのインクとが重なる。以下の説明では、(−X)側から2番目の第1吐出口317aを、「第1端部吐出口317f」ともいう。
第1ヘッド311aの(−X)側から3番目の第1吐出口317aに対応する画素では、第1端部吐出口317e,317f、(−X)側から3番目ないし5番目の第1吐出口317aから吐出されたインクが重なる。換言すれば、(−X)側から3番目の第1吐出口317aに対応する画素では、第1ヘッド311aの5つの第1吐出口317aからのインクが重なる。(−X)側から4番目以降の第1吐出口317aに対応する画素においても同様である。
一方、記録媒体9上において第2ヘッド312aの第2端部吐出口318e(すなわち、最も(+X)側の第2吐出口318a)に対応する画素では、第2ヘッド312aの第2端部吐出口318e、(+X)側から2番目および3番目の第2吐出口318a、並びに、第1ヘッド311aの第1端部吐出口317e,317fから吐出されたインクが重なる。換言すれば、第2端部吐出口318eに対応する画素では、3つの第2吐出口318aからのインクと、2つの第1吐出口317aからのインクとが重なる。
第2ヘッド312aの(+X)側から2番目の第2吐出口318aに対応する画素では、第2ヘッド312aの第2端部吐出口318e、(+X)側から2番目ないし4番目の第2吐出口318a、並びに、第1ヘッド311aの第1端部吐出口317eから吐出されたインクが重なる。換言すれば、(+X)側から2番目の第2吐出口318aに対応する画素では、第2ヘッド312aの4つの第2吐出口318aからのインクと、第1ヘッド311aの1つの第1吐出口317aからのインクとが重なる。以下の説明では、(+X)側から2番目の第2吐出口318aを、「第2端部吐出口318f」ともいう。
第2ヘッド312aの(+X)側から3番目の第2吐出口318aに対応する画素では、第2端部吐出口318e,318f、(+X)側から3番目ないし5番目の第2吐出口318aから吐出されたインクが重なる。換言すれば、(+X)側から3番目の第2吐出口318aに対応する画素では、第2ヘッド312aの5つの第2吐出口318aからのインクが重なる。(+X)側から4番目以降の第2吐出口318aに対応する画素においても同様である。
図7に示す例では、ステップS13において複数の第1吐出口317aに対応する画素群の色変換を行う際に、第1端部吐出口317e,317fにそれぞれ対応する第1端部画素群を除く他の画素群には、第1色変換テーブル851が適用される。また、第1端部吐出口317eに対応する第1端部画素群の色変換を行う際に、当該第1端部画素群の一部の画素に第1色変換テーブル851が適用され、当該第1端部画素群の他の画素に第2色変換テーブル852が適用される。第1端部吐出口317fに対応する第1端部画素群の色変換を行う際も同様に、当該第1端部画素群の一部の画素に第1色変換テーブル851が適用され、当該第1端部画素群の他の画素に第2色変換テーブル852が適用される。
複数の第2吐出口318aに対応する画素群の色変換を行う際も同様に、第2端部吐出口318e,318fにそれぞれ対応する第2端部画素群を除く他の画素群には、第2色変換テーブル852が適用される。また、第2端部吐出口318eに対応する第2端部画素群の色変換を行う際に、当該第2端部画素群の一部の画素に第2色変換テーブル852が適用され、当該第2端部画素群の他の画素に第1色変換テーブル851が適用される。第2端部吐出口318fに対応する第2端部画素群の色変換を行う際も同様に、当該第2端部画素群の一部の画素に第2色変換テーブル852が適用され、当該第2端部画素群の他の画素に第1色変換テーブル851が適用される。
このように、図7に示す例においても、図6に示す例と同様に、第1端部画素群および第2端部画素群の色変換の際に、第1端部画素群および第2端部画素群に対して実際にインクを付与する吐出口群を考慮して色変換テーブルが適用される。これにより、第1端部画素群および第2端部画素群の色変換を適切に精度良く行うことができる。その結果、記録媒体9に記録された画像において、第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍に対応する領域における色ムラを抑制することができる。
図7に示す例においても、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852のそれぞれの使用割合(すなわち、テーブル使用割合)は、適宜設定されてよい。第1端部吐出口317eに対応する第1端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合は、好ましくは、ドット95aの幅Wと、吐出口境界319と第1端部吐出口317eとの間の幅方向との距離D1とに基づいて決定される。また、第1端部吐出口317fに対応する第1端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合は、好ましくは、ドット95aの幅Wと、吐出口境界319と第1端部吐出口317fとの間の幅方向との距離D3(すなわち、上記配列ピッチの1.5倍の距離)とに基づいて決定される。
第2端部吐出口318eに対応する第2端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合は、好ましくは、ドット95aの幅Wと、吐出口境界319と第2端部吐出口318eとの間の幅方向との距離D2とに基づいて決定される。また、第2端部吐出口318fに対応する第2端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合は、好ましくは、ドット95aの幅Wと、吐出口境界319と第2端部吐出口318fとの間の幅方向との距離D4(すなわち、上記配列ピッチの1.5倍の距離)とに基づいて決定される。
第1端部吐出口317eに対応する第1端部画素群の色変換が行われる際には、例えば、第1色変換テーブル851の使用割合は、0.5+(D1/W)にて表され、第2色変換テーブル852の使用割合は、0.5−(D1/W)にて表される。第1端部吐出口317fに対応する第1端部画素群の色変換が行われる際には、例えば、第1色変換テーブル851の使用割合は、0.5+(D3/W)にて表され、第2色変換テーブル852の使用割合は、0.5−(D3/W)にて表される。いずれの場合も、第1色変換テーブル851の使用割合は、第1端部画素群に付与されるインクを吐出する全吐出口に含まれる第1吐出口317aの割合に等しい。また、第2色変換テーブル852の使用割合は、第1端部画素群に付与されるインクを吐出する全吐出口に含まれる第2吐出口318aの割合に等しい。
図7に示す例では、第1端部吐出口317eに対応する第1端部画素群の色変換における第1色変換テーブル851の使用割合は約3/5(約60%)であり、第2色変換テーブル852の使用割合は約2/5(約40%)である。また、第1端部吐出口317fに対応する第1端部画素群の色変換における第1色変換テーブル851の使用割合は約4/5(約80%)であり、第2色変換テーブル852の使用割合は約1/5(約20%)である。
第2端部吐出口318eに対応する第2端部画素群の色変換が行われる際には、例えば、第1色変換テーブル851の使用割合は、0.5−(D2/W)にて表され、第2色変換テーブル852の使用割合は、0.5+(D2/W)にて表される。第2端部吐出口318fに対応する第2端部画素群の色変換が行われる際には、例えば、第1色変換テーブル851の使用割合は、0.5−(D4/W)にて表され、第2色変換テーブル852の使用割合は、0.5+(D4/W)にて表される。いずれの場合も、第1色変換テーブル851の使用割合は、第2端部画素群に付与されるインクを吐出する全吐出口に含まれる第1吐出口317aの割合に等しい。また、第2色変換テーブル852の使用割合は、第2端部画素群に付与されるインクを吐出する全吐出口に含まれる第2吐出口318aの割合に等しい。
図7に示す例では、第2端部吐出口318eに対応する第2端部画素群の色変換における第1色変換テーブル851の使用割合は約2/5(約40%)であり、第2色変換テーブル852の使用割合は約3/5(約60%)である。また、第2端部吐出口318fに対応する第2端部画素群の色変換における第1色変換テーブル851の使用割合は約1/5(約20%)であり、第2色変換テーブル852の使用割合は約4/5(約80%)である。
このように、図7に示す例でも、図6に示す例と同様に、第1端部吐出口317eおよび第1端部吐出口317fに対応する第1端部画素群の色変換が行われる際に、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の使用割合が、第1端部画素群に対して第1吐出口317aから付与されるインクの量と第2吐出口318aから付与されるインクの量との比に基づいて決定される。また、第2端部吐出口318eおよび第2端部吐出口318eに対応する第2端部画素群の色変換が行われる際に、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の使用割合が、第2端部画素群に対して第1吐出口317aから付与されるインクの量と第2吐出口318aから付与されるインクの量との比に基づいて決定される。その結果、記録媒体9に記録された画像において、第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍に対応する領域における色ムラを、さらに抑制することができる。
図7に示す例においても、第1端部画素群および第2端部画素群の複数の画素に対する第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852の適用順は、適宜決定されてよい。好ましくは、第1端部吐出口317eおよび第1端部吐出口317fにそれぞれ対応する第1端部画素群の複数の画素に対して、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852が、乱数等を利用して非周期的に適用される。また、第2端部吐出口318eおよび第2端部吐出口318fにそれぞれ対応する複数の画素に対して、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852が、乱数等を利用して非周期的に適用される。これにより、第1ヘッド311aと第2ヘッド312aとの接続部近傍に対応する領域における色ムラを、より一層抑制することができる。
図6および図7では、吐出機構31aの第1ヘッド311aおよび第2ヘッド312aについて説明したが、吐出機構31b〜31dにおいても、第1ヘッド311b〜311dと第2ヘッド312b〜312dとの接続部近傍におけるドットの重なり状態は同様である。したがって、上述のように、第1端部画素群および第2端部画素群のそれぞれに第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852を適用することにより、上記接続部近傍に対応する領域における色ムラを抑制することができる。このようなインクジェットプリンタ1の構造は、各吐出機構31a〜31dがそれぞれ、幅方向に沿って千鳥状に配列される複数の第1ヘッド311a〜311dおよび複数の第2ヘッド312a〜312dを備えるインクジェットプリンタに特に適している。
インクジェットプリンタ1では、ヒータ35が、吐出機構31a〜31dよりも(−Y)側に配置され、ヒータ35により予め加熱された記録媒体9に、吐出機構31a〜31dからインクが吐出されてもよい。記録媒体9上に付与されたインクは、ヒータ35から記録媒体9に予め付与された熱により記録媒体9上に定着する。すなわち、ヒータ35は、記録媒体9上に付与されたインクの定着を補助する定着処理部として働く。この場合も、複数の第1吐出口317a〜317dとヒータ35との間の走査方向の距離がそれぞれ、複数の第2吐出口318a〜318dとヒータ35との間の距離と異なる。したがって、第1端部画素群および第2端部画素群のそれぞれに第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852を適用することにより、上記接続部近傍に対応する領域における色ムラを抑制することができる。
なお、インクジェットプリンタ1では、吐出機構31a〜31dの(−Y)側および(+Y)側の双方にヒータが設けられてもよい。この場合、当該2つのヒータは、記録媒体9上に付与されたインクの記録媒体9への定着を補助するとともに、当該インクを記録媒体9に定着させる定着処理部として働く。
次に、本発明の第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。図8は、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタの印刷ヘッド3aの底面の一部を示す図である。印刷ヘッド3aは、吐出機構31a,31cにおいて第1ヘッド311a,311cが第2ヘッド312a,312cよりも(+Y)側、すなわち、記録媒体9に対する印刷が進行する方向の後側(以下、「下流側」ともいう。)に位置する点を除き、図2に示す印刷ヘッド3と同様の構造を有する。また、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構造は、印刷ヘッド3aを除き、図1に示すインクジェットプリンタ1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
印刷ヘッド3aでは、上述のように、吐出機構31a,31cにおいて第1ヘッド311a,311cが第2ヘッド312a,312cよりも(+Y)側に位置しており、各第1ヘッド311a,311cの複数の第1吐出口317a,317cも、各第2ヘッド312a,312cの複数の第2吐出口318a,318cよりも(+Y)側に位置する。したがって、複数の第1吐出口317a,317cとヒータ35との間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318a,318cとヒータ35との間の走査方向の距離よりも短い。
吐出機構31b,31dでは、印刷ヘッド3と同様に、第1ヘッド311b,311dが第2ヘッド312b,312dよりも(−Y)側に位置し、各第1ヘッド311b,311dの複数の第1吐出口317b,317dも、各第2ヘッド312b,312dの複数の第2吐出口318b,318dよりも(−Y)側に位置する。したがって、複数の第1吐出口317b,317dとヒータ35との間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318b,318dとヒータ35との間の走査方向の距離よりも長い。
また、複数の第1吐出口317aと複数の第1吐出口317bとの間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318aと複数の第2吐出口318bとの間の走査方向の距離よりも短く、複数の第1吐出口317bと複数の第1吐出口317cとの間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318bと複数の第2吐出口318cとの間の走査方向の距離よりも長い。複数の第1吐出口317cと複数の第1吐出口317dとの間の走査方向の距離は、複数の第2吐出口318dと複数の第2吐出口318dとの間の走査方向の距離よりも短く、複数の第1吐出口317aと複数の第1吐出口317dとの間の走査方向の距離も、複数の第2吐出口318aと複数の第2吐出口318dとの間の走査方向の距離よりも短い。
ここで、上記と同様に、吐出機構31a、第1ヘッド311a、第2ヘッド312a、複数の第1吐出口317aおよび複数の第2吐出口318aをそれぞれ、前部吐出機構、第1前部ヘッド、第2前部ヘッド、第1前部吐出口群および第2前部吐出口群とする。また、吐出機構31b、第1ヘッド311b、第2ヘッド312b、複数の第1吐出口317bおよび複数の第2吐出口318bをそれぞれ、後部吐出機構、第1後部ヘッド、第2後部ヘッド、第1後部吐出口群および第2後部吐出口群とする。この場合、前部吐出機構の第1前部ヘッドに設けられた第1前部吐出口群とヒータ35との走査方向の距離は、前部吐出機構の第2前部ヘッドに設けられた第2前部吐出口群とヒータ35との走査方向の距離と異なる。また、第1前部吐出口群と第1後部吐出口群との間の走査方向の距離も、第2前部吐出口群と第2後部吐出口群との間の走査方向の距離と異なる。
印刷ヘッド3aでは、上述の第1前部吐出口群、第1後部吐出口群、第2前部吐出口群および第2後部吐出口群の位置関係は、吐出機構31bと吐出機構31cとの間においても成立する。また、当該位置関係は、吐出機構31cと吐出機構31dとの間、および、吐出機構31aと吐出機構31dとの間においても成立する。
第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、第1の実施の形態と同様に、走査方向に移動する記録媒体9(図1参照)に対し、印刷ヘッド3aからインクの微小液滴が吐出されてカラーパッチが記録され、測色計によりカラーパッチを測色して得られるデータから色変換テーブルが取得されて準備される(図4:ステップS11)。このとき、記録媒体9上において第1ヘッド311a〜311dにより記録された第1領域を測色して得られたデータから第1色変換テーブル851が取得され、記録媒体9上において第2ヘッド312a〜312dにより記録された第2領域を測色して得られたデータから、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852が取得される。その後、ステップS12〜S15が行われ、記録媒体9上に画像が記録される。
第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、第1の実施の形態と同様に、ステップS13において、第2画像データのうち複数の第1吐出口317a〜317dに対応する画素群の色変換が、第1色変換テーブル851を利用して行われる。また、第2画像データのうち複数の第2吐出口318a〜318dに対応する画素群の色変換が、第1色変換テーブル851とは異なる第2色変換テーブル852を利用して行われる。これにより、発色の差異の発生を抑制することができ、その結果、記録媒体9に記録された画像における色ムラを抑制することができる。
また、第1の実施の形態と同様に、第1端部画素群の色変換を行う際に、第1端部画素群の一部の画素に第1色変換テーブル851が適用され、第1端部画素群の他の画素に第2色変換テーブル852が適用される。第2端部画素群の色変換を行う際には、第2端部画素群の一部の画素に第2色変換テーブル852が適用され、第2端部画素群の他の画素に第1色変換テーブル851が適用される。このように、第1端部画素群および第2端部画素群の色変換の際に、第1端部画素群および第2端部画素群に対して実際にインクを付与する吐出口群を考慮して色変換テーブルが適用される。これにより、第1ヘッド311a〜311dと第2ヘッド312a〜312dとの接続部近傍に対応する領域における色ムラを抑制することができる。
図8に示す例では、第1端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合は、好ましくは、上述のドットの幅と、吐出口境界と第1端部吐出口との間の幅方向との距離とに基づいて決定される。第2端部画素群の色変換が行われる際のテーブル使用割合は、好ましくは、上述のドットの幅と、吐出口境界と第2端部吐出口との間の幅方向との距離とに基づいて決定される。これにより、第1ヘッド311a〜311dと第2ヘッド312a〜312dとの接続部近傍に対応する領域における色ムラを、さらに抑制することができる。
図8に示す例では、好ましくは、第1端部画素群の色変換が行われる際に、第1端部画素群のY方向に並ぶ複数の画素に対して、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852が非周期的に適用される。また、第2端部画素群の色変換が行われる際に、第2端部画素群のY方向に並ぶ複数の画素に対して、第1色変換テーブル851および第2色変換テーブル852が非周期的に適用される。これにより、第1ヘッド311a〜311dと第2ヘッド312a〜312dとの接続部近傍に対応する領域における色ムラを、より一層抑制することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。図9は、第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタの印刷ヘッド3bの底面の一部を示す図である。第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構造は、印刷ヘッド3bが印刷ヘッド3とは異なる構造を有する点を除き、図1に示すインクジェットプリンタ1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
図9に示す印刷ヘッド3bでは、吐出機構31a〜31dが、図示省略の吐出機構移動部により、レール33a〜33dに沿って幅方向に個別に移動される。吐出機構31a〜31dでは、それぞれが幅方向に沿って配列された複数の吐出口320a〜320dを有する複数のヘッド310a〜310dが、幅方向に沿って千鳥状に配列される。吐出機構31aにおける複数のヘッド310aの境界の幅方向における位置である第1ヘッド境界位置300a、吐出機構31bにおける複数のヘッド310bの境界の幅方向における位置である第2ヘッド境界位置300b、吐出機構31cにおける複数のヘッド310cの境界の幅方向における位置である第3ヘッド境界位置300c、および、吐出機構31dにおける複数のヘッド310dの境界の幅方向における位置である第4ヘッド境界位置300dは、それぞれ幅方向においてずれている。以下の説明では、図9に示すヘッド310a〜310dの配置を、「本記録配置」と呼ぶ。
印刷ヘッド3bでは、幅方向において隣接する各2つのヘッド境界位置300a〜300dの間の領域が、ヘッド310a〜310dの位置関係がそれぞれ異なる複数の領域(以下、「吐出口領域」という。)となっている。例えば、二点鎖線で囲む吐出口領域341では、ヘッド310aが吐出機構31aにおいて下流側(すなわち、千鳥状に配置された複数のヘッド310aのうちの(+Y)側)に位置し、ヘッド310b〜310dも吐出機構31b〜31dにおいて下流側に位置する。吐出口領域342では、ヘッド310a,310b,310dが下流側に位置し、ヘッド310cは上流側に位置する。吐出口領域343では、ヘッド310a、310dが下流側に位置し、ヘッド310b,310cは上流側に位置する。吐出口領域344では、ヘッド310a〜310cが上流側に位置し、ヘッド310dは下流側に位置する。
また、吐出口領域345では、ヘッド310a〜310dが全て上流側に位置する。吐出口領域346では、ヘッド310a,310b,310dが上流側に位置し、ヘッド310cは下流側に位置する。吐出口領域347では、ヘッド310a,310dが上流側に位置し、ヘッド310b,310cは下流側に位置する。吐出口領域348では、ヘッド310a〜310cは下流側に位置し、ヘッド310dは上流側に位置する。
ここで、吐出機構31aのヘッド310aおよび吐出機構31bのヘッド310bをそれぞれ、前部ヘッドおよび後部ヘッドと呼び、第1ヘッド境界位置300aおよび第2ヘッド境界位置300bをそれぞれ、前部ヘッド境界位置および後部ヘッド境界位置と呼ぶと、本記録配置では、前部ヘッド境界位置が後部ヘッド境界位置と幅方向においてずれている。前部ヘッド、後部ヘッド、前部ヘッド境界位置および後部ヘッド境界位置の上記位置関係は、吐出機構31aと吐出機構31cとの間においても成立する。また、当該位置関係は、吐出機構31aと吐出機構31dとの間、吐出機構31bと吐出機構31cとの間、吐出機構31bと吐出機構31dとの間、および、吐出機構31cと吐出機構31dとの間においても成立する。
図10は、第4の実施の形態に係るインクジェットプリンタの動作の一部を示す図である。当該インクジェットプリンタでは、吐出機構31a〜31dの一部または全てが、吐出機構移動部により幅方向に移動され、第1ヘッド境界位置300a、第2ヘッド境界位置300b、第3ヘッド境界位置300cおよび第4ヘッド境界位置300dが幅方向において一致するように配置される(ステップS31)。以下の説明では、第1ヘッド境界位置300a、第2ヘッド境界位置300b、第3ヘッド境界位置300cおよび第4ヘッド境界位置300dが一致する状態の複数のヘッド310a〜310dの配置を、「テーブル取得配置」という。テーブル取得配置は、例えば、図2に示すヘッドの配置と同様とされる。
続いて、記録媒体9上にカラーパッチが記録され、測色計によりカラーパッチを測色して得られるデータから、ステップS11と同様に、複数の色変換テーブルが取得される(ステップS32)。
次に、吐出機構31a〜31dを幅方向に相対的に移動し、複数のヘッド310a〜310dの配置が、各ヘッド境界位置が一致する他のテーブル取得配置とされる(ステップS33,S34)。他のテーブル取得配置は、例えば、吐出口領域343および吐出口領域347と同様のヘッド配置を有するものとされる。その後、ステップS32に戻って、カラーパッチの印刷、並びに、複数の色変換テーブルの取得が行われる。このとき得られる色変換テーブルは、最初のテーブル取得配置とはヘッド310a〜310dの配置が異なるため、最初のテーブル取得配置にて取得された色変換テーブルとは異なる。
第4の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、上述の吐出口領域341〜348のそれぞれにおけるヘッド310a〜310dの走査方向の位置関係に対応する色変換テーブルが取得されるまでステップS32〜S34が繰り返される。吐出口領域341〜348の色変換テーブルが取得されて記憶部61(図3参照)に記憶されると、吐出機構31a〜31dが幅方向に移動され、図9に示す本記録配置とされる(ステップS35)。
コンピュータ6では、R,G,Bの3色からなる第1画像データ81(図3参照)が、K,C,M,Yの4色からなる第2画像データに変換される(ステップS36)。そして、記憶部61に記憶された色変換テーブルを利用しつつ、第2画像データに対する色変換が行われ、K,C,M,Yの4色からなる第3画像データが生成される(ステップS37)。このとき、各吐出口領域341〜348について、ヘッド310a〜310dのそれぞれとヒータ35との間の走査方向の距離、および、ヘッド310a〜310dの互いの間の走査方向の距離に基づいて、ステップS32〜S34において取得された複数の色変換テーブルから、走査方向におけるヘッド310a〜310dおよびヒータ35の位置関係が等しい色変換テーブルが選択されて利用される。その後、図4に示すステップS14,S15が行われ、記録媒体9上に画像が記録される。
第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、図9に示すように、ヘッド310a〜310dの配置が異なる複数の吐出口領域を有するとともに各吐出口領域の幅が小さい場合であっても、ヘッド310a〜310dの配置変更および色変換テーブルの取得を繰り返すことにより、上記各吐出口領域に対応する色変換テーブルを容易に取得することができる。そして、各吐出口領域に対応する画素群を、異なる色変換テーブルを利用して色変換しつつ画像記録を行うことにより、発色の差異の発生を抑制することができる。その結果、記録媒体9に記録された画像における色ムラを抑制することができる。
図9に示す例では、幅方向に隣接する各2つの吐出口領域において、一方の吐出口領域に位置する吐出口群を第1吐出口群とし、他方の吐出口領域に位置する吐出口群を第2吐出口群とする。また、一方の吐出口領域の幅方向の端部に位置する吐出口を第1端部吐出口とし、他方の吐出口領域の幅方向の端部に位置する吐出口を第2端部吐出口とする。
第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタにおいても、第1の実施の形態と同様に、第1端部吐出口に対応する第1端部画素群の色変換を行う際に、第1端部画素群の一部の画素に、第1吐出口群に対応する画素群の色変換に利用される第1色変換テーブルが適用され、第1端部画素群の他の画素に、第2吐出口群に対応する画素群の色変換に利用される第2色変換テーブルが適用される。また、第2端部吐出口に対応する第2端部画素群の色変換を行う際に、第2端部画素群の一部の画素に、第2吐出口群に対応する画素群の色変換に利用される第2色変換テーブルが適用され、第2端部画素群の他の画素に、第1吐出口群に対応する画素群の色変換に利用される第1色変換テーブルが適用される。これにより、記録媒体9に記録された画像において、幅方向に隣接する吐出口領域の境界近傍の部位に対応する領域における色ムラを抑制することができる。
上記インクジェットプリンタは、様々な変更が可能である。
例えば、上述のインクジェットプリンタでは、吐出口とヒータ35との走査方向における位置関係、または、吐出口同士の走査方向における位置関係に基づいて用意された第1色変換テーブルおよび第2色変換テーブルが、第1画像データから第2画像データが生成される際に利用されてもよい。この場合、第1画像変換部62が、画像記録に用いられる画像データが示す色を変換する色変換部である。
インクジェットプリンタでは、ヒータ35以外の定着処理部が設けられてもよい。例えば、印刷ヘッド3から吐出されるインクが紫外線硬化性インクである場合、記録媒体9上に付与されたインクに紫外線を照射することによりインクを定着させる定着処理部が設けられてもよい。また、インクジェットプリンタでは、印刷用紙以外の様々な記録媒体9に対する画像の記録が行われてよい。
上述のインクジェットプリンタでは、記録媒体9を印刷ヘッドに対して相対的に移動することができるのであれば、例えば、印刷ヘッドを走査方向に移動する移動機構が設けられてもよい。インクジェットプリンタでは、例えば、ロール紙等の長尺状の記録媒体に対して画像記録が行われてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。