JP6207148B2 - 電気泳動装置、電気泳動法および電気泳動法を用いた濃縮・分離・分析方法 - Google Patents

電気泳動装置、電気泳動法および電気泳動法を用いた濃縮・分離・分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、電気泳動装置、電気泳動法および電気泳動法を用いた濃縮・分離・分析方法に関し、特に、同位体元素の濃縮・分離・分析などに好適な電気泳動装置、電気泳動法および電気泳動法を用いた濃縮・分離・分析方法に関する。
近年、核化学分野や生物化学分野など様々な分野で、種々の元素の同位体が使用されている。
同位体元素を濃縮・分離する方法として、従来より、主に、遠心分離法が用いられている。
しかし、この遠心分離法を用いた同位体元素の濃縮・分離には、濃縮・分離対象の元素が含まれた気体を必要とするため、気体の化合物が存在しないCa(カルシウム)等の同位体の濃縮・分離には採用することができない。
そこで、このように気体の化合物が存在しない元素から同位体を濃縮・分離する場合には、質量分析法が採用されている。この方法は、真空中で原子をイオン化し、電界によりイオンビームとして加速し、磁場で曲げた場合、同位体の質量差により曲率が相違することを利用して同位体の濃縮・分離を行うものであるが、その際に多大の電力を消費するためコストが掛かり、非常に高価とならざるを得ない。例えば、90%以上に濃縮された48Caは、一般的に、1g当たり1000万円を超える価格となっている。
そこで、このように気体の化合物が存在しないCa等から同位体を安価に濃縮・分離することができる方法が種々検討されている。
一例として、同位体によって生じる化学反応率の差を利用して同位体の濃縮・分離を行うことが検討されたが、この方法には、適用し得る元素が限られるという問題がある。
このような状況下、単原子イオンやタンパク質、アミノ酸などの分離、分析に使用されてきた電気泳動法を用いて同位体の濃縮・分離を行うことが、適用し得る元素が広範なことや、簡便な方法であるなどの観点より、注目されている(例えば、特許文献1、2および非特許文献1)。
この電気泳動法は、溶液中で電荷を持つ粒子、即ちイオン(高分子やタンパク質を含む)が、電場が掛けられた際に移動する性質を利用するものであり、溶液中におけるイオンの移動速度はイオン固有の移動度(電場と速度の比)で決定されるため、移動度の差と泳動距離の積により各イオンを分別することができる。
しかし、従来の電気泳動法を用いて、同位体の濃縮を行おうとすると、以下に示すような解決すべき点があった。
即ち、電気泳動法では、溶液に電場を掛けてイオンを移動させているが、単原子イオンにおける同位体間の移動度の差は基本的に小さいため、同位体を濃縮・分離するためには、高い電場を掛けて泳動距離を長くして、移動距離の差を大きくする必要がある。しかし、高い電場を掛けて大きな電流を通電すると、その通電に伴い大きなジュール熱が発生して、溶液に対流などの乱流を生じさせる恐れがある。この乱流は、イオンの移動に乱れを生じさせるため、泳動距離を長くしても、充分な同位体の濃縮・分離が阻害される。また、沸騰に至った場合には乱流はさらに大きくなるため、イオンが移動できなくなる。
通電せずに電場を掛けると、イオンが電場を移動することにより、電荷の分布(pH勾配)が生じるが、この電荷の分布はそれ自身が新たな電場を形成して、元々掛けていた電場を相殺する(打消す)方向に作用するため、双方の電場がちょうど釣り合った段階でイオンの移動が停止するという問題もある。
これらの問題を解決する手段として、径が小さなキャピラリー(毛細管)内でイオンを泳動させるキャピラリー電気泳動法が提案されている。径が小さなキャピラリーを用いるため、冷却が容易で、乱流が発生しにくい。しかし、径が小さなキャピラリーを用いる限り、一度に分離できる同位体の量を多くすることが困難であり、工業的に実用的な手段とは言えない。
そこで、ゲルやスポンジやイオン交換樹脂などを充填して、乱流の発生を抑制することにより、より径が大きな泳動部に乱流を押さえる機能をもたせ、一度に大量の同位体を濃縮することが検討されている。
しかし、これらゲルやスポンジやイオン交換樹脂などが充填された泳動部を用いた場合であっても、ジュール熱の発生を考慮すると、掛けることができる電圧(電流)には限界があり、イオンを短時間で長距離移動させることは容易ではなく、同位体を充分に濃縮・分離するには長時間を要するため、効率的な手段とは言えない。
例えば、泳動部の径を大きくした電気泳動法を用いて、カルシウム同位体の分離を行った例が、非特許文献1に示されている。ここでは、1.2V/cm程度の電圧を約900時間掛けて23m移動させることにより、48Caを40Caに対して自然存在比の0.187%から約30%濃縮している。
上記においては、ジュール熱による温度上昇を抑えながら大量の泳動を行うために、電圧を1.2V/cm程度と低く設定すると共に、電流密度を0.1〜0.2A/cm(ジュール熱で0.1〜0.2W/cmに相当)程度にすることで温度を80℃程度に抑えている。しかし、乱流を抑えても、拡散による泳動距離の広がりは避けられない。このため、高い濃縮度を達成するには同位体間の泳動距離の差を、前記した拡散による泳動距離の広がりよりも充分大きくすることが必要であり、約900時間という長時間を掛けて長距離の泳動をさせている。
このときの移動速度は、内径0.1mmのキャピラリーで0.1〜1kV/cm程度の電圧をかけて1m程度泳動させる一般的なキャピラリー電気泳動法における金属イオンの移動速度(1kV/cmの電圧で5mm/s程度)に比べ、百分の1から千分の1である。また、周りに冷却水を通すため、泳動部全体としての直径は数cmになる。
特開2002−79059号公報 特開2010−29797号公報
NOBUYA KOBAYASHI 他2名著、「CALCIUM ISOTOPE ENRICHMENT BY MEANS OF COUNTER−CURRENT ELECTROMIGRATION USING AN ION−EXCHANGE RESIN AS MIGRATION MEDIUM」、Journal of Chromatography 252(1982) 121−130
本発明は、上記した従来の電気泳動法の問題点に鑑み、移動度の差が小さい同位体であっても、短時間で充分な距離の泳動をさせて、効率よく、大量に濃縮・分離・分析することができる電気泳動装置、電気泳動法および濃縮・分離・分析技術を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討を行った結果、以下に示す技術によれば、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った
本発明に関連する第1の技術は、
濃縮・分離または分析の対象である物質のイオンを、電場が掛けられた泳動路に沿って
移動させることにより濃縮・分離または分析する電気泳動装置であって、
前記泳動路が、電場により発生する熱を除熱し、向流による乱流の発生を抑制するよう
に、高熱伝導率の絶縁体中に複数設けられていることを特徴とする電気泳動装置である。
イオンの移動距離は速度×時間により決定されるが、イオンは拡散や乱流によりさらに広がって移動する。この内、乱流による移動距離の広がりは、泳動路の径を制御することにより抑制することができるものの、拡散による広がりは抑制することができない。
このため、イオンの効率的な濃縮・分離を行うためには、電気泳動において掛ける電場を高くして、対象となるイオンとそれ以外のイオンとの間における移動距離の差を、拡散による移動距離の広がりよりも大きくなるようにして、これらを明確に分離させる必要がある。
しかし、泳動路におけるイオンの移動は電流となるため、電場に掛けられた電圧との積で与えられる電力に対応するジュール熱が発生する。前記したように、ジュール熱の発生は水溶液を温度上昇させて、イオンに新たな乱流の発生を招くため、温度を妥当な範囲内に維持できるように除熱して、この乱流の発生を抑制する必要がある。
従来の電気泳動法においては、例えば、0.1mmφ程度の極細キャピラリーを用いて泳動路とすることにより、イオンの移動距離が乱流で広がることを抑制していた。この円筒状のキャピラリーは体積に対する表面積が大きいため、周囲から有効に熱を取り去ることが可能であるが、除熱に際しては、キャピラリーの周囲に大きな冷却スペースを設ける必要がある。例えば、直径0.1mmφ程度のキャピラリーであれば、その周囲に直径数cmの冷却スペースを設ける必要があり、冷却スペースを含めた泳動装置全体の断面積に対して泳動路自体(キャピラリー)の断面積の比が10−4〜10−5と小さくなる。このため、大量の濃縮・分離・分析を目的として多数のキャピラリーを配置することは、電気泳動装置の大きさが非常に大きくなることが避けられず、実用的な方法として適用することができなかった。
技術によれば、泳動路を設ける媒体(泳動媒体)として高熱伝導率の絶縁体を採用し、この泳動媒体中にイオン水溶液を泳動させる複数の泳動路が設けられているため、高い電場を掛けて、大量のイオン水溶液を泳動させても、充分に乱流の発生を抑制して、短時間で、充分に大きな移動距離の差を生み出させることができ、濃縮・分離・分析の効率を飛躍的に向上させることができる。
即ち、複数の泳動路(以下、「マルチチャネル」ともいう)が設けられた泳動媒体を用いることにより、大量のイオン水溶液を泳動させることが可能となるため、大量の濃縮・分離・分析を行うことができる。
そして、泳動媒体として高熱伝導率の絶縁体を用いているため、複数の泳動路に高い電場を掛けた場合でも、発生するジュール熱を高熱伝導率の泳動媒体を介して効率的に除熱することができるため、乱流の発生を充分に抑制して、短時間で、効率的な濃縮・分離・分析を行うことができる。
また、このように効率的に除熱することができるため、泳動路の径を、乱流の発生が予測される限度まで大きくすることが可能となり、より大量の濃縮・分離・分析を行うことができる。
この結果、上記したように、濃縮・分離・分析の効率を飛躍的に向上させることができ、気体の化合物が存在しないCaなどであっても、同位体を安価に濃縮・分離・分析して提供することができる。
さらに、高熱伝導率の泳動媒体中に複数の泳動路を設けても効率的な除熱が行われるため、泳動媒体全体の断面積に対する泳動路の断面積の比を小さくすることができ、電気泳動装置のコンパクト化を図ることができる。
なお、本技術に係る電気泳動装置は、上記のような同位体の濃縮・分離・分析のみならず、従来と同様に、単原子イオン、タンパク質、アミノ酸などの濃縮・分離・分析に使用することもできる。
そして、本技術において「高熱伝導率」とは、水溶液中をイオンが移動するに際して、チャネル内を支障なく移動することができる温度、具体的には、水の沸点(100℃)に対して充分に低い温度、具体的には、イオンの濃縮・分離・分析に影響を与えるような乱流を水溶液に生じさせない温度に維持できるように除熱することができる熱伝導率を意味し、チャネルの径や間隔および数などに応じて適宜選択される。
本発明に関連する第2の技術は、
前記泳動路が設けられている泳動媒体の熱伝導率が、30W/mK以上であることを特徴とする第1の技術に記載の電気泳動装置である。
技術における泳動媒体としては、前記したように、泳動路を複数設けても温度上昇を100℃以下に保つように有効に除熱することができ、乱流を引き起こすことがない高熱伝導率の絶縁体からなる泳動媒体が採用され、具体的には、通常の絶縁体に比べて100倍程度大きい30W/mK以上、より好ましくは50W/mK以上の熱伝導率を有する絶縁体からなる泳動媒体が好ましく使用される。なお、高熱伝導率である限り、熱伝導率の上限は特に限定されないが、コストなどを考慮すると、実用的には、300W/mK程度を上限とすることが好ましい。
このような高熱伝導率の絶縁体からなる泳動媒体を用いることにより、従来のキャピラリーよりも大きな径の泳動路を複数設けても、温度上昇を100℃以下に保つように有効に除熱でき、乱流を引き起こすことがない。具体的には、例えば、0.5mmφまで直径を大きくすることができ、直径0.1mmφ程度の極細チューブを用いるキャピラリー電気泳動法に比べて断面積を25倍程度にまで大きくすることができるため、泳動量を飛躍的に増加させることができる。
このような高熱伝導率を有する絶縁性物質、特に熱伝導率が50W/mK以上の絶縁性物質としては、例えば、BN、AlN、ダイヤモンドなどを挙げることができる。
本発明に関連する第3の技術は、
前記泳動媒体には、直径0.5mmφ以下の泳動路が、泳動媒体全体の断面積に対する泳動路の断面積の合計の割合が10−2〜10−1となるように、等間隔に複数配置されている
ことを特徴とする第2の技術に記載の電気泳動装置である。
高熱伝導率の泳動媒体を用いることにより、前記したように、従来のキャピラリーよりも大きな径の泳動路を設けることができるが、さらに、このような泳動路を複数設ける(マルチチャネル化)ことにより、より有効に熱を取り除くことができる。具体的には、泳動媒体全体の断面積に対する泳動路の断面積の合計の割合を、キャピラリー泳動法における10−5〜10−4から10−2〜10−1にまで、2〜4桁大きくすることができる。なお、泳動装置の断面は実質的に泳動媒体により占められていると考えることができるため、「泳動媒体全体の断面積」を「泳動装置全体の断面積」と考えてもよい。そして、泳動媒体全体の断面積の割合が同じ場合には、細い径の泳動路が多く設けられている方が好ましく、工作上の強度等の問題を考慮して、適切な径の泳動路を適切な泳動媒体全体の断面積の割合で設けることが好ましい。
この結果、装置の小型化を図りながら、十分な量の泳動が可能になる。なお、設けられる泳動路の径や上記面積割合は、泳動媒体の熱伝導率や泳動路の形状に合わせて適宜設定することができる。そして、複数の泳動路は、泳動媒体に熱の偏りが生じないように、等間隔に配置されていることが好ましい。また、複数の泳動路が等間隔に配置されている場合には、投入できる電力等の評価を容易に行うことができる。
本発明に関連する第4の技術は、
さらに、前記泳動路中の溶液に、前記イオンの泳動速度に対応した速度で、イオンの泳動方向とは逆方向の流れを生じさせる向流発生手段が設けられていることを特徴とする第1の技術ないし第3の技術のいずれかに記載の電気泳動装置である。
泳動路中の溶液に、イオンの泳動速度に対応した逆流(向流)を作用させることにより、イオンの移動距離を抑制することができるため、短い距離の泳動路であっても、実質的には長い泳動距離を確保することができ、移動距離の差が小さい同位体であっても充分に濃縮・分離・分析することができる。また、電気泳動装置のより小型化を図ることができる。
本発明に関連する第5の技術は、
濃縮・分離または分析の対象である物質のイオンを、電場が掛けられた泳動路に沿って移動させることにより濃縮・分離または分析する電気泳動方法であって、
高熱伝導率の絶縁体中に複数設けられている前記泳動路に電場を掛けることにより、電場により発生する熱を除熱し、向流による乱流の発生を抑制しながら、前記イオンを移動させて濃縮・分離または分析することを特徴とする電気泳動方法である。
前記したように、高熱伝導率の泳動媒体に複数の泳動路を設ける(マルチチャネル化)ことにより、従来のキャピラリー電気泳動法で用いられる一般的な電場に近い電場、具体的には100V/cm以上の電場を掛けても、乱流の発生を充分に抑制しながら有効に除熱することができるため、短時間で、大量のイオン水溶液を効率的に濃縮・分離・分析することができる。
ここで、一定の分離を得る条件では、電場の高さは濃縮・分離・分析に要する時間の平方根の逆数に比例し、泳動距離は電場の高さと時間との積で与えられるため、電場をn倍高くすることにより、濃縮・分離・分析に要する時間を1/nに短縮することができると共に、濃縮・分離・分析に要する泳動距離を1/nと短縮することができ、効率的な濃縮・分離・分析を行うことができる。
本発明に関連する第6の技術は、
前記濃縮・分離または分析の対象である物質が同位体元素であることを特徴とする第5の技術に記載の電気泳動法である。
上記の電気泳動法は、マルチチャネル化した泳動媒体を用いて、イオンに、短時間で、長距離の泳動を与えることが可能であるため、移動度の差が小さい同位体であっても、短時間で充分な距離を泳動させて、効率よく、大量に濃縮・分離・分析することができる。
本発明に関連する第7の技術は、
前記同位体元素が、48Caであることを特徴とする第6の技術に記載の電気泳動法である。
上記の電気泳動法は、移動度の差が小さい同位体であっても、短時間で充分な泳動をさせて、効率よく、大量に濃縮・分離・分析することができるため、近年注目されている同位体であって、遠心分離法の採用が不可能な気体の化合物が存在しないカルシウムの同位体の濃縮・分離・分析に好ましく適用することができ、また、質量分析法による分離に比べて、安価かつ大量に48Caを提供することができる。
本発明に関連する第8の技術は、
第5の技術ないし第7の技術のいずれかに記載の電気泳動法を用いて、対象となる物質のイオンを濃縮・分離または分析することを特徴とする濃縮・分離または分析方法である。
これらの電気泳動法は、短時間に大量のイオンを充分な距離泳動させることができるため、移動度の差が小さい同位体であっても、効率よく濃縮・分離・分析することができる。
本発明は、上記した各技術に基づくものであり、請求項1に記載の発明は、
濃縮・分離または分析の対象である物質のイオンを、電場が掛けられた泳動路に沿って移動させることにより濃縮・分離または分析する電気泳動方法であって、
前記泳動路が設けられている泳動媒体として、30W/mK以上の高熱伝導率を有する絶縁体であり、泳動路が、泳動媒体全体の断面積に対する泳動路の断面積の合計の割合が10 −2 〜10 −1 となるように、等間隔に複数配置されている泳動媒体を用いて、
高熱伝導率の絶縁体中に複数設けられている前記泳動路に電場を掛けることにより、電場により発生する熱を除熱し、向流による乱流の発生を抑制しながら、前記イオンを移動させて濃縮・分離または分析することを特徴とする電気泳動方法であり、
前記濃縮・分離または分析の対象である物質が、48Caであることを特徴とする電気泳動法である。
請求項に記載の発明は、
請求項に記載の電気泳動法を用いて、対象となる物質のイオンを濃縮・分離または分析することを特徴とする濃縮・分離または分析方法である。
本発明によれば、移動度の差が小さい同位体であっても、短時間で充分な距離の泳動をさせて、効率よく、大量に濃縮・分離・分析することができる電気泳動装置、電気泳動法および濃縮・分離・分析技術を提供することができる。
また、本発明を核燃料物質の濃縮・分離・分析に適用した場合には、工場を実験室に変えるようなコンパクト化を図ることができる。
本発明の一実施の形態における電気泳動装置を模式的に示す図である。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
1.実施の形態
(1)電気泳動装置の構成
図1は本実施の形態における電気泳動装置を模式的に示す図であり、(a)は電気泳動装置を正面から見た断面図、(b)は前記電気泳動装置に設けられた泳動媒体の正面図である。図1において、1は容器、2は泳動部、3は陽極板、4は陰極板、5は泳動媒体、6は向流発生部、7は泳動路(チャネル)、8はマルチチャネル部、9は陽極側撹拌部、10は陰極側撹拌部である。
容器1は縦断面の形状が略円形で両端が閉じられた筒状の容器であり、容器1の内部には、濃縮・分離・分析の対象である物質のイオンを含む水溶液が満たされており、泳動媒体5を挟んで所定の間隔で+電極となる陽極板3、および−電極となる陰極板4が配置されている。なお、容器1としては、泳動媒体5における除熱をより効果的に行う観点から、熱伝導性が高い絶縁体の材質を用いて形成されていることが好ましいが、コストと効果を考慮して適宜設定される。なお、本実施の形態においては、アクリル樹脂を用いている。
そして、陽極板3と泳動媒体5との間には陽極側撹拌部9が、また陰極板4と泳動媒体5との間には陰極側撹拌部10が設けられて、陽極板3と陰極板4との間に泳動部2が形成されている。
泳動媒体5には、図1(b)に示すように、断面形状が円形の泳動路7が多数設けられており(マルチチャネル化)、この泳動路7の中をイオンが移動する。泳動路7の直径としては0.5mmφまで大きくすることが可能で、本実施の形態においては、前記したように、工作上の強度等の問題を考慮して、泳動媒体全体の断面積に対する泳動路7の断面積の合計の割合が0.03となるように等間隔に配置したが、0.1程度まで高めることが可能である。また、本実施の形態においては、泳動媒体5を冷却するために銅管(図示せず)が巻かれており、中に水を通して冷却している。
Figure 0006207148

としては、特に条件は無いが、一般的に数cmに設定される。
泳動媒体5は、絶縁体で高い熱伝導率を有する物質、好ましくは熱伝導率が30W/mK以上、より好ましくは50W/mK以上の物質、例えば、BNなどを用いて形成されている。このように高い熱伝導率を有する物質を用いて泳動媒体5が形成されているため、直径0.1mmφ程度の極細チューブを用いるキャピラリー電気泳動法に比べて大きな直径の複数の泳動路7に同程度の高い電場を掛けた場合でも、発生するジュール熱を充分に取り除くことができ、泳動路7における乱流の発生が抑制される。
なお、この電気泳動装置には、図1(a)に示すように、さらに、向流発生部6が設けられていることが好ましい。向流発生部6を設けて、イオンの泳動速度に対応した逆流(向流)を作用させることにより、イオンの移動距離を抑制して、実質的に長い泳動距離を短い距離の泳動路7で確保することができるため、電気泳動装置を大型化することなく、濃縮・分離することができ好ましい。
(2)同位体の濃縮・分離・分析
次に、上記の電気泳動装置を用いた同位体の濃縮・分離・分析について説明する。
最初に、容器1内に、対象となる同位体のイオンが含まれた水溶液、例えば、48Caが含まれたCaイオンの水溶液などを充填する。
次に、陽極板3と陰極板4との間に所定の電圧を印加し、電場を形成させる。好ましい電場は100V/cm以上であり、これは、キャピラリー電気泳動法における電場とほぼ同程度の電場である。
このように大きな電場を掛けることができるのは、前記したように、高熱伝導率の泳動媒体5中に泳動路7が設けられているため、発生するジュール熱を充分に取り除くことができ、泳動路7における乱流の発生が抑制されるからである。
電場が形成されることにより、泳動路7内を、カチオンは陰極板4側に、アニオンは陽極板3側にそれぞれ泳動する。
このとき、質量が異なる同位体は異なる移動速度を持つため、充分な距離を泳動させることにより、質量が異なる同位体の濃縮・分離を行うことができる。
本実施の形態においては、前記したように、従来のキャピラリー電気泳動法に比べて大きな直径の泳動路7に高い電場を掛けても、発生するジュール熱を充分に取り除いて乱流の発生を抑制することができるため、大量の水溶液を効率的に濃縮・分離・分析することができる。
なお、上記において、濃縮・分離・分析の対象となるカチオンの泳動速度と同程度で、図1(a)に矢印で示すように、カチオンとは逆方向の流れ(向流)を作用させると、カチオンの実質的な移動速度は非常に小さくなるため、泳動路7の長さ
Figure 0006207148

に対して実際の泳動距離を大きく伸ばすことができる。
前記したように、質量が異なる同位体は、異なる移動速度を持つため、向流の速度をその中間に設定すると、平均の速度が0となって、移動速度が遅い同位体は図1(a)において左側の陽極側に、移動速度が速い同位体は図1(a)において右側の陰極側に集まることになるため、質量が異なる同位体の濃縮・分離・分析をより効率的に行うことができる。
2.理論面からの考察
次に、本発明に係る電気泳動法の理論面からの考察について、同じく図1を参照しながら説明する。
(1)基本的な考え方
前記したように、電気泳動法によるイオンの濃縮・分離・分析は、泳動路7に電場を掛けて、イオンの移動度の差が濃縮・分離・分析に充分な泳動距離の差を生み出すまで、イオンを泳動させることにより達成することができるが、短時間で、大量に濃縮・分離・分析するためには、拡散による広がりより大きな移動距離の差を生み出させると共に、電圧との積で与えられる電力に対応するジュール熱を適切に除熱する必要がある。
(2)具体的な方策
細い泳動路を用いると、イオンの移動距離が乱流によりさらに広がることを避けることができる。また体積に対する表面積が大きいので周りから熱を有効に取り去ることができる。しかし、前記したように、泳動に使える有効な断面積が小さいので、大量のイオンの濃縮(分離)に向いていない。
そこで、本発明者は、イオンの濃縮(分離)の効率を上げる方法と、発生したジュール熱を除去する方法の2つに着目し、
イ)細い泳動路(チャネル)7を高熱伝導率の絶縁体からなる泳動媒体5中に設けることで、乱流の発生を抑制すると共に発生したジュール熱を有効に除去する、
ロ)泳動路(チャネル)7の数を多くするマルチチャネル化を行うことにより、大量の分離を可能にする、
ハ)各泳動路(チャネル)7の形状と配置を、除熱の観点から最適化すると共に、電場を高くすることにより、電力当たりの分離効率を向上する、
ことにより、濃縮・分離・分析の効率を飛躍的に向上させることができると考えた。
なお、本発明者は、このような電気泳動法を、「マルチチャネル向流電気泳動法」(MCCE: Multi−Channel Counter current Electrophoresis)と名付けた。以下、マルチチャネル向流電気泳動法の考え方に付き説明する。
(3)マルチチャネル向流電気泳動法
(a)基本方程式
泳動媒体5の断面積をS、マルチチャネル部8の開口断面積の合計をSMCとする。電圧は電極で与えられる。このとき、基礎となる方程式は、電荷密度と電位の関係を与えるポアッソンの方程式(1.1)、電荷の保存則(1.2)、オームの法則(1.3)であり、それぞれ以下のように表される。なお、Vは電位、ρは電荷密度、
Figure 0006207148

は電流密度、Δはラプラス演算子、∇はナブラ微分演算子、εは水溶液の誘電率、κは水溶液(イオン水溶液)の電気伝導度である。
Figure 0006207148
Figure 0006207148
Figure 0006207148
(b)実際の関係式
本実施の形態においては、定常状態を考えているため、時間微分は0となる。また、泳動路7を移動する水溶液は導体であるため、電荷分布ρも0となる。この結果、上記の式(1.2)において電流密度は
Figure 0006207148

となる。これを攪拌部(陽極側撹拌部9および陰極側撹拌部10)とマルチチャネル部8との境界に適用すると、流れ込む電流と流れ出す電流は同じ
Figure 0006207148

であることから、
Figure 0006207148

となり、マルチチャネル部8における電流密度は、下記の式(2.1)で表される。なお、式(2.1)において、添え字はAが攪拌部を表し、MCがマルチチャネル部を表す。
Figure 0006207148

となる。
電気伝導度(κ)が場所に依らず一定とすると、オームの法則(1.3)によって、電場にも電流密度と同様の
Figure 0006207148

という関係がある。
そして、電極間の電圧Vとマルチチャネル部に掛かる電圧VMCと攪拌部の電圧Vの関係は、攪拌部の長さを陽極側と陰極側の和、即ち、
Figure 0006207148

を用いると、
Figure 0006207148

と表すことができる。ここで、マルチチャネル部8の開口断面積SMCは泳動路の断面積Sに比較して遙かに小さい、即ち、
Figure 0006207148

であるため、マルチチャネル部8における電場は攪拌部に比較して充分大きく、即ち、
Figure 0006207148

となる。この結果、殆どの電圧がマルチチャネル部8に掛かるようにすると、ジュール熱は殆ど泳動路7において発生することになる。
(c)泳動路における消費電力
マルチチャネル部8の泳動路7において発生する電力、即ちジュール熱
Figure 0006207148

は、電流と電圧の積、即ち、
Figure 0006207148

を泳動路7内で体積積分することで与えられるため、
Figure 0006207148

と表すことができる。なお、上記式(2.3)の最後の式を得るに当たっては、
Figure 0006207148

および
Figure 0006207148

の近似を用いた。
電極間における電力はほぼ電極間の電流と電圧の積のIVで与えられるが、上記の式(2.3)より、マルチチャネル部8の泳動路7における電力の場合には、攪拌部で消費される電力分、即ち、
Figure 0006207148

だけ少なくなっていることが分かる。
(d)電場と分離に要する時間
(イ)泳動速度と電場と電力
電場によるイオンの移動泳動速度は移動度と電場の積で与えられる。また、塩の溶液における電気伝導度は、カチオンとアニオンの移動度と濃度で与えられる。
例えば、CaCl溶液の場合、Caイオンの泳動速度は0.59mm/s/[100V/cm]であり、Clイオンの泳動速度は0.77mm/s/[100V/cm]である。
また、元素が同じでも同位体によって(例えば40Caと48Ca)小さいながら移動度が違うことが知られている。この小さい差を利用して濃縮・分離・分析を行うためには、長距離の泳動を必要とする。
(ロ)拡散
泳動による同位体の分離効率や目的とするイオンの分離効率は、拡散との関係で与えられる。電気泳動によって泳動距離に同位体間で差が生じても、その差が拡散による移動距離の広がりに比較して大きくなければ分離の効率は上がらない。ここで、拡散は溶液中のイオンが熱運動でランダムな方向に移動することを反映している。
ある時間(t秒)経過後の位置の広がりはガウス関数で与えられ、その広がりを表す幅(σ)は拡散係数Dと時間tを用いて、下記式(3.1)に示すように、時間の平方根に比例する。
Figure 0006207148
前記したCaCl溶液の場合、Caイオンの水中での拡散係数は常温で7.9×10−10[m/s]である。また、具体的なσの値は、例えば、1秒で0.039mm、10000秒では3.9mmである。
実際には、この他に泳動路の乱流や泳動速度の場所依存性などが更なる拡散を引き起こし、その寄与が無視できない場合が多いが、装置の工夫で原理的には抑えることができる。
そして、充分な濃縮・分離・分析を達成するためには、同位体の泳動距離の差が、上記のσより充分大きくなる条件を実現する必要がある。
(ハ)電場と分離効率
電場による泳動距離は、移動度μと電場Eにより表すことができるため、時間tに移動する距離
Figure 0006207148

は、下記式(3.2)のように表すことができる。
Figure 0006207148
前記したように、移動度は同位体によって差があるため、例えば、40Caと48Caの場合について、その差
Figure 0006207148

が生み出す泳動距離の差
Figure 0006207148

が、拡散による距離の広がりを示す式(3.1)に比べて充分に大きく、即ち、下記式(3.3)の条件を満たすことができれば、分離が可能になる。
Figure 0006207148
上記式(3.3)を、両辺が等しいときの電場と時間の関係に直すと、下記式(3.4)または(3.5)のように表すことができる。
Figure 0006207148
Figure 0006207148
上記式において、DおよびΔμは溶液の種類と濃度で決まる定数であるため、電場Eは時間の平方根の逆数で与えられることになる。即ち、電場をn倍強くすれば分離に必要な時間が1/nで短くなり、式(3.2)の電場と時間の積で与えられる泳動距離は1/nになる。
前記したように、非特許文献1では、キャピラリー電気泳動法により、900時間で23mに対応する泳動を行い、30%の濃縮を達成している。このとき、Caの泳動速度から電場は1.2V/cmであったと推定される。
キャピラリー電気泳動法の場合、数100V/cmの電場が一般的であるため、例えば電場が100倍になると同じ分離を得るための時間は1/10000、泳動距離は1/100になって、大きく効率の向上を図ることが可能である。
しかし、式(2.3)で与えられる単位体積当たりの電力は電圧の二乗に比例して、10000倍となるため、発生するジュール熱を制御することが鍵となる。キャピラリー電気泳動法では、極細チューブの周りを水で冷却することで高い電圧に伴う単位体積当たりの高いジュール熱を取り去り、少量のサンプルを分析する用途に使われている。しかし、大量の濃縮(分離)に向いていない。
(ニ)電場と分離に要する電力
前記したように、電場(単位長さ辺りの電圧)をn倍にすると、単位体積・時間当たりの電力はn倍になるが、分離に必要な時間は1/n、泳動距離は1/nで良いため、電場の掛かる体積もほぼ1/nになる。この結果、一定量を濃縮・分離・分析するために投入される全エネルギー(電力×時間)をほぼ1/nに減らすことができるため、投入する電力が一定の条件下では、電場を高くした方が総合的に分離効率を向上させることができることが分かる。
(e)放熱とマルチチャネル
(イ)電力と放熱
電場をn倍にしたときにn倍になる電力はジュール熱となってそのまま水溶液の発熱に使われる。キャピラリー電気泳動法では周りを冷却水で冷やすことで、この熱を取り去っているが、冷却のためにキャピラリーの直径は0.1mm程度と細く、周りに数cmの冷却のスペースを必要とするため、全体の断面積の中で泳動路の断面積の比は10−4〜10−5と小さい。
本発明においては、泳動量を増やすために熱伝導率の高い物質を用いて作製された泳動媒体中に泳動路(チャネル)を多数設けている。これにより、以下に示すように、冷却を有効に行いながら泳動路の断面積の割合を10−1〜10−2まで増やすことを可能にしている。
(ロ)マルチチャネルのパラメーター
1つのチャネルを半径rで長さ
Figure 0006207148

の円柱としたとき、熱は中の水溶液に接するチャネル側面から逃げると考えられる。そして、温度勾配があるときに単位時間および単位面積当たりに移動する熱量、即ち、除熱量J[W/m]は、以下の式(4.1)で与えられる。なお、λは熱伝導率で物質固有の値で、gradTは温度勾配である。
Figure 0006207148
前記したように、除熱はチャネルの側面から行われるため、その面積は
Figure 0006207148

で表すことができる。なお、添え字のcは1個のチャネルを意味するが、長さは複数のチャネルのいずれにおいても同じであるため、
Figure 0006207148

である。
一方、各チャネルで発生する電力Pは、チャネル内の電力密度ρに体積を掛けることにより求めることができ、下式(4.2)、(4.3)と表すことができる。
Figure 0006207148
Figure 0006207148
ここで、チャネル内の溶液で発生する電力(P)は側面の面積から側面から逃げるパワー(J×側面積)と定常状態では釣り合っているため、Jについて、下式(4.4)に示す関係を得ることができる。
Figure 0006207148
前記式(4.1)より、除熱される熱量は温度勾配gradTが一定の条件ではλに比例することが分かる。キャピラリー電気泳動法で用いられる樹脂製のチューブのλは0.5前後であるが、本発明において用いる泳動媒体においては、例えばBNを用いた場合では、結晶で2000、焼結のセラミックでも50程度のλを容易に得ることができるため、Jを100倍から数1000倍にまで上昇させることが可能となる。
(ハ)マルチチャネル領域の冷却
前記したように、キャピラリー電気泳動法では0.1mmφ程度の極細チューブを用いることが多い。これに対して、本発明の泳動媒体のBNはλが100倍以上大きいため、式(4.4)より電力密度又は半径を(乱流を引き起こさない程度に)大きく設定することが可能となる。単純には、式(4.1)と式(4.4)より半径rはλの平方根に比例して大きくできる。
例えば、泳動路(チャネル)の太さを0.5mmφ程度にすると断面積は25倍に増え、その上でチャネルを多く設置(マルチチャネル化)することにより、泳動量を更に増やすことができる。この場合、各チャネルは熱源となるが、泳動路媒体に多数設けられているため、熱源が一様に存在すると考えることができる。
そこで、以下においては、マルチチャネル領域が円形の場合について除熱を評価する。マルチチャネル領域を半径RMCの内側とし、半径Rの位置が冷却系に接しているとすると、側面から逃げる熱量は下式(4.5)と表すことができる。なお、電力密度ρは各チャネルで発生する全電力をマルチチャネル泳動媒体の体積で割ったものであり、平均の電力密度である。
Figure 0006207148
ここで、温度勾配は半径方向だけにあるので、式(4.1)は、
Figure 0006207148

と表すことができ、これを変形させた
Figure 0006207148

を、r=Rからr=0まで積分することにより、下式(4.6)に示すように、水溶液の温度Tを求めることができる。なお、Tは周りの冷却系の温度である。
Figure 0006207148
このTが100℃より充分に低ければ乱流の発生を抑制することができる。
例えば、図1(b)において、RMC=2cm、R=4cmでλ=63の泳動媒体を用いて、温度の上昇を50℃までに押さえようとすると、電力密度は1.2×10[W/m](12[W/cm])と求まり、水1cc当たり12W投入できることになる。これを非特許文献1の場合における電力密度と比較すると、非特許文献1の場合は1cc当たり約0.1Wであり、本発明を適用することにより、ほぼ100倍大きく電力を投入できることが分かる。
このとき、最大の温度勾配はr=RMCの位置で、2000℃/m(2℃/mm)となり、1cmで20℃変化することになる。
ここで使用した泳動媒体(マルチチャネル媒体)では0.5mmφの穴(泳動路)が2.5mm毎に設けられており、チャネルの断面積の合計は、泳動媒体全体の断面積の3.14%(3.14×10−2)に相当する。温度上昇の抑制の観点からは、泳動路の配置密度を高くして、チャネルの断面積の合計の割合が10−1を超えても問題ないが、泳動媒体の材質の強度等工作上の問題を考慮すると、チャネルの断面積の合計の割合は10−2〜10−1(1〜10%)とすることが好ましい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の原理を用いて、本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
1 容器
2 泳動部
3 陽極板
4 陰極板
5 泳動媒体
6 向流発生部
7 泳動路(チャネル)
8 マルチチャネル部
9 陽極側撹拌部
10 陰極側撹拌部

Claims (2)

  1. 濃縮・分離または分析の対象である物質のイオンを、電場が掛けられた泳動路に沿って移動させることにより濃縮・分離または分析する電気泳動方法であって、
    前記泳動路が設けられている泳動媒体として、30W/mK以上の高熱伝導率を有する絶縁体であり、泳動路が、泳動媒体全体の断面積に対する泳動路の断面積の合計の割合が10 −2 〜10 −1 となるように、等間隔に複数配置されている泳動媒体を用いて、
    高熱伝導率の絶縁体中に複数設けられている前記泳動路に電場を掛けることにより、電場により発生する熱を除熱し、向流による乱流の発生を抑制しながら、前記イオンを移動させて濃縮・分離または分析することを特徴とする電気泳動方法であり、
    前記濃縮・分離または分析の対象である物質が、48Caであることを特徴とする電気泳動法。
  2. 請求項に記載の電気泳動法を用いて、対象となる物質のイオンを濃縮・分離または分析することを特徴とする濃縮・分離または分析方法。
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