JP6203896B1 - 内燃機関のノッキング検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 周波数成分強度を二値化する際に適用する二値化閾値の設定、及びノイズ成分強度の算出をより適切に実行し、ノッキング判定精度を高める。【解決手段】 周波数成分分析によって得られる検出強度マップデータSTFTに基づいて、ノイズ成分強度データSNOISEが気筒毎に算出され、検出強度マップデータSTFTがノイズ成分強度データSNOISEにより補正され、さらに二値化閾値STJUDを用いて二値化される。二値化マップデータBSTFTと、ノッキングが発生した状態に対応するマスタマップデータBMSTとを比較することより、ノッキングが発生したか否かが判定される。二値化閾値STJUDは、複数の気筒のそれぞれに対応し、かつ検出強度マップにおける格子点のそれぞれに対応して設定された補正係数CJUD,CJUDHを用いて算出される。【選択図】 図3
Description
本発明は、内燃機関のノッキング検出装置に関し、特にノッキングセンサの出力信号に含まれる周波数成分の強度の時系列データに基づいてノッキングの発生を判定するものに関する。
特許文献1には、ノッキングセンサの出力信号に含まれる周波数成分強度の時系列データに基づいてノッキングの発生を判定するノッキング検出装置が示されている。この装置によれば、複数の周波数成分強度の時系列データが、クランク角度位置及び周波数で定義される2次元マップとして格納されるとともに、周波数成分強度の時系列データが二値化され、二値化された時系列データの2次元マップと、ノッキングが発生した状態に対応するマスタパターンデータの2次元マップとを比較することより、ノッキングが発生したか否かが判定される。
ノッキングセンサの出力信号には、吸気弁の着座時に発生するノイズなどのノイズ成分が含まれているため、特許文献1に示された装置では、ノイズ成分強度を算出して、周波数成分強度の時系列データをノイズ成分強度によって補正する処理、及び周波数成分強度を二値化する際に適用する二値化閾値を機関運転状態に応じて設定する処理が行われる。
しかしながら、気筒数や気筒配置などで代表される機関の構造やノックセンサの装着位置などに依存して、クランク角度位置及び周波数で定義される2次元マップにおけるノイズ成分強度の分布が変化し、さらに気筒毎にノイズ成分強度が変化することがあり、そのようなノイズ成分強度の変化によってノッキングの判定精度が低下する場合があることが確認されている。
本発明はこの点に着目してなされたものであり、周波数成分強度を二値化する際に適用する二値化閾値の設定、及びノイズ成分強度の算出をより適切に実行し、ノッキング判定精度を高めることができるノッキング検出装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、複数の気筒を備える内燃機関に装着されたノックセンサ(11R,11L)の出力信号に基づいてノッキングを検出する、内燃機関のノッキング検出装置において、所定クランク角度間隔で前記ノックセンサ出力信号の周波数成分分析を行う周波数成分分析手段と、前記周波数成分分析により得られる、複数の周波数成分の強度の時系列データ(STFT(i,j))を、クランク角度位置(i)及び周波数(j)で定義される2次元マップとして格納するデータ格納手段と、前記周波数成分強度の時系列データ(STFT(i,j))に基づいて、ノイズ成分強度の時系列データ(SNOISE(i,j,k))を前記複数の気筒のそれぞれに対応して算出するノイズ成分強度算出手段と、前記周波数成分強度の時系列データ(STFT(i,j))を前記ノイズ成分強度の時系列データ(SNOISE(i,j,k))により補正するノイズ補正手段と、前記ノイズ補正手段による補正後の時系列データ(STFTC(i,j))を、前記機関の運転状態に応じて設定される二値化閾値(STJUD(i,j,k))を用いて二値化する二値化手段と、前記二値化された時系列データ(BSTFT(i,j))の2次元マップと、ノッキングが発生した状態に対応するマスタパターンデータ(BMST(i,j))の2次元マップとを比較することより、ノッキングが発生したか否かを判定するノッキング判定手段とを備え、前記二値化手段は、前記二値化閾値の基本値(STJUDB)を前記機関の運転状態に応じて算出する基本値算出手段と、前記複数の気筒のそれぞれに対応し、かつ前記2次元マップにおける格子点のそれぞれに対応して設定された補正係数(CJUD(i,j,k),CJUDH(i,j,kH))を用いて前記基本値(STJUDB)を補正することにより、前記複数の気筒のそれぞれに対応し、かつ前記2次元マップにおける格子点のそれぞれに対応した前記二値化閾値(STJUD(i,j,k))を算出する二値化閾値算出手段とを含むことを特徴とする。
この構成によれば、所定クランク角度間隔でノックセンサ出力信号の周波数成分分析が行われ、その周波数成分分析により得られる、複数の周波数成分の強度の時系列データが、クランク角度位置及び周波数で定義される2次元マップとして格納される。周波数成分強度の時系列データに基づいて、ノイズ成分強度の時系列データが気筒毎に算出され、周波数成分強度の時系列データがノイズ成分強度の時系列データにより補正される。補正後の時系列データが二値化閾値を用いて二値化され、その二値化された時系列データの2次元マップと、ノッキングが発生した状態に対応するマスタパターンデータの2次元マップとを比較することより、ノッキングが発生したか否かが判定される。さらに二値化閾値の基本値が機関の運転状態に応じて算出されるとともに、複数の気筒のそれぞれに対応し、かつ2次元マップにおける格子点のそれぞれに対応して設定された補正係数を用いて基本値を補正することにより、複数の気筒のそれぞれに対応し、かつ2次元マップにおける格子点のそれぞれに対応した二値化閾値が算出され、上記時系列データの二値化に適用される。機関の構造あるいはノックセンサの装着位置に依存して、機関運転状態の変化がノイズ成分強度に与える影響が、気筒毎に異なる場合や、ノイズ成分の周波数帯域や出現時期に依存して変化する場合がある。したがって、複数気筒のそれぞれに対応したノイズ成分強度の算出を行い、さらに複数気筒のそれぞれに対応し、かつ2次元マップの格子点のそれぞれに対応して二値化閾値を設定することにより、気筒毎に異なり、かつマップ格子点毎に異なるノイズ成分強度に対応して、二値化閾値をより適切に設定してノイズ成分の影響を低減することが可能となり、ノッキング判定精度を高めることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関のノッキング検出装置において、前記補正係数(CJUD(i,j,k),CJUDH(i,j,kH))は、前記複数の気筒のそれぞれに対応したノイズ成分強度の時系列データ(SNOISE(i,j,k))に基づいて予め設定されており、前記ノイズ成分強度が高いほど前記二値化閾値(STJUD(i,j,k))を増加させるように設定されることを特徴とする。
この構成によれば、複数気筒のそれぞれに対応したノイズ成分強度の時系列データに基づいて、各補正係数が予め設定されており、気筒毎にノイズ成分の発生状態が異なる場合にはその気筒毎のノイズ成分発生状態に対応した格子点毎の補正係数の設定を行い、ノイズ成分強度が高いほど二値化閾値を増加させることによって、ノイズ成分の影響を低減してノッキング判定精度を高めることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1また2に記載の内燃機関のノッキング検出装置において、前記二値化閾値算出手段は、前記機関が、特定の気筒(例えば#5気筒)においてノイズ成分強度が増加する特定運転状態にあると判定されたときは、前記特定の気筒に対応する前記二値化閾値(STJUD(i,j,kH))を増加させるように前記補正係数を修正する(CJUD(i,j,kH)→CJUDH(i,j,kH))ことを特徴とする。
この構成によれば、機関が、特定の気筒においてノイズ成分強度が増加する特定運転状態にあると判定されたときは、その特定の気筒に対応する二値化閾値を増加させるように補正係数が修正されるので、特定運転状態において特定気筒におけるノッキング判定精度が低下することを防止できる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関のノッキング検出装置において、前記二値化閾値算出手段は、前記クランク角度位置が、対象気筒の燃焼行程開始時期に比較的近い範囲で前記二値化閾値(STJUD(i,j,k))の増加量が大きくなるように、前記補正係数の修正を行うことを特徴とする。
この構成によれば、クランク角度位置が、対象気筒の燃焼行程開始時期に比較的近い範囲で二値化閾値の増加量が大きくなるように、補正係数の修正が行われる。ノイズ成分強度は燃焼行程開始時期に比較的近い範囲で大きくなる傾向があるので、クランク角度位置が燃焼行程開始時期に比較的近い範囲で二値化閾値の増加量が大きくなるように修正を行うことによって、ノッキング判定精度の低下を防止できる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか1項に記載の内燃機関のノッキング検出装置において、前記ノイズ補正手段は、前記機関の回転数の今回検出値(NEP)と、前回検出値(NEZ)との比(NEP/NEZ)を二乗することよって、過渡補正係数(KCDNE)を算出する過渡補正係数算出手段を含み、前記ノイズ成分強度(SNOISE(i,j,k))に前記過渡補正係数(KCDNE)を乗算して補正ノイズ成分強度(SNOISE(i,j,k)×KCDNE)を算出し、前記周波数成分強度(STFT(i,j,k))から補正ノイズ成分強度を減算することによって前記補正を行うことを特徴とする。
この構成によれば、機関回転数の今回検出値と、前回検出値との比を二乗することよって、過渡補正係数が算出され、ノイズ成分強度に過渡補正係数を乗算して補正ノイズ成分強度が算出され、周波数成分強度から補正ノイズ成分強度を減算することによって、ノイズ成分が除去された時系列データが算出される。ノイズ成分強度は、機関回転数が増加するほど増加し、機関回転数の二乗にほぼ比例することが確認されているので、過渡補正係数を用いて補正ノイズ成分強度を算出することにより、機関回転数が急変した場合におけるノイズ成分の影響を適切に低減し、機関回転数が変化する過渡状態においても正確な判定を行うことができる。
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその制御装置の構成を示す図であり、エンジン1は例えばV型6気筒の過給機(図示せず)を備えるエンジンである。エンジン1の吸気通路2にはスロットル弁3が設けられている。エンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気通路2の図示しない吸気弁の少し上流側には、燃料噴射弁6が各気筒毎に設けられており、燃料噴射弁6は電子制御ユニット(以下「ECU」という)5によってその作動が制御される。エンジン1の各気筒には、点火プラグ7が設けられており、点火プラグ7にはECU5から点火信号が供給される。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその制御装置の構成を示す図であり、エンジン1は例えばV型6気筒の過給機(図示せず)を備えるエンジンである。エンジン1の吸気通路2にはスロットル弁3が設けられている。エンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気通路2の図示しない吸気弁の少し上流側には、燃料噴射弁6が各気筒毎に設けられており、燃料噴射弁6は電子制御ユニット(以下「ECU」という)5によってその作動が制御される。エンジン1の各気筒には、点火プラグ7が設けられており、点火プラグ7にはECU5から点火信号が供給される。
スロットル弁3の下流側には吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ8、及び吸気温TAを検出する吸気温センサ9が設けられている。エンジン1の本体には、エンジン冷却水温TWを検出する冷却水温センサ10及び非共振型のノックセンサ11R,11Lが装着されている。ノックセンサ11Rは、#1〜#3気筒が配置された第1バンクに装着され、ノックセンサ11Lは、#4〜#6気筒が配置された第2バンクに装着されている。ノックセンサ11Rは#1〜#3気筒におけるノッキングの検出に使用され、ノックセンサ11Lは#4〜#5気筒におけるノッキングの検出に使用される。ノックセンサ11R,11Lとしては、例えば5kHzから25kHzまでの周波数帯域の振動を検出可能なものが使用される。吸気通路2のスロットル弁3の上流側には、吸入空気流量GAを検出する吸入空気流量センサ13が設けられている。
エンジン1のクランク軸及びカム軸(図示せず)には、それらの回転角度を検出する角度位置センサ12が設けられている。角度位置センサ12は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)を出力する気筒判別センサ、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置で(6気筒エンジンではクランク角120度毎に)TDCパルスを出力するTDCセンサ及びTDCパルスより短い一定クランク角周期(例えば6度周期)で1パルス(以下「CRKパルス」という)を発生するCRKセンサから成り、CYLパルス、TDCパルス及びCRKパルスがECU5に供給される。これらのパルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御、エンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。
エンジン1は、吸気弁の弁リフト量及び開角(開弁期間)を変更する第1弁作動特性可変機構と、吸気弁を駆動するカムの、クランク軸回転角度を基準とした作動位相を連続的に変更する第2弁作動特性可変機構とを有する弁作動特性可変装置20を備えている。
上述した各種センサ及び図示しない他のセンサ(スロットル弁の開度を検出するスロットル弁開度センサ、エンジン1によって駆動される車両のアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ、当該車両の車速を検出する車速センサなど)は、ECU5に接続されており、ECU5は、各種センサの検出信号に基づいて、燃料噴射弁6及び点火プラグ7の駆動制御、弁作動特性可変装置20の制御を行うとともに、ノックセンサ11R、11Lの出力信号に基づくノッキング検出を行う。
本実施形態では、ノックセンサ11R,11Lの出力信号を、CRKパルスの発生毎にサンプリング周期20マイクロ秒でサンプリングして周波数成分分析を行い、その分析の結果得られる周波数成分強度の時系列データに基づいてノッキング判定を行う。このノッキング判定の手法は、特許文献1に示された手法を改良したものに相当する。
特許文献1に示されたノッキング判定手法(以下「基本判定手法」という)は、以下のステップを含むものである。
1)ノックセンサ出力信号の周波数成分分析を、CRKパルスの発生に同期して実行し、この周波数成分分析によって得られる、複数の周波数成分の強度の時系列データを、クランク角度位置及び周波数で定義される2次元マップとして格納し(以下この2次元マップを「検出強度マップ」といい、このマップ上のデータを「検出強度マップデータ」という)、
1)ノックセンサ出力信号の周波数成分分析を、CRKパルスの発生に同期して実行し、この周波数成分分析によって得られる、複数の周波数成分の強度の時系列データを、クランク角度位置及び周波数で定義される2次元マップとして格納し(以下この2次元マップを「検出強度マップ」といい、このマップ上のデータを「検出強度マップデータ」という)、
2)ノッキングが発生していないと判定されたときの周波数成分強度の時系列データを、平均化することによってノイズ成分強度の時系列データを算出し(以下この時系列データを格納した2次元マップを「ノイズ成分強度マップ」といい、このマップ上のデータを「ノイズ成分強度マップデータ」という)、
3)検出強度マップデータから、対応するノイズ成分強度マップデータを減算することによって、ノイズ成分の影響を除いた補正周波数成分強度の時系列データを算出し(以下この時系列データを格納した2次元マップを「ノイズ補正マップ」といい、このマップ上のデータを「ノイズ補正マップデータ」という)、
4)ノイズ補正マップデータを、二値化閾値を用いて二値化することにより、二値化時系列データを算出し(以下この時系列データを格納した2次元マップを「二値化マップ」といい、このマップ上のデータを「二値化マップデータ」という)、
5)二値化マップと、ノッキングが発生した状態に対応するマスタパターンデータの2次元マップ(マップ上の格子点には「0」または「1」が設定されているマップであり、以下この2次元マップを「マスタマップ」といい、このマップ上のデータを「マスタマップデータ」という)との適合率を算出し、算出した適合率が適合率閾値を超えたときに、ノッキングが発生したと判定する。
図2は、この基本判定手法の課題を説明するための図であり、ノッキングが発生していない状態において周波数成分分析によって得られる周波数成分強度の最大値STFTMAXと、エンジン回転数NEとの関係を示す。すなわち、最大値STFTMAXは、ノッキングによって発生する特有の周波数成分強度以外のノイズ成分強度の最大値に相当する。この図において実線で示す特性は、エンジン1の特定気筒(例えば#5気筒)に対応し、破線で示す特性は特定気筒以外の気筒に対応する。このようにエンジン1の高回転運転状態で特定気筒の燃焼行程におけるノイズ成分強度が増加することが確認され、このエンジン1におけるノッキング判定に基本判定手法をそのまま適用すると、高回転運転状態で特定気筒におけるノッキングの判定精度が低下するという課題がある。なお、エンジン1の高負荷運転状態においても特定気筒の燃焼行程におけるノイズ成分強度が増加する点も確認されている。
この課題を解決するため本実施形態では、以下のような改良を行った。
1)基本判定手法では、ノイズ成分強度マップは全気筒共通の単一マップであるが、本実施形態では、複数気筒のそれぞれに対応したノイズ成分強度マップを設けることとした。
1)基本判定手法では、ノイズ成分強度マップは全気筒共通の単一マップであるが、本実施形態では、複数気筒のそれぞれに対応したノイズ成分強度マップを設けることとした。
2)基本判定手法では、二値化閾値はエンジン運転状態に応じて設定され、全気筒に共通の値が適用されるが、本実施形態では複数気筒のそれぞれに対応した二値化閾値を適用することとした。
3)基本判定手法では、ノイズ補正マップデータは単一の二値化閾値を用いて二値化されるが、本実施形態ではノイズ補正マップの各格子点に対応して設定された二値化閾値を適用することとした。
4)基本判定手法では、検出強度マップデータからノイズ成分強度マップデータを減算することにより、ノイズ補正マップデータが算出されるが、本実施形態ではエンジン回転数NEが急変したときに、ノイズ成分強度マップデータを補正して検出強度マップデータから減算することとした。
エンジン1では高回転運転状態及び高負荷運転状態で特定気筒のノイズ成分強度が増加する傾向が確認されたが、より一般的にはエンジン1の構造あるいはノックセンサ11R,11Lの装着位置に依存して、エンジン運転状態の変化がノイズ成分強度に与える影響が、気筒毎に異なる場合や、ノイズ成分の周波数帯域や出現時期よって異なる場合がある。したがって、複数気筒のそれぞれに対応したノイズ成分強度マップを設け、さらに複数気筒のそれぞれに対応し、かつノイズ補正マップの格子点のそれぞれに対応して二値化閾値を設定することより、気筒毎に異なり、かつマップ格子点毎に異なるノイズ成分強度に対応して、二値化閾値をより適切に設定し、ノイズ成分の影響を低減することが可能となる。その結果、上述したような特定気筒におけるノッキング判定精度の低下を防止し、ノッキング判定精度を高めることができる。またエンジン回転数NEが急変したときに、ノイズ成分強度マップデータを補正して検出強度マップデータから減算することにより、エンジン回転数NEが急変する過渡状態においても正確なノッキング判定を行うことができる。
図3は、基本判定手法を改良した手法でノッキング判定を行う処理のフローチャートである。この処理は、TDCパルスの発生に同期してECU5で実行される。
ステップS11では、クランク角度6度毎に実行される高速フーリエ変換によって、周波数5kHz〜20kHzまでの周波数範囲において、5,6,…,19,20kHzの周波数成分強度STFTが算出され、図8(a)に示すように周波数とクランク角度で定義される検出強度マップとして格納される。この図に示す検出強度マップデータSTFT(i,j)のインデクスパラメータiは、燃焼行程開始上死点を基準としたクランク角度を示し、i=1〜11がクランク角度12度〜72度に対応する。またインデクスパラメータjは周波数を示し、j=1〜16がそれぞれ周波数5kHz〜20kHzに対応する。なお、以下に説明する演算処理は、本処理の1回の演算において、すべてのマップデータ、すなわちマップ上の格子点(i=1〜11,j=1〜16)について実行される。
ステップS11では、クランク角度6度毎に実行される高速フーリエ変換によって、周波数5kHz〜20kHzまでの周波数範囲において、5,6,…,19,20kHzの周波数成分強度STFTが算出され、図8(a)に示すように周波数とクランク角度で定義される検出強度マップとして格納される。この図に示す検出強度マップデータSTFT(i,j)のインデクスパラメータiは、燃焼行程開始上死点を基準としたクランク角度を示し、i=1〜11がクランク角度12度〜72度に対応する。またインデクスパラメータjは周波数を示し、j=1〜16がそれぞれ周波数5kHz〜20kHzに対応する。なお、以下に説明する演算処理は、本処理の1回の演算において、すべてのマップデータ、すなわちマップ上の格子点(i=1〜11,j=1〜16)について実行される。
ステップS12では、ノイズ除去処理を実行する。すなわち、後述するノイズ学習処理(ステップS19)において気筒毎に算出されるノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,k)及び検出強度マップデータSTFT(i,j)を下記式(1)に適用することにより、図8(b)に示すノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)を算出する。ノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,k)(図11参照)のインデクスパラメータkは、気筒を特定するパラメータであり、k=1〜6が#1気筒〜#6気筒に対応する。式(1)には、今回の判定対象気筒kXに対応するノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,kX)が適用される。なお、式(1)の演算結果が負の値となったときは、ノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)は「0」に設定される。
STFTC(i,j)=STFT(i,j)−SNOISE(i,j,kX)×KCDNE (1)
STFTC(i,j)=STFT(i,j)−SNOISE(i,j,kX)×KCDNE (1)
式(1)のKCDNEは下記式(2)で示される過渡補正係数である。式(2)のNEP及びNEZは、それぞれエンジン回転数NEの今回検出値及び前回検出値(クランク角度720度前の検出値)である。過渡補正係数KCDNEは、エンジン回転数NEが急激に増加すると「1」より大きな値となり、ノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,kX)を増加方向に補正する一方、エンジン回転数NEが急激に減少すると「1」より小さな値となり、ノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,kX)を減少方向に補正する。
KCDNE=(NEP/NEZ)2 (2)
KCDNE=(NEP/NEZ)2 (2)
ステップS13では、図4に示すSTJUD算出処理を実行し、ノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)の二値化に適用する二値化閾値STJUD(i,j,kX)を算出する。図4のステップS31では、エンジン回転数NE及び吸気圧PBAに応じて図5に示すSTJUDBマップを検索して基本値STJUDBを算出する。STJUDBマップは、エンジン回転数NEが増加するほど基本値STJUDBが増加し、かつ吸気圧PBAが増加するほど基本値STJUDBが増加するように設定されている。ラインL1で示される設定値は、第1所定吸気圧PBA1から第2所定吸気圧PBA2の範囲で適用される。ラインL2及びL3は、それぞれ第3所定吸気圧PBA3及び第4所定吸気圧PBA4に対応し、PBA1<PBA2<PBA3<PBA4なる関係を満たす。
ステップS32では、特定運転状態フラグFSTFTADJが「1」であるか否かを判別する。特定運転状態フラグFSTFTADJは、下記の条件1)〜3)がすべて満たされるとき、すなわち特定気筒においてノイズ成分強度が増加する特定運転状態において「1」に設定される。
1)エンジン冷却水温TWが所定水温TWL(例えば50℃)より高く、
2)エンジン回転数NEが所定高回転数範囲内(例えば2000rpm〜7000rpm)にあり、
3)吸気圧PBAが所定高負荷範囲内(26.7kPa(200mmHg)〜160.2kPa(1200mmHg))にある。
2)エンジン回転数NEが所定高回転数範囲内(例えば2000rpm〜7000rpm)にあり、
3)吸気圧PBAが所定高負荷範囲内(26.7kPa(200mmHg)〜160.2kPa(1200mmHg))にある。
ステップS32の答が肯定(YES)であるときは、判定対象気筒kXが特定気筒kH(例えば#5気筒)であるか否かを判別する(ステップS33)。ステップS32またはS33の答が否定(NO)であるときは、ステップS34に進み、図6(a)に示す、気筒毎に設定されている6つのCJUDマップから判定対象気筒kXに対応するCJUDマップを選択し、各格子点に対応する第1補正係数CJUD(i,j,kX)を取得する。
ステップS35では、下記式(3)に基本値STJUDB及び第1補正係数CJUD(i,j,kX)を適用して、判定対象気筒に対応する二値化閾値STJUD(i,j,kX)を算出する。
STJUD(i,j,kX)=STJUDB×CJUD(i,j,kX) (3)
STJUD(i,j,kX)=STJUDB×CJUD(i,j,kX) (3)
ステップS33の答が肯定(YES)であるとき、すなわちエンジン1が特定運転状態にありかつ判定対象気筒kXが特定気筒kHであるときは、図6(b)に示す特定気筒kHに対応して設定されているCJUDHマップから、各格子点に対応する第2補正係数CJUD(i,j,kH)を取得する(ステップS36)。ステップS37では、下記式(4)に基本値STJUDB及び第2補正係数CJUD(i,j,kH)を適用して、判定対象気筒(=特定気筒)に対応する二値化閾値STJUD(i,j,kX)を算出する。
STJUD(i,j,kX)=STJUDB×CJUDH(i,j,kH) (4)
STJUD(i,j,kX)=STJUDB×CJUDH(i,j,kH) (4)
図7は、第1補正係数CJUD及び第2補正係数CJUDHの設定例を説明するためのテーブルを示す図であり、実線が第1補正係数CJUDに対応し、破線が第2補正係数CJUDHに対応する。また図7(a)〜図7(e)は、周波数を示すインデクスパラメータj=1〜3の第1周波数範囲、j=4〜6の第2周波数範囲、j=7〜9の第3周波数範囲、j=10〜12の第4周波数範囲、及びj≧13の第5周波数範囲に対応する。第1補正係数CJUD及び第2補正係数CJUDHは、基本的には、実験によって得られるノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,k)に基づいて予め設定されており、ノイズ成分強度が高いほど二値化閾値STJUD(i,j,k)を増加させるように設定される。
第1補正係数CJUDは、クランク角度を示すインデクスパラメータiが小さくなるほど増加する傾向(すなわち燃焼行程開始上死点に近づくほど増加する傾向)に設定され、またj=10〜12の第4周波数範囲の値が、燃焼行程開始上死点の近傍のクランク角度範囲において他の周波数範囲の値より大きな値に設定されている。また、第2補正係数CJUDHは、全周波数範囲及び全クランク角度範囲で、第1補正係数CJUD以上の値に設定され、特に燃焼行程開始上死点の近傍のクランク角度範囲で、第1補正係数CJUDとの差が増加するように設定されている。
補正係数CJUD,CJUDHの設定は、図7に示す設定例に限るものではなく、周波数範囲で同じ設定するのではなく、周波数毎に異なる設定としてもよい。
補正係数CJUD,CJUDHの設定は、図7に示す設定例に限るものではなく、周波数範囲で同じ設定するのではなく、周波数毎に異なる設定としてもよい。
図3に戻り、ステップS14では、二値化閾値STJUD(i,j,kX)を用いてノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)の二値化を行い、図8(c)に示す二値化マップデータBSTFT(i,j)を算出する。すなわち、ノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)が二値化閾値STJUD(i,j,kX)より大きいときは、二値化マップデータBSTFT(i,j)を「1」に設定し、ノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)が二値化閾値STJUD(i,j,kX)以下であるときは、二値化マップデータBSTFT(i,j)を「0」に設定する。
ステップS15では、二値化マップデータBSTFT(i,j)と、図9に示すマスタマップデータBMST(i,j)との適合率PFITを下記式(5)〜(7)により算出する。式(5)及び(6)のΣは、マップ上のすべての格子点(i=1〜11,j=1〜16)についての積算演算を示し、積算値SUMM及びSUMSを式(7)に適用して、適合率PFITが算出される。本実施形態では、図10に示すように、エンジン回転数NE及び吸気圧PBAで定義される9個の運転領域に対応して9個のマスタマップが設定されており、エンジン回転数NE及び吸気圧PBAに応じて1つのマスタマップが選択される。
SUMM=ΣBMST(i,j) (5)
SUMS=ΣSTFTC(i,j)×BMST(i,j) (6)
PFIT=SUMS/SUMM (7)
SUMM=ΣBMST(i,j) (5)
SUMS=ΣSTFTC(i,j)×BMST(i,j) (6)
PFIT=SUMS/SUMM (7)
ステップS16では、ステップS15で算出された適合率PFITが、気筒毎に予め設定されている適合率閾値PFITTH(kX)より大きいか否かを判別する。ステップS16の答が肯定(YES)であるときは、ノッキングが発生したと判定し、ノッキングフラグFKNOCKを「1」に設定する(ステップS17)。
ステップS16の答が否定(NO)であるときは、ノッキングが発生していないと判定し、ノッキングフラグFKNOCKを「0」に設定する(ステップS18)。この場合、検出強度マップデータSTFT(i,j)はノイズ成分強度を示すデータと考えられるので、図11に示すノイズ成分強度マップの更新を行う(ステップS19)。ノイズ成分強度マップは、#1〜#6気筒のそれぞれに対応して設けられており、ステップS19では、判定対象気筒kXに対応するノイズ成分強度マップのノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,kX)を、下記式(8)に適用して更新する。式(8)のCSNOISEは、0から1の間の値(例えば「0.5」)に設定されるなまし係数である。
SNOISE(i,j,kX)=SNOISE(i,j,kX)×CSNOISE
+STFT(i,j,kX)×(1−CSNOISE) (8)
SNOISE(i,j,kX)=SNOISE(i,j,kX)×CSNOISE
+STFT(i,j,kX)×(1−CSNOISE) (8)
以上のように本実施形態では、クランク角度6度間隔でノックセンサ11R,11Lの出力信号の周波数成分分析が行われ、その周波数成分分析により得られる、複数の周波数成分の強度の時系列データSTFTが、クランク角度位置及び周波数で定義される検出強度マップとして格納される。検出強度マップデータSTFT(i,j)に基づいて、ノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,k)が気筒毎に算出され、検出強度マップデータSTFT(i,j)がノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,k)により補正される。補正後の時系列データであるノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)が二値化閾値STJUD(i,j,k)を用いて二値化され、その二値化された時系列データBSTFT(i,j)の2次元マップである二値化マップ(図8(c))と、ノッキングが発生した状態に対応するマスタパターンデータの2次元マップであるマスタマップ(図9)とを比較することより、ノッキングが発生したか否かが判定される。さらに二値化閾値STJUD(i,j,k)の基本値STJUDBがエンジン回転数NE及び吸気圧PBAに応じて算出されるとともに、#1〜#6気筒のそれぞれに対応し、かつノイズ補正マップにおける格子点のそれぞれに対応して設定された第1補正係数CJUDまたは第2補正係数CJUDHを用いて基本値STJUDBを補正することにより、#1〜#6気筒のそれぞれに対応し、かつノイズ補正マップ(2次元マップ)における格子点のそれぞれに対応した二値化閾値STJUD(i,j,k)が算出され、ノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)の二値化に適用される。エンジン1の構造あるいはノックセンサ11R,11Lの装着位置に依存して、エンジン運転状態の変化がノイズ成分強度に与える影響が、気筒毎に異なる場合や、ノイズ成分の周波数帯域や出現時期に依存して変化する場合がある。したがって、各気筒に対応したノイズ成分強度マップ(図11)を設け、さらに各気筒に対応し、かつ2次元マップの格子点のそれぞれに対応して二値化閾値STJUD(i,j,k)を設定することにより、気筒毎に異なり、かつマップ格子点毎に異なるノイズ成分強度に対応して、二値化閾値STJUD(i,j,k)をより適切に設定してノイズ成分の影響を低減することが可能となり、ノッキング判定精度を高めることができる。
また各気筒に対応したノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,k)に基づいて、補正係数CJUD,CJUDHが予め設定されており、例えば#5気筒のノイズ発生状態が他の気筒と異なる場合には、図7に示すようにその気筒毎のノイズ成分発生状態に対応した格子点毎の補正係数CJUD,CJUDHの設定を行い、ノイズ成分強度が高いほど二値化閾値STJUDを増加させることによって、ノイズ成分の影響を低減してノッキング判定精度を高めることができる。
またエンジン1が、特定の気筒においてノイズ成分強度が増加する特定運転状態にあると判定されたとき(FSTFTADJ=1であるとき)は、その特定の気筒(#5気筒)に対応する二値化閾値STJUD(i,j,kH)を増加させるように設定された第2補正係数CJUDHが適用されるので、特定運転状態において特定気筒におけるノッキング判定精度が低下することを防止できる。
また図7に示すようにクランク角度位置が、判定対象気筒kXの燃焼行程開始時期に比較的近い範囲(インデクスパラメータiが小さい範囲)で、二値化閾値STJUD(i,j,k)の増加量(第1補正係数CJUDを適用した場合の値からの増加量)が大きくなるように、第2補正係数CJUDHが設定される。ノイズ成分強度は燃焼行程開始時期に比較的近い範囲で大きくなる傾向があるので、クランク角度位置が燃焼行程開始時期に比較的近い範囲で二値化閾値STJUD(i,j,k)の増加量が大きくなるように第2補正係数CJUDHを設定することによって、ノッキング判定精度の低下を防止できる。
またエンジン回転数NEの今回検出値NEPと、前回検出値NEZとの比(NEP/NEZ)を二乗することよって、過渡補正係数KCDNEが算出され、ノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,k)に過渡補正係数KCDNEを乗算して、検出強度マップデータSTFT(i,j)から減算することによって、ノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)が算出される(式(1))。ノイズ成分強度SNOISEは、エンジン回転数NEが増加するほど増加し、エンジン回転数NEの二乗にほぼ比例することが確認されているので、過渡補正係数KCDNEを用いて補正したノイズ成分強度(SNOISE×KCDNE)を適用することにより、エンジン回転数NEが急変した場合におけるノイズ成分の影響を適切に低減し、エンジン回転数NEが変化する過渡状態においても正確な判定を行うことができる。
本実施形態では、ECU5が、周波数成分分析手段、データ格納手段、ノイズ成分強度算出手段、ノイズ補正手段、二値化手段、ノッキング判定手段、基本値算出手段、二値化閾値算出手段、及び過渡補正係数算出手段を構成する。
[第2の実施形態]
図12は、本発明の第2の実施形態にかかるノッキング判定処理のフローチャートである。この処理は、図3に示す処理のステップS13をステップS13aに変更し、ステップS11とS12の間にステップS21を追加し、ステップS15とS16の間にステップS22を追加したものである。以下に説明する点以外は第1の実施形態と同一である。
図12は、本発明の第2の実施形態にかかるノッキング判定処理のフローチャートである。この処理は、図3に示す処理のステップS13をステップS13aに変更し、ステップS11とS12の間にステップS21を追加し、ステップS15とS16の間にステップS22を追加したものである。以下に説明する点以外は第1の実施形態と同一である。
ステップS21では、図13に示すマップ修正処理が実行される。図13のステップS41では、特定運転状態フラグFSTFTADJが「1」であるか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、クランク角度のインデクスパラメータi及び周波数のインデクスパラメータjが、検出強度マップ上の特定領域に対応する特定範囲内にあるか否かを判別する。具体的には本実施形態では、図15(a)にハッチングを付して示す領域が特定領域であり、i=1でかつjが1から16の範囲内にあるか否かを判別する。
ステップS41またはS42の答が否定(NO)であるときは、検出強度マップの修正を行うことなく直ちに処理を終了する。ステップS42の答が肯定(YES)であるときは、特定領域内の格子点のそれぞれに対応して予め設定されたノイズ差分閾値DSNTH(i,j)を取得する(ステップS43)。ノイズ差分閾値DSNTH(i,j)は、実験によって取得される、各格子点におけるノイズ成分強度SNOISE(i,j)に基づいて予め適切な値に設定される。
ステップS44では、検出強度マップデータSTFT(i,j)及びノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,kX)を下記式(9)に適用し、ノイズ差分DSNOISE(i,j)を算出する。
DSNOISE(i,j)=STFT(i,j)−SNOISE(i,j,kX) (9)
DSNOISE(i,j)=STFT(i,j)−SNOISE(i,j,kX) (9)
ステップS45では、ノイズ差分DSNOISE(i,j)がノイズ差分閾値DSNTH(i,j)以上であるか否かを判別し、その答が否定(NO)であるときは、検出強度マップの修正を行うことなく直ちに処理を終了する。ステップS45の答が肯定(YES)であって、検出強度マップデータSTFT(i,j)に含まれるノイズ成分強度が大きいと推定されるときは、当該格子点の検出強度マップデータSTFT(i,j)を「0」に設定し、修正カウンタNMODの値を「1」だけ増加させる(ステップS46)。修正カウンタNMODの値は、本処理の開始前に「0」に設定されており、検出強度マップデータSTFT(i,j)を「0」に修正した格子点の数を示す。
図13の処理により、エンジン1が特定運転状態にある場合において、ノイズ差分DSNOISE(i,j)がノイズ差分閾値DSNTH(i,j)以上であって、検出強度マップの特定領域内に含まれる格子点の検出強度マップデータSTFT(i,j)が「0」に修正される(修正検出強度マップが生成される)。図15(b)は、修正検出強度マップの一例を示しており、特定領域内の一部のマップデータ(i=1,j=1〜14の格子点におけるデータ)が「0」に設定されている。
図12のステップS13aでは、図14に示すSTJUD算出処理が実行される。図14の処理は、図4のステップS32,S33,S36,及びS37を削除したものに相当する。すなわち、全ての気筒について、上述した式(3)によって二値化閾値STJUD(i,j,kX)の算出が行われる。
図12のステップS22では、下記式(10)の右辺に適合率閾値PFITTH(kX)、積算値SUMM(式(5))、及び修正カウンタNMODの値を適用して、適合率閾値PFITTH(kX)を修正する。
PFITTH(kX)=PFITTH(kX)×(SUMM−NMOD)/SUMM (10)
PFITTH(kX)=PFITTH(kX)×(SUMM−NMOD)/SUMM (10)
式(10)は、「0」に修正された検出強度マップデータSTFT(i,j)は、ノッキング判定に寄与しなくなることを考慮して、適合率閾値PFTITH(kX)を減少方向に修正するものである。
以上のように本実施形態では、検出強度マップに格納された検出強度マップデータSTFT(i,j)と、対応するノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,kX)との差分がノイズ差分DSNOISE(i,j)として算出され、ノイズ差分DSNOISE(i,j)に応じて検出強度マップ(図15(a))を修正することにより、修正検出強度マップ(図15(b))が生成され、修正検出強度マップ上の検出強度マップデータSTFT(i,j)がノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,kX)により補正される。補正後の時系列データであるノイズ補正マップデータSTFTC(i,j)が二値化閾値STJUD(i,j,kX)を用いて二値化され、二値化マップデータBSTFT(i,j)が格納された二値化マップと、マスタマップとの適合率PFITが算出され、その適合率PFITが適合率閾値PFITTH(kX)を超えたときに、ノッキングが発生したと判定される。適合率閾値PFITTH(kX)は、修正検出強度マップの修正度合を示す修正カウンタNMODの値が大きくなるほど減少するように設定される。
ノイズ差分DSNOISE(i,j)を算出することによって実際のノイズ発生状態を気筒毎に、かつ検出強度マップの格子点毎に監視し、ノイズ差分DSNOISE(i,j)に応じて検出強度マップを修正することにより、ノイズ成分強度の大きい気筒あるいは検出強度マップの格子点において、検出強度マップを修正することにより、ノイズ成分の影響が大きい格子点の寄与度を減少させた修正2次元マップが生成され、ノイズ成分の影響を低減することができる。ただし、修正検出強度マップには実際の検出周波成分強度ではない修正データ(「0」)が含まれることとなるため、修正度合を示す修正カウンタNMODの値に応じて適合率閾値PFITTH(kX)を減少させることによって、ノイズ成分の影響を低減してノッキング判定精度を高めることができる。
より具体的には、マップデータSTFT(i,j)の修正は、検出強度マップ上の特定領域内において行われる。ノイズ成分の影響が大きい検出強度マップ上の特定領域は予め設定可能であり、その特定領域を対象として検出強度マップデータSTFT(i,j)の修正を行うことにより、修正2次元マップによる判定の精度が低下することを防止できる。さらにノイズ差分DSNOISE(i,j)が予め設定されたノイズ差分閾値DSNTH(i,j)以上であるときに、マップデータSTFT(i,j)を減少方向に修正することにより修正検出強度マップが生成されるので、ノイズ成分の影響を低減し、判定精度の低下を防止できる。さらに修正度合を修正カウンタNMODの値、すなわち修正されたデータの数で示すことにより、修正度合に応じた適合率閾値PFITTH(kX)の変更を容易かつ適切に行うことができる。
また、エンジン1が、ノイズ成分強度マップデータSNOISE(i,j,kX)が増加する特定運転状態にあるときに、検出強度マップの修正が行われ、エンジン1が特定運転状態以外の運転状態にあるときは、検出強度マップの修正が行われないので、修正検出強度マップによる判定は必要最小限の運転状態に限定され、特定運転状態以外の運転状態における判定精度に影響を与えないようにすることができる。
[変形例1]
図13に示すマップ修正処理では、修正すべき検出強度マップデータSTFT(i,j)を「0」に設定するようにしたが、これに限るものではなく、対応する二値化閾値STJUD(i,j)より小さい値に減少させる修正を行ってもよい。
図13に示すマップ修正処理では、修正すべき検出強度マップデータSTFT(i,j)を「0」に設定するようにしたが、これに限るものではなく、対応する二値化閾値STJUD(i,j)より小さい値に減少させる修正を行ってもよい。
[変形例2]
図12に示す処理は、図16に示すように変形してもよい。図16は、図12のステップS13aをステップS13に変更し、第1の実施形態と同様に図4に示すSTJUD算出処理を実行するようにしたものである。この変形例では、第2の実施形態においてもエンジン1が特定運転状態にあるときは、特定気筒に対応する二値化閾値STJUD(i,j,kX)が増加補正され、特定運転状態におけるノッキング判定精度をさらに高めることができる。
図12に示す処理は、図16に示すように変形してもよい。図16は、図12のステップS13aをステップS13に変更し、第1の実施形態と同様に図4に示すSTJUD算出処理を実行するようにしたものである。この変形例では、第2の実施形態においてもエンジン1が特定運転状態にあるときは、特定気筒に対応する二値化閾値STJUD(i,j,kX)が増加補正され、特定運転状態におけるノッキング判定精度をさらに高めることができる。
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、特許文献1に示される第3の実施形態と同様に、5kHzから20kHzまでの16個の周波数を、3個または2個の周波数からなる6つの周波数グループに分割し、1つのサンプルタイミングに対応する検出強度マップデータSTFT(i,j)の代表値である検出グループ強度マップデータGSTFTを、周波数グループ内の最大値に設定し、周波数グループ及びクランク角度位置によって定義される2次元マップを用いてノッキング判定を行うようにしてもよい。これにより、ECU5におけるノイズ補正以後の処理負荷を軽減することができる。
上述した実施形態では、#5気筒におけるノイズ成分強度が他の気筒のノイズ成分強度より大きい例を示したが、本発明は例えば6気筒エンジンのノイズ成分強度及び/またはその周波数特性が、それぞれ異なるような場合であっても適用可能であり、各気筒のノイズ成分強度に適合したノイズ補正及び二値化閾値の設定を行うことができる。
また、上述した実施形態では6気筒エンジンに本発明を適用した例を示したが、本発明は6気筒に限らず2以上の気筒を有するエンジンのノッキング検出に適用可能である。また、燃料を燃焼室内に直接噴射する直噴型のエンジン、あるいは過給機を備えていないエンジンのノッキング検出にも適用可能である。
また、ノックセンサ出力のサンプリング周期は20マイクロ秒とし、クランク角度間隔を6度としたが、これに限るものではなく、本発明の目的が達成される範囲内において変更可能である。また、検出強度マップの構成(16行×11列)も同様に変更可能である。また適合率閾値PFITTHは、特許文献1に示されるようにエンジン回転数NE及び吸気圧PBAに応じて気筒毎に設定するようにしてもよい。
上述した実施形態では、二値化マップデータBSTFT(i,j)とマスタマップBMST(i,j)との類似性(相関性)を示すパラメータとして、適合率PFITを用いたが、例えば二値化マップデータBSTFT(i,j)とマスタマップデータBMST(i,j)の差の絶対値の合計である差分積算値SUMDIFを用いることもできる。この場合、差分積算値SUMDIFは、その値が小さいほど類似性(相関性)が高いことを示すので、差分積算値SUMDIFが差分判定閾値SDLVLより小さいとき、ノッキングが発生したと判定する。
1 内燃機関
5 電子制御ユニット(周波数成分分析手段、データ格納手段、ノイズ成分強度算出手段、ノイズ補正手段、二値化手段、ノッキング判定手段、基本値算出手段、二値化閾値算出手段、過渡補正係数算出手段)
11R,11L ノックセンサ
5 電子制御ユニット(周波数成分分析手段、データ格納手段、ノイズ成分強度算出手段、ノイズ補正手段、二値化手段、ノッキング判定手段、基本値算出手段、二値化閾値算出手段、過渡補正係数算出手段)
11R,11L ノックセンサ
Claims (5)
- 複数の気筒を備える内燃機関に装着されたノックセンサの出力信号に基づいてノッキングを検出する、内燃機関のノッキング検出装置において、
所定クランク角度間隔で前記ノックセンサ出力信号の周波数成分分析を行う周波数成分分析手段と、
前記周波数成分分析により得られる、複数の周波数成分の強度の時系列データを、クランク角度位置及び周波数で定義される2次元マップとして格納するデータ格納手段と、
前記周波数成分強度の時系列データに基づいて、ノイズ成分強度の時系列データを前記複数の気筒のそれぞれに対応して算出するノイズ成分強度算出手段と、
前記周波数成分強度の時系列データを前記ノイズ成分強度の時系列データにより補正するノイズ補正手段と、
前記ノイズ補正手段による補正後の時系列データを、前記機関の運転状態に応じて設定される二値化閾値を用いて二値化する二値化手段と、
前記二値化された時系列データの2次元マップと、ノッキングが発生した状態に対応するマスタパターンデータの2次元マップとを比較することより、ノッキングが発生したか否かを判定するノッキング判定手段とを備え、
前記二値化手段は、
前記二値化閾値の基本値を前記機関の運転状態に応じて算出する基本値算出手段と、
前記複数の気筒のそれぞれに対応し、かつ前記2次元マップにおける格子点のそれぞれに対応して設定された補正係数を用いて前記基本値を補正することにより、前記複数の気筒のそれぞれに対応し、かつ前記2次元マップにおける格子点のそれぞれに対応した前記二値化閾値を算出する二値化閾値算出手段とを含むことを特徴とする内燃機関のノッキング検出装置。 - 前記補正係数は、前記複数の気筒のそれぞれに対応したノイズ成分強度の時系列データに基づいて予め設定されており、前記ノイズ成分強度が高いほど前記二値化閾値を増加させるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のノッキング検出装置。
- 前記二値化閾値算出手段は、前記機関が、特定の気筒においてノイズ成分強度が増加する特定運転状態にあると判定されたときは、前記特定の気筒に対応する前記二値化閾値を増加させるように前記補正係数を修正することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関のノッキング検出装置。
- 前記二値化閾値算出手段は、前記クランク角度位置が、対象気筒の燃焼行程開始時期に比較的近い範囲で前記二値化閾値の増加量が大きくなるように、前記補正係数の修正を行うことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関のノッキング検出装置。
- 前記ノイズ補正手段は、前記機関の回転数の今回検出値と、前回検出値との比を二乗することよって、過渡補正係数を算出する過渡補正係数算出手段を含み、
前記ノイズ成分強度に前記過渡補正係数を乗算して補正ノイズ成分強度を算出し、前記周波数成分強度から補正ノイズ成分強度を減算することによって前記補正を行うことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の内燃機関のノッキング検出装置。
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