JP6202501B2 - 精子の選抜部構造及び同精子の選抜部構造を備えた精子スクリーニング装置並びに授精用精子液の調製方法 - Google Patents

精子の選抜部構造及び同精子の選抜部構造を備えた精子スクリーニング装置並びに授精用精子液の調製方法 Download PDF

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Description

本発明は、運動能力を欠いたり、死んだ精子や奇形の精子などが混在する精液等から運動性良好な精子を選抜する精子の選抜部構造、及び、同精子の選抜部構造を備えた精子スクリーニング装置、並びに、同精子スクリーニング装置を用いた授精用精子液の調製方法に関する。
従来、畜産分野において、家畜を生産するために、人工授精が頻繁に行われている。また、ヒトの不妊治療などにおいても、人工授精が行われる場合がある。
このような人工授精では、オスの個体から得られた精液を、メスの子宮内に注入して受胎させるため、できるだけ受胎効率の良い精液が望まれる。
例えば畜産牛の分野において、人工授精に供される精液は、オスのウシから得た後に液体窒素で凍結されたものであることが多い。
ところが、凍結後に解凍した精液は、その精液中に含まれる精子の多くが既に死んでいたり運動性が失われており、その割合は約5割〜7割にも達する場合が多く、また、奇形の精子も一部含まれていることから、受胎効率の向上を妨げる原因の一つとなっている。
また、精液中の死んだ精子からは、受精の過程で必要に応じて用いられるはずの化学種が無秩序に放出される。
すると、この化学種により良好な運動性を有する精子までが影響を受け、精液の質が更に低下することとなり好ましくない。
従って、人工授精に用いられる精液は、運動性が良好な精子の割合が高く、死んだ精子などが除かれたものであるのが望ましい。
そこで以前より、畜産の分野やヒトの不妊治療の分野では、運動性の良好な精子を回収する方法が種々提案されている。
中でも、生きている精子が有する運動能力を利用して分離する方法は、精子に対する負荷も比較的小さいため、運動性を失った精子から運動性の良好な精子を分離し回収する手段として有用な方法であると言える。
例えば、スライドガラス大の基板に刻設された微細な流路(マイクロ流路)に緩衝液などの所定の液を流し、運動性の良好な精子がこの緩衝液の流れに逆らって遡上する性質を利用して、回収する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
このような方法によれば、遠心分離に供する方法などに比して、精子に与えるダメージを軽減することができ、比較的良質な精子を回収することができる。
Microfluidics and Nanofluidics, 2007, Vol.3, 561-570
しかしながら、上記従来の精子の遡上能を利用して回収する方法では、運動性の良好な精子を回収する効率の観点において、未だ改良の余地が残されていた。
具体的には、非特許文献1の記載によれば、1分間あたり約10個程度の精子しか回収できないことが報告されている。
例えば、体外受精(顕微授精)を行う場合にあっては、この程度の効率で精子が得られれば問題はないが、人工授精、すなわち子宮腔内精子注入法(intra uterine insemination:IUI)等を行う場合には、精子の分離に要する時間などを踏まえると、現実的には回収効率を著しく(例えば、1万〜10万倍)向上させる必要がある。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、運動性の良好な精子を効率良く分離することのできる精子の選抜部構造を提供する。また、本発明では、同選抜部構造を備えた精子のスクリーニング装置や、同スクリーニング装置を用いた授精用精子液の調製方法についても提供する。
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る精子の選抜部構造では、動物より採取された精子を含有する選抜前精子液を貯留する貯留部と、貯留部に連通し貯留部方向へ緩衝液が層流として流れる緩衝液流路と、貯留部から緩衝液流路中を精子が遡上するように貯留部に連通した遡上路とよりなる精子の選抜部構造において、前記遡上路の下流部は、前記緩衝液の層流状態を維持しつつ緩流とする広幅の流路とし、この流路の下流端部を前記貯留部の壁面に臨ませて開口させることとした。
また、本発明に係る精子の選抜部構造では、下記の点にも特徴を有する。
(1)前記広幅の流路は、前記開口から上流側へ向けて狭窄するように構成したこと。
(2)前記貯留部に前記遡上路を複数連結させたこと。
また、本発明に係る精子スクリーニング装置では、動物より採取された精子を層流状の緩衝液中で所定区間遡上させ、遡上できた精子を捕集する前述の選抜部構造を備えた精子スクリーニング装置であって、前記遡上路の上流端には、遡上できた精子を回収する回収路と、前記遡上路及び前記回収路を流下させる緩衝液を供給する緩衝液供給路とが接続されており、前記緩衝液供給路より供給された緩衝液の一部を前記遡上路へ流下させる一方、前記緩衝液の残部を回収路へ流下させて回収流と成し、前記遡上できた精子をこの回収流に乗せて捕集することとした。
また、本発明に係る精子スクリーニング装置では、前記緩衝液供給路は、前記回収流が前記遡上できた精子の遡上能力を超える流速となる流量を供給可能な流路断面積としたことにも特徴を有する。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子スクリーニング装置を用いた授精用精子液の調製方法であって、前記選抜前精子液を前記貯留部に添加する精子添加工程と、前記回収路には前記遡上できた精子の運動能力を上回る流速で、前記緩衝液流路には運動性を有するが回収を望まない精子が遡上できる限界の流速を上回り、且つ、良好な運動性を有する精子が遡上できる限界の流速を下回り、且つ、前記遡上路において層流となる流速で、前記緩衝液供給路から前記緩衝液流路と前記回収路とに緩衝液を流し、前記貯留部に添加した選抜前精子液中に含まれる精子に前記遡上路を遡上させる精子遡上工程と、前記回収流によって捕集された遡上できた精子を回収して授精用精子液とする回収工程とを有することとした。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記選抜前精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子が受精能を獲得するタイミングを閾時間とし、同閾時間以前に前記精子添加工程を行って前記授精用精子液中に含まれる性染色体Yを備えた精子の割合を増加させ、又は、前記閾時間以降に前記精子添加工程を行って前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させることにも特徴を有する。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中の精子のうち、性染色体Xを有する精子と性染色体Yを有する精子とのいずれか一方の性染色体を有する精子の運動能力を向上させることにより、前記精子遡上工程にて前記遡上路における前記いずれか一方の性染色体を有する精子の遡上を促進させて、前記回収工程にて得られる前記授精用精子液中に含まれた前記いずれか一方の性染色体を有する精子の割合を増加させることにも特徴を有する。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中の精子のうち、性染色体Xを有する精子と性染色体Yを有する精子とのいずれか一方の性染色体を有する精子の運動能力を低下させることにより、前記精子遡上工程にて前記遡上路における前記いずれか一方の性染色体を有する精子の遡上を抑制して、前記回収工程にて得られる前記授精用精子液中に含まれたいずれか他方の性染色体を有する精子の割合を増加させることにも特徴を有する。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程の保存時間を長くして、前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させることにも特徴を有する。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中にフェノキサジン化合物と電子受容物質とを存在させて、前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させることにも特徴を有する。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中にフェノキサジン化合物を存在させて、前記授精用精子液中に含まれる性染色体Yを備えた精子の割合を増加させることにも特徴を有する。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記電子受容物質は、フラビン類、フェナジン類、NAD(P)Hオキシドレダクターゼからなる群から選ばれる少なくともいずれか1つであることにも特徴を有する。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子保存工程にて、前記選抜前精子液中に、さらにヘキソース-6-リン酸を添加することにも特徴を有する。
また、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記ヘキソース-6-リン酸は、D-グルコース-6-リン酸、フルクトース-6-リン酸、マンノース-6-リン酸、ガラクトース-6-リン酸よりなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の混合物であることにも特徴を有する。
さらに、本発明に係る授精用精子液の調製方法では、前記フェノキサジン化合物は、ブリリアントクレシルブルー、ナイルブルー、ベーシックブルー、メルドラブルーよりなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の混合物であり、前記ヘキソース-6-リン酸は、D-グルコース-6-リン酸、フルクトース-6-リン酸、マンノース-6-リン酸、ガラクトース-6-リン酸よりなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の混合物であることにも特徴を有する。
本発明によれば、運動性の良好な精子を効率良く分離することのできる精子の選抜部構造を提供することができる。また、本発明によれば、運動性の良好な精子を効率良く分離することのできる選抜部構造を備えた精子のスクリーニング装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、運動性の良好な精子を多く含有する授精用精子液の調製方法を提供することができる。
本実施形態に係る精子の選抜部構造を示す概念図である。 本実施形態に係る精子の選抜部構造を示す概念図である。 本実施形態に係る精子の選抜部構造を示す概念図である。 本実施形態に係る精子のスクリーニング装置を示した説明図である。 本実施形態に係る精子のスクリーニング装置の構成を示した分解斜視図である。 本実施形態に係る精子のスクリーニング装置の構成を示した断面図である。 マイクロ流路の構成を示した説明図である。 合流部近傍を示した説明図である。 層状流路における遡上流の流れを示した説明図である。 遡上する精子の様子を示した説明図である。 遡上する精子の様子を示した説明図である。 試験に使用したチップ体のマイクロ流路を示した説明図である。 試験結果を示した説明図である。 従来例を示す説明図である。
本発明は、動物より採取された精子を含有する選抜前精子液を貯留する貯留部と、貯留部に連通し貯留部方向へ緩衝液が層流として流れる緩衝液流路と、貯留部から緩衝液流路中を精子が逆流するように貯留部に連通した遡上路とよりなる精子の選抜部構造を提供するものである。
ここで、精子が緩衝液流に逆らって遡上する遡上路は、所定の緩衝液供給手段によって供給された緩衝液が貯留部方向へ層流として流れる緩衝液流路と実質的には同じ部分と解釈することができる。すなわち、遡上する精子の観点から本実施形態に係る精子の選抜部構造を見れば、緩衝液流路は、遡上路としても機能する部分であると言える。
このような緩衝液流路を遡上路として精子を遡上させる精子の選抜部構造は、rheotaxisと称される精子の性質を利用して運動性の良好な精子の選抜を行うための手段として従来より知られている。
例えば、図14(a)に示すように、精液を貯留する貯留部101の側壁に狭隘な遡上路102を連結したような選抜部構造103がこれに該当する。
このような選抜部構造103によれば、狭隘な遡上路102において、緩衝液を白抜きの矢印で示す貯留部101側へ流すことにより、貯留部101の側壁内面に形成された開口部104(図14(b)参照)から精子を導いて、網掛けの矢印で示す方向へ遡上させることができる。
しかしながら、従来のrheotaxisもしくはswim upを利用した選抜方法、また、この選抜方法を利用した選抜部構造によっては、人工授精を行うに際して十分な量の良好な運動性を有する精子を効率的に得ることは困難であった。
これは、遡上路102を流れる比較的流速の高い緩衝液流が、開口部104から貯留部101内へ勢いを保ったまま流入するため、極めて運動能力に優れた精子のみしか開口部104へ近づくことができないためであると考えられる。
従って、このような選抜部構造103は、相当に優れた運動能力を有する精子をごく少数選抜するためには有用であるものの、受精能力を有する多くの精子は狭隘な遡上路102への進入さえもままならず、選抜を行うための母集団の低下を招き、大量の精子を回収するには不向きであった。
そこで、本実施形態に係る精子の選抜部構造に特徴的には、遡上路の下流部は、緩衝液の層流状態を維持しつつ緩流とする広幅の流路(以下、層状流路とも言う。)とし、この流路の下流端部を貯留部の壁面に臨ませて開口させている。
このような構成とした場合、層状流路を流れて緩流となった広幅で層流状の緩衝液流を開口から貯留部内へ流出させることができ、運動性を有しない精子やゴミをスリット状の開口から遠ざける一方、運動性を有する精子に対しては間口を広くとりつつ、精子にrheotaxisの性質を惹起させて層状流路に多く誘い込むことができる。なお、開口の形状は特に限定されるものではないが、例えば層状流路の流路断面と同じ形状とし、貯留部の内壁面にスリット状に開口させても良い。
しかも、層状流路は流下する緩衝液流の層流を保てる形状としながらも幅広に形成しているため、遡上路の狭隘な流路部分(以下、狭隘遡上路ともいう。)を流れる緩衝液の流速に比して層状流路を流れる緩衝液に乱流を生じさせることなく流速を遅くすることができ、狭隘遡上路にて選抜する精子の母集団の数を飛躍的に向上させることができる。
付言すれば、層状流路は狭隘遡上路に比して幅広に形成しながらも、レイノルズ数の低い(例えば、1500以下)流れを生起可能な形状としているため、精子が乱流に巻き込まれてしまうことがなく、効率的に狭隘遡上路へ精子を誘導することができる。
このように、本実施形態に係る精子の選抜部構造は、精子を貯留する貯留部と、精子を実際に選抜する狭隘遡上路との間に、精子を効率的に誘引する誘引手段としての層状流路を介設したものとも考えることができる。
すなわち、本実施形態に係る精子の選抜部構造は、動物より採取された精子を含有する選抜前精子液を貯留する貯留部と、同貯留部より導いた精子を層流状の液流中で遡上させる狭隘な遡上路と、を備えた精子の選抜部構造において、前記狭隘な遡上路の下流部には、前記貯留部より前記狭隘な遡上路へ精子を誘い込むための誘引手段が介設されており、同誘引手段は、前記狭隘な遡上路を流下する液流の層流状態を維持しつつ緩流とする広幅の流路、すなわち、層状流路とした精子の選抜部構造であるとも言える。
また、更に付言するならば、層状流路は、運動性の優劣についてはある程度許容しつつrheotaxisできる精子をできるだけ多く集合させ、層状流路に比して急流となる狭隘遡上路に進入させるための、母集団となる精子のスタンバイ領域であると考えることもできる。
また、層状領域は、貯留部内の選抜前の精子液から、運動性の優劣についてはある程度許容しつつ生きている精子を濃縮する(集合させる)ための領域と捉えることもできる。
また、精子の選抜を行うにあたり、貯留部には、精子を含有する選抜前精子液が収容される。このような選抜前精子液としては、オスの動物個体より得られたままの精液や、凍結後解凍された精液を用いることができるのは勿論のこと、精漿や緩衝液を添加して精子濃度や精漿を構成する成分を調整した成分調整精液や、精子を所定の緩衝液に分散させて調製した精子含有液も用いることができる。すなわち、本明細書において貯留部に添加する選抜前精子液は、オスの動物個体より得られたままの精液としての意味合いを含むのは勿論のこと、解凍精液、成分調整精液、精子含有液を総称する言葉として解するべきである。
また、本実施形態に係る精子の選抜部構造において層状流路は、貯留部の壁面に形成した開口から上流側へ向けて狭窄するように構成し、狭隘遡上路に連通させるのが望ましい。
ここで、このような層状流路の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、層状流路を介して狭隘遡上路を貯留部に連通させた状態を示す概念図である。なお、以下の説明で参照する図面は、本発明の理解を容易とするために示すものであり、大きさの比率などは必ずしも正確ではない。例えば、貯留部に対する層状流路や狭隘遡上路の厚みや幅、長さなどは誇張して示している。また、以下の説明において貯留部の内壁に設けられる開口の形状は、具体化した場合の一例としてスリット状としているが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1(a)に示した精子の選抜部構造Aは、選抜前精子液を貯留する外観視直方体状で中空の貯留部10と、精子を遡上させて良好な運動性を有する精子を選抜する狭隘遡上路11とを備えている。
また、狭隘遡上路11と貯留部10との間には、流路を幅広状に形成した層状流路12が介設されており、層状流路12の下流側端部を貯留部10の側壁内面にスリット状に開口させている。なお、図1(a)において白抜きの矢印は精子を遡上させるための緩衝液の流れの方向を示し、網掛けの矢印は精子の遡上方向を示している。
図1(b)は、図1(a)に示す選抜部構造AのX2−X2断面を示した図であるが、図1(b)からも分かるように、層状流路12は、貯留部10の側壁内面に望ませたスリット状開口部13から緩衝液の流れの上流側へ向かって狭窄させており、この狭窄させた部分に狭隘遡上路11を連結させている。
このような構成とすることにより、選抜部構造Aによれば、層状流路12に誘導された運動性を有する精子を、円滑に狭隘遡上路11へ導くことができる。
なお、本発明者らが行った先行技術調査によれば、WO2012/163087のようなマイクロ流路を備える装置が見れるが、この装置は、精子の泳ぐ速度と流速とを均衡させてキャプチャーするものであり、また、層状の流路を備えるものでもなく、本発明の如く母集団をできるだけ大きくしつつ、所定の運動能力を超える精子を大量に捕集するという概念に基づいてなされたものではない。このWO2012/163087に記載の発明は、精子の運動能力別に画分することによって運動能力を評価する装置であって、本願発明とは構造や概念において全く異なるものであると言える。
また、図2(a)に変形例に係る選抜部構造Bを示し、図2(b)にそのX3−X3断面図を示す。
この選抜部構造Bは、図2(a)及び図2(b)に示すように、前述の選抜部構造Aと略同様の構成と機能を有するものであるが、貯留部20が円筒状である点や、スリット状開口部23が内壁面に沿って湾曲している点、層状流路22が平面視において緩衝液の流れの上流側へ向かって連続的な曲線を描きながら漸次狭窄している点で構造を異にしている。
そして、このような構成を備える選抜部構造Bによれば、貯留部20より層状流路22に誘引した運動性を有する精子を狭隘遡上路21へ誘導するに際し、前述の選抜部構造Aよりも円滑に導くことができる。
これは、精子が遡上する際に壁際に沿って移動することが多く、また、角部に滞留しやすいという性質によるものであり、選抜部構造Bは選抜部構造Aと比較して、図1(b)にて網掛けで示すような角部14が層状流路22に存在しないため、精子の滞留を防止することができ、精子を狭隘遡上路21へ効率良く導くことができる。
図3は、更なる変形例に係る選抜部構造Cを示した概念図である。図3(a)にその全体構造を示し、図3(b)に図3(a)におけるX4−X4断面を示す。
選抜部構造Cもまた同様の機能を有するものであるが、図3(a)及び図3(b)に示すように、層状流路32を湾曲させている点や、貯留部30の内壁面の一つである底壁に層状流路32のスリット状開口部33を設けている点で構成を異にしている。
このような構成を備える選抜部構造Cによっても、運動性を有する精子を貯留部30より層状流路32へ効率良く導いて、狭隘遡上路31にて運動性の良好な精子を選抜することができる。
特に、この選抜部構造Cによれば、スリット状開口部33を、直線状ではなく湾曲させて設けているため、直線状に開口を設けた場合に比して開口面積を大きくすることができ、層状流路32への精子の誘導をさらに効率的に行うことができる。
また、本実施形態に係る精子スクリーニング装置は、動物より採取された精子を層流状の緩衝液中で所定区間遡上させ、遡上できた精子を捕集する本実施形態に係る精子の選抜部構造を備えた精子スクリーニング装置であって、前記遡上路の上流端には、遡上できた精子を回収する回収路と、前記遡上路及び前記回収路を流下させる緩衝液を供給する緩衝液供給路とが接続されており、前記緩衝液供給路より供給された緩衝液の一部を前記遡上路へ流下させる一方、前記緩衝液の残部を回収路へ流下させて回収流と成し、前記遡上できた精子をこの回収流に乗せて捕集することを特徴とするものである。
このような構成とすることにより、運動性の良好な精子を効率良く選抜しつつ、選抜した精子に過大な負荷をかけることなく、回収することができる。
また、緩衝液供給路は、回収流が遡上できた精子の遡上能力を超える流速となる流量を供給可能な流路断面積とするのが望ましい。
このような構成とすることにより、遡上できた精子を強制的に回収することができ、精子が回収路で遡上してしまうことを防止することができる。
また、本発明では、上述の精子スクリーニング装置を用いた授精用精子液の調製方法についても提供する。
特に、本実施形態に係る授精用精子液の調製方法では、前記選抜前精子液を前記貯留部に添加する精子添加工程と、前記回収路には前記遡上できた精子の運動能力を上回る流速で、前記緩衝液流路には運動性を有するが回収を望まない精子が遡上できる限界の流速を上回り、且つ、良好な運動性を有する精子が遡上できる限界の流速を下回り、且つ、前記遡上路において層流となる流速で、前記緩衝液供給路から前記緩衝液流路と前記回収路とに緩衝液を流し、前記貯留部に添加した選抜前精子液中に含まれる精子に前記遡上路を遡上させる精子遡上工程と、前記回収流によって捕集された遡上できた精子を回収して授精用精子液とする回収工程とを有することとしている。
本実施形態に係る授精用精子液の調製方法にて調製された授精用精子液は、例えば、人工授精(子宮腔内精子注入法)や、試験管内授精、顕微授精などに代表される体外受精等、種々の人工的な交配に使用可能である。特に、将来的には、家畜牛の繁殖は、徐々に体外受精も増えていくことが予測されており、本実施形態に係る授精用精子液の調製方法にて調整された授精用精子液は、能率的な交配を行うにあたり極めて有用である。また、本実施形態に係る授精用精子液の調製方法にて調整された授精用精子液は、授精を行うのに十分な運動能力を有する精子を高濃度で含有しているため、特に人工授精用精子液として利用価値が高い。
また、所定のタイミングを閾時間とし、同閾時間以前に前記精子添加工程を行って前記授精用精子液中に含まれる性染色体Yを備えた精子の割合を増加させ、又は、前記閾時間以降に前記精子添加工程を行って前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させるようにしても良い。
ここで閾時間は、例えば、受精能を獲得した生きている性染色体X又は性染色体Yを備える精子の数を縦軸とし、時間を横軸としたグラフにおいて、性染色体Xを有する受精能を獲得した生きている精子の数のピークと性染色体Yを有する受精能を獲得した生きている精子の数のピークとの谷間となる時間とすることもできる。
また例えば、閾時間は、選抜前精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子が受精能を獲得するタイミングとしても良い。これら閾時間は、精子の状態等に合わせて適宜決定することも可能である。
そして、本実施形態に係る授精用精子液の調製方法では、所定のタイミングを閾時間とし、同閾時間以前に前記精子添加工程を行って前記授精用精子液中に含まれる性染色体Yを備えた精子の割合を増加させ、又は、前記閾時間以降に前記精子添加工程を行って前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させるようにしても良い。
このような方法によって得られた授精用精子液は、性染色体Xを備えた精子が、性染色体Yを備えた精子の数に比して多く含まれることとなり、雌性を得るのに有利な授精用精子液とすることができる。
また、本実施形態に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中の精子のうち、性染色体Xを有する精子と性染色体Yを有する精子とのいずれか一方の性染色体を有する精子の運動能力を向上させることにより、前記精子遡上工程にて前記遡上路における前記いずれか一方の性染色体を有する精子の遡上を促進させて、前記回収工程にて得られる前記授精用精子液中に含まれた前記いずれか一方の性染色体を有する精子の割合を増加させることとしても良い。
すなわち、精子添加工程にて使用する選抜前精子液中の精子のうち、いずれかの性染色体を有する精子の運動能力を向上しておくことにより、効率良くその精子を遡上させることができ、雌雄いずれかを得るのに有利な授精用精子液を調製することができる。
また、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中の精子のうち、性染色体Xを有する精子と性染色体Yを有する精子とのいずれか一方の性染色体を有する精子の運動能力を低下させることにより、前記精子遡上工程にて前記遡上路における前記いずれか一方の性染色体を有する精子の遡上を抑制して、前記回収工程にて得られる前記授精用精子液中に含まれたいずれか他方の性染色体を有する精子の割合を増加させることとしても良い。
すなわち、精子添加工程にて使用する選抜前精子液中の精子のうち、性染色体X及びYのいずれか一方の性染色体を有する精子の運動能力を低下させておくことにより、いずれか他方の性染色体を有する精子を優先的に遡上させて、雌雄いずれかを得るのに有利な授精用精子液を調製することができる。
また、本実施形態に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程の保存時間を長くして、前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させることもできる。
X染色体を有する精子は、Y染色体を有する精子に遅れて受精能を獲得するため、精子保存工程における保存時間を長くすることにより、授精用精子液中における受精能を獲得したX染色体を有する精子の数を増やすことができ、雄性を得るのに有利な授精用精子液とすることができる。なお、このときの保存時間は特に限定されるものではないが、例えば、閾時間よりも長くする保存を行うことで、雄性をより有利に得ることのできる授精用精子液とすることができる。
また、本実施形態に係る授精用精子液の調製方法では、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中にフェノキサジン化合物を存在させて、前記授精用精子液中に含まれる性染色体Yを備えた精子の割合を増加させるようにしても良い。
このときの精子保存工程は、電子受容物質の非存在下で行うのが好ましい。なお、ここでいう電子受容物質の非存在下とは、意図的に添加した電子受容物質が存在していない条件下のことを意味しており、精子や精液中に元々存在している電子受容物質までもが存在していない条件下を意味するものではない。
このような条件で精子保存工程を行うことにより、性染色体Yを多く含む雄性を得るのに有利な授精用精子液を調製することができる。
また、前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中にフェノキサジン化合物と電子受容物質を存在させて、前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させるようにしても良い。
このような条件で精子保存工程を行うことにより、性染色体Xを多く含む雌性を得るのに有利な授精用精子液を調製することができる。
また、電子受容物質は、フラビン類、フェナジン類、NAD(P)Hオキシドレダクターゼからなる群から選ばれる少なくともいずれか1つであることとしても良い。例えば、電子受容物質をNAD(P)Hオキシドレダクターゼとした場合、精子保存工程に供する選抜前精子液中において、0.1〜10U/ml程度の濃度とするのが好ましい。濃度が0.1U/ml未満であると精子に対し十分な影響を与えることが困難となる。また10U/mlを越える量としても、更なる効果は得がたく、むしろ精子への毒性が懸念される。電子受容物質の濃度を0.1U/ml以上、10U/ml以下とすることにより、精子に対する毒性を抑制しつつ十分な影響を与えることができる。
また、必要に応じ、精子保存工程にて選抜前精子液中に、さらにヘキソース-6-リン酸を添加することとしても良い。
なお、上記フェノキサジン化合物やヘキソース-6-リン酸、電子受容物質は特に限定されるものではないが、具体的には以下のような物質を利用することが可能である。
すなわち、フェノキサジン化合物としては、例えば、ブリリアントクレシルブルー、ナイルブルー、ベーシックブルー、メルドラブルーよりなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の混合物とすることができる。このフェノキサジン化合物は、精子保存工程に供する選抜前精子液中において、1〜100μM程度の濃度とするのが好ましい。濃度が1μM未満であると精子に対し十分な影響を与えることが困難となる。また100μMを越える量としても、更なる効果は得がたく、むしろ精子への毒性が懸念される。フェノキサジン化合物の濃度を1μM以上、100μM以下とすることにより、精子に対する毒性を抑制しつつ十分な影響を与えることができる。
また、ヘキソース-6-リン酸としては、例えば、D-グルコース-6-リン酸、フルクトース-6-リン酸、マンノース-6-リン酸、ガラクトース-6-リン酸よりなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の混合物とすることができる。このヘキソース-6-リン酸は、精子保存工程に供する選抜前精子液中において、0.1〜100mM程度の濃度とするのが好ましい。濃度が0.1mM未満であると精子に対し十分な影響を与えることが困難となる。また100mMを越える量としても、更なる効果は得がたく、むしろ効果を阻害することが懸念される。ヘキソース-6-リン酸の濃度を0.1μM以上、100mM以下とすることにより、精子に対する毒性を抑制しつつ十分な影響を与えることができる。
以下、本実施形態に係る精子の選抜部構造、及び、精子スクリーニング装置、並びに同精子スクリーニング装置を用いた授精用精子液の調製方法について図面を参照しながら更に具体的に説明する。なお以下の説明では、授精用精子液の一具体例として人工授精用(子宮腔内精子注入法用)の精子液について言及するが、これに限定されるものではなく、試験管内授精や顕微授精用の精子液としても使用可能であることは勿論である。
図4は、本実施形態に係る精子スクリーニング装置Dの構成を示した説明図である。図4に示すように、精子スクリーニング装置Dは、底部形成板41とチップ体42とを重畳して形成した本体部43上に、3つの筒体44を載置して構成している。また、各筒体44の内部を、それぞれ緩衝液収容部45、選抜前精子液貯留部46、回収部47としている。
そして、緩衝液収容部45に緩衝液を所定量注入し、選抜前精子液貯留部46に選抜前精子液を所定量注入し、回収部47にも緩衝液を所定量注入しておくことで、マイクロ流体の働きによって、選抜前精子液貯留部46に収容した選抜前精子液中に含まれる精子の中から良好な運動性を有する精子を選抜し、回収部47にて緩衝液と共に回収可能としている。
本体部43を構成する底部形成板41は、図5の分解斜視図、及び図6の断面図に示すように、チップ体42を載置するための基板であり、緩衝液収容部45や選抜前精子液貯留部46、回収部47の底部を形成したり、チップ体42の裏面に形成した後述の流路パターン52aの底部を形成する部材としての役割を果たすものである。なお、底部形成板41は、例えばガラスや樹脂(アクリルやPDMS)により形成することができる。
本体部43を構成するチップ体42は、樹脂にて形成された板状の部材であり、実施形態ではポリジメチルシロキサン(PDMS)にて形成している。
また、チップ体42には、3つの孔を穿設している。これら3つの孔は、それぞれ前述の緩衝液収容部45の一部を構成する緩衝液用孔部48と、選抜前精子液貯留部46の一部を構成する貯留部用孔部49と、回収部47の一部を構成する回収部用孔部50である。
また、チップ体42の裏面には、微細加工によって流路パターン52aが形成されている。この流路パターン52aは、底部形成板41とチップ体42とを重ね合わせることでマイクロ流路52を形成するためのものである。流路パターン52aは、緩衝液用孔部48や、貯留部用孔部49、回収部用孔部50を連通させる複数の溝部51や、前述の層状流路を形成するための層状流路形成用凹部53を刻設することで形成している。
各筒体44は、緩衝液用孔部48や、貯留部用孔部49、回収部用孔部50の周縁に配置して、緩衝液収容部45や選抜前精子液貯留部46、回収部47における収容可能量を大きくするための壁体として機能するものである。各筒体44は、それぞれの孔部の直径よりも大きな外径を有しており、各孔部の周縁に水密状に配置固定される。
次に、底部形成板41とチップ体42を重ね合わせることで形成されるマイクロ流路52の構成について、図7を参照しながら説明する。
図7に示すように、マイクロ流路52は、選抜前精子液貯留部46の壁面の一部を構成する貯留部用孔部49と回収部用孔部50とを結ぶ貯留部−回収部連通流路60と、緩衝液用孔部48から貯留部−回収部連通流路60の中途部に連結させた2本の緩衝液供給路61とで構成している。また、貯留部−回収部連通流路60と、緩衝液供給路61とが交わる部分を合流部62としている。
貯留部−回収部連通流路60は、合流部62から選抜前精子液貯留部46側に向けて形成した遡上路63と、合流部62から回収部47側に向けて形成した回収路64とで構成している。
また、緩衝液供給路61は、緩衝液収容部45内に収容した緩衝液を合流部62に送給するための流路である。なお、緩衝液収容部45及び緩衝液供給路61は、前述の緩衝液供給手段として機能する。
緩衝液供給路61により合流部62に供給された緩衝液は、一部が遡上路63へ流れ、残部が回収路64に流れるように構成している。なお、以下の説明において、遡上路63に流れ込み流下する緩衝液流を遡上流といい、回収路64に流れ込み流下する緩衝液流を回収流という。
遡上路63は、選抜前精子液貯留部46内に貯留されている選抜前精子液から精子を誘導し、良好な運動性を有する精子を選抜するための流路であり、狭隘遡上路65と層状流路66とで構成している。
狭隘遡上路65は、合流部62にて分流した緩衝液により生ずる遡上流中で精子を遡上させることにより、良好な運動性を有する精子を合流部62へ向けて遡上させつつ、奇形の精子や人工授精を行うに際し好ましくない程度に運動性に劣る精子を遡上流に乗せて脱落させ合流部62に至らないようにするための流路である。
また、層状流路66は、図1〜図3を用いて説明したように、選抜前精子液貯留部46内の精子を効率良く狭隘遡上路65へ導くための誘引手段として機能する部位であり、図7において網掛けで示す部位である。なお、層状流路66の下流側端部(遡上路63の下流側端部)に示す破線は、選抜前精子液貯留部46の側壁部に開口させたスリット状開口部67である。
このように、マイクロ流路52では、狭隘遡上路65、層状流路66、スリット状開口部67により、本実施形態に係る精子の選抜部構造を構成している。
回収路64は、狭隘遡上路65を遡上流に逆らって遡上し合流部62に至った精子を回収するための流路であり、合流部62に至った精子を回収流に乗せて回収部47へ流し込むための部位である。
そして、このような構成を有するマイクロ流路52によれば、選抜前精子液貯留部46に選抜前精子液を添加する精子添加工程を行い、同選抜前精子液貯留部46に収容された選抜前精子液から、スリット状開口部67、層状流路66、狭隘遡上路65により良好な運動性を有する精子が多数の母集団から効率良く選抜され、回収流と共に回収部47に回収されることとなる。
特に、本実施形態に係る精子スクリーニング装置Dのマイクロ流路52では、遡上流が、運動性を有するが回収を望まない精子が遡上できる限界の流速を上回り、良好な運動性を有する精子が遡上できる限界の流速以下で、且つ、遡上路63(狭隘遡上路65及び層状流路66)にて緩衝液流が層流となる流速となるように、緩衝液供給路61が形成されている。
また、本実施形態に係る精子スクリーニング装置Dのマイクロ流路52では、回収流が、合流部62に至った(遡上できた)精子の運動能力を上回る流速となるように緩衝液供給路61が形成されている。
すなわち、緩衝液供給路61は、2つの緩衝液供給路61によって、合流部62に対し、上記条件を満たす遡上流と回収流を生成できる流量を供給可能な流路断面積を有するように形成している。
従って、図8に示すように、2本の緩衝液供給路61によって供給される緩衝液が合流部62に至ると、その一部は網掛けの矢印で示すように遡上路63(狭隘遡上路65)に流入し、良好な運動性を有する精子が遡上可能で、運動性に劣る精子には遡上困難な層流状の遡上流が形成されることとなる。
また、緩衝液供給路61によって供給される緩衝液の残部は、白抜きの矢印で示すように回収路64に流入し、良好な運動性を有する精子であっても遡上困難な回収流が形成されることとなる。
遡上流は、狭隘遡上路65を流下し、層状流路66に至る。このとき、層状流路66は、流下する遡上流が層流状態を維持しつつ緩流となる広幅の流路に形成されているため、図9に示すように狭隘遡上路65を流れる遡上流よりも緩流で層流を保った流れが形成される。
それゆえ、流速が低下した広幅で層流状の遡上流をスリット状開口部67から流出させることができ、運動性を有しない精子やゴミを開口から遠ざける一方、運動性を有する精子に対しては間口を広くとりつつ、精子にrheotaxisの性質を惹起させて層状流路66に多くの精子を誘い込むことができる。
付言すれば、回収路64には遡上できた精子の運動能力を上回る流速で、遡上路63(緩衝液流路)には運動性を有するが回収を望まない精子が遡上できる限界の流速を上回り、且つ、良好な運動性を有する精子が遡上できる限界の流速を下回り、且つ、遡上路において層流となる流速で、緩衝液供給路61から遡上路63(緩衝液流路)と回収路64とに緩衝液を流し、選抜前精子液貯留部46に添加した選抜前精子液中に含まれる精子に遡上路63を遡上させる精子遡上工程が行われることとなる。
また、層状流路66は、遡上流の上流側へ向けて漸次狭窄するように構成しているため、図10に示すように、層状流路66に誘引された精子Sは徐々に狭隘遡上路65の入口部に集合することとなり、効率良く精子S1を狭隘遡上路65に誘導することができる。
また、狭隘遡上路65の入口部近傍では、徐々に(連続的に)流速が上がるため、奇形の精子など運動性は有するものの正常な運動ができない精子は、遡上が阻まれることとなる。
また、狭隘遡上路65における遡上流の流速に抗して遡上することのできない精子S2も脱落する。
狭隘遡上路65では、運動性に劣る精子S3は遡上できず、良好な運動性を有する精子S1が遡上可能な程度の流速で遡上流が流れているため、図11に示すように、運動性に劣る精子S3は脱落することとなり、良好な運動性を有する精子S1が選抜されることとなる。
そして、良好な運動性を有する精子S1が狭隘遡上路65の上流側端部まで遡上し、合流部62に至ると、緩衝液供給路61から回収路64へ向かう流れによって、回収路64の入口部分に引き寄せられ、回収流により回収部47へ送り込まれることとなる。この回収流によって捕集された遡上できた精子を回収する回収工程を行うことで人工授精用精子液の調製が行われる。すなわち、送り込まれた精子を含有する回収部47内の貯留液は、従来になく高濃度で良好な運動性を有する精子を含有しているため、人工授精用精子液として使用することができる。
このように、本実施形態に係る精子スクリーニング装置Dによれば、本実施形態に係る精子の選抜部構造を備えているため、運動性の良好な精子を効率良く分離することができる。
〔精子スクリーニング試験〕
次に、種々の流路パターンを有するチップ体を用いて構成した精子スクリーニング装置で行った精子のスクリーニングの試験について説明する。本試験はすなわち、授精用精子液の調製試験、より具体的には人工授精用精子液の調製試験でもある。
本試験では、精子スクリーニング装置Dのチップ体42に該当する部分を、図12に示す種々のチップ体に差し替えて試験し、回収できた精子の数や、運動性を有する精子の割合、直線速度、曲線速度、直進性を求めた。
図12において示すチップ1は、平面視において前述のマイクロ流路52と略同じ構成を有するものである。aで示す緩衝液収容部の内径は10mm、bで示す選抜前精子液貯留部の内径は7mm、cで示す回収部の内径は8mm、Aで示す緩衝液供給路の長さは20.58mm、幅300μm、深さ100μm、Bで示す狭隘遡上路の長さは2.5mm、幅200μm、深さ100μm、Cで示す回収路64の長さは2.5mm、幅200μm、深さ100μmであり、網掛けで示す層状流路の深さは100μmで、平面視における面積は12.14mm2である。
また、チップ2は、前述のチップ1と同様に平面視において前述のマイクロ流路52と略同じ構成を有するものであるが、狭隘遡上路の幅と、回収路の幅を400μmとして遡上流及び回収流の流量は変更することなく、2倍緩やかな流れとした構成である。
また、チップ3は、前述のチップ2と同様に平面視において前述のマイクロ流路52と略同じ構成を有するものであるが、さらに緩衝液供給路の幅についても600μmとし、チップ1に比して2倍速い流れで流量も2倍とした構成である。
また、チップ4は、一つの選抜前精子液貯留部に対して2つの遡上路を設けた構成としたものである。具体的には、aで示す2つの緩衝液収容部の内径は8mm、bで示す選抜前精子液貯留部の内径は5.6mm、cで示す2つの回収部の内径は6.4mm、Aで示す4本の緩衝液供給路の長さは7.62mm、幅300μm、深さ100μm、Bで示す2本の狭隘遡上路の長さは3mm、幅200μm、深さ100μm、Cで示す2本の回収路64の長さは2.5mm、幅200μm、深さ100μmであり、2つの層状流路の深さは100μmで、平面視における面積はいずれも18.64mm2である。
チップ5もまたチップ4と同様に、一つの選抜前精子液貯留部に対して2つの遡上路を設けた構成としたものである。具体的には、aで示す2の緩衝液収容部の内径は10mm、bで示す選抜前精子液貯留部の内径は7mm、cで示す2つの回収部の内径は8mm、Aで示す4本の緩衝液供給路の長さは9.05mm、幅300μm、深さ100μm、Bで示す2本の狭隘遡上路の長さは3mm、幅200μm、深さ100μm、Cで示す2本の回収路64の長さは1mm、幅200μm、深さ100μmであり、2つの層状流路の深さは100μmで、平面視における面積はいずれも25.06mm2である。
そして、これらのチップ1〜5を用いて精子スクリーニング装置を構成し、緩衝液と選抜前精子液としての凍結解凍精液を添加して、精子のスクリーニング試験を行った。
試験で使用した凍結解凍精液は、総精子濃度が69±4.5百万/ml、動いている精子の割合が21±5.8%、直線速度は67±14μm/sec、曲線速度は144±11μm/sec、直進性は0.44±0.06であった。また、スクリーニング時間は、30分間とした。これらの試験結果を図13に示す。
図13からも分かるように、いずれのチップ1〜5においても、少なくとも従来の数十個/分というオーダーを遙かに凌ぐ、30分あたり数百万/mlという濃度で効率良く精子を分離することができた。すなわち、人工授精に適した精子液の調製を行うことができた。
また、動いている(生きている)精子の割合に着目すると、使用した凍結解凍精液(未処理)では21±5.8%であったのに対し、チップ1〜5の全てにおいて回収された精子の生きている割合は、70%以上にまで高められているのが分かる。
また、直進性についても向上しており、奇形の精子も極めて効率良く除去されていることが示された。
このように、本実施形態に係る精子スクリーニング装置によれば、従来の緩衝液流路を遡上路として精子を遡上させる精子のスクリーニングに比べて、極めて効率良く良好な運動性を有する精子を回収できることが示された。
ところで、本実施形態に係る精子スクリーニング装置を用いれば、人工授精における雌雄受胎確率を所望する性に偏らせる(偏倚させる)ことも可能である。
すなわち、本実施形態に係る人工授精用精子液の調製方法によれば、性染色体Xを備える精子(以下、X精子ともいう。)又は性染色体Yを備える精子(以下、Y精子ともいう。)の割合を任意に増加させた人工授精用精子液を調製することができる。
このような人工授精用精子液の調製方法について、以下に更に言及する。
従来畜産農家によって所望する性の家畜、例えば牛の生産が試みられている。
しかし、この産み分けは畜産農家の経験や勘に頼るところが大きく、一般化された技術としては確立していないのが実情である。
特に、同一のオス個体から異なるタイミングで得られた2つの精液を混合して調製された精子液(選抜前精子液)は、受精能の獲得(capacitation)のタイミングが分散しており、必ずしも良好な結果が得られるとは言い難い。
一方、本実施形態に係る精子スクリーニング装置を用いれば、X精子又はY精子の割合を、選抜前精子液におけるX精子又はY精子の割合よりも増加させた人工授精用精子液の調製を実現することができる。また、ひいては所望する性の家畜の受胎確率を向上させることができる。
具体的には、前述の精子スクリーニング装置を用いた人工授精用精子液の調製方法であって、前記精子スクリーニング装置は、動物より採取された精子含む精子液を貯留する貯留部と、貯留部に連通し貯留部方向へ緩衝液が層流として流れる緩衝液流路と、貯留部から緩衝液流路中を精子が遡上するように貯留部に連通した遡上路とを備え、前記遡上路の下流部は、前記緩衝液の層流状態を維持しつつ緩流とする広幅の流路とし、この流路の下流端部を前記貯留部の壁面に臨ませて開口させると共に、前記遡上路の上流端には、遡上できた精子を回収する回収路と、前記遡上路及び前記回収路を流下させる緩衝液を供給する緩衝液供給路とが接続されており、前記緩衝液供給路より供給された緩衝液の一部を前記遡上路へ流下させる一方、前記緩衝液の残部を回収路へ流下させて回収流と成し、前記遡上できた精子をこの回収流に乗せて捕集するものであり、前記精子液を前記貯留部に添加する精子添加工程と、前記回収路には前記遡上できた精子の運動能力を上回る流速で、前記緩衝液流路には運動性を有するが回収を望まない精子が遡上できる限界の流速を上回り、且つ、良好な運動性を有する精子が遡上できる限界の流速を下回り、且つ、前記遡上路において層流となる流速で、前記緩衝液供給路から前記緩衝液流路と前記回収路とに緩衝液を流し、前記貯留部に添加した精子に前記遡上路を遡上させる精子遡上工程と、前記回収流によって捕集された遡上できた精子を回収する回収工程とを有する人工授精用精子液の調製方法をベースとしたものである。
そして特徴的には、前記選抜前精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子が受精能を獲得するタイミングを閾時間とし、同閾時間以前に前記精子添加工程を行って前記人工授精用精子液中に含まれる性染色体Yを備えた精子の割合を増加させ、又は、前記閾時間以降に前記精子添加工程を行って前記人工授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させる。
なお、家畜として牛を例にすると、オスの牛の中には、比較的早期に受精能を獲得するX精子を含んだ精液を分泌する個体もあれば、遅くに受精能を獲得するX精子を含んだ精液を分泌する個体もある。また、同じ個体であっても、その時の体調や季節等によって精液中の精子の状態が変化する。したがって、上記閾時間は、個体別に、また、その個体の状態に応じてそれぞれ適宜決定される。この閾時間の決定にあたっては、どの程度の時間でX精子が受精能を獲得し始めるのかについて、個体毎に予備試験等を行うことで決定することができる。
また、ここで説明する人工授精用精子液の調製方法は、前述の精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程の保存時間を長くして、人工授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させる人工授精用精子液の調製方法であるとも言える。
以下、本実施形態に係る人工授精用精子液の調製方法の更なる実験例について以下に示す。
〔実験例1〕
JAさがより購入した「辰之介(しんのすけ;黒毛和種)」の凍結精液を37℃で解凍後、遠心により、精漿(capacitationを抑える作用)と抗凍結剤などを除去した。
その後、予め行った予備試験結果に基づき閾時間を解凍後10時間とし、37℃で9時間または15時間保存して精子保存工程を行ったのち、本実施形態に係る精子スクリーニング装置を用いて運動能力の高い精子を捕集した。
次いで、リアルタイムPCR法により、この捕集した精子のXとYの割合を調べた。表1にその結果を示す。
Figure 0006202501
〔実験例2〕
前述の実験例1と同様に、JAさがより購入した「七宝神(しちほうじん;黒毛和種)」について試験を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0006202501
表1及び表2からも分かるように、いずれの実験例においても、閾時間である10時間よりも前であれば、Y精子の割合を選抜前精子液におけるY精子の割合よりも増加させることができた。
また、閾時間である10時間よりも後であれば、X精子の割合を選抜前精子液におけるX精子の割合及び閾時間前に選抜した精子液におけるX精子の割合よりも増加させたり(表1参照。)、閾時間前に選抜した精子液におけるX精子の割合よりも増加させることができた(表2参照。)。
これらの結果より、本実施形態に係る精子スクリーニング装置を用いた授精用精子液の調製方法によれば、Y精子の割合を選抜前精子液におけるY精子の割合よりも増加させた授精用精子液の調製や、X精子の割合を選抜前精子液及び閾時間前に選抜した精子液におけるX精子の割合、又は閾時間前に選抜した精子液におけるX精子の割合よりも増加させた授精用精子液の調製を実現することができる。また、ひいては所望する性の家畜の受胎確率を向上させることができる。
すなわち、上述の本実施形態に係る授精用精子液の調製方法は、本実施形態に係る精子スクリーニング装置を用いることにより、選抜前精子液中の精子を運動能力によってスクリーニングして授精に適した精子の成熟時期をある程度揃え、更に受精能獲得のタイミングを図りつつ、所望の性染色体を備えた精子の割合を増加させる方法と捉えることもできる。
従って、選抜前精子液と比較して、授精に適した精子の含有割合が高く、しかも性比に偏りのある授精用精子液を調製することができるため、経験等によらず堅実な産み分けを行うことも可能となる。
また、表1及び表2に示した結果より、精子保存工程をより長く行った選抜前精子液にて調製した人工授精用精子液は、保存時間の短い選抜前精子液にて調製した人工授精用精子液に比してX精子の含有割合が上昇することが示された。なお、表2における解凍後6時間目のX精子の割合のデータは、解凍後3時間目におけるX精子の割合のデータよりも少なくなっているが、これは計測誤差の範囲内であり、実質的には、同じ又は増加しているものと考えられる。
それゆえ、上述の人工授精用精子液の調製方法は、メスの個体を優先的に得る方法としても有用であると言える。
次に、精子保存工程にて所定の物質を添加することにより、雌性または雄性の個体を優先的に得ることのできる人工授精用精子液の調製方法について説明する。
精子は、その中で解糖系を利用して、その運動に必要なエネルギーを産生する回路を働かせているが、ここにもX精子とY精子の間に違いがあることが知られている。
このことを利用して、この回路のいずれかの段階を阻害したり、または促進するような物質の添加を行うことで、予めX精子とY精子の運動能力に差をつけ、このような精子を含む選抜前精子液を前述の精子スクリーニング装置に供することで、雌性または雄性の個体を優先的に得ることのできる人工授精用精子液を調製可能である。
従来より、精子の性別に特徴的なエネルギー産生の反応経路の違いなどは知られていたが、X精子とY精子のいずれか一方の精子のみの運動を完全停止させるようなことは困難であった。つまり、精子が完全停止させるほど試薬を添加すると、精子が死んでしまうことが多く、それ故、性選別方法としての利用は進んでいなかった。
しかしながら、上述した本実施形態に係る精子スクリーニング装置を用いれば、特徴の一つである泳ぐスピードごとに捕集するという性能により、どちらか一方だけが若干遅くなる程度の差をつけるだけで、すなわち、精子に毒性を与えるよりもはるかに低濃度の物質の添加量で性選別方法として利用することができる。以下、その実験例について具体的に説明する。
〔実験例3〕
WHGオーシヤニツクジヨビアンET(ホルスタイン種)の凍結精液を所定の手順で解凍した。解凍精液200μLを1.5mL容チューブに分取して遠心(7分、2000rpm)し、上澄みを半分ほど捨て、約100μL残した状態とした。
このチューブに、約100μLの緩衝液(市販の「SP-TALP」水溶液に、6mg/mL BSA+10μg/mLジェンタマイシン+5mM EGTAを加えたもの)を添加して軽く撹拌した後、50分、37℃、5%CO2にてインキュベートした。
次に、このチューブを再度遠心(7分、2000rpm)し、上澄みを捨て、約100μLの緩衝液(市販の「SP-TALP」水溶液に、6mg/mL BSA+10μg/mLジェンタマイシンを加えたもの;EGTAが入っていない)を添加して軽く撹拌した。
このチューブを再度遠心(7分、2000rpm)し、上澄みを約100μL捨て、約100μLの水溶液(市販の「SP-TALP」水溶液に、6mg/mL BSA+10μg/mLジェンタマイシン+25μMブリリアントクレシルブルー+5mMグルコース-6-リン酸を加えたもの)を添加し、37℃、5%CO2にてインキュベートした(精子保存工程)。またこのとき、インキュベート時間を50分としたものと、30分としたものの2種類を調製した。
その後、本実施形態にかかる精子スクリーニング装置を用いて運動能力の高い精子の捕集を行った捕集した。そして、得られた人工授精用精子液について、リアルタイムPCR法によりX精子とY精子の割合について調べた。その結果を表3及び表4に示す。表3はインキュベート時間を50分としたものの結果であり、表4はインキュベート時間を30分としたものの結果である。
Figure 0006202501
Figure 0006202501
表3及び表4からも分かるように、電子受容物質を添加しない条件下において選抜前精子液中にフェノキサジン化合物としてのブリリアントクレシルブルーを添加しておくことにより、人工授精用精子液中に含まれる性染色体Yを備えた精子の割合が凍結精液に比して増加したことが確認された。
具体的には、表3に示すように、インキュベート時間を50分とした場合、凍結精液中におけるX精子とY精子の割合がそれぞれ52%と48%であったのに対し、得られた人工受精用精子液におけるX精子とY精子の割合はそれぞれ35%と65%となった。
また、表4に示すように、インキュベート時間を30分とした場合、凍結精液中におけるX精子とY精子の割合がそれぞれ50%と50%であったのに対し、得られた人工受精用精子液におけるX精子とY精子の割合はそれぞれ39%と61%となった。
これらのことから、本実施形態に係る授精用精子液の調製方法によれば、上述した所定の物質を添加することにより、人工授精用精子液中のX精子やY精子が占める割合を変化させることができることが示された。
上述してきたように、本実施形態に係る精子の選抜部構造によれば、動物より採取された精子を貯留する貯留部と、貯留部に連通し貯留部方向へ緩衝液が層流として流れる緩衝液流路と、貯留部から緩衝液流路中を精子が逆流するように貯留部に連通した遡上路とよりなる精子の選抜部構造において、前記遡上路の下流部は、前記緩衝液の層流状態を維持しつつ緩流とする広幅の流路とし、この流路の下流端部を前記貯留部の壁面に臨ませて開口させたため、運動性の良好な精子を効率良く分離することのできる精子の選抜部構造を提供することができる。
また、本実施形態に係る精子のスクリーニング装置によれば、動物より採取された精子を層流状の緩衝液中で所定区間遡上させ、遡上できた精子を捕集する本実施形態に係る選抜部構造を備えた精子スクリーニング装置であって、前記遡上路の上流端には、遡上できた精子を回収する回収路と、前記遡上路及び前記回収路を流下させる緩衝液を供給する緩衝液供給路とが接続されており、前記緩衝液供給路より供給された緩衝液の一部を前記遡上路へ流下させる一方、前記緩衝液の残部を回収路へ流下させて回収流と成し、前記遡上できた精子をこの回収流に乗せて捕集することとしたため、極めて効率良く良好な運動性を有する精子を回収することができる。
また、本実施形態に係る授精用精子液の調製方法によれば、上述の精子スクリーニング装置を用いた授精用精子液の調製方法であって、前記選抜前精子液を前記貯留部に添加する精子添加工程と、前記回収路には前記遡上できた精子の運動能力を上回る流速で、前記緩衝液流路には運動性を有するが回収を望まない精子が遡上できる限界の流速を上回り、且つ、良好な運動性を有する精子が遡上できる限界の流速を下回り、且つ、前記遡上路において層流となる流速で、前記緩衝液供給路から前記緩衝液流路と前記回収路とに緩衝液を流し、前記貯留部に添加した選抜前精子液中に含まれる精子に前記遡上路を遡上させる精子遡上工程と、前記回収流によって捕集された遡上できた精子を回収する回収工程とを有することとしたため、運動性の良好な精子を多く含有する授精用精子液の調製方法を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
10 貯留部
11 狭隘遡上路
12 層状流路
13 スリット状開口部
20 貯留部
21 狭隘遡上路
22 層状流路
23 スリット状開口部
30 貯留部
31 狭隘遡上路
32 層状流路
33 スリット状開口部
42 チップ体
46 選抜前精子液貯留部
52 マイクロ流路
61 緩衝液供給路
62 合流部
63 遡上路
64 回収路
65 狭隘遡上路
66 層状流路
67 スリット状開口部
A 選抜部構造
B 選抜部構造
C 選抜部構造
D 精子スクリーニング装置
S 精子

Claims (16)

  1. 動物より採取された精子を含有する選抜前精子液を貯留する貯留部と、
    貯留部に連通し貯留部方向へ緩衝液が層流として流れる緩衝液流路と、
    貯留部から緩衝液流路中を精子が遡上するように貯留部に連通した遡上路とよりなる精子の選抜部構造において、
    前記遡上路の下流部は、前記緩衝液の層流状態を維持しつつ緩流とする広幅の流路とし、この流路の下流端部を前記貯留部の壁面に臨ませて開口させたことを特徴とする精子の選抜部構造。
  2. 前記広幅の流路は、前記開口から上流側へ向けて狭窄するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の精子の選抜部構造。
  3. 前記貯留部に前記遡上路を複数連結させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の精子の選抜部構造。
  4. 動物より採取された精子を層流状の緩衝液中で所定区間遡上させ、遡上できた精子を捕集する請求項1〜3いずれか1項に記載の選抜部構造を備えた精子スクリーニング装置であって、
    前記遡上路の上流端には、遡上できた精子を回収する回収路と、前記遡上路及び前記回収路を流下させる緩衝液を供給する緩衝液供給路とが接続されており、
    前記緩衝液供給路より供給された緩衝液の一部を前記遡上路へ流下させる一方、前記緩衝液の残部を回収路へ流下させて回収流と成し、前記遡上できた精子をこの回収流に乗せて捕集することを特徴とする精子スクリーニング装置。
  5. 前記緩衝液供給路は、前記回収流が前記遡上できた精子の遡上能力を超える流速となる流量を供給可能な流路断面積としたことを特徴とする請求項4に記載の精子スクリーニング装置。
  6. 請求項4又は請求項5に記載の精子スクリーニング装置を用いた授精用精子液の調製方法であって、
    前記選抜前精子液を前記貯留部に添加する精子添加工程と、
    前記回収路には前記遡上できた精子の運動能力を上回る流速で、前記緩衝液流路には運動性を有するが回収を望まない精子が遡上できる限界の流速を上回り、且つ、良好な運動性を有する精子が遡上できる限界の流速を下回り、且つ、前記遡上路において層流となる流速で、前記緩衝液供給路から前記緩衝液流路と前記回収路とに緩衝液を流し、前記貯留部に添加した選抜前精子液中に含まれる精子に前記遡上路を遡上させる精子遡上工程と、
    前記回収流によって捕集された遡上できた精子を回収して授精用精子液とする回収工程とを有する授精用精子液の調製方法。
  7. 前記選抜前精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子が受精能を獲得するタイミングを閾時間とし、同閾時間以前に前記精子添加工程を行って前記授精用精子液中に含まれる性染色体Yを備えた精子の割合を増加させ、又は、前記閾時間以降に前記精子添加工程を行って前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させる請求項6に記載の授精用精子液の調製方法。
  8. 前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中の精子のうち、性染色体Xを有する精子と性染色体Yを有する精子とのいずれか一方の性染色体を有する精子の運動能力を向上させることにより、前記精子遡上工程にて前記遡上路における前記いずれか一方の性染色体を有する精子の遡上を促進させて、前記回収工程にて得られる前記授精用精子液中に含まれた前記いずれか一方の性染色体を有する精子の割合を増加させることを特徴とする請求項6に記載の授精用精子液の調製方法。
  9. 前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中の精子のうち、性染色体Xを有する精子と性染色体Yを有する精子とのいずれか一方の性染色体を有する精子の運動能力を低下させることにより、前記精子遡上工程にて前記遡上路における前記いずれか一方の性染色体を有する精子の遡上を抑制して、前記回収工程にて得られる前記授精用精子液中に含まれたいずれか他方の性染色体を有する精子の割合を増加させることを特徴とする請求項6に記載の授精用精子液の調製方法。
  10. 前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程の保存時間を長くして、前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させる請求項6に記載の授精用精子液の調製方法。
  11. 前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中にフェノキサジン化合物と電子受容物質を存在させて、前記授精用精子液中に含まれる性染色体Xを備えた精子の割合を増加させる請求項6に記載の授精用精子液の調製方法。
  12. 前記精子添加工程を行う前に前記選抜前精子液を保存する精子保存工程にて、前記選抜前精子液中にフェノキサジン化合物を存在させて、前記授精用精子液中に含まれる性染色体Yを備えた精子の割合を増加させる請求項6に記載の授精用精子液の調製方法。
  13. 前記電子受容物質は、フラビン類、フェナジン類、NAD(P)Hオキシドレダクターゼからなる群から選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項11に記載の授精用精子液の調製方法。
  14. 前記精子保存工程にて、前記選抜前精子液中に、さらにヘキソース-6-リン酸を添加することを特徴とする請求項11〜13いずれか1項に記載の授精用精子液の調製方法。
  15. 前記ヘキソース-6-リン酸は、D-グルコース-6-リン酸、フルクトース-6-リン酸、マンノース-6-リン酸、ガラクトース-6-リン酸よりなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の混合物であることを特徴とする請求項14に記載の授精用精子液の調製方法。
  16. 前記フェノキサジン化合物は、ブリリアントクレシルブルー、ナイルブルー、ベーシックブルー、メルドラブルーよりなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の混合物であることを特徴とする請求項11〜15いずれか1項に記載の授精用精子液の調製方法。
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