JP6995348B2 - 精子選別方法、精子選別システム、並びに人工授精用精子液として使用する方法 - Google Patents

精子選別方法、精子選別システム、並びに人工授精用精子液として使用する方法 Download PDF

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Description

本発明は、精子選別方法、精子選別システム、人工授精用精子液、並びに人工授精用精子液としての使用に関する。
従来、畜産分野において、家畜を生産するために、人工授精が頻繁に行われている。また、ヒトの不妊治療などにおいても、人工授精が行われる場合がある。
特に畜産分野において、人工授精や受精卵移植等が家畜の改良や増殖に応用され、実用化されており、本邦では、新たに得られる子牛の90%以上が人工授精によるものとなっている。
家畜の人工授精には、ストロー精液管に分注した凍結精液が一般的に用いられている。この凍結保存用のストロー精液管は、種雄牛の射出精液を凍結保存用の一次希釈液にて希釈し、次に、一次希釈液に凍害保護物質を加えた二次希釈液で希釈したものをストロー中に充填して得られるもので、液体窒素中で凍結保存される。種雄牛の1回の射出精液中には数十億個の精子が含まれており、これを分注加工して、各2~6千万個の精子を含有するストロー精液管を得ている。
しかし、射出精液中には、死滅した精子や、奇形の精子も一部含まれているが、それらを除去することなく分注加工が行われている。そのため、死滅した精子から無秩序に放出される化学種等によって、人工授精に有効である運動性が良好な精子にダメージを与え、殺傷を行ったり運動性を失わせたりする。
その結果、人工授精の直前に解凍したストロー精液管では、精子の多くが既に死滅、あるいは運動性が失われており、その割合は5~7割にも達する場合が多い。また、奇形の精子も一部含まれていることから、これらの非運動性精子の存在は、受胎効率の向上を妨げる原因の一つとなっている。
一方、これらのような問題点を解消すべく、畜産の分野やヒトの不妊治療の分野では、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を回収するための方法が種々提案されている。
例えば、熱可塑性樹脂からなる円筒形の容器の下部に隔壁を設置し、隔壁上に星形など多角形状の凹部を配置したデバイスが提案されている。このデバイスでは、壁に沿って狭いところに移動するという精子の性質を利用して、運動性の良好な精子を凹部につたわらせて、下面の終結部にて捕集することとしている(特許文献1参照。)。
また、精子が、流路内の水流に抗し遡上して移動するレオタキシス(rheotaxis;走流性)とよばれる性質を持つことに着目し、流速等の条件を調節し、レオタキシスを誘導する層流を発生させるマイクロ流路を設計し、さらに精子がレオタキシスを起こす確率を高めるために略三日月形状の貯留部構造を設定することで、効率良く運動性精子を分離する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
国際公開第2015/104797号 国際公開第2016/035799号
これまでに提案されてきた方法によれば、遠心分離に供する方法等に比して、精子に対する物理的ダメージやDNA損傷を軽減することができ、比較的良質な運動性の精子を回収することが可能である。
特に、本発明者らが提案するマイクロ流路を用いた運動性精子の分離技術は、授精に適した精子を高精度で選別できるという点で極めて優れた技術であり、既に数十頭の子牛が本技術によって誕生している。
しかしながら、マイクロ流路を使用するという技術の性質上、多量の精子含有液を処理するためには、複数のマイクロ流路チップを使用したり、繰り返し作業を行う必要があるなど、人工授精用精子液の大量調製という観点において未だ改善の余地が残されていた。
このことは人畜問わず、運動性の良好な少数精鋭の精子を精度良く選抜したい状況があるのは勿論であるが、それとは逆に、選抜精度の多少の低下は容認しつつより多くの精子を回収したいといった要望もあり、これまでに提案されていた技術で対応するには煩雑さを伴うこととなっていた。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分離することのできる精子選別方法を提供する。
また、本発明では、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分離することのできる精子選別システムや、人工授精用精子液、並びに人工授精用精子液としての使用についても提供する。
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る精子選別方法では、(1)軸線方向へ速度勾配を有する旋回流中に運動性の異なる複数の精子を存在させ、所定時間の経過後に走流性に応じて移行分配された精子群を分取することとした。
また、本発明に係る精子選別方法では、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記旋回流は有底筒状容器の内周壁に沿って流れる旋回流であること。
(3)前記有底筒状容器は略鉛直方向へ指向させた前記軸線方向の下方へ向けて漸次狭窄する形状であること。
また、本発明に係る精子選別システムでは、(4)運動性の異なる複数の精子を含む精子含有液を収容する有底筒状の収容容器と、前記収容容器の内周壁に沿って収容した精子含有液に旋回流を生じさせる旋回流生成手段と、前記旋回流により惹起された前記精子の走流性に由来して移行分配された精子群を分取する分取手段と、を有することとした。
また、本発明では、(5)軸線方向へ速度勾配を有する旋回流中にて運動性の異なる複数の精子から移行分配して相対的に運動性の高い精子群が含まれる分取液を取得し、該分取液を非ヒト動物に対する人工授精用精子液として使用することとした。
本発明によれば、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分離することのできる精子選別方法を提供することができる。また、本発明によれば、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分離することのできる精子選別システムや、人工授精用精子液、並びに人工授精用精子液としての使用についても提供することができる。
旋回流の概念及び旋回流中での精子の挙動を示した説明図である。 収容容器中における旋回流の状態を示した説明図である。 他の例に係る旋回流の概念を示した説明図である。
本発明は、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分離することのできる精子選別方法を提供するものであり、特徴的には、軸線方向へ速度勾配を有する旋回流中に運動性の異なる複数の精子を存在させ、所定時間の経過後に走流性に応じて移行分配された精子群を分取することとしている。
本実施形態に係る精子選別方法において使用可能な精子は特に限定されるものではなく、ヒト由来の精子でも良く、また、非ヒト動物由来の精子であっても良い。
また、本方法に供する精子を含んだ液(精子含有液)は、ヒトを含む、例えばオスの哺乳動物個体より得られたままの精液(射出精液)を用いることができるのは勿論のこと、精漿や緩衝液を添加して精子濃度や精漿を構成する成分を調整した成分調整精液や、凍結後解凍された精液(解凍精液)、精子を所定の緩衝液に分散させて調製した精子分散液も用いることができる。すなわち、本明細書において精子含有液は、これら射出精液、成分調整精液、解凍精液、精子分散液を総称する言葉として解するべきである。
本実施形態に係る精子選別方法では、運動性の異なる複数の精子を旋回流中に存在させて行う。図1(a)は、旋回流の一例についてその状態を概念的に示した斜視説明図である。楕円状に配された各実線は軸線Pを中心とする精子含有液に形成された旋回流の所定間隔毎の旋回軌道を示し、また、旋回軌道上の太い矢印の長さは単位時間あたりの精子含有液の移動量を示しており、この矢印の長さが長いほど流速が大きいことを示している。
旋回流は、例えば図1(a)として示すように、所定の軸線Pの回りに形成された旋回流であって、鉛直方向と略並行な軸線Pの伸延方向下方へ向けて流速や角速度が漸次減速する速度勾配を有するものが挙げられる。
任意の位置における同軸状に配された旋回軌道を見ると分かるように、旋回流は、軸線Pと直交する半径方向において、略一定の角速度を有するものであっても良い。
また、本実施形態に係る精子選別方法は、旋回流によって精子に惹起されたレオタキシスを利用するものであるため、旋回流の流速は、良好な運動性を有する精子のレオタキシス能力を超えない程度であるのが望ましい。
良好な運動性を有する精子の直線速度は、概ね100μm/sec程度であるため、例えば200μm/secから10μm/sec程度までの速度勾配(以下、好適速度勾配範囲ともいう。)が軸線方向のできるだけ広い領域に亘って形成された旋回流が好適である。ただし、200μm/secを上回る流速となる領域や10μm/secを下回る流速となる領域の存在を妨げるものではない。
好適速度勾配範囲を軸線方向にできるだけ広い領域に亘って形成することで、良好な運動性を有する精子を多く含む液層の分取をより容易なものとすることができる。ただし、領域を過剰に広げすぎることは、無用な精子密度の低下を招くこととなるため、留意が必要である。良好な運動性を有する精子が含まれた液層を分取した際の好ましい精子密度は、10万~20億個/ml程度である。
図1(b)は、精子含有液に形成された旋回流中における各精子の挙動を示した説明図であり、左側に示す矢印は流速の大きさを示している。なお、説明の便宜上、好適速度勾配範囲に対する精子の大きさは誇張して表現している。図1(a)に示したような旋回流が精子含有液に形成されると、旋回流中においてそれぞれの精子はレオタキシスが惹起され、各精子の運動性に応じた流れが存在する位置に移動する。
具体的には、例えば運動性に相応する流れよりも流速が小さい領域に存在していた精子S1は、より流速が高く自らの運動性に適した領域に向かって移動する。また、運動性に相応する流れよりも流速が大きい領域に存在していた精子S2は、より流速が低く自らの運動性に適した領域に向かって移動する。もともと運動性に相応する流速の領域に存在していた精子S3や精子S4は、およそ同様な流れが存在する位置を保持する。このように、比較的良好な運動性を有する精子S1~S4は、自らの運動性に相応する流れが存在する位置に移行することで、運動性の良好な精子が多く分配された液層(以下、良運動性精子層ともいう。)が精子含有液中に形成される。
その反面、運動性が良好でない精子S5は、良運動性精子層に存在する流れよりも流速が小さく、自らの運動性に相応した流れが存在する位置に移動する。このような機序により、運動性が良好でない精子や奇形の精子(例えば精子S6)が多く分配された液層(以下、不良運動性精子層)が精子含有液中に形成されることとなる。
このような精子の移行分配を行わせるのに必要な旋回流を維持しておく時間は、処理する精子含有液の量にもよるが概ね10~120分程度であり、例えば精子含有液の量が20mlであれば、20~45分程度で比較的顕著に分配傾向が現れる。
そして、所定時間の経過を待って精子の移行分配を行い、必要に応じて旋回流を停止させ、不良運動性精子層を除いた液層部分、特に、良運動性精子層を含む液層を分取することで、精子含有液の液量が比較的多い場合においても、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分離することができる。
特に、図1(a)に示すような旋回流であれば、軸線Pの伸延方向を略鉛直方向とし、軸線Pの上方から下方へ向けて漸次流速が低下する旋回流(以下、鉛直軸下方減速旋回流ともいう。)としているため、運動性が良好でない精子や奇形の精子は下方へ、運動性が良好な精子は上方へ移動分配することができ、運動性の良好な精子を含む液層を分取するにあたり、液面近傍から容易に操作を行うことができる。
この図1(a)に示す旋回流は、精子含有液中の如何なる場所に形成しても良いが、例えば、旋回流の形成を停止させてもなお残存する流れなどにより分配された精子が拡散してしまうことを防止するために、旋回流を囲う壁や精子を誘引可能な拡散防止手段を配しても良い。敢えて具体的な一例を挙げるならば、精子含有液を所定の容器に収容し、精子含有液全体に旋回流を形成するのも一案である。
図2(a)は、運動性の異なる複数の精子を含む精子含有液10を拡散防止手段として機能する有底円筒状の収容容器11内に収容し、旋回流生成手段としての図示しない攪拌機の攪拌子12を精子含有液10の液面又は液面直下に配し、収容された精子含有液10の高さ方向略全域に亘って好適速度勾配範囲が形成されるような速度で攪拌子12を回転させることにより鉛直軸下方減速旋回流を形成した状態を示している。
このような構成とすることにより、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分配することができるのは勿論のこと、収容容器11内に収容した比較的多量の精子含有液10の全量を一度に処理することができる。
また、上方に移行分配された良運動性精子層を、例えば吸引装置などの分取手段を使用し上部開口13を介して容易に分取することができ、精子選別の操作上極めて有利である。
また、逆の視点から言えば、底部近傍に不良運動性精子層を形成することとなり、運動性に乏しい精子群を底部近傍に沈降させることができるため、運動性に乏しい精子群が良運動性精子層に混入することを可及的抑制することができる。
図2(b)は、本実施形態に係る精子選別方法の他の実施態様を示した説明図である。なお、図2(b)では、説明の便宜上、旋回流生成手段や精子含有液10の液面については図示を省略している。
図2(b)に示す態様では、図2(a)にて示した旋回流と同様、鉛直軸下方減速旋回流を利用して精子の選別を行う点で共通しているが、精子含有液10を収容し旋回流を形成する収容容器11が、軸線方向の下方へ向けて漸次狭窄する有底筒状(倒立円錐台形状)である点で構成を異にしている。
すなわち、図2(a)にて示した旋回流が軸線に沿って略等幅の鉛直軸下方減速旋回流であったのに対し、収容容器11内にて精子含有液10に形成される旋回流は、下方狭窄の鉛直軸下方減速旋回流である点で異なっている。
そして、このような構成を備える精子選別方法によれば、前述の図2(a)にて示した方法と同様の効果が得られるのに加え、運動性に乏しい精子群を容積の小さい底部近傍に高濃度で集合させることができ、不良運動性精子層を除いた液層部分、特に、良運動性精子層を含む液層の量を可及的多く分取することが可能となる。
また、下方へ狭窄する収容容器であるため、軸線Pと直交する仮想線上の軸線Pから内周壁までの距離(旋回半径)が下方ほど小さく、精子含有液が有する粘性と内周壁との兼ね合いにより下方ほど流動抵抗が高まるため、流速の速度勾配の傾きをより大きくすることができる。
ここまで、旋回流が鉛直軸下方減速旋回流である場合を一例として本実施形態に係る精子選別方法や精子選別システムについて説明してきたが、次に、速度勾配の形成方向や軸線の異なる旋回流の例について図3を参照しながら説明する。
図3は本実施形態に係る精子選別方法に適用可能な旋回流の他の例を示した説明図である。まず図3(a)に示す旋回流であるが、軸線Pの回りに形成され、鉛直方向と略並行な軸線Pの伸延方向上方へ向けて流速や角速度が漸次減速する速度勾配を有する旋回流(以下、鉛直軸上方減速旋回流ともいう。)を示している。
個々の精子は極めて微細で軽量であるため、旋回流を形成して移行分配する間の時間、例えば10~120分程度であれば、重力が及ぼす精子の移動への影響は殆ど無視することができる。
従って、鉛直軸上方減速旋回流を形成した場合、鉛直軸下方減速旋回流とは反対に、運動性に相応する流れよりも流速が小さい領域に存在していた精子はより早い流れが存在する領域を求めて下方へ移動して良運動性精子層が形成される一方、運動性に相応する流れよりも流速が大きい領域に存在していた精子であって運動性に乏しい精子は、より遅い流れが存在する領域を求めて上方へ移動して不良運動性精子層が形成されることとなる。
そして、鉛直軸上方減速旋回流を採用して本実施形態に係る精子選別方法を行うと、例えば図2(a)にて示した上部開口で等幅の円筒状収容容器を用いた場合には、精子の移行分配が行われた後に、上部開口から分取手段によって運動性の乏しい精子群を分取することとなるため、収容容器内に運動性の良好な精子群を含む液層を残存させることができる。
図3(b)は、鉛直方向と略直交する軸線Pの回りに形成され、軸線Pの伸延方向のうちいずれか一方(図3(b)では紙面左方)へ向けて流速や角速度が漸次減速する速度勾配を有する旋回流(以下、水平軸旋回流ともいう。)を示している。
この水平軸旋回流は、例えば横臥させた筒状容器内でその内周壁に沿って流れを生成することにより形成でき、これまでの鉛直軸下方減速旋回流や、鉛直軸上方減速旋回流と同様に、良好な運動性を有する精子は相対的に流速の大きい領域へ移行して良運動性精子層を形成し、運動性に乏しい精子は相対的に流速の小さい領域へ移行して不良運動性精子層を形成することとなり、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分離することができる。
なお、図示については省略するが、旋回流の軸線は鉛直(略鉛直)方向や水平(略水平)方向に限定されるものではなく、鉛直方向や水平方向に対し所定の傾きを持った軸としても良い。
図3(c)は、下方へ狭窄する鉛直軸下方減速旋回流という点では、先に図2(b)を参照して説明した旋回流と略同様であるが、螺旋旋回流である点で状態を異にしている。
発明の理解を容易とするために、図中では螺旋を強調して示しているが、収容した精子含有液の上部と下部との間、より具体的には良運動性精子層を含む液層と不良運動性精子層を含む液層とが対流によって攪乱されない程度の螺旋旋回流であれば、これまでの旋回流と同様に個々の精子が有する走流性に応じて移行分配させることができ、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分離することができる。
なお、ここまで幾つかの旋回流を中心に述べてきた本発明に関する概念的な説明は、発明の理解を容易にすべく理想的なモデルを提示して説明したものにすぎず、実際は、精子含有液が流体として複雑な挙動を示すものであって、本発明をこれら理想モデルに基づいて厳密に解釈すべきではない。本発明の要旨は、流速の異なる旋回流を略同軸状に多段又は無段階に形成し、レオタキシスによって個々の精子を運動性に対応した流れが存在する位置に移行分配させ、目的とする液層を分取することにある点に留意すべきである。但し、本出願人が本願の権利化を図るにあたり、これら説明に基づいて限定することは妨げない。
このように、本実施形態に係る精子選別方法は、軸線方向へ速度勾配を有する旋回流中に運動性の異なる複数の精子を存在させ、所定時間の経過後に走流性に応じて移行分配された精子群を分取するものであると言える。
本実施形態に係る精子選別方法を実施するにあたり、旋回流中に配される精子の環境温度、換言すれば、旋回流を形成する精子含有液の温度は、精子が自律的に運動可能な温度であれば特に限定されるものではなく、例えば20~40℃、より好ましくは25~35℃程度とすることができる。
精子含有液の温度は、必要に応じて保温・冷却可能に構成しても良い。例えば、収容容器の周囲にニクロム線やセラミックス発熱体などの発熱体やペルチェ素子などの調温体を配したり、温風・温水や冷風・冷水を吹き付け可能としても良い。
一般的な目安であるが、一度に処理を行う射出精液の量は、0.1~20ml、好ましくは1~10mlとすることができる。このような量であれば、十分量を処理することができ、精子選別の処理効率を向上させることができる。
また、精子含有液を有底筒状容器内に収容し、精子含有液の略全体に旋回流を形成して処理を行う場合、一度に処理を行う精子含有液は、上記射出精液を2~100倍に希釈したものとすることができ、その量は概ね10~100mlとすることができる。
また、有底筒状の収容容器の形状は特に限定されるものではないが、底壁の直径が10~100mm、周壁の高さが20~500mmのものを好適に採用することができる。鉛直方向に軸線を有する旋回流によって本実施形態に係る精子選別方法を実施するにあたっては、収容容器は上部開口を備えた筒状であるのが望ましく、例えば単純な円筒や直方体、円錐台形状のものを用いることができる。なお、筒状とは、必ずしも断面視円形である必要はなく、例えば、楕円や多角形状であっても良い。
また、収容容器の材質は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックやガラス、低膨張ホウケイ酸ガラスなどとすることができる。
精子含有液に旋回流を形成するにあたり使用される攪拌機などの旋回流生成手段に備えられる攪拌子は、例えば鉛直軸下方減速旋回流を形成する場合には、精子含有液の水面から浸漬し、回転駆動により精子含有液に回転運動を与えるものであれば良く、また、図3(c)にて示したように渦流を形成するものであっても良い。
攪拌子の形状は、精子含油液に効率良く回転力が伝わる表面積の大きな形状とするのが望ましく、例えば、プロペラ状や羽状、両者が組み合わされた形状のものなどを採用することができる。
攪拌子の回転は、電気モータ等によって一定時間安定した回転を与えるものが好適である。攪拌子の回転速度は、回転によって精子に対して損傷を与えない水流速度を誘起する速度であれば良いが、好適には良好な運動性を有する精子のレオタキシス能力を超えない程度の水流速度を誘起する回転速度が望ましく、例えば、10~200rpmとすることができる。
以下、本実施形態に係る子選別方法、精子選別システム、人工授精用精子液、並びに人工授精用精子液としての使用について、実施例を参照しつつ説明する。なお、本実施例では筒状の収容容器内に収容した精子含有液の全体に鉛直軸下方減速旋回流を形成して精子の選別を行った例について述べるが、収容容器の形状や旋回流は先に述べたとおり種々変更可能である。
〔1.精子選別システムの構築〕
精子含有液を収容する有底筒状の収容容器として、上部直径(開口径)20mm、下部直径10mm、高さ250mmの倒立円錐台形状の収容空間を有するガラス製容器と、精子含有液に旋回流を生じさせる旋回流生成手段として、先端にプロペラ状の攪拌子を配したFRONTLAB社製FLOS20-S型攪拌機と、移行分配された精子群を分取する分取手段として吸引ホースの中途に分取液回収用のトラップ部を設けた吸引機とを用意し、精子選別システムを構築した。
〔2.精子含有液の調製〕
黒毛和牛より得られた凍結精液を解凍したもの2mlにSP-TALP溶液を添加して希釈し、20mlの精子含有液を調製した。
〔3.精子選別〕
調製した精子含有液をガラス製容器内に収容し、攪拌子を液面下5mmの位置に浸漬した状態で攪拌機を70rpmの回転数で駆動させ、精子含有液全体に下方狭窄の鉛直軸下方減速旋回流を形成した。このとき、目視的に観察される旋回流の軸線近傍の流れが容器底部に達しないよう回転数を調整した。
〔4.分取〕
30分経過後攪拌を停止し、収容容器の上部開口から吸引ホースを穏やかに挿入し、上部(液面付近)、中央(高さ方向の真ん中付近)、下部(底部付近)についてそれぞれ約6.6mlずつ、別個に液層を回収した。なお、良運動性精子層の分取は、ここでは所定の体積を規定して分取することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば水面から所定の深さ分(高さ分)だけ分取するなど、高さや長さによって規定することも可能である。
〔5.人工授精用精子液の性状〕
分取した各液層中に含まれる精子の精子運動率、直線速度、曲線速度についてディテクト社製精子運動解析装置に供して計測を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0006995348000001
また、同様に調製した精子含有液を同形状の収容容器に収容し、旋回流の形成を行うことなく30分間静置して上部、中央、下部より回収した液層について計測した結果を表2に示す。
Figure 0006995348000002
表1に示した結果によれば、精子の濃度は上部、中央、下部において若干の違いは見られたものの、顕著な偏りは確認されず大凡均等に分布していた。
精子運動率は、上部において65.83%と最も高く、下部(34.55%)と比較して約2倍の差があった。また、直線速度や曲線速度などの運動性は上部から中央にかけて高くなっていた。直線速度の分布については、下部では運動性の低い精子の分布が多いが、逆に上部と中央では運動性の高い精子の分布が高い傾向があった。上部では直線速度がゼロの非運動性精子はほとんど確認されなかった。
下部には全く運動しない、あるいは運動性の低い精子の濃度が局在していることから、下部の授精に対する貢献度が低い精子画分を除去し、上部もしくは上部と中央部を加えた画分を人工授精や体外受精に用いることで受胎率の向上が達成できるものと考えられた。
上述してきたように、本発明に係る精子選別方法では、軸線方向へ速度勾配を有する旋回流中に運動性の異なる複数の精子を存在させ、所定時間の経過後に走流性に応じて移行分配された精子群を分取することとしたため、運動性の異なる多くの精子の中から運動性の良好な精子を効率良く迅速に分離することのできる精子選別方法を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
10 精子含有液
11 収容容器
12 攪拌子
13 上部開口
P 軸線
S1~S6 精子

Claims (5)

  1. 軸線方向へ速度勾配を有する旋回流中に運動性の異なる複数の精子を存在させ、所定時間の経過後に走流性に応じて移行分配された精子群を分取する精子選別方法。
  2. 前記旋回流は有底筒状容器の内周壁に沿って流れる旋回流であることを特徴とする請求項1に記載の精子選別方法。
  3. 前記有底筒状容器は略鉛直方向へ指向させた前記軸線方向の下方へ向けて漸次狭窄する形状であることを特徴とする請求項2に記載の精子選別方法。
  4. 運動性の異なる複数の精子を含む精子含有液を収容する有底筒状の収容容器と、
    前記収容容器の内周壁に沿って収容した精子含有液に旋回流を生じさせる旋回流生成手段と、
    前記旋回流により惹起された前記精子の走流性に由来して移行分配された精子群を分取する分取手段と、を有することを特徴とする精子選別システム。
  5. 軸線方向へ速度勾配を有する旋回流中にて運動性の異なる複数の精子から移行分配して相対的に運動性の高い精子群が含まれる分取液を取得し、該分取液を非ヒト動物に対する人工授精用精子液として使する方法
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