JP6200816B2 - 機器診断装置、機器診断方法及び機器診断プログラム - Google Patents

機器診断装置、機器診断方法及び機器診断プログラム Download PDF

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Description

本発明は、機器診断装置、機器診断方法及び機器診断プログラムに関する。
近時、機器の運転状態をコンピュータで制御し、熱効率を高めることが盛んに行われている。例えば、空調関連機器に関しても、コンピュータが、機器単体又は統合システム全体の省エネルギ対策を行う例が多く知られている。一般的な機器に比して、空調関連機器は、駆動部品、液体通過部品、温度変化の著しい部品を多く含むので、経年劣化が進み易い。例えば、大規模なオフィスビルの空調関連機器の劣化が進むと、当然、熱効率が低下する。さらに、突然の機能停止のような極端な場合は、経済活動に対して膨大な損害を与える。そこで、空調関連機器の劣化を予知するために、現地において、又は、遠隔地からの操作によって、日常的にきめ細かな監視、診断を行うことが重要である。
特許文献1の吸収冷凍機の診断装置は、吸収冷凍機の状態量を検知し、検知した状態量を定格運転条件における値に補正する。そして補正後の状態量に対して所定の閾値を適用し、吸収冷凍機が正常であるか否かを判定する。特許文献2の故障診断装置は、店舗向けのショーケース及び冷凍機の故障を診断する。当該故障診断装置は、正常なショーケースの状態データ(例えば、庫内温度)を予め収集し、そのデータの分布を示す確率密度関数を作成しておく。そして、いま測定した状態データが、その確率分布のうち、上位(又は下位)1%、5%等の閾値(有意水準)を超えた場合は、ショーケース及び冷凍機が異常であると判定する。
特開2004−20076号公報(請求項1、図7、図8等) 特開2003−172567号公報(請求項1、段落0084等)
特許文献1の発明では、閾値をどのように設定するかによって、正常/異常の判定が恣意的に分かれてしまう。また、特許文献1の発明は、異常の真の原因が「A」であるにもかかわらず、異常の原因は「B」であるという誤診断をする可能性がある。特許文献2の発明は、統計的な仮説検定の考え方を導入し、誤診断の可能性を下げてはいるが、1つの確率密度関数及び固定的な有意水準を使用する。つまり、同時に発生し得る複数のリスクのうち、1つのリスク以外は考慮外となっている。また、特許文献2の発明は、異常の種類、重大さ、経済的影響等に応じて、正常であるか否かを判定するわけではないので、全体的なバランスの観点に欠ける。そこで、本発明は、判定根拠が明確であり、全体のリスクを最小化できる機器診断装置を提供することを目的とする。
本発明の機器診断装置は、正常である機器の正常サンプルデータを使用して、機器が異常であることを判定するための第1の確率分布を作成し、異常である機器の異常サンプルデータを使用して、機器が正常であることを判定するための第2の確率分布を作成する入力データ管理部と、第1の確率分布に基づいて診断対象の機器である実機が異常であると判定される確率である第1の確率、及び、第2の確率分布に基づいて診断対象の機器である実機が正常であると判定される確率である第2の確率の和を最小にする、第1の確率分布及び第2の確率分布に共通の閾値を決定する閾値決定部と、共通の閾値と、実機から取得した診断対象データとの大小関係に基づいて、実機が正常であるか否かを判定する診断部と、を有し、機器は、吸収式冷温熱機であって、診断対象データ、正常サンプルデータ及び異常サンプルデータは、機器についての、高温再生器温度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、高温再生器濃度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、及び、低温再生器ドレン温度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
本発明によれば、判定根拠が明確であり、全体のリスクを最小化できる機器診断装置を提供することが可能になる。
吸収式冷温熱機の構造を説明する図である。 機器診断装置の構成、及び、機器診断装置と吸収式冷温熱機の関係を説明する図である。 機器運転情報の一例を示す図である。 (a)、(b)及び(c)は、サンプル値の確率密度関数を示す図である。 (a)は、ある年におけるΔTHGの冷房定格能力比に対する傾きを説明する図であり、(b)は、ある年におけるΔXHGの冷房定格能力比に対する傾きを説明する図である。 冷房能力、冷水出口温度、冷却水出口温度及び高温再生器温度の基準値の関係を示す図である。 (a)はデータ準備処理手順のフローチャートであり、(b)は閾値決定処理手順のフローチャートである。 診断処理手順のフローチャートである。 診断処理手順のフローチャート(続き)である。 冷却水入口温度・冷房成績係数推定処理手順のフローチャートである。 (a)及び(b)は、診断対象データの時系列グラフの一例である。
以降、本発明を実施するための形態(「本実施形態」という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、本発明を「吸収式冷温熱機」に適用する例である。もちろん、本発明を他の空調関連機器に適用することも可能であるし、空調関連機器以外の機器に適用することも可能である。
(吸収式冷温熱機)
図1に沿って、吸収式冷温熱機42の構造を説明する。吸収冷温熱機42は、冷凍機の一種である。一般に、冷凍機は、圧力を制御することによって冷媒を液体から気体に状態変化させ、その際の気化熱に相当する熱を冷水から奪う。吸収型冷温熱機42は、冷媒として水を使用し、吸収剤に冷媒(水)を吸収させることによって低圧力を生み出すことに特徴がある。吸収剤としては、一般的に臭化リチウム水溶液が使用される。本実施形態の吸収式冷温熱機42もまた、このような型式の吸収式冷温熱機である。
吸収式冷温熱機42は、蒸発器51、吸収器52、凝縮器53、低温再生器54、高温再生器55、低温熱交換器56及び高温熱交換器57を有する。蒸発器51においては、伝熱面積を極端に大きくしたコイル状のチューブに対して、冷媒が滴下される。チューブ中には冷水が通っている。蒸発器51の内部は、例えば、1/100気圧前後の超低圧状態になっているため、滴下した冷媒(水)は、例えば、5℃前後の低温で容易に気化する。すると、冷媒が冷水から気化熱を奪い、その分、冷水の温度は低下する。
吸収器52と蒸発器51とは連通しており、両者の間を冷媒(水蒸気)が通過する。吸収器52においては、コイル状のチューブに対して、吸収剤が滴下される。チューブ中には冷却水が通っている。吸収剤(臭化リチウム水溶液)は、冷媒(水蒸気)を吸収する。このことによって、蒸発器51内の低圧状態が維持される。冷媒を吸収した吸収剤は、自身の濃度を下げつつ、チューブ内の冷却水に熱を逃がす一方で、吸収器52の底部に貯まる。冷却水は、凝縮器53内のコイル状のチューブに流れ込む。
高温再生器55は、吸収器52から低温熱交換器56及び高温熱交換器57を経由して流れて来た吸収剤を受け取り、ボイラで重油等を燃焼させることによって、受け取った吸収剤を加熱する。すると、吸収剤から冷媒(水蒸気)が分離され、次第に吸収剤の濃度は高くなる。高濃度の吸収剤は、高温熱交換器57を経由して、低温再生器54に流れ込む。分離された水蒸気は、低温再生器54内のコイル状のチューブに流れ込む。
低温再生器54は、冷媒(水蒸気)が通るチューブを有する。低温再生器54に流れ込んだ吸収剤は、冷媒によって熱せられ、再度、冷媒(水蒸気)を分離する。分離された冷媒(水蒸気)は、凝縮器53に流れ込み、より濃度が高くなった吸収剤は、低温再生器54の底部に貯まる。貯まった吸収剤は、低温熱交換器56に流れ込む。チューブ内の冷媒(水蒸気)は、凝縮器53に流れ込み、水となって貯まる。
凝縮器53と低温再生器54とは連通しており、両者の間を冷媒(水蒸気)が通過する。凝縮器53は、冷却水が通るチューブを有する。高温再生器55から低温再生器54を経由して流れ込んだ冷媒(水蒸気)が、チューブ上で結露し、凝縮器53の底部に貯まる。貯まった冷媒(水)は、蒸発器51に流れ込む。
低温熱交換器56及び高温熱交換機57は、吸収剤が吸収器52から高温再生器55に流れ込むまでの過程で、高温の吸収剤の熱を低温の吸収剤に与える(重油等の燃料を節減するための予熱)。冷水等の役割を大まかにみれば、以下の通りである。
・冷水は、空調負荷(空調機等)において熱を吸収する。
・冷却水は、冷水の熱を吸収し、その熱を外部(冷却塔等)に逃がす。
・冷媒は、自身が状態変化することによって、冷水の熱を冷却水に逃がす仲介をする。
・吸収剤は、冷媒(水蒸気)を吸収することによって、低圧を作り出す。
なお、本実施形態においては、冷媒は水である。冷媒は、吸収剤を含まない純水の状態(凝縮器53内、蒸発器51内)→吸収剤(水溶液)に含まれる状態(吸収器52内)→吸収剤から分離された純水蒸気の状態(高温再生器55の上部の空間)→吸収剤を含まない純水の状態、というように繰り返し遷移する。
多くのセンサが、吸収式冷温熱機42を構成する各機器上に配置されており、各機器の温度等を検知する。また、多くのセンサが、各機器を接続する配管(又はコイル状のチューブ)上にも設置されており、冷水等の液体(気体)の温度、単位時間あたりの流量、濃度等を検知する。例えば、図1の△58の位置のセンサは、「冷水出口温度」を検知し、△59の位置のセンサは、「冷却水出口温度」を検知し、△60の位置のセンサは、「低温再生器ドレン温度」を検知する。そして、図示はしないが、ポンプ、減圧弁等の補助機器が、配管上の必要位置に設置されている。
(機器診断装置等)
図2に沿って、機器診断装置1の構成、及び、機器診断装置1と吸収式冷温熱機42の関係を説明する。機器診断装置1は、例えばビルケアを行うサービス会社によって運営される。機器診断装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、入力装置12、出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び通信装置16を有する。これらは、バスによって相互に接続されている。補助記憶装置15は、機器運転情報31(詳細後記)を記憶している。主記憶装置14における、入力データ管理部21、閾値決定部22及び診断部23はプログラムである。以降、「○○部は」と主体を記した場合は、中央制御装置11が、補助記憶装置15から各プログラムを読み出し、主記憶装置14にロードしたうえで、各プログラムの機能(詳細後記)を実現するものとする。
吸収式冷温熱機42は、サービス会社の顧客によって運営される。通常、サービス会社は複数の顧客を有し、個々の顧客は、複数の吸収式冷温熱機42を運営していることが多い。センサ46は、前記したセンサである。制御装置45は、いわゆるマイクロコンピュータであり、予め自身にロードされているプログラムにしたがって、センサ46からの信号を受信しつつ、吸収式冷温熱機42の運転全般を制御する。監視端末装置44もまた、センサ46からの信号を受信する。制御装置45及び監視端末装置44は、通常、1台の吸収式冷温熱機42に対して、それぞれ1台ずつ設置される。中継器41は、各監視端末装置44から、センサ46の信号を受信する。そして、ネットワーク2を介して、機器診断装置1に当該信号を送信する。台数制御器43は、各吸収式冷温熱機42の制御装置45に接続されており、空調負荷の大きさ、外気温度等の環境条件等に応じて、実際に稼動させる吸収式冷温熱機42の台数を制御する。
図2では、サービス会社の機器診断装置1が、(外部の)ネットワーク2を介して、顧客の吸収式冷温熱機42を遠隔監視する例を説明した。サービス会社が監視センターから多くの顧客の吸収式冷温熱機42を集中管理するほかに、顧客が自家運用の吸収式冷温熱機42を現場で監視することもできる。すなわち、機器診断装置1が、中継器41又は監視端末装置44と一体になる例も可能である。
(機器運転情報)
図3に沿って、機器運転情報31を説明する。機器運転情報31においては、データID欄101に記憶されたデータIDに関連付けて、冷温熱機ID欄102には冷温熱機IDが、冷房成績係数欄103には冷房成績係数が、高温再生器温度欄104には高温再生器温度が、高温再生器濃度欄105には高温再生器濃度が、冷水出口温度欄106には冷水出口温度が、冷却水出口温度欄107には冷却水出口温度が、取得時点欄108には取得時点が、判定欄109には判定フラグが、記憶されている。
データID欄101のデータIDは、機器運転情報31のレコードを一意に特定する識別子である。
冷温熱機ID欄102の冷温熱機IDは、吸収式冷温熱機42を一意に特定する識別子である。
冷房成績係数欄103の冷房成績係数は、以下の式1及び式2で定義される値である。なお、J/秒=kWが成り立つ。
Figure 0006200816
Figure 0006200816
高温再生器温度欄104の高温再生器温度は、高温再生器55自身の温度であり、高温再生器55が格納する吸収剤の温度に等しい。ここでは、高温再生器温度の単位は、セルシウス温度(℃)であるが、絶対温度(K)であってもよい。
高温再生器濃度欄105の高温再生器濃度は、高温再生器55が格納する吸収剤の濃度である。ここでは、濃度の単位は「重量%」である。
冷水出口温度欄106の冷水出口温度は、図1の△58の位置での冷水の温度である。
冷却水出口温度欄107の冷却水出口温度は、図1の△59の位置での冷却水の温度である。
取得時点欄108の取得時点は、高温再生器温度等の値をセンサ46が取得した時点の年月日時分秒である。本実施形態では、高温再生器温度等のデータのすべてが、ある時点において同時にセンサ46において検知され、又は検知されたデータを基に算出されるものとする。さらに、入力データ管理部21は、リアルタイムで、検知された又は算出されたデータに基づき、機器運転情報31のレコードを作成するものとする。
判定欄109の判定フラグは、吸収式冷温熱機42に対する診断の結果である。判定フラグとしては、吸収式冷温熱機42が正常であることを示す「正常」、異常であることを示す「異常」、及び、具体的な異常状態を示すフラグ(詳細後記)がある。「*」については後記する。
レコード127〜129に注目する。吸収式冷温熱機「M98」は、例えば、顧客が運用を開始する前の状態の試験機(正常サンプル機)である。「20130101 10:00:00」から5分ごとに、吸収式冷温熱機「M98」の高温再生器温度等が取得されている。機器診断装置1のユーザ(サービス会社)は、吸収式冷温熱機「M98」が正常であるという前提のもとに、正常な状態における高温再生器温度等のサンプル値を取得している。
レコード130〜132に注目する。吸収式冷温熱機「M99」は、例えば、顧客が運用を開始した後、経年劣化が進んだ状態の試験機(異常サンプル機)である。「20130101 10:00:00」から5分ごとに、吸収式冷温熱機「M99」の高温再生器温度等が取得されている。機器診断装置1のユーザは、吸収式冷温熱機「M99」が異常であるという前提のもとに、異常な状態における高温再生器温度等のサンプル値を取得している。
つまり、判定欄109の「正常*」は、そのレコードのデータが、正常な状態のサンプル値であることを示している。同様に、「異常*」は、そのレコードのデータが、異常な状態のサンプル値であることを示している。一方、レコード121〜126の判定欄109は空欄になっている。吸収式冷温熱機「M01」及び吸収式冷温熱機「M02」は、顧客によって運用されつつある「実機」である。機器診断装置1は、これらの実機から高温再生器温度等のデータを受け付け、実機が正常であるか否かを判定する。そして、その判定のための閾値を決定する際、「正常*」が記憶されているレコード及び「異常*」が記憶されているレコードの両者が用いられ、実機についてのレコードの判定欄109には、最終的に判定結果が記憶されることになる(詳細後記)。
機器運転情報31の欄103から欄107までに掲げたデータの種類は、例に過ぎない。これらの他に、例えば、冷水入口温度、冷却水入口温度、冷水流量、冷却水流量、ボイラからの入熱量等の欄があってもよい。また、これらの一次的データを加工して算出される二次的データを記憶する欄があってもよい。例えば、一次的データである「冷水流量」、「冷水出口温度」及び「冷水入口温度」に基づいて算出される「冷房能力」の欄があってもよい。さらに、機器運転情報31とは別に、冷温熱機IDに関連付けて、定格冷房能力、冷水比熱等の定数を記憶した対応情報が補助記憶装置15に記憶されていてもよい。
図4(a)、(b)及び(c)は、サンプル値の確率密度関数を示す図である。これらの図では、「高温再生器温度」の例を採用しているが、他の種類のデータであっても考え方は全く同様である。まず、図4(a)に注目する。入力データ管理部21は、機器運転情報31のレコードのうち、ある期間の、ある正常サンプル機の、例えば、高温再生器温度を複数取得する。入力データ管理部21は、取得した複数の値を母集団とする統計処理を行い、その母集団の平均μ及び分散σ を算出する。そして、母集団が正規分布に従うことを前提として、正規分布N(μ,σ )を示す確率密度関数pを作成する。
本実施形態においては、確率密度関数pは、式3の形を有する。
Figure 0006200816
このように、確率密度関数pは、「μ」及び「σ 」をパラメータとし、「x」を入力変数とする関数であり、関数の出力変数は、「x」が発生する分布である。つまり、実機の高温再生器温度が「x」であるときに、実機が正常である分布はp(x)である。当該確率密度関数pは、平均μを対称軸とする左右対称な曲線であり、2つの変曲点を有する。それぞれの変曲点は、「μ−σ」及び「μ+σ」の位置に対応する。なお、「σ」は分散「σ 」の正の平方根であり、母集団の標準偏差である。
次に、図4(b)に注目する。入力データ管理部21は、機器運転情報31のレコードのうち、ある期間の、ある異常サンプル機の、例えば、高温再生器温度を複数取得する。入力データ管理部21は、取得した複数の値を母集団とする統計処理を行い、その母集団の平均μ及び分散σ を算出する。そして、母集団が正規分布に従うとの前提のもと、正規分布N(μ,σ )を示す確率密度関数pを作成する。
本実施形態においては、確率密度関数pは、式4の形を有する。
Figure 0006200816
このように、確率密度関数pは、「μ」及び「σ 」をパラメータとし、「x」を入力変数とする関数であり、関数の出力変数は、「x」が発生する分布である。つまり、実機の高温再生器温度が「x」であるときに、実機が異常である分布はp(x)である。当該確率密度関数pは、平均μを対称軸とする左右対称な曲線であり、2つの変曲点を有する。それぞれの変曲点は、「μ−σ」及び「μ+σ」の位置に対応する。なお、「σ」は分散「σ 」の正の平方根であり、母集団の標準偏差である。
の平均値μと、pの平均値μとを比較した場合、必ずしもμ<μとなるとは限らない。空調関連機器の劣化は熱効率の低下として顕在化する。その結果、異常サンプル機から取得した冷水出口温度等の値が、正常サンプル機から取得した当該値より大きくなる(μ<μ)場合が多い。また、吸収式冷温熱機42の劣化が進むと、例えば、吸収剤が冷媒(水蒸気)を吸収する効率が下がる結果、高温再生器濃度が高くなる。一方、温水、蒸気等を供給する空調関連機器の劣化が進むと、供給できる温水、蒸気等の温度は低下する(μ>μ)。以降では代表例として、μ<μとなる例を説明する。pの分散σ と、pの分散σ とを比較した場合、多くの場合、σ <σ となる。
図4(a)に戻る。「s」は、「5%」の有意水準である。横軸とp(x)との間の領域の面積は常に「1」である。その面積のうち、「s」の右側の部分の面積Eは「0.05」である。したがって、実機の高温再生器温度「x」が、有意水準「s」を超える場合は、実機は異常であると考えるのが自然である。
再度、図4(b)に進む。「s」は、5%の有意水準である。横軸とp(x)との間の領域の面積は常に「1」である。その面積のうち、「s」の左側の部分の面積Eは「0.05」である。したがって、実機の高温再生器温度の値「x」が、有意水準「s」に満たない場合は、実機は正常であると考えるのが自然である。なお、有意水準は、他の値、例えば「1%」であってもかまわない。
(仮説検定)
統計学の仮説検定の考え方が、産業上応用されることは多い。仮説検定の考え方は、数学の背理法によく似ている。まず、帰無仮説が立てられる。帰無仮説は、統計結果の活用者が、「この仮説はおそらく偽であるので、最終的には棄却したい」と思うような仮説である。因みに、帰無仮説の逆の仮説を対立仮説という。対立仮説は、統計結果の活用者が、「この仮説はおそらく真であるので、最終的には採択したい」と思うような仮説である。いま、帰無仮説が「実機は正常である」であるとする。すると、対立仮説は「実機は異常である」となる。図4(a)において、実機の高温再生器温度「x」が、「s」を超える場合、帰無仮説は棄却され、対立仮説が採択される。結局、実機は異常である、という結論が得られる。逆に、帰無仮説が「実機は異常である」であるとする。すると、対立仮説は「実機は正常である」となる。図4(b)において、実機の高温再生器温度「x」が、「s」未満である場合、帰無仮説は棄却され、対立仮説が採択される。結局、実機は正常である、という結論が得られる。
実機が正常であるにもかかわらず異常であると判定されてしまうことを第一種の過誤という。第一種の過誤が発生する確率は、図4(a)のEとなる。実機が異常であるにもかかわらず正常であると判定されてしまうことを第二種の過誤という。第二種の過誤が発生する確率は、図4(b)のEとなる。いま、図4(a)の「s」及び図4(b)の「s」として、共通の値「s」を使用するとする。第一種の過誤を回避するには、「s」の値を大きくすればよい。逆に、第二種の過誤を回避するには、「s」の値を小さくすればよい。第一種の過誤が発生する確率と第二種の過誤が発生する確率は、トレードオフの関係にある。つまり、一方を大きくすることなく、他方を小さくすることはできない。
すると、第一種(第二種)の過誤が発生する確率を最小化することのみに注目して、第二種(第一種)の過誤が発生する確率を無視してしまう事態を回避することが必要であることがわかる。つまり、第一種の過誤、第二種の過誤のいずれが発生しても全体的なリスクが最小化するような閾値を決定することが必要になる。以降に説明する図4(c)はこの考え方を基礎としている。
図4(c)は、確率密度関数p(x)及び確率密度関数p(x)を同一平面に重ねて表示した図である。横軸とp(x)との間の領域の面積のうち、閾値「s」の右側にある部分の面積をE00とする。横軸とp(x)との間の領域の面積のうち、閾値「s」の左側にある部分の面積をE11とする。さらに、実機が正常であるにもかかわらず異常と判定されることに起因して発生する損害額をCとし、実機が異常であるにもかかわらず正常と判定されることに起因して発生する損害額をCとする。
損害額Cは、実機が異常であることを信じて実機を停止させてしまった結果顧客に生じた損害額、異常ではないのに交換してしまった交換部品の費用、新たな実機の購入費用及び古い実機の廃棄費用等である。損害額Cは、必要な緊急点検が行われないまま使用され続けた実機が突然停止してしまった結果顧客に生じた損害額、不具合が他の機器に及び余分に更新せざるを得なくなった機器の金額、サービス会社が当該顧客から得られたであろう将来収入等である。そして全体損害額Cを式5のように定義する。
Figure 0006200816
、E00、C及びE11の変化に応じて全体損害額Cが決まる。いま、C及びCが定まると、全体損害額Cは、図4(c)の閾値「s」の位置に応じて変化する。式5を、積分記号を使用して表現したものが式6である。式6は、「s」を入力変数とし、Cを出力変数とする関数C(s)になっている。したがってCを最小化する「s」を求め得る。
Figure 0006200816
Cを最小化する「s」を求めるためには、まず、式6を「s」で微分することによって導関数を導出する。そして、導出した導関数の値を「0」とするような「s」を求める。すなわち、「s」を未知数とする式7を解けばよい。そして、例えば、σ=σ=σである場合は、解となる「s」は、C等を使用して、式8のように表現できる。
Figure 0006200816
Figure 0006200816
μ>μとなる場合は、式6において、p(x)dxとp1(x)dxとを相互に入れ替え、CとCとを相互に入れ替える。つまり、p(x)及びp1(x)のうち平均が小さい方について右側検定を行い、他方について左側検定を行う。なお、式8において、μ=μとなる場合はないものとする。
以上では、閾値と比較される実機のデータ(以降「診断対象データと」と呼ぶ)が高温再生器温度の値である例を説明してきた。しかしながら、閾値決定部22は、他の種類の診断対象データについての閾値を決定することも可能である。さらに、各診断対象データとその閾値との比較結果(大小関係)の組合せに応じて、実機の異常をより具体的に診断することもできる(詳細後記)。
例えば、実機の冷房能力の1シーズンにおける最大値がその閾値未満であり、かつ、冷房成績係数がその閾値未満である場合がある。この場合、診断部23は、実機の冷水の流量自体が過大であり、冷房能力及び冷房成績係数が見かけ上小さくなっている可能性が高いと診断できる。他の例として、実機の冷房能力の1シーズンにおける最大値がその閾値以上であり、かつ、冷房成績係数がその閾値未満である場合がある。この場合、冷房能力は発揮されているものの、熱効率が低いということになり、診断部23は、高温再生器55のボイラの効率が低下していると診断できる。次に、診断対象データが、さらに複雑な算出過程を経て取得される例を説明する。
図5(a)に沿って、高温再生器温度THGについて、ある年におけるΔTHGの冷房定格能力比に対する傾きを診断対象データとする例を説明する。いま、西暦A年においてある実機の高温再生器温度の値がv個検知されたとする。
Figure 0006200816
式9の右辺の第1項THG(A,n)は、v個の値のうちn番目(n=1,2,・・・,v)の値を示す。右辺の第2項THGo(Q,TCHout,TCDout)は、高温再生器温度の基準値である。基準値とは「あるべき温度」である。左辺のΔTHG(A,n)は、高温再生器温度のその基準値からの差異を示す。基準値THGo(Q,TCHout,TCDout)は、Q、TCHout及びTCDoutを入力変数とする関数値である。ここで、Qは冷房能力であり、TCHoutは冷水出口温度であり、TCDoutは冷却水出口温度である。
図5(b)を後回しにして、図6を参照する。図6は、冷房能力Q、冷水出口温度TCHout、冷却水出口温度TCDout及び基準値THGoの関係(本来は四次元的な関係である)を二次元平面で示した図である。この図は、以下のことを示している。
・他の入力変数が一定である条件のもとで、冷却水出口温度TCDoutが高くなるほど、基準値THGoは大きくなる。
・同様に、冷水出口温度TCHoutが高くなるほど、基準値THGoは小さくなる。
・同様に、冷房能力Qが大きくなるほど、基準値THGoは大きくなる。
ちなみに、例えば、冷房能力Qが600kWであるとする。そして、冷却水出口温度TCDoutが32.5℃であり、冷水出口温度TCHoutが11.0℃であるとする(一番下の回帰直線)。このとき、基準値THGoは約120℃となる。
このようにして算出されたΔTHGは、それ自身で診断対象データとなり得る。ところが、ある吸収式冷温熱機42の劣化状態が同じであっても、ΔTHGは、その時に発揮されている冷房能力によって変化する。例えば、冷房能力上限近くで使用することが多い顧客もあり、冷房能力に余裕を持たせて使用することが多い顧客もある。そこで、図5(a)の横軸のように、「冷房定格能力比」という概念を導入する必要が生まれる。
図5(a)に戻る。図5(a)の冷房定格能力比は、式10で定義される値である。
Figure 0006200816
入力データ管理部21は、あるΔTHGの値と、その値に対応するTHG(A,n)の値が検知された時点の冷房定格能力比との組合せを、縦軸がΔTHGであり横軸が冷房定格能力比である平面上にプロットする。入力データ管理部21は、合計v個の点をプロットすることになる。次いで、入力データ管理部21は、最小二乗法を用いて、原点を通る回帰直線を決定する。この直線の傾きもまた、診断対象データとなり得る。
このようにして、入力データ管理部21は、年ごとの回帰直線の傾きを決定することができる。なお、図5(a)の横軸の冷房定格能力比に替えて、冷房能力そのものを使用してもかまわない。横軸に冷房定格能力比を採用すると、点の分布範囲が0〜1に正規化される。したがって、傾きの年ごとの違いがより明確に現れることが多い。一般に、吸収式冷温熱機42の経年劣化が進むにつれて、傾きの値は大きくなる。
図5(b)は、ある年におけるΔXHGの冷房定格能力比に対する傾きを診断対象データとする例を説明する図である。図5(b)においては、図5(a)に比して、縦軸が高温再生器濃度XHGのその基準値XHGoからの差異ΔXHGとなっていること、及び、式9の替わりに式11が使用されることのみが異なり、その他の説明は同様である。
Figure 0006200816
さらに、図示しないが、ある年におけるΔTLGdの冷房定格能力比に対する傾きを診断対象データとすることも可能である。式9及び式11と同様に、低温再生器ドレン温度TLGdのその基準値TLGdoからの差異ΔTLGdが、式12のように定義される。そして、同様に、ある年におけるΔTLGdの冷房定格能力比に対する傾きも定義される。
Figure 0006200816
(処理手順)
以降で、本実施形態の処理手順を説明する。処理手順には、(1)データ準備処理手順、(2)閾値決定処理手順、(3)診断処理手順、及び(4)冷却水入口温度・冷房成績係数推定処理手順の4つがある。(4)以外の3つは、(1)→(2)→(3)の順に実行される。(1)データ準備処理手順が実行される前提として、機器運転情報31(図3)が最新状態に更新されて補助記憶装置15に記憶されているものとする。前世代の遠隔監視システムが使用される場合、冷却水入口温度を測定できない場合がある。そこで、(4)は、(1)において、冷却水入口温度を推定したうえで、さらに冷房成績係数を推定する場合に実行される。
図7(a)に沿って、データ準備処理手順を説明する。
ステップS201において、機器診断装置1の入力データ管理部21は、診断開始指示を受け付ける。具体的には、入力データ管理部21は、出力装置13にメニュー画面(図示せず)を表示する。そして、ユーザが、メニュー画面に表示されている「冷温熱機の診断を開始する」の文字列をマウス等の入力装置12で選択するのを受け付ける。
ステップS202において、入力データ管理部21は、診断対象の実機及び診断対象期間を受け付ける。具体的には、入力データ管理部21は、ユーザが入力装置12を介して、診断対象の実機の冷温熱機ID及び診断対象期間を入力するのを受け付ける。診断対象期間は、例えば、現在日を終期とし、現在日からある日数を遡った日を始期とする期間である。例えば、現在が2013年10月31日であり、過去3か月の実機の状態を診断する場合、ユーザは、「20130801〜20131031」を入力する。
ステップS203において、入力データ管理部21は、機器運転情報31からデータを取得する。具体的には、入力データ管理部21は、ステップS202において受け付けた冷温熱機ID及び診断対象期間を検索キーとして、機器運転情報31(図3、但し、サンプル機のレコードは無視する)を検索し、該当したレコードを取得する。
ステップS204において、入力データ管理部21は、運転中のレコードを抽出する。運転中とは、例えば、実機の冷水流量(瞬間値)が所定の閾値以上である状態を言う。冷水流量が少ないと、見かけ上、冷水等の温度が高めに観測されてしまうからである。具体的には、入力データ管理部21は、ステップS203において取得したレコードのうちから、取得時点における冷水流量が閾値以上であるものを抽出する。
ステップS205において、入力データ管理部21は、データの種類ごとの時系列グラフを作成する。具体的には、入力データ管理部21は、ステップS204において抽出したレコードから、データの種類(図3の欄103〜欄107)ごとの時系列グラフを作成する。この時作成される時系列グラフの例(図3の欄103〜欄107の例と完全に同じではない)が、図11(a)及び図11(b)である。
ステップS206において、入力データ管理部21は、安定データを抽出する。安定データの定義は様々である。具体的には、入力データ管理部21は、ステップS205において作成した時系列グラフのうち、安定データである部分を抽出する。安定データではない例としては、1日のうち値の変化幅が所定の閾値より大きい、時系列グラフがなだらかな曲線にならず立ち上がり点又は立下り点を有する、波の周期が日によって極端に異なる等がある。なお、実機の動特性を解析することによって、一見して安定データではないと判定される部分を、安定データとして取り扱うこともできる。例えば、実機の温度に関する動的モデルを微分方程式などで予め作成し、実機の運転開始時の時系列温度データの変化より、動的モデルの係数を同定する。その同定された係数の値が安定すれば、時系列温度データそのものが安定していなくても、安定データとして取り扱うことができる。但し、この場合は、診断のために取り扱うデータは温度ではなく、係数となる。
ステップS207において、入力データ管理部21は、ノイズを消去する。安定データである時系列グラフのうちにも、一時的な外部環境の変化、単なる偶然(液体中の気泡の温度を測定してしまう)等に起因する「はずれ点」が存在することはよくある。具体的には、入力データ管理部21は、ローパスフィルターを使用して、時系列グラフを作成しなおす。適当なローパスフィルターがない場合は、ある時点を中心とし前後それぞれ数分ずつの値を平均することによって時系列グラフを作成しなおしてもよい(移動平均法)。このとき、例えば、その時点の値及び直前の6つの値(合計7個)を平均することにすれば、その時点に対する将来値がなくてもよいことになる。
ステップS208において、入力データ管理部21は、代表データを取得する。具体的には、入力データ管理部21は、ステップS207においてノイズを消去した時系列グラフから、1日のうち冷房能力が最大となっている時点のデータを、診断対象期間の日数に等しい数だけ抽出し、代表データとする。
ステップS208の処理が終了した段階で、入力データ管理部21は、データの種類ごとに、代表データを保持していることになる。因みに、このような代表データのうちの1つ(高温再生器温度についてのもの)が、前記したTHG(A,n)である。
ステップS209において、入力データ管理部21は、傾きを算出する。具体的には、第1に、ステップS208において取得した代表データに、「高温再生器温度」、「高温再生器濃度」及び「低温再生器ドレン温度」のうちの少なくとも1つが含まれているか否かを判定する。含まれている場合は、ステップS209の「第2」に進み、それ以外の場合は、ステップS210に進む。
第2に、入力データ管理部21は、前記した方法で、ΔTHGの冷房定格能力比に対する傾き、ΔXHGの冷房定格能力比に対する傾き、及び/又は、ΔTLGdの冷房定格能力比に対する傾きを取得する。
ステップS210において、入力データ管理部21は、正常サンプル機の確率密度関数を作成する。具体的には、第1に、入力データ管理部21は、ステップS202において受け付けた実機の属性に合致する正常サンプル機を特定する。ここで、属性とは、個々の吸収式冷温熱機42を特徴づける任意のデータであり、一般的には、設置場所、設置場所の外気温度、機種、特殊仕様、製造者名、製造年月日等である。実機及びサンプル機を含むすべての吸収式冷温熱機42に関連付けてこれらの属性が記憶された機器基礎情報(図示せず)が、補助記憶装置15に格納されているものとする。入力データ管理部21は、機器基礎情報を検索することによって、実機の比較対象として相応しい正常サンプル機を特定することができる。
第2に、入力データ管理部21は、ステップS210の「第1」において特定した正常サンプル機について、ステップS202〜S209と同様の処理を実行する。ただし、ステップS202における「実機の冷温熱機ID」は、「ステップS210の「第1」において特定された正常サンプル機の冷温熱機ID」と読み替える。
第3に、入力データ管理部21は、代表データを母集団とする平均μ及び分散σ を算出し、正規分布N(μ,σ )を示す確率密度関数を作成する。ここで作成された確率密度関数が、図4(a)の確率密度関数p(x)となる。ただし、ΔTHGの冷房定格能力比に対する傾きについては、1つの正常サンプル機について1つの傾きが定義される。そこで、入力データ管理部21は、実機と属性が合致する(完全に合致しないまでも類似する)正常サンプル機を複数(例えば10台)特定するものとする。そして10個の傾きのサンプルを母集団とする平均μ及び分散σ を算出し、正規分布曲線N(μ,σ )を作成するものとする。ΔXHG及びΔTLGdの冷房定格能力比に対する傾きについても同様である。そして、このことは、後記する異常サンプル機の正規分布曲線N(μ,σ )の作成についても同様に当てはまる。
ステップS211において、入力データ管理部21は、異常サンプル機の確率密度関数を作成する。具体的には、第1に、入力データ管理部21は、ステップS202において受け付けた実機の属性に合致する異常サンプル機を特定する。
第2に、入力データ管理部21は、ステップS211の「第1」において特定した異常サンプル機について、ステップS202〜S209と同様の処理を実行する。ただし、ステップS202における「実機の冷温熱機ID」は、「ステップS211の「第1」において特定された異常サンプル機の冷温熱機ID」と読み替える。
第3に、入力データ管理部21は、代表データを母集団とする平均μ及び分散σ を算出し、正規分布N(μ,σ )を示す確率密度関数を作成する。ここで作成された確率密度関数が、図4(b)の確率密度関数p(x)となる。
その後、データ準備処理手順を終了する。
実際にどのような種類のデータを診断対象データとするかはユーザの設定次第である。説明を容易にするために、データ準備処理手順が終了した段階で、入力データ管理部21は、以下の7種類のデータの代表データを取得しているものとする。さらに、入力データ管理部21は、以下の7種類のデータについての、確率密度関数p(x)及び確率密度関数p(x)を作成し終わっているものとする。
1:冷房能力
2:冷房成績係数
3:冷却水出口温度
4:高温再生器濃度
5:高温再生器温度のその基準値からの差異の、冷房定格能力比に対する傾き
(以降、単に「高温再生器温度の傾き」という。)
6:高温再生器濃度のその基準値からの差異の、冷房定格能力比に対する傾き
(以降、単に「高温再生器濃度の傾き」という。)
7:低温再生器ドレン温度のその基準値からの差異の、冷房定格能力比に対する傾き
(以降、単に「低温再生器ドレン温度の傾き」という。)
(閾値決定処理手順)
図7(b)に沿って、閾値決定処理手順を説明する。
ステップS221において、機器診断装置1の閾値決定部22は、損害額を受け付ける。具体的には、閾値決定部22は、ユーザが入力装置12を介して、損害額C及び損害額Cを入力するのを受け付ける。C及びCは、前記のように、全体損害額Cを算出するために使用される。そして、式6から明らかなように、C及びCは確率に対して乗算される重みであり、重みの水準自体が解「s」に影響を及ぼすわけではない。解「s」に影響を及ぼすのは、CのCに対する比率である。そこで、ユーザから「損害額C及び損害額Cの値として適当なものがない」旨の指示を受け付けた場合、閾値決定部22は、「損害額C=損害額C=1」を受け付けたと見なして以降の処理に進む。この場合、E00及びE11に対する重みは、いずれも「1」となる。
ステップS222において、閾値決定部22は、閾値を決定する。具体的には、前記した7種類のデータのそれぞれについて、前記した方法によって、式6の全体損害額Cを最小化する「s」を算出する。その後、閾値決定処理手順を終了する。
(診断処理手順)
図8及び図9に沿って、診断処理手順を説明する。
ステップS231において、機器診断装置1の診断部23は、流水流量を確認したか否かを判定する。具体的には、診断部23は、代表データの取得時点のうち最も新しい時点における冷水流量をユーザが確認したか否かを判定する。例えば、診断部23は、「確認した」ボタン及び「確認していない」ボタンを出力装置13に表示し、ユーザがいずれかを押下するのを受け付ける。そして、「確認していない」ボタンが押下された場合(ステップS231“NO”)、ステップS232に進む、それ以外の場合(ステップS231“YES”)、ステップS232b(図9)に進む。
ステップS232において、診断部23は、冷水流量未確認チェッカを立てる。冷水流量未確認チェッカとは、例えば「冷水の流量が定格値と異なる可能性があるため、機器が見かけ上異常と診断される場合があります」である。
ステップS233において、診断部23は、最大冷房能力が閾値未満であるか否かを判定する。具体的には、第1に、診断部23は、代表データから、診断対象の実機の診断対象期間における冷房能力の最大値(最大冷房能力)を取得する。当該最大冷房能力は、運転中の、安定的でありかつノイズではないデータであることが担保されている(以下、他の種類のデータについても同様)。
第2に、診断部23は、最大冷房能力が、所定の閾値(例えば、定格値の50%)未満であるか否かを判定し、閾値未満である場合(ステップS233“YES”)、ステップS234に進み、それ以外の場合(ステップS233“NO”)、ステップS245に進む。
ステップS234において、診断部23は、冷房成績係数が閾値未満であるか否かを判定する。具体的には、第1に、診断部23は、代表データから、診断対象の実機の最も新しい時点における冷房成績係数を取得する。
第2に、診断部23は、冷房成績係数が、所定の閾値(例えば、定格値の60%)未満であるか否かを判定し、閾値未満である場合(ステップS234“YES”)、ステップS235に進み、それ以外の場合(ステップS234“NO”)、ステップS239に進む。
ステップS235において、診断部23は、「冷水流量過大」フラグを立てる。このとき、診断部23は、実機の冷水の流量自体が過大であり、冷房能力及び冷房成績係数が見かけ上小さくなっている可能性が高いと診断している。
ステップS236において、診断部23は、高温再生器濃度が閾値未満であるか否かを判定する。具体的には、第1に、診断部23は、代表データから、診断対象の実機の最も新しい時点における高温再生器濃度を取得する。
第2に、診断部23は、高温再生器濃度が、所定の閾値(例えば、61%)未満であるか否かを判定し、閾値未満である場合(ステップS236“YES”)、ステップS237に進み、それ以外の場合(ステップS236“NO”)、ステップS239に進む。
ステップS237において、診断部23は、冷却水出口温度が閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、第1に、診断部23は、代表データから、診断対象の実機の最も新しい時点における冷却水出口温度を取得する。
第2に、診断部23は、冷却水出口温度が、所定の閾値(例えば、35℃)以上であるか否かを判定し、閾値以上である場合(ステップS237“YES”)、ステップS238に進み、それ以外の場合(ステップS237“NO”)、ステップS239に進む。
ステップS238において、診断部23は、「冷媒オーバーフロー」フラグを立てる。
ステップS239において、診断部23は、高温再生器温度の傾きが閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、第1に、診断部23は、代表データから、診断対象の実機の診断対象期間における高温再生器温度の傾き(ΔHHGの冷房定格能力比に対する傾き)を取得する。
第2に、診断部23は、高温再生器温度の傾きが所定の閾値(例えば、15)以上であるか否かを判定し、閾値以上である場合(ステップS239“YES”)、ステップS240に進み、それ以外の場合(ステップS239“NO”)、ステップS253に進む。
ステップS240において、診断部23は、「冷却水チューブ汚れ」フラグを立てる。
ステップS241において、診断部23は、高温再生器濃度の傾きが閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、第1に、診断部23は、代表データから、診断対象の実機の診断対象期間における高温再生器濃度の傾き(ΔXHGの冷房定格能力比に対する傾き)を取得する。
第2に、診断部23は、高温再生器濃度の傾きが所定の閾値(例えば、10)以上であるか否かを判定し、閾値以上である場合(ステップS241“YES”)、ステップS242に進み、それ以外の場合(ステップS241“NO”)、ステップS244に進む。
ステップS242において、診断部23は、「蒸発器劣化」フラグを立てる。
ステップS243において、診断部23は、低温再生器ドレン温度の傾きが閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、第1に、診断部23は、代表データから、診断対象の実機の診断対象期間における低温再生器ドレン温度の傾き(ΔTLGdの冷房定格能力比に対する傾き)を取得する。
第2に、診断部23は、低温再生器ドレン温度の傾きが、所定の閾値(例えば、15)以上であるか否かを判定し、閾値以上である場合(ステップS243“YES”)、ステップS254に進み、それ以外の場合(ステップS243“NO”)、ステップS253に進む。
ステップS244において、診断部23は、低温再生器ドレン温度の傾きが閾値以上であるか否かを判定する。当該ステップの処理は、ステップS243と同じである。但し、「第2」において、閾値以上である場合(ステップS244“YES”)、ステップS255に進み、それ以外の場合(ステップS244“NO”)、ステップS253に進む。
ステップS245において、診断部23は、冷房成績係数が閾値未満であるか否かを判定する。当該ステップの処理は、ステップS234と同じである。但し、「第2」において、閾値未満である場合(ステップS245“YES”)、ステップS246に進み、それ以外の場合(ステップS245“NO”)、ステップS247に進む。
ステップS246において、診断部23は、「ボイラ効率低下」フラグを立てる。
ステップS247において、診断部23は、高温再生器温度の傾きが閾値以上であるか否かを判定する。当該ステップの処理は、ステップS239と同じである。但し、「第2」において、閾値以上である場合(ステップS247“YES”)、ステップS248に進み、それ以外の場合(ステップS247“NO”)、ステップS253に進む。
ステップS248において、診断部23は、「冷却水チューブ汚れ」フラグを立てる。
ステップS249において、診断部23は、高温再生器濃度の傾きが閾値以上であるか否かを判定する。当該ステップの処理は、ステップS241と同じである。但し、「第2」において、閾値以上である場合(ステップS249“YES”)、ステップS250に進み、それ以外の場合(ステップS249“NO”)、ステップS252に進む。
ステップS250において、診断部23は、「蒸発器劣化」フラグを立てる。
ステップS251において、診断部23は、低温再生器ドレン温度の傾きが閾値以上であるか否かを判定する。当該ステップの処理は、ステップS243と同じである。但し、「第2」において、閾値以上である場合(ステップS251“YES”)、ステップS254に進み、それ以外の場合(ステップS251“NO”)、ステップS253に進む。
ステップS252において、診断部23は、低温再生器ドレン温度の傾きが閾値以上であるか否かを判定する。当該ステップの処理は、ステップS243と同じである。但し、「第2」において、閾値以上である場合(ステップS252“YES”)、ステップS255に進み、それ以外の場合(ステップS252“NO”)、ステップS253に進む。
ステップS253において、診断部23は、既に立てているフラグ以外のフラグを立てないことを決定する。
ステップS254において、診断部23は、「吸収器劣化」フラグを立てる。
ステップS255において、診断部23は、「低温再生器劣化」フラグを立てる。
ステップS256において、診断部23は、フラグを表示し記憶する。具体的には、第1に、診断部23は、既に立てているすべてのフラグを出力装置13に表示する。フラグを立てなかった場合、診断部23は、「機器は正常です。」というメッセージを出力装置13に表示する。
第2に、診断部23は、ステップS203において取得した機器運転情報31(図3)のレコードの判定欄109に、現在時点及び立てたフラグを記憶する。フラグを立てなかった場合、診断部23は、現在時点及び「正常」を記憶する。
その後、診断処理手順を終了する。
以降は、診断処理手順のうち、図9の部分の説明である。
ステップS232bにおいて、診断部23は、冷水流量確認済チェッカを立てる。冷水流量確認済チェッカとは、例えば「冷水の流量が確認済である場合の閾値を用います」である。
図9の以降の処理は、図8のステップS233以降の処理とほぼ同じである。同じ処理には同じ番号を付した。異なる点は以下の通りである。
・ステップS233bにおいて、診断部23は、閾値としてステップS233に比して厳しい値(例えば、定格値の80%)を使用する。
・ステップS234bにおいて、診断部23は、閾値としてステップS234に比して厳しい値(例えば、定格値の80%)を使用する。そして、ステップS234b“YES”の場合、ステップS236に進む。
・ステップS245bにおいて、診断部23は、閾値としてステップS245に比して厳しい値(例えば、定格値の80%)を使用する。
・図9においては、ステップS235は存在しない。
・ステップS249bにおいて、診断部23は、ステップS249b“NO”の場合、ステップS249cに進む。
・図9においては、図8にないステップS249cが存在する。
ステップS249cにおいて、診断部23は、「熱交換器穴あき」フラグを立てる。
(冷却水入口温度・冷房成績係数推定処理手順)
図10に沿って、冷却水入口温度・冷房成績係数推定処理手順を説明する。当該処理手順は、冷却水入口温度が不明である場合のステップS208の例である。
ステップS271において、入力データ管理部21は、1日のうち冷房能力が最大である時刻を取得する。具体的には、入力データ管理部21は、ステップS207においてノイズを消去した時系列グラフから、ある1日のうち冷房能力が最大となっている時刻(基準時刻)を取得する。
ステップS272において、入力データ管理部21は、温度データ等を取得する。具体的には、入力データ管理部21は、基準時刻における冷却水出口温度を取得する。
ステップS273において、入力データ管理部21は、気象データを取得する。具体的には、入力データ管理部21は、ネットワーク2を介して外部のデータベースから、基準時刻における湿度及び外気温度を取得してステップS275に進む。または、基準時刻に対応する湿度及び外気温度が取得できない場合は、基準時刻の直前の観測時刻の湿度及び外気温度と、基準時刻の直後の観測時刻の湿度及び外気温度を取得してステップS274に進む。
ステップS274において、入力データ管理部21は、気象データを補間する。具体的には、入力データ管理部21は、直前の観測時刻の湿度と直後の観測時刻の湿度を線形補間することによって基準時刻の湿度を取得する。さらに、同様にして、基準時刻の外気温度を算出する。
ステップS275において、入力データ管理部21は、湿球温度を算出する。具体的には、入力データ管理部21は、ステップS274(S273)において取得した基準時刻の湿度及び外気温度を「湿度表」に当てはめて湿球温度を取得する。なお、湿度表とは、縦軸に乾球温度(外気温度)をとり、横軸に「乾球温度−湿球温度」をとり、交点のセルに湿度を記載した表である。
ステップS276において、入力データ管理部21は、冷却水入口温度を推定する。具体的には、入力データ管理部21は、以下の式13に従って、湿球温度、冷却水出口温度及び定数を用いて、冷却水入口温度を推定する。なお、式13における「C」は、式5、式6及び式8における「損害額C」とは別のものである。
Figure 0006200816
(式13)
ここで、TCDinは、冷却水入口温度であり、TCDoutは、冷却水出口温度であり、Cは、湿球温度影響係数であり、Cは、水量比補正値であり、Taowは、湿球温度であり、RGDは冷却水量比(定格時は1)である。
ステップS277において、入力データ管理部21は、放熱量を推定する。具体的には、入力データ管理部21は、ステップS276において推定した冷却水入口温度、ステップS272において取得した冷却水出口温度、冷却水流量、及び、冷却水比熱に基づいて、冷却塔における放熱量を推定する。
ステップS278において、入力データ管理部21は、入熱量を推定する。具体的には、入力データ管理部21は、放熱量から冷房能力を減算した値を、ボイラからの入熱量(厳密には実際に冷凍サイクルに入熱された入熱量)とする。
ステップS279において、入力データ管理部21は、冷房成績係数を推定する。具体的には、入力データ管理部21は、式1に対して、ステップS278において推定したボイラからの入熱量と、冷房能力をあてはめることによって、基準時刻の冷房成績係数を推定する。その後、冷却水入口温度・冷房成績係数推定処理手順を終了する。
入力データ管理部21は、診断対象期間に属するすべての日について、ステップS271〜S279の処理を繰り返すことによって、診断対象期間の冷房成績係数についての代表データを作成することになる。
(変形例1:確率密度関数の更新)
前記の例では、入力データ管理部21は、母集団に属するすべてのデータを統計的に処理して正規分布N(μ,σ )を示す確率密度関数p及び正規分布N(μ,σ )を示す確率密度関数pを作成している。つまり、実際に、母集団に含まれる多くの値についての平均及び分散を計算している。
正常サンプル機及び異常サンプル機は、刻々と新たなサンプル値を発生する。よって、本来は、入力データ管理部21は、実機を診断する都度、このような処理(データ準備処理手順)を繰り返し実行することがのぞましい。しかしながら、情報処理量及び処理時間を削減するために、入力データ管理部21は、以下の処理を実行することとしてもよい。
例えば、データ準備処理手順の終了時点を起点として1か月等所定の期間(全面見直し期間)の経過後に次回の同処理手順を開始する場合、入力データ管理部21は同処理手順のすべての処理を実行する。全面見直し期間が経過する間に、正常サンプル機及び異常サンプル機は、新たなサンプル値を統計的に有意な数だけ蓄積できるからである。
全面見直し期間が経過する前に、入力データ管理部21がデータ準備処理手順を開始する場合は、ステップS210及びS211の処理を以下の通り簡略化する。
ステップS210において、第1に、入力データ管理部21は、出力装置13に、現在のμの値及び現在のσ の値を表示する。
第2に、入力データ管理部21は、ユーザがμの更新値及びσ の更新値を入力するのを受け付ける。ユーザが入力する更新値は、実値であってもよいし、「現在の値を基準にして、5%増加させた値」のような値であってもよい。
第3に、入力データ管理部21は、更新値に基づいて、確率密度関数pを作成する。
ステップS211において、第1に、入力データ管理部21は、出力装置13に、現在のμの値及び現在のσ の値を表示する。
第2に、入力データ管理部21は、ユーザがμの更新値及びσ の更新値を入力するのを受け付ける。ユーザが入力する更新値は、実値であってもよいし、「現在の値を基準にして、5%増加させた値」のような値であってもよい。
第3に、入力データ管理部21は、更新値に基づいて、確率密度関数pを作成する。
前記では、正常サンプル機及び異常サンプル機が存在し、入力データ管理部21がそれらからデータを取得する例を説明した。しかしながら、新分野の機器を診断する場合のように、比較対象となる正常サンプル機及び異常サンプル機が存在しない場合もある。この場合は、入力データ管理部21は、はじめから、μ、σ 、μ及びσ の適当な値を受け付けることによって簡略化された処理を実行してもよい。
(変形例2:予想損害額の決定等)
前記では、診断部23は、実機が「正常」又は「異常」のうちのいずれかであるかを判定している。しかしながら、バイナリな結論だけでなく、実機がその診断対象データを提示する場合における、予想損害額、正常である確率及び異常である確率がわかれば便宜である。そこで、ステップS256において、診断部23は、予想損害額、正常である確率及び異常である確率を算出し、出力装置13に表示してもよい。診断部23は、式14に基づいて予想損害額C*を算出する。
Figure 0006200816
「t」は、代表データから取得された任意の値である。代表データは、どのようなデータ種類についてのものであってもよい。そして、診断部23は、正常である確率P(t)及び異常である確率P(t)を算出する。
ここで、P(t)+P(t)=1とはならない。なぜならば、Pは、正常サンプル機の確率密度関数pに対して実機のtを入力し算出された値であり、P1は、(別の吸収式冷温熱機である)異常サンプル機の確率密度関数pに対して実機のtを入力し算出された値であるからである。μ>μとなる場合は、式14において、p(x)dxとp(x)dxとを相互に入れ替え、CとCとを相互に入れ替える。
(変形例3:高温再生器濃度XGHの推定)
高温再生器濃度XGHの観測値を取得できない場合もある。このとき、入力データ管理部21は、公知の方法を用いて、高温再生器温度及び低温再生器ドレン温度に基づいて、高温再生器濃度XGHを推定してもよい。入力データ管理部21は、例えば、特開平5−231743号公報(段落0015)に記載の方法を使用してもよい。
(実施形態の効果)
本実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)閾値決定部22は、吸収式冷温熱機42が正常であるにもかかわらず異常であると判定される確率と、その逆の確率との和を最小化するように、診断対象データが適用される閾値を決定する。よって、全体的にみてバランスのとれた判定をすることができる。
(2)入力データ管理部21は、サンプルデータを観測値として取得する。よって、診断の精度がより高くなる。
(3)当該確率(及びその逆の確率)は、それぞれの損害額で重み付けされている。よって、より現実的な尺度で、バランスのとれた判定をすることができる。
(4)当該確率(及びその逆の確率)は、正規分布に従う。よって、標準的な統計的処理が可能になる。
(5)入力データ管理部21は、母集団の平均及び分散を見直すことによって当該確率(及びその逆の確率)の確率分布を見直す。よって、処理負担を軽くすることができる。
(6)入力データ管理部21は、診断対象データ及びサンプルデータを、稼動時点についてのデータ、安定したデータ、ノイズのないデータに絞り込む。よって、より正確な判定が可能になる。
(7)本実施形態の機器は、吸収式冷温熱機である。吸収式冷温熱機からは、多種多様な診断対象データを取得することができる。したがって、データの種類に応じて、具体的な診断結果を用意することができる。
(8)診断部23は、予想損害額、実機が正常である確率及び実機が異常である確率を算出し表示する。したがって、実機の状態を、「正常」又は「異常」というバイナリな値で判定するだけではなく、正常さ(又は異常さ)の程度を知ることができる。
(9)入力データ管理部21は、ネットワークを介して実機のデータを取得する。したがって、例えば、サービス会社が、多くの顧客が運営する多くの実機を監視し診断することが容易になる。
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1 機器診断装置
2 ネットワーク
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
21 入力データ管理部
22 閾値決定部
23 診断部
31 機器運転情報
41 中継器
42 吸収式冷温熱機
43 台数制御器
44 監視端末装置
45 制御装置
46 センサ
51 蒸発器
52 吸収器
53 凝縮器
54 低温再生器
55 高温再生器
56 低温熱交換器
57 高温熱交換器

Claims (13)

  1. 正常である機器の正常サンプルデータを使用して、機器が異常であることを判定するための第1の確率分布を作成し、
    異常である機器の異常サンプルデータを使用して、機器が正常であることを判定するための第2の確率分布を作成する入力データ管理部と、
    前記第1の確率分布に基づいて診断対象の機器である実機が異常であると判定される確率である第1の確率、及び、前記第2の確率分布に基づいて診断対象の機器である実機が正常であると判定される確率である第2の確率の和を最小にする、前記第1の確率分布及び前記第2の確率分布に共通の閾値を決定する閾値決定部と、
    前記共通の閾値と、前記実機から取得した診断対象データとの大小関係に基づいて、前記実機が正常であるか否かを判定する診断部と、
    を有し、
    前記機器は、
    吸収式冷温熱機であって、
    前記診断対象データ、前記正常サンプルデータ及び前記異常サンプルデータは、
    前記機器についての、
    高温再生器温度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、
    高温再生器濃度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、及び、
    低温再生器ドレン温度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、
    のうちの少なくとも1つを含むこと、
    特徴とする機器診断装置。
  2. 前記入力データ管理部は、
    前記正常サンプルデータを正常な機器の観測値として取得し、
    前記異常サンプルデータを異常な機器の観測値として取得すること、
    を特徴とする請求項1に記載の機器診断装置。
  3. 前記第1の確率は、
    前記実機が正常であるにもかかわらず異常と判定された場合の損害額で重み付けされており、
    前記第2の確率は、
    前記実機が異常であるにもかかわらず正常と判定された場合の損害額で重み付けされていること、
    を特徴とする請求項2に記載の機器診断装置。
  4. 前記第1の確率分布及び前記第2の確率分布は、
    正規分布を示すものであること、
    を特徴とする請求項1に記載の機器診断装置。
  5. 前記入力データ管理部は、
    前記第1の確率分布の平均及び分散を見直すことにより前記第1の確率分布を更新し、
    前記第2の確率分布の平均及び分散を見直すことにより前記第2の確率分布を更新すること、
    を特徴とする請求項1に記載の機器診断装置。
  6. 前記入力データ管理部は、
    前記診断対象データ、前記正常サンプルデータ及び前記異常サンプルデータを、
    前記実機、前記正常である機器及び前記異常である機器が実際に運転されている時点についてのデータに限定すること、
    を特徴とする請求項3に記載の機器診断装置。
  7. 前記入力データ管理部は、
    前記診断対象データ、前記正常サンプルデータ及び前記異常サンプルデータを、
    所定の基準を満たす程度に安定している時系列情報に限定すること、
    を特徴とする請求項6に記載の機器診断装置。
  8. 前記入力データ管理部は、
    前記診断対象データ、前記正常サンプルデータ及び前記異常サンプルデータのノイズを除去すること、
    を特徴とする請求項7に記載の機器診断装置。
  9. 前記診断部は、
    前記診断対象データ、前記正常サンプルデータ及び前記異常サンプルデータが、前記機器についての、高温再生器温度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾きを含む場合であって、かつ、
    前記冷房能力の所定の期間における最大値が所定の閾値未満であり、冷房成績係数が所定の閾値未満ではなく、かつ、前記高温再生器温度のその基準値からの差異の、前記冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾きが所定の閾値以上ではない場合、
    前記実機が正常であると決定すること、
    を特徴とする請求項に記載の機器診断装置。
  10. 前記診断部は、
    前記診断対象データ、前記第1の確率分布及び前記第2の確率分布に基づいて、前記実機の予想損害額、前記実機が正常である確率及び前記実機が異常である確率を算出すること、
    を特徴とする請求項に記載の機器診断装置。
  11. 前記入力データ管理部は、
    前記診断対象データを含む前記実機の観測値を、ネットワークを介して取得すること、
    を特徴とする請求項10に記載の機器診断装置。
  12. 機器診断装置の入力データ管理部は、
    正常である機器の正常サンプルデータを使用して、機器が異常であることを判定するための第1の確率分布を作成し、
    異常である機器の異常サンプルデータを使用して、機器が正常であることを判定するための第2の確率分布を作成し、
    前記機器診断装置の閾値決定部は、
    前記第1の確率分布に基づいて診断対象の機器である実機が異常であると判定される確率である第1の確率、及び、前記第2の確率分布に基づいて診断対象の機器である実機が正常であると判定される確率である第2の確率の和を最小にする、前記第1の確率分布及び前記第2の確率分布に共通の閾値を決定し、
    前記機器診断装置の診断部は、
    前記共通の閾値と、前記実機から取得した診断対象データとの大小関係に基づいて、前記実機が正常であるか否かを判定し、
    前記機器は、
    吸収式冷温熱機であって、
    前記診断対象データ、前記正常サンプルデータ及び前記異常サンプルデータは、
    前記機器についての、
    高温再生器温度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、
    高温再生器濃度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、及び、
    低温再生器ドレン温度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、
    のうちの少なくとも1つを含むこと、
    を特徴とする前記機器診断装置の機器診断方法。
  13. 機器診断装置の入力データ管理部に対して、
    正常である機器の正常サンプルデータを使用して、機器が異常であることを判定するための第1の確率分布を作成し、
    異常である機器の異常サンプルデータを使用して、機器が正常であることを判定するための第2の確率分布を作成する処理を実行させ、
    前記機器診断装置の閾値決定部に対して、
    前記第1の確率分布に基づいて診断対象の機器である実機が異常であると判定される確率である第1の確率、及び、前記第2の確率分布に基づいて診断対象の機器である実機が正常であると判定される確率である第2の確率の和を最小にする、前記第1の確率分布及び前記第2の確率分布に共通の閾値を決定する処理を実行させ、
    前記機器診断装置の診断部に対して
    前記共通の閾値と、前記実機から取得した診断対象データとの大小関係に基づいて、前記実機が正常であるか否かを判定する処理を実行させ、
    前記機器は、
    吸収式冷温熱機であって、
    前記診断対象データ、前記正常サンプルデータ及び前記異常サンプルデータは、
    前記機器についての、
    高温再生器温度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、
    高温再生器濃度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、及び、
    低温再生器ドレン温度のその基準値からの差異の、冷房能力が定格冷房能力に占める割合に対する傾き、
    のうちの少なくとも1つを含むこと、
    を特徴とする、前記機器診断装置を機能させるための機器診断プログラム。
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