JP6200571B1 - 表面処理剤及び表面処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】対象物に固着される表面処理剤であって、暗所でも高い抗菌・防黴・抗ウイルス活性を示し、明所では紫外線領域だけでなく可視光領域の光によって、抗菌、防黴、抗ウイルス、消臭、防汚、大気浄化活性を有する抗菌触媒入り表面処理剤を提供する。【解決手段】少なくとも銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含む被覆材の表面に光触媒が固着されてなり、光触媒は、酸化靴の色が互いに補色の関係にある2以上の金属がドープされ、表面をペルオキソ基で修飾されたアナターゼ型結晶性の二酸化チタンの微粒子であり、酸化物の色が互いに補色の関係にある2以上の金属の組み合わせは、一方がネオジムであり、他方がタングステン及びレニウムからなる群の1つ以上、又は一方がマンガン又はニッケルであり、他方が銅、鉄及びバナジウムからなる群の1つ以上であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、表面処理剤及び表面処理方法に係り、より詳しくは、対象物を低融点の合金で被覆し、その表面に光触媒を固着することにより、抗菌性、防黴性、抗ウィルス性、消臭性、防汚、大気浄化活性を付与することが可能な表面処理剤及び表面処理方法に関する。
一般的に腕時計は左又は右の手首に装着して使用され、多くの人は四六時中装着したままである。腕時計のバンドには金属でできたものがあり、複数のコマと呼ばれる部品が回動可能に互いに連結しているものが多い。
このような腕時計のバンドのコマの隙間には汗が染み込んだり、垢が入り込んだりして細菌やカビが繁殖しやすく、決して衛生的な環境にはないが、時計を連結した状態ではバンドを十分に洗浄することができない。バンドを時計から外すには、時計とバンドを繋ぐ弓かん又は直かんを貫くバネ付きピンを取り外す必要があるが、バネ付きピンの取り扱いは素人には難しく、また、洗浄を簡単に行える超音波洗浄機もないことから、腕時計バンドの洗浄を頻繁に行う人は少ない。
同様のことが血行を改善する健康器具として販売されている、ゲルマニウムや磁気付きブレスレットやネックレスについてもいえる。
身体に装着するものではないが、携帯電話も人の手によく触れるものでありながら、清潔に保つことが難しいものである。
英国マンチェスター メトロポリタン大学のジョアンナヴェルラン教授の「携帯電話に棲息しているバイ菌の数はトイレの便座よりも多い」という研究発表は世界に衝撃を与えた。教授の研究では、携帯電話からトイレの便座の70倍に相当する菌が検出されたと報告されている。
パソコンのキーボード、銀行やコンビニのATMのタッチパネル、エレベーターのボタンや電車の吊り皮など細菌の繁殖が気になる場所は限りなく存在する。
本発明の出願人は先に、室内での塗装が可能な水性塗料であって、塗装によって暗所でも高い抗菌・抗ウイルス・防黴活性を示し、明所では紫外線領域だけでなく可視光領域の光によっても、抗菌、抗ウイルス、防黴、消臭、防汚、大気浄化活性を有する抗菌触媒入りコーティング剤及びその製造方法について特許出願を行った(特許文献1参照)。
特許文献1記載の発明は、酸化物の色が互いに補色の関係にある遷移金属の2つ以上をドープし、表面をペルオキソ基で修飾した二酸化チタンの微粒子と、抗菌活性のある金属イオンを担持した二酸化珪素の微粒子とを水にコロイド状態で分散したことを特徴とするものであり、酸化物の色が互いに補色の関係にある2つ以上の金属をドープすることにより、光触媒が励起する波長が可視光範囲にまで拡大し、二酸化チタンの表面をペルオキソ基で修飾することにより、室内の微弱な光でも触媒活性を示ようにしたものである。
特許文献1記載の発明は、水性塗料であり、これを上記の細菌の繁殖が気になるものに塗装しても人の手や指先が触れることにより容易に剥離してしまい効果が続かないという問題点があった。
特願2016−034418号
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、対象物に固着される表面処理剤であって、暗所でも高い抗菌・抗ウイルス・防黴活性を示し、明所では紫外線領域だけでなく可視光領域の光によって、抗菌、防黴、抗ウイルス、消臭、防汚、大気浄化活性を有する抗菌触媒入り表面処理剤及び表面処理方法を提供することにある。
上記目的を達成するためになされた、本発明の表面処理剤は、少なくとも銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含む被覆材の表面に光触媒が固着されてなり、光触媒は、酸化物の色が互いに補色の関係にある2以上の金属がドープされ、表面をペルオキソ基で修飾されたアナターゼ型結晶性の二酸化チタンの微粒子であることを特徴とする。
酸化物の色が互いに補色の関係にある2以上の金属の組み合わせは、一方がネオジムであり、他方がタングステン及びレニウムからなる群の1つ以上、又は一方がマンガン又はニッケルであり、他方が銅、鉄及びバナジウムからなる群の1つ以上であることが好ましい。
二酸化チタンにドープされる金属は、タングステン及びネオジムであることがよい。
二酸化チタンにドープされる金属は、一方がマンガン又はニッケルであり、他方が銅、鉄及びバナジウムからなる群から選ばれた1つ以上であることができる。
酸化物の色が互いに補色の関係にある金属の添加量は、2つ以上の金属の合計が、二酸化チタンの0.1〜10モル%の範囲であることがよい。
酸化物の色が互いに補色の関係にある2つ以上の金属のそれぞれの添加量のモル比は、一方の金属のモル数を1としたとき、他方の金属のモル数が1/2〜2の範囲であることができる。
酸化物の色が互いに補色の関係にある2つ以上の金属をドープした二酸化チタンの一次粒子の体積分布メジアン径は10〜100nmであることが好ましい。
酸化物の色が互いに補色の関係にある2つ以上の金属をドープした二酸化チタンは、銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含む被覆材の表面に融着によって固着されたものであることが好ましい。
銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含む被覆材は、融点が200〜230℃の合金であることがよい。
銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含む被覆材は、スズを50%以上含む合金であることが好ましい。
上記目的を達成するためになされた本発明の表面処理方法は、抗菌、抗ウイルス、防黴、消臭、防汚、大気浄化活性を付与しようとする対象物を、(1)1種以上のスズイオンと、少なくとも銀イオン及び銅イオンの1つ以上とを含む金属イオン溶解液に浸漬し、電気めっき又は無電解めっきにより被覆材を対象物に定着させる段階、(2)酸化物の色が互いに補色の関係にある遷移金属の2つ以上をドープし、表面をペルオキソ基で修飾したアナターゼ型結晶性の二酸化チタンの微粒子が懸濁した液体を被覆材を定着した対象物に付着させる段階と、(3)二酸化チタンの微粒子を付着した対象物を被覆材が溶融する温度まで加熱して、酸化物の色が互いに補色の関係にある金属の2つ以上をドープした二酸化チタンの微粒子を被覆材の表面に融着する段階とを含むことを特徴とする。
対象物が導電性でない場合には、被覆材を対象物に定着させる段階の前に、対象物を導電性化する段階をさらに含むことが好ましい。
対象物が磁性体を含む場合には、対象物を金属イオン溶解液に浸漬する前に磁性を除去する脱磁を行い、二酸化チタンの微粒子を被覆材の表面に融着する段階の後に、磁性体を着磁する段階をさらに含むことがよい。
本発明によると、本発明の表面処理剤は、人体に有害な物質を含まないため、人体に触れる物品の表面処理剤として好ましく使用することができる。
本発明の表面処理剤は、抗菌活性、防黴活性、抗ウイルス活性のある金属イオンを含むスズ合金の被覆材を含むため、暗所においても金属イオンの働きにより高い抗菌作用、防黴作用、抗ウイルス作用を有することができる。
本発明の表面処理剤は、酸化物の色が互いに補色の関係にある金属の2つ以上をアナターゼ型結晶性の二酸化チタンにドープした光触媒を含有するため、これを固着することによって明所では紫外線領域だけでなく可視光領域の光によって、抗菌、抗ウイルス、防黴、消臭、防汚、大気浄化等の活性を有する効果を有する。
幅広い波長の光を利用することができ、また、表面をペルオキソ基で修飾し活性を高めていることから、微弱な光でも光触媒活性を示す効果を有している。
本発明の表面処理剤は、表面をペルオキソ基で修飾した二酸化チタンを含有するため、光触媒としての活性が高く、又、ペルオキソ基の分極により粒子間に斥力が働くため、分散性に優れ、二酸化チタンの微粒子が懸濁した液に対象物を浸漬して二酸化チタンを付着させる際に二酸化チタンを対象物に均一に付着させることができる。
その製造方法において、200℃以下でアナターゼ型の二酸化チタンを生成することができるため、従来の光触媒の製造に不可欠であった焼成工程を省くことができ、焼成炉の設備投資も不要になるため、安価に製造することができる効果を有する。
本発明の表面処理剤は、めっきによって得られた被覆材の層に補色の関係にある2以上の金属がドープされた二酸化チタンの微粒子を融着によって固着するため、耐摩耗性に優れ、効果が長期にわたり継続することができる。
本発明の一実施例による表面処理方法を示すフローチャートである。 本発明の実施例1、2及び比較例1、2で使用した腕時計替えバンドの斜視図及び部分拡大図である。 本発明の実施例3及び比較例3で使用した磁気ブレスレットの斜視図である。 本発明の実施例4、5及び比較例4、5で使用した携帯電話保護ケース(携帯電話本体を含む)の斜視図である。
本発明は、抗菌触媒入り表面処理剤及び表面処理方法に関する発明であり、表面処理剤は紫外線領域だけでなく可視光領域の光により励起する光触媒と高い抗菌、防黴及び抗ウイルス活性を有する金属イオンとを併せ持つことを特徴とする。
光触媒活性を示す物質として、多くの化合物が知られているが、代表的な光触媒活性物質として、二酸化チタン(TiO)が知られている。
二酸化チタンの結晶形には、ルチル、ブルカイト、アナターゼの3種類が知られている。本発明の光触媒としてはこれらルチル型、ブルカイト型、アナターゼ型の二酸化チタンの何れも使用が可能であるが、ブルカイト型の二酸化チタンは製造が難しいため、一般に利用可能な二酸化チタンはルチル型とアナターゼ型である。光触媒としては、アナターゼ型がルチル型に比べて10倍程高い活性を示すことから、アナターゼ型の二酸化チタンがより好ましく利用できる。
アナターゼ型の二酸化チタンの製造方法については多くの製造方法がある。本出願人は、引用文献1の中で、硫酸法によって製造した水酸化チタンの懸濁液に過酸化水素水を添加してペルオキソチタン溶液とした後に、ペルオキソチタン溶液を、85℃〜200℃において、40時間〜2時間の加熱処理を行ってアナターゼ型結晶性の二酸化チタンのスラリーを製造した。本発明においてもこの方法が好ましく利用できる。
硫酸法は二酸化チタン合成の中間体として、硫酸第二チタンを経由することで、チタンを含むものであれば、ほとんどのチタン含有物が原料として利用できる。
硫酸第二チタンの溶液にアンモニア、又は水酸化ナトリウム等のアルカリと反応させることによってゲル状の水酸化チタンを得ることができ、この段階で光触媒となる二酸化チタンの一次粒子径が決定される。
本発明では、硫酸第二チタンの水溶液に2つ以上の遷移金属の水溶液が添加混合され、その後、アルカリ溶液と反応させることによって2つ以上の遷移金属が水酸化チタンにドープされる。
遷移金属とは、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素に第12族元素の亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)の亜鉛族元素を加えたものをいう。遷移金属は、d起動又はf軌道の内核に空位の軌道を有しており、同一元素でいくつかの酸化数を有することが多く、酸化数により様々な色を持った化合物が多く存在する。
本発明は、酸化物の色が互いに補色の関係にある遷移金属の2つ以上を二酸化チタンにドープすることにより、紫外線領域から可視光領域の幅広い光に応答する抗菌触媒入り表面処理剤を提供することを特徴とする。
酸化物の色が互いに補色の関係にある遷移金属の組み合わせとしては、一方が、ネオジムであり、他方が、タングステン及びレニウムからなる群から選ばれた1つ以上の組み合わせを一つの例として挙げることができる。この組み合わせはネオジムの酸化物である三酸化二ネオジム(Nd)の色調が青から青紫であり、一方、タングステン及びレニウムのそれぞれの酸化物である三酸化タングステン(WO)及び三酸化レニウム(ReO)の色が黄色であり互いに補色の関係にある。
更に、他の補色の関係にある遷移金属の組み合わせとして、一方が、マンガン又はニッケルであり、他方が銅、鉄及びバナジウムからなる群から選ばれた1つ以上の組み合わせを例示することができる。この組み合わせは一方のマンガン及びニッケルのそれぞれの酸化物である一酸化マンガン(MgO)及び一酸化ニッケル(NiO)の色調が緑色から青緑色であり、他方の銅、鉄及びバナジウムそれぞれの酸化物である、酸化第一銅(CuO)、酸化第二鉄(Fe)及び五酸化二バナジウム(V)の色調が赤色から赤褐色であることから互いに補色の関係になる。
ここで補色の関係とは、色相環(color circle)で正反対に位置する関係の色の組合せをいい、二つの色を適当な割合で混合した結果、光の場合は白色光、絵の具などの場合は無彩色(灰色)になる組み合わせの関係をいう。
酸化物の色が互いに補色の関係にある遷移金属の添加量は、2つ以上の金属の合計が、二酸化チタンの0.1〜10モル%の範囲であることが好ましく、0.5〜5モル%であることがより好ましい。ドープした2つ以上の金属の合計が、二酸化チタンの0.1モル%以下であると、遷移金属のドープによる可視光の吸収を十分に行えない虞があり、10モル%以上であると、二酸化チタンの光吸収によって生じた正孔を遷移金属の動きやすい電子が塞いでしまい、光触媒としての効果が十分に発揮されない虞がある。
酸化物の色が互いに補色の関係にある2つ以上の遷移金属のそれぞれの添加量のモル比は、一方の金属の量を1としたとき、他方の金属の量が0.5〜2の範囲であることが好ましい。一方の金属の量を1としたとき、他方の金属の量が0.5以下又は2以上であると少ない配合の遷移金属が吸収する波長の光の吸収量が少なくなり、可視光領域での光の吸収バランスが悪くなる虞がある。
これらのドープする遷移金属は、該当金属を含み水溶液もしくはアルコールやアセトン又はエーテル等の溶液になるものであれば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等、いかなる化合物も使用することができる。
例えば、ネオジムであれば、酸化ネオジム(NdО)水酸化ネオジム(Nd(OH))、塩化ネオジム(NdCl)、硫酸ネオジム(Nd(SO・8HO)等を利用できる。
例えば、タングステンであれば、酸化タングステン(WO)、塩化タングステン(WCl)、タングステン酸ナトリウム(NaWO)、タングステン酸カルシウム(CaWO)、タングステン酸マグネシウム(MgWO)、タングステン酸鉄(FeWO)、パラタングステン酸アンモニウム((NH10(H1242)・4HO)、フッ化タングステン(WF)、二硫化タングステン(WS)等を利用できる。
例えば、レニウムであれば、塩化レニウム(ReCl)、二酸化レニウム(ReO)、三酸化レニウム(ReO)、七酸化二レニウム(Re)、三酸化メチルレニウム(CHReO)、ノナヒドリドレニウム(VII)酸カリウム(KReH)、デカカルボニル二レニウム(Re(CO)10)、二ホウ化レニウム(ReB)、二硫化レニウム(ReS)、過レニウム酸(HReO)、過レニウム酸アンモニウム(HNORe)等を利用できる。
例えば、マンガンであれば、二酸化マンガン(MnO)、炭酸マンガン(MnCO)、マンガン酸ナトリウム(NaMnO)、マンガン酸カリウム(KMnO)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、水酸化マンガン(Mn(OH))、二塩化マンガン(MnCl)、ヨウ化マンガン(MnI)、硝酸マンガン(Mn(NО)、硫酸マンガン(MnSO)、酢酸マンガン(Mn(OCOCH)、硫化マンガン(MnS)等を利用できる。
例えば、ニッケルであれば、酸化二ッケル(NiО)、炭酸ニッケル(Ni(CO))、水酸化ニッケル(Ni(OH))、二塩化ニッケル(NiCl)、ヨウ化ニッケル(NiI)、硝酸ニッケル(Ni(NО)、硫酸ニッケル(NiSO)、スルファミン酸ニッケル(Ni(NHSO)、ニッケル酸リチウム(LiNiО)等を利用できる。
例えば、銅であれば、酸化二銅(CuО)、酸化銅(CuО)、一塩化銅(CuCl)、二塩化銅(CuCl)、ヨウ化銅(CuI)水酸化銅(Cu(ОH))、硫化銅(CuS)、硝酸銅(Cu(NО)、硫酸銅(CuSO)、等を利用できる。
例えば、鉄であれば、酸化鉄(FeО)、四酸化三鉄(FeО)、塩化鉄(FeCl)、三塩化鉄(FeCl)、硝酸第一鉄(Fe(NО、硝酸第二鉄(Fe(NО、硫酸第一鉄(Fe)、硫化鉄(FeS)、ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム(K〔Fe(CN)〕)、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム(K〔Fe(CN)〕)等を利用できる。
例えば、バナジウムであれば、五酸化バナジウム(VО)、三酸化バナジウムアンモニウム(NHVО)、三酸化バナジウムナトリウム(NaVО)、四酸化バナジウム三ナトリウム(NaVО)、三塩化バナジウム(VCl)、二塩化バナジウム(VCl)、三臭化バナジウム(VBr)、四フッ化バナジウム(VF)、五フッ化バナジウム(VF)、硫酸バナジウム(III)アンモニウム((NH)V(SО)、硫酸バナジウム(II)カリウム(KV(SО)等を利用できる。
これらの遷移金属化合物は水もしくはアルコール、アセトン、エーテル等有機溶剤に溶解し、溶液としてチタン含有の化合物と混合されることがよい。これらの遷移金属化合物を水に溶解するために、水のpHを酸性又はアルカリ性に調整してもよい。
二酸化チタンにドープされる遷移金属のそれぞれの溶液は互いに混合されて、硫酸第二チタン(Ti(SО)の水溶液、又は、金属チタン、酸化チタン、水酸化チタン等のチタン原料を濃硫酸に溶解した溶液、又は、チタン鉱石よりチタンを取り出すための中間体としての硫酸第二チタン溶液に加えられ、均一に混合される。むろん遷移金属のそれぞれの溶液を直接硫酸第二チタンの水溶液に加えてもよい。所定量の遷移金属が均一に混合された硫酸第二チタンの水溶液には塩基性物質の水溶液が滴下され、水酸化チタンの沈殿が生成する。
硫酸第二チタンがアルカリとの反応によって水酸化チタンになる段階で、遷移金属が水酸化チタンにドープされる。
ここでの反応に使用される塩基性物質に特に制限はなく、一般的に使用される、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を挙げることができる。中でもアンモニアは、後工程において水による洗浄以外にも気体として過剰な塩基性物質が除去されることから好ましく利用できる。
ここで使用するアルカリの量はチタンのモル数の5倍以上であることが好ましく、通常5〜10倍量である。
塩基性物質の滴下により硫酸第二チタンは水酸化チタンとなって沈殿する。沈殿した水酸化チタンを濾過し、反応により生じた塩が検出されなくなるまで、十分に水洗した後、再び水に懸濁させて過酸化水素水を加え、攪拌すると、黄色のペルオキソチタン酸溶液が得られる。
過剰の過酸化水素水を加えることにより、水酸化チタンにドープされた繊維金属はその安定な酸化物に変化する。と同時に、水酸化チタンの表面をペルオキソ基で修飾する。水中に分散したナノサイズの二酸化チタンの粒子は、その表面のペルオキソ基の分極によって粒子間の電気的斥力が働くために、凝集することなく安定して存在することができる。
ここで使用される過酸化水素水は、有効成分濃度が3〜50%であることが好ましい。有効成分濃度が3%以下では、二酸化チタンの表面が十分にペルオキソ基で修飾できない虞がある。又、有効成分濃度が50%を超えると急激な反応が起こることがあり、危険を伴う虞がある。
水酸化チタンに加える過酸化水素の量は、水酸化チタンの量より過剰であることがよく、通常、水酸化チタンのモル数の1.2倍から2.0倍量である。添加量が少ないと、二酸化チタンの表面が十分にペルオキソ基で修飾できない虞がある。大過剰になると、薬剤が無駄になるだけでなく、その後の過剰の過酸化水素を分解する過程に時間がかかり、無駄である。
過剰の過酸化水素を分解するためには、この反応液を一夜静置するとよい。過剰の過酸化水素を分解した後、80〜200℃において2〜40時間加熱処理することにより、表面がぺルオキソ基に修飾され、2種類以上の遷移金属にドープされたアナターゼ型の二酸化チタン結晶の水分散液を得ることができる。
この一連の水酸化チタンの生成段階において、アナターゼ型二酸化チタン結晶の一次粒子のサイズが決定され、加熱処理の段階で二次粒子のサイズが決定される。
水に分散したアナターゼ型二酸化チタン結晶の一次粒子の体積分布メジアン径は、10〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましく、10〜30nmであることがさらに好ましい。100nmよりも大きくなると、微粒子に作用する重力による効果が大きくなり、分散剤を使用したとしても沈降しやすくなる。50nm〜100nmであると、分散剤の助成により長期間の分散を維持することができる。
アナターゼ型の二酸化チタンの二次粒子の大きさは体積分布メジアン径が1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。二次粒子のメジアン径が1μm以下であると被覆材の層の中に埋没してしまい、光触媒活性が十分に発揮されない虞がある。一方、メジアン径が100μmを超えると被覆材の層に融着される力が弱まり、脱落する虞がある。
本発明の表面処理剤は、酸化物の色が互いに補色の関係にある2以上の金属がドープされ、表面をペルオキソ基で修飾されたアナターゼ型二酸化チタンの微粒子を、抗菌、防黴、抗ウイルス、消臭、防汚を望む対象物に固着して成る事を特徴とする。
固着の方法としては、接着、塗布、圧着等、種々存在するが、いずれも耐久性に乏しく長期間効果を発揮することができない。最も長期にわたって効力を維持する固着方法は融着によって二酸化チタンの粒子を対象物の表面に埋め込むことである。
ただし、二酸化チタンの表面はペルオキソ基で修飾されているため、高温では分解する虞がある。更に、表面処理対象物の耐熱限界があることも考えられるため、酸化物の色が互いに補色の関係にある2以上の遷移金属がドープされ、表面をペルオキソ基で修飾されたアナターゼ型二酸化チタンの微粒子が融着される対象物表面は低融点合金で被覆されることがよい。
一般に低融点合金とは、スズの融点である230℃より低い融点(固相線温度)を有する合金をいう。
最も一般化した低融点合金は、スズと鉛でなる、はんだであるが、本発明の対象物は、手で触れたり、身に着けることが多いことから、鉛は含まない方が好ましい。
本発明の課題は、暗所でも高い抗菌・防黴・抗ウイルス活性を示す表面処理剤を提供することである。
抗菌活性としては、金属イオンの中では銀イオン(Ag)が最も効果が高いが、防黴活性、抗ウイルス作用としては銅イオン(Cu++)の効果が高い。このため、スズに銀と銅を混合した合金が好ましい。また、スズ−銀−銅の三元合金は、スズ−銀又はスズ−銅の二元合金よりも固相線温度(融点)が低いことから製造上も有利である(表1を参照)。
スズ−銀−銅からなる合金は、日本工業規格(JIS Z 3282:2006)に掲載されており、国際規格(ISO)の合金番号も付与されている。
銀及び/又は銅を含む低融点スズ合金のリストを表1に示した。
Figure 0006200571
表1によるとスズ−銀−銅からなる合金の固相線温度は、スズ−銀−銅、及びスズ−銅−銀の三元合金が共に低く217℃であり、次いでスズ−銀の二元合金が低く221℃であり、スズ−銅の二元合金が最も高く227℃であった。一方、液相線温度はスズの含量により大きく変化し、スズ含量が減ると液相線温度は急激に上昇した。
スズ−銅の二元合金より、スズ−銀の二元合金の方が固相線温度も液相線温度ともに低い傾向にあり、スズ−銀−銅の三元合金では、銀に比べ銅含量の多い、Sn−Cu−Ag系よりも、銅含量に比べ銀含量の多い、Sn−Ag−Cu系の方が液相線温度が低い傾向にあり、Sn−Ag−Cu系では固相線温度と液相線温度がほぼ同じであった。
本発明ではこれらの合金の何れも抗菌効果を有する被覆材として利用できる。
低融点合金としてスズにビスマスやガリウムやインジウムを混合する組み合わせも知られているが、本発明の目的には表1に挙げたスズ−銀−銅からなる合金で十分に対応可能である。
これらの合金を対象物に被覆させる方法としては、所謂「どぶ漬け」と言われる溶かした低融点合金に対象物を漬け込みめっきする溶融めっき、めっきしたい対象物をカソードとし、めっきする金属イオンを溶解した溶解液(電気めっきでは電解液という)に浸して印加する電気めっき、化学薬品の還元力で金属を析出させめっきする無電解めっき、真空槽で蒸着によりめっきを施す真空蒸着等がある。
これらのめっき方法のうち、溶融めっきは手軽な方法であるが、めっき層が厚くなり、光触媒の微粒子を融着する際、微粒子がめっき層に埋没してしまい、光触媒として十分機能しない虞がある。真空蒸着は大掛かりな装置が必要な上、めっきに時間がかかるという問題がある。
めっき方法としては、電気めっきと無電解めっきが好ましく利用できる。
電気めっきはめっき層の厚さに多少のむらができるものの、印加する電流量によりめっき層の厚さを制御できるメリットがある。また、無電解めっきは、非導電性の対象物にめっきをすることができ、均質なめっき層を形成するというメリットがある。
電気めっきはめっき対象物をカソードとし、めっきする金属のイオン溶解液(電解液)に漬け、1〜10A/dmの電流密度で印加すればよい。この時アノードは、一般に、金属イオンの補充を兼ねてスズの板が使用される。
電気めっきに使用する金属イオン溶解液(電解液)は、所望する合金の比率になるように金属イオンの量を調合すればよい。水溶性の金属塩であれば、本発明の金属イオン溶解液(電解液)を構成する金属のイオン源として使用することができる。
スズを含む塩として、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)及び、メタンスルホン酸スズ、エタンスルホン酸スズ、2−ヒドロキシエタンスルホン酸スズ、プロパンスルホン酸スズ、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸スズ等のアルキルスルホン酸スズ、フェニルスルホン酸スズやクレゾールスルホン酸スズ等のアリールスルホン酸スズを例示することができる。
銀を含む塩として、硝酸銀(I)、フッ化銀(I)、硫酸銀(I)及び、メタンスルホン酸銀等を例示することができる。
また、銅を含む塩として、硫酸銅、塩化銅(II)、臭化銅(II)、酢酸銅、硝酸銅(II)等を例示することができる。
電気めっきに使用する金属イオン溶解液(電解液)は、金属イオンの他に遊離酸を含むことが好ましい。
電気めっきの電解液に加えられる遊離酸として、硫酸、硝酸、塩酸等の鉱酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、フェニルスルホン酸スズ、ナフタレンスルホン酸、クレゾールスルホン酸等のアリールスルホン酸を例示することができる。
電気めっきの電解液には、EDTAや1,3−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−2−チオ尿素や1,3−ビス(3−メトキシプロピル)−2−チオ尿素等の錯化剤が加えられてもよい。
また、銀及び/又は銅を含むスズめっきはアルカリ性の環境でも行うことができる。例えば、スズ酸ナトリウム又はスズ酸カリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、及び、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムからなるアルカリ性スズめっき液に所定量のジアミン銀(I)イオン及び/又はテトラアンミン銅(II)イオンを加えることで調整できる。ジアミン銀(I)イオンは、硝酸銀(I)溶液に過剰のアンモニア水を加えることにより合成することができる。また、テトラアンミン銅(II)イオンは酢酸銅又は硝酸銅の溶液に過剰のアンモニア水を加えることによって合成できる。
こうして調整したアルカリ性電解液に対象物をカソードとして浸漬し、液温50〜90℃で1〜5A/dmの電流密度で印加すればよい。
無電解めっきは電気めっきで使用する電流の代わりに還元剤の還元力により金属イオン溶解液中に溶解している金属イオンを対象物の上に析出させるものである。無電解めっきで使用する金属イオン溶解液は電気めっきで使用する電解液と同様に所望する合金の構成比率で金属イオンの量を調合すればよい。無電解めっきはめっき対象物をこの金属イオン溶解液に浸し、還元剤を添加すればよい。
無電気めっきに使用される還元反応として、鉄族元素や白金族元素を触媒として次亜リン酸による還元、ホウ素を共晶するジメチルアミンボラン(DMAB)による還元、塩化ヒドラジン又は硫酸ヒドラジンを使用せるヒドラジン類による還元、水溶性チタンの還元力を使用するチタン及びホルマリンの還元力を使用する方法等が知られている。これらの還元剤の何れも本発明の還元剤として利用することができる。
無電解めっきは電気めっきと異なり非導電性の対象物にめっきをすることができるため極めて有用な方法である。
電気めっきや無電解めっきに使用する金属イオン溶解液は市販されており、本発明の金属イオン溶解液はこれらの市販品に不足している金属イオン等を補充することで容易に調合することもできる。
電気めっきも無電解めっきもよく知られている一般的な手法であることからこれ以上の説明は省略する。
銀及び/又は銅を含む低融点合金を被覆材として加工された対象物の表面に、酸化物の色が互いに補色の関係にある遷移金属がドープされ、表面をペルオキソ基で修飾された二酸化チタンの微粒子が融着される。
対象物を被覆する低融点合金のめっき層の厚さは5μm〜50μmであることがよく、10μm〜30μmであることがより好ましい。めっき層の厚さが5μm未満であると、二酸化チタンの微粒子を固着する力が不十分となり、摩耗に対する抵抗力がなくなり、光触媒効果が長続きしない。めっき層の厚さが50μmを超えると、二酸化チタンの微粒子がめっき層に埋没してしまい、光触媒効果が十分発揮されない虞がある。
二酸化チタンの微粒子を対象物のめっき層に融着するときの温度は、固相線温度から液相線温度の間、又は液相線温度プラス5℃の範囲にあることがよい。固相線温度とは固体物質が液体に変わり始める温度であり、液相線温度とは液体物質が固体に変わり始める温度をいう。固相線温度以下で融着は起こらない。液相線温度以上では液体が安定に存在する。液相線温度応より5℃以上高い温度ではめっき層が流動し、二酸化チタンの微粒子が均一に融着されない虞がある。
融着に要する時間は3分〜30分であることがよく、5分〜10分であることがより好ましい。融着時間が3分以下では融着が不十分になる虞があり、30分を超すと二酸化チタン表面に施したペルオキソ基の修飾が分解する虞がある。
以下、本発明の表面処理剤を使用した表面処理方法について説明する。
図1は、本発明の一実施例による表面処理方法を示すフローチャートである。
本発明の表面処理剤を使用した表面処理方法は、抗菌、防黴、抗ウイルス、消臭、防汚、大気浄化活性を付与しようとする対象物を、(1)1種以上のスズイオンと、少なくとも銀イオン及び銅イオンとを含むイオン溶液に接触させ、電気めっき又は無電解めっきにより被覆材を対象物に定着させる段階(S101)と、(2)酸化物の色が互いに補色の関係にある遷移金属の2つ以上をドープし、表面をペルオキソ基で修飾したアナターゼ型二酸化チタンの微粒子を懸濁した懸濁液を被覆材を定着した対象物の表面に付着させ乾燥する段階(S102)と、(3)二酸化チタンの微粒子を付着した対象物を被覆材が溶融する温度まで加熱して、酸化物の色が互いに補色の関係にある遷移金属の2つ以上をドープした二酸化チタンの微粒子を被覆材の表面に融着する段階(S103)とを含む。
抗菌、防黴、抗ウイルス、消臭、防汚、大気浄化活性を付与しようとする対象物が導電性を有する場合には、電気めっき及び無電解めっきのいずれの方法でも対象物を被覆できる。一方、対象物が非導電性の場合には、まず、無電解めっきが施される。無電解めっきに代えて、導電性を付与するために真空蒸着又は導電塗料の塗布を行い、次いで電気めっきを行ってもよい。
本発明の対象物には磁性を有するものも含まれる。本発明では最終工程として二酸化チタンを融着するための加熱工程があるため、磁性を有する対象物は、めっき工程に入る前に、脱磁を行い磁力を取り除いておくことがよい。磁性を有したままめっき工程、融着工程を行うと、他の磁性体と結合して被覆むらが起き、また、加熱工程の熱によって磁性が弱められる虞がある。
磁性を有する対象物は、めっき工程に入る前に、脱磁をし、光触媒を融着した後に着磁すればよい。脱磁も着磁も強力な磁界を発生させる電源装置によって容易に磁性の着脱を行うことができる。
[実施例]
次に、本発明の表面処理剤について実施例により説明する。
〔実施例1及び実施例2〕
(A)タングステンとネオジムをドープした二酸化チタンの製造
24mLの30%硫酸チタン(和光純薬工業株式会社製)の水溶液に脱塩水を加え1000mLとした。1gの六塩化タングステン(Aldrich社製)を10mLのエーテルに溶解させた。一方、470mgの三塩化ネオジム六水和物(和光純薬工業株式会社製)を10mLのエタノールに溶解させた。それぞれの溶液を同時に上記硫酸チタンの水溶液に攪拌しながら滴下した。
次いで、六塩化タングステン、三塩化ネオジム及び硫酸チタンを含む水溶液を氷冷下攪拌しながら、10%アンモニア水(日本薬局方第3塁医薬品)の25mLを250mLに希釈して滴下した。アンモニア水の滴下と共に、チタンを含む水溶液は白濁し、タングステンとネオジムをドープした状態で水酸化チタンが生成していることが観察された。水酸化チタンを分散した反応液は次第に粘性が増した。
アンモニア水の滴下終了後、1時間攪拌を続け、反応物を吸引濾過した。濾別した水酸化チタンは脱塩水に懸濁し、吸引濾過して洗浄する作業を3回繰り返した。
洗浄後、白色固形物を集め、水300mLを加えて白色の懸濁液を調製した。この水酸化チタンの懸濁液に30%過酸化水素水(三菱ガス化学株式会社製)20mLを加えて攪拌した。1時間攪拌を続けた後、10℃以下で、24時間静置して余剰の過酸化水素水を分解させ、黄色粘性液体400mLを得た。
次いで、得られた黄色粘性液体を95〜100℃で20時間加熱し、薄黄色半透明の分散液を得た。
分散液の1滴をスライドグラスに取り、蛍光X線元素分析装置(株式会社堀場製作所製、型番:MESA−50)により成分分析を行った。その結果、チタンに由来するピークの他にタングステンとネオジムに由来するピークが検出され、タングステンとネオジムがチタンの中にドープされていることが確認された。
(B)ニッケルと鉄をドープした二酸化チタンの製造
24mLの30%硫酸チタン(和光純薬工業株式会社製)の水溶液に脱塩水を加え1000mLとした。
1gの硝酸第二鉄・九水塩(Aldrich社製)及び470mgの硫酸ニッケル六水和物(和光純薬工業株式会社製)をそれぞれ10mLの水に溶解させた後、その両者を混合して均一な溶液を調製した。この溶液を攪拌しながら上記硫酸チタンの水溶液に滴下した。
次いで、硝酸第二鉄と硫酸ニッケルを含む硫酸チタンの溶液を氷冷下攪拌しながら、10%アンモニア水(日本薬局方第3類医薬品)の25mLを250mLに希釈して滴下した。アンモニア水の滴下と共に、チタンを含む水溶液は白濁しニッケルと鉄の存在下に水酸化チタンが生成していることが観察された。
アンモニア水の滴下終了後、1時間攪拌を続けた後、反応物を吸引濾過した。濾別した水酸化チタンは脱塩水に懸濁し、吸引濾過して洗浄する作業を3回繰り返した。
洗浄後、白色固形物を集め、水300mLを加え、白色の懸濁液を調製した。この水酸化チタンの懸濁液に30%過酸化水素水(三菱ガス化学株式会社製)20mLを加えて攪拌した。1時間攪拌を続けた後、10℃以下で、24時間静置して余剰の過酸化水素水を分解させ、黄色粘性液体400mLを得た。
次いで、得られた黄色粘性液体を95〜100℃で20時間加熱し、薄黄色半透明の分散液を得た。
分散液の1滴をスライドグラスに取り、蛍光X線元素分析装置(株式会社堀場製作所製、型番:MESA−50)により成分分析を行った。その結果、チタンに由来するピークの他に鉄とニッケルに由来するピークが検出され、鉄とニッケルがチタンの中にドープされていることが確認された。
(C)電気めっきにより被覆層を形成するための金属イオン溶解液(電解液)の調合
(1)塩化スズ(II)2水和物(和光純薬工業株式会社製)と2−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を混合して調製した2−ヒドロキシエタンスルホン酸スズからのスズ(Sn2+として)60g/L、
(2)硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)と2−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を混合して調製したスルホン酸銀からの銀(Agとして)3.5g/L、
(3)塩化銅(II)(和光純薬工業株式会社製)と2−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を混合して調製した2−ヒドロキシエタンスルホン酸銅からの銅(Cu2+として)0.7g/L、及び
(4)遊離酸として2−ヒドロキシエタンスルホン酸を150g/Lを混合し、
さらに、(5)ビスフェノールA−エトキシレート(四日市合成株式会社製)4g/L、カテコール(東京化成工業株式会社製)1g/L、2−ナフタリンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.3g/Lを配合して残部をイオン交換水として金属イオン溶解液(電解液)とした。
(D)無電解めっきにより被覆層を形成するための金属イオン溶解液の調合
(1)塩化スズ(II)2水和物(和光純薬工業株式会社製とメタンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を混合して調製したメタンスルホン酸スズからのスズ(Sn2+として)20g/L、
(2)硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)とメタンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を混合して調製したメタンスルホン酸銀からの銀(Agとして)0.73g/L、
(3)塩化銅(II)(和光純薬工業株式会社製)とメタンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を混合して調製した2−ヒドロキシエタンスルホン酸銅からの銅(Cu2+として)0.15g/L、及び
(4)還元剤として次亜リン酸ナトリウム(米山薬品工業株式会社製)を80g/L、遊離酸としてメタンスルホン酸(和光純薬工業株式会社製)を50g/L、錯化剤としてチオ尿素(米山薬品工業株式会社製)を75g/L混合し、
さらに、(5)クエン酸(和光純薬工業株式会社製)16g/L、塩化ラウリルピリジニウム(三栄化学株式会社製)5g/L、EDTA(和光純薬工業株式会社製)3g/Lを配合して残部をイオン交換水として金属イオン溶解液とした。
(E)腕時計バンドの表面処理(〔実施例1、2〕)
図2は本発明の実施例1、2及び比較例1、2で使用した腕時計替えバンドの斜視図及び部分拡大図である。
腕時計替えバンド(ステンレス製、3連、18mm、弓かん式、サイドプッシュ式)を分解し、取り外したコマのすべてを導電性の金属ワイヤーで連結してアノード(陽極)とした。カソード(陰極)にはスズの金属板を使用し、上記(C)で調整した金属イオン溶解液(電解液)に浸漬した。電極を直流電源に連結し、5A/dmの電流密度で30秒間印加した。
得られたスズ−銀−銅層の形態は走査型電子顕微鏡(日立製作所製、型番:S2460)で検査した。被覆層はムラなく形成されており、均一で滑らかな表面を有していた。
得られたスズ−銀−銅層の各成分濃度は蛍光X線元素分析装置(株式会社堀場製作所製、型番:MESA−50)によって測定され、スズ−銀−銅の構成比が95:4:1と計測された。この構成比は、JIS規格のSn95.5Ag3.8Cu0.7に近い値であり、ISO合金番号713にも相当し、融点は217℃であった。
また、スズのピークの高さからめっき層の厚さは凡そ10μmと計算された。
(F)酸化タングステン及び酸化ネオジムをドープした二酸化チタンの固着(〔実施例1〕)
上記(D)のスズ−銀−銅をめっきした腕時計替えバンドの構成部品は、上記(A)で調製したタングステンとネオジムがドープされ、表面をペルオキソ基で修飾されたアナターゼ型二酸化チタンを含む懸濁液に3秒間浸漬して光触媒を付着した後、風乾した。
小型電気炉(株式会社梶山工芸製、商品名:ファニーeKCB 1300℃)を使用して217〜222℃で10分間加熱した。
得られたタングステンとネオジムがドープされた二酸化チタンが固着された腕時計替えベルトのコマの表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、型番:S2460)で観察した。コマの表面は二酸化チタンの微粒子(二次粒子)で覆われ、二酸化チタンの微粒子は溶融した被覆材によって融着されていた。二酸化チタンの層は均一で、二次粒子の大半が5〜20μmの大きさであり、50μm以上の二次粒子は認められなかった。
(G)ニッケルと鉄をドープした二酸化チタンの固着(〔実施例2〕)
上記(E)において、タングステンとネオジムをドープした二酸化チタンに代えて、上記(B)で調製したニッケルと鉄をドープした上、過酸化水素で活性化された二酸化チタンを使用した以外、上記(E)と同じ条件で腕時計替えバンドの表面処理を行った。
(H)効力試験(〔実施例1、2〕及び〔比較例1、2〕)
実施例1および2として、それぞれ上記(E)及び(F)で製造した腕時計替えバンドのコマを集め、それぞれ元の替えバンドに組み立て、時計を取り付けて腕時計とした。比較例1及び2として、表面処理を施していない腕時計を用意した。試験員は検査対象の腕時計と比較対象の腕時計を左右の腕にはめ、週毎に、左右の腕時計を交代させて、4週間装着した。
4週間後、時計とバンドを分離し、バンドを超音波洗浄機(シチズンホールディングス株式会社製、品番:SW5800)で5分間超音波洗浄を行った。超音波洗浄機には滅菌水500mLに0.5mLの界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を加えたものを入れ、洗浄後、洗浄水を回収し、その濁度、細菌数及び、カビの数を測定した。
<濁度>
洗浄液の汚れ具合を散乱光濁度チェッカー(オプテックス株式会社製、品番:TSC−10、標準液:ホルマジン)で測定した。測定方法は、JIS K0101の「工業用水試験方法」に従った。結果を表2に示した。
Figure 0006200571
タングステンとネオジムをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例1の腕時計替えバンドの洗浄液の濁度は11(ホルマジン)であったが、表面処理をしなかった比較例1の腕時計替えバンドの洗浄液の濁度は58(ホルマジン)であった。
一方、鉄とニッケルをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例2の腕時計替えバンドの洗浄液の濁度は13(ホルマジン)であったが、表面処理をしなかった比較例2の腕時計替えバンドの洗浄液の濁度は62(ホルマジン)であった。
実施例1及び2共に、酸化物の色が互いに補色の関係にある2つの金属がドープされた二酸化チタンの防汚効果により汚れが少なくなっていることが確認された。
<抗菌効果>
上記実施例1、2及び比較例1、2から得られた洗浄液の10倍、100倍、1000倍と希釈液を調製し、一般細菌数、大腸菌群数、及び真菌類数を測定した。
一般菌数は、標準寒天培地(シスメックス・ビオメリュー株式会社製)を用い、37℃で48時間培養した後、コロニー数を計測した。
大腸菌群数は、LB寒天培地(ユニーテック株式会社製)を用い、37℃で24時間培養した後、コロニー数を計測した。
真菌類数は、サブローデキストロース寒天培地(シスメックス・ビオメリュー株式会社製)を用い37℃で96時間培養した後、コロニー数を計測した。
結果を表3に示した。
Figure 0006200571
タングステンとネオジムをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例1の腕時計替えバンドの洗浄液は、一般細菌数が5.9×10 個/Lで、大腸菌群数は100個/L以下であり、真菌類数は10個/L以下であった。これに対し、表面処理をしなかった比較例1の腕時計替えバンドの洗浄液からは、5.9×10個/Lの一般細菌と、1.7×10個/Lの大腸菌群と、46個/Lの真菌類が検出された。
鉄とニッケルをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例2の腕時計替えバンドの洗浄液は、一般細菌数が8.3×10 個/Lで、大腸菌群数は100個/L以下であり、真菌類数は10個/L以下であった。これに対し、表面処理をしなかった比較例2の腕時計替えバンドの洗浄液からは、2.8×10個/Lの一般細菌と、3.4×10個/Lの大腸菌群と、75個/Lの真菌類が検出された。
実施例1及び2共に、酸化物の色が互いに補色の関係にある2つの金属がドープされた二酸化チタンの抗菌、防黴効果が確認された。
〔実施例3〕
(I)磁気ブレスレットの表面処理
図3は、本発明の実施例3及び比較例3で使用した磁気ブレスレットの斜視図である。
磁気ブレスレット(スーパーイオン社製、チタン製、品名:チタンパワーヒーリング磁気ブレスレット、材質:チタン合金、磁石:ネオジム磁石)を着磁装置(東洋磁気工業株式会社製、商品名:コンデンサー式着磁電源装置)を使用して磁性を除去した後、磁石とコマに分解し、磁石は金属製の網かごに入れ、コマはすべてを導電性の金属ワイヤーで連結してアノード(陽極)とした。カソード(陰極)にはスズの金属板を使用し、上記(C)で調整した金属イオン溶解液(電解液)に浸漬した。電極を直流電源に連結し、5A/dmの電流密度で30秒間印加した。
得られたスズ−銀−銅層の形態は走査型電子顕微鏡(日立製作所製、型番:S2460)で検査した。コマの表面においても、また磁石の表面においても被覆層はムラなく形成されており、均一で滑らかな表面を有していた。
得られたスズ−銀−銅層の各成分濃度は蛍光X線元素分析装置(株式会社堀場製作所製、型番:MESA−50)によって測定され、スズ−銀−銅の構成比が95:4:1であることを確認した。
また、スズのピークの高さからめっき層の厚さは凡そ10μmと計算された。
(J)酸化タングステン及び酸化ネオジムをドープした二酸化チタンの固着
上記(H)でスズ−銀−銅をめっきした磁気ブレスレットの構成部品は、腕時計替えバンドと同様に上記(A)で調製したタングステンとネオジムをドープした二酸化チタンを表面に付着され、加熱によって融着された。
得られたタングステンとネオジムをドープした二酸化チタンが固着された磁気ブレスレットの磁石及びコマの表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、型番:S2460)で観察し、表面が二酸化チタンの微粒子(二次粒子)で覆われ、二酸化チタンの微粒子は溶融した被覆材によって融着されていることを確認した。
表面処理が施された磁気ブレスレッドの磁石とコマを、それぞれ元の磁気ブレスレットに組み立てた後、着磁装置(東洋磁気工業株式会社製、商品名:コンデンサー式着磁電源装置)を使用して着磁を行った。
(K)効力試験
実施例3として、上記の腕時計替えバンドと同様に磁気ブレスレットについて効力試験を行った。比較例3として、比較対象に表面処理を施していない同じ型の磁気ブレスレットを用意した。試験員は検査対象の磁気ブレスレットと比較対象の磁気ブレスレットを左右の腕にはめ、週毎に、左右の磁気ブレスレットを交代させて、4週間装着した。
4週間後、磁気ブレスレットを超音波洗浄機(シチズンホールディングス株式会社製、品番:SW5800)で5分間超音波洗浄を行った。超音波洗浄には滅菌水500mlに0.5mLの界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を加えたものを入れ、洗浄後、洗浄水を回収し、その濁度、細菌数及び、カビの数を測定した。
<濁度>
実施例1、2及び比較例1、2と同様の方法によって磁気ブレスレットの洗浄液の濁度を測定した。結果を表4に示した。
Figure 0006200571
タングステンとネオジムをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例3の磁気ブレスレットの洗浄液の濁度は15(ホルマジン)であったが、表面処理をしなかった比較例3の磁気ブレスレットの洗浄液の濁度は72(ホルマジン)であり、補色の関係にある2つの金属がドープされた二酸化チタンの防汚効果により汚れが少なくなっていることが確認された。
<抗菌効果>
上記実施例3及び比較例3で得られた洗浄液について、実施例1、2及び比較例1、2と同様の方法によって一般細菌数、大腸菌群数、及び真菌類数を測定した。
結果を表5に示した。
Figure 0006200571
タングステンとネオジムをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例3の磁気ブレスレットの洗浄液は、一般細菌数が8.4×10 個/Lで、大腸菌群数は100個/L以下であり、真菌類数は10個/L以下であった。これに対し、表面処理をしなかった比較例3の磁気ブレスレットの洗浄液からは、6.3×10個/Lの一般細菌と、3.1×10個/Lの大腸菌群と、37個/Lの真菌類が検出され、酸化物の色が互いに補色の関係にある2つの金属がドープされた二酸化チタンの抗菌、防黴効果が確認された。
〔実施例4及び5〕
(L)携帯電話保護ケースの表面処理(〔実施例4、5〕)
図4は、本発明の実施例4、5及び比較例4、5で使用した携帯電話保護ケース(携帯電話本体を含む)の斜視図である。
上記(D)で調合した金属イオン溶解液の液温を90℃として携帯電話保護ケース(スイッチイージー社製、アイフォン5用シリコンケース)を10分間浸漬した。
得られたスズ−銀−銅層の形態は走査型電子顕微鏡(日立製作所製、型番:S2460)で観察した。携帯電話保護ケースの表裏の表面において、被覆材はムラなく被覆層を形成しており、均一で滑らかな表面を有していた。ノジュールは観察されなかった。
得られたスズ−銀−銅層の各成分濃度は蛍光X線元素分析装置(株式会社堀場製作所製、型番:MESA−50)によって測定され、スズ−銀−銅の構成比が95:4:1であることを確認した。
また、スズのピークの高さからめっき層の厚さは凡そ10μmと計算された。
(M)酸化タングステン及び酸化ネオジムをドープした二酸化チタンの固着(〔実施例4〕)
上記(K−1)のスズ−銀−銅をめっきした携帯電話保護ケースは、実施例1、3と同様に、実施例1(A)で調製したタングステンとネオジムをドープし、過酸化水素で活性化された二酸化チタンを含む懸濁液に3秒間浸漬して光触媒を付着した後、風乾した。
小型電気炉(株式会社梶山工芸製、商品名:ファニーeKCB 1300℃)で215〜220℃で10分間加熱した。
得られたタングステンとネオジムをドープした二酸化チタンが固着された携帯電話保護ケースの表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、型番:S2460)で観察した。保護ケースの表面は二酸化チタンの微粒子(二次粒子)で覆われ、二酸化チタンの微粒子は溶融した被覆材によって融着されていた。二酸化チタンの層は均一で、二次粒子の径は大半が5〜20μmであり、50μm以上の粒子は認められなかった。
(N)ニッケルと鉄をドープした二酸化チタンの固着(〔実施例5〕)
上記(L)において、タングステンとネオジムをドープした二酸化チタンに代えて、上記実施例2(B)で調製したニッケルと鉄をドープし過酸化水素で活性化された二酸化チタンを使用した以外、上記実施例4(L)と同じ条件で携帯電話保護ケースの表面処理を行った。
得られたニッケルと鉄をドープした二酸化チタンが固着された携帯電話保護ケースの表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、型番:S2460)で観察した。保護ケースの表面は二酸化チタンの微粒子(二次粒子)で覆われ、二酸化チタンの微粒子は溶融した被覆材によって融着されていた。二酸化チタンの層は均一で、ノジュールの形成は認められなかった。
(O)効力試験
実施例4および5として、それぞれ上記(L)及び(M)で製造した携帯電話保護ケースに携帯電話を収納した。比較例1及び2として、同じ型の表面処理を施していない携帯電話保護ケースを比較対象に用意した。試験員は20歳代から30歳代の4人で行い、検査対象の保護ケースと比較対象の保護ケース、1週間毎に順次交換し、4週間の間に全員が実施例4,5及び比較例4、5の保護ケースの全てを1週間ずつ装着するようにした。試験員には、表面処理した保護ケースが得できないようにし、通常通りの携帯電話の使用をしてもらった。
4週間後、携帯電話から保護ケースを回収し、超音波洗浄機(シチズンホールディングス株式会社製、品番:SW5800)で5分間超音波洗浄を行った。超音波洗浄機には滅菌水500mlに0.5mLの界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を加えたものを入れ、洗浄後、洗浄水を回収し、その濁度、細菌数及び、カビの数を測定した。
<濁度>
実施例1、2及び比較例1、2と同様の方法によって携帯電話保護ケースの洗浄液の濁度を測定した。結果を表6に示した。
Figure 0006200571
タングステンとネオジムをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例4の腕携帯電話保護ケースの洗浄液の濁度は16(ホルマジン)であったが、表面処理をしなかった比較例4の携帯電話保護ケースの洗浄液の濁度は29(ホルマジン)であった。
一方、鉄とニッケルをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例5の携帯電話保護ケースの洗浄液の濁度は19(ホルマジン)であったが、表面処理をしなかった比較例5の携帯電話保護ケースの洗浄液の濁度は44(ホルマジン)であった。
実施例4及び5共に、補色の関係にある2つの金属がドープされた二酸化チタンの防汚効果により汚れが少なくなっていることが確認された。
<抗菌効果>
上記実施例4、5及び比較例4、5から得られた洗浄液について、実施例1〜3及び比較例1〜3と同様の方法によって一般細菌数、大腸菌群数、及び真菌類数を測定した。
結果を表7に示した。
Figure 0006200571
タングステンとネオジムをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例4の携帯電話保護ケースの洗浄液は、一般細菌数が2.8×10 個/Lで、大腸菌群数は100個/L以下であり、真菌類数は10個/L以下であった。これに対し、表面処理をしなかった比較例4の携帯電話保護ケースの洗浄液からは、7.4×10個/Lの一般細菌と、1.3×10個/Lの大腸菌群と、16個/Lの真菌類が検出された。
鉄とニッケルをドープした二酸化チタンを表面処理した実施例5の携帯電話保護ケースの洗浄液は、一般細菌数が4.1×10 個/Lで、大腸菌群数は100個/L以下であり、真菌類数は10個/L以下であった。これに対し、表面処理をしなかった比較例2の保護ケースの洗浄液からは、1.6×10個/Lの一般細菌と、1.9×10個/Lの大腸菌群と、13個/Lの真菌類が検出された。
実施例4及び5共に、補色の関係にある2つの金属がドープされた二酸化チタンの抗菌、防黴効果が確認された。
1 腕時計替えバンド
2 コマ
3 弓かん
4 バックル
5 磁気ブレスレッド
6 磁石片
7 携帯電話保護ケース

Claims (13)

  1. 対象物に抗菌性、防黴性、抗ウィルス性、消臭性、防汚、大気浄化活性を付与することが可能な表面処理剤であって、
    少なくとも銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含み前記対象物を被覆する被覆材と該被覆材の表面に固着された光触媒からなり、
    該光触媒は、酸化物の色が互いに補色の関係にある2つの金属がドープされ、表面をペルオキソ基で修飾されたアナターゼ型結晶性の二酸化チタンの微粒子であることを特徴とする表面処理剤。
  2. 前記酸化物の色が互いに補色の関係にある2つの金属の組み合わせは、一方がネオジムであり、他方がタングステン及びレニウムからなる群の1つ以上、又は一方がマンガン又はニッケルであり、他方が銅、鉄及びバナジウムからなる群の1つ以上であることを特徴とする請求項1記載の表面処理剤。
  3. 前記二酸化チタンにドープされる金属は、タングステン及びネオジムであることを特徴とする請求項2記載の表面処理剤。
  4. 前記二酸化チタンにドープされる金属は、一方がマンガン又はニッケルであり、他方が銅、鉄及びバナジウムからなる群より選ばれた1つ以上であることを特徴とする請求項2記載の表面処理剤。
  5. 前記酸化物の色が互いに補色の関係にある金属の添加量は、2つの金属の合計が、前記二酸化チタンの0.1〜10モル%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表面処理剤。
  6. 前記酸化物の色が互いに補色の関係にある2つの金属のそれぞれの添加量のモル比は、一方の金属の量を1としたとき、他方の金属の量が1/2〜2の範囲であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の表面処理剤。
  7. 前記酸化物の色が互いに補色の関係にある2つの金属をドープした二酸化チタンの一次粒子の体積分布メジアン径は10〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理剤。
  8. 前記酸化物の色が互いに補色の関係にある2つの金属をドープした二酸化チタンは、銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含む被覆材の表面に融着によって固着されたものであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理剤。
  9. 前記銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含む被覆材は、融点が200〜230℃の合金であることを特徴とする請求項1記載の表面処理剤。
  10. 前記銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含む被覆材は、スズを50%以上含む合金であることを特徴とする請求項1記載の表面処理剤。
  11. 抗菌、抗ウイルス、防黴、消臭、防汚、大気浄化活性を付与しようとする対象物を、
    (1)1種以上のスズイオンと、少なくとも銀イオン及び銅イオンの1つ以上を含む金属イオン溶解液に浸漬し、電気めっき又は無電解めっきにより被覆材を前記対象物に定着させる段階、
    (2)酸化物の色が互いに補色の関係にある金属の2つをドープし、表面をペルオキソ基で修飾したアナターゼ型結晶性の二酸化チタンの微粒子が懸濁した液体を前記被覆材を定着した対象物に付着させる段階と、
    (3)前記二酸化チタンの微粒子を付着した前記対象物を前記被覆材が溶融する温度まで加熱して、前記酸化物の色が互いに補色の関係にある金属の2つをドープした前記二酸化チタンの微粒子を前記被覆材の表面に融着する段階とを含むことを特徴とする表面処理方法。
  12. 前記対象物が導電性でない場合には、前記被覆材を前記対象物に定着させる段階の前に、前記対象物を導電性化する段階をさらに含むことを特徴とする請求項11記載の表面処理方法。
  13. 前記対象物が磁性体を含む場合には、前記対象物を前記金属イオン溶解液に浸漬する前に磁性を除去する脱磁を行い、前記二酸化チタンの微粒子を前記被覆材の表面に融着する段階の後に、前記磁性体を着磁する段階をさらに含むことを特徴とする請求項11記載の表面処理方法。
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