JP6200281B2 - 甲状腺腫瘍の性状の判別を補助する方法およびその方法に用いるマーカーセット - Google Patents

甲状腺腫瘍の性状の判別を補助する方法およびその方法に用いるマーカーセット Download PDF

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Description

本発明は、甲状腺腫瘍の性状の判別を補助する方法および甲状腺腫瘍の性状の判別用マーカーセットに関する。
甲状腺に結節(腫瘍)が生じる疾患は、一般に甲状腺腫瘍と呼ばれている。甲状腺腫瘍は良性腫瘍である場合が非常に多いが、中には甲状腺がんと呼ばれる悪性腫瘍の場合もある。甲状腺腫瘍の診断では、触診や超音波検査などによって甲状腺腫瘍の存在を確認する。そして、甲状腺腫瘍の存在が確認できた場合、その腫瘍が良性であるか悪性であるかなどの性状を判別するために、穿刺吸引により腫瘍から細胞を採取して細胞診が行われる。しかし、細胞診は細胞の観察結果に基づいて行われるので、検査者の経験と技量によって判別結果にばらつきが生じることがある。さらに、濾胞腺腫(良性腫瘍)と濾胞がん(悪性腫瘍)のように、熟練した検査者であっても判別が困難な症例もある。
甲状腺がんの検査には、血液中の甲状腺ホルモンや腫瘍マーカーを調べる血液検査もある。例えば、甲状腺がんが髄様がんである場合は、甲状腺ホルモンのカルシトニン、腫瘍マーカーのCEAの値が上昇することが知られている。しかし、甲状腺がんを発症すれば、必ず腫瘍マーカーの値が上昇するとは限らないので、血液検査の結果のみで甲状腺がんを診断することはできない。
他方で、近年、新たな甲状腺腫瘍の性状の判別方法として、遺伝子発現情報に基づく方法が研究開発されている。例えば、Veracyte社より、Afirma (登録商標) Thyroid FNA Analysisというマイクロアレイが現在市販されている。また、非特許文献1には、このThyroid FNA Analysisを用いて甲状腺腫瘍の性状を判別した結果が開示されている。具体的には、細胞診では良性または悪性の判別がなされなかった検体(n=265)について、Thyroid FNA Analysisを用いて142遺伝子の発現情報を解析して、良性または悪性疑いに分類している。また、この分類結果と、組織病理学診断による結果とを比較している。組織病理学診断では265検体のうち85検体を悪性と判別しており、該85検体について遺伝子発現解析では78検体を悪性疑いと判別した。すなわち、分類性能としては、感度が92%、特異度が52%、陽性的中率(PPV)が47%、および陰性的中率(NPV)が93%であった。また、細胞診では判別が特に困難である濾胞性腫瘍(n=105)を濾胞性腺腫(良性)と濾胞がん(悪性)とに分類した場合の性能を計算すると、感度が95%、特異度が48%、PPVが30%、およびNPVが98%であった。
Alexander EK.ら、Preoperative Diagnosis of Benign Thyroid Nodules with Indeterminate Cytology. N Eng J Med, 2012; 367: 705-715
遺伝子発現の解析結果に基づいて甲状腺腫瘍の性状を判別することは客観的な手段であり、判別が困難な腫瘍にも有用と考えられる。しかし、現在市販されているThyroid FNA Analysisを用いた判別では、上記のとおり特異度およびPPVが非常に低い。他方で、甲状腺腫瘍は良性腫瘍である場合が非常に多い。そのため、特異度およびPPVが低い判別方法では、実際は良性腫瘍である多数の被験者の腫瘍を誤って悪性腫瘍と判断してしまう。結果として、良性腫瘍の被験者に対して不要な治療を施すおそれがある。
そこで、本発明は、甲状腺腫瘍の性状をより高精度に判別することを可能にする新規マーカーを見出して、そのようなマーカーを利用する甲状腺腫瘍の性状の判別を補助する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、濾胞腺腫および濾胞がんのそれぞれの病変組織における遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、本発明者らは、良性腫瘍および悪性腫瘍のそれぞれにおいて発現が亢進している遺伝子群を、新規マーカーセットとして同定した。そして、本発明者らは、このマーカーセットについて測定した発現量に基づいて、甲状腺腫瘍が良性腫瘍であるか悪性腫瘍であるかを判別できること、および、悪性腫瘍が予後不良の腫瘍であるか否かを判別できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、甲状腺腫瘍を有する被験者から採取された生体試料における、AIF1L (allograft inflammatory factor 1-like)、CDH16 (cadherin 16, KSP-cadherin)、FAM162B (family with sequence similarity 162, member B)、FGFR2 (fibroblast growth factor receptor 2)、GJB6 (gap junction protein, beta 6, 30kDa)、KCNJ13 (potassium inwardly-rectifying channel, subfamily J, member 13)、KIAA1467、SLC25A15 (solute carrier family 25 (mitochondrial carrier; ornithine transporter) member 15)、TFCP2L1 (transcription factor CP2-like 1)、TFF3 (trefoil factor 3)およびTMEM171 (transmembrane protein 171)からなる第1の遺伝子群から選択される少なくとも6つの遺伝子の発現量を測定する第1測定工程、
C4orf10 (chromosome 4 open reading frame 10)、CCDC8 (coiled-coil domain containing 8)、CD22 (CD22 molecule)、FAM125A (family with sequence similarity 125, member A)、FAM174B (family with sequence similarity 174, member B)、FBF1 (Fas (TNFRSF6) binding factor 1)、GLB1L2 (galactosidase, beta 1-like 2)、LOC644613、MAP2K2 (mitogen-activated protein kinase kinase 2)、MTG1 (mitochondrial GTPase 1 homolog)、PFKL (phosphofructokinase, liver)、PTDSS2 (phosphatidylserine synthase 2)、SF3A2 (splicing factor 3a, subunit 2, 66kDa)、SLC2A11 (solute carrier family 2 (facilitated glucose transporter), member 11)、VILL (villin-like)、VSIG2 (V-set and immunoglobulin domain containing 2)およびWDR18 (WD repeat domain 18)からなる第2の遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子の発現量を測定する第2測定工程、
ANXA1 (annexin A1)、C13orf33 (chromosome 13 open reading frame 33)、CYP1B1 (cytochrome P450, family 1, subfamily B, polypeptide 1)、FAP (fibroblast activation protein, alpha)、FN1 (fibronectin 1)、IL17RD (interleukin 17 receptor D)、PDLIM4 (PDZ and LIM domain 4)、RUNX2 (runt-related transcription factor 2)およびTIMP1 (TIMP metallopeptidase inhibitor 1)からなる第3の遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子の発現量を測定する第3測定工程、および
上記の第1、第2および第3測定工程の結果に基づいて、上記の被験者における甲状腺腫瘍が良性腫瘍であるかまたは悪性腫瘍であるかを判別する工程
を含む、甲状腺腫瘍の性状の判別を補助する方法を提供する。
また、本発明は、AIF1L、CDH16、FAM162B、FGFR2、GJB6、KCNJ13、KIAA1467、SLC25A15、TFCP2L1、TFF3およびTMEM171からなる第1の遺伝子群から選択される少なくとも6つの遺伝子、
C4orf10、CCDC8、CD22、FAM125A、FAM174B、FBF1、GLB1L2、LOC644613、MAP2K2、MTG1、PFKL、PTDSS2、SF3A2、SLC2A11、VILL、VSIG2およびWDR18からなる第2遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子、および
ANXA1、C13orf33、CYP1B1、FAP、FN1、IL17RD、PDLIM4、RUNX2およびTIMP1からなる第3の遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子
を含む、甲状腺腫瘍の性状の判別用マーカーセットを提供する。
本発明の甲状腺腫瘍の性状の判別を補助する方法(以下、単に「方法」ともいう)によれば、甲状腺腫瘍が良性腫瘍であるか悪性腫瘍であるかを高い精度で判別することを可能にする。また、本発明によれば、この方法に用いられるマーカーセットが提供される。
濾胞性腫瘍(Learning set)の検体について、マイクロアレイによって測定した37遺伝子の発現量をクラスター解析した結果を示す図である。 濾胞性腫瘍(Validation set)の検体について、マイクロアレイによって測定した37遺伝子の発現量をクラスター解析した結果を示す図である。 濾胞性腫瘍以外の甲状腺腫瘍を含む検体について、マイクロアレイによって測定した37遺伝子の発現量をクラスター解析した結果を示す図である。 甲状腺腫瘍の性状の判定装置の一例を示した概略図である。 図4の判定装置の機能構成を示すブロック図である。 図4に示された判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。 図4に示された判定装置を用いた甲状腺腫瘍の性状の判定のフローチャートである。 本発明の方法による甲状腺腫瘍の性状の判定を示す表である。
本発明の方法では、まず、甲状腺腫瘍を有する被験者から採取された生体試料における、上記の第1、第2および第3の遺伝子群のそれぞれから選択される遺伝子の発現量を測定する。より詳しくは、第1の遺伝子群から選択される少なくとも6つの遺伝子の発現量を測定し、第2の遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子の発現量を測定し、そして、第3の遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子の発現量を測定する。以下、第1、第2および第3の遺伝子群のそれぞれについての測定工程を、第1測定工程、第2測定工程および第3測定工程とも呼ぶ。
本明細書において、「甲状腺腫瘍」とは、甲状腺に生じた結節(腫瘍)を意味し、良性腫瘍および悪性腫瘍の両方を含むことを意図する。なお、当該技術において、甲状腺腫瘍は、甲状腺結節または結節性甲状腺腫とも呼ばれる。
「甲状腺腫瘍の性状の判別」とは、甲状腺腫瘍が良性腫瘍または悪性腫瘍のいずれであるかの区別を意味する。また、甲状腺腫瘍が悪性腫瘍である場合は、該腫瘍が予後不良の悪性腫瘍または予後良好の悪性腫瘍のいずれであるかの区別を含むこともできる。
ここで、予後不良の悪性腫瘍とは、悪性の甲状腺腫瘍の中でも悪性度、再発および/または転移の可能性が高く、結果として患者の死亡率が高い悪性腫瘍をいう。また、予後良好の悪性腫瘍とは、悪性の甲状腺腫瘍の中でも悪性度、再発および/または転移の可能性が低く、結果として患者の死亡率が低い悪性腫瘍をいう。予後不良の悪性腫瘍と予後良好の悪性腫瘍とでは治療方針が大きく異なる。そのため、予後不良の悪性腫瘍と予後良好の悪性腫瘍を区別は、治療方針の決定において有用な情報となる。
本明細書において、「甲状腺腫瘍を有する被験者」とは、触診および超音波検査などによって、甲状腺腫瘍を有することが確認されたかまたは甲状腺腫瘍を有することが強く疑われる被験者を意味する。
本実施形態において、生体試料は、上記の被験者の甲状腺由来の細胞を含む、生体由来の試料であれば特に制限されないが、特に甲状腺の病変部位由来の細胞を含む、生体由来の試料が好ましい。生体由来の試料としては、例えば、血液、血清、血漿、リンパ液、穿刺吸引により採取した細胞、手術により採取した組織などが挙げられる。また、被検者から採取した細胞または組織を培養して得られた培養物を生体試料として用いることもできる。
本明細書において、「遺伝子の発現量」とは、遺伝子から転写されたRNAの量またはその量を反映する物質の量を意味する。したがって、本発明の実施形態においては、生体試料から核酸(特にRNA)を抽出する。そして、この核酸に含まれる上記の各遺伝子由来のRNAの量または該RNAを逆転写して得られるcDNAもしくは該cDNAをIVT増幅して得られるcRNAの量を、遺伝子の発現量として測定する。なお、遺伝子から転写されるRNAは微量であることが多いので、該RNAから得られるcDNAまたはcRNAの量を測定することが好ましい。
生体試料からRNAを含む核酸を抽出する方法は、当該技術において公知である。例えば、生体試料と、細胞または組織を可溶化する界面活性剤(例えばコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなど)を含む処理液とを混合し、得られた混合液に物理的処理(撹拌、ホモジナイズ、超音波破砕など)を施して、生体試料に含まれるRNAを該混合液中に遊離させることによって、RNAを抽出することができる。好ましくは、遊離したRNAを含む混合液を遠心分離して上清を回収し、この上清をフェノール/クロロホルム抽出することによってRNAを精製する。なお、生体試料からのRNAの抽出および精製は、市販のキットを用いて行うこともできる。
当該技術において、上記の各遺伝子の塩基配列自体は公知である。これらの塩基配列は、例えば米国国立医学図書館の国立生物情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)により提供されるデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)などの公知のデータベースから知ることができる。上記の遺伝子についてのNCBIアクセッション番号およびProbe Set ID番号を、表1に示す。なお、これらのID番号は、2012年11月16日時点での最新の番号である。また、Probe Set ID番号は、GeneChip (登録商標) Human Genome U133 Plus 2.0 Array (Affymetrix社)に搭載されているプローブを特定するための番号である。各Probe Set IDで表されるプローブセットに含まれる各プローブの塩基配列を、配列番号1〜419で示す。各プローブの塩基配列については、Affymetrix社のホームページ(http://www.affymetrix.com/analysis/index.affx)などから得ることができる。
上記の37遺伝子は、良性腫瘍および悪性腫瘍のそれぞれの症例において発現が亢進していることが本発明者らにより見出された遺伝子群である。具体的には、第1の遺伝子群は、その発現が、良性腫瘍の症例において悪性腫瘍の症例よりも発現が亢進している遺伝子群である。また、第2および第3の遺伝子群は、その発現が、悪性腫瘍の症例において良性腫瘍の症例よりも発現が亢進している遺伝子群である。さらに、第2の遺伝子群の発現は、特に予後不良の悪性腫瘍の症例で亢進しており、第3の遺伝子群の発現は、特に予後良好の悪性腫瘍で亢進していることが本発明者らにより見出されている。
本発明の実施形態において、上記の第1、第2および第3の各遺伝子群のうち、いずれの遺伝子の発現量を測定するかは特に限定されず、任意に選択することができる。一例として、上記第1の遺伝子群のうち、少なくともAIF1L、FAM162B、FGFR2、GJB6、KIAA1467およびTFF3の発現量を測定し、上記第2の遺伝子群のうち、少なくともFAM174B、MAP2K2、MTG1、PFKL、PTDSS2、SF3A2およびWDR18の発現量を測定し、上記第3の遺伝子群のうち、少なくともANXA1、CYP1B1、FAP、IL17RD、PDLIM4、RUNX2およびTIMP1の発現量を測定することが挙げられるが、本発明の方法はこの例に限定されない。
本発明の実施形態において、上記の遺伝子の発現量を測定する方法は特に限定されず、当該技術において公知の測定方法から選択することができるが、好ましくは、マイクロアレイまたは核酸増幅法を用いた測定である。
本発明の方法に用いられるマイクロアレイは、上記の各遺伝子から転写されたRNAまたは該RNAに由来するcDNAもしくはcRNA(以下、これらを「標的核酸分子」ともいう)と特異的にハイブリダイズできる、20〜25ヌクレオチド程度の核酸プローブを適切な基板上に固定したチップであれば特に限定されない。なお、プローブは上記の各遺伝子の塩基配列に基づいて適宜設計できる。また、マイクロアレイは、当該技術において公知の方法により作製することができる。本発明の実施形態においては、上記の標的核酸分子と特異的にハイブリダイズできるプローブが搭載されている限り、市販のマイクロアレイを用いてもよい。そのようなマイクロアレイとして、例えば、Affymetrix社のGeneChip(登録商標)が挙げられる。
本明細書において、「特異的にハイブリダイズできる」とは、プローブがストリンジェントな条件下で標的核酸分子にハイブリダイズできることを意味する。また、「ストリンジェントな条件」とは、上記の標的核酸分子に、該標的核酸分子以外の核酸分子よりも検出可能に大きい程度(例えば、バックグラウンドの少なくとも2倍を超える)でハイブリダイズできる条件をいう。なお、ストリンジェントな条件は、通常、配列依存性であり、そして種々の環境において異なる。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHでの特定の配列の熱的融点(thermal melting point:Tm)よりも、約5℃低くなるように選択される。このTmは、規定されたイオン強度、pHおよび核酸組成の下で標的核酸分子の塩基配列と相補的なプローブの50%が平衡してハイブリダイズする温度である。このような条件は、当該技術において公知のポリヌクレオチド同士のハイブリダイゼーション法に用いられる条件であればよい。具体的には、pH 7.0〜9.0で塩濃度が約1.5 M Naイオンより低い、より具体的には、約0.01〜1.0 M Naイオン濃度(または他の塩)であり、少なくとも約30℃の条件が挙げられる。例えば、マイクロアレイ法におけるストリンジェントな条件は、37℃で50%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中でのハイブリダイゼーション、および60〜65℃での0.1×SSC中での洗浄を含む。
マイクロアレイを用いる場合は、上記の標的核酸分子は、当該技術において公知の標識物質により標識されていることが好ましい。標的核酸分子を標識することにより、マイクロアレイ上のプローブからのシグナルの測定が容易になる。本発明の実施形態においては、生体試料から抽出したRNAを標識してもよいが、該RNAに由来するcDNAまたはcRNAを標識することが好ましい。標識物質としては、蛍光物質、ビオチンなどのハプテン、放射性物質などが挙げられる。蛍光物質としては、Cy3、Cy5、FITC、Alexa Fluor (商標)などが挙げられる。なお、RNA、cDNAおよびcRNAをこれらの標識物質で標識する方法は当該技術において公知である。
マイクロアレイによる測定では、遺伝子の発現量は、蛍光強度、発光強度、電流量などのプローブからのシグナルとして得られる。シグナルの検出は、通常のマイクロアレイ測定装置に備えられたスキャナーにより行うことができる。スキャナーとしては、例えば、GeneChip(登録商標)Scanner3000 7G (Affymetrix社)、Illumina (登録商標) BeadArray Reader (Illumina社)などが挙げられる。
本発明の方法に適する核酸増幅法としては、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、鎖置換反応法、リガーゼ連鎖反応法、転写増幅法などが挙げられる。これらの核酸増幅法自体は、いずれも当該技術において公知である。PCR法としては、例えばリアルタイムRT-PCR法などが挙げられる。鎖置換反応法としては、例えばリアルタイムRT-LAMP法(例えば、米国特許6410278号明細書を参照されたい)などが挙げられる。転写増幅法としては、例えばTAS法などが挙げられる。これらの方法の中でも、リアルタイムRT-PCR法およびリアルタイムRT-LAMP法が好ましい。
核酸増幅法に用いるプライマーは、上記の標的核酸分子に特異的にハイブリダイズして増幅できるプライマーであれば、特に限定されない。なお、PCR法におけるストリンジェントな条件としては、例えば、pH 7.0〜9.0、0.01〜0.1 MのTris HCl、0.05〜0.15 M Kイオン濃度(または他の塩)、少なくとも約55℃の条件が挙げられる。そのようなプライマーは上記の各遺伝子の塩基配列に基づいて適宜設計できる。また、プライマーは核酸増幅法の種類に応じて設計されることが好ましい。プライマーの長さは通常5〜50ヌクレオチド、好ましくは10〜40ヌクレオチドである。なお、プライマーは当該技術において公知の核酸合成方法により製造することができる。
上記のプライマーは、当該技術において公知の標識物質で標識されていてもよい。プライマーの標識は、放射活性元素または非放射活性分子を用いて行うことができる。放射活性同位体としては、32P、33P、35S、3Hおよび125Iが挙げられる。非放射活性物質としては、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンまたはジゴキシゲニンのようなリガンド、ハプテン、色素、および、化学発光性、生物発光性、蛍光またはリン光性の試薬のような発光性試薬が挙げられる。
核酸増幅法の反応条件は、核酸増幅法の種類、プライマーの塩基配列などによって異なるが、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版) (Sambrook, J.ら、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1989))などに記載の方法を参照して適宜設定することができる。
上記のようにして遺伝子発現量を測定した後、本発明の方法では、第1、第2および第3測定工程の結果に基づいて、上記の被験者における甲状腺腫瘍が良性腫瘍であるかまたは悪性腫瘍であるかを判別する。ここで、良性腫瘍とは、当該技術において良性であることが知られている甲状腺腫瘍であれば特に限定されないが、好ましくは、濾胞腺腫、腺腫様結節および嚢胞の少なくとも1つを意味する。また、悪性腫瘍とは、当該技術において悪性であることが知られている甲状腺腫瘍であれば特に限定されないが、好ましくは、濾胞がん、乳頭がん、低分化がんおよび未分化がんの少なくとも1つを意味する。なお、悪性腫瘍には、予後不良の悪性腫瘍および予後良好の悪性腫瘍の両方が含まれる。
本発明の実施形態においては、第1、第2および第3測定工程のそれぞれで得られた遺伝子の発現量に基づいて、第1、第2および第3の遺伝子群のそれぞれから選択された遺伝子の発現状態を比較し、その結果により上記の判別を行うことが好ましい。すなわち、第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しているかまたは第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態と同等であり、且つ第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しているかまたは第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態と同等である場合、被験者の甲状腺腫瘍を良性腫瘍と判別する。反対に、第2または第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進している場合、被験者の甲状腺腫瘍を悪性腫瘍と判別する。
本発明において、「遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態」とは、所定の遺伝子群から選択され、発現量を測定された複数の遺伝子における遺伝子発現の程度または傾向を示す指標を意味する。そのような発現状態としては、例えば、該複数の遺伝子における発現量(測定値)の代表値が挙げられる。代表値は、該複数の遺伝子における遺伝子発現の分布を要約する統計量であれば、特に制限されない。代表値としては、例えば、平均値、中央値、最大値、最頻値などが挙げられるが、それらの中でも平均値が特に好ましい。また、「発現状態が亢進している」とは、ある遺伝子群から選択され、発現量を測定された複数の遺伝子における発現量の代表値が、残りの遺伝子群のそれぞれから選択され、発現量を測定された複数の遺伝子における発現量の代表値よりも高いことを意味する。したがって、遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態として、発現量の平均値を用いる場合、発現状態の比較は次のようにして行われる。被験者の生体試料について、第1の遺伝子群から選択された少なくとも6つの遺伝子について発現量の総和を算出し、算出した値を、選択された遺伝子の数で割ることで平均値を取得する。同様の計算を、第2および第3の遺伝子群のそれぞれから選択された少なくとも7つの遺伝子についても行う。そして、得られた3つの平均値を比較する。その結果、例えば、第1の遺伝子群から選択された遺伝子についての平均値が最も高かった場合、該被験者の甲状腺腫瘍を良性腫瘍と判別する。反対に、第2または第3の遺伝子群から選択された遺伝子についての平均値が最も高かった場合、該被験者の甲状腺腫瘍を悪性腫瘍と判別する。
本発明の実施形態においては、病理診断により性状が確定された良性腫瘍および悪性腫瘍の症例(対照試料)について予め得た発現量データを利用して、被験者の生体試料についての各遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態を取得してもよい。例えば、対照試料について予め得た発現量データを用いて多変量解析を行うことで、各遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態を反映する又は予測する式を取得できる。取得した式を用いて被験者の生体試料についての各遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態の情報を取得し、この情報に基づき各試料の判別を行うことができる。多変量解析としては、好ましくは判別分析が挙げられる。判別分析としては、例えば、フィッシャーの線形判別、マハラノビス距離に基づく判別、ユークリッド距離に基づく判別、多群判別、変数選択および正準判別などが挙げられ、それらの中でもユークリッド距離に基づく判別が特に好ましい。このユークリッド距離は、対照試料と被験者の生体試料との間の遺伝子発現パターンの類似性を示す。ユークリッド距離は、次にようにして得ることができる。まず、上記の対照試料について予め得た発現量データに基づいて、該対照試料を当該技術において公知のクラスター解析により3つの群に分ける。ここで、便宜上、該3つの群をそれぞれ、第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現が優勢である「Cluster 1」、第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現が優勢である「Cluster 2」および第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現が優勢である「Cluster 3」と称する。次いで、各群の発現量データをプロットして、各群の平均値を算出する。そして、各群の平均値と被験者の生体試料について得た発現量データとについて、対照試料と被験者の生体試料との間のユークリッド距離が算出される。
上記のユークリッド距離を用いる場合、「発現状態が亢進している」とは、あるClusterのデータと上記の被験者のデータとのユークリッド距離が、残りのClusterのデータと該被験者のデータとのユークリッド距離よりも近いことを意味する。
発現状態の比較は次のようにして行われる。算出された3つのユークリッド距離を比較して、例えば、Cluster 1とのユークリッド距離がCluster 2とのユークリッド距離よりも近かった場合またはこれらのユークリッド距離が同等の場合であって、且つ、Cluster 1とのユークリッド距離がCluster 3とのユークリッド距離よりも近かった場合またはこれらのユークリッド距離が同等の場合、該被験者の甲状腺腫瘍を良性腫瘍と判別する。反対に、Cluster 2またはCluster 3とのユークリッド距離が最も近かった場合、該被験者の甲状腺腫瘍を悪性腫瘍と判別する。
本発明の別の実施形態においては、第1、第2および第3測定工程のそれぞれで得られた遺伝子の発現量に基づいて、第1、第2および第3の遺伝子群のそれぞれから選択された遺伝子の発現状態を比較し、その結果により被験者の甲状腺腫瘍の性状を次のように判別することができる。すなわち、第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しているかまたは第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態と同等であり、且つ第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しているかまたは第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態と同等である場合、被験者の甲状腺腫瘍を良性腫瘍と判別する。あるいは、第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しており、且つ第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しているかまたは第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態と同等である場合、被験者の甲状腺腫瘍を第1の悪性腫瘍と判別する。あるいは、第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態および第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進している場合、被験者の甲状腺腫瘍を第2の悪性腫瘍と判別する。なお、各遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態の比較およびその結果による判別については、これまでに述べたことと同様である。
本明細書において、「第1の悪性腫瘍」は予後不良の悪性腫瘍を意味し、「第2の悪性腫瘍」は予後良好の悪性腫瘍を意味する。予後不良の悪性腫瘍は、当該技術において予後不良であることが知られている悪性の甲状腺腫瘍であれば特に限定されないが、好ましくは、未分化がん、低分化がん、並びに、広汎浸潤および/または脈管侵襲を有する濾胞がんの少なくとも1つが挙げられる。また、予後良好の悪性腫瘍は、当該技術において予後良好であることが知られている悪性の甲状腺腫瘍であれば特に限定されないが、好ましくは、乳頭がん、並びに、広汎浸潤および脈管侵襲を有さない濾胞がんの少なくとも1つが挙げられる。
本発明の範囲には、甲状腺腫瘍の性状の判別用マーカーセット(以下、「マーカーセット」ともいう)も含まれる。本発明のマーカーセットは、上記の第1の遺伝子群から選択される少なくとも6つの遺伝子、上記の第2遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子、および上記の第3の遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子を含む。
本発明の実施形態において、上記の第1、第2および第3の各遺伝子群のうち、いずれの遺伝子をマーカーとして用いるかは特に限定されず、任意に選択することができる。一例として、上記第1の遺伝子群のうち、少なくともAIF1L、FAM162B、FGFR2、GJB6、KIAA1467およびTFF3、上記第2の遺伝子群のうち、少なくともFAM174B、MAP2K2、MTG1、PFKL、PTDSS2、SF3A2およびWDR18、および上記第3の遺伝子群のうち、少なくともANXA1、CYP1B1、FAP、IL17RD、PDLIM4、RUNX2およびTIMP1を含むマーカーセットが挙げられるが、本発明のマーカーセットはこの例に限定されない。
本発明の実施形態では、上記の被験者から採取した生体試料から調製したRNAを含む試
料における遺伝子の発現量を解析し、得られた発現量に基づいて該被験者の甲状腺腫瘍の性状を判別することができる。なお、各マーカーについての発現量の測定およびその解析については、これまでに述べたことと同様である。
本発明の範囲には、甲状腺腫瘍の性状の判別用キットも含まれる(以下、「本発明のキット」ともいう)。すなわち、本発明は、AIF1L、CDH16、FAM162B、FGFR2、GJB6、KCNJ13、KIAA1467、SLC25A15、TFCP2L1、TFF3およびTMEM171からなる第1の遺伝子群から選択される少なくとも6つの遺伝子の発現量、
C4orf10、CCDC8、CD22、FAM125A、FAM174B、FBF1、GLB1L2、LOC644613、MAP2K2、MTG1、PFKL、PTDSS2、SF3A2、SLC2A11、VILL、VSIG2およびWDR18からなる第2遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子の発現量、および
ANXA1、C13orf33、CYP1B1、FAP、FN1、IL17RD、PDLIM4、RUNX2およびTIMP1からなる第3の遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子の発現量
を測定するためのプローブセットまたはプライマーセットを含む、甲状腺腫瘍の性状の判別用キットを提供する。
本発明のキットは、上記の本発明の方法に好適に用いることができる。なお、本発明のキットに含まれるプローブセットおよびプライマーセットについては、上記の標的核酸分子と特異的にハイブリダイズできるプローブまたはプライマーについて述べたことと同様である。また、本発明のキットは、上記のプローブを適切な基板上に固定したマイクロアレイの形態であってもよい。
本発明の実施形態において、上記の第1、第2および第3の各遺伝子群のうち、いずれの遺伝子の発現量を測定するためのプローブまたはプライマーをキットに含めるかは特に限定されず、任意に選択することができる。一例として、上記第1の遺伝子群のうち、少なくともAIF1L、FAM162B、FGFR2、GJB6、KIAA1467およびTFF3の発現量、上記第2の遺伝子群のうち、少なくともFAM174B、MAP2K2、MTG1、PFKL、PTDSS2、SF3A2およびWDR18の発現量、および上記第3の遺伝子群のうち、少なくともANXA1、CYP1B1、FAP、IL17RD、PDLIM4、RUNX2およびTIMP1の発現量を測定するためのプローブセットまたはプライマーセットを含むキットが挙げられるが、本発明のキットはこの例に限定されない。
上述の甲状腺腫瘍の性状の判別は、例えば、図4に示される判定装置1によって行なうことができる。以下、添付の図面を参照しながら、より詳細に説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
図4は、本発明の一実施形態に係る装置の概略説明図である。図4に示された判定装置1は、測定装置2と、当該測定装置2と接続されたコンピュータシステム3とを含んでいる。
本実施形態において、測定装置2は、マイクロアレイ上のプローブと標的核酸分子とのハイブリダイゼーションに基づくシグナルを検出するマイクロアレイスキャナーである。測定装置2により、第1の遺伝子群、第2の遺伝子群および第3の遺伝子群のそれぞれから選択される遺伝子の発現量に対応するシグナルが検出される。具体的には、本実施形態において、上記のシグナルは、光学的情報である。光学的情報としては、例えば、蛍光シグナルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。この場合、標的核酸分子と接触させた後のマイクロアレイを測定装置2にセットすると、測定装置2は、マイクロアレイ上のプローブに結合した標的核酸分子に基づく光学的情報を取得し、得られた光学的情報をコンピュータシステム3に送信する。
前記マイクロアレイスキャナーは、標的核酸分子に基づくシグナルの検出が可能なものであればよい。このシグナルは、上記の測定用試料中のcDNAまたはcRNAの標識に用いられた標識物質によって異なるので、マイクロアレイスキャナーは、標識物質の種類に応じて、当該標識物質から生じるシグナルを検出するのに適したものを適宜選択することができる。例えば、標識物質が放射性物質である場合、測定装置2として、当該放射性物質から生じる放射線を検出可能なマイクロアレイスキャナーを用いることができる。
なお、遺伝子の発現量を核酸増幅法により検出する場合、測定装置2は、核酸増幅検出装置であってもよい。この場合、生体試料由来のDNA、核酸増幅用の酵素、プライマーなどを含む反応液を測定装置2にセットし、核酸増幅法によって反応液中の核酸を増幅する。測定装置2は、増幅反応によって反応液から生じる蛍光や反応液の濁度などの光学的情報を取得し、この光学的情報をコンピュータシステム3に送信する。
コンピュータシステム3は、コンピュータ本体3aと、入力デバイス3bと、検体情報、判定結果などを表示する表示部3cとを含む。コンピュータシステム3は、測定装置2から光学的情報を受信する。そして、コンピュータシステム3のプロセッサは、該光学的情報に基づいて、甲状腺腫瘍の性状を判定するプログラムを実行する。
図5は、図4に示された判定装置の機能構成を示すブロック図である。コンピュータシステム3は、図5に示されるように、取得部301と、記憶部302と、算出部303と、判定部304と、出力部305とを備える。取得部301は、測定装置2と、ネットワークを介して通信可能に接続されている。なお、算出部303と判定部304とは、制御部306を構成している。取得部301は、測定装置2から送信された情報を取得する。記憶部302は、甲状腺腫瘍の性状を判別するプログラムを記憶する。算出部303は、取得部301で取得された情報を用い、蛍光強度などを算出し、各遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態を解析する。上述したとおり、遺伝子の発現状態としては、例えば選択された複数の遺伝子における発現量(測定値)の代表値が挙げられる。判定部304は、算出部303によって解析された遺伝子の発現状態と、記憶部302に記憶された判定基準とに基づいて甲状腺腫瘍の性状を判定する。出力部305は、判定部304による判定結果を出力する。
図6は、図4に示された判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図6に示されるように、コンピュータ本体3aは、CPU(Central Processing Unit)30と、ROM(Read Only Memory)121と、ROM32と、ハードディスク33と、入出力インターフェイス34と、読出装置35と、通信インターフェイス36と、画像出力インターフェイス37とを備えている。CPU30、ROM31、RAM(Random Access Memory)32、ハードディスク33、入出力インターフェイス34、読出装置35、通信インターフェイス36および画像出力インターフェイス37は、バス38によってデータ通信可能に接続されている。
CPU30は、ROM31に記憶されているコンピュータプログラムおよびROM32にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。CPU30がアプリケーションプログラムを実行することにより、上述した各機能ブロックが実現される。これにより、コンピュータシステムが、甲状腺腫瘍の性状の判定装置としての端末として機能する。
ROM31は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されている。ROM31には、CPU30によって実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータが記録されている。ROM32は、SRAM、DRAMなどによって構成されている。ROM32は、ROM31およびハードディスク33に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。ROM32はまた、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU30の作業領域として利用される。
ハードディスク33は、CPU30に実行させるためのオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム(甲状腺腫瘍の性状の判定のためのコンピュータプログラム)などのコンピュータプログラムおよび当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。
読出装置35は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブなどによって構成されている。読出装置35は、可搬型記録媒体40に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。
入出力インターフェイス34は、例えば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインターフェイスと、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインターフェイスと、D/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインターフェイスとから構成されている。入出力インターフェイス34には、キーボード、マウスなどの入力デバイス3bが接続されている。操作者は、当該入力デバイス3bを使用することにより、コンピュータ本体3aにデータを入力することが可能である。
通信インターフェイス36は、例えば、Ethernet(登録商標)インターフェイスなどである。コンピュータシステム3は、通信インターフェイス36により、測定装置2からの光学的情報の受信およびプリンタへの印刷データの送信が可能である。
画像出力インターフェイス37は、LCD、CRTなどで構成される表示部3cに接続されている。これにより、表示部3cは、CPU30から与えられた画像データに応じた映像信号を出力することができる。表示部3cは、入力された映像信号にしたがって画像(画面)を表示する。
つぎに、判定装置1による判定の処理手順を説明する。図7は、図4に示された判定装置を用いた判定のフローチャートである。ここでは、マイクロアレイ上のプローブに結合した測定対象の核酸に基づく蛍光情報を用い、「遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態」として平均値を用いて判定を行なう場合を例として挙げて説明するが、本発明は、かかる実施形態のみに限定されるものではない。
まず、ステップS1−1において、判定装置1の取得部301は、測定装置2から蛍光情報を取得する。そして、ステップS1−2において、算出部303は、取得部301が取得した蛍光情報から蛍光強度を算出し、記憶部302に送信する。
つぎに、ステップS1−3において、算出部303は、記憶部302に記憶された前記蛍光強度に基づき、選択された複数の遺伝子における発現量の平均値を算出する。
その後、ステップS1−4において、判定部304は、算出部303で算出された平均値と、記憶部302に記憶された判定基準とを用い、甲状腺腫瘍の性状を判定する。判定結果は、出力部305に送信される。
その後、ステップS1−5において、出力部305は、判定結果を出力し、表示部3cに表示させたり、プリンタに印刷させたりする。
図8は、本発明の方法による甲状腺腫瘍の性状の判定を示す表である。図の左列に示す条件を満たす場合は、図の右列に示す判定結果が取得される。なお、図中、「>」の不等号は、左辺に示す発現状態が右辺に示す発現状態よりも亢進していることを示す。「≧」の等号つき不等号は、左辺に示す発現状態が右辺に示す発現状態よりも亢進しているか、またはこれらが同等であることを示す。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
生体試料の調製
以下の実施例では、次のようにして得た生体試料を用いた。まず、甲状腺腫瘍を有する患者から手術により摘出された甲状腺病変部位の組織について病理診断を行い、これらを腺腫様甲状腺腫、濾胞腺腫、濾胞がん(低分化がんを含む)、および乳頭がんのいずれかの症例に分類した。これらの組織を生体試料として、‐80℃にて凍結保存した。
実施例1
1.マイクロアレイによる遺伝子発現量の測定
Learning setとして、濾胞性腫瘍と病理分類された25症例(濾胞腺腫11症例および濾胞がん14症例)の組織検体を用いた。各検体から抽出したRNA (100〜200 ng)を、GeneChip (登録商標) 3' IVT Express Kit (Affymetrix社)により増幅した。増幅したRNAをGeneChip (登録商標) Human Genome U133 Plus 2.0 Array (Affymetrix社)に添加して、65℃にて16時間反応させて、該アレイ上のプローブとハイブリダイゼーションさせた。その後、GeneChip (登録商標) Hybridization, Wash, and Stain Kit (Affymetrix社)を用いて、ハイブリダイズしたプローブを染色した。続いて、Genechip (登録商標) Scanner 3000 (Affymetrix社)を用いて発光シグナルを検出した。
2.マーカー抽出
マイクロアレイにより得られたシグナル値データ(CELLファイル)を、Expression Console (Affymetrix社)を用いてMAS5で正規化した。その後、機能不明で名前がついていないプローブを除去した。遺伝子が重複しているプローブについては、シグナルが最も高値のプローブ以外を除去した。残ったプローブのシグナル値について、底を2とするLOG変換を行い、各プローブのCV値を算出し、上記25症例(濾胞腺腫11症例および濾胞がん14症例)の間で変動の大きかった上位5000遺伝子を抽出した。5000遺伝子についてZスコア化を行い、その結果をもとに、cluster 3.0 (オープンソース、次のウェブサイトより入手;http://bonsai.hgc.jp/~mdehoon/software/cluster/)を用いて、教師無しクラスター解析を実施した。具体的な解析手順は次のとおりである。Cluster 3.0の階層Clusterリングタブを開き、[Genes]の[Cluster]および[Arrays]の[Cluster]にチェックを入れ、Similarity Metricは[Genes]および[Arrays]ともに[Correlation(Centered)]を選択し、Clustering Methodは[Centroid linkage]を選択して、クラスター解析した。クラスター解析の結果を、Java Treeview(オープンソース、次のウェブサイトより入手;http://sourceforge.net/projects/jtreeview/)を用いて解析した。5000遺伝子を用いたクラスター解析の結果、上記の25症例は3つの群に分類されることが判明した(Cluster 1、Cluster 2およびCluster 3)。
次に、遺伝子を絞るため、各群について発現が亢進している遺伝子として、遺伝子側の樹形図に従って37遺伝子を抽出した。そして、抽出した37遺伝子のみで、教師無しクラスター解析を実施したところ、25症例を3つの群に分類できた。この結果を図1に示す。図1中の四角で囲まれた領域が示すように、Cluster 1は、AIF1L、CDH16、FAM162B、FGFR2、GJB6、KCNJ13、KIAA1467、SLC25A15、TFCP2L1、TFF3およびTMEM171の11遺伝子の発現が亢進している群であり、Cluster 2は、C4orf10、CCDC8、CD22、FAM125A、FAM174B、FBF1、GLB1L2、LOC644613、MAP2K2、MTG1、PFKL、PTDSS2、SF3A2、SLC2A11、VILL、VSIG2およびWDR18の17遺伝子の発現が亢進している群であり、Cluster 3は、ANXA1、C13orf33、CYP1B1、FAP、FN1、IL17RD、PDLIM4、RUNX2およびTIMP1の9遺伝子の発現が亢進している群である。以下、Cluster 1, Cluster 2およびCluster 3の各群において発現が亢進している遺伝子群をそれぞれ「第1の遺伝子群」、「第2の遺伝子群」および「第3の遺伝子群」と呼ぶ。なお、各遺伝子のProbe ID番号は、表1に示したとおりである。
25症例のうち、Cluster 1には9症例、Cluster 2には7症例およびCluster 3には9症例が分類された。遺伝子発現量に基づく分類と、病理分類とを照合した。その結果、Cluster 1には良性腫瘍である濾胞腺腫の症例(9症例中8症例)が濃縮され、Cluster 2およびCluster 3には悪性腫瘍である濾胞がんの症例(Cluster 2群:7症例中6症例、Cluster 3群:9症例中7症例)が濃縮されていることがわかった。この結果を、表2に示す(便宜上、Cluster 2に分類される症例の腫瘍を「第1の悪性腫瘍」、Cluster 3に分類される症例の腫瘍を「第2の悪性腫瘍」と称する)。
よって、Cluster 1, 2および3の各群で発現が亢進している遺伝子を組み合わせた合計37遺伝子を用いることにより、濾胞性腫瘍は3つの群に分類され、Cluster 1に分類された症例を濾胞腺腫と判別し、Cluster 2またはCluster 3に分類された症例を濾胞がんと判別することができた。
実施例2
37遺伝子から以下の20遺伝子を抽出して、実施例1と同様にしてクラスター解析を行った。その結果、実施例1と同様に、25症例は3つの群に分類された。本実施例においては、Cluster 1は、上記の第1の遺伝子群のうちAIF1L、FAM162B、FGFR2、GJB6、KCNJ13およびTFF3の6遺伝子の発現が亢進している群であり、Cluster 2は、上記の第2の遺伝子群のうちFAM125A、MAP2K2、MTG1、PFKL、PTDSS2、SF3A2およびWDR18の7遺伝子の発現が亢進している群であり、Cluster 3は、上記の第3の遺伝子群のうちANXA1、CYP1B1、FAP、IL17RD、PDLIM4、RUNX2およびTIMP1の7遺伝子の発現が亢進している群である。25症例のうち、Cluster 1には11症例、Cluster 2には6症例およびCluster 3には8症例が分類された。遺伝子発現量に基づく分類と、病理分類とを照合した結果を、表3に示す。
表3に示されるように、Cluster 1には濾胞腺腫(11症例中8症例)が濃縮され、Cluster2およびCluster 3には濾胞がん(Cluster 2:6症例中5症例、Cluster 3:8症例中6症例)が濃縮されていることがわかった。よって、Cluster 1、Cluster 2およびCluster 3の各群で発現が亢進している遺伝子を組み合わせた合計20遺伝子を用いることにより、濾胞性腫瘍は3つの群に分類され、Cluster 1に分類された症例を濾胞腺腫と判別し、Cluster2またはCluster 3に分類された症例を濾胞がんと判別することができた。
実施例3
実施例1で用いた組織検体とは異なる検体を用いた場合でも、クラスターが再現されるか否かを検証した。Validation setとして、Learning setとは異なる71症例(濾胞腺腫33症例、濾胞がん38症例)の組織検体を用いた。各検体からRNAを抽出し、実施例1と同様にしてマイクロアレイを用いて上記の37遺伝子の発現量を測定した。マイクロアレイにより得られたシグナル値データ(CELLファイル)を、Expression Console (Affymetrix社)を用いてMAS5で正規化した。実施例1で選択した37遺伝子のシグナル値を抽出し、これらについて底を2とするLOG変換を行い、さらにZスコア化を行った。その結果をもとに、cluster3.0を用いて、教師無しのクラスター解析を実施した。なお、クラスター解析の手順は実施例1と同様である。その結果、上記の71症例を3群に分類することができた(図2参照)。71症例のうち、Cluster 1には27症例、Cluster 2には24症例およびCluster 3には20症例が分類された。遺伝子発現量に基づく分類と、病理分類とを照合した結果を、表4に示す。
表4に示されるように、Cluster 1には濾胞腺腫(27症例中21症例)が濃縮され、Cluster2およびCluster 3には濾胞がん(Cluster 2:24症例中18症例、Cluster 3:20症例中14症例)が濃縮されていることがわかった。このように、上記の37遺伝子の発現量解析による甲状腺腫瘍の性状の判別について、良好な再現性が得られた。なお、上記の20遺伝子を用いた場合でも、同様の傾向が認められた。
実施例4
検体として、濾胞腺腫および濾胞がんに、腺腫様甲状腺腫および乳頭がんを加えた場合でも、クラスターが再現されるか否かを検証した。良性腫瘍14症例(腺腫様甲状腺腫8症例および濾胞腺腫6症例)および悪性腫瘍10症例(乳頭がん4症例および濾胞がん6症例)について各組織検体からRNAを抽出し、実施例1と同様にしてマイクロアレイを用いて、上記の37遺伝子の発現量を測定した。なお、クラスター解析の手順は実施例1と同様である。その結果、上記の24症例を3群に分類することができた(図3参照)。24症例のうち、Cluster 1には13症例、Cluster 2には4症例およびCluster 3には7症例が分類された。遺伝子発現量に基づく分類と、病理分類とを照合した結果を、表5に示す。
表5に示されるように、Cluster 1には良性腫瘍(13症例中13症例)が濃縮され、Cluster2およびCluster 3には悪性腫瘍(Cluster 2:4症例中4症例、Cluster 3:7症例中6症例)が濃縮されていることがわかった。このように、上記の37遺伝子を抽出する際に用いた腫瘍組織とは異なる種類の腫瘍組織を検体として用いても、甲状腺腫瘍の性状の判別について良好な再現性が得られた。よって、上記の37遺伝子を用いることにより、甲状腺腫瘍は3つの群に分類され、Cluster 1に分類された症例を良性腫瘍と判別し、Cluster 2またはCluster 3に分類された症例を悪性腫瘍と判別することができることが判明した。
実施例5
この実施例では、各症例のクラスター分類(腫瘍の性状の判別)をより正確に行うため、上記の37遺伝子の発現量についての判別式を構築することを目的とした。生体試料として、良性腫瘍(腺腫様甲状腺腫および濾胞腺腫)45症例、および悪性腫瘍(乳頭がんおよび濾胞がん)42症例の組織検体を用いた。各検体からRNAを抽出し、実施例1と同様にしてマイクロアレイを用いて、上記の37遺伝子の発現量(プローブからのシグナル値)を測定し、シグナル値について、底を2とするLOG変換を行った。この実施例では、第1、第2および第3の遺伝子群のそれぞれについてLOG変換されたシグナル値の平均値を比較して、症例を各Clusterに分類する判別式を試みた(以下、この式を「判別式(I)」ともいう)。
ここで、判別式(I)による判別の手順について説明する。まず、症例ごとに、第1、第2および第3の遺伝子群の各群におけるシグナル値の平均値を算出した。そして、症例ごとに第1、第2および第3の遺伝子群の平均値を比較して、各症例を、最も高い平均値の遺伝子群(すなわち、発現量が最も亢進している遺伝子群)が属するクラスターに分類した。
判別式(I)を87症例の全てに適用してクラスターへの分類を行った。その結果、87症例のうち、Cluster 1には38症例、Cluster 2には23症例およびCluster 3には26症例が分類された。該判別式による分類と、病理分類とを照合した結果を、表6に示す。
表6に示されるように、Cluster 1には良性腫瘍(38症例中32症例)が濃縮され、Cluster2およびCluster 3には悪性腫瘍(Cluster 2:23症例中17症例、Cluster 3:26症例中19症例)が濃縮されていることがわかった。判別式(I)による判別の性能としては、感度86%、特異度71%、一致率78%、PPV 73%、NPV 84%であり、良好な性能が得られた。また、37遺伝子を用いる本発明の方法は、Veracyte社から市販されている製品Afirma Thyroid FNA Analysisによる判別よりも、特異度およびPPVが優れていた。
実施例6
実施例2で用いた20遺伝子を用いて、実施例5と同様にして、判別式(I)で良性腫瘍(腺腫様甲状腺腫および濾胞腺腫)45症例、および悪性腫瘍(乳頭がんおよび濾胞がん)42症例の分類を実施した。その結果、87症例のうち、Cluster 1には43症例、Cluster 2には25症例およびCluster 3には19症例が分類された。該判別式による分類と、病理分類とを照合した結果を、表7に示す。
表7に示されるように、Cluster 1には良性腫瘍(43症例中34症例)が濃縮され、Cluster2およびCluster 3には悪性腫瘍(Cluster 2:25症例中18症例、Cluster 3:19症例中15症例)が濃縮されていることがわかった。判別式(I)による判別の性能としては、感度79%、特異度76%、一致率77%、PPV 75%、NPV 79%であり、良好な性能が得られた。また、20遺伝子を用いる本発明の方法は、Veracyte社から市販されている製品Afirma Thyroid FNA Analysisによる判別よりも、特異度およびPPVが優れていた。
実施例7
この実施例では、実施例5とは異なる判別式を構築することを目的とした。生体試料として、良性腫瘍(腺腫様甲状腺腫および濾胞腺腫)45症例、および悪性腫瘍(乳頭がんおよび濾胞がん)42症例の組織検体を用いた。各検体からRNAを抽出し、実施例1と同様にしてマイクロアレイを用いて、上記の37遺伝子の発現量(プローブからのシグナル値)を測定した。この実施例では、一次線型式により算出した、各症例の遺伝子発現パターンと、実施例1で分類した3つのクラスターとの距離に基づいて分類する判別式を試みた(以下、この式を「判別式(II)」ともいう)。
ここで、判別式(II)による判別の手順について説明する。判別式(II)では、実施例1で用いたLearning setについて上記の37遺伝子のシグナル値をプロットし、クラスターごとの発現量の違いを利用して3つのクラスターに分類した。なお、これら3つのクラスターは、実施例1のCluster1、Cluster2およびCluster3と同一である。そして、各クラスターについてシグナル値の平均を求めた。各クラスターの平均と、上記の87症例のそれぞれのシグナル値データとのユークリッド距離を一次線型式により算出した。症例ごとに各クラスターとの距離を比較し、各症例を最も距離が近いクラスターに分類した。その結果、87症例のうち、Cluster 1には33症例、Cluster 2には35症例およびCluster 3には19症例が分類された。該判別式による分類と、病理分類とを照合した結果を、表8に示す。
表8に示されるように、Cluster 1には良性腫瘍(33症例中29症例)が濃縮され、Cluster2およびCluster 3には悪性腫瘍(Cluster 2:35症例中25症例、Cluster 3:19症例中13症例)が濃縮されていることがわかった。判別式(II)による判別の性能としては、感度90%、特異度64%、一致率77%、PPV 70%、NPV 88%であり、良好な性能が得られた。また、37遺伝子を用いる本発明の方法は、Veracyte社から市販されている製品Afirma Thyroid FNA Analysisによる判別よりも、特異度およびPPVが優れていた。
実施例8
実施例2で用いた20遺伝子を用いて、実施例7と同様にして、判別式(II)で良性腫瘍(腺腫様甲状腺腫および濾胞腺腫)45症例、および悪性腫瘍(乳頭がんおよび濾胞がん)42症例の分類を実施した。その結果、87症例のうち、Cluster 1には33症例、Cluster 2には29症例およびCluster 3には25症例が分類された。該判別式による分類と、病理分類とを照合した結果を、表9に示す。
表9に示されるように、Cluster 1には良性腫瘍(33症例中27症例)が濃縮され、Cluster2およびCluster 3には悪性腫瘍(Cluster 2:29症例中18症例、Cluster 3:25症例中18症例)が濃縮されていることがわかった。判別式(II)による判別の性能としては、感度86%、特異度60%、一致率72%、PPV 67%、NPV 82%であり、良好な性能が得られた。また、20遺伝子を用いる本発明の方法は、Veracyte社から市販されている製品Afirma Thyroid FNA Analysisによる判別よりも、特異度およびPPVが優れていた。
実施例9
この実施例では、Cluster 2とCluster 3との違いを、悪性腫瘍の予後の観点から検討した。濾胞がんの中でも、低分化がん、広汎浸潤型濾胞がん、および脈管侵襲を有する濾胞がんは一般的に予後不良の悪性腫瘍として知られている。ここで、実施例7で用いた症例には、これらの予後不良の悪性腫瘍である15症例が含まれている。そこで、これらの症例が、実施例7ではいずれのClusterに分類されたかを検証した。結果を表10に示す。
表10に示されるように、Cluster 1では0症例、Cluster2では11症例、Cluster 3では4症例が分類されていた。このように、Cluster 2において、より多くの予後不良とされている症例が濃縮されていたことから、Cluster 2 (第1の悪性腫瘍)に分類される症例は、Cluster 3 (第2の悪性腫瘍)に分類される症例よりも予後不良の悪性腫瘍である可能性が高いことが示唆された。
1 判定装置
2 測定装置
3 コンピュータシステム
3a コンピュータ本体
3b 入力デバイス
3c 表示部

Claims (6)

  1. 甲状腺腫瘍を有する被験者から採取された生体試料における、AIF1L、CDH16、FAM162B、FGFR2、GJB6、KCNJ13、KIAA1467、SLC25A15、TFCP2L1、TFF3およびTMEM171からなる第1の遺伝子群から選択される少なくとも6つの遺伝子の発現量を測定する第1測定工程、
    前記生体試料における、C4orf10、CCDC8、CD22、FAM125A、FAM174B、FBF1、GLB1L2、LOC644613、MAP2K2、MTG1、PFKL、PTDSS2、SF3A2、SLC2A11、VILL、VSIG2およびWDR18からなる第2の遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子の発現量を測定する第2測定工程、
    前記生体試料における、ANXA1、C13orf33、CYP1B1、FAP、FN1、IL17RD、PDLIM4、RUNX2およびTIMP1からなる第3の遺伝子群から選択される少なくとも7つの遺伝子の発現量を測定する第3測定工程、および
    前記第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、前記第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しているかまたは前記第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態と同等であり、且つ前記第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、前記第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しているかまたは前記第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態と同等である場合、前記被験者の甲状腺腫瘍を良性腫瘍と判別し、
    前記第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、前記第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しており、且つ前記第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、前記第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進しているかまたは前記第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態と同等である場合、前記被験者の甲状腺腫瘍を第1の悪性腫瘍と判別し、
    前記第3の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態が、前記第1の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態および前記第2の遺伝子群から選択された遺伝子の発現状態よりも亢進している場合、前記被験者の甲状腺腫瘍を第2の悪性腫瘍と判別する判別工程
    を含む、甲状腺腫瘍の性状の判別を補助する方法。
  2. 第1の悪性腫瘍が、予後不良の悪性腫瘍であり、
    第2の悪性腫瘍が、予後良好の悪性腫瘍である、
    請求項に記載の方法。
  3. 良性腫瘍が、濾胞腺腫、腺腫様結節および嚢胞の少なくとも1つであり、
    第1の悪性腫瘍が、未分化がん、低分化がん、並びに、広汎浸潤および/または脈管侵襲を有する濾胞がんの少なくとも1つであり、
    第2の悪性腫瘍が、乳頭がん、並びに、広汎浸潤および脈管侵襲を有さない濾胞がんの少なくとも1つである、
    請求項またはに記載の方法。
  4. 前記第1測定工程が、前記第1の遺伝子群のうち、少なくともAIF1L、FAM162B、FGFR2、GJB6、KIAA1467およびTFF3の発現量を測定する工程であり、
    前記第2測定工程が、前記第2の遺伝子群のうち、少なくともFAM174B、MAP2K2、MTG1、PFKL、PTDSS2、SF3A2およびWDR18の発現量を測定する工程であり、および
    前記第3測定工程が、前記第3の遺伝子群のうち、少なくともANXA1、CYP1B1、FAP、IL17RD、PDLIM4、RUNX2およびTIMP1の発現量を測定する工程である、
    請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記第1、第2および第3測定工程が、マイクロアレイまたは核酸増幅法を用いて遺伝子の発現量を測定する、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記生体試料が、被験者の甲状腺由来の細胞を含む試料である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
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