本発明による感光性フィルムについて、説明する。感光性フィルムは、感光性樹脂組成物をフィルム形状としたものであって、支持フィルムや保護フィルムといった他の層が積層されていないものをいう。また、本発明においては、作業性や感光性フィルムの表面を後記するような所定形態に形成する際の容易さを考慮して、感光性フィルムの一方の面に支持フィルムが設けられていてもよく、また、感光性フィルムの表面に塵等が付着するのを防止するとともに、感光性フィルム積層体の取扱性を考慮して、支持フィルムとは反対の面には、更に保護フィルムが設けられていてもよい。以下、本発明による感光性フィルムおよび任意に設けられるその他の層について説明する。
<感光性フィルム>
本発明による感光性フィルムは、表面に窪みを有する面を備え、感光性樹脂組成物により形成されてなるものであり、上記表面の単位面積1mm2当たりの窪みの個数が3.0×102個以上であることを特徴とする。単位面積1mm2当たりの窪みの個数は、対象となる感光性フィルムの表面の凹凸を、z軸を高さ方向として三次元測定し、得られたz値の集合体の最大値と最小値を求め、その最大値と最小値から算出される平均値より0.2μm低いZs値をしきい値とし、そのしきい値以下のz値を有する領域を窪みの領域とし、単位面積1mm2中に存在する窪みの領域の数を数えることにより算出される値をいうものとする。例えば、前述で感光性フィルムの表面をx−y軸面として高さzを測定する三次元測定において、得られたz値の集合体の最大値と最小値がそれぞれ3.00μmと1.00μmの場合、平均値は2.00μmとなり、これより0.2μm低い1.80μmがZs値、すなわち「しきい値」となる。しきい値1.80μmよりも低い値で連続する、x−y軸面での集合を1つの窪みの領域とし、測定面中に点在する窪みの領域の数を数えることで窪みの個数を決定できる。より詳細な測定手順は後述する。
本発明においては、上記のようにして算出された単位面積1mm2当たりの窪みの個数が3.0×102個以上であるような表面を備えた感光性フィルムを用いることにより、ダイアタッチ材との密着性を改善できるものである。また、このような特定の表面形態を有する感光性フィルムを使用してソルダーレジスト層等を形成した場合に、ソルダーレジスト層の表面傷等の有無を検査する外観検査において歩留りを改善することができる。このような予想外の効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、感光性フィルムの表面に窪みを形成し、その窪みを適度な数にすることにより、感光性フィルムの表面に適度な連続面が形成され、連続面と窪みが混在する領域に微小な傷が形成されても、窪みにより傷の反射が緩和されて傷が見えにくくなるものと推察される。一方、窪みによるアンカー効果によりダイアタッチ材との接着力が飛躍的に向上するものと推察される。しかしながら、あくまで推察の域であり、必ずしもこの限りではない。
感光性フィルム表面の単位面積1mm2当たりの窪みの個数は4.0×102個以上であることが好ましく、5.0×102個以上がより好ましい。単位面積1mm2当たりの窪みの個数は、そのような表面の形成が可能であれば上限は特にないが、2.0×104個以下とすることで、ダイアタッチ材との密着性に優れ、硬化被膜の外観検査においても歩留りを改善できる点に加え、さらにソルダーレジスト層の感光性パターンの形成、とりわけパターンの淵崩れを抑制できるという優れた効果を得ることができる。単位面積1mm2当たりの窪みの個数は、より好ましくは1.5×104個以下、さらに好ましくは1.0×104個以下である。ここで、パターンの淵崩れとは、例えば、感光性フィルムを用いてSRO(ソルダーレジスト開口部)を形成した場合において、露光、現像後に開口部の淵上にある感光性フィルムに含まれる樹脂分が崩れて開口部の内側にせり出すような現象を意味する。本発明においては、上記したような特定の表面形態を有する感光性フィルムとすることにより、予想外にもパターンの淵崩れを抑制できることが判明した。
また、ダイアタッチ材との密着性および外観検査における歩留り改善のバランスの観点から、感光性フィルムの表面に窪みを有する面の算術平均表面粗さRaは0.05μm以上であることが好ましく、0.06μm以上であることがより好ましく、0.07μm以上であることがさらに好ましい。また上限を設ける場合、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。
また、感光性フィルム表面の窪みは均一でも不均一でも良いが、ダイアタッチ材との密着性および外観検査における歩留り改善のバランスの観点から、不均一であることが好ましい。さらに、窪みの深さは0.2μm以上であることが好ましい。
また、前述のバランスの観点から感光性フィルムの所定の窪みを有する面の算術平均表面粗さRaは0.05μm以上であることが好ましく、0.06μm以上であることがより好ましく、0.07μm以上であることがさらに好ましい。また上限を設ける場合、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。
本発明において、上記した「単位面積1mm2当たりの窪みの個数」および「算術平均表面粗さRa」は、JIS B0601−1994に準拠した測定装置にて測定された値を意味する。以下、具体的な測定方法について説明しておく。単位面積1mm2当たりの窪みの個数および算術平均表面粗さRaは、形状測定レーザーマイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VK−X100)を使用して測定することができる。形状測定レーザーマイクロスコープ(同VK−X100)本体(制御部)および、VK観察アプリケーション(キーエンス社製VK−H1VX)を起動させた後、x−yステージ上に測定する試料を載置する。顕微鏡部(キーエンス社製VK−X110)のレンズレボルバーを回して倍率10倍の対物レンズを選択し、VK観察アプリケーション(同VK−H1VX)の画像観察モードで、大まかにピント、明るさを調節する。x−yステージを操作して、試料表面のほぼ中央部が、画面の中心に来るように調節する。倍率10倍の対物レンズを倍率100倍に替え、VK観察アプリケーション(同VK−H1VX)の画像観察モードのオートフォーカス機能で、試料の表面にピントを合わせる。VK観察アプリケーション(同VK−H1VX)の形状測定タブの簡単モードを選択し、測定開始ボタンを押して、試料の表面形状の測定を行い、表面画像ファイルを得ることができる。VK解析アプリケーション(キーエンス社製VK−H1XA)を起動して、得られた表面画像ファイルを表示させた後、傾き補正を行う。
「単位面積1mm2当たりの窪みの個数」の測定では、試料の表面形状の測定における観察測定範囲(面積)は15073μm2とする。例えば、解析アプリケーション(同VK−H1XA)を用いることができる。表示画面にある計測解析メニューから[体積・面積]を選択し、[体積・面積]ウインドウを表示させる。[体積・面積]ウインドウの[表示画像]ボックスから[高さ]を選択した後、[しきい値]ボタンを押して、[しきい値領域設定ダイヤログ]ボックスを表示させる。表示された[上限]ボックスの値と[下限]ボックスの値を足して2で割った値Ave.(μm)を算出し、そのAve.(μm)から0.2μmを引いたZs値(μm)以下の部分を「窪み」とする。[下限]ボックスの値は変更せず、[上限]ボックスにZs値(μm)を入力し、OKボタンを押した後に、画像表示領域内でROI描画色の色に変わった箇所の個数C(個)を数え、この個数C(個)から、単位面積1mm2当たりの個数D(個/mm2)(D=C×66.34)を算出した値とする。なお、前記ROI描画色の色に変わった箇所のうち、画像表示領域の境界部分で切れてしまい1個として認識できないものについては、0.5個として計上するものとする。
また、「算術平均表面粗さRa」の測定では、対物レンズを50倍に切り替えて試料の表面形状の測定における観察測定範囲(横)は270μmとする。線粗さウインドウを表示させ、パラメータ設定領域で、JIS B0601−1994を選択した後、測定ラインボタンから水平線を選択し、表面画像内の任意の場所に水平線を表示させ、OKボタンを押すことによって、算術平均表面粗さRa1の数値を得る。さらに、表面画像内の異なる4か所で水平線を表示させ、それぞれの算術平均表面粗さRa1の数値を得る。得られた5つの数値の平均値Raave.を算出し、かかる値を試料表面の算術平均表面粗さRa値とする。なお、感光性フィルム積層体中の感光性フィルムを測定する場合、支持フィルムを剥離して感光性フィルム表面を露出させた後、5分以内に「単位面積1mm2当たりの窪みの個数」と「算術平均表面粗さRa」の測定を行うものとする。
感光性フィルムの表面形態を、上記した単位面積1mm2当たりの特定の窪み個数および特定の算術平均表面粗さRaの範囲とするには、公知慣用の手法を適用することができるが、中でも、そのような表面形態に形成することの容易さの観点から、後記するような支持フィルムを用いて感光性フィルムを形成することが好ましい。すなわち、本発明の感光性フィルムに支持フィルムが積層されてなる感光性フィルム積層体である場合、上記した特定の窪み個数を有する表面を有し、且つ所望により特定の算術平均表面粗さRaを有する感光性フィルムの表面は、支持フィルムと接する面であることが好ましい。また、感光性フィルムはソルダーレジスト層形成用であることが好ましい。
上記した単位面積1mm2当たりの窪み個数が3.0×102個以上である表面を備えた感光性フィルム、より好ましい実施態様である、さらに当該表面の算術平均表面粗さRaが0.05μm以上である感光性フィルムは、露光、現像することによってパターニングされ、回路基板上に設けられた硬化被膜となる。硬化被膜としては、ソルダーレジスト層であることが好ましい。このような感光性フィルムは感光性樹脂組成物を用いて形成することができ、感光性樹脂組成物は従来公知のソルダーレジストインキ等を制限なく使用できるが、以下、本発明による感光性フィルムに好ましく使用できる感光性樹脂組成物の一例を説明する。
本発明において、感光性樹脂組成物は、架橋成分およびフィラーを含むことが好ましい。さらに、光重合開始剤を含むことがより好ましい。架橋成分はカルボキシル基含有感光性樹脂や感光性モノマーが好ましく、さらに加熱する場合、熱によって架橋する成分を含むことが好ましい。以下、各成分について説明する。
[架橋成分]
架橋成分は架橋する成分であれば特に制限はされず、公知慣用のものを使用することができる。特にカルボキシル基含有感光性樹脂や感光性モノマーが好ましく、さらに加熱する場合、熱によって架橋する成分(以下、熱架橋成分)を含むことが好ましい。
カルボキシル基含有感光性樹脂は、光照射により重合ないし架橋して硬化する成分であり、カルボキシル基が含まれることによりアルカリ現像性とすることができる。また、光硬化性や耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものが好ましい。
また、カルボキシル基含有感光性樹脂として、エポキシ樹脂を出発原料として使用していないカルボキシル基含有感光性樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂を出発原料として使用していないカルボキシル基含有感光性樹脂は、ハロゲン化物イオン含有量が非常に少なく、絶縁信頼性の劣化を抑えることができる。カルボキシル基含有感光性樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーまたはポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
(1)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
(2)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基を、さらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸などの不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック型フェノール樹脂、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物などの1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に、(メタ)アクリル酸などの不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に、不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物などのジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に、酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(7)ジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などのカルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(8)ジイソシアネートと、カルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(9)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレンなどの不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(10)後述するような多官能オキセタン樹脂に、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などのジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に、2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどの1分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂、および
(11)上述した(1)〜(10)のいずれかのカルボキシル基含有感光性樹脂に、1分子中に環状エーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂、等が挙げられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、以下他の類似の表現についても同様である。
上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の中でも、上述したように、エポキシ樹脂を出発原料として用いていないカルボキシル基含有感光性樹脂を好適に用いることができる。
従って、上述したカルボキシル基含有感光性樹脂の具体例のうち、(4)〜(8)のいずれか1種以上のカルボキシル基含有感光性樹脂を特に好適に用いることができる。
このように、エポキシ樹脂を出発原料として用いないことにより、塩素イオン不純物量を例えば100ppm以下と非常に少なく抑えることができる。本発明において好適に用いられるカルボキシル基含有感光性樹脂の塩素イオン不純物含有量は0〜100ppm、より好ましくは0〜50ppm、さらに好ましくは0〜30ppmである。
また、エポキシ樹脂を出発原料として用いないことにより、水酸基を含まない(もしくは、水酸基の量が低減された)樹脂を容易に得ることができる。一般的に水酸基の存在は水素結合による密着性の向上など優れた特徴も有しているが、著しく耐湿性を低下させることが知られており、水酸基を含まないカルボキシル基含有感光性樹脂とすることにより、耐湿性を向上させることが可能となる。
なお、ホスゲンを出発原料として用いていないイソシアネート化合物、エピハロヒドリンを使用しない原料から合成され、塩素イオン不純物量が0〜30ppmのカルボキシル基含有ウレタン樹脂も好適に用いられる。このようなウレタン樹脂において、水酸基とイソシアネート基の当量を合わせることにより、水酸基を含まない樹脂を容易に合成することができる。
また、ウレタン樹脂の合成の際に、ジオール化合物としてエポキシアクリレート変性原料を使用することもできる。塩素イオン不純物は入ってしまうが、塩素イオン不純物量をコントロールできるといった点から使用することは可能である。
このような観点から、例えば半導体パッケージ用ソルダーレジストとしてより優れたPCT耐性、HAST耐性、冷熱衝撃耐性を有する感光性樹脂組成物を得るためには、上述したカルボキシル基含有感光性樹脂(4)〜(8)のいずれか1種以上のカルボキシル基含有感光性樹脂を、より好適に用いることができる。
また、先に示した不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有感光性樹脂(9)に対し、一分子中に環状エーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物として3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートを反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂も、脂環式エポキシを使用していることから、塩素イオン不純物が少なく、好適に用いることができる。
また、上記(4)〜(8)のいずれか一種以上のカルボキシル基含有感光性樹脂と前記(9)のカルボキシル基含有感光性樹脂を併用することでモールド材との密着性がより向上する為、好ましい。
上記のようなカルボキシル基含有感光性樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、アルカリ水溶液による現像が可能である。
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、40〜150mgKOH/gであることが好ましい。カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価が40mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ現像が良好になる。また、酸価を150mgKOH/gを以下とすることで、正常なレジストパターンの描画をし易くできる。より好ましくは、50〜130mgKOH/gである。
カルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上とすることにより、タックフリー性能や解像度を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下とすることで、現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。より好ましくは、5,000〜100,000である。
カルボキシル基含有感光性樹脂の配合量は、固形分換算で全組成物中に、20〜60質量%であることが好ましい。20質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり加工性が向上する。より好ましくは、30〜50質量%である。
感光性モノマーとして用いられる化合物としては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などを感光性モノマーとして用いてもよい。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
感光性モノマーとして用いられる分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物の配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは、5〜70質量部の割合である。エチレン性不飽和基を有する化合物の配合量を5質量部以上とすることにより、光硬化性樹脂組成物の光硬化性が向上する。また、配合量を100質量部以下とすることにより、塗膜硬度を向上させることができる。ここでいう、カルボキシル基含有樹脂とは、カルボキシル基含有感光性樹脂およびカルボキシル基非感光性樹脂のいずれをも含むものである。すなわち、組成物中にいずれか単独で配合されている場合は単独、いずれも配合されている場合はその合計をいう(以降の段落において同じ)。
感光性モノマーは、特にエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有非感光性樹脂を使用した場合、組成物を光硬化性とするために分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(感光性モノマー)を併用する必要があるため、有効である。
熱架橋成分としては、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用のものが使用できる。これらの中でも好ましい熱架橋成分は、1分子中に複数の環状エーテル基および環状チオエーテル基の少なくともいずれか1種(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)を有する熱架橋成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のいずれか一方または2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
多官能エポキシ化合物としては、例えば、三菱化学社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のエピクロン840、エピクロン840−S、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000H、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH−434、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021等(商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL−931等(商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業社製のTEPIC等(商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、DIC社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、EXA−4816、EXA−4822、EXA−4850シリーズの柔軟強靭エポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
分子中に複数の環状チオエーテル基を有するエピスルフィド樹脂としては、例えば、三菱化学社製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、組成物中に、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.3〜2.5当量、より好ましくは、0.5〜2.0当量となる範囲である。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量を0.3当量以上とすることにより、硬化被膜にカルボキシル基が残存せず、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが向上する。
また、2.5当量以下とすることにより、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存せず、硬化被膜の強度などが向上する。
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒を配合することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基および/またはオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
熱硬化触媒の配合量は、組成物中に、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を含む場合、固形分換算で、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
アミノ樹脂としては、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体などのアミノ樹脂が挙げられる。例えばメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物などがある。さらに、アルコキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン化合物、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物およびアルコキシメチル化尿素化合物は、それぞれのメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等とすることができる。特に人体や環境に優しいホルマリン濃度が0.2%以下のメラミン誘導体が好ましい。
アミノ樹脂の市販品としては、例えばサイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266、同267、同238、同1141、同272、同202、同1156、同1158、同1123、同1170、同1174、同UFR65、同300(以上、三井サイアナミッド社製)、ニカラックMx−750、同Mx−032、同Mx−270、同Mx−280、同Mx−290、同Mx−706、同Mx−708、同Mx−40、同Mx−31、同Ms−11、同Mw−30、同Mw−30HM、同Mw−390、同Mw−100LM、同Mw−750LM、(以上、三和ケミカル社製)等を挙げることができる。
イソシアネート化合物としては、分子中に複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を用いることができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネートおよび2,4−トリレンダイマーが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体が挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物に含まれるブロック化イソシアネート基は、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基である。所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられる。ブロックイソシアネート化合物を合成する為に用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、先に例示したような化合物が挙げられる。
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノールおよびエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−パレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチルおよび乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミドおよびマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミンおよびプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL−3175、BL−4165、BL−1100、BL−1265、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2078、TPLS−2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住友バイエルウレタン社製、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(以上、日本ポリウレタン工業社製、商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(以上、三井武田ケミカル社製、商品名)、TPA−B80E、17B−60PX、E402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。なお、スミジュールBL−3175、BL−4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。
感光性樹脂組成物には、水酸基やカルボキシル基とイソシアネート基との硬化反応を促進させるためにウレタン化触媒を配合してもよい。ウレタン化触媒としては、錫系触媒、金属塩化物、金属アセチルアセトネート塩、金属硫酸塩、アミン化合物、およびアミン塩の少なくとも何れか1種から選択されるウレタン化触媒を使用することが好ましい。
錫系触媒としては、例えばスタナスオクトエート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機すず化合物、無機すず化合物などが挙げられる。また、金属塩化物としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の塩化物で、例えば、塩化第二コバルト、塩化第一ニッケル、塩化第二鉄などが挙げられる。また、金属アセチルアセトネート塩は、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属のアセチルアセトネート塩であり、例えば、コバルトアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネートなどが挙げられる。さらに、金属硫酸塩としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の硫酸塩で、例えば、硫酸銅などが挙げられる。
アミン化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジモルホリノジエチルエーテル、N−メチルイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、トリアジン、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、2−アミノキヌクリジン、3−アミノキヌクリジン、4−アミノキヌクリジン、2−キヌクリジオール、3−キヌクリジノール、4−キヌクリジノール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)イミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、メラミンおよびベンゾグアナミンのいずれか少なくとも1種などが挙げられる。
アミン塩としては、例えば、DBU(1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7)等の有機酸塩系のアミン塩などが挙げられる。
[フィラー]
フィラーとしては、公知慣用の無機または有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ、酸化チタン、ノイブルグ珪土粒子、およびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を付与する目的で、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイトなども使用することができる。さらに、1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物や前記多官能エポキシ樹脂にナノシリカを分散したHanse−Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)や、Hanse−Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)も使用できる。これらを単独でまたは2種以上配合することができる。フィラーを含むことにより、得られる硬化物の物理的強度等を上げることができる。
フィラーの配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは500質量部以下、より好ましくは0.1〜300質量部、特に好ましくは、0.1〜150質量部である。フィラーの配合量が500質量部以下の場合、光硬化性熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、印刷性が良く、硬化物が脆くなりにくい。
[光重合開始剤]
本発明において、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂を光重合させるために使用される光重合開始剤としては、公知のものを用いることができるが、なかでも、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI−325、イルガキュアー(登録商標)OXE01、イルガキュアーOXE02、ADEKA社製N−1919、アデカアークルズ(登録商標)NCI−831などが挙げられる。
また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
(式中、Xは、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを表し、nは0または1の整数である)
特に、上記式中、X、Yが、それぞれ、メチル基またはエチル基であり、Zがメチルまたはフェニルであり、nが0であり、Arが、フェニレン、ナフチレン、チオフェンまたはチエニレンであるオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
好ましいカルバゾールオキシムエステル化合物として、下記一般式で表すことができる化合物を挙げることもできる。
(式中、R
1は、炭素原子数1〜4のアルキル基、または、ニトロ基、ハロゲン原子もしくは炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
R
2は、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、または、炭素原子数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
R
3は、酸素原子または硫黄原子で連結されていてもよく、フェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基を表す。
R
4は、ニトロ基、または、X−C(=O)−で表されるアシル基を表す。
Xは、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいアリール基、チエニル基、モルホリノ基、チオフェニル基、または、下記式で示される構造を表す。)
その他、特開2004−359639号公報、特開2005−097141号公報、特開2005−220097号公報、特開2006−160634号公報、特開2008−094770号公報、特表2008−509967号公報、特表2009−040762号公報、特開2011−80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
オキシムエステル系光重合開始剤を使用する場合の配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部とすることが好ましい。0.01質量部以上とすることにより、銅上での光硬化性がより確実となり、耐薬品性などの塗膜特性が向上する。また、5質量部以下とすることにより、塗膜表面での光吸収が抑えられ、深部の硬化性も向上する傾向がある。より好ましくは、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.5〜3質量部である。
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のイルガキュアーTPO、イルガキュアー819などが挙げられる。
また、光重合開始剤としてはBASFジャパン社製のイルガキュアー389、イルガキュアー784も好適に用いることができる。
オキシムエステル系光重合開始剤以外の光重合開始剤を用いる場合の配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましい。0.01質量部以上とすることにより、銅上での光硬化性がより確実となり、耐薬品性などの塗膜特性が向上する。
また、15質量部以下とすることにより、十分なアウトガスの低減効果が得られ、さらに硬化被膜表面での光吸収が抑えられ、深部の硬化性も向上する。より好ましくはカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である。
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ベンゾイン化合物としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。また、アセトフェノン化合物としては、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。また、アントラキノン化合物としては、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどが挙げられる。また、チオキサントン化合物としては、例えば2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。また、 ケタール化合物としては、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。さらに、ベンゾフェノン化合物としては、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えばエタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、市販品では、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアー(登録商標)MABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)などのジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアー(登録商標)EPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセティクス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)などが挙げられる。3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜450nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物およびケトクマリン類が特に好ましい。
ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが毒性が低いことから好ましい。ジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が350〜410nmと紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性樹脂組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色感光性フィルムを得ることが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが、波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
これらのうち、チオキサントン化合物および3級アミン化合物が好ましい。特に、チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。
光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤の総量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して35質量部以下であることが好ましい。35質量部以下とすることにより、これらの光吸収が抑えられ、深部の硬化性も向上する。
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の加工精度を向上させることができる。
本発明による感光性フィルムに使用される感光性樹脂組成物は、上記した成分以外にも、ブロック共重合体、着色剤、エラストマー、熱可塑性樹脂等の他の成分が含まれていてもよい。以下、これら成分についても説明する。
上記した感光性樹脂組成物には、ブロック共重合体を好適に配合することができる。ブロック共重合体とは、性質の異なる二種類以上のポリマーが、共有結合で繋がり長い連鎖になった分子構造の共重合体のことである。20℃〜30℃の範囲において固体であるものが好ましい。この範囲内において固体であればよく、この範囲外の温度においても固体であってもよい。上記温度範囲において固体であることにより、感光性フィルムとしたときや支持フィルムに塗布し仮乾燥したときのタック性に優れる。
ブロック共重合体としてはXYX、あるいはXYX’型ブロック共重合体が好ましい。
XYXあるいはXYX’型ブロック共重合体のうち、中央のBがソフトブロックでありガラス転移点Tgが低く、好ましくは0℃未満であり、その両外側AないしX’がハードブロックでありTgが高く、好ましくは0℃以上のポリマー単位により構成されているものが好ましい。ガラス転移点Tgは示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
また、XYXあるいはXYX’型ブロック共重合体のうち、XないしX’がTgが50℃以上のポリマー単位からなり、YがTgが−20℃以下であるポリマー単位からなるブロック共重合体がさらに好ましい。また、XYXあるいはXYX’型ブロック共重合体のうち、XないしX’が、カルボキシル基含有樹脂との相溶性が高いものが好ましく、Yがカルボキシル基含有樹脂との相溶性が低いものが好ましい。このように、両端のブロックがマトリックスに相溶であり、中央のブロックがマトリックスに不相溶であるブロック共重合体とすることで、マトリックス中において特異的な構造を示しやすくなると考えられる。
なお、ブロック共重合体はXYXあるいはXYX‘型だけではなくハードブロックとソフトブロック成分がそれぞれ少なくとも一種以上あれば特に限定されることなく使用することができる。
XないしX’成分としてはポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)などが好ましく、B成分としてはポリn−ブチルアクリレート(PBA)、ポリブタジエン(PB)などが好ましい。また、XないしX’成分の一部にスチレンユニット、水酸基含有ユニット、カルボキシル基含有ユニット、エポキシ含有ユニット、N置換アクリルアミドユニット等に代表される上記カルボキシル基含有樹脂と相溶性に優れる親水性ユニットを導入し、更に相溶性を向上させることが可能となる。本発明者等は、このようにして得られたブロック共重合体が上記したカルボキシル基含有樹脂との相溶性が特に良好であること、そして、驚くべきことに冷熱衝撃耐性を向上させることができ、さらに驚くべきことにエラストマーを添加した物はガラス転移温度(Tg)が下がる傾向にあるのに対し、前記ブロック共重合体を添加した物はTgが下がらない傾向があることを見いだした。
ブロック共重合体の製造方法としては、例えば、特願2005−515281号、特願2007−516326号に記載の方法が挙げられる。 ブロック共重合体の市販品としては、アルケマ社製のリビング重合を用いて製造されるアクリル系トリブロックコポリマーが挙げられる。ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリメチルメタアクリレートに代表されるSBMタイプ、ポリメチルメタアクリレート−ポリブチルアクリレート−ポリメチルメタアクリレートに代表されるMAMタイプ、更にはカルボン酸変性や親水基変性処理されたMAM NタイプやMAM Aタイプが挙げられる。SBMタイプとしてはE41、E40、E21、E20等が挙げられ、MAMタイプとしてはM51、M52、M53、M22等が挙げられ、MAM Nタイプとしては52N、22N、MAM AタイプとしてはSM4032XM10等が挙げられる。また、クラレ社製のクラリティもメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルより誘導されるブロック共重合である。
ブロック共重合体としては3元以上のブロック共重合体が好ましく、リビング重合法により合成された分子構造が精密にコントロールされたブロック共重合体が本発明の効果を得る上でより好ましい。これは、リビング重合法により合成されたブロック共重合体は分子量分布が狭く、それぞれのユニットの特徴が明確になったためであると考えられる。用いるブロック共重合体の分子量分布は2.5以下が好ましく、更に好ましくは2.0以下である。
ブロック共重合体の重量平均分子量は一般的に20,000〜400,000、さらには30,000〜300,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が20,000未満であると、目的とする強靭性、柔軟性の効果が得られず、タック性にも劣る。
一方、重量平均分子量が400,000を超えると、光硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、印刷性、現像性が著しく悪くなる。
ブロック共重合体の配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1〜50質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜35質量部である。1質量部以上でその効果は期待でき、50質量部以下で光硬化性樹脂組成物として現像性や塗布性が良好となる。
感光性樹脂組成物には、着色剤が含まれていてもよい。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には以下のようなカラ−インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ
オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 149,150,52,207等が挙げられる。
また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60。染料系としては、Solvent Blue 35,63,68,70,83,87,94,97,122,136,67,70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow
93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
その他、紫、オレンジ、茶色、黒、白などの着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25,酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
着色剤の配合量は特に制限はないが、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.1〜7質量部である。但し、酸化チタンなどの白色着色剤の配合量は、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部、より好ましくは1〜100質量部、より好ましくは3〜80質量部である。
また、感光性樹脂組成物には、得られる硬化物に対する柔軟性の付与、硬化物の脆さの改善などを目的にエラストマーを配合することができる。エラストマーとしては、例えばポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステルウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステルアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマーが挙げられる。また、種々の骨格を有するエポキシ樹脂の一部または全部のエポキシ基を両末端カルボン酸変性型ブタジエン−アクリロニトリルゴムで変性した樹脂なども使用できる。更にはエポキシ含有ポリブタジエン系エラストマー、アクリル含有ポリブタジエン系エラストマー、水酸基含有ポリブタジエン系エラストマー、水酸基含有イソプレン系エラストマー等も使用することができる。エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の混合物として使用してもよい。
また、得られる硬化物の可撓性、指触乾燥性の向上を目的に慣用公知のバインダーポリマーを使用することができる。バインダーポリマーとしてはセルロース系、ポリエステル系、フェノキシ樹脂系ポリマーが好ましい。セルロース系ポリマーとしてはイーストマン社製セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)シリーズが挙げられ、ポリエステル系ポリマーとしては東洋紡社製バイロンシリーズ、フェノキシ樹脂系ポリマーとしてはビスフェノールA、ビスフェノールFおよびそれらの水添化合物のフェノキシ樹脂が好ましい。
バインダーポリマーの配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは、5〜30質量部である。バインダーポリマーの配合量が50質量部以下であると、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性により優れ、現像可能な可使時間が長くなる。
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じてさらに、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。また、微粉シリカ、ハイドロタルサイト、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤およびレベリング剤の少なくとも何れか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、防錆剤、蛍光増白剤などのような公知慣用の添加剤類の少なくとも何れか一種を配合することができる。
感光性フィルムは、支持フィルムの一方の面に、上記した感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて形成することができる。感光性樹脂組成物の塗布性を考慮して、感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で支持フィルムの一方の面に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して有機溶剤を揮発させて、タックフリーの塗膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、5〜150μm、好ましくは10〜60μmの範囲で適宜選択される。
使用できる有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
有機溶剤の揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
[感光性フィルム積層体]
本発明の別の実施態様である感光性フィルム積層体は、上記のいずれかの感光性フィルムに支持フィルムが積層されているものをいう。また、本発明の感光性フィルム積層体は、さらに保護フィルムが積層されてなることが好ましい。以下、詳細について説明する。
[支持フィルム]
支持フィルムは、上記した感光性フィルム(即ち、感光性樹脂組成物からなる層、以下、「感光性樹脂層」と略す場合がある)を支持するとともに、感光性フィルムの露光、現像時に、感光性フィルムの支持フィルムと接する側の表面に所定の表面形態を賦型する役割を有するものである。本発明においては、感光性フィルムと接する面側の表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数が3.0×102個以上であるような支持フィルムを用いることが好ましい。また、感光性フィルムと接する面側の表面の算術平均表面粗さRa´が0.05μm以上であるような支持フィルムを用いることがより好ましい。このような表面形態を有する支持フィルムを使用することにより、表面の単位面積1mm2当たりの窪みの個数が3.0×102個以上であるような感光性フィルムを形成しやすくなり、さらには0.05μm以上の算術平均表面粗さRaを有する感光性フィルムを形成しやすくなる。すなわち、支持フィルムの所定の表面形態が感光性フィルムの表面に賦型されることにより、後に形成される硬化被膜とダイアタッチ材との密着性を改善することができ、さらには外観検査において歩留りを改善することができる感光性フィルムを形成しやすくなる点で有効である。支持フィルム表面の単位面積1mm2中の突出部の数は4.0×102個以上であることがより好ましく、5.0×102個以上であることがさらに好ましい。また、上限を設ける場合、2.0×104個以下が好ましく、1.5×104個以下がより好ましく、1.0×104個以下がさらに好ましい。また、支持フィルム表面の突出部は均一でも不均一でも良いが、不均一であることが好ましい。
また、支持フィルムの算術平均表面粗さRa´の範囲は0.06μm以上であることがさらに好ましく、0.07μm以上であることが特に好ましい。また上限を設ける場合、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。ここで、支持フィルム表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数とは、対象となる支持フィルムの表面の凹凸を、z軸を高さ方向として三次元測定し、得られたz値の集合体の最大値と最小値を求め、その最大値と最小値から算出される平均値より0.2μm高いZs´値をしきい値とし、そのしきい値以上のz値を有する領域を突出部の領域とし、単位面積1mm2中に存在する突出部の領域の数を数えることにより算出される値をいうものとする。また、算術平均表面粗さRa´の意味するところは、前述した[感光性フィルム]で説明したとおりである。具体的な測定方法については、上述したとおりである。なお、支持フィルム表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数と感光性フィルム表面の単位面積1mm2当たりの窪みの個数とは必ずしも一致するものではなく、また、同様に、支持フィルム表面の算術表面粗さRa´と感光性フィルム表面の算術表面粗さRaも必ずしも一致するものではないが、支持フィルムの表面形態を適宜調整することにより、感光性フィルム表面の単位面積1mm2当たりの窪みの個数および算術表面粗さRaを、上記したような特定の範囲内とすることができる。
支持フィルムとしては、上記のような表面形態を有するものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができるが、これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。支持フィルムは単層でもよく、2層以上が積層されていてもよい。
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムを使用することが好ましい。
上記したような表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数が3.0×102個以上であり、さらには算術平均表面粗さRa´が0.05μm以上であるような支持フィルムとして、熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合、フィルムを成膜する際の樹脂中にフィラーを添加(練り込み処理)したり、マットコーティング(コーティング処理)したり、フィルム表面をサンドブラスト処理のようなブラスト処理をしたり、あるいはヘアライン加工、またはケミカルエッチング等により、表面を上記したような所定形態とすることができる。例えば、樹脂中にフィラーを添加する場合に、フィラーの粒径や添加量を調整することにより、単位面積1mm2当たりの突出部の個数や算術平均表面粗さRa´を制御することができる。また、支持フィルムの表面をコーティング処理する場合は、コーティング剤の種類や量を調整することにより、単位面積1mm2当たりの突出部の個数や算術平均表面粗さRa´を制御することができる。また、ブラスト処理する場合は、ブラスト材やブラスト圧等の処理条件を調整することにより、単位面積1mm2当たりの突出部の個数や算術平均表面粗さRa´を制御することができる。このような表面粗さを有する熱可塑性樹脂フィルムとして、市販のものを使用してもよく、例えば、ユニチカ株式会社製 CM−25、株式会社きもと製G50等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
支持フィルムの感光性樹脂層を設ける面には、離型処理が施されていてもよい。例えば、ワックス類、シリコーンワックス、アルキッド系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂等の離型剤を適当な溶剤に溶解または分散して調製した塗工液を、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の手段により、支持フィルム表面に塗布、乾燥することにより、離型処理を施すことができる。
支持フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10〜150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
また、本発明による感光性フィルム積層体は、上記いずれかの感光性フィルムの表面に窪みを有する面側に支持フィルムが積層されてなることが、ダイアタッチ材との密着性に優れ、さらに外観検査において歩留りを改善するという本発明の効果を奏しやすくなる点で好ましい。
[保護フィルム]
本発明による感光性フィルム積層体は、上記した感光性樹脂層の表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、感光性樹脂層の支持フィルムとは反対の面に保護フィルムが設けられていてもよい。
保護フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができるが、保護フィルムと感光性樹脂層との接着力が、支持フィルムと感光性樹脂層との接着力よりも小さくなるような材料を選定することが好ましい。また、感光性フィルム積層体の使用時に、保護フィルムを剥離し易くするため、保護フィルムの感光性樹脂層と接する面に上記したような離型処理を施してもよい。
保護フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10〜150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
<硬化物およびプリント配線板の製造方法>
本発明の感光性フィルム、または、感光性フィルム積層体を用いて硬化物が形成される。かかる硬化物の形成方法および回路パターンが形成された基板上に上記硬化物(硬化被膜)を備えたプリント配線板を製造する方法を説明する。一例として、保護フィルムを備えた感光性フィルム積層体を用いてプリント配線板を製造する方法を説明する。先ず、i)上記した感光性フィルム積層体から保護フィルムを剥離して、感光性フィルムを露出させ、ii)前記回路パターンが形成された基板上に、前記感光性フィルム積層体の感光性フィルムを貼合し、iii)前記感光性フィルム積層体の支持フィルム上から露光を行い、iv)前記感光性フィルム積層体から支持フィルムを剥離して現像を行うことにより、前記基板上にパターニングされた感光性フィルムを形成し、v)前記パターニングされた感光性フィルムを光照射ないし熱により硬化させて、硬化被膜を形成する、ことによりプリント配線板が形成される。なお、保護フィルムが設けられていない感光性フィルム積層体を使用する場合は、保護フィルムの剥離工程(i工程)が不要であることは言うまでもない。以下、各工程について説明する。
まず、感光性フィルム積層体から保護フィルムを剥離して感光性樹脂層を露出させ、回路パターンが形成された基板上に、感光性フィルム積層体の感光性樹脂層を貼合する。回路パターンが形成された基板としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
感光性フィルム積層体の感光性フィルムを回路基板上に貼合するには、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で貼合することが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路基板表面に凹凸があっても、感光性樹脂組成物層が回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1〜2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40〜120℃であることが好ましい。
次に、感光性フィルム積層体の支持フィルム上から露光(活性エネルギー線の照射)を行う。この工程により、露光された感光性樹脂層のみが硬化する。露光工程は特に限定されるものではなく、例えば、接触式(または非接触方式)により、所望のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光してもよいが、直接描画装置により所望パターンを活性エネルギー線により露光してもよい。
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜800mJ/cm2、好ましくは20〜600mJ/cm2の範囲内とすることができる。
露光後、感光性フィルム積層体から支持フィルムを剥離して現像を行うことにより、基板上にパターニングされた感光性フィルムを形成する。支持フィルムを剥離した際、露光されて硬化した感光性フィルムの表面に、支持フィルム表面の形態が賦型される。
現像工程は特に限定されるものではなく、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法などを用いることができる。また、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
次いで、パターニングされた感光性フィルムを、活性エネルギー線(光)照射ないし熱により硬化させて、硬化物(硬化被膜)を形成する。この工程は本硬化または追加硬化と呼ばれるものであり、感光性フィルム中の未反応モノマーの重合を促進させ、さらには、カルボキシル基含有感光性樹脂とエポキシ樹脂とを熱硬化させて、残存するカルボキシル基の量を低減することができる。活性エネルギー線照射は、上記した露光と同様にして行うことができるが、露光時の照射エネルギーよりも強い条件で行うことが好ましい。例えば、500〜3000mJ/cm2とすることができる。また、熱硬化は、100〜200℃で20〜90分間程度の加熱条件で行うことができる。なお、本硬化は、光硬化させた後に熱硬化を行うことが好ましい。光硬化を先に行うことで加熱硬化時においても樹脂の流動が抑制され、賦型された表面が維持されることがある。
上記のようにして、硬化物の表面に適度な凹凸状態を付与できる。その結果、ダイアタッチ材との密着性が改善されるとともに、外観検査における歩留りも改善される。ダイアタッチ材は公知慣用のものを使用することができ、特に制限されない。したがって、本発明による感光性フィルム積層体は、とりわけICパッケージ用のソルダーレジスト層の形成に好適に使用できる。
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
<カルボキシル基含有感光性樹脂の調製>
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和電工社製ショーノールCRG951、OH当量:119.4)119.4gと、水酸化カリウム1.19gとトルエン119.4gとを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。得られたノボラック型クレゾール樹脂は、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0gと、アクリル酸43.2gと、メタンスルホン酸11.53gと、メチルハイドロキノン0.18gとトルエン252.9gとを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物62.3gを徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させて、酸価88mgKOH/gの、不揮発分71%としてカルボキシル基含有感光性樹脂ワニス1を得た。
<感光性樹脂組成物の調製>
上記のようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂ワニス1と、アクリレート化合物として感光性モノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製KAYARAD DPHA)と、熱硬化性成分であるエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製EPICLON840−S)およびビフェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製NC−3000H)と、光重合開始剤としてBASFジャパン社製IRGACURE TPOまたはBASFジャパン社製IRGACURE OXE02と、フィラーとして硫酸バリウム(堺化学工業社製B−30)および/または球状シリカ(アドマテックス社製アドマファイン SO−E2)と、熱硬化触媒としてメラミンと、着色剤として、三菱化学社製カーボンブラックM−50、ジオキサジンバイオレットC.I.Pigment Violet 23、C.I.Pigment Yellow 147、C.I.Pigment Blue 15:3およびC.I.Pigment Red 177から選択される各成分と、有機溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと、を下記表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後3本ロールミルで混練して、感光性樹脂組成物1および2を調製した。
<感光性フィルム積層体の作製>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製ダイアホイルR310)の片面にサンドブラスト処理を行い、フィルム表面に不均一な突出部を形成した厚さ16μmの支持フィルムを準備した。得られた支持フィルムの表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数および算術平均表面粗さRa´の測定を以下のようにして測定したところ、表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数は8.0×102個であり、算術平均表面粗さRa´は0.13μmであった。
単位面積1mm2当たりの突出部の個数と算術平均表面粗さRa´の測定には、形状測定レーザーマイクロスコープ(キーエンス社製VK−X100)を使用した。形状測定レーザーマイクロスコープ(同VK−X100)本体(制御部)および、VK観察アプリケーション(キーエンス社製VK−H1VX)を起動させた後、x−yステージ上に測定する試料(支持フィルム)を前記支持フィルムの突出部を有する表面を上部にして乗せた。
顕微鏡部(キーエンス社製VK−X110)のレンズレボルバーを回して倍率10倍の対物レンズを選択し、VK観察アプリケーション(同VK−H1VX)の画像観察モードで、大まかにピント、明るさを調節した。x−yステージを操作して、試料表面のほぼ中央部が、画面の中心に来るように調節した。倍率10倍の対物レンズを倍率100倍に替え、VK観察アプリケーション(同VK−H1VX)の画像観察モードのオートフォーカス機能で、試料の表面にピントを合わせた。VK観察アプリケーション(同VK−H1VX)の形状測定タブの簡単モードを選択し、測定開始ボタンを押して、試料の表面形状の測定を行い、表面画像ファイルを得た。VK解析アプリケーション(キーエンス社製VK−H1XA)を起動して、得られた表面画像ファイルを表示させた後、傾き補正を行った。
「単位面積1mm2当たりの突出部の個数」の測定では、試料の表面形状の測定における観察測定範囲(面積)を15073μm2とした。解析アプリケーション(キーエンス社製VK−H1XA)を用いた。表示画面にある計測解析メニューから[体積・面積]を選択し、[体積・面積]ウインドウを表示させ、[体積・面積]ウインドウの[表示画像]ボックスから[高さ]を選択した後、[しきい値]ボタンを押して、[しきい値領域設定ダイヤログ]ボックスを表示させた。[上限]ボックスの値と[下限]ボックスの値を足して2で割った値Ave.(μm)を算出し、そのAve.(μm)に0.2μmを足したZs´値(μm)以上の部分を「突出部」とした。[下限]ボックスの値は変更せず、[上限]ボックスにZs´値(μm)を入力し、OKボタンを押した後に、画像表示領域内でROI描画色の色に変わった箇所の個数C(個)を数え、この個数C(個)から、単位面積1mm2当たりの個数D(個/mm2)(D=C×66.34)を算出した。なお、前記ROI描画色の色に変わった箇所のうち、画像表示領域内で切れてしまい1個として認識できないものについては、0.5個として計上した。
また、「算術平均表面粗さRa´」の測定では、対物レンズを50倍に切り替えて試料の表面形状の測定における観察測定範囲(横)は270μmとした。線粗さウインドウを表示させ、パラメータ設定領域で、JIS B0601−1994を選択した後、測定ラインボタンから水平線を選択し、表面画像内の任意の場所に水平線を表示させ、OKボタンを押すことによって、表面の算術平均表面粗さRa´の数値を得た。更に表面画像内の異なる4か所で水平線を表示させ、算術平均表面粗さRa´の数値を得た。得られた5つの数値の平均値を算出し、試料表面の算術平均表面粗さRa´値とした。
続いて、上記のようにして得られた感光性樹脂組成物1にメチルエチルケトン300gを加えて希釈し、攪拌機で15分間撹拌して塗工液を得た。塗工液を、上記した支持フィルムの練り込み処理を行った面に塗布し、80℃の温度で15分間乾燥し、厚み20μmの感光性フィルムを形成した。次いで、感光性フィルム上に、厚み18μmのポリプロピレンフィルム(フタムラ社製OPP−FOA)を貼り合わせて、3層からなる感光性フィルム積層体を作製した。
<試験基板の作製>
回路形成された基板(500mm×600mm×0.4mmt)表面をメック(株)社製のCZ8101による化学研磨し、基板の化学研磨された表面に、上記のようにして得られた感光性フィルム積層体からポリプロピレンフィルムを剥離して露出した感光性フィルムの露出面を貼り合わせ、続いて、真空ラミネーター(名機製作所製 MVLP−500)を用いて加圧度:0.8Mpa、70℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、基板と感光性フィルムとを密着させた。
次に、ショートアーク型高圧水銀灯搭載の平行光露光装置を用いて、露光マスクを介して、感光性フィルムに接するポリエチレンテレフタレートフィルム上から傷の視認性およびダイアタッチ材との密着性についてはベタ露光を、パターンの淵崩れについてはSRO80μmとなるように設計したネガパターンを用いて露光をそれぞれした後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して感光性フィルムを露出させた。なお、露光量は、感光性フィルムに接するポリエチレンテレフタレートフィルム上からStouffer41段を用いて露光した際に7段となる露光量とした。その後、露出した感光性フィルムの露出表面に対し、1重量%Na2CO3水溶液を用いて、30℃、スプレー圧2kg/cm2の条件で60秒間現像を行い、パターニングした。続いて、高圧水銀灯を備えたUVコンベア炉にて1J/cm2の露光量でパターニングされた感光性フィルムに照射した後、160℃で60分加熱して追加硬化させて硬化被膜を形成し、基板上に硬化被膜が形成された試験基板1を作製した。
実施例2
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板2を作製した。
実施例3
実施例1において、表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数が8.0×102個であり、算術平均表面粗さRa´が0.13μmの表面を片面に有する厚さ16μmの支持フィルムに代えて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にコーティング処理を行い、フィルム表面に不均一な突出部を形成した厚さ125μmの支持フィルム(株式会社きもと製G−50)を使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板3を作製した。
支持フィルムのコーティング処理を行った表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数および算術平均表面粗さRa´の測定を上記と同様にして測定したところ、表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数は1.3×103個であり、算術平均表面粗さRa´は0.48μmであった。
実施例4
実施例3において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、実施例3と同様にして試験基板4を作製した。
実施例5
実施例1において、表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数が8.0×102個であり、算術平均表面粗さRa´が0.13μmの表面を片面に有する厚さ16μmの支持フィルムに代えて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にコーティング処理を行い、フィルム表面に不均一な突出部を形成した厚さ25μmの支持フィルム(ユニチカ株式会社製CM−25)を使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板5を作製した。支持フィルムのコーティング処理を行った表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数および算術平均表面粗さRa´の測定を上記と同様にして測定したところ、表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数は4.5×103個であり、算術平均表面粗さRa´は0.19μmであった。
実施例6
実施例5において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、実施例5と同様にして試験基板6を作製した。
実施例7
実施例1において、表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数が8.0×102個であり、算術平均表面粗さRa´が0.13μmの表面を片面に有する厚さ16μmの支持フィルムに代えて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製E5041)の片面にサンドブラスト処理を行い、フィルム表面に不均一な突出部を形成した厚さ25μmの支持フィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板7を作製した。支持フィルムのサンドブラスト処理を行った表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数および算術平均表面粗さRa´の測定を上記と同様にして測定したところ、表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数は1.7×104個であり、算術平均表面粗さRa´は5.00μmであった。
実施例8
実施例7において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、実施例7と同様にして試験基板8を作製した。
比較例1
実施例1において、表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数が8.0×102個であり、算術平均表面粗さRa´が0.13μmの表面を片面に有する厚さ16μmの支持フィルムに代えて、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製E5041)を支持フィルムとして使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板9を作製した。支持フィルムの表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数および算術平均表面粗さRa´の測定を上記と同様にして測定したところ、表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数は0個であり、算術平均表面粗さRa´は0.20μmであった。
比較例2
比較例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、比較例1と同様にして試験基板10を作製した。
<傷の視認性評価>
上記のようにして作製した実施例1〜8および比較例1〜2の各試験基板の露光領域における硬化被膜の表面に、硬度2Hの鉛筆の芯を、角度45°、荷重4.9Nをかけた状態で押し当て、1秒間に1mmの速度で移動させ、硬化被膜の表面上の傷の視認性を目視にて評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:露光領域における硬化被膜の表面上に傷が確認されない
×:露光領域における硬化被膜の表面上に傷が確認される
なお、各試験基板を作製後、5分以内に前記内容に基づき、試験および評価を行った。
評価結果は下記の表2に示されるとおりであった。
<ダイアタッチ材の作製>
エポキシ樹脂としてトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬社製EPPN−502H)80部と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製RE−303S−L)15部と、可撓性エポキシ樹脂(三菱化学社製YX7105)5部に、メチルエチルケトン50部を加えて加熱溶融させ、樹脂ワニスAを得た。得られた樹脂ワニスAの150部に対し、硬化触媒としてイミダゾール化合物(四国化成社製2E4MZ)3部、フィラーとして溶融シリカ(デンカ社製FB−3SDX)150部、シランカップリング剤(信越シリコーン社製KBE−402)1部を添加し、攪拌機にて予備混合した後3本ロールミルで混練して、樹脂ワニスBを得た。得られた樹脂ワニスBを基材フィルムに塗布し、80℃の温度で15分間乾燥し、厚さ45μmのダイアタッチ材を作製した。
<ダイアタッチ材との密着性評価>
上記のようにして作製したダイアタッチ材を所定のサイズ(縦5mm×横5mm×厚さ0.045mm)に切り抜き、シリコンチップ(縦5mm×横5mm×厚さ0.725mm、酸化膜コーティング)に70℃で貼付け、熱圧着試験機を用いて、実施例1〜8および比較例1〜2の各試験基板の硬化被膜の表面に、シリコンチップ、ダイアタッチ材、硬化被膜の順になるように圧着した(圧着条件:260℃、10秒間、1.0MPa)。次に、175℃で120分加熱してダイアタッチ材を完全硬化させた。その後、85℃、相対湿度85%の恒温恒湿器(エスペック社製PR−2KP)に72時間放置し、取り出し後、接着力測定装置(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製、万能型ボンドテスター4000Plus)を使い、サンプルをセットするステージの温度を260℃とし、基板からのツール高さ0.05mm、ツール速度0.05mm/秒の条件で接着力を測定した。試験片は各10個ずつ作製し、評価基準は以下の通りとした。
○:試験片10個すべてで接着力が3MPa以上
×:試験片10個中、接着力が3MPa未満の試験片が1つ以上発生
なお、各試験基板を作製後、5分以内に前記内容に基づき、試験および評価を行った。
測定結果は、下記の表2に示されるとおりであった。
<感光性フィルムの表面の単位面積1mm2当たりの窪みの個数および算術平均表面粗さRaの測定>
回路形成された基板(150mm×95mm×0.8mmt)表面をメック(株)社製のCZ8101による化学研磨し、基板の化学研磨された表面に、実施例1〜8および比較例1〜2に用いられた各感光性フィルム積層体からポリプロピレンフィルムを剥離して露出した感光性フィルム(140mm×90mm)の露出面を貼り合わせ、続いて、真空ラミネーター(名機製作所製 MVLP−500)を用いて加圧度:0.8Mpa、70℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、基板と感光性フィルムとを密着させた。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基板に対して90°で剥離して感光性フィルムを露出させた。露出後、5分以内に感光性フィルム表面の単位面積1mm2当たりの窪みの個数と算術平均表面粗さRaの測定を以下のようにして行った。
感光性フィルム表面の単位面積1mm2当たりの窪みの個数は、支持フィルム表面の単位面積1mm2当たりの突出部の個数の測定と同じ装置を用い、試料を支持フィルムに代えて、露出した感光性フィルムを貼り合わせた基板(感光性フィルム表面を上部にする)とした以外は上記と同様にして測定を行った。感光性フィルム表面の「単位面積1mm2当たりの窪みの個数」の測定では、試料の表面形状の測定における観察測定範囲(面積)を15073μm2とした。解析アプリケーション(同VK−H1XA)を用いた。表示画面にある計測解析メニューから[体積・面積]を選択し、[体積・面積]ウインドウを表示させ、[体積・面積]ウインドウの[表示画像]ボックスから[高さ]を選択した後、[しきい値]ボタンを押して、[しきい値領域設定ダイヤログ]ボックスを表示させた。[上限]ボックスの値と[下限]ボックスの値を足して2で割った値Ave.(μm)を算出し、そのAve.(μm)から0.2μmを引いた値Zs(μm)以下の部分を「窪み」とした。[下限]ボックスの値は変更せず、[上限]ボックスにZs(μm)の値を入力し、OKボタンを押した後に、画像表示領域の境界部分でROI描画色の色に変わった箇所の個数C(個)を数え、この個数C(個)から、単位面積1mm2当たりの個数D(個/mm2)(D=C×66.34)を算出した。なお、前記ROI描画色の色に変わった箇所のうち、画像表示領域内で切れてしまい1個として認識できないものについては、0.5個として計上した。また、感光性フィルム表面の「算術平均表面粗さRa」は、試料を支持フィルムに代えて、露出した感光性フィルムを貼り合わせた基板(感光性フィルム表面を上部にする)とした以外は上記と同様にして測定を行った。測定した各感光性フィルム表面の「単位面積1mm2当たりの窪みの個数」および「算術平均表面粗さRa」は、表2に示されるとおりであった。なお、実施例のいずれにおいても、確認された窪みは不均一であった。
<パターンの淵崩れ>
上記のようにして作製した各試験基板を用い、10個の開口部の淵を1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:10個の開口部のいずれも、淵の形成が良好である
○:開口部がテーパー形状になっているが、淵の上部に感光性フィルムに含まれる樹脂分のせり出しが、10個の開口部のいずれにも観察されない
×:淵の上部に感光性フィルムに含まれる樹脂分のせり出しが、1個以上の開口部で観察される
評価結果は、下記の表2に示されるとおりであった。