本発明による感光性フィルム積層体について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明による感光性フィルム積層体の一実施形態を示した概略断面図である。本発明による感光性フィルム積層体1は、支持フィルム10と、中間層20と、感光性樹脂組成物により形成されてなる感光性フィルム30と、をこの順で積層した構造を備えている。ここで感光性フィルムとは、感光性樹脂組成物をフィルム形状としたものであって、支持フィルムや保護フィルムといった他の層が積層されていないものをいう。また、本発明においては、上記構成に加えて他のフィルム等を備えていてもよい。例えば、感光性フィルムの表面に塵等が付着するのを防止するとともに、感光性フィルム積層体の取扱性を考慮して、図2に示すように、感光性フィルム積層体1には、感光性フィルム30の、中間層20とは反対の面側に、更に保護フィルム40が設けられていてもよい。以下、本発明によるフィルム積層体を構成する各構成要素について説明する。
[支持フィルム]
本発明の感光性フィルム積層体における支持フィルムは、後記する感光性フィルムを支持するとともに、後記するように感光性フィルムの露光、現像時に、感光性フィルムの支持フィルムと接する側の表面に所定の表面形態を賦型する役割を有するものである。
本発明の感光性フィルム積層体における支持フィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。また、前記熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合、フィルムを成膜する際の樹脂中にフィラーを添加(練り込み処理)したり、マットコーティング(コーティング処理)したり、フィルム表面をサンドブラスト処理のようなブラスト処理をしたり、あるいはヘアライン加工、またはケミカルエッチング等の処理を施したものであってもよい。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。支持フィルムは単層でもよく、2層以上が積層されていてもよい。
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムを使用することが好ましい。
支持フィルムの厚さは、取扱い性の観点より10〜150μmの範囲が好ましく、10〜100μmの範囲がより好ましく、10〜50μmの範囲がさらに好ましい。
また、支持フィルムにコーティングにより後述する中間層が設けられている支持フィルムと中間層とが一体化したものを用いてもよい。
<中間層>
本発明の感光性フィルム積層体における中間層は、メラミンおよびメラミン化合物の少なくともいずれか1種を含む。本発明者等は鋭意研究した結果、支持フィルムと感光性フィルムとの間に特定の材料からなる中間層を設けることにより、感光性フィルムの表面が強い衝撃による影響を受けないことを見出した。その理由は必ずしも明らかではないが、中間層が、積層された感光性フィルムの表面を強い衝撃から保護し、その結果、感光性フィルム表面状態に影響を及ぼさなくなると推測されるが、あくまでも推測の範囲であり、必ずしもこの限りではない。
中間層の厚さは、感光性フィルム保護の観点より0.1〜10μmの範囲が好ましく、1〜8μmの範囲がより好ましい。
中間層に含まれるメラミン、メラミン化合物は公知慣用のものを使用することができる。また本発明において、メラミン化合物にはメラミン化合物と他の物質との混合物も含むものとする。なお、本発明において「メラミン」とは、メラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)とホルムアルデヒドの付加縮合により硬化された樹脂をいうが、かかるメラミンとホルムアルデヒドとの初期反応物であるメチロールメラミンおよびそのアルキル化物であるアルキル化メチロールメラミンも含む概念である。メラミンとしては、メチル化メチロールメラミン、プロピル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、イソブチル化メチロールメラミン等の変性メラミンも含まれる。また、メラミン(メタ)アクリレートのようなメラミン変性物も含まれる。
また、メラミン化合物とは、上記したメラミンと、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等の他の樹脂との混合物であり、例えば、アクリルメラミン、アルキドメラミン、ポリエステルメラミン、エポキシメラミン等が挙げられる。これらのなかでも、より優れた耐衝撃性が得られることよりアクリルメラミン、エポキシメラミンが好ましく、アクリルメラミンがより好ましい。なお、ここでのアクリルメラミンとは、アクリル樹脂とメラミン樹脂との混合物であり、アクリル樹脂をメラミン樹脂で硬化させるタイプものをいう。またエポキシメラミンとは、エポキシ樹脂とメラミン樹脂との混合物であり、エポキシ樹脂をメラミン樹脂で硬化させるタイプのものをいう。メラミンの具体例としては、DIC株式会社製アミディアJ−820−60、L−109−65、L−117−60、L−127−60、13−548、G−821−60、L−110−60G、L−125−60、L−166−60B、L−105−60、三井化学株式会社製ユーバン20SE60、20SB、22R、125、132、62、60R、169等が挙げられる。また、アクリル樹脂やエポキシ樹脂も特に制限なく公知慣用のものを使用することができる。アクリル樹脂の具体例としては、DIC株式会社製アクリディック54−172−60、A−322、A−405、A−452等が挙げられる。また、エポキシ樹脂の具体例としては、三井化学株式会社製エポミックR301等が挙げられる。メラミン樹脂の含有量はアクリル樹脂またはエポキシ樹脂との合計量に対して、0.1〜50質量%とすることが好ましく、1〜40質量%とすることがより好ましい。
このような中間層に含まれるメラミンおよびメラミン化合物の配合量は、層全体に対して10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
中間層は、効果を損なわない範囲で他の樹脂が含まれていてもよい。特に、樹脂成分としてシリコーン系樹脂が中間層に含まれていることが好ましい。本発明による感光性フィルム積層体は、感光性フィルムを硬化させて硬化被膜を形成した際に、支持フィルムおよび中間層を感光性フィルム(硬化被膜)から剥離する必要があるが、中間層にシリコーン系樹脂が含まれることにより、感光性フィルムから支持フィルムおよび中間層を剥離し易くなるとともに、支持フィルムと中間層との密着性を維持することができる。また、中間層に上記したメラミンまたはメラミン化合物とシリコーン系樹脂とが含まれることにより、衝撃や押圧によって感光性フィルムの表面が損傷するのをより一層抑制することができる。シリコーン系樹脂としては、特に制限なく使用することができるが、例えば、東亜合成株式会社製のサイマックUS−120、US−150、US−270、US−350およびアロンGS−30等が挙げられる。
また、中間層には、樹脂以外の成分として、フィラー、硬化促進剤、添加剤、帯電防止剤等が適宜含有されていてもよい。フィラーとしては、特に制限なく公知のものを使用でき、例えば、シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。それらのなかでもシリカが好ましい。フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、1.0〜5.5μmが好ましく、2.0〜4.5μmであることがより好ましく、2.0〜3.0μmであることがさらに好ましい。また、帯電防止剤としては、従来公知の停電防止剤を使用できるが、それらのなかでも下記一般式(I)で表される第4級アンモニウム塩を主成分とするカチオン系界面活性剤を好適に使用することができる。下記式で表されるようなカチオン系界面活性剤が中間層に含まれることにより、衝撃や押圧によって感光性フィルムの表面が損傷するのをより一層抑制することができる。
(式中、Rは炭素原子数8以上のアルキル基を表し、R
1は低級アルキル基を表し、R
2は低級アルキレン基を表す。)
上記式(I)のカチオン系界面活性剤のなかでも、下記一般式(II)で表されるものをより好ましく使用することができる。
(式中、Rは炭素原子数8以上のアルキル基を表わす。)
<感光性フィルム>
本発明の感光性フィルム積層体を構成する感光性フィルムは、露光、現像することによってパターニングされ、回路基板上に設けられた硬化被膜となる。硬化被膜としては、ソルダーレジスト層であることが好ましい。このような感光性フィルムは感光性樹脂組成物を用いて形成され、感光性樹脂組成物は従来公知のソルダーレジストインキ等を制限なく使用できるが、以下、本発明による感光性フィルムに好ましく使用できる感光性樹脂組成物の一例を説明する。
本発明において、感光性樹脂組成物は、架橋成分およびフィラーを含むことが好ましい。さらに、光重合開始剤を含むことがより好ましい。架橋成分はカルボキシル基含有感光性樹脂や感光性モノマーが好ましく、さらに加熱する場合、熱によって架橋する成分を含むことが好ましい。以下、各成分について説明する。
[架橋成分]
架橋成分は架橋する成分であれば特に制限はされず、公知慣用のものを使用することができる。特にカルボキシル基含有感光性樹脂や感光性モノマーが好ましく、さらに加熱する場合、熱によって架橋する成分(以下、熱架橋成分)を含むことが好ましい。
カルボキシル基含有感光性樹脂は、光照射により重合ないし架橋して硬化する成分であり、カルボキシル基が含まれることによりアルカリ現像性とすることができる。また、光硬化性や耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものが好ましい。
また、カルボキシル基含有感光性樹脂として、エポキシ樹脂を出発原料として使用していないカルボキシル基含有感光性樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂を出発原料として使用していないカルボキシル基含有感光性樹脂は、ハロゲン化物イオン含有量が非常に少なく、絶縁信頼性の劣化を抑えることができる。カルボキシル基含有感光性樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーまたはポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
(1)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
(2)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基を、さらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸などの不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック型フェノール樹脂、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物などの1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に、(メタ)アクリル酸などの不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に、不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物などのジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に、酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(7)ジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などのカルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(8)ジイソシアネートと、カルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(9)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレンなどの不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(10)後述するような多官能オキセタン樹脂に、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などのジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に、2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどの1分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂、および
(11)上述した(1)〜(10)のいずれかのカルボキシル基含有感光性樹脂に、1分子中に環状エーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂、等が挙げられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、以下他の類似の表現についても同様である。
上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の中でも、上述したように、エポキシ樹脂を出発原料として用いていないカルボキシル基含有感光性樹脂を好適に用いることができる。従って、上述したカルボキシル基含有感光性樹脂の具体例のうち、(4)〜(8)のいずれか1種以上のカルボキシル基含有感光性樹脂を特に好適に用いることができる。
このように、エポキシ樹脂を出発原料として用いないことにより、塩素イオン不純物量を例えば100ppm以下と非常に少なく抑えることができる。本発明において好適に用いられるカルボキシル基含有感光性樹脂の塩素イオン不純物含有量は0〜100ppm、より好ましくは0〜50ppm、さらに好ましくは0〜30ppmである。
また、エポキシ樹脂を出発原料として用いないことにより、水酸基を含まない(もしくは、水酸基の量が低減された)樹脂を容易に得ることができる。一般的に水酸基の存在は水素結合による密着性の向上など優れた特徴も有しているが、著しく耐湿性を低下させることが知られており、水酸基を含まないカルボキシル基含有感光性樹脂とすることにより、耐湿性を向上させることが可能となる。
なお、ホスゲンを出発原料として用いていないイソシアネート化合物、エピハロヒドリンを使用しない原料から合成され、塩素イオン不純物量が0〜30ppmのカルボキシル基含有ウレタン樹脂も好適に用いられる。このようなウレタン樹脂において、水酸基とイソシアネート基の当量を合わせることにより、水酸基を含まない樹脂を容易に合成することができる。
また、ウレタン樹脂の合成の際に、ジオール化合物としてエポキシアクリレート変性原料を使用することもできる。塩素イオン不純物は入ってしまうが、塩素イオン不純物量をコントロールできるといった点から使用することは可能である。
このような観点から、例えば半導体パッケージ用ソルダーレジストとしてより優れたPCT耐性、HAST耐性、冷熱衝撃耐性を有する感光性樹脂組成物を得るためには、上述したカルボキシル基含有感光性樹脂(4)〜(8)のいずれか1種以上のカルボキシル基含有感光性樹脂を、より好適に用いることができる。
また、先に示した不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有感光性樹脂(9)に対し、一分子中に環状エーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物として3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートを反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂も、脂環式エポキシを使用していることから、塩素イオン不純物が少なく、好適に用いることができる。
また、上記(4)〜(8)のいずれか一種以上のカルボキシル基含有感光性樹脂と前記(9)のカルボキシル基含有感光性樹脂を併用することでモールド材との密着性がより向上する為、好ましい。
上記のようなカルボキシル基含有感光性樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、アルカリ水溶液による現像が可能である。
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、40〜150mgKOH/gであることが好ましい。カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価が40mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ現像が良好になる。また、酸価を150mgKOH/gを以下とすることで、正常なレジストパターンの描画をし易くできる。より好ましくは、50〜130mgKOH/gである。
カルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上とすることにより、タックフリー性能や解像度を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下とすることで、現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。より好ましくは、5,000〜100,000である。
カルボキシル基含有感光性樹脂の配合量は、固形分換算で全組成物中に、20〜60質量%であることが好ましい。20質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり加工性が向上する。より好ましくは、30〜50質量%である。
感光性モノマーとして用いられる化合物としては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などを感光性モノマーとして用いてもよい。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
感光性モノマーとして用いられる分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物の配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは、5〜70質量部の割合である。エチレン性不飽和基を有する化合物の配合量を5質量部以上とすることにより、光硬化性樹脂組成物の光硬化性が向上する。また、配合量を100質量部以下とすることにより、塗膜硬度を向上させることができる。ここでいう、カルボキシル基含有樹脂とは、カルボキシル基含有感光性樹脂およびカルボキシル基非感光性樹脂のいずれをも含むものである。すなわち、組成物中にいずれか単独で配合されている場合は単独、いずれも配合されている場合はその合計をいう(以降の段落において同じ)。
感光性モノマーは、特にエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有非感光性樹脂を使用した場合、組成物を光硬化性とするために分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(感光性モノマー)を併用する必要があるため、有効である。
熱架橋成分としては、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用のものが使用できる。これらの中でも好ましい熱架橋成分は、1分子中に複数の環状エーテル基および環状チオエーテル基の少なくともいずれか1種(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)を有する熱架橋成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のいずれか一方または2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
多官能エポキシ化合物としては、例えば、三菱化学社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のエピクロン840、エピクロン840−S、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000H、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH−434、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021等(商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL−931等(商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業社製のTEPIC等(商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、DIC社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、EXA−4816、EXA−4822、EXA−4850シリーズの柔軟強靭エポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
分子中に複数の環状チオエーテル基を有するエピスルフィド樹脂としては、例えば、三菱化学社製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、組成物中に、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.3〜2.5当量、より好ましくは、0.5〜2.0当量となる範囲である。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量を0.3当量以上とすることにより、硬化被膜にカルボキシル基が残存せず、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが向上する。また、2.5当量以下とすることにより、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存せず、硬化被膜の強度などが向上する。
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒を配合することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基および/またはオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
熱硬化触媒の配合量は、組成物中に、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を含む場合、固形分換算で、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
アミノ樹脂としては、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体などのアミノ樹脂が挙げられる。例えばメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物などがある。さらに、アルコキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン化合物、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物およびアルコキシメチル化尿素化合物は、それぞれのメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等とすることができる。特に人体や環境に優しいホルマリン濃度が0.2%以下のメラミン誘導体が好ましい。
アミノ樹脂の市販品としては、例えばサイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266、同267、同238、同1141、同272、同202、同1156、同1158、同1123、同1170、同1174、同UFR65、同300(以上、三井サイアナミッド社製)、ニカラックMx−750、同Mx−032、同Mx−270、同Mx−280、同Mx−290、同Mx−706、同Mx−708、同Mx−40、同Mx−31、同Ms−11、同Mw−30、同Mw−30HM、同Mw−390、同Mw−100LM、同Mw−750LM、(以上、三和ケミカル社製)等を挙げることができる。
イソシアネート化合物としては、分子中に複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を用いることができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネートおよび2,4−トリレンダイマーが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体が挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物に含まれるブロック化イソシアネート基は、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基である。所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられる。ブロックイソシアネート化合物を合成する為に用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、先に例示したような化合物が挙げられる。
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノールおよびエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−パレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチルおよび乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミドおよびマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミンおよびプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL−3175、BL−4165、BL−1100、BL−1265、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2078、TPLS−2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住友バイエルウレタン社製、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(以上、日本ポリウレタン工業社製、商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(以上、三井武田ケミカル社製、商品名)、TPA−B80E、17B−60PX、E402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。なお、スミジュールBL−3175、BL−4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。
感光性樹脂組成物には、水酸基やカルボキシル基とイソシアネート基との硬化反応を促進させるためにウレタン化触媒を配合してもよい。ウレタン化触媒としては、錫系触媒、金属塩化物、金属アセチルアセトネート塩、金属硫酸塩、アミン化合物、およびアミン塩の少なくとも何れか1種から選択されるウレタン化触媒を使用することが好ましい。
錫系触媒としては、例えばスタナスオクトエート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機すず化合物、無機すず化合物などが挙げられる。また、金属塩化物としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の塩化物で、例えば、塩化第二コバルト、塩化第一ニッケル、塩化第二鉄などが挙げられる。また、金属アセチルアセトネート塩は、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属のアセチルアセトネート塩であり、例えば、コバルトアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネートなどが挙げられる。さらに、金属硫酸塩としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の硫酸塩で、例えば、硫酸銅などが挙げられる。
アミン化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジモルホリノジエチルエーテル、N−メチルイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、トリアジン、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、2−アミノキヌクリジン、3−アミノキヌクリジン、4−アミノキヌクリジン、2−キヌクリジオール、3−キヌクリジノール、4−キヌクリジノール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)イミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、メラミンおよびベンゾグアナミンのいずれか少なくとも1種などが挙げられる。
アミン塩としては、例えば、DBU(1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7)等の有機酸塩系のアミン塩などが挙げられる。
[フィラー]
フィラーとしては、公知慣用の無機または有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ、酸化チタン、ノイブルグ珪土粒子、およびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を付与する目的で、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイトなども使用することができる。さらに、1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物や前記多官能エポキシ樹脂にナノシリカを分散したHanse−Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)や、Hanse−Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)も使用できる。これらを単独でまたは2種以上配合することができる。フィラーを含むことにより、得られる硬化物の物理的強度等を上げることができる。
フィラーの配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは500質量部以下、より好ましくは0.1〜300質量部、特に好ましくは、0.1〜150質量部である。フィラーの配合量が500質量部以下の場合、光硬化性熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、印刷性が良く、硬化物が脆くなりにくい。
[光重合開始剤]
本発明において、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂を光重合させるために使用される光重合開始剤としては、公知のものを用いることができるが、なかでも、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI−325、イルガキュアー(登録商標)OXE01、イルガキュアーOXE02、ADEKA社製N−1919、アデカアークルズ(登録商標)NCI−831などが挙げられる。
また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式(III)で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
(式中、X
1は、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y
1、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを表し、nは0または1の整数である)
特に、上記式中、X1、Y1が、それぞれ、メチル基またはエチル基であり、Zがメチルまたはフェニルであり、nが0であり、Arが、フェニレン、ナフチレン、チオフェンまたはチエニレンであるオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
好ましいカルバゾールオキシムエステル化合物として、下記一般式(IV)で表すことができる化合物を挙げることもできる。
(式中、R
3は、炭素原子数1〜4のアルキル基、または、ニトロ基、ハロゲン原子もしくは炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
R
4は、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、または、炭素原子数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
R
5は、酸素原子または硫黄原子で連結されていてもよく、フェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基を表す。
R
6は、ニトロ基、または、X
2−C(=O)−で表されるアシル基を表す。
X
2は、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいアリール基、チエニル基、モルホリノ基、チオフェニル基、または、下記式(V)で示される構造を表す。)
その他、特開2004−359639号公報、特開2005−097141号公報、特開2005−220097号公報、特開2006−160634号公報、特開2008−094770号公報、特表2008−509967号公報、特表2009−040762号公報、特開2011−80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
オキシムエステル系光重合開始剤を使用する場合の配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部とすることが好ましい。0.01質量部以上とすることにより、銅上での光硬化性がより確実となり、耐薬品性などの塗膜特性が向上する。また、5質量部以下とすることにより、塗膜表面での光吸収が抑えられ、深部の硬化性も向上する傾向がある。より好ましくは、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.5〜3質量部である。
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のイルガキュアーTPO、IGM Resins社製Omnirad(オムニラッド)819(旧Irgacure(イルガキュアー)819)などが挙げられる。
また、光重合開始剤としてはBASFジャパン社製のイルガキュアー389、イルガキュアー784も好適に用いることができる。
オキシムエステル系光重合開始剤以外の光重合開始剤を用いる場合の配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましい。0.01質量部以上とすることにより、銅上での光硬化性がより確実となり、耐薬品性などの塗膜特性が向上する。また、15質量部以下とすることにより、十分なアウトガスの低減効果が得られ、さらに硬化被膜表面での光吸収が抑えられ、深部の硬化性も向上する。より好ましくはカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である。
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ベンゾイン化合物としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。また、アセトフェノン化合物としては、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。また、アントラキノン化合物としては、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどが挙げられる。また、チオキサントン化合物としては、例えば2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。また、 ケタール化合物としては、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。さらに、ベンゾフェノン化合物としては、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えばエタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、市販品では、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアー(登録商標)MABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)などのジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアー(登録商標)EPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセティクス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)などが挙げられる。3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜450nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物およびケトクマリン類が特に好ましい。
ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが毒性が低いことから好ましい。ジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が350〜410nmと紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性樹脂組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色感光性フィルムを得ることが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが、波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
これらのうち、チオキサントン化合物および3級アミン化合物が好ましい。特に、チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。
光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤の総量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して35質量部以下であることが好ましい。35質量部以下とすることにより、これらの光吸収が抑えられ、深部の硬化性も向上する。
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の加工精度を向上させることができる。
本発明による感光性フィルムに使用される感光性樹脂組成物は、上記した成分以外にも、ブロック共重合体、着色剤、エラストマー、熱可塑性樹脂等の他の成分が含まれていてもよい。以下、これら成分についても説明する。
上記した感光性樹脂組成物には、ブロック共重合体を好適に配合することができる。ブロック共重合体とは、性質の異なる二種類以上のポリマーが、共有結合で繋がり長い連鎖になった分子構造の共重合体のことである。20℃〜30℃の範囲において固体であるものが好ましい。この範囲内において固体であればよく、この範囲外の温度においても固体であってもよい。上記温度範囲において固体であることにより、感光性フィルムとしたときや支持フィルムに塗布し仮乾燥したときのタック性に優れる。
ブロック共重合体としてはXYX、あるいはXYX’型ブロック共重合体が好ましい。XYXあるいはXYX’型ブロック共重合体のうち、中央のBがソフトブロックでありガラス転移点Tgが低く、好ましくは0℃未満であり、その両外側AないしX’がハードブロックでありTgが高く、好ましくは0℃以上のポリマー単位により構成されているものが好ましい。ガラス転移点Tgは示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
また、XYXあるいはXYX’型ブロック共重合体のうち、XないしX’のTgが50℃以上のポリマー単位からなり、YのTgが−20℃以下であるポリマー単位からなるブロック共重合体がさらに好ましい。また、XYXあるいはXYX’型ブロック共重合体のうち、XないしX’が、カルボキシル基含有樹脂との相溶性が高いものが好ましく、Yがカルボキシル基含有樹脂との相溶性が低いものが好ましい。このように、両端のブロックがマトリックスに相溶であり、中央のブロックがマトリックスに不相溶であるブロック共重合体とすることで、マトリックス中において特異的な構造を示しやすくなると考えられる。
なお、ブロック共重合体はXYXあるいはXYX‘型だけではなくハードブロックとソフトブロック成分がそれぞれ少なくとも一種以上あれば特に限定されることなく使用することができる。
XないしX’成分としてはポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)などが好ましく、B成分としてはポリn−ブチルアクリレート(PBA)、ポリブタジエン(PB)などが好ましい。また、XないしX’成分の一部にスチレンユニット、水酸基含有ユニット、カルボキシル基含有ユニット、エポキシ含有ユニット、N置換アクリルアミドユニット等に代表される上記カルボキシル基含有樹脂と相溶性に優れる親水性ユニットを導入し、更に相溶性を向上させることが可能となる。本発明者等は、このようにして得られたブロック共重合体が上記したカルボキシル基含有樹脂との相溶性が特に良好であること、そして、驚くべきことに冷熱衝撃耐性を向上させることができ、さらに驚くべきことにエラストマーを添加した物はガラス転移温度(Tg)が下がる傾向にあるのに対し、前記ブロック共重合体を添加した物はTgが下がらない傾向があることを見いだした。
ブロック共重合体の製造方法としては、例えば、特願2005−515281号、特願2007−516326号に記載の方法が挙げられる。 ブロック共重合体の市販品としては、アルケマ社製のリビング重合を用いて製造されるアクリル系トリブロックコポリマーが挙げられる。ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリメチルメタアクリレートに代表されるSBMタイプ、ポリメチルメタアクリレート−ポリブチルアクリレート−ポリメチルメタアクリレートに代表されるMAMタイプ、更にはカルボン酸変性や親水基変性処理されたMAM NタイプやMAM Aタイプが挙げられる。SBMタイプとしてはE41、E40、E21、E20等が挙げられ、MAMタイプとしてはM51、M52、M53、M22等が挙げられ、MAM Nタイプとしては52N、22N、MAM AタイプとしてはSM4032XM10等が挙げられる。また、クラレ社製のクラリティもメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルより誘導されるブロック共重合である。
ブロック共重合体としては3元以上のブロック共重合体が好ましく、リビング重合法により合成された分子構造が精密にコントロールされたブロック共重合体が本発明の効果を得る上でより好ましい。これは、リビング重合法により合成されたブロック共重合体は分子量分布が狭く、それぞれのユニットの特徴が明確になったためであると考えられる。用いるブロック共重合体の分子量分布は2.5以下が好ましく、更に好ましくは2.0以下である。
ブロック共重合体の重量平均分子量は一般的に20,000〜400,000、さらには30,000〜300,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が20,000未満であると、目的とする強靭性、柔軟性の効果が得られず、タック性にも劣る。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、光硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、印刷性、現像性が著しく悪くなる。
ブロック共重合体の配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、より好ましくは5〜35質量部である。1質量部以上でその効果は期待でき、50質量部以下で光硬化性樹脂組成物として現像性や塗布性が良好となる。
感光性樹脂組成物には、着色剤が含まれていてもよい。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には以下のようなカラ−インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 149,150,52,207等が挙げられる。また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60。染料系としては、Solvent Blue 35,63,68,70,83,87,94,97,122,136,67,70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
その他、紫、オレンジ、茶色、黒、白などの着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25,酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
着色剤の配合量は特に制限はないが、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.1〜7質量部である。但し、酸化チタンなどの白色着色剤の配合量は、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部、より好ましくは1〜100質量部、より好ましくは3〜80質量部である。
また、感光性樹脂組成物には、得られる硬化物に対する柔軟性の付与、硬化物の脆さの改善などを目的にエラストマーを配合することができる。エラストマーとしては、例えばポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステルウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステルアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマーが挙げられる。また、種々の骨格を有するエポキシ樹脂の一部または全部のエポキシ基を両末端カルボン酸変性型ブタジエン−アクリロニトリルゴムで変性した樹脂なども使用できる。更にはエポキシ含有ポリブタジエン系エラストマー、アクリル含有ポリブタジエン系エラストマー、水酸基含有ポリブタジエン系エラストマー、水酸基含有イソプレン系エラストマー等も使用することができる。エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の混合物として使用してもよい。
また、得られる硬化物の可撓性、指触乾燥性の向上を目的に慣用公知のバインダーポリマーを使用することができる。バインダーポリマーとしてはセルロース系、ポリエステル系、フェノキシ樹脂系ポリマーが好ましい。セルロース系ポリマーとしてはイーストマン社製セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)シリーズが挙げられ、ポリエステル系ポリマーとしては東洋紡社製バイロンシリーズ、フェノキシ樹脂系ポリマーとしてはビスフェノールA、ビスフェノールFおよびそれらの水添化合物のフェノキシ樹脂が好ましい。
バインダーポリマーの配合量は、組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは、5〜30質量部である。バインダーポリマーの配合量が50質量部以下であると、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性により優れ、現像可能な可使時間が長くなる。
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じてさらに、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。また、微粉シリカ、ハイドロタルサイト、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤およびレベリング剤の少なくとも何れか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、防錆剤、蛍光増白剤などのような公知慣用の添加剤類の少なくとも何れか一種を配合することができる。
感光性フィルムは、支持フィルムの一方の面に、上記した感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて形成することができる。感光性樹脂組成物の塗布性を考慮して、感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で支持フィルムの一方の面に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して有機溶剤を揮発させて、タックフリーの塗膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、5〜150μm、好ましくは10〜60μmの範囲で適宜選択される。
使用できる有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
有機溶剤の揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
[保護フィルム]
本発明による感光性フィルム積層体は、上記した感光性フィルムの表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、感光性フィルムの中間層とは反対の面に保護フィルムが設けられていてもよい。
保護フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができるが、保護フィルムと感光性樹脂層との接着力が、支持フィルムと感光性樹脂層との接着力よりも小さくなるような材料を選定することが好ましい。また、感光性フィルム積層体の使用時に、保護フィルムを剥離し易くするため、保護フィルムの感光性樹脂層と接する面に上記したような離型処理を施してもよい。
保護フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10〜150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
<硬化物およびプリント配線板の製造方法>
本発明の感光性フィルム、または、感光性フィルム積層体を用いて硬化物が形成される。かかる硬化物の形成方法および回路パターンが形成された基板上に上記硬化物(硬化被膜)を備えたプリント配線板を製造する方法を説明する。一例として、保護フィルムを備えた感光性フィルム積層体を用いてプリント配線板を製造する方法を説明する。先ず、i)上記した感光性フィルム積層体から保護フィルムを剥離して、感光性フィルムを露出さ
せ、ii)前記回路パターンが形成された基板上に、前記感光性フィルム積層体の感光性フィルムを貼合し、iii)前記感光性フィルム積層体の支持フィルム上から露光を行い、iv)前記感光性フィルム積層体から支持フィルムを剥離して現像を行うことにより、前記基板上にパターニングされた感光性フィルムを形成し、v)前記パターニングされた感光性フィルムを光照射ないし熱により硬化させて、硬化被膜を形成する、ことによりプリント配線板が形成される。なお、保護フィルムが設けられていない感光性フィルム積層体を使用する場合は、保護フィルムの剥離工程(i工程)が不要であることは言うまでもない。以下、各工程について説明する。
まず、感光性フィルム積層体から保護フィルムを剥離して感光性樹脂層を露出させ、回路パターンが形成された基板上に、感光性フィルム積層体の感光性樹脂層を貼合する。回路パターンが形成された基板としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
感光性フィルム積層体の感光性フィルムを回路基板上に貼合するには、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で貼合することが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、感光性樹脂組成物層が回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面への穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1〜2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40〜120℃であることが好ましい。
次に、感光性フィルム積層体の支持フィルム上から露光(活性エネルギー線の照射)を行う。この工程により、露光された感光性樹脂層のみが硬化する。露光工程は特に限定されるものではなく、例えば、接触式(または非接触方式)により、所望のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光してもよいが、直接描画装置により所望パターンを活性エネルギー線により露光してもよい。
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜800mJ/cm2、好ましくは20〜600mJ/cm2の範囲内とすることができる。
露光後、感光性フィルム積層体から支持フィルムおよび中間層を剥離して現像を行うことにより、基板上にパターニングされた感光性フィルムを形成する。支持フィルムおよび中間層を剥離した際、露光されて硬化した感光性フィルムの表面に、中間層表面の形態が賦型される。
現像工程は特に限定されるものではなく、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法などを用いることができる。また、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
次いで、パターニングされた感光性フィルムを、活性エネルギー線(光)照射ないし熱により硬化させて、硬化物(硬化被膜)を形成する。この工程は本硬化または追加硬化と呼ばれるものであり、感光性フィルム中の未反応モノマーの重合を促進させ、さらには、カルボキシル基含有感光性樹脂とエポキシ樹脂とを熱硬化させて、残存するカルボキシル基の量を低減することができる。活性エネルギー線照射は、上記した露光と同様にして行うことができるが、露光時の照射エネルギーよりも強い条件で行うことが好ましい。例えば、500〜3000mJ/cm2とすることができる。また、熱硬化は、100〜200℃で20〜90分間程度の加熱条件で行うことができる。なお、本硬化は、光硬化させた後に熱硬化を行うことが好ましい。光硬化を先に行うことで加熱硬化時においても樹脂の流動が抑制され、賦型された表面が維持されることがある。
本発明による感光性フィルム積層体は、とりわけICパッケージ用のソルダーレジスト層の形成に好適に使用できる。
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
<カルボキシル基含有感光性樹脂の調製>
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和電工社製ショーノールCRG951、OH当量:119.4)119.4gと、水酸化カリウム1.19gとトルエン119.4gとを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。得られたノボラック型クレゾール樹脂は、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0gと、アクリル酸43.2gと、メタンスルホン酸11.53gと、メチルハイドロキノン0.18gとトルエン252.9gとを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物62.3gを徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させて、酸価88mgKOH/gの、不揮発分71%としてカルボキシル基含有感光性樹脂ワニス1を得た。
<感光性樹脂組成物の調製>
上記のようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂ワニス1と、アクリレート化合物として感光性モノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製KAYARAD DPHA)と、熱硬化性成分であるエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製EPICLON840−S)およびビフェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製NC−3000H)と、光重合開始剤としてBASFジャパン社製IRGACURE TPOまたはBASFジャパン社製IRGACURE OXE02と、フィラーとして硫酸バリウム(堺化学工業社製B−30)および/または球状シリカ(アドマテックス社製アドマファイン SO−E2)と、熱硬化触媒としてメラミンと、着色剤として、三菱化学社製カーボンブラックM−50、ジオキサジンバイオレットC.I.Pigment Violet 23、C.I.Pigment Yellow 147、C.I.Pigment Blue 15:3およびC.I.Pigment Red 177から選択される各成分と、有機溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと、を下記表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後3本ロールミルで混練して、感光性樹脂組成物1および2を調製した。
<アクリルメラミン樹脂1の調製>
DIC株式会社製アミディアG−821−60(iso−ブチル化メラミン樹脂、固形分60%)およびDIC株式会社製アクリディックA−405(メラミン焼き付け用アクリル樹脂、固形分50%)を質量割合が固形分換算で25:75となるように配合し、撹拌機にて予備撹拌した後3本ロールミルで混練して、アクリルメラミン樹脂1を調製した。
<エポキシメラミン樹脂2の調製>
三井化学株式会社製ユーバン62(iso−ブチル化メラミン樹脂、固形分60%)および三井化学株式会社製エポミックR301MIBK溶液(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分60%)を質量割合が固形分換算で25:75となるように配合し、撹拌機にて予備撹拌した後3本ロールミルで混練して、エポキシメラミン樹脂2を調製した。
<中間層1を有する支持フィルム1の作製>
上記のようにして得られたアクリルメラミン樹脂1をメチルエチルケトンで希釈し固形分濃度35質量%の樹脂溶液を調製した。この樹脂液に、さらに塗膜の厚みに応じて適当な固形分濃度となるようにメチルエチルケトンを加えた後、シリコーン系樹脂(東亜合成株式会社製サイマックUS−270)とシリカとを、アクリルメラミン樹脂1とシリコーン系樹脂と平均粒子径2.3μmのシリカとの各質量割合が59.7:0.3:40となるように添加し、室温で十分に撹拌し、均一な塗布液を得た。この塗布液を支持フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラーT60)の一方の面にグラビアロール法により塗布し、130℃で、20秒間乾燥させ、中間層1を有する支持フィルム1(中間層の厚さ3μm、支持フィルムの厚さ25μm、総厚28μm)を作製した。
<中間層2を有する支持フィルム2の作製>
中間層1を有する支持フィルム1の作製において、アクリルメラミン樹脂1に代えて、上記のようにして得られたエポキシメラミン樹脂2を使用した以外は上記と同様にして中間層2を有する支持フィルム2(中間層の厚さ3μm、支持フィルムの厚さ25μm、総厚28μm)を作製した。
実施例1
<感光性フィルム積層体の作製>
上記のようにして得られた感光性樹脂組成物1にメチルエチルケトン300gを加えて希釈し、攪拌機で15分間撹拌して塗工液を得た。塗工液を、中間層1を有する支持フィルム1の、中間層側の面に塗布し、80℃の温度で15分間乾燥し、厚み20μmの感光性フィルムを形成した。次いで、感光性フィルム上に、厚み18μmのポリプロピレンフィルム(フタムラ社製OPP−FOA)を貼り合わせて、感光性フィルム積層体を作製した。
<試験基板の作製>
回路形成されたFR−4銅張積層板(100mm×150mm×0.8mmt、両面銅箔、銅箔の厚みは両面ともに18μm)表面をメック(株)社製のCZ8101により化学研磨し、基板の化学研磨された表面に、上記のようにして得られた感光性フィルム積層体からポリプロピレンフィルムを剥離して露出した感光性フィルムの露出面を貼り合わせ、続いて、真空ラミネーター(名機製作所製 MVLP−500)を用いて加圧度:0.8Mpa、70℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、基板と感光性フィルムとを密着させ、試験基板1を作製した。
実施例2
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板2を作製した。
実施例3
実施例1において、中間層1を有する支持フィルム1に代えて、中間層2を有するポリエチレンテレフタレートフィルム2を使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板3を作製した。
実施例4
実施例3において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、実施例3と同様にして試験基板4を作製した。
比較例1
実施例1において、中間層1を有する支持フィルム1に代えて、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラーT60)を使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板5を作製した。
比較例2
比較例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、比較例1と同様にして試験基板6を作製した。
比較例3
実施例1において、中間層1を有する支持フィルム1に代えて、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラーT60)を使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板7を作製した。
比較例4
比較例3において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、比較例3と同様にして試験基板8を作製した。
<耐おもり落下性>
上記のようにして作製した実施例1〜4および比較例1〜4の各試験基板をコンクリートの上に置き、前記各試験基板のポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、おもりとして、直径30mm、重さ120gの真鍮製の球を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に対して垂直方向、高さ30cmから落下させた。次に、ショートアーク型高圧水銀灯搭載の平行光露光装置を用いて、露光マスクを介して、ポリエチレンテレフタレートフィルム上からベタ露光した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムおよび中間層を剥離して感光性フィルムを露出させた。なお、露光量は、感光性フィルムに接するポリエチレンテレフタレートフィルム上から、Stouffer41段を用いて露光した際に7段となる露光量とした。露出させた感光性フィルムの表面の、落下したおもりによる窪みを目視により評価した。おもりの落下は、実施例1〜4および比較例1〜4の各試験基板について、それぞれ10枚ずつ実施した。評価基準は以下のとおりとした。なお、各試験基板とも上記<試験基板の作製>における加熱ラミネートをしてから5分後に本試験、評価を行った。また、23℃、相対湿度50%の試験環境下で本試験、評価を行った。
○:10枚の露出させた感光性フィルムの表面すべてで窪みが確認されない
×:10枚の露出させた感光性フィルムの表面中、1枚以上窪みが確認された
評価結果は、下記の表2に示されるとおりであった。
感光性フィルム表面の耐衝撃性を簡易的に確認する方法として、耐おもり落下性試験を行い、評価した。実施例から明らかなように本発明の感光性フィルム積層体を用いることにより、ラミネートされた基板等を重ね合せた際の強い衝撃によっても、感光性フィルム表面に影響を及ぼさない感光性フィルム積層体を実現できることがわかる。一方、比較例から明らかなように本発明の要件を満たさない感光性フィルム積層体を用いても上記効果を実現できないことがわかる。