JP6197446B2 - ホーロー物品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明によるホーロー物品は、基材上に釉薬層が形成されてなるホーロー物品であって、前記基材が鋳鉄であり、前記釉薬層の厚みが、0.1mm以上1.0mm以下であり、前記釉薬層の表面のマイクロウェーブスキャン測定装置により測定されるWd値が0<Wd≦60である。基材として鋳鉄を用い、薄い釉薬層であっても、ホーロー物品表面における気泡の影響を抑えることにより、表面が滑らかな優れた外観品位を実現することができる。また、基材と釉薬層との界面における気泡の影響を抑えることが可能となり、優れた密着性を実現することができる。
本発明において、制御の対象となる「気泡」とは、実際に釉薬層に含まれている気泡をすべて包含するものとする。例えば、基材である鋳鉄に含まれている成分(例えば、炭素)が焼成時に釉薬層および/または外界に存在している水や酸素などと反応することによって発生する二酸化炭素や水素などのガスが、釉薬層内に至り気泡となるものを含む。この気泡は、例えば基材上に釉薬層を形成する際に発生し、釉薬層内に存在していると考えられるが、これ以外の機構で発生し、釉薬層内に至ることとなった気泡も含む。
本発明によるホーロー物品の基材は、鋳鉄であることを特徴とする。「鋳鉄」とは、鉄(Fe)、炭素(C)及びケイ素(Si)を主成分とする鋳物を意味する。また、鋳鉄は、鉄を主成分とし、炭素を2.14〜6.67パーセント含むFe−C系合金であれば、鋳鉄に含まれる各成分の量、その他の組成は特に限定されない。
本発明によるホーロー物品は、基材上に釉薬層が形成されてなる。本発明において、釉薬層は単層でも良く、また複層でも良い。釉薬層が複層からなる場合、釉薬層は、基材である鋳鉄上に形成される下釉層と、当該下釉層上に形成される上釉層を含むのが好ましい。本発明によるホーロー物品の釉薬層の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下であることを特徴とする。好ましい釉薬層の厚みは、0.2mm以上0.6mm以下である。
du:波長0.1mm以下;Wa:波長0.1〜0.3mm;Wb:波長0.3〜1mm;Wc:波長1〜3mm;Wd:波長3〜10mm;Sw:波長0.3〜1.2mm;Lw:波長1.2〜12mm;DOI:波長0.3mm以下
本発明にあっては、下釉層は、以下の方法により特定する。すなわち、レーザー顕微鏡(例えば、光学測定装置LEXTOLS4000、OLYMPUS社製)を用いて、釉薬層の鏡面研磨した断面を観察し、基材と釉薬層が収まるように画像を取得する。取得した画像において、基材上に形成されている黒い層を下釉層と特定する。
本発明にあっては、上釉層は、以下の方法により特定する。すなわち、レーザー顕微鏡(例えば、光学測定装置LEXTOLS4000、OLYMPUS社製)を用いて、釉薬層の鏡面研磨した断面を観察し、基材と釉薬層が収まるように画像を取得する。取得した画像において、上述のように特定した下釉層の上に形成されている層を上釉層と特定する。
本発明のホーロー物品は好ましくは浴槽、シンク、洗面器、手洗い器等の水回り物品とされる。より好ましくは、大型の水回り物品、とりわけ浴槽とされる。
本発明のさらなる態様において、本発明にあっては、上述した本発明によるホーロー物品の製造方法が提供される。すなわち、本発明は、基材上に釉薬層が形成されてなるホーロー物品の製造方法であって、基材を準備する工程と、釉薬層を形成するためのスラリーを準備する工程と、前記スラリーを基材に適用する工程と、前記スラリーを適用した基材を700〜900℃で焼成する工程とを少なくとも含んでなる方法を提供する。
(基材の準備)
100mm×100mmの鋳鉄製の板状試験片を準備した。前処理として、表面に金属光沢が生じるまでサンドブラスト処理を行った。
表1に示すガラスフリット1000g、粘土90g、石英100g、ホウ酸10g、炭酸ナトリウム15g、亜硝酸ナトリウム3g、NaAlO23g、および水600gをボールミルに投入し3時間粉砕を行った。得られたスラリーを密度が1.5〜1.6g/cm3となるように水分調整して、下釉層用スラリーとした。
表2に示すガラスフリット1000g、粘土60g、亜硝酸ナトリウム2g、および水500gをボールミルに投入し4時間粉砕を行った。得られたスラリーを密度が1.6〜1.7g/cm3となるように水分調整して、上釉層用スラリーとした。
100mm×100mmの鋳鉄製の板状試験片に下釉層用スラリーをスプレーガンにて湿式法にて施釉し、1時間乾燥した。その後、トンネル窯を用いてトンネル窯の中央部の最高到達点が750℃となるよう90分間焼成し、焼成後は室温に戻るまで放置した。次に、この下釉層の上に、上釉層用スラリーをスプレーガンにて湿式施釉し、トンネル窯の中央部の最高到達点が800℃となるよう60分間焼成し、焼成後は室温に戻るまで放置し目的のホーロー試片を得た。
スプレーガンを用いたスラリーの施釉において、スプレー圧、試験片に対してスプレーする回数、試験片とスプレーガンとの距離等を変えながら実施例1と同様の方法にて、目的のホーロー試片を得た。
市販のホーロー物品(TOTO株式会社製、品番PPY1610HIPW/HIPWV14、乾式鋳物浴槽)を用意し、浴槽底面部のL字部分を上記と同様の寸法で切り出し、ホーロー試片を得た。
市販の鋳物ホーロー鍋(直径約20cm、施釉方法不明、外観はピンクラメコーティング、内面は薄黄色)を用意し、ホーロー試片とした。
(釉薬層の厚みの測定)
得られたホーロー試片を切断し、断面を鏡面研磨し、試験用サンプルを準備した。この試験用サンプルをレーザー顕微鏡(光学測定装置LEXTOLS4000、OLYMPUS社製)を用いて観察した(対物レンズ20倍)。観察領域として基材と釉薬層が収まるように0.5mm×2mmの画像を取得した。取得した画像における釉薬層と基材との界面を直線近似した基準線を設けた。基準線から釉薬層表面までの垂直方向の距離の最小値を膜厚として算出した。結果は表3に示されるとおりであった。
実施例1〜5および比較例1、2のホーロー試片の釉薬層の表面の粗さ:Wd値を、マイクロウェーブスキャン測定装置を用いて測定した。結果は表3に示されるとおりであった。
実施例1〜5および比較例1、2のホーロー試片の釉薬層の表面を、10名(製造現場から5名、および製造現場以外から5名)が指の腹で触り、触ったときのざらつきの有無を調べ、以下の評価基準により評価した。結果は表3に示されるとおりであった。
〈評価基準〉
○:比較例1と同等のざらつきと回答した人が10人中6人以上の場合
×:比較例1と比べてざらつきが強いと回答した人が10人中6人以上の場合
Claims (9)
- 基材上に釉薬層が形成されてなるホーロー物品であって、
前記基材が鋳鉄であり、
前記釉薬層の厚みが、0.1mm以上1.0mm以下であり、
前記釉薬層の表面のマイクロウェーブスキャン測定装置により測定されるWd値が0<Wd≦60であり、
前記基材表面から前記釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域における焼成後の組成が、SiO 2 >60重量%である、ホーロー物品。 - 前記基材表面から前記釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域に含まれる未溶解状態のSiO2の面積の割合が、当該領域の全面積に対して15%〜70%である、請求項1に記載のホーロー物品。
- 前記釉薬層が、前記基材上に形成される下釉層および上釉層を含むものであり、当該下釉層の焼成後の組成が、次の関係:
55重量%≦RO2≦80重量%(R=Si)、
0重量%≦R2O≦20重量%(R=Na、K)、
0重量%≦RO≦15重量%(R=Ca、Zn、Mg、Ba)および
0重量%≦R2O3≦30重量%(R=Al)
を満たすものである、請求項1または2に記載のホーロー物品。 - 前記ホーロー物品が、水回り物品である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のホーロー物品。
- 前記水回り物品が浴槽である、請求項4に記載のホーロー物品。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のホーロー物品の製造方法であって、
前記基材を準備する工程と、
前記釉薬層を形成するためのスラリーを準備する工程と、
前記スラリーを前記基材に適用する工程と、
前記スラリーを適用した基材を750〜850℃で焼成する工程とを少なくとも含んでなる方法。 - 前記スラリーを前記基材に適用する方法が湿式法である、請求項6に記載の方法。
- 前記釉薬層が下釉層および上釉層を含むものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のホーロー物品の製造方法であって、
前記基材を準備する工程と、
前記基材上に下釉層を形成するためのスラリーを準備する工程と、
前記下釉層を形成するためのスラリーを前記基材に適用する工程と、
前記下釉層を形成するためのスラリーを適用した基材を750〜850℃で焼成する工程と、
前記下釉層上に上釉層を形成するためのスラリーを準備する工程と、
前記上釉層を形成するためのスラリーを前記下釉層に適用する工程と、
前記上釉層を形成するためのスラリーを前記下釉層に適用した基材を800〜850℃で焼成する工程とを少なくとも含んでなる方法。 - 前記下釉層を形成するためのスラリーを前記基材に適用する方法、および前記上釉層を形成するためのスラリーを前記下釉層に適用する方法が湿式法である、請求項8に記載の方法。
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