JP6194919B2 - 回転電機及び同回転電機を備えた車両 - Google Patents

回転電機及び同回転電機を備えた車両 Download PDF

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Description

本発明は、回転電機(モータ、又は発電機、又はモータ兼発電機)に関し、特にロータとステータとが回転軸方向に対向しかつこれらのエアギャップ長を変更可能に構成されたアキシャルギャップ型の回転電機及び同回転電機を備えた車両に関する。
従来から、永久磁石を備えた円盤状のロータとステータとが回転軸方向に対向配置されたアキシャルギャップ型のモータが知られている。このモータは、構造上、小型化、高トルク化、薄型化に適したモータであるが、ロータに備えられた永久磁石によって逆起電力が発生するため、高い回転数領域ではトルクを発生させることが難しい。
なお、特許文献1には、この種のアキシャルギャップ型のモータの一つとして、ロータとステータとのエアギャップ長を変更可能に構成することで、発生トルクの自由度を高めたモータが開示されている。
特開2005−168190号公報
しかし、特許文献1のようなモータは、エアギャップ長を変更するために、専用の動力源(油圧源)を有するギャップ調整機構が必要となるため、モータを含むシステム全体の大型化やコスト高を助長する、という課題もある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、大型化やコスト高を抑えながら、発生トルクの自由度を高めることができる回転電機、および同回転電機を備えた車両を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の回転電機は、回転軸及びこの回転軸と共に回転するロータ本体を備えるロータと、前記ロータ本体に対して前記回転軸の軸方向に対向して配置されかつ周方向に等間隔で並ぶ複数のコイルを備えたステータと、前記コイルに交流電力を供給することにより磁界を形成する制御装置と、を含み、前記ロータ本体は、磁性材料からなり周方向の複数の位置に配置される磁性部と、永久磁石からなり隣接する磁性部の間に各々配置される複数の磁石部とを含み、前複数の磁石部が前記磁性部に対して前記軸方向に変位可能に構成され、前記複数の磁石部は、前記磁性部表面と面一となる前進位置とこの前進位置から反ステータ側に変位した後退位置とに亘って前記軸方向に変位可能であり、前記制御装置は、前記ステータ本体に回転力を生じせる磁界を形成する第1電力供給状態と、前記磁石部と前記コイルとの間に前記軸方向の反発力を生じさせる磁界を形成する第2電力供給状態と、前記磁石部と前記コイルとの間に前記軸方向の吸引力を生じさせる磁界を形成する第3電力供給状態とに、前記コイルに対する電力供給状態を切り替え可能に構成されているものである。
この回転電機の構成によれば、各コイルに対する電力供給状態を第1電力供給状態から第2電力供給状態に切り替えて、前記磁石部と前記コイルとの間に前記軸方向の反発力を生じさせれば、各磁石部を前進位置から後退位置に変位させることが可能となり、他方、各トルクに対する電力供給状態を第1電力供給状態から第3電力供給状態に切り替えて、前記磁石部と前記コイルとの間に前記軸方向の吸引力を生じさせれば、各磁石部を前進位置から後退位置に変位させることが可能となる。つまり、特許文献1のような専用の動力源(油圧源)を有するギャップ調整機構を設けることなく、磁石部の位置を変位させること、すなわちエアギャップ長を変更することが可能となる。従って、この回転電機の構成によれば、大型化やコスト高を抑えながら発生トルクの自由度を高めることが可能となる。
具体的に、磁石部が前進位置に配置された状態では、磁石部の表面と磁性部の先端面とが面一となり、回転電機が発生するトルクは、各コイルが形成する回転磁界の磁極とロータの各磁石部の磁極との吸引力及び反発力によって発生するマグネットトルクが支配的となる。これに対して、磁石部が後退位置に配置された状態では、磁性部が突極となり、回転電機が発生するトルクは、各コイルが形成する回転磁界の磁極と突極である磁性部との吸引力のみによって発生するリラクタンストルクが支配的となる。つまり、磁石部を前進位置に配置すれば、比較的回転数が低い領域において大きなトルク(マグネットトルク)を発生させることができ、磁石部を後退位置に配置すれば、逆起電力の発生を抑制して、より高い回転域でトルク(リラクタンストルク)を発生させることが可能となる。そのため、単一の回転電機でより広い回転域で良好にトルクを発生させることが可能となる。
また、上記の回転電機において、前記ロータ本体は、前記磁性部が一体成型されるとともに各磁石部の反ステータ側の面にそれぞれ固定されて当該磁石部と共に前記軸方向に変位するヨーク部を備えるものであってもよい。
この構成によれば、磁石部とヨーク部との一体化により、構成の簡略化を図ることが可能となる。
より具体的に、上記回転電機は、前記ロータの回転角を検出する回転角検出装置を備え、前記制御装置による前記電力供給状態の切り替えは、前記回転角検出装置が検出する前記ロータの回転角に基づき、前記コイルに供給する交流電力の位相を変更することにより行われるものである。
この構成によれば、前記コイルに供給する交流電力の位相を変更するという簡単な手法で、コイルに対する電力供給状態を、前記第1〜第3電力供給状態に変更することが可能となる。
また、前記複数の磁石部は、ステータ側の磁極が交互に異なる状態で周方向に配列されており、前記制御装置は、前記第2、第3電力供給状態において、ステータ側の磁極が互いに異なる磁石部に対して前記軸方向の力であって同じ向きの力が作用するように前記コイルに対する電力供給状態を制御するものである。
この構成によれば、磁極が異なる磁石部に対して同じ向きの力が作用することで、磁石部をより円滑に変位させることが可能となる。つまり、エアギャップ長を円滑に変更することが可能となる。
なお、前記制御装置は、前記第2、第3電力供給状態において、磁石部に対して前記軸方向の力のみが作用するように前記コイルに対する電力供給状態を制御するものであるのが好適である。
この構成によれば、ロータに回転トルクが発生することが抑制され、より円滑にエアギャップ長を変更することが可能となる。
なお、上記の回転電機においては、前記磁石部の前記軸方向の変位を許容する状態と、当該変位を規制して前記磁石部を前進位置および後退位置に保持する状態とに切替可能な保持装置をさらに備えているのが好適である。
この構成によれば、エアギャップ長の変更を許容しながら、ロータを回転駆動する際(第1電力供給状態のとき)には、磁石部を前進位置又は後退位置に安定的に保持すること、つまりエアギャップ長を安定的に維持することが可能となる。そのため、エアギャップ長が意図せず変動することにより、発生トルクが不安定になるといった事態の発生を未然に防止することが可能となる。
例えば保持装置は、前記磁石部に連結されて当該磁石部と共に前記軸方向に変位するピストン部材と、当該ピストン部材が収容されたシリンジ部と、当該シリンジ部に連通し、前記ピストン部材の変位に伴い前記シリンジ部に対して給排される液体が貯留された液貯留部と、前記シリンジ部に対する前記液体の給排を規制する開閉弁と、を含み、前記制御装置は、前記開閉弁をさらに制御し、前記第1電力供給状態においては前記開閉弁を閉止し、前記第2、第3電力供給状態においては前記開閉弁を開放するものであってもよい。
この構成によれば、動力を用いることなく、磁石部を前進位置および後退位置の何れにおいても安定的に保持することが可能となる。そのため、比較的簡単かつ安価な構成で、エアギャップ長を安定的に維持することが可能となる。
なお、上記回転電機は、前記ロータとして、前記軸方向における前記ステータの両側に配置される第1ロータと第2ロータとを含むとともに、前記保持装置として、前記第1ロータに対応する第1保持装置と前記第2ロータに対応する第2保持装置とを備え、前記制御装置が前記第1保持装置および第2保持装置を個別に制御するものであってもよい。
この構成によれば、例えば第2ロータの磁石部を前進位置に保持した状態で第1ロータの磁石部を後退位置に変位させ、その後、第1ロータの磁石部を後退位置に保持した状態で第2ロータの磁石部を後退位置に変位させる、というように、いわゆるツインロータタイプの回転電機において、第1ロータのエアギャップ長の切り替えタイミングと第2ロータのエアギャップ長の切り替えタイミングをずらすことが可能となる。
一方、本発明の車両は、バッテリと当該バッテリから電力供給を受けて駆動輪を駆動することが可能な上記回転電機とを備えた車両であって、車両の走行状態に応じた目標出力を設定する目標出力設定部を備え、前記制御装置が、前記目標出力に対応する回転電機の目標回転数に応じて前記磁石部の位置を前進位置と後退位置との間で切り替えるべく、前記コイルに対する電力供給状態を変更するものである。
この構成によれば、車両の大型化やコスト高を抑えながら、より広い回転域で回転電機によって駆動輪を駆動することが可能となる。
この場合、前記制御装置は、回転電機の回転数が予め設定された切替回転数に到達した時点で前記磁石部の位置を切り替えるようにすることができる。
この構成によれば、例えば目標回転数が切替回転数よりも高い場合には、回転電機の回転数が切替回転数に到達した時点で、エアギャップ長が変更される。そのため、簡単な制御でエアギャップ長を変更することが可能となる。
この場合、前記磁石部が前進位置に配置された状態における前記回転電機の最大回転数を限界回転数と定義したときに、前記切替回転数は、前記限界回転数であってもよい。
この構成によれば、回転電機の回転数が限界回転数に到達した時点で、エアギャップ長を変更することができる。
なお、上記車両において、前記制御装置は、車両の加速時であってかつ加速開始時点の回転数が前記切替回転数の所定値内である場合には、前記加速開始時点で前記磁石部の位置を切り替えるものであってもよい。
この構成によれば、加速開始時点で早期にエアギャップ長が切り替えられることで、当該エアギャップ長の切り替えよるいわゆるトルク抜けが加速途中に生じてドライバに違和感を与えることが抑制される。
また、上記車両においては、前記磁石部が前進位置に配置された状態における前記回転電機の最大回転数を限界回転数と定義したときに、前記制御装置は、車両の加速時であってかつ加速開始時点の回転数が前記切替回転数よりも所定値以上低い場合には、前記回転電機の回転数が限界回転数に到達した時点で前記磁石部の位置を切り替えるものであってもよい。
この構成によれば、比較的低回転域において急加速するような場合に、エアギャップ長の切り替え時期をぎりぎりまで遅らすことが可能となるため、エアギャップ長の切り替えに起因するトルク抜けが急加速中に生じてドライバに違和感を与えることが抑制される。
以上説明したように、本発明の回転電機等によれば、大型化やコスト高を抑えながら、発生トルクの自由度を高めることが可能となる。
本発明に係る車両のシステム構成図である。 車両に搭載されるモータ(本発明の回転電機)の断面図である。 モータに含まれるロータの平面図である。 ロータの断面図(図3のIV−IV線断面図)であり、(a)は、磁石部が前進位置に配置された状態の断面図であり、(b)は、磁石部が後退位置に配置された状態の断面図である。 ロータのバックヨーク部の断面図である。 (a)は、第1電力供給状態における磁石部と電流位相との関係を説明するモータのモデル図であり、(b)は、(a)の状態からロータが回転した状態を示すモデル図である。 (a)は、第2電力供給状態における磁石部と電流位相との関係を説明するモータのモデル図であり、(b)は、(a)の状態からロータが回転した状態を示すモデル図である。 (a)は、第3電力供給状態における磁石部と電流位相との関係を説明するモータのモデル図であり、(b)は、(a)の状態からロータが回転した状態を示すモデル図である。 コイルに供給される三相交流電流の波形の一例を示す波形図である。 モータ特性(回転数とトルクとの関係)を示す図である。 車両走行時のモータ制御の一例を示すフローチャートである。 エアギャップ長の切り替え制御に用いられるマップである。 エアギャップ長の切り替え制御(拡大時)を示すタイミングチャートである。 エアギャップ長の切り替え制御(縮小時)を示すタイミングチャートである。 車両走行時のモータ制御の変形例を示すフローチャートである。 エアギャップ長の切り替えタイミングを説明する図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。以下の実施形態では、車両がエンジンを搭載せずモータのみを搭載する電気自動車である場合について説明するが、本発明は、電気自動車に限らず、例えば、エンジンとモータとを搭載するハイブリッド車(エンジンと車輪とが常に連結され、エンジンによる走行をモータでアシストするパラレル式のハイブリッド車や、エンジンと車輪とが状況に応じて連結又は切り離され、エンジンによる走行とモータによる走行とエンジン及びモータによる走行とが可能なシリーズパラレル式のハイブリッド車や、エンジンと車輪とが常に切り離され、モータによる走行のみが可能なシリーズ式のハイブリッド車等)にも適用可能である。
(1)全体構成
図1は、本発明に係る車両のシステム構成図である。この車両は、駆動源であるモータ(図面では「M」と略記)10と、リチウムイオン電池などからなるバッテリ11とがインバータ12を介して相互に電気的に接続された電気自動車である。モータ10は、減速機13を介して車軸14及び車輪15(駆動輪)と機械的に連結されている。
モータ10は、本発明に係る回転電機の一例であり、後に詳述するように、車輪側と連動して回転するロータ30と、ロータ30に対向して配置されるステータ20とを備えており、ロータ30には、永久磁石かなる複数の磁石部37が備えられ、ステータ20には、磁界を発生させるための複数のコイル25が備えられている。加速時には、バッテリ11からインバータ12を介してコイル25に電力が供給されることで、モータ10は、正トルクを発生する。そして、減速時には、車輪側の回転によって強制的にロータ30が回転されることにより、モータ10は、電力と逆トルク(回生トルク)を発生する発電機として作動する。
上記車両は、インバータ12を介してモータ10を制御するPCM16を備えている。PCM16は、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサであり、当実施形態では、このPCM16と前記インバータ12とが協働して本発明の制御装置および目標出力設定部として機能する。
PCM16には、各種センサからの情報が逐次入力される。具体的には、上記車両には、走行速度を検出する車速センサ17、図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ18、およびモータ10の回転角(回転方向の位置)を検出する後記回転角センサ47などが設けられており、PCM16は、これらのセンサ17、18、47等と電気的に接続されている。
PCM16は、これらセンサ17、18、47からの入力信号に基づいて、目標出力(目標トルク)が得られるようにインバータ12を介してモータ10を制御する。その場合、目標出力に対応するモータ10の回転数(目標回転数)に応じて、必要な場合には、前記コイル25に対する電力供給状態を変更することで、ロータ(磁石部37)とステータとの間のエアギャップ長を切り替え制御する。この点については後に詳述する。
(2)モータの構成
図2は、前記モータ10を断面図で示している。モータ10は、アキシャルギャップ型の三相交流モータであり、回転軸31を中心に備えるロータ30と、当該ロータ30の後記ロータ本体32に対して回転軸31の軸方向に所定間隔を隔てて対向するステータ20と、これらステータ20及びロータ30が収容される中空円柱状のハウジング50とを備えている。なお、以下の説明では、回転軸31と平行な方向を「軸方向」、回転軸31と直交する方向を「径方向」、回転軸31(ロータ30)の回転方向を「周方向」と称す。
前記ステータ20は、回転軸31を中心として周方向に一定間隔で並ぶ複数のステータコア22と、各ステータコア22を反ロータ側から支持するバックヨーク部23と、各ステータコア22にボビン24を介して装着(巻回)されるコイル25とを含む。コイル25は、U相、V相、W相のコイル25を含み、各相のコイル25がこの順番で周方向に並ぶように各ステータコア22に装着されている。
ステータ20は、ハウジング50の一方側(図2では上側)のエンドカバー50bに沿って配置されている。なお、ハウジング50は、円筒ハウジング50aと、その両端に各々固定される前記エンドカバー50bとを備えており、ステータ20は、円筒ハウジング50aの内周面に固定されている。
前記ロータ30は、円盤状のロータ本体32と、このロータ本体32の中心を貫通する前記回転軸31とを含む。ロータ本体32は、回転軸31に固定されており、回転軸31は、ステータ20の中心に保持されたベアリング27と反ステータ側のエンドカバー50bに保持されたベアリング28とによって支持されている。これにより、ロータ30は、ステータ20及びハウジング50に回転自在に支持されている。なお、回転軸31は、その端部、具体的には反ステータ側の端部が上記減速機13に機械的に連結されている。
前記ロータ本体32は、図2及び図3に示すように、ステータ側に向かって開口する円環状の溝部35を有する平面視円形のベース部材34と、前記溝部35内の周方向の複数の位置に設けられた磁性部36と、前記溝部35内の各磁性部36の間に各々配置された磁石部37と、各磁石部37の反ステータ側の面に固定されたバックヨーク部38と、各バックヨーク部38の反磁石部側の面に固定されたピストン部材39とを含む。
前記磁性部36は、表面に電気的絶縁処理を施した軟磁性金属粉末、例えば純Fe、Fe−Si系及びFe−Ni系などの金属粉末がバインダーと共に圧縮成型されることにより形成された、一定の厚みを有する板状の磁性成型体である。各磁性部36は、周方向に等間隔でかつ図3に示すように回転軸31を中心として平面視放射状に配列された状態で前記溝部35の内底面に立設されている。図4(a)に示すように、各磁性部36の先端面、つまりステータ側の端面は平坦であり、当該先端面は、ベース部材34のステータ側の端面と面一とされている。
各磁石部37は、平面視扇型の板状の永久磁石である。各磁石部37は、隣接する磁石部37のステータ側の磁極が交互に異なるように配列され、バックヨーク部38と共に隣接する一対の磁性部36の間に配置されている。
前記バックヨーク部38は、磁石部37よりも厚み(軸方向の寸法)が大きくかつ平面視が磁石部37と同一形状(扇型)に形成されたブロック状の構造を有している。詳しくは、図5に示すように、バックヨーク部38は、幅の異なる電磁鋼板38aが複数枚単位で径方向に順次積層一体化され、この積層体の周囲に磁性成型体38bが一体的に形成された構造を有している。磁性成型体38bは、上記磁性部36と同様のものであり、例えば純Fe、Fe−Si系及びFe−Ni系などの金属粉末がバインダーと共に前記積層体の周囲に圧縮成型されることにより設けられている。バックヨーク部38は、例えば透磁性を有する接着剤によって磁石部37の反ステータ側の面に固定されている。
なお、磁石部37及びバックヨーク部38は、ベース部材34及び磁性部36の何れにも固定されておらず、溝部35の壁面および隣接する一対の磁性部36の側面をガイド面として、当該ガイド面に沿って一体的に軸方向に変位可能となっている。これにより、磁石部37は、ステータ20に対して接離可能、すなわち、エアギャップ長を変更可能な状態でロータ30に設けられている。
前記ピストン部材39は、バックヨーク部38の反磁石部側の面に固定されており、磁石部37及びバックヨーク部38と共に軸方向に変位する。ピストン部材39は、図2及び図4(a)に示すように、溝部35の内底部に形成された貫通孔を通じて、前記ベース部材34に形成された中空のシリンジ部40内に挿入されており、ピストン部材39の当該挿入部分には、シリンジ部40内に介在して当該シリンジ部40内を軸方向に変位する板状の加圧部39aが設けられている。
ピストン部材39は、シリンジ部40内のステータ側の壁面に加圧部39aが当接する位置と、シリンジ部40内の反ステータ側の壁面に加圧部39aが当接する位置との間で変位可能とされており、これにより、前記磁石部37は、図4(a)に示すように、ステータ側の表面(以下、磁石部37の表面という)が磁性部36の先端面と面一となる前進位置と、図4(b)に示すように、当該前進位置から反ステータ側に後退した後退位置との間で変位可能となっている。
なお、加圧部39aは、シリンジ部40の断面形状と同等の輪郭を有しており、シリンジ部40の内側面に沿って液密状態で摺動するように形成されている。シリンジ部40内の反ステータ側の壁面と加圧部39aとの間の空間にはオイル(本発明の液体の一例)が充填されている。当該空間は、ベース部材34に形成された連通孔34aと、回転軸31内に形成された軸内通路31aと、この軸内通路31aに繋がる給排通路42とを通じてオイルタンク44(本発明の液貯溜部に相当する)に連通しており、上記空間からオイルタンク44に至る各通路内にはオイルが充填されている。
給排通路42には、電磁弁からなる開閉弁45が介設されている。この開閉弁45は上記PCM16からの制御信号に基づき開閉され、磁石部37は、この開閉弁45の開閉によって、軸方向への変位が許容される状態と、当該変位が禁止されて特定の位置に保持される状態とに切り替えられる。すなわち、後に詳述する通り、磁石部37は、コイル25が形成する磁界よって生じる反発力又は吸引力によって軸方向に変位するが、この際、ピストン部材39が磁石部37と共に軸方向に変位してシリンジ部40内の上記空間の容積が変化すると、当該容積変化に伴いシリンジ部40に対してオイルが出入りすることとなる。開閉弁45が開放された状態では、このシリンジ部40に対するオイルの出入り(給排)が許容される結果、ピストン部材39の変位が許容され、逆に開閉弁45が閉止された状態では、当該オイルの出入り(給排)が遮断される結果、ピストン部材39の変位が禁止されることとなる。従って、磁石部37が前進位置又は後退位置に配置された状態で開閉弁45が閉止されることで、磁石部37はその位置に安定的に保持されることとなる。当実施形態では、上記ピストン部材39、シリンジ部40、通路31a、42、オイルタンク44及び開閉弁45等が本発明の保持装置に相当する。
なお、モータ10には、さらに回転角センサ47(本発明の回転角検出装置に相当する)が備えられており、ロータ30の回転角に応じた信号が当該回転角センサ47から上記PCM16に出力される。回転角センサ47は、ステータ20の反ロータ側の位置に、当該ステータ20に隣接して配置されている。当実施形態では、回転角センサ47はレゾルバであるが、これに限定されるものではなく、回転角センサ47はロータリーエンコーダなどであってもよい。
(3)エアギャップ長の可変制御
次に、モータ10のエアギャップ長の可変制御、つまり、磁石部37を軸方向に変位させるためのモータ10の制御について説明する。上記モータ10は、エアギャップ長を変更するための専用の動力源は備えておらず、エアギャップ長の変更は、PCM16がインバータ12を介してモータ10に対する電力供給状態を変更すること、具体的には、ロータ30の回転角に対して各コイル25に供給される三相交流電流の位相をずらすことにより行われる。
図6は、ステータ20を回転させるための通常の電力供給状態を、図7は、磁石部37を前進位置から後退位置に変位させるとき(エアギャップ長拡大時)の電力供給状態を、図8は、磁石部37を後退位置から前進位置に変位させるとき(エアギャップ長縮小時)の電力供給状態を、各々、コイル(電磁石)6極、磁石部4極のモデル図で示しており、図9は、各コイル25に供給される三相交流の電流波形の一例を示している。図6〜図8のモデル図は、磁石部37と電流位相との関係を示しており、同図中の磁石部37に付された「+」、「−」の印は磁極を示している。また、コイル25に付された数値は図9中に示された電流の大きさと向きを示しており、符号「+」、「−」は磁極と等価であり数値の大きさは磁力の強さと等価である。
PCM16は、回転トルク(回生トルク)を発生させる際には、図6(a)、(b)に示すように、ロータ30に回転力を生じさせる磁界が形成されるように、各相のコイル25に供給する三相交流電流の位相を制御する。例えば図6(a)、(b)に示す例では、PCM16は、隣接する磁石部37の間に位置する相のコイル25に磁石部37を回転方向に引き付ける最大磁力が生じ、その他の相のコイル25に磁石部37を回転方向に引き付ける磁力又は磁石部37を回転方向に押し出す磁力が生じるように、各コイル25に供給される三相交流電流の位相を、回転角センサ47から入力される回転角情報に基づいて制御する。
これに対して、エアギャップ長拡大時には、PCM16は、図7(a)、(b)に示すように、各磁石部37と各相のコイル25との間に軸方向の反発力を生じさせる磁界が形成されるように、各相のコイル25に供給する三相交流電流の位相を制御する。例えば図7(a)、(b)に示す例では、PCM16は、+極の磁石部37に正対する特定の相のコイル25に+極の最大磁力が生じ、磁石部37に正対するその他の相のコイル25に当該磁石部37と同極の磁力が生じるように、各コイル25に供給される三相交流電流の位相を、回転角センサ47から入力される回転角情報に基づいて制御する。この場合、PCM16は、上記開閉弁45を開放する。
つまり、上記のように各磁石部37とコイル25との間に軸方向の反発力を生じさせことで磁石部37を反ロータ側に押圧し、これにより各磁石部37を前進位置(図4(a))から後退位置(図4(b))に変位させる。
エアギャップ長縮小時には、PCM16は、図8(a)、(b)に示すように、各磁石部37と各相のコイル25との間に軸方向の吸引力を生じさせる磁界が形成されるように、各相のコイル25に供給する三相交流電流の位相を制御する。例えば図8(a)、(b)に示す例では、PCM16は、−極の磁石部37に正対する特定相のコイル25に+極の最大磁力が生じ、磁石部37に正対するその他の相のコイル25に当該磁石部37と異極の磁力が生じるように、各コイル25に供給される三相交流電流の位相を、回転角センサ47から入力される回転角情報に基づいて制御する。この場合も、PCM16は、上記開閉弁45を開放する。
つまり、上記のように各磁石部37とコイル25との間に軸方向の吸引力を生じさせことで磁石部37をロータ側に引き付け、これにより各磁石部37を後退位置(図4(b))から前進位置(図4(a))に変位させる。
なお、以下の説明では、回転トルク(回生トルク)を発生させるための上記電力供給状態(図6)を「第1電力供給状態」と称し、エアギャップ長拡大のための上記電力供給状態(図7)を「第2電力供給状態」と称し、エアギャップ長縮小のための上記電力供給状態(図8)を「第3電力供給状態」と称す。
上記のモータ10では、エアギャップ長の変更に伴いモータ特性が次のように変化する。すなわち、図4(a)に示すように、磁石部37が前進位置に配置された状態(このときのエアギャップ長を基準エアギャップ長という)では、磁石部37の表面と磁性部36の先端面とは面一であり、コイル25が形成する磁束は、同図中に破線矢印で示すように、主に磁石部37及びバックヨーク部38を透過する。そのため、モータ10が発生するトルクは、各コイル25が形成する回転磁界の磁極とロータ30の各磁石部37の磁極との吸引力及び反発力によって発生するマグネットトルクが支配的となる。これに対して、図4(b)に示すように、磁石部37が後退位置に配置されたエアギャップ長変更後の状態では、磁石部37が後退したことで磁性部36がステータ側に突出した状態となる。すなわち、磁性部36が突極となり、コイル25が形成する磁束は、同図中に破線矢印で示すように主に磁性部36及びバックヨーク部38を透過することとなる。そのため、モータ10が発生するトルクは、各コイル25が形成する回転磁界の磁極と前記突極である磁性部36との吸引力によって発生するリラクタンストルクが支配的となる。
図10は、モータ10の特性(トルク‐回転数)を概略的に示したグラフである。同図中の実線ハッチングで示す領域は、基準エアギャップ長の場合の特性を示しており、破線ハッチングで示す領域は、エアギャップ長拡大時の特性を示している。マグネットトルクが支配的な基準エアギャップ長の状態では、磁石部37(永久磁石)によって逆起電力が発生するため高回転数域でのトルクの発生が難しい。そのため、同図に示すように、トルクの発生は回転数N3が限界であり、当該回転数N3が基準エアギャップ長での限界回転数(以下、限界回転数N3と称す)となる。これに対して、リラクタンストルクが支配的なエアギャップ長変更後の状態では、磁石部37(永久磁石)による逆起電力の発生が抑制されるため、より高回転域(回転数N4)までトルクを発生させることが可能となる。つまり、上記モータ10では、基準エアギャップ長で駆動することで、比較的回転数が低い領域において大きなトルク(マグネットトルク)を発生させることができ、基準エアギャップ長を拡大させることで、より高い回転域においてトルク(リラクタンストルク)を発生させることが可能となる。
(4)車両走行時のモータ制御
次に、車両走行時のモータ制御について具体的に説明する。図11は、車両走行時におけるPCM16によるモータ10の制御動作の一例を示すフローチャートである。
図11に示すフローがスタートすると、PCM16は、各種センサからの信号を読み込む処理を実行する(ステップS1)。具体的に、PCM16は、車速センサ17、アクセル開度センサ18及び回転角センサ47から検出信号を読み込み、これらの信号に基づいて、車速V、アクセル開度Acc及びモータ回転数Nm等の各種情報を取得する。
次に、PCM16は、車速V及びアクセル開度Accに基づき車両の目標出力(回生力)、つまり目標駆動トルク(目標回生トルク)を求める(ステップS3)。そして、PCM16は、この目標出力に基づきモータ10の目標運転点(目標トルク及び目標回転数)を決定し、当該目標運転点に基づきインバータ12を介してモータ10を制御する(ステップS7)。この場合、PCM16は、上述した第1電力供給状態でモータ10を駆動すべくインバータ12に制御信号を出力する。
次に、PCM16は、現在のモータ10の運転点からステップS5の処理で求めた目標運転点に移行する過程でエアギャップ長の切り換えが必要か否かを図12に示すマップに基づき判定する。図12に示すマップは、例えば図10に示したモータ特性図をベースに、モータ10の回転数に基づきエアギャップ長を変更する際の閾値が設定されたものである。同マップでは、車両の加速に伴いエアギャップ長を拡大する場合の閾値(回転数N2;本発明の切替回転数に相当する)と、車両の減速に伴いエアギャップ長を縮小する場合の閾値(回転数N1;本発明の切替回転数に相当する)とが定められている。エアギャップ長を拡大するときの閾値(回転数N2)は、上記限界回転数N3よりも若干低い値に設定されており、エアギャップ長を縮小するときの閾値(回転数N1)は、エアギャップ長を拡大するときの閾値(回転数N2)よりも低い値に設定されている。
つまり、車両の加速時、PCM16は、現在のモータ10の回転数がN2より低く、目標運転点の回転数がN2よりも高い場合には、ステップS9の処理において、エアギャップ長を変更(拡大)する必要があると判定する。また、車両の減速時、現在のモータ10の回転数がN1よりも高く、目標運転点の回転数がN1よりも低い場合には、PCM16は、エアギャップ長を変更(縮小)する必要があると判定する。
PCM16は、ステップS9の処理でNOと判定した場合には、処理をステップS17に移行し、モータ10が目標運転点に到達したか否かを判定し、目標運転点に到達したと判定すると処理をステップS1に移行する。
一方、ステップS9の処理でYESと判定した場合には、PCM16は、モータ10の回転数が上記閾値(N2又はN1)に達するのを待って(ステップS11でYES)、インバータ12に制御信号を出力し、エアギャップ長を変更するための制御を実行する(ステップS13)。
具体的には次の通りである。まず、エアギャップ長を拡大する場合には、図13のタイミングチャートに示すように、PCM16は、コイル25に対する電力供給状態を第1電力供給状態(図6)から第2電力供給状態(図7)に切り換え(t1時点)、その後、前記開閉弁45を開放する(t2時点)。これにより、磁石部37を前進位置から後退位置に変位させる。そして、開閉弁45の開放後、所定時間が経過すると、すなわち磁石部37が前進位置から後退位置に変位するのに要する時間として予め設定された時間が経過すると、PCM16は、開閉弁45を閉止し(t3時点)、これにより磁石部37を後退位置に保持させた後、コイル25に対する電力供給状態を第2電力供給状態から第1電力供給状態に切り換える(t4時点)。
一方、エアギャップ長を縮小する場合には、図14のタイミングチャートに示すように、PCM16は、コイル25に対する電力供給状態を第1電力供給状態(図6)から第3電力供給状態(図8)に切り換え(t1′時点)、その後、前記開閉弁45を開放する(t2′時点)。これにより、磁石部37を後退位置から前進位置に変位させる。そして、開閉弁45の開放後、所定時間が経過すると、すなわち磁石部37が後退位置から前進位置に変位するのに要する時間として予め設定された時間が経過すると、PCM16は、開閉弁45を閉止し(t3′時点)、これにより磁石部37を前進位置に保持させた後、コイル25に対する電力供給状態を第3電力供給状態から第1電力供給状態に切り換える(t4′時点)。
図11に戻って、ステップS13の処理が完了すると、PCM16は、ステップS5で求められた上記目標運転点に基づき引き続きモータ10を制御し(ステップS15)、これによりモータ10が上記目標運転点に到達すると(ステップS17でYES)、処理をステップ1に移行する。
(5)作用効果
以上説明したように、上記モータ10によれば、磁石部37を前進位置に配置することで(基準エアギャップ長の状態とすることで)、比較的回転数が低い領域において大きなトルク(マグネットトルク)を発生させることができ、磁石部37を後退位置に配置することで(エアギャップ長を拡大することで)、より高い回転域でトルク(リラクタンストルク)を発生させることができる。そのため、単一のモータ10で発生トルクの自由度を高めることができ、また、より広い回転域で良好にトルクを発生させることが可能となる。
しかも、上記のようなエアギャップ長の切り替えは、PCM16がインバータ12を介してコイル25に対する電力供給状態を切り替えることにより行われる。具体的には、エアギャップ長の拡大は、各コイル25に対する電力供給状態が一時的に第1電力供給状態から第2電力供給状態に切り替えられることにより行われ、エアギャップ長の縮小は、各コイルに対する電力供給状態が一時的に第1電力供給状態から第3電力供給状態に切り替えることにより行われる。つまり、上記モータ10によれば、特許文献1(背景技術)のような専用の動力源(油圧源)を設けることなく、モータ10を駆動するための既存の設備を利用してエアギャップ長を変更することができる。従って、上記モータ10によれば、大型化やコスト高を抑えながら、より広い回転域で良好にトルクを発生させることができる。そして、このようなモータ10によって車輪15を駆動する上記車両によれば、車両の大型化やコスト高を抑えながら、より広い回転域で車輪15を良好に駆動することが可能になるという利点がある。
また、上記モータ10によれば、エアギャップ長の切り替え時以外のときには、上記開閉弁45が閉止されることで、磁石部37が前進位置又は後退位置に安定的に保持される。つまり、エアギャップ長が安定的に維持される。そのため、モータ10の駆動中(第1電力供給状態のとき)にエアギャップ長が意図せず変動し、これによって発生トルクが不安定になるといった事態が発生することを未然に防止することができるという利点もある。
特に、上記モータ10によれば、磁石部37と一体に変位するピストン部材39が設けられ、このピストン部材39の変位に伴い給排通路42を通じてシリンジ部40にオイルが給排されるように構成され、上記開閉弁45により給排通路42が開閉されることで、磁石部37の変位が許容される状態と禁止される状態とに切り替えられるようになっている。このような構成によれば、動力を用いることなく、前進位置および後退位置の双方の位置に磁石部37を安定的に保持することが可能となる。そのため、比較的簡単かつ安価な構成で、エアギャップ長を安定的に維持することができるという利点がある。
さらに、上記実施形態によれば、エアギャップ長切り替え時の開閉弁45の開閉に際し、図13及び図14に示すように、エアギャップ長変更後、電力供給状態が第2又は第3電力供給状態から第1電力供給状態に切り替える前に開閉弁45が閉止されるので(t3、t3′時点)、変更後のエアギャップ長を安定的に維持することができるという利点もある。つまり、エアギャップ長変更後、コイル25に対する電力供給状態を第1電力供給状態に戻してから開閉弁45を閉止する場合には、第1電力供給状態においてコイル25が形成する磁界の影響を受けて磁石部37が軸方向に変動する(エアギャップ長が変動する)おそれがあるが、上記実施形態によれば、このような不都合が生じることを未然に防止することができる。従って、変更後のエアギャップ長を安定的に維持することが可能となる。
(6)車両走行時のモータの制御の変形例
図15は、PCM16によるモータ10の制御動作の変形例である。図15のフローチャートは、図11のフローチャートにおけるステップS11の処理を、以下に説明するステップS10a〜10c及びステップS12の処理に置き換えたものである。
すなわち、図15のフローでは、PCM16がモータ10の目標運転点(目標トルク及び目標回転数)を決定し、当該目標運転点に基づきインバータ12を介してモータ10の制御を開始すると(ステップS7)、次に、PCM16は、車両が加速中か否かを判定する(ステップS10a)。この判定は、アクセル開度Accの単位時間当たりの変化量を求めることにより行われる。
ステップS10aでNOと判定した場合、すなわち、車両が減速中であると判定した場合には、PCM16は、モータ10の回転数が上記閾値(回転数N1)に達するのを待ち、到達すると(ステップS12でYES)、インバータ12に制御信号を出力し、エアギャップ長を変更するための制御を実行する(ステップS13)。具体的には、図14のタイミングチャートに示すように、磁石部37を後退位置から前進位置に変位させることにより、エアギャップ長を縮小する制御を実行する。
ステップS10aでYESと判定した場合には、PCM16は、さらにモータ10の現在の回転数、つまり加速開始時点のモータ10の回転数が予め設定された閾値(回転数N0;N0<N1<N2)以下か否かを判定する(ステップS10b)。ここで、NOと判定した場合には、PCM16は、ステップS13に処理を移行し、直ちにエアギャップ長を変更するための制御を実行する。具体的には、図13のタイミングチャートに示すように、磁石部37を後退位置から前進位置に変位させることにより、エアギャップ長を縮小する制御を実行する。一方、ステップS10bでYESと判定した場合には、PCM16は、モータ10の回転数が上記限界回転数N3に達するのを待ち、到達すると(ステップS10cでYES)、図13のタイミングチャートに示すように、エアギャップ長を変更するための制御を実行する(ステップS13)。
このように、図15の制御動作では、エアギャップ長の切り換えが必要な場合であってかつ車両の加速時には、一律に特定の閾値(回転数N2)に基づいてエアギャップ長を切り替えるのではなく、加速開始時点のモータ10の回転数に応じてエアギャップ長の切り替えタイミングが変えられる。具体的には、図16中に示すように、モータ10の回転数がN0以下の場合には、モータ10の回転数が限界回転数N3に達するのを待ってエアギャップ長の切り換えが実行され、モータの回転数がN0を越えてN2以下の場合(同図中の破線楕円で示す範囲)には、上記閾値(回転数N2)に拘わらず直ちにエアギャップ長の切り換えが実行される。
このような図16に示す制御動作によれば、加速時のトルク抜けの影響を抑制することができるという利点がある。すなわち、エアギャップ長の切り替え時は、コイル25に対する電力供給状態が一時的に上記第2、第3電力供給状態に切り替えられることによって発生トルクが一時的に低下する、いわゆるトルク抜けが発生する。しかし、上記の通り、現在のモータ10の回転数がN0以下の場合にモータ10の回転数が限界回転数N3に達するのを待ってエアギャップ長の切り替えを実行するようにすれば、比較的低回転数の運転域でアクセルが深く踏み込まれたような場合にトルク抜けが発生するタイミングを極力遅らすことができ、トルク抜けによる違和感を軽減することが可能となる。また、上記の通り、現在のモータの回転数がN0を越えてN2以下の場合に直ちにエアギャップ長の切り換えを実行するようにすれば、アクセル踏み込み後の早いタイミングでトルク抜けが生じることで、中速域から高速域への伸びのある加速中にトルク抜けが生じるとによる違和感を軽減することが可能となる。
(7)その他
ところで、上述したモータ10やこれが搭載された車両は、本発明に係る回転電機および同回転電機を備えた車両の好ましい実施形態の例示であって、モータ10や車両の具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態のロータ30は、ベース部材34および磁性部36に対して磁石部37およびバックヨーク部38が軸方向に変位する構成であるが、磁性部36とバックヨーク部38の磁性成型体38bとを一体成型し、ベース部材34に対して磁性部36、磁石部37及びバックヨーク部38が一体的に軸方向に変位可能な構成としてもよく、この場合も、エアギャップ長を変更することが可能となるので、発生トルクの自由度を高めることが可能となる。また、上記ピストン部材39等からなる本発明の保持装置をベース部材34とエンドカバー50bとの間に介設するようにし、磁性部36、磁石部37、バックヨーク部38及びベース部材34が一体的に軸方向に変位可能な構成としてもよい。なお、この構成の場合には、スプライン軸によって回転軸31を構成し、スプライン溝にそってベース部材34を案内するように構成してもよいし、また、ベース部材34を廃止し、スプライン溝に沿って磁性部36、磁石部37及びバックヨーク部38を直接案内するように構成してもよい。
また、上記メインおよびその他の実施形態では、本発明の適用例として、1つのステータ20に対して1つのロータ30を備えたモータ10について説明したが、本発明は、1つのステータの軸方向両側に各々ロータ(第1ロータ、第2ロータと称す)を備えた、いわゆるツインロータタイプのモータについても適用可能である。この場合には、本発明の保持装置(上記ピストン部材39、シリンジ部40及び開閉弁45等)として、第1ロータに対応する第1保持装置と第2ロータに対応する第2保持装置とを備え、PCMにより第1保持装置および第2保持装置を個別に制御する、すなわち開閉弁を個別に制御するようにしてもよい。
この構成によれば、例えば第2ロータの磁石部を前進位置に保持した状態で第1ロータの磁石部を後退位置に変位させ、その後、第1ロータの磁石部を後退位置に保持した状態で第2ロータの磁石部を後退位置に変位させる、というように、第1ロータのエアギャップ長の切り替えタイミングと第2ロータのエアギャップ長の切り替えタイミングをずらすことが可能となる。そのため、ツインロータタイプのモータにおいて、発生トルクの自由度をより高めることが可能になる、という利点がある。
10 モータ
11 バッテリ
12 インバータ
16 PCM
20 ステータ
25 コイル
30 ロータ
31 回転軸
32 ロータ本体
34 ベース部材
35 溝部
37 磁石部

Claims (13)

  1. 回転軸及びこの回転軸と共に回転するロータ本体を備えるロータと、
    前記ロータ本体に対して前記回転軸の軸方向に対向して配置されかつ周方向に等間隔で並ぶ複数のコイルを備えたステータと、
    前記コイルに交流電力を供給することにより磁界を形成する制御装置と、を含み、
    前記ロータ本体は、磁性材料からなり周方向の複数の位置に配置される磁性部と、永久磁石からなり隣接する磁性部の間に各々配置される複数の磁石部とを含み、前複数の磁石部が前記磁性部に対して前記軸方向に変位可能に構成され、
    前記複数の磁石部は、前記磁性部表面と面一となる前進位置とこの前進位置から反ステータ側に変位した後退位置とに亘って前記軸方向に変位可能であり
    前記制御装置は、前記ステータ本体に回転力を生じせる磁界を形成する第1電力供給状態と、前記磁石部と前記コイルとの間に前記軸方向の反発力を生じさせる磁界を形成する第2電力供給状態と、前記磁石部と前記コイルとの間に前記軸方向の吸引力を生じさせる磁界を形成する第3電力供給状態とに、前記コイルに対する電力供給状態を切り替え可能に構成されている、ことを特徴とする回転電機。
  2. 請求項1に記載の回転電機において、
    前記ロータ本体は、前記磁性部が一体成型されるとともに各磁石部の反ステータ側の面にそれぞれ固定されて当該磁石部と共に前記軸方向に変位するヨーク部を備える、ことを特徴とする回転電機。
  3. 請求項1又は2に記載の回転電機において、
    前記ロータの回転角を検出する回転角検出装置を備え、
    前記制御装置による前記電力供給状態の切り替えは、前記回転角検出装置が検出する前記ロータの回転角に基づき、前記コイルに供給する交流電力の位相を変更することにより行われる、ことを特徴とする回転電機。
  4. 請求項1乃至の何れか一項に記載の回転電機において、
    前記複数の磁石部は、ステータ側の磁極が交互に異なる状態で周方向に配列されており、
    前記制御装置は、前記第2、第3電力供給状態において、ステータ側の磁極が互いに異なる磁石部に対して前記軸方向の力であって同じ向きの力が作用するように前記コイルに対する電力供給状態を制御する、ことを特徴とする回転電機。
  5. 請求項1乃至の何れか一項に記載の回転電機において、
    前記制御装置は、前記第2、第3電力供給状態において、前記磁石部に対して前記軸方向の力のみが作用するように前記コイルに対する電力供給状態を制御する、ことを特徴とする回転電機。
  6. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の回転電機において、
    前記磁石部の前記軸方向の変位を許容する状態と、当該変位を規制して前記磁石部を前進位置および後退位置に保持する状態とに切替可能な保持装置をさらに備えている、ことを特徴とする回転電機。
  7. 請求項に記載の回転電機において、
    前記保持装置は、前記磁石部に連結されて当該磁石部と共に前記軸方向に変位するピストン部材と、当該ピストン部材が収容されたシリンジ部と、当該シリンジ部に連通し、前記ピストン部材の変位に伴い前記シリンジ部に対して給排される液体が貯留された液貯留部と、前記シリンジ部に対する前記液体の給排を規制する開閉弁と、を含み、
    前記制御装置は、前記開閉弁をさらに制御し、前記第1電力供給状態においては前記開閉弁を閉止し、前記第2、第3電力供給状態においては前記開閉弁を開放する、ことを特徴とする回転電機。
  8. 請求項又はに記載の回転電機において、
    前記ロータとして、前記軸方向における前記ステータの両側に配置される第1ロータと第2ロータとを含むとともに、前記保持装置として、前記第1ロータに対応する第1保持装置と前記第2ロータに対応する第2保持装置とを備え、
    前記制御装置は、前記第1保持装置および第2保持装置を個別に制御する、ことを特徴とする回転電機。
  9. バッテリと当該バッテリから電力供給を受けて駆動輪を駆動することが可能な、請求項1乃至の何れか一項に記載の回転電機とを備えた車両であって、
    車両の走行状態に応じた目標出力を設定する目標出力設定部を備え、
    前記制御装置は、前記目標出力に対応する回転電機の目標回転数に応じて前記磁石部の位置を前進位置と後退位置との間で切り替えるべく、前記コイルに対する電力供給状態を変更することを特徴とする車両。
  10. 請求項に記載の車両において、
    前記制御装置は、回転電機の回転数が予め設定された切替回転数に到達した時点で前記磁石部の位置を切り替える、ことを特徴とする車両。
  11. 請求項10に記載の車両において、
    前記磁石部が前進位置に配置された状態における前記回転電機の最大回転数を限界回転数と定義したときに、
    前記切替回転数は、前記限界回転数である、ことを特徴とする車両。
  12. 請求項10又は11に記載の車両において、
    前記制御装置は、車両の加速時であってかつ加速開始時点の回転数が前記切替回転数の所定値内である場合には、前記加速開始時点で前記磁石部の位置を切り替える、ことを特徴とする車両。
  13. 請求項10に記載の車両において、
    前記磁石部が前進位置に配置された状態における前記回転電機の最大回転数を限界回転数と定義したときに、
    前記制御装置は、車両の加速時であってかつ加速開始時点の回転数が前記切替回転数よりも所定値以上低い場合には、前記回転電機の回転数が限界回転数に到達した時点で前記磁石部の位置を切り替える、ことを特徴とする車両。
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