JP6194304B2 - コラーゲンを配合した発酵乳及びその製造方法 - Google Patents

コラーゲンを配合した発酵乳及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コラーゲンを配合した発酵乳及びその製造方法に関する。
以前から、ヨーグルトに代表される発酵乳に健康の維持作用や増進作用があることは、よく知られているが、近年では、さらなる特別な増進作用などを期待し、発酵乳に何らかの機能性を持たせる傾向が見られるようになってきた。例えば、特開2008−283948号公報(特許文献1)には、乳及びコラーゲン類を含む原料に、発酵菌及び蛋白質分
解酵素を作用させる乳発酵物の製造方法が記載されている。ここでは、コラーゲン類を含む乳発酵物について、その風味や食感などを評価しているものの、その製造方法として、一般的な内容が記載されている。
特開2008−283948号公報
本発明では、コラーゲン類を配合した発酵乳の効率的な製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本願発明者が検討したところによると、コラーゲン類を高濃度で配合した原料乳を発酵させると、発酵が遅延するという現象が確認された。本発明者は、コラーゲン類を高濃度で配合した原料乳を用いた発酵乳を製造するにあたり、発酵遅延の問題を解決する方法、及びそれに伴う風味の劣化を解消し、風味良好な発酵乳を製造できる方法について検討した。そして、コラーゲン類を高濃度で配合した原料乳に対して、酵母エキス及び/又はホエイ由来ペプチドを添加することにより、発酵遅延が生じず、発酵乳を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、酵母エキス及び/又はホエイ由来ペプチドを添加することを特徴とする、コラーゲンを配合した発酵乳の製造方法、である。
請求項2に記載の発明は、原料乳における酵母エキスの添加濃度が0.001重量%以上0.3重量%以下である、請求項1に記載のコラーゲンを配合した発酵乳の製造方法、である。
請求項3に記載の発明は、原料乳におけるホエイ由来ペプチドの添加濃度が0.01重量%以上0.4重量%以下である、請求項1に記載のコラーゲンを配合した発酵乳の製造方法、である。
請求項4に記載の発明は、原料乳における酵母エキスの添加濃度が0.001重量%以上0.3重量%以下であり、かつ、ホエイ由来ペプチドの添加濃度が0.01重量%以上0.4重量%以下である、請求項1に記載のコラーゲンを配合した発酵乳の製造方法、である。
請求項5に記載の発明は、原料乳におけるコラーゲンの配合濃度が0.4重量%以上7重量%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の、コラーゲンを配合した発酵乳の製造方法、である。
請求項6に記載の発明は、発酵時のpHが発酵開始から4時間以内に4.7以下となる、請求項1から5のいずれか一項に記載の、コラーゲンを配合した発酵乳の製造方法、である。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法で製造された発酵乳、である。
本発明者は、従来の方法では、コラーゲンを高濃度で配合した原料乳を発酵させると、発酵が遅延してしまい、その製造効率が低下して、ひいては発酵乳の製造工程の全体に悪影響を及ぼすなどの重大な問題が生じることを見出した。これに対して、本発明によれば、コラーゲンを高濃度で配合した原料乳を用いて発酵乳を製造しても、発酵遅延の問題が生じない発酵乳の製造方法を提供できる。
ホエイ由来ペプチド、あるいは酵母エキスの発酵遅延抑制効果を示す図である。 ホエイ由来ペプチド及び酵母エキスの発酵遅延抑制効果を示す図である。 ホエイ由来ペプチド及び酵母エキスの、濃度による発酵遅延抑制効果の違いを示す図である。 コラーゲンの違いが、ホエイ由来ペプチド及び酵母エキスの発酵遅延抑制効果に及ぼす影響を示す図である。
本発明者は、美容促進などの機能を付加した発酵乳の製造を目的とし、コラーゲンを高濃度で原料乳に配合して、発酵させたところ、pH低下の所要時間が大幅に増加して、発酵が遅延することが明らかになった。この発酵遅延の現象では、コラーゲンの配合濃度の増加に伴い、発酵時間が延長されることから、コラーゲンの配合(添加)が発酵遅延の主要因となっていると考えられた。発酵が遅延すると、発酵乳を連続的に生産しにくくなり、その製造効率が大幅に悪化することとなる。
そこで、本発明者は、上記の問題を解決するべく、発酵遅延を解消や抑制する方策を種々検討したところ、コラーゲンを高濃度で配合した原料乳に、酵母エキスを添加(配合)することで、発酵遅延を解消や抑制できることを見出した。また、酵母エキスの添加による発酵遅延の抑制効果は、酵母エキスが所定の添加濃度であれば、その添加濃度に比例して効果が発現されることが明らかとなった。
また、酵母エキスは独特の風味があるため、その添加濃度が高すぎると、発酵乳(最終製品)の風味に大きく影響し、風味の良好な発酵乳を得にくいことが判明した。
そこで、本発明者は、本発明の好ましい態様として、コラーゲンを高濃度で配合して、さらに風味が損なわれず、風味の良好な発酵乳を得るべく、発酵遅延を解消や抑制する方策を種々検討したところ、コラーゲンを高濃度で配合した原料乳に、ホエイ由来ペプチドを添加することで、発酵乳の風味を良好に維持しながら、発酵遅延を解消や抑制できることを見出した。さらに、コラーゲンを高濃度で配合した原料乳に、酵母エキスを添加し、かつホエイ由来ペプチドを添加することで、酵母エキスに基づく発酵遅延の抑制効果を阻害することなく、酵母エキスの独特の風味をマスキングして、発酵乳の風味を良好に維持しながら、発酵遅延を解消や抑制できることを見出した。
本発明において「発酵乳」とは、例えば、日本の食品衛生法に基づく省令である「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)で定義されている「はっ酵乳」などが挙げられ、ヨーグルトなどの固形状発酵乳(セットタイプヨーグルト)、糊状発酵乳(ソフトタイプヨーグルト)、液状発酵乳(ドリンクタイプヨーグルト)などが含まれる。
「コラーゲン」とは、骨、軟骨、靱帯、腱、皮膚などの組織を構成するタンパク質の一種であり、ヒトの体内のタンパク質の約3分の1(1/3)量を占めていると言われている。コラーゲンは、ヒトの体内でタンパク質として機能する他に、飲食品や医薬品、化粧品の原料としても使用されている。コラーゲンは、保湿、美容促進、関節痛軽減、骨形成促進などの作用があると言われている。本発明において「コラーゲン」とは、コラーゲンペプチドやアミノコラーゲンなども対象として包含し、一般に入手できるコラーゲンであれば良い。例えば、新田ゼラチン社から販売されている「イクオスHDL」、「SCP−5200」、ニッピ社から販売されている「PS−1」、「FCP」などを挙げることができる。本発明では、原料乳におけるコラーゲンの配合濃度は、0.4〜7重量%が好ましく、0.8〜5重量%がより好ましく、1.5〜4重量%がさらに好ましい。
ここで、本明細書中、「原料乳」とは、本発明のコラーゲンを配合した発酵乳の製造方法において使用するすべての原料の混合物をいい、例えば、コラーゲン、酵母エキス、ホエイ由来ペプチド、以下に説明する通常の発酵乳や従来の発酵乳を製造する際に必要となる原材料が含まれる。
「酵母エキス」とは、例えば、サッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母から、熱水処理などにより抽出された液体を挙げることができる。酵母エキスは、酵母から抽出されたものであっても良いし、酵母を集めて破砕し、酵母自身に含まれる消化酵素の作用によって自己消化させたものであっても良い。酵母エキスには、ペプチド、アミノ酸、核酸、ミネラル、ビタミンが含まれており、調味料などに用いられる。本発明において「酵母エキス」とは、酵母成分の抽出物などを対象として包含し、一般に入手できる酵母エキスであれば良い。例えば、アサヒフードアンドヘルスケア社から販売されている「ミーストP2G」などを挙げることができる。本発明では、原料乳における酵母エキスの添加濃度は、0.001〜0.3重量%が好ましく、0.005〜0.2重量%がより好ましく、0.015〜0.1重量%がさらに好ましい。
「ホエイ由来ペプチド」とは、主に乳や乳成分から脂肪とカゼインを除いた水溶液部分(ホエイ)に含まれるペプチドを挙げることができる。ここで、ホエイはチーズの製造時に固形物(カード)から分離された副産物として得られ、高タンパク質かつ低脂肪のため、栄養価が高く、消化が良い素材である。本発明において「ホエイ由来ペプチド」とは、ホエイタンパク質の酵素(プロテアーゼ)分解物などを対象として包含し、一般に入手できるホエイ由来ペプチド(ホエイタンパク質の分解物)であれば良い。例えば、DMV社から販売されている「LE80GF−US」などを挙げることができる。本発明では、原料乳におけるホエイ由来ペプチドの添加濃度は、0.01〜0.4重量%が好ましく、0.02〜0.3重量%がより好ましく、0.03〜0.2重量%がさらに好ましい。
本発明において、上記した以外の事項は、通常の発酵乳や従来の発酵乳を製造する際に必要となる同様の方法や原材料を適用することができる。例えば、本発明では、発酵乳の原材料として、牛乳、殺菌乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、全脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、クリーム、バター、バターミルク、ホエイ、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質単離物(WPI)、α−ラクトアルブミン(α−La)、β−ラクトグロブリン(β−Lg)などの乳原料、砂糖、甘味料、糖類、香料、水などを挙げることができる。また、発酵乳の原材料として、ゼラチン、寒天、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのゲル化剤、増粘剤、安定剤も挙げることができる。
スターターには、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)などの発酵乳の製造において一般に用いられる乳酸菌や酵母から1種又は2種以上を選んで用いることができる。本発明において、例えば、混合スターターの菌数の濃度として、10〜1012 cfu/mLが好ましく、10〜1011
cfu/mLがより好ましく、10〜1010 cfu/mLがさらに好ましい。また、原料乳における混合スターターの添加量として、0.05〜8重量%が好ましく、0.075〜7重量%がより好ましく、0.1〜5重量%がさらに好ましい。このとき、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)やビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)などのプロバイオティクスなどから1種又は2種以上を選んで用いることもできる。
本発明において、原料乳の調製(調合)では、各種の原材料を混合(溶解・分散)してから、必要に応じて均質化及び/又は殺菌した後に、所定の温度(例えば、発酵温度)まで冷却する。次に、この原料乳へスターターを所定の濃度で接種(添加)してから、必要に応じて混合(撹拌)した後に、発酵させる。このとき、いわゆる前発酵タイプ(ソフトタイプヨーグルト、ドリンクタイプヨーグルトなど)の場合には、大型のタンクなどで発酵させる。また、いわゆる後発酵タイプ(セットタイプヨーグルト)の場合には、実際に店頭で販売する容器などで発酵させる。
本発明において、発酵時のpHが発酵開始から4時間以内に4.7以下であることが好ましく、4.65以下がより好ましく、4.6以下がさらに好ましい。また、本発明において、発酵温度には、30〜50℃が好ましく、35〜47℃がより好ましく、40〜45℃がさらに好ましく、42〜44℃がとくに好ましい。そして、発酵時間には、2〜24時間が好ましく、2〜12時間がより好ましく、3〜7時間がさらに好ましく、3〜5時間がとくに好ましい。
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、この実施例は、本発明を限定するものではない。
[実施例1]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.35kgを混合したところへ、コラーゲン3.06kg、ホエイ由来ペプチド0.1kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。これらを100mL容の容器に80gずつで充填し、それを適当数で用意し、43℃の恒温室にて静置発酵させた。このとき、発酵開始の1時間後から6時間後まで30分毎に(5時間半後を除く)、試料を採取(サンプリング)し、それらのpHを測定した。
[実施例2]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.25kgを混合したところへ、コラーゲン3.06kg、酵母エキス0.2kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例1と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
[比較例1]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.45kgを混合したところへ、コラーゲン3.06kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例1と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
実施例1及び2、比較例1のpHの測定結果を表1並びに図1に示した。
Figure 0006194304
実施例1は、ホエイ由来ペプチドを0.1%添加した発酵乳で、実施例2は、酵母エキスを0.2%添加した発酵乳である。一方、比較例1は、酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを含まない。pHの測定結果より、比較例1のように、コラーゲンを配合(添加)しただけの発酵乳では、pHの低下が遅く、発酵遅延の現象が明確に認められた。これに対して、実施例1及び2のように、コラーゲンを配合(添加)するだけでなく、酵母エキスあるいはホエイ由来ペプチドも配合(添加)した発酵乳では、pHの低下が速く、酵母エキスあるいはホエイ由来ペプチドに発酵遅延の現象を抑制する効果が認められた。実施例1及び2の発酵乳を官能検査したところ、実施例2では酵母エキスに起因する独特の風味が感じられた。
[実施例3]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.3kgを混合したところへ、コラーゲン3.06kg、酵母エキス0.05kg、ホエイ由来ペプチド0.1kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。これらを100mL容の容器に80gずつで充填し、それを適当数で用意し、43℃の恒温室にて静置発酵させた。このとき、発酵開始の1時間後から6時間後まで30分毎に(3時間後と4時間後を除く)、試料を採取(サンプリング)し、それらのpHを測定した。
[実施例4]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水51.26kgを混合したところへ、コラーゲン5.1kg、酵母エキス0.05kg、ホエイ由来ペプチド0.1kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例3と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
[比較例2]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.45kgを混合したところへ、コラーゲン3.06kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例3と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
[比較例3]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水51.41kgを混合したところへ、コラーゲン5.1kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例3と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
実施例3及び4、比較例2及び3のpHの測定結果を表2並びに図2に示した。
Figure 0006194304
実施例3は、コラーゲン濃度が3.06%の発酵乳で、実施例4は、コラーゲン濃度が5.1%の発酵乳であり、それぞれに酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを含んでいる。一方、比較例2は、コラーゲン濃度が3.06%の発酵乳で、比較例3は、コラーゲン濃度が5.1%の発酵乳で、それぞれに酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを含まない。pHの測定結果より、比較例2及び3のように、コラーゲンを配合(添加)しただけの発酵乳では、pHの低下が遅く、発酵遅延の現象が明確に認められた。これに対して、実施例3及び4のように、コラーゲンを配合(添加)するだけでなく、酵母エキス及びホエイ由来ペプチドも配合(添加)した発酵乳では、pHの低下が速く、酵母エキス及びホエイ由来ペプチドに発酵遅延の現象を抑制する効果が認められた。また、実施例3及び4の発酵乳を官能検査したところ、酵母エキスに起因する独特の風味は一切感じられず、発酵乳本来の良好な風味と食感であり、ホエイ由来ペプチドのマスキング効果も認められた。本発明の好ましい実施形態により、発酵乳へのコラーゲンの添加に起因する発酵遅延の現象を抑制できると共に、風味と食感の良好な発酵乳を製造できることが明らかとなった。
[実施例5]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.405kgを混合したところへ、コラーゲン3.06kg、酵母エキス0.015kg、ホエイ由来ペプチド0.03kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例3と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。なお、このとき、発酵開始の1時間後、1時間30分後、2時間後、2時間30分後、3時間後、3時間15分後、4時間後、4時間30分後、4時間45分後、5時間後、5時間40分後に、試料を採取した。
[実施例6]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.375kgを混合したところへ、コラーゲン3.06kg、酵母エキス0.025kg、ホエイ由来ペプチド0.05kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例5と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
[比較例4]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.45kgを混合したところへ、コラーゲン3.06kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例5と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
実施例5及び6、比較例4のpHの測定結果を表3並び図3に示した。
Figure 0006194304
実施例5及び6は、実施例3と比較して、酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを低濃度で含んでいる発酵乳である。これらの実施例5及び6でも、比較例4などのように、酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを含まない発酵乳と比較して、pHの低下が速く、酵母エキス及びホエイ由来ペプチドが低濃度であっても、発酵遅延の現象を抑制する効果が認められた。また、実施例5及び6の発酵乳を官能検査したところ、酵母エキスに起因する独特の風味は一切感じられず、発酵乳本来の良好な風味と食感であることが確認された。本発明の好ましい実施形態により、発酵乳へのコラーゲンの添加に起因する発酵遅延の現象を抑制できると共に、風味と食感の良好な発酵乳を製造できることが明らかとなった。
[実施例7]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.3kgを混合したところへ、コラーゲン(HDL−50SP、魚由来、新田ゼラチン社製)3.06kg、酵母エキス0.05kg、ホエイ由来ペプチド0.1kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。これらを100mL容の容器に80gずつで充填し、それを適当数で用意し、43℃の恒温室にて静置発酵させた。このとき、発酵開始の1時間後から5時間半後まで30分毎に(1時間半後と3時間半後を除く)、試料を採取(サンプリング)し、それらのpHを測定した。
[実施例8]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.3kgを混合したところへ、コラーゲン(SCP−5200、豚皮由来、新田ゼラチン社製)3.06kg、酵母エキス0.05kg、ホエイ由来ペプチド0.1kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例7と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
[比較例5]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.3kgを混合したところへ、コラーゲン(HDL−50SP、魚由来、新田ゼラチン社製)3.06kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例7と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
[比較例6]
牛乳(明治製)34.6kg、脱脂粉乳(明治製)5.89kg、水53.3kgを混合したところへ、コラーゲン(SCP−5200、豚皮由来、新田ゼラチン社製)3.06kgを添加して混合し、95℃の達温にて加熱殺菌した後に、43℃に冷却した。そして、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルカリカスとストレプトコッカス・サーモフィラスの混合スターター)3.0kgを接種した。実施例7と同様の手順で充填及び発酵し、試料を採取(サンプリング)及びpHを測定した。
実施例7及び8、比較例5及び6のpHの測定結果を表4並びに図4に示した。
Figure 0006194304
実施例7及び8では、添加(配合)したコラーゲンの種類が異なっているが、両方とも酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを含んでいる。一方、比較例5及び6では、添加(配合)したコラーゲンの種類が異なっているが、両方とも酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを含んでいない。これらの実施例7及び8でも、比較例5及び6のように、酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを含まない発酵乳と比較して、pHの低下が速く、コラーゲンの種類が異なっていても、発酵遅延の現象を抑制する効果が認められた。また、実施例7及び8の発酵乳を官能検査したところ、酵母エキスに起因する独特の風味は一切感じられず、発酵乳本来の良好な風味と食感であることが確認された。本発明の好ましい実施形態により、発酵乳へのコラーゲンの添加に起因する発酵遅延の現象を抑制できると共に、風味と食感の良好な発酵乳を製造できることが明らかとなった。
本発明によれば、コラーゲンを高濃度で配合した原料乳を用いて発酵乳を製造しても、発酵遅延の問題が生じず、発酵乳を製造できる。また、本発明の好ましい態様によれば、コラーゲンを高濃度で配合した原料乳を用いて発酵乳を製造しても、発酵遅延の問題が生じず、かつ、風味や食感も良好な発酵乳を製造できる。
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献及び本願のパリ優先の基礎となる日本出願明細書の内容を全てここに援用する。

Claims (8)

  1. コラーゲンを配合した発酵前の原料乳に酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを添加して発酵させることを特徴とする、コラーゲンを配合した発酵乳の製造方法であって、
    前記原料乳における前記コラーゲンの配合濃度が0.4重量%以上7重量%以下であり、
    原料乳における前記酵母エキスの添加濃度が0.001重量%以上0.3重量%以下であり、
    原料乳における前記ホエイ由来ペプチドの添加濃度が0.01重量%以上0.4重量%以下である、前記製造方法
  2. 発酵時のpHが発酵開始から4時間以内に4.7以下となる、請求項1に記載の、コラーゲンを配合した発酵乳の製造方法。
  3. 前記原料乳における混合スターターの添加量が0.05〜8重量%であり、
    前記混合スターターの菌数の濃度が10 〜10 12 cfu/mLである、請求項1又は2に記載の、コラーゲンを配合した発酵乳の製造方法。
  4. 発酵温度が40〜45℃であり、
    発酵時間が2〜24時間である、請求項1〜3のいずれかに記載の、コラーゲンを配合した発酵乳の製造方法。
  5. コラーゲンを配合した発酵前の原料乳に、酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを添加して発酵させることを特徴とする、原料乳の発酵遅延を抑制する方法であって、
    前記原料乳における前記コラーゲンの配合濃度が0.4重量%以上7重量%以下であり、
    前記原料乳における前記酵母エキスの添加濃度が0.001重量%以上0.3重量%以下であり、
    前記原料乳における前記ホエイ由来ペプチドの添加濃度が0.01重量%以上0.4重量%以下である、前記方法。
  6. 発酵時のpHが発酵開始から4時間以内に4.7以下となる、請求項5に記載の、原料乳の発酵遅延を抑制する方法。
  7. コラーゲンを配合した発酵前の原料乳に、酵母エキス及びホエイ由来ペプチドを添加して発酵させることを特徴とする、酵母エキスの独特の風味をマスキングして、生成される発酵乳の風味を良好に維持する方法であって、
    前記原料乳における前記コラーゲンの配合濃度が0.4重量%以上7重量%以下であり、
    前記原料乳における前記酵母エキスの添加濃度が0.001重量%以上0.3重量%以下であり、
    前記原料乳における前記ホエイ由来ペプチドの添加濃度が0.01重量%以上0.4重量%以下である、前記方法。
  8. 発酵時のpHが発酵開始から4時間以内に4.7以下となる、請求項7に記載の方法。
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