以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る光断層像撮影装置1の概略構成について説明する。本実施形態の光断層像撮影装置(光コヒーレンストモグラフィーデバイス)1は、被検体内の組織の断層画像を、被検体内に挿入されるプローブ2を利用して撮影する。本実施形態では、被検眼Eの内部組織(例えば、網膜)の断層画像を撮影する眼科撮影装置を例示して説明を行う。しかし、本発明は、眼以外の被検体(例えば、内臓、耳等)の断層画像を撮影する装置にも適用できる。光断層像撮影装置1は、測定部10と制御部20を備える。
測定部10は、光断層干渉計(OCT:Optical Coherence Tomography)の構成を備える。本実施形態の測定部10は、測定光源11、エイミング光源12、カップラー13、カップラー14、参照光学系15、装着部16、ファイバ回転モータ17、および検出器(受光素子)18を備える。
測定光源11は、断層画像を取得するための光を出射する。一例として、本実施形態の光断層像撮影装置1は、出射するレーザ光の波長を高速で変化させることが可能な測定光源11を備えることで、Swept−source OCT(SS−OCT)計測によって断層画像を取得する。本実施形態の測定光源11は、レーザ媒体、共振器、および波長選択フィルタ等によって構成される。波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、または、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタ等を採用できる。
エイミング光源12は、測定光の照射位置(つまり、深さ方向の情報の取得位置。断層画像を撮影する場合には、断層画像の撮影位置。)を示すための可視光であるエイミング光を出射する。本実施形態のエイミング光源12は、緑色から赤色までの間でエイミング光の色(波長)を変化させることができる。また、エイミング光源12は、エイミング光の点滅と常時点灯とを切り替えることができ、点滅の周期を変化させることもできる。
カップラー13は、測定光源11から出射された光と、エイミング光源12から出射されたエイミング光とを合波し、2つの光の光軸を一致させる。カップラー14は、カップラー13から入射された光を、測定光(試料光)と参照光に分割する。測定光は、装着部16に装着されたプローブ2に導波される。参照光は、参照光学系15に導波される。また、カップラー14は、被検眼Eによって反射された測定光(反射測定光)と、参照光学系15によって生成された参照光とを合成して干渉光を生成する。カップラー14は、生成した干渉光を検出器18に受光させる。
参照光学系15は、カップラー14から導波された参照光を再びカップラー14に戻す。参照光学系15は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであってもよい。本実施形態では、参照光学系15は、参照ミラー等を備えた反射光学系によって、カップラー14から導かれた参照光を反射させて、カップラー14に再び戻す。前述したように、カップラー14に戻された参照光は、被検眼Eによる反射測定光と合成される。なお、参照光学系15の構成は変更できる。例えば、参照光学系15は、カップラー14から導かれた参照光を反射させずに、光ファイバー等の透過光学系によって検出器18へ透過させてもよい。
装着部(例えばコネクタ)16には、プローブ2におけるファイバ4の後端部(基端部)が着脱可能に装着される。本実施形態のプローブ2は、ファイバ4、ハンドピース5、およびニードル6を備える。ファイバ4は、測定部10のカップラー14から導かれた測定光とエイミング光を、ニードル6の先端部まで導波する。ファイバ4はトルクコイル(図示せず)によって被覆されており、ハンドピース5に対して回転自在である。ハンドピース5は、作業者(例えば、検者、術者等)によって把持される略筒状の部材である。ニードル6は、ハンドピース5の先端に設けられており、ハンドピース5の外径よりも小さい外径を有する。ニードル6の先端部は、被検体(例えば、被検眼E)の内部に挿入される。ファイバ4は、ハンドピース5の後端部に接続し、ニードル6の先端部まで延びている。プローブ2は、ファイバ4によって導波された測定光およびエイミング光を走査させながら、先端部から出射することができる。プローブ2における先端部の構造の詳細については、図2を参照して後述する。
ファイバ回転モータ17は、プローブ2のファイバ4が装着された装着部16を、ファイバ4の軸を中心として回転させることができる。つまり、ファイバ回転モータ17は、装着部16を回転させることでファイバ4を回転させて、測定光およびエイミング光を走査させる。
検出器18は、反射測定光と参照光の干渉状態を検出する。換言すると、検出器18は、カップラー14によって生成された干渉光の干渉信号を検出する。より詳細には、フーリエドメインOCTの場合には、干渉光のスペクトル強度が検出器18によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって、所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。前述したように、本実施形態の光断層像撮影装置1には、SS−OCTが採用されている。しかし、光断層像撮影装置1には、種々のOCTを採用できる。例えば、Spectral−domain OCT(SD−OCT)、Time−domain OCT(TD−OCT)等のいずれを光断層像撮影装置1に採用してもよい。SS−OCTを採用する場合、複数の受光素子を有する平衡検出器を検出器18として採用するのが望ましい。平衡検出器を用いる場合、光断層像撮影装置1は、複数の受光素子からの干渉信号の差分を得て、干渉信号に含まれる不要なノイズを削減することができる。その結果、断層画像の品質が向上する。
なお、測定部10は、測定光と参照光の光路長差を変更する構成を有する。本実施形態の測定部10は、参照光学系15が備える光学部材(例えば、参照ミラー)を光軸方向に移動させることで、光路長差を変更する。ただし、光路長差を変更するための構成は、測定光の光路中に配置されてもよい。また、光断層像撮影装置1は、測定光のフォーカス調整を行うための光学系等の種々の構成をさらに備えるが、これらの詳細な説明は省略する。
制御部20は、CPU(プロセッサ)21、RAM22、ROM23、および不揮発性メモリ24等を備える。CPU21は、光断層像撮影装置1、および周辺機器の制御を司る。RAM22は、各種情報を一時的に記憶する。ROM23には、各種プログラム、初期値等が記憶されている。不揮発性メモリ24は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、光断層像撮影装置1に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を、不揮発性メモリ24として使用することができる。不揮発性メモリ24には、後述するメイン処理(図3参照)を制御するための撮影制御プログラムが記憶されている。また、不揮発性メモリ24には、撮影された断層画像、プローブ2の先端部と組織との距離等の各種情報が記憶される。
本実施形態では、測定部10に接続されたパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)が制御部20として用いられる。しかし、PCを用いずに、測定部10と制御部20を1つのデバイスに一体化させてもよい。また、制御部20は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。例えば、PCに設けられた第一制御部と、測定部10内に設けられた第二制御部とによって、光断層像撮影装置1の制御部20が構成されてもよい。この場合、例えば、PCの第一制御部は、PCに接続された操作部の操作に基づいて、撮影の開始および終了等を第二制御部に対して指示すればよい。第二制御部は、第一制御部からの指示に従って、測定光源11、エイミング光源12、ファイバ回転モータ17等の動作を制御すればよい。また、干渉信号に基づく画像の生成処理等は、第一制御部および第二制御部のいずれで行ってもよい。
制御部20には、表示部31、操作部32、スピーカ33、振動部34、フットスイッチ35、および手術顕微鏡36等の周辺機器が電気的に接続される。表示部31には、後述する作業中画面50(図8参照)等が表示される。表示部31は、PCのディスプレイであってもよいし、光断層像撮影装置1専用のディスプレイであってもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。操作部32は、作業者による各種操作指示を認識するためのデバイスである。操作部32には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いればよい。スピーカ33は音声を発生させる。振動部34は、作業者に感知される振動を発生させることができる。
フットスイッチ35は、作業者の足元に配置される。作業者は、プローブ2等を注視しながらフットスイッチ35を操作することができる。手術顕微鏡36は、被検体(本実施形態では被検眼E)の内部を、手術中、診断中、またはこれらの訓練中に拡大表示(本実施形態では撮影して拡大表示)する。作業者は、手術顕微鏡36を覗き込みながら手術、診断、またはこれらの訓練(本実施形態では、これらをまとめて「作業」という。)を行う。また、本実施形態では、制御部20は、手術顕微鏡36によって撮影された画像を取得し、表示部31に表示させることができる。作業中には、作業者の補助者等は、表示部31に表示された画像を確認することで、作業状況等を確認することができる。なお、手術顕微鏡36を用いずに本発明を実現することも可能である。例えば、被検体の内部の画像を撮影するための観察光学系を、測定部10に設けてもよい。この場合、作業者は、観察光学系によって撮影された画像を確認しながら作業を行うことができる。また、作業者が肉眼でプローブ2の先端部近傍を注視する場合でも、本発明は適用できる。
図2を参照して、プローブ2のニードル6における先端部の構造について詳細に説明する。ニードル6の先端部には、外筒61、カバー66、保持部68、および集光部71等が設けられている。
外筒61は、ファイバ4の先端側の周囲(特に、保持部68および集光部71の周囲)を覆う。本実施形態では、外筒61の形状は、先端に半球面状の閉塞部位を有する略筒状である。外筒61は、測定光およびエイミング光を遮光する材質によって形成されている。外筒61のうち、軸線方向において集光部71が位置する部位の近傍には、測定光およびエイミング光の走査方向(軸周りの方向)に所定の幅を有する開口62が形成されている。集光部71から照射された光束は、開口62の内側の領域63(以下、「透過領域63」という。)では外部に透過されるが、開口62が形成されていない領域64(以下、「遮光領域64」という。)では外筒61によって遮光される。
本実施形態では、外筒61の内側の面には粗面加工が施されている。つまり、外筒61の内側の面には、微細な多数の凹凸が形成されている。この場合、遮光領域64では、外筒61の内側の面に照射された光が散乱する。従って、外筒61の内側が光を散乱させにくい場合(例えば、内側の面に鏡面加工が施されている場合)に比べて、遮光領域64で反射された反射光が集光部71に戻らない可能性が低下する。つまり、鏡面加工等が施されている場合には、集光部71とは異なる方向に光が反射すると、集光部71には反射光は入射しない。反射光が散乱すると、反射光は集光部に戻りやすい。よって、光断層像撮影装置1は、測定光が遮光領域64に照射されていることを検出する場合に、遮光領域64で反射された反射光を用いてより確実な検出を行うことができる。
なお、本実施形態の透過領域63の形状は略矩形であるが、透過領域63の大きさ、形状、数等を変更できることは言うまでもない。また、透過領域63と遮光領域64を形成するための具体的な方法も変更できる。例えば、測定光およびエイミング光を透過する材質と、遮光する材質とを組み合わせて外筒61を製造することで、透過領域63と遮光領域64を形成してもよい。
カバー66は、測定光およびエイミング光を透過する材質によって形成されており、外筒61の外側を閉塞する。従って、カバー66は、血液、硝子体の組織等が開口62から外筒61の内側に侵入することを防止しつつ、透過領域63の内側と外側との間における光の透過を許容する。なお、カバー66は外筒61の内側に位置してもよい。また、カバー66は、外筒61の開口62のみを閉塞する形状でもよい。
保持部68は、外形略円柱状の部材であり、外筒61に対して固定されている。保持部68の軸心部分には、ファイバ4を回転可能な状態で挿通する挿通孔69が形成されている。保持部68は、外筒61に対するファイバ4の軸の位置を一定にした状態で、ファイバ4を回転可能に保持する。
集光部71は、ファイバ4の先端部に設けられている。集光部71は、ファイバ4の先端部から出射された光を偏向させると共に、被検体の組織に集光させる。また、集光部71は、組織で反射された反射測定光を受光し、ファイバ4に入射させる。本実施形態の集光部71は、ファイバ4の軸方向に対して約70度の角度で光を偏向させるが、偏向の角度は適宜変更できる。なお、ファイバ4のうち、保持部68よりも後端側の部分の外周には、ファイバ4のねじれ等を抑制するためのシャフト73が設けられている。
図3から図8を参照して、光断層像撮影装置1が実行するメイン処理について説明する。本実施形態の光断層像撮影装置1は、反射測定光と参照光の干渉光から干渉信号を取得する。取得した干渉信号を処理することで、組織の断層画像を取得する。さらに、光断層像撮影装置1は、組織表面とプローブ2との距離D、および、断層画像の取得状態に基づいて、エイミング光等を制御する。その結果、作業者は、距離Dおよび断層画像の取得状態を、プローブ2の位置を注視した状態(本実施形態では、手術顕微鏡36を覗いた状態)で容易に把握することができる。制御部20のCPU21は、光断層像撮影装置1の電源がオンとされると、不揮発性メモリ24に記憶された制御プログラムに従って、図3に示すメイン処理を実行する。
まず、閾値の設定の実行指示が操作部32に入力されたか否かが判断される(S1)。実行指示が入力されていなければ(S1:NO)、断層画像の撮影の開始指示が操作部32に入力されたか否かが判断される(S5)。撮影の開始指示が入力されていなければ(S5:NO)、処理はS1の判断へ戻る。閾値の設定の実行指示が入力されると(S1:YES)、近接警告用閾値および特定距離通知用閾値の入力が受け付けられて、受け付けられた閾値が設定される(S2,S3)。
図4に示すように、S2,S3の処理では、閾値設定画面41が表示部31に表示される。詳細は後述するが、本実施形態の光断層像撮影装置1は、近接警告および特定距離通知の動作を実行することができる。近接警告とは、プローブ2と組織表面の距離Dが近接警告用閾値N以下になった旨の警告である。作業者は、自らの技量等に応じた近接警告用閾値Nを、操作部32を操作して入力すればよい。また、特定距離通知とは、作業者によって設定された2つの特定距離通知用閾値の間(特定距離の範囲)に距離Dが収まっている旨の通知である。作業者は、例えば、高品質の断層画像を撮影可能な距離Dの範囲等を、特定距離の範囲として操作部32に入力するとよい。CPU21は、操作部32に入力された近接警告用閾値Nおよび特定距離通知用閾値を、不揮発性メモリ24に記憶することで、閾値を設定する。処理はS5の判断へ移行する。
撮影の開始指示が入力されると(S5:YES)、測定光源11およびエイミング光源12の発光が開始されると共に、ファイバ回転モータ17による測定光の走査が開始される(S6)。検出器18によって干渉光が検出されることで干渉信号が取得され、取得された干渉信号が処理される(S8)。より詳細には、本実施形態のCPU21は、取得された干渉信号に対し、フーリエ変換等の公知のスペクトル解析処理を行うことで、測定光が照射された部位の深さ方向の情報(深さ方向における振動強度分布)を取得する(図5参照)。CPU21は、測定光を走査しながら深さ方向の情報を取得することで、二次元の断層画像を取得する。
次いで、プローブ2と組織表面の距離に関する情報(距離情報)が取得され、取得された距離情報が、その時点の時間に対応付けて記憶される(S9)。本実施形態では、プローブ2と組織表面の距離D自体が距離情報として取得される。詳細には、S8で取得された深さ方向の情報に対して、公知のフィルタリング処理等が実行される。次いで、図5に示すように、干渉光の強度が閾値P以上となった部位のうち、プローブ2に最も近い部位が組織表面に特定され、組織表面とプローブ2の距離Dが取得される。なお、距離Dの詳細な取得方法が適宜変更できることは言うまでもない。
次いで、深さ方向の情報の取得状態を示す取得状態情報が取得され、取得された情報が、その時点の時間に対応付けて記憶される(S10)。本実施形態では、一例として、断層画像の撮影状態を示す情報が、取得状態情報として用いられる。より詳細には、CPU21は、取得された断層画像の輝度分布を参照し、輝度分布から得られる情報(例えば、輝度のピーク値、輝度の積分値、輝度の変化量の最大値等の少なくともいずれか)を取得状態情報として取得する。後述するS26では、CPU21は、一定の品質(基準レベル)以上の断層画像が取得されているか否かを、取得状態情報を用いて判断する。ただし、取得状態情報の具体的な内容および取得方法は、適宜変更できる。例えば、CPU21は、断層画像の輝度分布を用いずに、少なくとも1箇所の深さ方向の情報から、組織の層の境界を検出するセグメンテーション処理を行ってもよい。セグメンテーション処理によって一定レベルの境界(エッジ)が検出されたか否かによって、深さ方向の情報の取得状態を判断してもよい。この場合には、S10では、セグメンテーション処理を行った結果が取得状態情報として取得される。
なお、本実施形態では、プローブ2の外筒61に透過領域63と遮光領域64が形成されている(図2参照)。従って、集光部71から照射される光は、透過領域63では組織まで到達するが、遮光領域64では外筒61によって遮光される。よって、遮光領域64に光が透過されている間、CPU21は、距離情報を取得することはできず、且つ、取得状態情報を取得する必要が無い。本実施形態の光断層像撮影装置1は、物体(組織および遮光領域64等)によって反射されて集光部71に戻った反射測定光を検出するための検出素子(図示せず)を備えてもよい。CPU21は、検出素子によって検出された反射測定光の強度に基づいて、走査中の光が透過領域63および遮光領域64のいずれに照射されているかを検出してもよい。CPU21は、走査中の光が透過領域63に照射されている場合にのみ、距離情報および取得状態情報を取得してもよい(S9,S10)。この場合、CPU21は、より正確な距離情報および取得状態情報を取得することができる。なお、CPU21は、光が透過領域63に照射されているか否かを、検出器18によって検出される干渉光の強度に基づいて判断してもよい。
次いで、通知制御処理が行われる(S11)。通知制御処理では、距離情報および取得状態情報に基づいて、エイミング光源12の発光、および、スピーカ33による音声の出力が制御される。その結果、距離Dと断層画像の撮影状態とが作業者によって把握される。なお、本実施形態の光断層像撮影装置1は、振動部34の動作を用いて距離Dと撮影状態を作業者に把握させることも可能である。しかし、以下では、エイミング光源12およびスピーカ33の制御のみを例示して説明を行う。
図6に示すように、通知制御処理が開始されると、距離Dが近接警告用閾値N以下であるか否かが判断される(S21)。前述したように、本実施形態では、近接警告用閾値Nは作業者によって設定されている。距離Dが閾値N以下であれば(S21:YES)、CPU21は、エイミング光を点滅させて(S22)、且つ、スピーカ33から所定の警告音を出力させる(S23)。距離Dが閾値Nよりも大きければ(S21:NO)、CPU21は、エイミング光を常時点灯させる(S24)。
従って、図7に示すように、作業者は、エイミング光の状態(常時点灯または点滅)を確認することで、プローブ2が組織表面に近接しているか否かを把握することができる。さらに、作業者は、警告音が出力されているか否かを確認することで、プローブ2が組織表面に近接しているか否かを確認することができる。
次いで、深さ方向の情報の取得状態(本実施形態では、断層画像の撮影状態)が良好であるか否かが、取得状態情報によって判断される(S26)。例えば、断層画像の輝度分布のピーク値が取得状態情報として取得されている場合には、CPU21は、ピーク値が基準レベル以上であるか否かによって、撮影状態が良好であるか否かを判断することができる。なお、取得状態が良好であるか否を判断する方法には、上記に例示した方法以外の方法を採用することもできる。取得状態が良好であれば(S26:YES)、エイミング光が緑色に調整される(S27)。取得状態が良好でなければ(S26:NO)、エイミング光が赤色に調整される(S28)。
図7に示すように、プローブ2と組織表面の距離Dが近すぎる場合(例えば、約2.0mm以下である場合)には、深さ方向の情報の取得状態が悪化し、良好な断層画像は取得されない。また、距離Dが遠すぎる場合(例えば、約4.4mm以上である場合)にも、深さ方向の情報の取得状態は悪化する。従来の光断層像撮影装置では、作業者は、プローブの先端部の注視(例えば、手術顕微鏡を用いた被検体内部の確認)を中断し、表示部に表示されている断層画像を確認しなければ、撮影状態を自ら把握することは困難であった。プローブの先端部の注視を中断すると、プローブが組織表面に接触し、被検体を傷つける等の問題が生じる場合がある。従って、距離Dが撮影可能範囲Kに収まるようにプローブ2を操作することは、容易ではなかった。しかし、本実施形態の光断層像撮影装置1によると、作業者は、プローブ2の先端部を注視しつつ、深さ方向の情報の取得状態が良好であるか否かを容易に把握することができる。
次いで、距離Dが特定距離範囲内に収まっているか否かが判断される(S30)。前述したように、本実施形態では、2つの特定距離通知用閾値が作業者によって設定されることで、特定距離の範囲が設定されている。距離Dが特定距離範囲内に収まっていれば(S30:YES)、CPU21は、スピーカ33から所定の通知音を出力させる(S31)。処理はメイン処理へ戻る。距離Dが特定距離範囲内に収まっていなければ(S30:NO)、処理はそのままメイン処理へ戻る。
図7に示すように、作業者は、自ら設定した特定距離の範囲内に距離Dが収まっているか否かを、通知音の出力の有無によって判断することができる。従って、作業者は、例えば距離Dを一定の範囲内で維持させたい場合等には、特定距離通知用閾値を所望の値に設定し、通知音の有無を確認しながら作業を行うことで、作業内容を向上させることができる。
図3の説明に戻る。通知制御処理(S11)が終了すると、図8に示す撮影中画面50が更新される(S12)。本実施形態の撮影中画面50には、正面画像表示部51、断層画像表示部52、現在距離表示部53、チェックポイント距離表示部54、および時間−距離グラフ表示部55が設けられている。
正面画像表示部51には、手術顕微鏡36から入力した被検体の内部(本実施形態では眼底)の正面画像が表示される。図8に示す例では、眼底における乳頭の近傍の組織と、組織に照射されたエイミング光とが表示されている。断層画像表示部52には、S8で取得された干渉信号から得られる断層画像が表示される。現在距離表示部53には、その時点の距離Dが表示される。作業者の補助を行う補助者等は、現在距離表示部53を見ることで、その時点の距離Dを的確に把握することができる。チェックポイント距離表示部54には、作業者がフットスイッチ35を操作した時点の距離Dが1または複数表示される。
時間−距離グラフ表示部55には、図8に例示する時間−距離グラフが表示される。時間−距離グラフは、一方の軸(本実施形態では横軸)を時間t、他方の軸を距離Dとし、時間Tと距離Dの推移をグラフ化したものである。本実施形態では、距離Dが撮影可能範囲Kに収まっている部分(実線)と、距離Dが撮影可能範囲Kに収まっていない部分(点線)とが、異なる態様で表示される。従って、作業者は、作業の終了後にグラフを確認することで、撮影状態が良好であった時間帯を、グラフの表示態様によって把握することも可能である。なお、距離Dが撮影可能範囲Kに収まっているか否かは、深さ方向の情報の取得状態が良好であるか否かによって判断できる。また、CPU21は、距離Dが近接警告用閾値N以下となった部分のグラフの表示態様を、他の部分とは異なる表示態様としてもよい。
CPU21は、S12の処理において、正面画像表示部51、断層画像表示部52、現在距離表示部53、および時間−距離グラフ表示部55の表示内容を、最新の表示内容に更新する。本実施形態では、表示部31表示される撮影中画面50の画像データが不揮発性メモリ24に記憶(録画)される。従って、作業者は、作業終了後に撮影中画面50を再生させて作業内容を確認することもできる。
次いで、フットスイッチ35がオンとされたか否かが判断される(S14)。本実施形態では、作業者は、その時点の距離Dを後で確認したい場合にフットスイッチ35を操作する。CPU21は、フットスイッチ35が操作されてオンとされると(S14:YES)、その時点の時間tと距離Dを対応付けて、不揮発性メモリ24に記憶させる(S15)。フットスイッチ35が操作されたことを示すマーク(図8の時間−距離グラフ表示部55におけるP1,P2,P3)を、時間−距離グラフ表示部55のうち、その時点の時刻tと距離Dに対応する位置に表示させる(S16)。また、チェックポイント距離表示部54の表示内容が更新される。処理はS18の判断に移行する。フットスイッチ35がオンとされていなければ(S14:NO)、処理はそのままS18の判断へ移行する。
次いで、撮影を終了させる指示が操作部32に入力されたか否かが判断される(S18)。終了指示が入力されていなければ(S18:NO)、処理はS8へ戻り、S8〜S18の処理が繰り返される。撮影の終了指示が入力されると(S18:YES)、メイン処理は終了する。
以上説明したように、本実施形態の光断層像撮影装置1は、距離情報および取得状態情報の少なくともいずれかに基づいて、可視光、音声、および振動の少なくともいずれかを制御する。作業者は、被検体内に挿入したプローブ2を注視した状態でも、被検体内に照射された可視光の変化、音声、および振動を把握することができる。従って、作業者は、プローブ2と組織の距離、および、OCTによる情報の取得状況の少なくともいずれかを、プローブ2を注視した状態で容易に把握することができる。
例えば、プローブ2が被検体の組織に接触すると、組織を傷つける可能性、断層画像の撮影状態が悪化する可能性等がある。従って、作業者は、プローブ2の先端部を極力注視しながら作業を行うことが望ましい。一方で、プローブ2を注視するだけでは、プローブ2と組織の間の距離Dを把握し難い場合もあった。本実施形態の光断層像撮影装置1によると、作業者は、プローブ2を注視しつつ、距離Dを把握することができる。また、従来では、作業者が作業中に撮影状態を把握するためには、プローブ2から眼を離して表示部31の画像を確認する方法、補助者に撮影状態を通知してもらう方法等を用いる必要があった。本実施形態の光断層像撮影装置1によると、プローブ2を注視しつつ、断層画像の撮影状態(つまり、深さ方向の情報の取得状態)を容易に把握することができる。
また、光断層像撮影装置1を用いて、手術および診断等のトレーニングが行われる場合もある。この場合に、作業者は、プローブ2を注視しながら距離Dおよび撮影状態を把握できる。よって、本実施形態の光断層像撮影装置1によると、トレーニングの効率も向上する。
本実施形態の光断層像撮影装置1は、プローブ2と組織の距離が近接警告用閾値N以下であるか否かに応じて、可視光、音声、および振動の少なくともいずれかの動作を切り替える。この場合、作業者は、プローブ2と組織の距離が近づいたことを、プローブ2の位置を注視した状態で容易に把握することができる。
本実施形態の光断層像撮影装置1は、作業者によって指定された閾値(本実施形態では、近接警告用閾値Nおよび特定距離通知用閾値)を基準として、可視光、音声、および振動の少なくともいずれかを切り替える。この場合、作業者は、自らの技量、作業内容、手術等を行う部位等に応じて閾値を設定することで、作業の内容をさらに向上させることができる。
本実施形態の光断層像撮影装置1は、深さ方向の情報の取得レベルが基準レベル以上であるか否かに基づいて、可視光、音声、および振動の少なくともいずれかを切り替える。この場合、作業者は、深さ方向の情報が適切に取得されているか否か(例えば、良好な断層画像が撮影されているか否か)を、プローブ2の位置を注視した状態で容易に把握することができる。
本実施形態の光断層像撮影装置1は、測定光が照射される位置を示すエイミング光の発光態様を、距離情報および取得状態情報に基づいて変化させる。作業者は、測定光の照射位置を所望の位置に調整するために、エイミング光の照射位置を注視しながら作業を行う場合が多い。光断層像撮影装置1は、注視しているエイミング光の変化によって、作業状況を容易に把握することができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、様々な変形が可能であることは勿論である。上記実施形態の光断層像撮影装置1は、測定光を走査させて組織の断層画像を撮影しつつ、可視光、音声、および振動の少なくともいずれかを制御する。しかし、光断層像撮影装置1は、測定光を走査させなくても、組織の深さ方向の情報(いわゆるAスキャン情報)を取得することができる。従って、例えば、光断層像撮影装置1は、走査させていない測定光の反射光から得られたAスキャン情報から、プローブ2と組織の距離D、および、Aスキャン情報の取得状態の少なくともいずれかを検出してもよい。
上記実施形態で説明した距離Dの通知方法、および、深さ方向に関する情報の取得状態の通知方法は、一例である。従って、具体的な通知方法を変更することも可能である。
例えば、上記実施形態の光断層像撮影装置1は、距離Dおよび情報の取得状態に応じてエイミング光の色を変化させる。作業者は、プローブ2の先端部とエイミング光とを同時に視認することができるため、プローブ2を注視しつつ作業状態を把握することができる。しかし、光断層像撮影装置1は、被検体の内部を照明する照明光の波長(色)、強度、および照射と消灯の少なくともいずれかを、良好な断層画像が取得されているか否かに応じて変化させてもよい。つまり、光断層像撮影装置1は、被検体内に照射される種々の可視光(例えば、エイミング光、照明光、固視灯の光等)を変化させることで、距離Dおよび情報の取得状態を作業者に通知することが可能である。
また、光断層像撮影装置1は、スピーカ33および振動部34の少なくともいずれかの動作を、良好な断層画像が取得されているか否かに応じて変化させてもよい。光断層像撮影装置1は、音声の代わりに、または音声と共に、可視光および振動の少なくともいずれかを、距離Dが特定距離の範囲内であるか否かに応じて変化させてもよい。光断層像撮影装置1は、可視光源およびスピーカ33のいずれか一方の動作を、距離Dが近接警告用閾値N以下であるか否かに応じて変化させてもよい。また、光断層像撮影装置1は、可視光源(本実施形態ではエイミング光源12)、スピーカ33、および振動部34の少なくともいずれかを制御できればよく、これらの全てを制御できる必要は無い。
また、光断層像撮影装置1は、可視光の強度、可視光の色、可視光の点滅間隔、音声の大きさ、音声の周波数、振動の強さ、振動の周波数等の少なくともいずれかを、距離Dに応じて段階的に、または徐々に変化させてもよい。この場合、作業者は、可視光、音声、および振動の変化によって、距離Dをより正確に把握することができる。例えば、光断層像撮影装置1は、距離Dが小さくなる程、可視光の色が緑から赤に近づくように、可視光源を制御してもよい。この場合、作業者は、可視光の色の度合いに応じて距離Dを把握することができる。また、光断層像撮影装置1は、距離Dが小さくなる程、可視光の点滅の間隔(点滅周期)が短くなるように、可視光源を制御してもよい。距離Dが小さくなる程、音声の周波数が高くなるように、スピーカ33を制御してもよい。
上記実施形態の光断層像撮影装置1は、距離D、および深さ方向に関する情報の取得状態を共に取得する。さらに、距離D、および情報の取得状態の各々に応じて、可視光、音声、および振動の少なくともいずれかを制御する。しかし、光断層像撮影装置1は、距離Dおよび情報の取得状態のいずれかを取得してもよい。また、距離Dおよび情報の取得状態の一方のみを作業者に通知してもよい。
上記実施形態のプローブ2は一例であり、プローブ2の構成を変更することも可能である。例えば、鉗子等を備えた手術用デバイスと、組織の深さ方向の情報を取得するための光学系とを共に備えたプローブを用いてもよい。先端部が屈曲されたプローブを用いても良い。また、測定光を走査させる方法も変更できる。例えば、測定光を変更させる偏向部(例えば、MEMSミラー等)をプローブの先端に設け、偏向部を駆動することで測定光を走査させてもよい。
上記実施形態では、作業者は、その時点の距離Dを後で確認したい場合にフットスイッチ35を操作する。作業者は、プローブ2を把持している場合でもフットスイッチ35を操作することができるため、作業の安全性の低下等は生じにくい。しかし、フットスイッチ35以外の操作手段を採用することも可能である。例えば、プローブ2にスイッチを設ける場合でも、作業者は、プローブ2を把持しながらスイッチを操作することができる。