以下本発明をDLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式のプロジェクタ装置に適用した場合の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るプロジェクタ装置10の外観構成を示す斜視図である。同図に示すようにプロジェクタ装置10は、直方体状の本体ケーシング11の前面左端側に投影レンズ部12及び測距部13を設ける。
また、同じく本体ケーシング11の前面の左端寄りにリモコン受光部14を設ける。このリモコン受光部14は、このプロジェクタ装置10専用のリモートコントローラ(不図示)からの赤外線変調された操作信号を受信する。
さらに、本体ケーシング11前面及び本体ケーシング11の右側面に、図示する如く多数の通気孔15,15,…を形成する。これら通気孔15,15,…を介して、本体ケーシング11内部に配置された冷却ファンの駆動により外部の空気を取り入れ、光源等で発生した熱を効率的に排出する。
また、本体ケーシング11の上面にスピーカ部16、キー入力/インジケータ部17、及び照度検出部18を設ける。スピーカ部16は、画像信号と共に入力される音声信号に応じた音声や、このプロジェクタ装置10の動作状態に応じた動作音/警告音等を出力する。
キー入力/インジケータ部17は、上述した図示しないリモートコントローラと同様のキー構成を有するキー入力部と、このプロジェクタ装置10の動作状態に応じた点灯/点滅を行なうインジケータ部とを同一エリア内に集中して配列している。
上記キー入力/インジケータ部17のキー入力部は、例えば電源キー、ズームアップ/ダウンキー、フォーカスアップ/ダウンキー、メニューキー、カーソルキー、決定キー等のキー構成を有する。上記キー入力/インジケータ部17のインジケータ部は、例えば電源パイロットランプ、光源温度ランプ等のLED(発光ダイオード)によるインジケータランプを有する。
さらに、図示はしないが、本体ケーシング11の背面には、各種画像信号をライン入力するための入力コネクタ類、パーソナルコンピュータやUSB(Universal Serial Bus)メモリと接続するためのUSB端子、上述したリモコン受光部14と同様のリモコン受光部を備える。
また、本体ケーシング11の下面には、本体ケーシング11の姿勢角度を調整可能な調整脚部を含めた3本以上の脚部を備える。
次いで図2により上記プロジェクタ装置10の概略機能構成について説明する。
入力部21は、例えばビデオ入力端子、RGB入力端子、VGA端子、USB端子などにより構成される。入力部21に入力された画像信号は、必要に応じてデジタル化された後に、システムバスSBを介して画像変換部22に送られる。
画像変換部22は、スケーラとも称され、入力される画像データを投影に適した所定のフォーマットの画像データに統一して投影処理部23へ送る。
この際、上記ポイントマークPTを含むOSD(On Screen Display)用の各種動作状態を示すシンボル等のデータも必要に応じて画像変換部22が画像データに重畳加工し、加工後の画像データを投影処理部23へ送る。
投影処理部23は、送られてきた画像データに応じて、所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば120[フレーム/秒]と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した、より高速な時分割駆動により、表示素子(空間的光変調素子)であるマイクロミラー素子24を表示するべく駆動する。
このマイクロミラー素子24は、当該マイクロミラー素子の有効画素領域にアレイ状に配列された複数、例えばWXGA(Wide eXtended Graphic Array)(横1280画素×縦800画素)分の微小ミラーの各傾斜角度を個々に高速でオン/オフ動作して画像を表示することで、その反射光により光像を形成する。
一方で、光源部25から時分割でR,G,Bの原色光を含む複数色の光が循環的に時分割で順次出射される。この光源部25は、例えばLD(半導体レーザ)及びLED(発光ダイオード)等の半導体発光素子をもいる。この光源部25からのからの光が、ミラー26で全反射して上記マイクロミラー素子24に照射される。
そして、マイクロミラー素子24での反射光で光源光の色に応じた光像が形成され、形成された光像が上記投影レンズ部12を介して、投影対象となるここでは図示しないスクリーンに投影表示される。
上記各回路の動作すべてをCPU27が制御する。このCPU27は、メインメモリ28及びプログラムメモリ29と直接接続される。メインメモリ28は、例えばSRAMで構成され、CPU27のワークメモリとして機能する。プログラムメモリ29は、電気的に書換え可能な不揮発性メモリで構成され、CPU27が実行する動作プログラムや各種定型データ等を記憶する。CPU27は、上記メインメモリ28及びプログラムメモリ29を用いて、このプロジェクタ装置10内の制御動作を統括して実行する。
上記CPU27は、操作部30からのキー操作信号に応じて各種投影動作を実行する。この操作部30は、プロジェクタ装置10の本体に設けられる上記キー入力/インジケータ部17と、このプロジェクタ1専用の図示しないリモートコントローラからの赤外光を受光する上記リモコン受光部14等を含み、ユーザが本体のキー操作部またはリモートコントローラで操作したキーに基づくキー操作信号をCPU27へ直接出力する。
上記CPU27はさらに、上記システムバスSBを介して音声処理部31、A/D変換部32、A/D変換部33とも接続される。音声処理部31は、PCM音源等の音源回路を備え、投影動作時に与えられる音声データをアナログ化し、上記スピーカ部16を駆動して拡声放音させ、あるいは必要によりビープ音等を発生させる。
上記A/D変換部32は、上記測距部13を構成する測距センサ34からの検出信号をデジタル化してCPU27へ出力する。測距センサ34は、例えば、上記投影レンズ部12の投影光軸と平行した方向へ赤外線を出射する発光部と、同方向に向いた赤外線受光部とを備え、赤外線を発光してから受光するまでの時間差によりスクリーンまでの距離の測定を行なう。
上記A/D変換部33は、上記照度検出部18を構成する照度センサ35からの検出信号をデジタル化してCPU27へ出力する。照度センサ35は、上述した如くこのプロジェクタ装置10の本体ケーシング11が設置されている環境の照度を検出する。
次に上記実施形態の動作について説明する。
図3及び図4は、CPU27がプログラムメモリ29に記憶される動作プログラムを読出してメインメモリ28に展開して記憶させて実行する処理内容を示す。ここでは、電源投入時から電源切断時までの、主として光源部25での発光輝度とマイクロミラー素子24で表示する画像の後述する階調乗率の制御に関する内容を抽出して説明している。
なおこの動作プログラムは、上記プロジェクタ装置10を含む、光源の素子の種類等が異なる複数機種のプロジェクタ装置に対応して作製されたものとし、併せてこのプロジェクタ装置10の機種固有の各種パラメータ値を記憶させておくことで、プロジェクタ装置10を動作させるための最適化が実行されるものとする。
その処理当初、電源が切断されている状態でCPU27は、操作部30からのキー操作信号により、電源を投入するための電源キーが操作されたか否かを繰返し判断することにより、このプロジェクタ装置10のユーザが電源をオンするのを待機する(ステップS101)。
そして、電源キーが操作されると、CPU27が上記ステップS101でそれを判断し、画像投影のための各種初期設定やDLP(登録商標)方式固有のカラーホイール制御等を含むイニシャル処理を実行する(ステップS102)。
その後にCPU27は、本体ケーシング11の上面に設置された照度検出部18を構成する照度センサ35からの検出出力をA/D変換部33でデジタル化して入力することにより、その時点でプロジェクタ装置10が設置されている環境光の明るさを測定する(ステップS103)。
ここでCPU27は、この測定の結果が、予め設定されている照度規定値Ies以下であるか否かにより、直後の発光開始でユーザの目に眩しさを与えてしまう虞があるかどうかを判断する(ステップS104)。
測定の結果が上記照度規定値Iesより大きく、プロジェクタ装置10が比較的明るい環境に設置されており、直後の発光開始でもユーザの目に眩しさを与えてしまう虞はないと判断した場合には、マイクロミラー素子24で表示する画像の階調に対する乗率(以下「階調乗率」と称する)を、全く減衰させない値「1」として設定する(ステップS117)。
階調乗率が1の場合は、通常の表示と同様であり、例えば、階調乗率が0.5の場合は、256階調の階調が240であるとすると、実際に表示される階調を240×0.5=120として表示することになる。
階調乗率は、投影レンズ部12より出射される光量を光源部25だけで調整できない場合に用いる(詳しくは、後述する)。
加えて、光源部25を、全く減光処理を行わない定格となる所定の条件で発光するよう設定する(ステップS118)。
その後、上記設定条件の下で光源部25での発光を伴う通常の投影動作を実行した上で(ステップS113)、あらためて操作部30からのキー操作信号により、電源を切断するための電源キーが操作されたか否かを判断する(ステップS114)。
ここで、電源キーが操作されていないと判断した場合には、その他の投影動作に必要な対応処理(本発明とは直接関係しないものとして詳細な説明を省略する)を実行した後(ステップS115)、再び上記ステップS103からの処理に戻る。
また上記ステップS104において、測定した照度が照度規定値Ies以下であり、直後の発光の開始でユーザの目に眩しさを与えてしまう虞があると判断した場合、CPU27は次に光源部25で使用している素子の種別を判別する(ステップS105)。
併せてCPU27は、測距部13を構成する測距センサ34により投影レンズ部12から画像の投影を行なうスクリーンまでの距離を測定させ、A/D変換部32でその測定結果をデジタル化して取得する(ステップS106)。
CPU27は、こうして得た光源の素子の種別と測定した投影距離とにより、調光の制御を行なうためのパラメータを決定する(ステップS107)。パラメータの具体的な内容としては、例えば設定光量、漸増速度(時間当たりの漸増量)、漸増制御の割り振り(有無)、等を含む。
次いでCPU27は、上記ステップS105で判別した光源の素子の種別から、調光の制約がないものであるか否かを判断する(ステップS108)。これは、例えばLD(半導体レーザ)やLED(発光ダイオード)などのような、特に低輝度域での発光調整が困難な素子ではないといったことを判断するためのものである。
調光の制約がない発光素子とは、光源光量を0から最高輝度まで、自由に調節できるものであり、発光開始時に、下限値(≒0)から光源光量を漸増させることができる。
調光の制約がある発光素子とは、ある程度の低レベルの光源光量までしか安定して発光光できないものであり、発光開始の光源光量は、0よりも大きい所定の光量となってしまう。
ここで調光の制約がない素子であると判断した場合(ステップS108:Yes)、次いでCPU27は、投影処理部23がマイクロミラー素子24で駆動する画像に関する階調乗率を、全く減衰させない値「1」として設定する(ステップS109)。
その後、CPU27は光源部25内の発光素子を発光可能な輝度の下限値で発光させるものとして設定した上で(ステップS110)、上記ステップS107で決定したパラメータ値に応じた光源光量を漸増するものとして光源部25を調光制御する(ステップS111)。
CPU27は、この漸増の調整により光量を若干増加させた光源部25の発光状態が、その時点で設定されている投影モード等に応じた目標値に達したか否かを判断し(ステップS112)、まだ達していないと判断した場合には、再び上記ステップS111からの処理に戻る。
こうしてCPU27がステップS111,S112の処理を繰返し実行することにより、光源部25での発光状態が目標値となるまで光量を随時漸増させていく。
そして、光源部25での発光状態が目標値となった時点で、CPU27がステップS112でそれを判断し、通常の投影動作を実行する(ステップS113)。
その後、あらためて操作部30からのキー操作信号により、電源を切断するための電源キーが操作されたか否かを判断する(ステップS114)。
ここで、電源キーが操作されていないと判断した場合には、その他の投影動作に必要な対応処理を実行した後(ステップS115)、再び上記ステップS103からの処理に戻る。
図5は、調光の制約がない種別の光源の発光素子を用いる場合の、投影レンズ部12より出射される光量に対する制御内容を説明する図である。
図5において、左側の縦軸は、投影レンズ部12より出射される光量、及び光源部25の光量であり、右側の縦軸は、階調乗率を示している。
また、一点鎖線が光源部25の光量を示し、破線が階調乗率を示し、実線がそれらの乗算として、投影レンズ部12より出射される光量を示す。
ここでは、説明を簡易化するために通常投影時の画面全面が白となる画像であるものとして、投影時のスクリーン面での照度に変化がない場合について例示している。
図5(A)は、環境光の明るさが予め設定されている照度規定値Iesより大きい場合の上記ステップS117、S118、S113の処理による、投影レンズ部12より出射される光量に対する制御内容を表している。
この場合は、ユーザの目に眩しさを与えてしまう虞はないので、光源部25については、発光開始から通常の点灯と同様に、急速に輝度が上昇させ、定常となった時点で安定して通常の投影動作が開始される。階調乗率は「1」のままでよい。
図5(B)は、環境光の明るさが予め設定されている照度規定値Ies以下場合の上記ステップS109〜S113の処理による、投影レンズ部12から出射される光量IIの変化例(環境が中程度に暗い場合の例)を示す。
ここでは、光源部25が調光制約のないものなので、投影レンズ部12から出射される光量を光源部25の光量のみで変化させることができる。図中に破線で示す如く階調乗率Rgrを当初から「1」と固定的に設定した状態で、はじめの順応期間Tadの間、光源部25については、下限値(≒0)から発光を開始させ、設定されたパラメータに応じて発光光量を漸増させることで投影レンズ部12から出射される光量IIが徐々に上昇する。
そして、発光素子での発光光量が目標に到達した時点で上記順応期間Tadを終えると、以後通常の投影動作となり、基準となる投影レンズ部12から出射される光量IIを固定化させる。
上記順応時間Tadは、一般的な人間の瞳孔が収縮して環境の明暗に順応するまでに要する充分な時間を勘案して予め設定される。
図5(C)は、同じく上記ステップS109〜S113の処理による、投影レンズ部12から出射される光量IIの変化例(環境がより暗い場合の例)を示す。
ここでも、図中に破線で示す如く階調乗率Rgrを当初から「1」と固定的に設定した状態で、はじめの順応期間Tadの間、光源部25については、調光の下限値(≒0)から発光を開始させ、設定されたパラメータに応じて発光光量を漸増させることで投影レンズ部12から出射される光量IIIが徐々に上昇する。
そして、発光素子での発光光量が、上記図5(B)で示した目標値よりもより低い目標に到達した時点で上記順応期間Tadを終えると、以後通常の投影動作となり、基準となる投影レンズ部12から出射される光量IIIを固定化させる。
また上記ステップS108で光源の素子の種別から調光の制約があると判断した場合(ステップS108:No)、投影レンズ部12より出射される光量を、光源部25だけでは0から漸増するように調整できないので階調乗率の制御を併用して、投影レンズ部12より出射される光量を光源部25だけで0から漸増するように調整する。
上記ステップS108で光源の素子の種別から調光の制約があると判断した場合(ステップS108:No)、次にCPU27は、その時点で設定されている投影モード等に応じた光量の目標値が、調光が可能な光源部25の発光素子の下限の光量よりも大きいか否かを判断する(ステップS119)。
ここで光量の目標値が調光可能な光源部25の発光素子の下限の光量よりも大きいと判断した場合(ステップS119:Yes)、CPU27は、投影処理部23によるマイクロミラー素子24での階調乗率を、全く階調表示を行わない(全面が黒表示となる)値「0」を初期値として設定する(ステップS120)。
次にCPU27は、調光可能な光源部25の発光素子をその下限の値で発光させる(ステップS121)。
さらにCPU27は、直前の上記ステップS107で決定したパラメータ値に応じた増分値で階調乗率を漸増するよう、階調乗率を更新設定する(ステップS122)。
CPU27は、この漸増の調整により若干増加させた階調乗率が1に到達したか、即ち、光量が、光源部25の発光素子の調光が可能な下限値にまで達したか否かを判断し(ステップS123)、まだ達していなければ、再び上記ステップS122からの処理に戻る。
こうしてCPU27がステップS122,S123の処理を繰返し実行することにより、光量が、光源部25の発光素子の調光が可能な下限値となるまで階調乗率を随時漸増させていく。
そして、階調乗率が「1」となった時点で、CPU27がステップS123でそれを判断し、次に上記ステップS107で決定したパラメータ値に応じた光源光量を漸増するものとして光源部25を調光制御する(ステップS124)。
CPU27は、この漸増の調整により光量を若干増加させた光源部25の発光状態が、その時点で設定されている投影モード等に応じた目標値に達したか否かを判断し(ステップS125)、まだ達していないと判断した場合には、再び上記ステップS124からの処理に戻る。
こうしてCPU27がステップS123,S124の処理を繰返し実行することにより、光源部25での発光状態が目標値となるまで光量を随時漸増させていく。
そして、光源部25での発光状態が目標値となった時点で、CPU27がステップS125でそれを判断し、上記ステップS113からの処理に進んで、通常の投影動作に移行する。
図6は、調光の制約がある種別の光源の発光素子を用いる場合の、投影レンズ部12より出射される光量に対する制御内容を説明する図である。
図6において、図5と同様に、左側の縦軸は、投影レンズ部12より出射される光量、及び光源部25の光量であり、右側の縦軸は、階調乗率を示している。
また、一点鎖線が光源部25の光量を示し、破線が階調乗率を示し、実線がそれらの乗算として、投影レンズ部12より出射される光量を示す。
ここでは、説明を簡易化するために通常投影時の画面全面が白となる画像であるものとして、投影時のスクリーン面での照度IVに変化がない場合について例示している。
図6(A)は、図5(A)と同様に、環境光の明るさが予め設定されている照度規定値Iesより大きい場合の上記ステップS117、S118、S113の処理による、投影レンズ部12より出射される光量に対する制御内容を表している。
この場合は、ユーザの目に眩しさを与えてしまう虞はないので、光源部25については、発光開始から通常の点灯と同様に、急速に輝度が上昇させ、定常となった時点で安定して通常の投影動作が開始される。階調乗率は「1」のままでよい。
環境光の明るさが予め設定されている照度規定値Iesより大きい場合は、投影レンズ部12より出射される光量に対する制御は、調光の制約がない種別の光源と、調光の制約がある種別の光源で同様となる。
図6(B)は、環境光の明るさが予め設定されている照度規定値Ies以下場合の上記ステップS120〜S125の処理による、投影レンズ部12から出射される光量IIの変化例(環境が中程度に暗い場合の例)を示す。
図中に破線で示す如く階調乗率Rgrを当初「0」と設定した状態で、はじめの順応期間Tadの間、光源部25については、当初に調光下限な下限値(0より大きな所定の値)で発光を開始させて、その発光状態を維持させたまま、階調乗率を「0」から「1」となるまで漸増させることで、投影レンズ部12から出射される光量Vが発光素子の調光下限な下限値となるまで漸増させる。
そして、階調乗率が「1」となった状態で以後階調乗率を「1」としたままで、設定されたパラメータに応じて発光光量を漸増させることで投影レンズ部12から出射される光量Vを徐々に上昇させる。
その後、発光素子での発光光量が目標に到達した時点で上記順応期間Tadを終えると、以後通常の投影動作となり、基準となる投影レンズ部12から出射される光量Vを固定化させる。
このように、発光光量の変化を、光源部25だけの調光不可な暗い領域では、階調乗率Rgrを0から1まで変化させることにより変化させ、光源部25での調光可能なより明るい領域では、光源部25の発光強度を変化させることにより変化させるようにする。
このようにすれば、調光の制約がある光源部25であっても、適切に環境の明暗に順応させる動作が可能になる。
そして、階調乗率の制御から、光源部25の発光強度の制御に連続的に制御を切り換えることにより、投影レンズ部12から出射される光量Vをなめらかに上昇させることができる。
また上記ステップS119で光量の目標値が調光可能な光源部25の発光素子の下限の光量以下であると判断した場合(ステップS119:No)、CPU27は、投影処理部23によるマイクロミラー素子24での階調乗率を、全く階調表示を行わない(全面が黒表示となる)値「0」を初期値として設定する(ステップS126)。
次にCPU27は、調光可能な光源部25の発光素子をその下限の値で発光させる(ステップS121)。
さらにCPU27は、直前の上記ステップS107で決定したパラメータ値に応じた増分値で階調乗率を漸増するよう、階調乗率を更新設定する(ステップS128)。
CPU27は、この漸増の調整により若干増加させた階調乗率によって、光源部25の発光状態が、その時点で設定されている投影モード等に応じた目標値に達したか否かを判断し(ステップS129)、まだ達していないと判断した場合には、再び上記ステップS128からの処理に戻る。
こうしてCPU27がステップS128,S129の処理を繰返し実行することにより、光源部25での発光状態が目標値となるまで階調乗率を「1」とならない範囲内で随時漸増させていく。
そして、光源部25での発光状態が目標値となった時点で、CPU27がステップS125でそれを判断し、上記ステップS113からの処理に進んで、通常の投影動作に移行する。
このような場合は、階調乗率のみの変化によって、投影レンズ部12から出射される光量を制御することになる。
図6(C)は、環境光の明るさが予め設定されている照度規定値Ies以下場合の上記ステップS126〜S129の処理による、投影レンズ部12から出射される光量VIの変化例(環境がより暗い場合の例)を示す。
図中に破線で示す如く階調乗率Rgrを当初の「0」から漸増させ、はじめの順応期間Tadの当初、光源部25については、調光の下限値(0より大きな所定の値)で発光を開始させて、その発光状態を維持させたままとする。一方で、「0」から開始した階調乗率の漸増により、当該階調乗率が「1」となる前に、光源部25での発光状態が目標値に到達した時点で上記順応期間Tadを終え、以後通常の投影動作となり、基準となる投影レンズ部12から出射される光量VIが固定化される。
なお、順応期間Tadの間は、表示画像として、白(グレー)画像や専用のロゴ画像に階調乗率を掛けたものを表示してもよいし、通常の投影動作時と同様に、入力部21に入力される画像信号に基づく画像に階調乗率を掛けたものを表示するようにしてもよい。
図7は、上記実施形態による制御の内容を簡易に纏めたものである。同図に示すように、光源部25の発光素子側の光強度乗率を表す変数α(0<α<1)と、表示素子であるマイクロミラー素子24で表示する画像の階調乗率を表す変数β(0<β<1)とを用い、照射する最大光量が「0(ゼロ)」から本来の画像投影状態である「1」となるまで、すなわち照射する明るさを最大値とするまでの順応時間を、環境照度に応じて変えるようにした。
ここでは、光源部25の発光素子側の光強度乗率変数を表す変数αも1まで変化するといて示しているが、環境照度によっては、通常の投影動作での基準となる投影レンズ部12から出射される光量も、暗い方が望ましいとされる場合は、αは1未満の調光状態で留めることとなる。
そして、上述したように、階調乗率の制御と光源部25の発光強度の制御とを光量の連続性が保たれるように切り換えることにより、投影レンズ部12から出射される光量をなめらかに上昇させることができる。
その場合、上記図3のステップS105〜S107での処理でも説明したが、プロジェクタ装置10の投影レンズ部12から投影対象のスクリーンまでの距離も勘案し、投影レンズ部12より出射される光量を漸増するためのパラメータを決定するものとしており、特に画像を投影する場合での距離に応じた光量及び又は光量の変化を正確に反映できる。
なお上記実施形態では、図5及び図6のように説明を簡易化するべく、時間の経過に伴って得られる投影レンズ部12より出射される光量を折れ線状に変化させるような場合を例にとって説明したが、光源部25の発光素子での調光、及びそれに伴う投影レンズ部12より出射される光量がなめらかに曲線状、あるいは段階的にステップ状に変化するような制御を実行するものとしても良い。
以上詳述した如く本実施形態によれば、環境光を考慮してユーザの目に負担をかけることなく適正な明るさで好適な表示を行なうことが可能となる。
また上記実施形態では、環境光の照度が低い場合ほど発光側の光量が上昇する速度を小さくするようにパラメータを決定するものとしたため、環境光に応じて画像を鑑賞するユーザの目にかかる負担を確実に軽減できる。
さらに上記実施形態は、環境項の照度に合わせて、発光側の光量の最大値を決定するものとしたので、定常状態においても、環境光に応じて画像を鑑賞するユーザの目にかかる負担を確実に軽減できる。
また上記実施形態では、予め設定された照度規定値Iesと比較し環境光の照度が高いか否かを判別し、照度規定値Iesより環境光の照度が高い場合には、より高速で発光側の光量が上昇するような制御手法を採るものとしたので、ユーザの目にかかる負担をそれほど考慮する必要がないと判別される場合には速やかに明るい定常時の画像の表示(投影)に移行できる。
さらに上記実施形態は、表示素子側であるマイクロミラー素子24での階調乗率を調整することで出射される光量を調整するものとしたので、特に発光側の素子の輝度調整が難しい光源であってもユーザの目に負担をかけることがないよう対応できる。
加えて上記実施形態では、光源の光量と上記階調乗率の調整と組み合わせて表示手段での輝度の調整を行なうものとしたので、より精緻な制御でユーザの目に負担をかけることがないよう対応できる。
また上記実施形態は、表示素子での階調乗率を「0」〜「1」の範囲で制御させた後に発光素子側での発光量の調整を行なうものとしたので、可能な限り量子化レベル(量子化ビット数)を下げず、精緻な制御でユーザの目に負担をかけることがないよう対応できる。
なお上記実施形態では、光源部25と、表示素子としてこの光源部25からの光を空間的に変調して光像を形成するマイクロミラー素子24のように、自発光表示素子ではない表示素子を用いて画像の表示を行なう場合に、光源が最小発光量の制約を有するものであるか否かを判別し、そうである場合には光源を最小の発光量で発光させてから順応発光量を上昇させるようにしたので、光源の種類を考慮した上でユーザの目に負担をかけることがないよう対応できる。
また反対に、光源が最小発光量の制約を有するものではないと判別した場合には、発光量が「0」の状態からリニアに発光量を上昇させるようにしたので、光源の種類に応じて量子化レベルを下げずに、よりダイナミックにユーザの目に負担をかけることがないよう対応できる。
なお上記実施形態は、本発明をプロジェクタ装置に適用した場合について説明したが、特に表示装置を直接鑑賞する表示装置とは異なり、発光量が著しく大きく、且つ使用環境も暗所あるいはそれに準ずるような環境で使用される可能性が高い投影装置において上記の技術を用いることで、ユーザの目にかかる負担を極力回避するよう対応できる。
上述した如く本発明は、投影を行なう装置のみならず、表示画面をユーザが直視する表示装置においても同様に適用可能である。
図8は、表示装置として、例えばフィールドシーケンシャル(色順次)方式の液晶パネルディスプレイ50に適用した場合の構成例を示す。同図で、51は透過型のモノクロ液晶パネルであり、このモノクロ液晶パネル51の近傍に照度センサ52を配置する。またモノクロ液晶パネル51の下面側に、シート状のバックライトユニット54B,54R,54Gを積層配置する。
これらバックライトユニット54B,54R,54Gはそれぞれ、矩形の導光拡散板の4辺に、B(青色)光、またはR(赤色)光、またはG(緑色)光を発するLED(発光ダイオード)をライン状にアレイ配置した、より正確にはサイドライト方式のユニットを構成する。
モノクロ液晶パネル51から離れた、より下層側のユニットが出射した面発光による原色光は、それより上層側のユニットを透過して、モノクロ液晶パネル51をその下面側より照射することで、そのタイミングに合わせてモノクロ液晶パネル51で表示される、当該原色光成分の画像により原色光に合致した光像が形成される。
ここでバックライトユニット54B,54R,54Gの発する各原色光は、例えば、B<R<Gの順で輝度(明るさ)成分が大きいものとし、より輝度成分の高い原色光ほど下層側から出射することで、途中のユニットを透過する際に減衰する光量を勘案して、モノクロ液晶パネル51で原色の光像を形成(空間的な画像に変調)する際の色バランスをとっているものとする。
モノクロ液晶パネル51での画像の表示と、照度センサ52を駆動しての照度情報の検出とをLCD駆動部55が実行する。このLCD駆動部55はまた、モノクロ液晶パネル51で表示する原色の画像のタイミングに合わせたタイミング信号と発光量を指示する制御信号とをバックライト駆動部56へ出力する。
バックライト駆動部56は、LCD駆動部55からのタイミング信号と制御信号とに応じてバックライトユニット54B,54R,54Gを時分割で循環的に駆動して面発光させる。
例えばカラー画像の1フレームがR,G,Bの3フィールドから構成される場合、LCD駆動部55がモノクロ液晶パネル51を例えば120[フレーム/秒]のフレームレートで駆動して各原色の画像を360[フィールド/秒]の速度で表示することにより、この液晶パネルディスプレイ50のユーザがモノクロ液晶パネル51をその上方から視認することで、違和感のないカラー画像を鑑賞できる。
上述したような、表示画面であるモノクロ液晶パネル51を直視する表示装置の一種である液晶パネルディスプレイ50においても、モノクロ液晶パネル51近傍に配置された照度センサ52での検出結果を反映してLCD駆動部55がバックライト駆動部56にそうする制御信号によりバックライトユニット54B,54R,54Gでの発光量及びモノクロ液晶パネル51で表示する階調に対する階調乗率を調整することで、ユーザの目に負担をかけることがないよう対応できる。
さらに本発明は、上記図8で構造を例示したフィールドシーケンシャル(色順次)方式の液晶パネルディスプレイに限らず、その他の光源を用いたフィールドシーケンシャル方式でない一般的な表示装置、例えば、パネルに並置される色フィルタを持つカラー液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタ、プラズマディスプレイ、SEDリアプロジェクタ方式のモニタ装置等にも同様に適用することが可能である。
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
請求項1記載の発明は、画像を表示する表示手段と、環境光の照度を測定する照度測定手段と、上記照度測定手段で測定した照度に基づき、上記表示手段で画像の表示を開始する際の輝度上昇速度を決定する速度決定手段と、上記速度決定手段で決定した輝度上昇速度に基づいて上記表示手段での輝度を制御する表示制御手段とを具備したことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記速度決定手段は、上記照度測定手段で測定した照度が暗いほど、上記輝度上昇速度を小さく決定することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載の発明において、上記照度測定手段で測定した照度に基づき、上記表示手段で画像の表示を開始する際に到達させる最大輝度を決定する到達輝度決定手段をさらに具備し、上記表示制御手段は、上記到達輝度決定手段で決定した到達輝度になるように上記表示手段での輝度を制御することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、上記請求項1乃至3いずれか記載の発明において、上記照度測定手段で測定した照度が予め設定した規定値より低いか否かを判別する第1の判別手段をさらに具備し、上記速度決定手段は、上記第1の判別手段で測定した照度が上記規定値より低いと判別された場合、画像の表示を開始する際の輝度上昇速度を輝度が漸増する所定の順応上昇速度に決定し、上記第1の判別手段で測定した照度が上記規定値より高いと判別された場合、画像の表示を開始する際の輝度上昇速度を上記順応上昇速度より大きい、通常上昇速度に決定することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、上記請求項1乃至4いずれか記載の発明において、上記表示手段は、画像を表示するための光を発する光源と、上記光源からの光を変調して画像を表示する表示素子とを含み、上記表示素子の階調に対する階調乗率を制御する階調乗率調整手段をさらに具備し、上記表示制御手段は、上記輝度上昇速度に対して、上記階調乗率調整手段での階調乗率を制御させることで、上記表示手段での輝度を制御することを特徴とする。
請求項6記載の発明は、上記請求項5記載の発明において、上記表示制御手段は、上記輝度上昇速度に対して、上記光源の調光が可能な下限の輝度となるまで上記階調乗率を制御させ、その後に上記光源の発光輝度を漸増させて、上記表示手段での輝度を制御することを特徴とする。
請求項7記載の発明は、上記請求項6記載の発明において、上記表示制御手段は、上記階調乗率を0〜1の範囲で制御させ、その後に上記光源の発光輝度を漸増させることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、上記請求項4記載の発明において、上記表示手段は、画像を表示するための光を発する光源と、上記光源からの光を変調して画像を表示する表示素子とを含み、上記光源が、最小点灯輝度の制約を有する光源であるか否かを判別する第2の判別手段をさらに具備し、上記表示制御手段は、上記第2の判別手段で光源が最小発光輝度の制約を有する光源であると判別した場合、画像の表示を開始する際に上記光源を最小発光輝度で発光させてから上記順応上昇速度に基づいて輝度を上昇させることを特徴とする。
請求項9記載の発明は、上記請求項8記載の発明において、上記表示制御手段は、上記第2の判別手段で光源が最小発光輝度の制約を有しない光源であると判別した場合、上記画像の表示を開始する際に、上記光源を0(ゼロ)輝度から輝度を上昇させることを特徴とする。
請求項10記載の発明は、上記請求項1乃至9いずれか記載の発明において、上記表示手段は、光像を形成し外部に向けて投影する投影機構を備えることを特徴とする。
請求項11記載の発明は、上記請求項10記載の発明において、上記表示手段が光像を投影する対象までの距離を測定する距離測定手段をさらに具備し、上記速度決定手段は、上記照度測定手段で測定した照度に代えて、上記距離測定手段で得た距離に基づいて、上記表示手段で画像の表示を開始する際の輝度上昇速度を決定することを特徴とする。
請求項12記載の発明は、画像を表示する表示部を備えた装置での表示方法であって、環境光の照度を測定する照度測定工程と、上記照度測定工程で測定した照度に基づき、上記表示部で画像の表示を開始する際の輝度上昇速度を決定する速度決定工程と、上記速度決定工程で決定した輝度上昇速度に基づいて上記表示部での輝度を制御する表示制御工程とを有したことを特徴とする。
請求項13記載の発明は、画像を表示する表示部を備えた装置が内蔵するコンピュータが実行するプログラムであって、上記コンピュータを、環境光の照度を測定する照度測定手段、上記照度測定手段で測定した照度に基づき、上記表示部で画像の表示を開始する際の輝度上昇速度を決定する速度決定手段、及び上記速度決定手段で決定した輝度上昇速度に基づいて上記表示部での輝度を制御する表示制御手段として機能させることを特徴とする。