以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
まず、レンズ鏡筒と撮像装置の構成について説明する。図1は、本発明の光学補正ユニットを備えたレンズ鏡筒の一実施例の概略を示したブロック図であり、さらに、このレンズ鏡筒とカメラ本体とからなる撮像装置の概略を示したブロック図である。
本図において、100はレンズ鏡筒、200はカメラ本体である。101は結像光学系、103は絞りユニット、105は絞りユニット103を駆動する絞り駆動回路、107はフォーカスレンズを駆動してピント合わせを行うフォーカスユニット、109はフォーカスユニット107を駆動するフォーカスレンズ駆動回路である。
300は補正レンズを移動可能に保持した光学補正ユニットである。111は撮像装置に伝わる振動を検出する振動検出装置、113は光学補正ユニット300を制御する振れ補正CPUである。115は外部より操作可能な振れ補正スイッチであり、振れ補正を行うか否か、また複数の振れ補正の制御方法のうちいずれの制御を用いるかを撮影者の操作によって切り替えることができる。光学補正ユニット300について詳しくは後述する。
また、121はレンズ鏡筒100内の種々の回路の動作を制御すると共に、カメラ本体200の装着時にはレンズ接点123とカメラ接点201が接続されて、カメラ側との通信を行うレンズCPUである。125はレンズマウントであり、カメラマウント203と結合してカメラ本体200とレンズ鏡筒100とを機械的に連結する。
211はカメラ本体200内の種々の回路の動作を制御すると共に、レンズ鏡筒100の装着時にはレンズ接点123とカメラ接点201が接続されて、レンズ側との通信を行うカメラCPUである。213は外部より操作可能な電源スイッチであり、カメラCPU211を立ち上げてシステム内の各アクチュエータやセンサ等への電源供給及びシステムを動作可能な状態とするためのスイッチである。215は外部より操作可能な2段ストローク式のレリーズスイッチ、217はカメラ本体200の各種設定を切り替えるモードスイッチ、219は撮像装置全体の動作に供するバッテリ、221はカメラ本体200の各種設定や撮影した画像を表示するためのLCD等を有する液晶ディスプレイである。
また、231はオートフォーカスセンサ233から出力された信号から焦点を検出する焦点検出回路、235はレンズ鏡筒100から入射される光線を撮影者に導くためのミラーユニット、237はミラーユニット235を駆動するためのミラー駆動装置、239はミラー駆動装置237を制御するミラー駆動回路である。241はシャッタユニット243を駆動するシャッタ駆動回路である。
251はペンタダハプリズム、253はファインダ光学系であり、ミラーユニット235によって導かれた光線を撮影者の眼に導く。255は公知の測光センサ、257は測光センサ255から出力される信号を処理する測光演算回路である。259はレンズ鏡筒100により集光された被写体光を受光して画像データを出力するCMOSセンサ等の撮像素子である。
次に、図2のフローチャートを用いて、図1に示した撮像装置の主要動作を説明する。
(ステップ#100)まず、カメラ本体200における電源スイッチ213の操作によって電源が入れられると、カメラCPU211にバッテリ219から電力が供給され、カメラCPU211とレンズCPU121との間で通信が開始される。
(ステップ#101)次に、カメラ本体200におけるレリーズスイッチ215が半押し(1stレリーズ)されたか否か判別する。ここでレリーズスイッチ215が半押しされたと判断するとステップ#103に進み、そうでない場合はステップ#101を繰り返す。
(ステップ#103)続いて、レンズCPU121において振れ補正スイッチ115がON(OS動作選択)になっているかを判別する。ここでOS動作が選択されていればステップ#105に進み、選択されていなければステップ#121に進む。
(ステップ#105)ステップ#105に進むと、カメラCPU211は測光および焦点検出動作を行い、レンズCPU121は焦点検出結果に基づくフォーカシング動作を行うとともに、焦点距離(ズームポジション)及び撮影距離(フォーカスポジション)の検出を行う。
(ステップ#107)続いて、レンズCPU121はステップ#105において検出した焦点距離(ズームポジション)及び撮影距離(フォーカスポジション)を振れ補正CPU113に送信する。振れ補正CPU113はレンズCPU121から受信した焦点距離、撮影距離に基づいて、振れ補正の動作を開始する。
(ステップ#109)次に、レリーズスイッチ215が全押し(2ndレリーズ)されたか否か判別する。ここでレリーズスイッチ215が全押しされたと判断するとステップ#111に進み、そうでない場合はステップ#115に進む。
(ステップ#111)ステップ#111に進むと、カメラCPU211は露光動作を行い、レンズCPU121は露光動作に合わせて絞り動作を行う。この間も、振れ補正動作を行っている。
(ステップ#113)続いて、ステップ#113に進むと、露光動作によって得られた画像データを予めカメラ本体200に接続された不図示の記録媒体に記録する。
(ステップ#115)ここで再度、カメラ本体200におけるレリーズスイッチ215が半押し(1stレリーズ)されたか否か判別する。ここでレリーズスイッチ215が半押しされたと判断すると再度ステップ#109に進み、そうでない場合はステップ#117に進む。
(ステップ#117)レンズCPU121は振れ補正CPU113の電源をOFFにし、振れ補正の動作を停止する。
(ステップ#119)ここで再度、カメラ本体200におけるレリーズスイッチ215が半押し(1stレリーズ)されたか否か判別する。ここでレリーズスイッチ215が半押しされたと判断すると再度ステップ#107に進み、そうでない場合はステップ#131に進む。
(ステップ#121)ステップ#121に進むと、カメラCPU211は測光および焦点検出動作を行い、レンズCPU121は焦点検出結果に基づくフォーカシング動作を行うとともに、焦点距離(ズームポジション)及び撮影距離(フォーカスポジション)の検出を行う。
(ステップ#123)次に、レリーズスイッチ215が全押し(2ndレリーズ)されたか否か判別する。ここでレリーズスイッチ215が全押しされたと判断するとステップ#125に進み、そうでない場合はステップ#129に進む。
(ステップ#125)ステップ#125に進むと、カメラCPU211は露光動作を行い、レンズCPU121は露光動作に合わせて絞り動作を行う。
(ステップ#127)続いて、ステップ#127に進むと、露光動作によって得られた画像データを予めカメラ本体200に接続された不図示の記録媒体に記録する。
(ステップ#129)ここで再度、カメラ本体200におけるレリーズスイッチ215が半押し(1stレリーズ)されたか否か判別する。ここでレリーズスイッチ215が半押しされたと判断すると再度ステップ#123に進み、そうでない場合はステップ#131に進む。
(ステップ#131)ステップ#131に進むと、カメラ本体200における電源スイッチ213の操作によって電源がOFFされたか否か判別する。ここで電源がOFFされた場合はステップ#133に進み、このフローが終了する。そうでない場合はステップ#101に戻る。
次に、図3乃至図6を用いて本発明の光学補正ユニット300の構成について説明する。光学補正ユニット300は、図3の外観斜視図に示すように概ね円盤形状となっている。図3aに示すユニット表側外観には、補正レンズ301の一部と、補正レンズ301を保持する可動部材320と、可動部材320に保持される可動ヨーク303と、光学補正ユニット300のベースとなるベース部材340と、ベース部材340に複数のビスにより固定される回路基板305とを見ることができる。
また、図3bに示すユニット裏側外観には、補正レンズ301の一部と、補正レンズ301を保持する可動部材320と、ベース部材340とを見ることができる。ベース部材340の底部には、補正レンズ301よりも大きな直径を有し、補正レンズ301の光軸と一致する円形形状の開口が設けられている。
回路基板305からはFPC307が延設されており、光学補正ユニット300がレンズ鏡筒100内に組付けられた際には振れ補正CPU113と電気的に接続される。これにより、レンズ鏡筒100に振動が加わると、振れ補正CPU113の制御により可動部材320が適切に駆動され、像振れの補正を行う。
図4は可動部材320及びそれに付属する部材から成るユニット状態での斜視図を示している。可動部材320は、本図に示すように、補正レンズ301を保持する鏡枠部321と、鏡枠部321から光軸垂直方向に延出するフランジ部323とから構成されている。
鏡枠部321は、その内周面側に、バックヨーク側保持スペース325と、可動ヨーク側保持スペース327と、2つの保持スペースを光軸方向に分割する円環状のレンズ受け部329とを有している。
本実施例では、補正レンズ301は3枚のレンズ要素301a、301b、301cとスペーサ301dとで構成されている。バックヨーク側保持スペース325には、レンズ要素301a、レンズ要素301b、及びスペーサ301dが圧入保持され、可動ヨーク側保持スペース327にはレンズ要素301cが圧入保持される。レンズ受け部329は、レンズ要素301a及びレンズ要素301cの光軸方向の当て面として機能する。
鏡枠部321の両側先端部は、各保持スペースの両側端部に圧入保持されたレンズを熱かしめする際にかしめ代として機能する。一方の面では、かしめ代近傍の外周部に可動ヨーク303を位置決めするための凸部331が複数設けられている。他方の面では、かしめ代が可動部材320のフランジ部323から突出する形状となっている。
一方、フランジ部323には、可動側支持部333と、バックヨーク335と、永久磁石337とが設けられている。可動側支持部333にはその両側に受け部がそれぞれ設けられており、可動部材320をベース部材340に対して支持するための支持手段の一部を構成している。支持手段全体の構成については後述する。
バックヨーク335はフランジ部323にインサート成形されることで固定されている。バックヨーク335の光軸方向に一方の面はほぼ全てがフランジ部323に接触しており、他方の面は永久磁石337に接触している。
バックヨーク335は軟磁性体の金属で作られており、永久磁石337はこのバックヨーク335に対して磁気吸引されることで保持されている。バックヨーク335と永久磁石337との間の保持力をさらに高めるために、これらの間に接着剤や両面粘着テープ等の接着手段を介在させてもよい。
このバックヨーク335と永久磁石337とは、可動部材320をベース部材340に対して駆動するための駆動手段の一部を構成している。駆動手段全体の構成については後述する。
本実施例では、可動側支持部333はフランジ部323において光軸を中心に120°間隔で配置されている。同様に、バックヨーク335及び永久磁石337は、フランジ部323において可動側支持部333と干渉しない位置に光軸を中心に120°間隔で配置されている。さらに、可動側支持部333とバックヨーク335及び永久磁石337とは、フランジ部323において光軸を中心に交互に60°間隔で配置されている。
次に、この可動部材320をベース部材340に対して光軸垂直な平面内で自在に移動可能な状態に支持する支持手段について説明する。
図5は光学補正ユニット300の展開斜視図、図6は光学補正ユニット300の断面図を示している。図4にも示すように、上述したフランジ部323の可動側支持部333は、第1の可動側受け部333aと第2の可動側受け部333bとを有している。また、ベース部材340には、第1の可動側受け部333aと対向する位置に固定側受け部341が設けられており、この固定側受け部341はベース部材340の底部の一部を構成している。これらの受け部の間には、金属やセラミック等からなる球状支持部材343が挟まれている。
一方、第2の可動側受け部333bと対向する位置に来るように、押え部材345がベース部材340に対してビスで固定されている。これらの押え部材と受け部との間にも同様に球状支持部材343が挟まれている。
これらの各受け部及び各押え部材は、光軸と直交する平面と平行な座面を有している。球状支持部材343がこれらの座面上を転動することにより、可動部材320はベース部材340に対して、光軸と直交する平面内で円滑に移動可能な状態に支持される。本実施例では各座面の周囲は壁面で囲まれており、これにより球状支持部材343の脱落が防止されている。
また、可動部材320は、ベース部材340と押え部材345とで球状支持部材343を介して光軸方向に挟まれた構成となっている。これにより、可動部材320はバネや磁石等の付勢(吸着)手段を用いなくても光軸方向のガタを防止することができる。
図5及び図6に示すように、球状支持部材343を挟むための押え部材345には、その座面と反対側の面に回路基板305が載置されている。回路基板305は概ね円環形状であり、プリントされた回路パターンと補強板とから構成されている。この回路基板305は、押え部材345をベース部材340に固定するための複数のビスによって、押え部材345を介してベース部材340に固定されている。
また、上述したように回路基板305からはFPC307が延設されており、光学補正ユニット300がレンズ鏡筒100内に組付けられた際には振れ補正CPU113と電気的に接続される。回路基板305には、FPC307を介して電力が供給されるコイル309が実装されており、永久磁石337と対向する位置に固定されている。また、コイル309の実装面の背面側には、コイル309の中心に対応する位置にホール素子311が実装されている。
さらに、可動部材320の鏡枠部321の一方の先端には可動ヨーク303が設けられる。この可動ヨーク303は、概ねY字形状を有するプレスパーツであり、可動ヨーク303のY字の枝に相当する部位はそれぞれ回路基板305に実装されたホール素子311と対向するように位置している。可動ヨーク303は、鏡枠部321先端外周に設けられた凸部331と係合するための切欠部313が複数設けられていて、これらが係合することにより可動ヨーク303の位置決めが行われる。
可動ヨーク303はバックヨーク335と同様に軟磁性体の金属で作られているので、永久磁石337との間で磁気吸引力が発生する。このため、可動ヨーク303は位置決めされた状態で磁気吸引力により固定されている。
次に、支持手段により支持された可動部材320をベース部材340に対して移動可能な方向に駆動する駆動手段について説明する。
本実施例では、可動部材320を駆動する駆動手段としてVCM(ボイスコイルモータ)を採用している。すなわち、可動ヨーク303とバックヨーク335及び永久磁石337とに挟まれる空間に位置するコイル309に対してFPC307を介して給電することによって発生するローレンツ力を利用して、可動部材320を駆動する。
図5に示すように、本実施例ではこれらの駆動手段を120°間隔で配置している。上述したように、可動部材320は支持手段によって光軸と直交する平面内で移動自在とされているので、可動部材320は3つの駆動手段により生じるそれぞれ異なる向きの駆動力の合力によって、ベース部材340に対して並進駆動されることになる。
駆動手段により生じる駆動力の出力軸は、任意に設定可能である。例えば、3つの駆動手段の各出力軸が光学補正ユニット300の光軸上で交わるように構成することができる。また、例えば、少なくとも1つの出力軸を光軸を中心とする円周の接線方向とすることもできる。
振れ補正CPU113の働きにより駆動手段を適切に制御し、補正レンズ301を保持する可動部材320を適切な位置に駆動させることで、像振れを補正することが可能となる。
可動ヨーク303と対向する位置に実装されているホール素子311は、磁束密度を検知し、検知した磁束密度に応じた電圧を出力する磁気センサの一種である。従って、ホール素子311は、可動部材320の移動によって発生する永久磁石337からの磁束密度の変化を検知することができる。
上述したように、本実施例ではこれらのホール素子311を可動ヨーク303と対向するようにして120°間隔で配置しており、各ホール素子311の出力からそのときの可動部材320、すなわち補正レンズ301の位置を検出することができる。
次に、光学補正ユニット300への補正レンズ301の固定について図7から図11を用いて詳細に説明する。本発明を実施の光学補正ユニット300では、ユニットの両側からそれぞれ補正レンズ301の一部を熱かしめにより固定することができる。具体的には、補正レンズ301の圧入工程のみを残して組立てられた光学補正ユニット300に対して、本実施例では、まずバックヨーク335側から補正レンズ301の一部を圧入及び熱かしめし、次いで可動ヨーク303側から補正レンズ301の一部を圧入及び熱かしめすることが可能な構造となっている。
まず、位置決めされた可動部材320に対してバックヨーク335側から補正レンズ301の一部を圧入する手順について説明する。図7は、バックヨーク335側からレンズ要素301a及びスペーサ301dを可動部材320に圧入する手順を示した断面図である。レンズ要素301aの圧入に際しては、第1aの圧入ホーン401及び第1aの圧入ガイド治具403を使用する。
まず、図7aに示すように、補正レンズ301の圧入工程のみを残して組立てられた光学補正ユニット300において、可動部材320の可動ヨーク303側を第1のかしめ受け台405に対して位置決めする。すなわち、第1のかしめ受け台405の圧入支持部407は可動部材320の可動ヨーク側保持スペース327に圧入され、それにより、可動ヨーク側保持スペース327に対応する鏡枠部321の内周面に対して半径方向に当接し、さらに、レンズ受け部329に対して、可動ヨーク303側からバックヨーク335側に向かう方向(以下、第2の方向と記述する)に当接する。
これにより、可動部材320は第1のかしめ受け台405に対して位置決めされる。この時、可動部材320の中心軸と第1のかしめ受け台405の中心軸とが一致する。
また、本図に示すように、圧入されるレンズ要素301a及びスペーサ301dを第1aの圧入ホーン401の先端に保持する。第1aの圧入ホーン401には不図示のエア吸引式吸着機構が接続されており、レンズ要素301aはこのエア吸引によりホーン先端に吸着保持されている。スペーサ301dは、保持されたレンズ要素301aと第1aの圧入ホーン401との間に挟持されている。
第1aの圧入ホーン401は第1aの圧入ガイド治具403に挿入されており、さらに上下に自在に移動することができる。この第1aの圧入ガイド治具403は第1のかしめ受け台405と中心軸が一致するように配置されており、さらに上下に自在に移動することができる。
次に、図7bに示すように、第1aの圧入ガイド治具403を、レンズ要素301a及びスペーサ301dを保持した第1aの圧入ホーン401と共に、可動部材320を位置決めしている第1のかしめ受け台405に向けて上方から下降させる。この時、第1aの圧入ガイド治具403は第1のかしめ受け台405に対してのみ当接し、第1aの圧入ホーン401先端のレンズ要素301aは光学補正ユニット300とは接触しない。
最後に、図7cに示すように、第1aの圧入ホーン401を上方から下降させる。第1aの圧入ホーン401は、第1aの圧入ガイド治具403にガイドされることで、自身の中心軸と可動部材320の中心軸とが一致した状態を保ちながら下降する。
これにより、先端に保持されていたレンズ要素301a及びスペーサ301dは、第1aの圧入ホーン401の押し出し力によって、可動部材320の鏡枠部321に設けられたレンズ受け部329に対して、バックヨーク335側から可動ヨーク303側に向かう方向(以下、第1の方向と記述する)に当接するまでバックヨーク側保持スペース325に圧入される。すなわち、第1の方向は上述した第2の方向と真逆の方向となっている。
圧入が完了すると不図示のエア吸引式吸着機構による吸引が解除され、第1aの圧入ホーン401と第1aの圧入ガイド治具403を順次上方に引き上げる。
次に、位置決めされた可動部材320に対してバックヨーク335側からさらに補正レンズ301の一部を圧入する手順について説明する。図8は、バックヨーク335側からレンズ要素301bを可動部材320に圧入する手順を示した断面図である。レンズ要素301bの圧入に際しては、第1bの圧入ホーン409及び第1bの圧入ガイド治具411を使用する。可動部材320は引き続き第1のかしめ受け台405に位置決めされている。
まず、図8aに示すように、圧入されるレンズ要素301bを上述した工程と同様に、不図示のエア吸引式吸着機構のエア吸引によりホーン先端に吸着保持する。第1bの圧入ホーン409は第1bの圧入ガイド治具411に挿入されており、さらに上下に自在に移動することができる。この第1bの圧入ガイド治具411も同様に第1のかしめ受け台405と中心軸が一致するように配置されており、さらに上下に自在に移動することができる。
次に、図8bに示すように、第1bの圧入ガイド治具411を、レンズ要素301bを保持した第1bの圧入ホーン409と共に、可動部材320を位置決めしている第1のかしめ受け台405に向けて上方から下降させる。この時、第1bの圧入ガイド治具411は第1のかしめ受け台405に対してのみ当接し、第1bの圧入ホーン409先端のレンズ要素301bは光学補正ユニット300とは接触しない。
最後に、図8cに示すように、第1bの圧入ホーン409を上方から下降させる。第1bの圧入ホーン409は、第1bの圧入ガイド治具411にガイドされることで、自身の中心軸と可動部材320の中心軸とが一致した状態を保ちながら下降する。これにより、先端に保持されていたレンズ要素301bは、第1bの圧入ホーン409の押し出し力によって、前工程で圧入されたスペーサ301dに対して、上述した第1の方向に当接するまでバックヨーク側保持スペース325に圧入される。
圧入が完了すると不図示のエア吸引式吸着機構による吸引が解除され、第1bの圧入ホーン409と第1bの圧入ガイド治具411を順次上方に引き上げる。
次に、バックヨーク335側から可動部材320に圧入された補正レンズ301の一部を、熱かしめにより可動部材320に固定する手順について説明する。図9は、バックヨーク335側からレンズ要素301bを可動部材320に熱かしめする手順を示した断面図である。レンズ要素301bの熱かしめに際しては、第1のかしめホーン413及び第1の押え治具415を使用する。可動部材320は引き続き第1のかしめ受け台405に位置決めされている。
まず、図9aに示すように、第1のかしめ受け台405に位置決めされた可動部材320の上方に、第1のかしめホーン413と第1の押え治具415を配置する。第1のかしめホーン413は第1の押え治具415に挿入されており、それらは独立して上下に移動することができる。
次に、図9bに示すように、第1の押え治具415を第1のかしめ受け台405に位置決めされている可動部材320に向けて上方から下降させる。この時、第1の押え治具415は、ベース部材340底面の開口から露出する可動部材320のフランジ部323に対して、上述した第1の方向に当接する。第1の押え治具415は、フランジ部323と当接した状態では、その他の部位が可動部材320及びベース部材340とは接触しない形状となっている。これにより、レンズ要素301bを熱かしめする準備が整う。
最後に、図9cに示すように、第1のかしめホーン413を上方から下降させて、可動部材320の鏡枠部321に対して、上述した第1の方向に当接させる。鏡枠部321先端のかしめ代は第1のかしめホーン413によって過熱及び加圧され、変形する。これによりレンズ要素301bの熱かしめが完了する。
熱かしめが終了すると、第1のかしめホーン413及び第1の押え治具415を上方に引き上げる。この時、まず第1のかしめホーン413を引き上げ、次いで第1の押え治具415を引き上げる順番とする。
ところで、熱かしめによってかしめを行う際に、かしめホーンの押し出し圧力や加圧時間、加熱温度等の設定に誤りがあった場合や、かしめ代の体積に誤りがあった場合、かしめホーンの先端に熱かしめされる部材が溶着してしまうことがある。本実施例の場合を考えると、第1のかしめホーン413に可動部材320が溶着した状態に相当する。
この時、第1のかしめホーン413よりも第1の押え治具415を先に引き上げる場合を考える。この場合、第1の押え治具415が先に上昇することでフランジ部323との当接が解け、可動部材320の光軸上方向への押えがなくなる。その後、第1のかしめホーン413を引き上げようとすると、ホーン先端に溶着した可動部材320にも引き上げる方向の力がかかる。
上述したように光学補正ユニット300は支持手段として、固定側受け部341と第1の可動側受け部333aとの間、第2の可動側受け部333bと押え部材345との間にそれぞれ球状支持部材343を有している。そのため、可動部材320を引き上げる方向に力が加わると、本実施例の構成の支持手段においては、固定側受け部341と第1の可動側受け部333aと球状支持部材343との間に過度の荷重が発生するおそれがある。
その結果、固定側受け部341あるいは第1の可動側受け部333aの座面に圧痕が形成されてしまう。圧痕が形成されると、球状支持部材343の転がりが均一でなくなり、振れ補正制御の精度低下につながるおそれがある。
このような不具合を防止するために、本実施例ではまず第1のかしめホーン413を引き上げ、次いで第1の押え治具415を引き上げる順番としている。この順番であれば、仮に可動部材320がホーン先端に溶着してしまったとしても、可動部材320は第1の押え治具415により下方向に押さえつけられているため、第1のかしめホーン413の引き上げにより第1のかしめホーン413が可動部材320から引き剥がされるので、支持手段に過度の荷重が発生することはない。
次に、位置決めされた可動部材320に対して可動ヨーク303側から補正レンズ301の一部を圧入する手順について説明する。図10は、可動ヨーク303側からレンズ要素301cを可動部材320に圧入する手順を示した断面図である。レンズ要素301cの圧入に際しては、第2の圧入ホーン501及び第2の圧入ガイド治具503を使用する。
まず、図10aに示すように、前工程まででバックヨーク335側の補正レンズ301の一部の圧入及び熱かしめが完了した光学補正ユニット300において、可動部材320のバックヨーク335側を第2のかしめ受け台505に対して位置決めする。すなわち、第2のかしめ受け台505の圧入支持部507は可動部材320のバックヨーク側保持スペース325に圧入され、それにより、バックヨーク側保持スペース325に対応する鏡枠部321の外周面に対して半径方向に当接する。さらに、第2のかしめ受け台505のレンズ当接部509は、前工程でバックヨーク側保持スペース325にかしめられたレンズ要素301bのレンズ面に対して、上述した第1の方向に当接する。
図4bに示したように、本実施例では、フランジ部323において、バックヨーク335を保持する領域に対して可動側支持部333を形成する領域が光軸方向に奥まって形成されており、それにより生じる鏡枠部321の外周面が圧入支持部507との当接面として機能する。この当接面は可動側支持部333と近接しており、可動側支持部333と同様に120°間隔で設けられている。
これにより、可動部材320は第2のかしめ受け台505に対して位置決めされる。この時、可動部材320の中心軸と第2のかしめ受け台505の中心軸とが一致する。
また、図10aに示すように、圧入されるレンズ要素301cを第2の圧入ホーン501の先端に保持する。このレンズ要素301cも上述した工程と同様に、不図示のエア吸引式吸着機構のエア吸引によりホーン先端に吸着保持されている。
第2の圧入ホーン501は第2の圧入ガイド治具503に挿入されており、さらに上下に自在に移動することができる。この第2の圧入ガイド治具503は第2のかしめ受け台505と中心軸が一致するように配置されており、さらに上下に自在に移動することができる。
次に、図10bに示すように、第2の圧入ガイド治具503を、レンズ要素301cを保持した第2の圧入ホーン501と共に、可動部材320を位置決めしている第2のかしめ受け台505に向けて上方から下降させる。この時、第2の圧入ガイド治具503は第2のかしめ受け台505に対してのみ当接し、第2の圧入ホーン501先端のレンズ要素301cは光学補正ユニット300とは接触しない。
最後に、図10cに示すように、第2の圧入ホーン501を上方から下降させる。第2の圧入ホーン501は、第2の圧入ガイド治具503にガイドされることで、自身の中心軸と可動部材320の中心軸とが一致した状態を保ちながら下降する。これにより、先端に保持されていたレンズ要素301cは、第2の圧入ホーン501の押し出し力によって、可動部材320のレンズ受け部329に対して、上述した第2の方向に当接するまで可動ヨーク側保持スペース327に圧入される。
圧入が完了すると不図示のエア吸引式吸着機構による吸引が解除され、第2の圧入ホーン501と第2の圧入ガイド治具503を順次上方に引き上げる。
次に、可動ヨーク303側から可動部材320に圧入された補正レンズ301の一部を、熱かしめにより可動部材320に固定する手順について説明する。図11は、可動ヨーク303側からレンズ要素301cを可動部材320に熱かしめする手順を示した断面図である。レンズ要素301cの熱かしめに際しては、第2のかしめホーン511及び第2の押え治具513を使用する。可動部材320は引き続き第2のかしめ受け台505に位置決めされている。
まず、図11aに示すように、第2のかしめ受け台505に位置決めされた可動部材320の上方に、第2のかしめホーン511と第2の押え治具513を配置する。第2のかしめホーン511は第2の押え治具513に挿入されており、それらは独立して上下に移動することができる。
次に、図11bに示すように、第2の押え治具513を第2のかしめ受け台505に位置決めされている可動部材320に向けて上方から下降させる。この時、第2の押え治具513は、可動ヨーク側保持スペース327に対応する鏡枠部321の先端近傍の外周部に複数設けられている、可動ヨーク303を位置決めするための凸部331に対して、上述した第2の方向に当接する。このために、これらの凸部331は、可動ヨーク303が係合位置決めされた状態でも可動ヨーク303の平面からさらに光軸方向に突出する高さを有しており、その突出した端面が第2の押え治具513との当接面となる。
第2の押え治具513は、凸部331と当接した状態では、その他の部位が可動部材320及びベース部材340とは接触しない形状となっている。これにより、レンズ要素301cを熱かしめする準備が整う。
最後に、図11cに示すように、第2のかしめホーン511を上方から下降させて、可動部材320の鏡枠部321に対して、上述した第2の方向に当接させる。鏡枠部321先端のかしめ代は第2のかしめホーン511によって過熱及び加圧され、変形する。これによりレンズ要素301cの熱かしめが完了する。
熱かしめが終了すると、第2のかしめホーン511及び第2の押え治具513を上方に引き上げる。この時、上述したレンズ要素301bの熱かしめ工程と同様に、まず第2のかしめホーン511を引き上げ、次いで第2の押え治具513を引き上げる順番とする。この順番で各部材を引き上げることにより、光学補正ユニット300の支持手段に過度の荷重が発生することがなく、損傷を防ぐことができる。
また、上記のように、バックヨーク側の圧入及びかしめ時には、可動ヨーク側の保持スペースと、バックヨーク側のベース部材底面の開口からアクセス可能なフランジ部とに当接することで可動部材を位置決めし、可動ヨーク側の圧入及びかしめ時には、バックヨーク側のベース部材底面の開口からアクセス可能な鏡枠部の外周面と、可動ヨーク側の鏡枠部先端周辺に設けた凸部とに当接することで可動部材を位置決めしているので、光学補正ユニットの外径を増大させることなく、どちら側のかしめにおいても確実に可動部材を位置決めすることが可能となる。
なお、本実施例に記載の光学補正ユニットでは、補正レンズとしてレンズ要素3枚とスペーサ1つを有していたが、可動部材の両側からレンズ要素を圧入及びかしめる構成であればこれに限られるものではない。例えば、レンズ要素やスペーサの枚数を変えてもよいし、レンズ要素の少なくとも1枚を接合レンズとしてもよいし、また、スペーサを用いない構成としてもよい。
また、可動ヨークの位置決め及び第2の押え治具の当接に用いられる、鏡枠部先端周辺部に複数設けられる凸部は、全て凸部が第2の押え治具と当接できるだけの高さを有していてもよいし、一部の凸部だけが当接できる高さを有していてもよい。一部の凸部のみを第2の押え治具と当接させる構成とする場合には、当接させる凸部を鏡枠部先端の円周上に概ね等間隔に配置するとよい。これにより、可動部材を均一に押えることができ、可動部材の歪み等の発生を防止することができる。
また、ベース部材底面の開口は必ずしも円形である必要はなく、限られたスペースをより有効活用するために、例えば、可動部材の位置決め及び押えに用いられる押え治具等の部材と干渉しないための逃げ形状を有する形状としてもよい。