JP6185870B2 - 溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、溶接構造部材に好適に用いられるアルミニウム合金鍛造材およびその製造方法に関する。
自動車、二輪車、鉄道車輛、航空機等の輸送車輛の構造部材としては、例えば、高強度であって、耐食性にも優れている7000系アルミニウム合金材料が広く使用されている。(以下、「アルミニウム合金」を「Al合金」と記載することがある。)
7000系Al合金の代表的な合金である7N01をベースとしたAl合金鍛造材は、350〜500℃の温度で熱間鍛造を行った後、400〜500℃の温度で溶体化処理を行い、その後自然時効処理を行わずに、人工時効処理を行う工程を経て製造される。
例えば特許文献1には、Fe:0.2〜0.35質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Mn:0.3〜0.6質量%、Mg:1.3〜2.0質量%、Zn:4.6〜5.1質量%、Si:0.30質量%未満、Zr:0.1質量%以上かつTiとの合計量で0.2質量%未満含有し、「[Ti質量%]/[Zr質量%]≧0.2」の関係を満たし、残部がAl及び不可避不純物からなる合金組成を有するAl合金鍛造素材を得る工程と、前記Al合金鍛造素材に対し、350〜500℃の温度で熱間鍛造を行った後、400〜500℃の温度で溶体化処理を行うことにより、Al合金鍛造製品を得る工程と、前記Al合金鍛造製品に対し、自然時効処理を行わずに、人工時効処理を行う工程と、を含むことを特徴とするAl合金鍛造製品の製造方法が開示されている。
特開2010−261061号公報
しかしながら、従来のアルミニウム合金鍛造材においては、7000系Al合金を溶接が可能な鍛造材として使用しようとする場合、鉄や5000系Al合金と比べると、溶接が難しい合金であることが分かっている。すなわち、7000系Al合金は、その成分や製造条件等を適切に選択しないと、溶接割れなどの欠陥が発生し易いものである。
また、従来のアルミニウム合金鍛造材においては、結晶粒の伸長方向から垂直に溶接を実施した場合、粒界に沿って割れが進展しやすいという問題がある。
また、特許文献1に開示された方法は、アルミニウム合金の組成のみを規定しているが、製造条件によって、鍛造材の性能は大きく変動するものであり、鍛造材の性能の再現性に劣るものである。さらに、特許文献1では、結晶粒サイズや結晶粒形態について十分に検討されていないことから、溶接条件によっては割れが発生しやすいといえる。
このように、溶接時の割れについてこれまで、結晶粒サイズと結晶粒形態との関係においては、十分な検証が行われていなかった。
また、アルミニウム合金鍛造材においては、引張強度や耐応力腐食割れ性も要求される。さらには、7000系以外のアルミニウム合金を用いた鍛造材においても、引張強度を維持しつつ、耐溶接割れ性と耐応力腐食割れ性に優れた特性が要求されている。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、引張強度を維持しつつ、耐溶接割れ性と耐応力腐食割れ性に優れた溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材とその製造方法を提供することである。
そこで、本発明者らは、アルミニウム合金鍛造材の溶接時に割れが生じる原因の究明とその対策について、鋭意検討を進めた。
その結果、引張強度と溶接性との両立を図るためには、溶接を行う前のアルミニウム合金鍛造材の結晶粒が溶接時の割れに大きく関わっていること、製造条件を適切な範囲に管理して結晶粒を所定の形態に制御することによって、溶接時の割れを抑制することが可能となること、等の知見を得るに至り、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材(以下、適宜、Al合金鍛造材、あるいは、鍛造材という)は、3面鍛造によって製造される溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材であって、溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の組織において、長軸の結晶粒長さをGLμm、短軸の結晶粒長さをGSμmとしたときに、シェアバンドが形成された部位で観察される互いに垂直な3方向の面のうち、2面は下記式で表され、他の一面は、結晶粒が長軸方向に曲がりを有することを特徴とする。
50≦GL≦500 ・・・(1)
10≦GS≦180 ・・・(2)
GS≦GL ・・・(3)
係る構成を有するアルミニウム合金鍛造材とすることによって、引張強度を維持しつつ、溶接割れが生じにくく、耐応力腐食割れ性に優れたアルミニウム合金鍛造材とすることが可能となる。
また、本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材は、前記溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材が、7000系のアルミニウム合金からなることが好ましい。
係る構成を有するアルミニウム合金鍛造材とすることによって、引張強度、耐溶接割れ性、耐応力腐食割れ性、靭性などが向上する。
本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の製造方法は、前記記載の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の製造方法であって、アルミニウム合金の鋳塊を鋳造する鋳造工程と、前記鋳塊を均質化熱処理する均質化熱処理工程と、前記均質化熱処理した鋳塊を加熱する加熱工程と、前記加熱された鋳塊を350〜460℃で鍛造して鍛造材とする鍛造工程と、前記鍛造材に対して、T6処理またはT7処理を行う調質工程と、を行い、前記鍛造工程は、前記鍛造前の鋳塊が直方体であり、上面をA面、側面の1つをB面、B面に隣り合う側面の1つをC面としたときに、前記各面の鍛錬比が1.0Sを超え3.5S以下となるように、B面およびC面の鍛造と、A面およびC面の鍛造と、A面およびB面の鍛造とをこの順に行う3面鍛造を1回以上行なうことを特徴とする。
係る工程を含む製造方法とすることによって、引張強度を維持しつつ、溶接割れが生じにくく、耐応力腐食割れ性に優れたアルミニウム合金鍛造材を製造することが可能となる。
特に、鍛造工程において3面鍛造を行なうことで、本発明の鍛造材の組織が、前記した式(1)〜(3)を満たすとともに、結晶粒が長軸方向に曲がりを有する形態となる。
本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材は、引張強度を維持しつつ、耐溶接割れ性と耐応力腐食割れ性に優れている。また、本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の製造方法を用いることにより、上記の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材を製造することができる。
本発明の鍛造材の組織観察位置を説明するための斜視図である。 図1の組織観察位置おける鍛造材の内部の結晶粒の様子を拡大して模式的に描いた斜視図である。 図1の鍛造材のM1面の観察組織を模式的に示す平面図である。 図1の鍛造材のM2面の観察組織を模式的に示す平面図である。 本発明の鍛造材の結晶粒組織を模式的に示す斜視図である。 従来の鍛造材の結晶粒組織を模式的に示す斜視図である。 従来の鍛造材の結晶粒界と応力についての説明図であり、割れについて説明するための模式的な断面図である。 本発明の鍛造材の結晶粒界と応力についての説明図であり、割れについて説明するための模式的な断面図である。 結晶粒のGLとGSの測定方法を説明するためのm3面を拡大して模式的に描いた断面図である。 本発明の鍛造材の製造方法における、鍛造工程での3面鍛造を説明するための模式的な斜視図である。 実施例の鍛造材を製造する前の鋳塊のブロックの形状を模式的に示す斜視図である。 実施例の溶接試験の方法を説明するための模式的な斜視図である。
以下、本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明に係る鍛造材について説明する。
〔アルミニウム合金鍛造材〕
アルミニウム合金鍛造材は、その組織において、長軸の結晶粒長さをGLμm、短軸の結晶粒長さをGSμmとしたときに、シェアバンドが形成された部位で観察される互いに垂直な3方向の面のうち、2面は下記式で表され、他の一面は、結晶粒が長軸方向に曲がりを有するものである。
50≦GL≦500 ・・・(1)
10≦GS≦180 ・・・(2)
GS≦GL ・・・(3)
本発明に係る鍛造材の構成について説明する。
図1は本発明の鍛造材の組織観察位置を説明するための斜視図、図2は図1の組織観察位置おける鍛造材の内部の結晶粒の様子を拡大して模式的に描いた斜視図である。
図1に示す鍛造材1のM1面およびM2面の観察組織(マクロ観察組織)を、それぞれ図3、図4に示す。図3、4に示すように、鍛造材1のM1面およびM2面には、シェアバンド(主変形領域)21が形成されている。このシェアバンド21は、マクロエッチングにより白くなる部分であり、白い帯状に形成されたものである。また、シェアバンド21以外の部位は、デッドメタル(不変形領域)22と呼ばれ、低鍛錬組織となっている。シェアバンド21は、デッドメタル22よりも加工度が高い領域にあたる。このシェアバンド21を広く分布させることで耐溶接割れ性が改善される。
図1に示す鍛造材1の結晶粒観察部位の3面の観察組織(ミクロ観察組織)を図2に示す。なお、図2では、紙面上、手前に位置する面をm3面、上面に位置する面をm2面、左側に位置する面をm1面としている。
また、この観察部位は、図3に示すように、シェアバンド21が形成された部位である。
図2に示すように、m1面およびm3面は、結晶粒4の断面が細長く、直線状に延びた形態をしている。ここで、鍛造材1は、このm1面およびm3面の結晶粒の形態が、前記式(1)〜(3)を満たす。これに対し、m2面は、結晶粒4が長軸方向に曲がりを有した形態をしている。結晶粒4が長軸方向に曲がりを有した形態とは、鍛伸材のように結晶粒が長軸方向に略直線状に形成されたものではなく、後述するように、溶接時に結晶粒界に沿って割れが進展しない程度に湾曲していることをいう。ここでは、結晶粒4は長軸方向に波状(蛇行した形状)に湾曲した形態をしている。なお、図2は結晶粒4の形態をわかりやすく模式的に示したものであり、実際の観察組織においても前記結晶粒4の条件を満たすものである。
本発明の鍛造材1は、結晶粒4がこのような形態をとることで、耐溶接割れ性に優れたものとなる。その理由は以下のとおりである。
図5に示すように、鍛造材1(3方向に鍛造する3面鍛造材)の結晶粒4は長軸方向に曲がりを有しており、結晶粒4が構成する組織は、きし麺が重なったような形態をしている。これに対し、図6に示すように、従来の鍛造材100(2方向に鍛造する2面鍛造材(鍛伸材))の結晶粒40は長軸方向に直線状であり、結晶粒40が構成する組織は、竹が重なったような形態をしている。
ここで、図7、8に示すように、鍛造材の溶接時には、応力が結晶粒界を裂くようにかかるため、溶接時の割れは結晶粒界に沿って進展する。従来の鍛造材では、図7に示すように、結晶粒が長軸方向に直線状のため、割れが結晶粒界に沿って進展しやすい。これに対し、本発明の鍛造材では、図8に示すように、結晶粒が長軸方向に曲がりを有しているため(結晶粒が湾曲しているため)、結晶粒界の一部に割れが生じた場合であっても、割れが進展しにくい。すなわち、図8に示すように、結晶粒が長軸方向に曲がりを有しているため、粒界を裂く応力が、結晶粒界に通常かかる応力に対して小さくなる。これにより、割れが進展しにくい。したがって、本発明の鍛造材は、耐溶接割れ性に優れたものとなる。
次に、式(1)〜(3)について説明する。
結晶粒は小さいほど溶接時に割れを発生し難いが、アスペクト比(長軸/短軸)が大きくなると、長軸に沿って溶接時に割れが進行しやすくなる。よって結晶粒径については、式(1)〜(3)の規定とする必要がある。なお、この式(1)〜(3)は、実験的に導き出したものである。
式(1)において、GLが50μm未満では、耐溶接割れ性、耐応力腐食割れ性が低下する。一方、500μmを超えると、耐溶接割れ性、耐応力腐食割れ性が低下する。したがって、「50μm≦GL≦500μm」とする。耐溶接割れ性、耐応力腐食割れ性をより向上させる観点から、GLは、好ましくは200μm以下である。
式(2)において、GSが10μm未満では、耐溶接割れ性、耐応力腐食割れ性が低下する。一方、180μmを超えると、耐溶接割れ性、耐応力腐食割れ性が低下する。したがって、「10μm≦GS≦180μm」とする。耐溶接割れ性、耐応力腐食割れ性をより向上させる観点から、GSは、好ましくは50μm以下である。
式(3)において、「GS≦GL」としたのは、結晶粒において、長軸のほうが短軸よりも長いこと、あるいは、長軸と短軸とが同じ長さでもよいことを規定したものである。
なお、結晶粒が粗大化すると、強度が低下する場合がある。
次に、結晶粒のGLおよびGSの測定方法について、m3面を例にとって説明する。
図9は、結晶粒のGLとGSの測定方法を説明するm3面の拡大断面模式図である。供試用試料は、鏡面となるまで研磨した後、バーカー氏液を用いて陽極酸化させ、偏光をかけた光学顕微鏡を使用して観察する。
結晶粒サイズは、m3面の結晶粒長さGLμmおよび結晶粒長さGSμmのそれぞれを、切片法にて計測する。
図9において、長軸方向(横方向)に直線A1−A2を引き、このA1−A2直線によって横切られる粒界の数を計測し(この図では5)、図9の横方向の長さ(μm)を粒界の数で割り返すことによって、GL(μm)を求める。
同様に、短軸方向(縦方向)に直線B1−B2を引き、このB1−B2直線によって横切られる粒界の数を計測し(この図では22)、図9の縦方向の長さ(μm)を粒界の数で割り返すことによって、GS(μm)を求める。
鍛造材において、式(1)〜(3)を満足する範囲にするためには、後記の特定の製造条件を用いて製造することが必要である。また、後記するように、鍛造工程において、鋳塊の各面の鍛錬比が所定となるように、3面の鍛造を行なうことによって、鍛造材の結晶粒の形態を所定の形状に制御することができる。
次に、本発明に係る鍛造材を構成するアルミニウム合金について説明する。
本発明のアルミニウム合金鍛造材に用いるアルミニウム合金としては限定されるものではないが、好ましくは7000系のアルミニウム合金であり、特に好ましい組成は以下である。
〔アルミニウム合金〕
鍛造材を構成するアルミニウム合金は、Mg:0.4〜4.0質量%、Zn:3.5〜7.0質量%、Cu:0.1〜0.5質量%、Mn:0.3質量%を超えて0.8質量%以下、Ti:0.001〜0.15質量%を含有し、さらに、Cr:0.1〜0.5質量%、Zr:0.05〜0.25質量%のうち少なくとも1種以上を含有し、Si:0.5質量%以下、Fe:0.5質量%以下に規制し、かつ残部がAlおよび不可避的不純物からなるものであることが好ましい。
アルミニウム合金を構成する各元素の含有量について、以下に説明する。
(Mg:0.4〜4.0質量%)
Mgは、アルミニウム合金の引張強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が0.4質量%以上であれば、この効果が大きくなる。一方、Mgの含有量が4.0質量%以下であれば、耐応力腐食割れ性(耐SCC性)が向上する。よって、Mgの含有量は0.4〜4.0質量%とするのが好ましい。Mgの含有量は、引張強度をより向上させる観点から、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である。また、耐応力腐食割れ性をより向上させる観点から、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
(Zn:3.5〜7.0質量%)
Znは、アルミニウム合金の引張強度を向上させる効果がある。Znの含有量が3.5質量%以上であれば、この効果が大きくなる。一方、Znの含有量が7.0質量%以下であれば、耐応力腐食割れ性(耐SCC性)が向上する。よって、Znの含有量は3.5〜7.0質量%とするのが好ましい。Znの含有量は、引張強度をより向上させる観点から、より好ましくは4.0質量%以上、さらに好ましくは4.5質量%以上である。また、耐応力腐食割れ性をより向上させる観点から、より好ましくは5.5質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下である。
(Cu:0.1〜0.5質量%)
Cuは、アルミニウム合金の耐食性を低下させるが、耐応力腐食割れ性(耐SCC性)と引張強度を向上させる効果がある。Cuの含有量が0.1質量%以上であれば、この効果が大きくなる。一方、Cuの含有量が0.5質量%以下であれば、耐溶接割れ性が向上する。よって、Cuの含有量は0.1〜0.5質量%とするのが好ましい。Cuの含有量は、耐応力腐食割れ性と引張強度をより向上させる観点から、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。また、耐溶接割れ性をより向上させる観点から、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.25質量%以下である。
(Mn:0.3質量%を超えて0.8質量%以下)
Mnは、結晶粒を微細化させる効果がある。Mnの含有量が0.3質量%を超えると、この効果が大きくなる。一方、Mnの含有量が0.8質量%以下であれば、粗大な金属間化合物が生じにくくなるため靱性が向上し、溶接時に割れが進展しにくくなる。よって、Mnの含有量は0.3質量%を超えて0.8質量%以下とするのが好ましい。Mnの含有量は、結晶組織を微細化させる効果をより大きくする観点から、より好ましくは0.4質量%以上である。また、靱性をより向上させる観点から、より好ましくは0.6質量%以下である。
(Ti:0.001〜0.15質量%)
Tiは、鋳造後の結晶粒を微細化させる効果がある。Tiの含有量が0.001質量%以上であれば、この効果が大きくなる。一方、Tiの含有量が0.15質量%以下であれば、粗大な金属間化合物が生じにくくなるため靱性が向上し、溶接時に割れが進展しにくくなる。なお、Tiの含有量が0.15質量%を超えると、その効果は飽和する。よって、Tiの含有量は0.001〜0.15質量%とするのが好ましい。Tiの含有量は、結晶粒を微細化させる効果をより大きくする観点から、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、靱性をより向上させる観点から、より好ましくは0.05質量%以下である。
(Cr:0.1〜0.5質量%)
Crは、鋳造工程および熱処理工程において、微細な化合物として析出し、結晶粒成長を抑制する効果がある。Crの含有量が0.1質量%以上であれば、この効果が大きくなる。一方、Crの含有量が0.5質量%以下であれば、初晶として粗大なAl−Cr系金属間化合物が生じにくくなるため靱性が向上し、溶接時に割れが進展しにくくなる。よって、Crの含有量は0.1〜0.5質量%とするのが好ましい。Crの含有量は、結晶粒成長を抑制する効果をより大きくする観点から、より好ましくは0.15質量%以上である。また、靱性をより向上させる観点から、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.25質量%以下である。
(Zr:0.05〜0.25質量%)
Zrは、アルミニウム合金の結晶粒を微細化させるとともに、安定化させる効果がある。Zrの含有量が0.05質量%以上であれば、この効果が大きくなる。一方、Zrの含有量が0.25質量%以下であれば、粗大な晶出物が生じにくくるため靱性が向上し、溶接時に割れが進展しにくくなる。よって、Zrの含有量は0.05〜0.25質量%とするのが好ましい。Zrの含有量は、結晶粒を微細化させるとともに、安定化させる効果をより大きくする観点から、より好ましくは0.07質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、靱性をより向上させる観点から、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.15質量%以下である。
本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金は、これらのCrおよびZrについては、不可避的不純物のレベルで含有していてもよいが、結晶粒を微細化させるため、CrおよびZrのうちの少なくとも1種以上を、添加する際には、上記の所定の範囲内で含有することが好ましい。
(Si:0.5質量%以下)
Siは、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、鋳造工程等において、鋳塊中にAl−Fe−Si系金属間化合物を生じさせる。Siの含有量が0.5質量%以下であれば、粗大なAl−Fe−Si系金属間化合物が鋳塊中に生じにくくなり、靱性が向上し、溶接時に割れが進展しにくくなる。よって、Siの含有量は0.5質量%以下とするのが好ましい。Siの含有量は、靱性をより向上させる観点から、より好ましくは0.3質量%以下である。
(Fe:0.5質量%以下)
Feも、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、鋳造工程等において、鋳塊中にAl−Fe系金属間化合物を生じさせる。Feの含有量が0.5質量%以下であれば、粗大なAl−Fe系金属間化合物が鋳塊中に生じにくくなり、靱性が向上し、溶接時に割れが進展しにくくなる。よって、Feの含有量は0.5質量%以下とするのが好ましい。Feの含有量は、靱性をより向上させる観点から、より好ましくは0.3質量%以下である。
(不可避的不純物)
不可避的不純物としては、B、C、Hf、Na等の元素が想定し得るが、いずれの元素であったとしても、本発明の特徴を阻害しないレベルで含有することは許容される。具体的には、これら不可避的不純物の元素は、個々の元素毎の含有量がそれぞれ0.05質量%以下であることが好ましい。また、合計の含有量が0.15質量%以下であることが好ましい。
〔アルミニウム合金鍛造材の製造方法〕
次に、本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の製造方法の実施形態について説明する。
本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の製造方法は、前記記載の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の製造方法であって、鋳造工程と、均質化熱処理工程と、加熱工程と、鍛造工程と、調質工程と、をこの順に行うものである。
以下、各工程について説明する。なお、本発明のアルミニウム合金鍛造材の製造方法では、鋳造工程、均質化熱処理工程、加熱工程については、常法により製造することが可能であるので、これらの工程については簡潔に記載する。
(鋳造工程)
鋳造工程は、アルミニウム合金の鋳塊を鋳造する工程である。アルミニウム合金としては、例えば前記記載した組成のものが挙げられる。鋳造工程では、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ鋳造法等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。なお、鋳造後に、切断機などによって、鋳塊を所望の形状としてもよい。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理工程は、前記鋳塊を均質化熱処理する工程である。均質化熱処理温度は特に規定されるものではないが、一例としては400〜500℃である。
(加熱工程)
加熱工程は、前記均質化熱処理した鋳塊を加熱する工程である。加熱工程により、鋳塊を鍛造開始温度まで加熱する。加熱温度は特に規定されるものではないが、一例としては400〜470℃である。
(鍛造工程)
鍛造工程は、前記加熱された鋳塊を350〜460℃で鍛造して鍛造材とする工程である。また、鍛造工程は、鋳塊から目的とする所定の形状の鍛造材を得る工程である。本発明の製造方法における鍛造は、後記するように、3面鍛造を行なうものである。
鍛造は、大きく自由鍛造と型鍛造とに分類される。さらに自由鍛造においては、2面のみ鍛造する鍛伸材と3面を鍛造する3面鍛造材に分かれる。自由鍛造では生産性の観点から鍛伸材が使われることが多いが、鍛伸材は結晶粒の長軸が大きくなり、溶接時に大きな割れが発生しやすい問題がある。本発明では、3面鍛造や型鍛造で形成される組織において、結晶粒が長軸方向に曲がりを有する組織であることが溶接割れを発生させ難くすることを突き止めた。これは、前記したとおり、溶接時に粒界にかかる応力が分散され、割れが進展し難くなるためである。
鍛造開始温度は、350〜460℃とする。鍛造開始温度が350℃未満では、結晶粒が粗大化し、強度、耐溶接割れ性、耐応力腐食割れ性が低下する。一方、460℃を超えると、バーニングが発生しやすくなる。したがって、鍛造開始温度は、350〜460℃とする。好ましくは380〜430℃である。
鍛造終了温度は、加工に必要な力量の低減、素材の割れ防止、溶体化処理時の再結晶による結晶粒粗大化を防止するため、180〜450℃の間に管理することが好ましい。鍛造終了温度が180℃以上であれば、加工力量が低くなり、加工機械の負担が小さくなるばかりか、素材自体も割れが発生し難くなる。また、加工歪みが低くなるため、溶体化処理時に結晶粒が粗大化し難くなる。一方、鍛造終了温度が450℃以下であれば、低融点化合物である金属間化合物(ZnMgなど)が溶融する問題(バーニング)が生じにくい。
鍛造処理中に材料温度が低下した場合は、適宜加熱工程に戻って、再度加熱をしても良い。
鍛造工程は、鍛造前の鋳塊が直方体であり、上面をA面、側面の1つをB面、B面に隣り合う側面の1つをC面としたときに、各面の鍛錬比が1.0Sを超え3.5S以下となるように、B面およびC面の鍛造と、A面およびC面の鍛造と、A面およびB面の鍛造とをこの順に行う3面鍛造を1回以上行なう工程である。
ここで、鍛錬比とは、「鍛造後の断面積/鍛造前の断面積」の逆数、すなわち「鍛造前の断面積/鍛造後の断面積」を示し、例えばA面の面積について、鍛造後の面積が鍛造前の面積の何倍になっているかを示すものである。例えば、鍛造後のA面の面積が、鍛造前のA面の面積の「1/2」(0.5倍)であれば、A面の鍛錬比は2Sとなる。
次に、この鍛造工程の鍛造(3面鍛造)について、図10を参照して説明する。
図10に示すように、鍛造前の鋳塊は直方体である。直方体としての形状は特に規定されるものではなく、立方体であってもよい。鋳塊は、鍛造する際に直方体であればよく、アルミニウム合金の鋳塊を鋳造した際に直方体になっている場合のほか、各工程の前後において、切削などにより直方体としてもよい。
この直方体の鋳塊は、A面と、このA面に垂直なB面と、このA面およびB面に垂直なC面を有する。すなわち、鋳塊は、A面を上面としたときに、A面と、このA面に対向する面(下面)と、側面Bと、この側面Bに対向する面と、C面と、このC面に対向する面との6面で構成されている。
ここでは、A面、B面およびC面の各面の鍛錬比が2Sとなる場合について、便宜上、縦200mm×横370mm×長さ400mmの直方体を例にとって説明する。ただし、直方体のサイズは特に規定されるものではない。
3面鍛造においては、まず、この直方体のA面の鍛錬比が2Sとなるように、B面およびC面を鍛造する。これにより、縦400mm×横296mm×長さ250mmの直方体となり、A面の鍛錬比が2Sとなる。すなわち、
「鍛錬比(S)=(400×370)/(250×296)=2」となる。
次に、この直方体のB面の鍛錬比が2Sとなるように、A面およびC面を鍛造する。これにより、縦250mm×横592mm×長さ200mmの直方体となり、B面の鍛錬比が2Sとなる。すなわち、
「鍛錬比(S)=(400×250)/(250×200)=2」となる。
次に、この直方体のC面の鍛錬比が2Sとなるように、A面およびB面を鍛造する。これにより、縦200mm×横370mm×長さ400mmの直方体となり、C面の鍛錬比が2Sとなる。すなわち、
「鍛錬比(S)=(250×592)/(200×370)=2」となる。
なお、前記した3回の鍛造において、鍛造前後の鍛造材のサイズは鍛錬比が2Sとなれば特に規定されるものではない。例えば、前記したC面の鍛造により、縦およそ220mm×横およそ336mm×長さ400mmの直方体とすれば、
「鍛錬比(S)=(250×592)/(およそ220×およそ336)=2」となる。
以上説明したこの3面鍛造を1回として、さらに3面鍛造をもう1回、あるいは、2回以上行ってもよい。上限は特に規定されるものではないが、所望の鍛造材のサイズにより決定すればよい。
3面鍛造においては、実際は、各面の鍛錬比が1.0Sを超え3.5S以下となるように行えばよい。鍛錬比が3.5Sを超えると、加工度が高過ぎて再結晶による組織粗大化のおそれがある。また、結晶粒4が長軸方向に曲がりを有した形態となりにくい。さらに、鍛造素材が長い棒状になり、次の面を鍛造する際、鍛造素材が折れ曲がる(座屈する)恐れがある。なお、鍛造加工を行なうため、各面の鍛錬比は1.0Sを超えることとなる。したがって、各面の鍛錬比は1.0Sを超え3.5S以下とする。鍛造組織になっていない部位が残りにくくする観点から、鍛錬比は、好ましくは1.5S以上、より好ましくは2.0S以上である。また、加工度をより適度にし、また、鍛造素材が長い棒状になりにくくする観点から、鍛錬比は、好ましくは3.0S以下、より好ましくは2.0S以下である。
なお、各面の鍛造(3回の鍛造)において、鍛錬比が1.0Sを超え3.5S以下の範囲であれば、それぞれの鍛錬比が同じ(例えばすべて2S)であってもよいし、それぞれの鍛錬比が異なるものであってもよい。
そして、各面の鍛錬比が1.0Sを超え3.5S以下となるように3面鍛造を行なうことで、結晶粒4が長軸方向に曲がりを有した形態となるとともに、式(1)〜(3)を満たすものとなる。
(調質工程)
調質工程は、前記鍛造材に対して、T6処理またはT7処理を行う工程である。
T6処理とは、溶体化処理、焼入れ、自然時効処理、人工時効処理の各処理をまとめた表現であり、この順に行うものである。すなわち、T6処理を行う工程(T6処理工程)とは、溶体化処理工程、焼入れ工程、自然時効処理工程、人工時効処理工程の各工程をまとめた工程のことを意味しており、各工程はこの順に行われる。
T7処理とは、溶体化処理、焼入れ、自然時効処理、安定化処理の各処理をまとめた表現であり、この順に行うものである。すなわち、T7処理を行う工程(T7処理工程)とは、溶体化処理工程、焼入れ工程、自然時効処理工程、安定化処理工程の各工程をまとめた工程のことを意味しており、各工程はこの順に行われる。
(溶体化処理工程)
溶体化処理工程は、加工による歪の低減と溶質元素の固溶を目的とする工程である。
例えば、溶体化処理温度は、400〜480℃の間に管理することが好ましい。溶体化処理温度が400℃以上であれば、溶体化が十分に進むため、高い引張強度を発現することができる。また、晶出物の微細化も進み易いため、靱性も低下し難くなる。一方、溶体化処理温度が480℃以下であれば、低融点化合物である金属間化合物(ZnMgなど)が溶融する問題が生じない。
なお、溶体化処理後に、焼入れ工程により焼き入れ処理を行ってもよい。焼入処理は、水中、温湯中への冷却により行う。
(自然時効処理工程)
自然時効処理工程は、過飽和固溶体から析出を起こさせることで引張強度を上げる工程である。
自然時効処理は、常温で96時間以上することが好ましい。自然時効処理では微細で高密度な析出物を析出させることが目的であり、高密度に析出させるほど高引張強度が得られる。但し、低温であるため、析出速度は遅くなっている。常温で96時間以上の処理ではこれらの効果がより向上する。
また、自然時効処理が適切であれば、強度が向上するだけでなく、耐食性も向上する。なお、亜時効になると、耐応力腐食割れ性(耐SCC性)が低下し、また、溶接割れが発生しやすくなる。
(人工時効処理工程)
人工時効処理工程は、自然時効処理された鍛造材の析出物を成長させて、引張強度をさらに増大させる工程である。
人工時効処理は、90〜180℃で、5〜48時間行うことが好ましい。人工時効処理温度が90℃以上であれば、自然時効処理の析出物が十分成長でき、引張強度向上に寄与することができる。一方、人工時効処理温度が180℃以下であれば、自然時効処理の析出物の一部が再固溶せず、高引張強度となる。また、人工時効処理時間は上記温度で最も引張強度が高くなる(ピーク時効)条件で決まる。人工時効処理時間が5時間以上であれば、鍛造材内部まで十分に加熱され、鍛造材内部で引張強度が低下するおそれがない。一方、48時間以内であれば、過時効条件となり難く、析出物が粗大になり難く、引張強度向上に寄与することができる。
また、人工時効処理が適切であれば、強度が向上するだけでなく、耐食性も向上する。なお、亜時効になると、溶接割れが発生しやすくなる。
(安定化処理工程)
安定化処理工程は、自然時効処理された鍛造材の析出物を成長させて、引張強度をさらに増大させる工程である。
安定化処理は、最大強さを得る人工時効硬化処理条件を超えた条件にて行う過剰時効硬化処理である。
過剰時効硬化処理は、120〜180℃で、5〜72時間行うことが好ましい。過剰時効硬化処理温度が120℃以上であれば、耐応力腐食割れ性(耐SCC性)が向上し、また、溶接割れが生じにくくなる。一方、過剰時効硬化処理温度が180℃以下であれば、引張強度が向上する。また、過剰時効硬化処理時間が5時間以上であれば、引張強度が向上する。一方、過剰時効硬化処理時間が72時間以内であれば、耐応力腐食割れ性(耐SCC性)が向上し、また、溶接割れが生じにくくなる。
本発明の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材は、人工時効処理工程あるいは安定化処理を行った後は、アーク溶接、プラズマ溶接、レーザ溶接等の種々の溶接加工を行うことができる。また、折り曲げ、切削、表面処理等の種々の二次加工を行って、形態を変えて、実際の製品とすることができる。
そして、本発明の鍛造材は、特に、自動車、二輪車、鉄道車輛、航空機等の輸送車輛の構造部材(溶接構造部材)として好適に用いることができる。
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に示した実施例に限定されるものではない。
表1に示す組成を有したAl合金を用いて、DC鋳造法によりスラブに鋳造した。その後この鋳塊を、450℃で24hr保持して均質化熱処理を行った。そして、このスラブから、図11に示すように、縦175mm×横360mm×長さ150mmの鋳塊ブロック50を切り出した。
その後、切り出した鋳塊ブロック50を、450℃の空気炉で加熱後、上下金型を用いて、表2、3に示す鍛造開始温度範囲で油圧プレスにより熱間鍛造を行った。
鍛造は、まず、B面とC面を鍛造してA面を2Sとした。次に、A面とC面を鍛造してB面を2Sとした。次に、A面とB面を鍛造してC面を2Sとした。これにより、図1に示すようなAl合金鍛造材を製造した。ただし、一部については、鍛造面数は2とした。
さらに、Al合金鍛造材を空気炉を用いて、460℃で4hr保持して溶体化処理した後、75℃の水で焼入れを行った。引き続いて、焼入れを行ったAl合金鍛造材に、常温で120時間の自然時効処理を行った。その後、空気炉を用いて、ピーク時効となる120℃で24hrの条件で人工時効処理を行った。
こうして得られたAl合金鍛造材から引張試験用試験片および耐応力腐食割れ性(耐SCC性)評価用試験片(Cリング)を採取した。これらの試験片を用いて、引張強度、耐SCC性についての評価を行った。また、得られたAl合金鍛造材を用いて溶接試験を行い、耐溶接割れ性について評価を行った。評価結果を表2、3に示した。表2、3中、本発明の規定を満足しないものは、数値に下線を引いて示した。
実施例および比較例において評価した特性は以下のとおりである。
[結晶粒の大きさ]
製造したAl合金鍛造材について、図1に示すようなシェアバンドが形成された部位である素材中心部のm1、m2、m3の面を観察した。そして、m1の面、m3の面については、図9を用いて説明した測定方法(切片法)により、結晶粒のGL(長軸)およびGS(短軸)を測定した。
具体的には以下のとおりである。
供試用試料は、鏡面となるまで研磨した後、バーカー氏液を用いて陽極酸化させ、偏光をかけた光学顕微鏡を使用して観察した。
結晶粒サイズは、m1面およびm3面について、結晶粒長さGLμmおよび結晶粒長さGSμmのそれぞれを、切片法にて計測した。それぞれ、n数=5の平均値として求めた。
図9において、長軸方向(横方向)に直線A1−A2を引き、このA1−A2直線によって横切られる粒界の数を計測し(この図では5)、図9の横方向の長さ(μm)を粒界の数で割り返すことによって、GL(μm)を求めた。この方法で得られた5つのGLの平均値をGLとした。
同様に、短軸方向(縦方向)に直線B1−B2を引き、このB1−B2直線によって横切られる粒界の数を計測し(この図では22)、図9の縦方向の長さ(μm)を粒界の数で割り返すことによって、GS(μm)を求めた。この方法で得られた5つのGSの平均値をGSとした。
m2の面については、供試用試料を鏡面となるまで研磨した後、バーカー氏液を用いて陽極酸化させ、偏光をかけた光学顕微鏡を使用して結晶粒の形態を観察した。
そして、
50≦GL≦500 ・・・(1)
10≦GS≦180 ・・・(2)
GS≦GL ・・・(3)
の全てを満たすものを合格(○)と判定した。
[耐溶接割れ性]
耐溶接割れ性については、溶接試験を行うことにより評価した。
まず、Al合金鍛造材から、A面、B面およびC面の試験片を採取した。A面の試験片は、A面を正面にして、縦100mm×横150mm×長さ10mmである。B面およびC面の試験片は、B面およびC面を正面にして、それぞれ、縦50mm×横150mm×長さ10mmである。図12に示すように、採取した試験片7を溶接材8に溶接した。
溶接材8には、溶接可能なアルミニウム合金として7N01合金を使用し、サイズは、縦(厚さ)35mm×横200mm×長さ100mmのものを用いた。
溶接条件としては、T字隅肉溶接とした。溶接は加工度の高い部位と加工度の低い部位が含まれるようにAl合金鍛造材の中心部に近い側(溶接部)で行った。
溶接プロセスは手動TIG溶接(AC)とした。手動TIG溶接の条件は、ダイヘン社製インバータエレコン500Pを使用して、極性比率:中立、溶接電流:310A、アーク電圧:24V、溶接速度:4〜17cm/minで行った。また、シールドガスとして、Arガスを15L/minで流した。
溶接割れの判定は、カラーチェックにより目視で行い、試験片7で溶接部9近傍に割れが認められなければ合格(○)と判定した。(溶接材8および溶接部9における割れは判定しない。)
[引張試験]
引張試験は、JIS Z2201にある4号試験片を用いて、JIS Z2241の規定に準じて、引張強度の測定を行った。測定値は、A面、B面、C面それぞれについて30個の試験片の測定値の平均値として求めた。引張強度は、7000系の材料の場合は370MPa以上のときに合格、その他の場合は、240MPaを合格と判定した。
[耐応力腐食割れ性(耐SCC性)]
応力腐食割れ試験は、300MPaの応力を付加した試験片を用いて、30日間、JIS H8711の塩水交互浸漬法にて行った。この際、A面、B面、C面それぞれについて、試験片12個について試験を行い、全ての試験片で応力腐食割れを起こしていないとき、合格(○)と判定した。なお、応力腐食割れの判定は、Cリングの1/2以上に渡る亀裂の有無により行い、亀裂がCリングの1/2未満のもの、全く無いものを合格とした。
Figure 0006185870
Figure 0006185870
Figure 0006185870
表2、3に示すように、試験材No.1〜20は、本発明の範囲を満たすため、全ての評価項目で優れていた。一方、本発明の範囲を満たさない試験材No.21〜27は以下の結果となった。なお、試験材No.1〜13は、材料を変えて鍛造条件は同一としたものであり、試験材No.14〜27は、材料は同一で鍛造条件を変えたものである。
No.21は、鍛造開始温度が下限値未満のため、m3の面およびm1の面のGSが上限値を超え、引張強度、耐溶接割れ性および耐SCC性に劣った。
No.22は、1面あたりの鍛錬比が上限を超えるため、2面目の鍛造のときに座屈が発生した。よって、結晶粒の測定および評価は行なわなかった。
No.23は、1面あたりの鍛錬比が上限を超えるため、また、鍛造面数が2のため、結晶粒が曲がりを有さず、また、m3の面のGLが上限値を超え、耐溶接割れ性および耐SCC性に劣った。
No.24は、1面あたりの鍛錬比が上限を超えるため、また、鍛造面数が2のため、結晶粒が曲がりを有さず、また、m3の面のGLが上限値を超え、m1の面のGLが下限値未満となり、耐溶接割れ性および耐SCC性に劣った。
No.25は、鍛造面数が2のため、結晶粒が曲がりを有さず、また、m3の面およびm1の面のGSが上限値を超え、引張強度、耐溶接割れ性および耐SCC性に劣った。
No.26は、鍛造開始温度が上限値を超えるため、バーニングが発生した。よって、結晶粒の測定および評価は行なわなかった。
No.27は、1面あたりの鍛錬比が上限を超えるため、また、鍛造面数が2のため、結晶粒が曲がりを有さず、また、m3の面のGLが上限値を超え、m1の面のGLおよびGSが下限値未満となり、耐溶接割れ性および耐SCC性に劣った。
1 溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材
4 結晶粒
7 試験片
8 溶接材(7N01合金)
9 手動TIG溶接による溶接部
21 シェアバンド
22 デッドメタル
50 鋳塊ブロック
100 鍛伸材

Claims (3)

  1. 3面鍛造によって製造される溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材であって、
    前記溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の組織において、
    長軸の結晶粒長さをGLμm、短軸の結晶粒長さをGSμmとしたときに、シェアバンドが形成された部位で観察される互いに垂直な3方向の面のうち、2面は下記式で表され、他の一面は、結晶粒が長軸方向に曲がりを有することを特徴とする溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材。
    50≦GL≦500 ・・・(1)
    10≦GS≦180 ・・・(2)
    GS≦GL ・・・(3)
  2. 前記溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材が、7000系のアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1に記載の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材。
  3. 請求項1または請求項2に記載の溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の製造方法であって、
    アルミニウム合金の鋳塊を鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳塊を均質化熱処理する均質化熱処理工程と、
    前記均質化熱処理した鋳塊を加熱する加熱工程と、
    前記加熱された鋳塊を350〜460℃で鍛造して鍛造材とする鍛造工程と、
    前記鍛造材に対して、T6処理またはT7処理を行う調質工程と、を行い、
    前記鍛造工程は、前記鍛造前の鋳塊が直方体であり、上面をA面、側面の1つをB面、B面に隣り合う側面の1つをC面としたときに、前記各面の鍛錬比が1.0Sを超え3.5S以下となるように、B面およびC面の鍛造と、A面およびC面の鍛造と、A面およびB面の鍛造とをこの順に行う3面鍛造を1回以上行なうことを特徴とする溶接構造部材用アルミニウム合金鍛造材の製造方法。
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