JP6181536B2 - 銀付人工皮革の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1では、表皮層を溶剤によって溶解させて高い通気性を得る方法が開示されている。しかしこの方法では表面層を溶剤によって溶解するため、表面外観の色がその工程で濃くなったり、つやが消失しマット調の表面になる等、高い質感を有する天然皮革外観の人工皮革を製造することが困難であった。
滑らかな外観を有し、高い工業生産性を満足する銀付人工皮革でありながら、高い通気性・透湿性と共に高い意匠性を有する人工皮革の開発が待たれていたのである。
また、表皮層が最表面層と接着層とからなるものであることや、さらに離型紙上に最表面層と接着層とを順に形成して第1熱処理を行って表皮層とし、基体層と表皮層とを貼り合わせた後に第2熱処理するものであることが好ましい。
本発明の銀付人工皮革の製造方法は、基体層の表面に高分子弾性体溶液を塗布し乾燥して表皮層を形成する銀付人工皮革の製造方法である。そして、本発明にて用いられる高分子弾性体溶液は、マイクロカプセルと高沸点溶剤を含有する溶液であり、この溶液に用いられる高沸点溶剤の沸点は、マイクロカプセルの膨張開始温度よりも高いものであることが必要である。そして本発明の製造方法では、2段階以上の熱処理を行うことを必須とし、マイクロカプセルの膨張開始温度以上、高沸点溶剤の沸点以下の温度での第1熱処理と、その後の高沸点溶剤を揮発させる第2熱処理を行う製造方法である。
ここで基体層となる人工皮革用の基材に用いられる繊維としては、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの再生繊維、あるいは天然繊維などの単独または混合した繊維を挙げる事ができる。さらに好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド繊維や、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維を挙げる事ができる。また柔軟な風合いとするためには極細繊維からなる合成繊維であることが好ましく、海島構造繊維から海成分を溶解除去した極細繊維であることが最も好ましい。本発明の基体層は、このような繊維をカード、ウェバー、レーヤー、ニードルパンチングなど公知の手段で作製した絡合繊維不織布であることが好ましい。
また、さらに表面の質感を向上させるためには、基体層の表面に通気性を有する多孔層を付与することも好ましい。ここで多孔層としては、DMF100%溶解性の湿式凝固用ポリウレタンを用い、水、DMF混合溶液中で凝固させる層であることが好ましい。
ここで高分子弾性体溶液に用いられる高分子弾性体としては、人工皮革の表皮層に用いられる樹脂であれば特に制限は無い。具体的には、ポリカーボネート系、エーテル系、エステル系、エステルエーテル系の各種ウレタン樹脂や、シリコン変性ポリウレタン樹脂等が好ましく使用される。また車両内装用途であれば耐久性を考慮しポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を使用するなど、使用用途により適宜選択することが好ましい。
より具体的には、高分子弾性体溶液中のマイクロカプセルとして、「マイクロスフェアー」(松本油脂株式会社製)を用いた場合、好ましい有機溶剤としては、トルエン、キシレン、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メトキシプロピルアセテート、酢酸エチル、メチルエチルケトン等を挙げることができ、中でもイソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メトキシプロピルアセテートを用いることが好ましい。
JIS L1096 B法(ガーレー形法)に準じて、ガーレー式デンソメーターを使用し、50ccの空気が通過するのに要した時間を測定した。
JIS K6549に準じて行った。
表皮層を貼り付けた人工皮革(幅;25mm、長さ;90mm)の試験片の両端各20mmを残し接着剤を塗布する。その塗布面に同サイズ(幅;25mm、長さ;90mm)の塩ビシートを人工皮革に合わせ貼り合わせ、接着剤を硬化させる。
端末片側の接着剤が塗布されていない人工皮革と塩ビシートそれぞれを、引張り試験機で50mm/minの速度で引っ張り、その強度を測定した。但しこの時、人工皮革と塩ビシートの界面で剥がれが起きていない事を確認し、読み取ったデータは、幅10mm当たりの数値に換算した記録した。
JIS K6550に準じて行った。なお加圧加重は、120g/cm2とした。
JIS K6550に準拠しサンプルを作成し、引張り試験機にかけ50mm/minの速度で引っ張った。破断するまでの最大応力を引張り強度とした。その破断時における歪み分を伸度とした。
JIS K6550に準拠しサンプルを作成し、引張り試験機にかけ100mm/minの速度で引裂き、切断時までの最大荷重を読み取った。
<基体層(多孔層あり)の作製>
ナイロン6(融点220℃)と低密度ポリエチレンを50/50で混合、エクストルーダーで溶融、混合し290℃で混合紡糸し、延伸し、油剤を処理しカットして、5.5dtex、51mmの海島繊維を得た。これをカード、クロスラッパー、ニードルロッカー、カレンダーの工程を通し、単位面積あたりの重さ(目付け)310g/m2、厚さ1.35mm、見掛け密度0.21g/cm3の繊維集合体を得た。
最表面層用の溶液は、ポリウレタン溶液100部、メトキシプロピルアセテート(高沸点有機溶剤、沸点146℃)80部、イソプロピルアルコール(低沸点有機溶剤、沸点82.5℃)20部、マイクロカプセル(マツモトマイクロスフェアーF−46、松本油脂社製、膨張開始温度95℃、最高膨張温度135℃)を1.0部混合し、濃度15%の溶液を作成した。この時の溶液温度と溶液粘度を測定したところ、15.7℃、1000mPa・sであった。
その後、乾燥チャンバーにて、140℃で2分間乾燥して厚さ0.02mmの高分子弾性体を主成分とする最表面層を形成した。
この処理液を目付け125g/m2にてコーティングし、接着層とした。
その後、温度70℃の雰囲気下で2日間放置した後、離型紙を剥ぎ取り、銀付人工皮革を得た。
できあがった銀付人工皮革は、通気性188sec/50cc、透湿速度6.4g/m2・24Hr、剥離強度は41N/cm、引張強度(タテ)156N/cm、引張強度(ヨコ)110N/cm、破断伸度(タテ)81%、破断伸度(ヨコ)125%、引き裂き強度53N、厚み1.2mmであり、外観にも優れながら、カジュアルシューズ用途にも十分に使用できる強度を確保していた。
<基体層の作製>
実施例1と同様にして、繊維集合体に10重量%のポリウレタン(DIC(株)社製、クリスボンTF50P、融点180℃)DMF溶液に浸漬させた後、繊維集合体表面の余分な溶液をかきとり、基材厚さの90%でスクイズするが、その表面にはウレタン溶液をコーティングすることなく、5%のDMFを含んだ水中に浸漬してポリウレタンを凝固させ、DMFを水で十分に洗浄除去した後120℃で乾燥して、多孔質皮膜層を表面に有しない繊維質基体層を得た。
得られた銀付人工皮革は、中間層の多孔層が無いものの、通気度は62sec/50cc、剥離強度は17N/cmであり、表面外観的にも優れたものであった。ただしカジュアルシューズ用途としては、やや機械物性に物足りない物であった。
実施例1と同様に多孔質皮膜層を表面に有する繊維質基体層を作成し、その後、転写貼り合わせラインにて接着層にてマイクロカプセルを5.0部添加する代わりに、20部に増量して添加し、それ以外は実施例1と同様に作製して銀付人工皮革を得た。
得られた人工皮革は、通気度40sec/50cc、剥離強度は12N/cmであり、表面外観的にも優れたものであった。ただし婦人靴シューズ用途としてもやや機械物性に物足りない物であった。
実施例1において、最表面層用の溶液及び接着層用の溶液処方中の高沸点有機溶剤(メトキシプロピルアセテート;沸点146℃)を、低沸点有機溶剤(イソプロピルアルコール;沸点82.5℃、またはMEK;沸点80℃)に入れ替えた以外は、実施例1と同様にして銀付人工皮革を得た。
出来上がった銀付人工皮革は、剥離強度こそ37N/cmと優れたものであったが、通気性は1200sec以上/50ccと、通気性に劣る物であった。
Claims (8)
- 基体層の表面に高分子弾性体溶液を塗布し乾燥して表皮層を形成する銀付人工皮革の製造方法であって、高分子弾性体溶液がマイクロカプセルと高沸点有機溶剤を含有し、マイクロカプセルの膨張開始温度よりも高沸点有機溶剤の沸点が高く、かつマイクロカプセルの膨張開始温度以上、高沸点有機溶剤の沸点以下の温度で第1熱処理し、その後高沸点有機溶剤を揮発させる第2熱処理を行うことを特徴とする銀付人工皮革の製造方法。
- 第1熱処理が熱風乾燥である請求項1記載の銀付人工皮革の製造方法。
- 第2熱処理が加熱ロールによるものである請求項1または2記載の銀付人工皮革の製造方法。
- 第2熱処理の加熱ロールが基体層と表皮層をニップするものである請求項3記載の銀付人工皮革の製造方法。
- 高分子弾性体溶液の塗布時の粘度が200mPa・s以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の銀付人工皮革の製造方法。
- 高沸点有機溶剤の沸点が、マイクロカプセルの最高膨張温度よりもさらに高い温度である請求項1〜5のいずれか1項記載の銀付人工皮革の製造方法。
- 高分子弾性体溶液が、高沸点有機溶剤と低沸点有機溶剤を含有するものである請求項1〜6のいずれか1項記載の銀付人工皮革の製造方法。
- 表皮層が、最表面層と接着層とからなるものである請求項1〜7のいずれか1項記載の銀付人工皮革の製造方法。
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