以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド建設機械の制御システム100について説明する。
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド建設機械の制御システム100のうち流体圧制御システム101について説明する。流体圧制御システム101は、油圧ショベル等の油圧建設機械の動作を制御する装置である。例えば、流体圧制御システム101は、油圧ショベルの掘削アタッチメントを駆動する各アクチュエータの作動を制御する装置である。以下では、流体圧制御システム101が油圧ショベルのブーム1(負荷)を駆動するブームシリンダ10の伸縮作動を制御する場合について説明する。
流体圧制御システム101は、アクチュエータとしてのブームシリンダ10と、ブームシリンダ10へ作動油(作動流体)を供給する流体圧ポンプとしてのメインポンプ21と、を備える。流体圧制御システム101はさらに、パイロットポンプ22と、メイン制御弁30と、メイン通路23と、第1通路41と、第2通路42と、コントローラ50と、を備える。
ブームシリンダ10の内部は、ブームシリンダ10内を摺動自在に移動するピストンロッド13によって、ロッド側圧力室11とボトム側圧力室12とに区画されている。ブームシリンダ10の外側に位置するピストンロッド13の先端には、ブーム1が連結されている。
メインポンプ21及びパイロットポンプ22は、作動油を吐出する油圧供給源であって、斜板の傾斜角が調整可能な可変容量型ポンプである。メインポンプ21及びパイロットポンプ22は、ハイブリッド建設機械に搭載された原動機としてのエンジン8によって駆動される。エンジン8には、エンジン8の回転数を検出する回転数検出器としての回転数センサ9が設けられる。
メインポンプ21の斜板の傾斜角は、傾斜角制御器20によって制御される。傾斜角制御器20は、コントローラ50により制御される。メインポンプ21の斜板の傾斜角を制御することでメインポンプ21の容量が変化し、メインポンプ21が吐出可能な作動油の流量の最大値が変化する。
メインポンプ21から吐出された作動油は、メイン通路23を通じてメイン制御弁30に供給される。このようにメインポンプ21とメイン制御弁30とは、メイン通路23によって接続されている。メイン通路23には、メインポンプ21から吐出された作動油の他に、アシスト回生システム102(図2参照)のアシストポンプ61から吐出された作動油がアシスト通路62を通じて導かれる。また、メイン通路23には第1回生通路75が接続され、メインポンプ21から吐出された作動油は、第1回生通路75を通じてアシスト回生システム102の回生モータ71に供給される。
メイン制御弁30とブームシリンダ10のロッド側圧力室11とは第1通路41によって接続され、メイン制御弁30とブームシリンダ10のボトム側圧力室12とは第2通路42によって接続される。第2通路42には、ボトム側圧力室12から排出された作動油の一部が流れ込む第2回生通路72が接続される。第2回生通路72に流入した作動油は、アシスト回生システム102(図2参照)の回生モータ71に供給される。
メイン制御弁30は、ブームシリンダ10に対する作動油の給排を切り換えるものである。メイン制御弁30は、油圧ショベルの乗務員が操作レバーを手動操作することに伴ってパイロットポンプ22からパイロット弁24を通じてパイロット室31,32に供給される作動油のパイロット圧によって操作される。
パイロット室31にパイロット圧が供給された場合には、メイン制御弁30は位置aに切り換わる。これにより、メインポンプ21から吐出される作動油が第1通路41を通じてロッド側圧力室11に供給され、ボトム側圧力室12の作動油が第2通路42を通じてタンクTへと排出される。その結果、ブームシリンダ10内のピストンロッド13が図1中下側に移動し、ブームシリンダ10が収縮して、ブーム1が下降する。
パイロット室32にパイロット圧が供給された場合には、メイン制御弁30は位置bに切り換わる。これにより、メインポンプ21から吐出される作動油が第2通路42を通じてボトム側圧力室12に供給され、ロッド側圧力室11の作動油が第1通路41を通じてタンクTへと排出される。その結果、ブームシリンダ10内のピストンロッド13が図1中上側に移動し、ブームシリンダ10が伸長して、ブーム1が上昇する。
一方、パイロット室31,32にパイロット圧が供給されない場合には、メイン制御弁30は位置cに切り換わる。これにより、ブームシリンダ10に対する作動油の給排が遮断される。その結果、ブームシリンダ10の伸縮が停止し、ブーム1は所定位置に保持される。
このように、メイン制御弁30は、ブームシリンダ10を収縮させる収縮位置a、ブームシリンダ10を伸長させる伸長位置b、及びブームシリンダ10の負荷を保持する遮断位置cの3つの切り換え位置を有している。
流体圧制御システム101は、図2に示すアシスト回生システム102をさらに備える。次に、図2を参照して、アシスト回生システム102について説明する。
アシスト回生システム102は、メインポンプ21から吐出される作動油又はブームシリンダ10収縮作動時にボトム側圧力室12から排出される作動油の油圧エネルギを電気エネルギとして回収する回生制御と、ブームシリンダ10伸長作動時に補助力を付与するアシスト制御と、を実行する。
アシスト回生システム102は、回生モータ71と、モータジェネレータ81と、バッテリ91と、インバータ92と、アシストポンプ61と、第1回生通路75と、第2回生通路72と、アシスト通路62と、を備える。
モータジェネレータ81は、バッテリ91の電力を駆動源として回転してアシストポンプ61を駆動する電動機としての機能と、回生モータ71の回転によって発電する発電機としての機能と、を有する回転電機である。
モータジェネレータ81、回生モータ71、及びアシストポンプ61は、同軸回転する。モータジェネレータ81の回転軸が回転すると、回生モータ71及びアシストポンプ61の回転軸が連係して回転する。同様に、回生モータ71の回転軸が回転すると、モータジェネレータ81及びアシストポンプ61の回転軸が連係して回転する。
回生モータ71は、斜板の傾斜角を制御することで、出力トルクの制御が可能な可変容量型モータである。回生モータ71は、メインポンプ21から吐出され第1回生通路75を通じて供給される作動油、又は、ブームシリンダ10のボトム側圧力室12から排出され第2回生通路72を通じて供給される作動油によって駆動される。回生モータ71の斜板の傾斜角は、傾斜角制御器73によって制御される。傾斜角制御器73は、コントローラ50により制御される。回生モータ71の斜板の傾斜角を制御することで回生モータ71の容量が変化し、回生モータ71が発生可能なトルクの最大値が変化する。
第1回生通路75には、回生モータ71に対する作動油の供給と停止を切り換える第1切換弁76が設けられる。第1切換弁76は、回生モータ71に作動油を供給する連通位置fと、回生モータ71への作動油の供給を停止する遮断位置gと、を有する電磁弁であり、コントローラ50によって位置が切り換えられる。
第2回生通路72には、回生モータ71に対する作動油の供給と停止を切り換える第2切換弁74が設けられる。第2切換弁74は、回生モータ71に作動油を供給する連通位置dと、回生モータ71への作動油の供給を停止する遮断位置eと、を有する電磁弁であり、コントローラ50によって位置が切り換えられる。
アシストポンプ61は、斜板の傾斜角が調整可能な可変容量型ポンプである。アシストポンプ61は、モータジェネレータ81によって駆動され、アシスト通路62を通じてメイン通路23に作動油を供給する。アシストポンプ61の斜板の傾斜角は、傾斜角制御器63によって制御される。傾斜角制御器63は、コントローラ50により制御される。アシストポンプ61の斜板の傾斜角を制御することでアシストポンプ61の容量が変化し、アシストポンプ61が吐出可能な作動油の流量の最大値が変化する。
アシスト通路62には、メイン通路23への作動油の供給と停止を切り換える第3切換弁64が設けられる。第3切換弁64は、メイン通路23に作動油を供給する連通位置hと、メイン通路23への作動油の供給を停止する遮断位置iと、を有する電磁弁であり、コントローラ50によって位置が切り換えられる。
モータジェネレータ81は、インバータ92を介してバッテリ91に接続されている。
インバータ92は、コントローラ50によって制御され、直流を交流に又は交流を直流に変換する。モータジェネレータ81を電動機として機能させる場合には、バッテリ91から出力される直流電力が任意の周波数の三相交流電力に変換され、モータジェネレータ81に供給される。一方、モータジェネレータ81を発電機として機能させる場合には、モータジェネレータ81から出力される三相交流電力が直流電力に変換され、バッテリ91に供給される。バッテリ91については、後に詳しく説明する。
図1及び図2を参照して、ハイブリッド建設機械の流体圧制御システム101の作用について説明する。
まず、ブーム1の下降時に、必要に応じて実施されるアシスト回生システム102による回生制御について説明する。
油圧ショベルの乗務員によってブームシリンダ10を収縮させるレバー操作が行われると、メイン制御弁30は収縮位置aに切り換わる。これにより、ブームシリンダ10のロッド側圧力室11に作動油が供給されるとともに、ボトム側圧力室12から作動油が排出される。
この時、バッテリ91を充電する必要がある場合、第2切換弁74が連通位置dに切り換えられ、ボトム側圧力室12から排出された作動油の一部が、第2回生通路72を通じて回生モータ71に供給される。同時に、アシストポンプ61の容量が最小となるように、アシストポンプ61の斜板の傾斜角が制御される。
これにより、回生モータ71に同期してモータジェネレータ81が回転するため、モータジェネレータ81にて発電が行われ、バッテリ91が充電される。つまり、ブームシリンダ10から排出される作動油の油圧エネルギが電気エネルギに変換される。
一方、バッテリ91を充電する必要がない場合には、第2切換弁74が遮断位置eに切り換えられ、ブームシリンダ10のボトム側圧力室12から排出された作動油は全て第2通路42を通じてタンクTへと排出される。
次に、メインポンプ21から供給される作動油によって実施されるアシスト回生システム102による回生制御について説明する。
油圧ショベルの乗務員によるレバー操作がない状態では、メイン制御弁30は遮断位置cとなり、油圧ショベルに搭載されるブームシリンダ10を含む各アクチュエータは停止した状態となる。この状態でも、メインポンプ21は、エンジン8の回転によって駆動を維持し、スタンバイ状態となる。
油圧ショベルの乗務員によるレバー操作がない状態、つまり油圧ショベルに搭載されるブームシリンダ10を含む各アクチュエータが停止した状態が所定時間継続した場合には、第2切換弁74が遮断位置eに切り換えられると共に、第1切換弁76が連通位置fに切り換えられ、スタンバイ状態のメインポンプ21から吐出された作動油は、第1回生通路75を通じて回生モータ71に供給される。同時に、アシストポンプ61の容量が最小となるように、アシストポンプ61の斜板の傾斜角が制御される。
これにより、回生モータ71に同期してモータジェネレータ81が回転するため、モータジェネレータ81にて発電が行われ、バッテリ91が充電される。このように、スタンバイ状態のメインポンプ21から吐出される作動油は、タンクに戻されるのではなく、回生モータ71に導かれて有効利用される。つまり、メインポンプ21から吐出される作動油の油圧エネルギが電気エネルギに変換される。
以上のように、油圧ショベルの乗務員によるレバー操作がない状態が所定時間継続した場合には、メインポンプ21から吐出される作動油にて回生モータ71が回転することによってモータジェネレータ81が発電機として機能してバッテリ91が充電されるスタンバイ充電が行なわれる。スタンバイ充電の際には、メインポンプ21の容量がスタンバイ充電に最適となるように制御されると共に、エンジン8の回転数もスタンバイ充電に最適となるように制御されるため、メインポンプ21から吐出される作動油の流量は変動の少ない安定したものとなる。このように、スタンバイ充電では、メインポンプ21から安定して吐出される作動油によって回生が行なわれるため、ブーム1の下降時に行われる回生と比較して、充電電流の変動が小さく、安定した連続充電が行なわれる。
次に、ブーム1の上昇時に、必要に応じて実施されるアシスト回生システム102によるアシスト制御について説明する。
油圧ショベルの乗務員によってブームシリンダ10を伸長させるレバー操作が行われると、メイン制御弁30は伸長位置bに切り換わる。これにより、ブームシリンダ10のボトム側圧力室12に作動油が供給されるとともに、ロッド側圧力室11の作動油が第1通路41を介してタンクTへと排出される。
メインポンプ21等を駆動するエンジンは運転効率の良い所定の回転速度及び負荷で運転しているため、ブームシリンダ10を素早く伸長させたい場合に、メインポンプ21による吐出流量のみでは、ボトム側圧力室12に供給する作動油の流量が不足することがある。そのような場合に、アシスト回生システム102によるアシスト制御が実行される。
アシスト制御時には、第3切換弁64を連通位置hに切り換えると共に、バッテリ91によってモータジェネレータ81を電動機として駆動して、アシストポンプ61を駆動する。同時に、回生モータ71のトルクが最小となるように、回生モータ71の斜板の傾斜角が制御される。これにより、アシストポンプ61から吐出された作動油はアシスト通路62を通じてメイン通路23に合流するため、ブームシリンダ10伸長作動時にアシストポンプ61による補助力を付与することができる。したがって、ブームシリンダ10を素早く伸長させることが可能となる。このように、モータジェネレータ81が電動機として機能する場合には、バッテリ91がブームシリンダ10(駆動体)の駆動源として機能する。
ハイブリッド建設機械の制御システム100は、バッテリ91の充電状態(SOC:State Of Charge)を推定するSOC推定装置103を備える。以下では、図3を参照して、SOC推定装置103について説明する。
バッテリ91は、例えば、定格電池容量が50Ah(アンペアアワー)の二次電池である。バッテリ91は充電と放電が可能な多数のセルを有し、各セルは直列に接続されている。バッテリ91としては、例えばリチウムイオン電池が用いられる。
SOC推定装置103は、バッテリ91の状態を検出する電池状態検出部93と、バッテリ91のSOCを算出するSOC演算部94と、バッテリ91の満電池容量を推定する電池容量推定部95と、を備える。なお、SOC推定装置103は、コントローラ50内に設けるようにしてもよい。
電池状態検出部93は、バッテリ91の電圧を検出する電圧検出部93Aと、バッテリ91の電流を検出する電流検出部93Bと、バッテリ91の温度を検出する温度検出部93Cと、を備える。電圧検出部93A、電流検出部93B、及び温度検出部93Cは、それぞれ数msの測定周期で、バッテリ91の電圧、電流、及び温度を検出する。例えば、電圧検出部93Aは、バッテリ内部に設けられたセルの電極間の電圧(セル電圧)を検出する。電流検出部93Bは、バッテリ91の各セルに流れる電流の大きさを検出する。温度検出部93Cは、バッテリ91のセルのケースの表面温度を検出する。
電圧検出部93A、電流検出部93B、及び温度検出部93Cの検出結果は、SOC演算部94へと出力される。バッテリ91の電流において、充電時の充電電流は正の値で示し、放電時の放電電流は負の値で示す。
SOC演算部94は、第2SOC演算部としての開放電圧SOC演算部94Aと、第1SOC演算部としての電流積算SOC演算部94Bと、の2つの演算部を備える。
開放電圧SOC演算部94Aは、電圧検出部93Aにより検出されるバッテリ91の開放電圧に基づいて開放電圧SOCを算出するものである。開放電圧とは、バッテリ91の充電及び放電が停止しているときのセル電圧のことである。
開放電圧SOC演算部94Aには、バッテリ温度毎に、開放電圧と開放電圧SOCとを互いに対応付けた開放電圧SOCマップ(図8参照)が記憶されている。開放電圧SOC演算部94Aは、温度検出部93Cからバッテリ温度を取得すると共に、電圧検出部93Aからバッテリ91の開放電圧を取得し、開放電圧SOCマップを参照して、温度と開放電圧とに対応付けられた開放電圧SOCを算出する。
このように、開放電圧SOC演算部94Aでバッテリ温度毎の開放電圧SOCマップを用いることによって、開放電圧SOCの算出精度を高めることができる。開放電圧SOC演算部94Aは、算出された開放電圧SOCを電流積算SOC演算部94Bと電池容量推定部95に出力する。
電流積算SOC演算部94Bは、バッテリ91のSOCの初期値(SOC初期値)と、電流検出部93Bにより検出されるバッテリ電流の積算値と、バッテリ91の満電池容量と、に基づいて電流積算SOCを算出する。例えば、開放電圧SOC演算部94Aから出力される開放電圧SOCをSOC初期値として設定する。SOC初期値は、電流検出部93Bにより電流の積算を開始する前に求められる。バッテリ91を満充電させてSOC初期値を100%としてもよいし、SOC初期値はどのように求めてもよい。具体的には、次式(1)により電流積算SOCを算出する。
本実施形態では、電流積算SOC演算部94Bは、バッテリ91が放電又は充電をしている充放電時間(累積期間)(hr)において、測定周期毎の電流値(A)を積算して電流の積算量を算出する。そして電流積算SOC演算部94Bは、電流の積算量をバッテリ91の満電池容量で除算して積算SOCを求め、その積算SOCをSOC初期値に加算して電流積算SOCを算出する。なお、電流積算SOCを算出するときに用いる(1)式中の満電池容量の値は、後述するようにバッテリ91の劣化に応じて補正される。
SOC演算部94にて算出された開放電圧SOCと電流積算SOCは、コントローラ50に出力される。コントローラ50は、開放電圧SOC又は電流積算SOCと充放電制限閾値との比較に基づいて、バッテリ91の充放電に制限をかける。例えば、電流積算SOCが充放電制限閾値より高い場合には、バッテリ91の過充電を防止するために、インバータ92を制御するなどして、バッテリ91を充電しないようにする。電流積算SOCが充放電制限閾値より低い場合には、バッテリ91が放電しないようにする。
一般的に、バッテリ91の放電電流の大きさが一定である場合には、充放電の繰り返しに伴いバッテリ91の劣化が大きくなるほど、バッテリ91の放電時間は短くなり、満充電時の満充電容量が低下する。そこで、電池容量推定部95は、二次電池の劣化度合に応じてバッテリ91の満電池容量を推定する。電池容量推定部95は、バッテリ91の総充放電時間が所定時間に達したか否かを判定する総充放電時間判定部95Aと、バッテリ91がスタンバイ充電状態か否かを判定するスタンバイ充電判定部95Bと、を備える。
次に、図4〜7を参照して、バッテリ91のSOCを推定するSOC推定方法について説明する。
まず、図4〜6を参照して、SOCの算出方法について説明する。図4はSOC推定装置103のSOC演算部94にて実行される演算処理の手順を示すフローチャートであり、図5は開放電圧SOCの演算処理の手順を示すフローチャートであり、図6は電流積算SOCの演算処理の手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、ステップ11では、油圧ショベルのイグニッションキーがONに設定され、SOC推定装置103が起動する。
ステップ12では、開放電圧SOC演算部94Aにて、SOC初期値として開放電圧SOCを演算する。このように、油圧ショベルの起動時には、バッテリ91の充放電が行われる前に、開放電圧SOCが演算される。以上のステップ11及び12は、油圧ショベルの起動時にのみ行われる。
以下に、図5を参照して、開放電圧SOC演算部94Aにて実行される開放電圧SOCの演算処理(ステップ12及びステップ16の演算処理)について説明する。
ステップ51では、温度検出部93Cからバッテリ温度を取得し、複数のセルの平均温度Taを算出する。
ステップ52では、電圧検出部93Aからバッテリ91のセル電圧を開放電圧Vbとして取得する。
ステップ53では、開放電圧SOCマップ(図8参照)を参照して、バッテリ91の平均温度Taと開放電圧Vbとに対応付けられた開放電圧SOCを算出する。例えば、セルの平均温度Taが30℃であり、開放電圧Vbが3.95Vであった場合には、図8の開放電圧SOCマップから、開放電圧SOCは80%と算出される。以上にて開放電圧SOC演算処理が終了し、図4に示した処理に戻る。セル平均温度Taが30℃以外にも、例えば、0℃,10℃,20℃の場合などの開放電圧Vbに対する開放電圧SOCのマップを複数備える。算出したセル平均温度Taと近い温度のマップを用いて開放電圧SOCを算出する。
ステップ13では、バッテリ91の充放電が行われているか否かを判定する。具体的には、電流検出部93Bから取得したバッテリの電流Ibが、バッテリ91の充電又は放電の停止を判定するための放電閾値及び充電閾値を超えているか否かを判定する。例えば、充電閾値は5Aに設定され、放電閾値は−5Aに設定される。
ステップ13にて、バッテリ91の電流Ibが放電閾値から充電閾値までの範囲を超えている、つまりバッテリ91の充放電が行われていると判定された場合には、ステップ14へ進み、電流積算SOC演算部94Bにて電流積算SOCを演算する。
以下に、図6を参照して、電流積算SOC演算部94Bにて実行される電流積算SOCの演算処理(ステップ14の演算処理)について説明する。
ステップ61では、電流検出部93Bから測定周期毎にバッテリ91の電流Ibを取得する。
ステップ62では、上式(1)により、バッテリ91の電流Ibの積算値に基づく積算SOCを算出する。具体的には、累積期間内において、測定周期に電流Ibを乗算した各電流量を加算して、電流の積算値(バッテリー電流×充放電期間)を算出する。そして、電流の積算値をバッテリ91の満電池容量で除算して積算SOCを算出する。バッテリ91の満電池容量は、初期値はバッテリ91の定格電池容量を用いる。
累積期間とは、電流Ibが放電閾値から充電閾値までの演算停止範囲を超えてから、演算停止範囲内の電流Ibが所定時間継続するまでの期間である。すなわち、累積期間は、バッテリ91の充電又は放電が開始してからバッテリ91の充電又は放電が終了するまでの期間のことである。
ステップ63では、ステップ12で算出されたSOC初期値としての開放電圧SOCにステップ62で算出された積算SOCを加算して電流積算SOCを算出する。例えば、バッテリ91の満電池容量が定格電池容量の50Ah、ステップ12で算出された開放電圧SOCが70%であり、10Aの放電電流で1時間放電した場合には、次式(2)のとおり、電流積算SOCは50%と算出される。以上にて電流積算SOC演算処理が終了し、図4に示した処理に戻る。
ステップ14による電流積算SOCの算出は、ステップ13にてバッテリ91の電流Ibが放電閾値から充電閾値までの範囲を超えていない、つまりバッテリ91の充放電が行われていないと判定されてステップ15に進み、その状態が3分間継続したと判定されるまで行われる。継続時間は、バッテリ91の充放電の停止時にバッテリ91の内部抵抗の変化による電流の低下や上昇特性などに応じて決定される。
ステップ15にて、バッテリ91の充放電が行われていない状態が3分間継続したと判定された場合には、ステップ16へと進み、開放電圧SOCが新たに算出される。つまり、バッテリ91の充放電が行なわれていない状態が3分間継続しない限り、バッテリ91のSOCは電流積算SOC演算部94Bにより算出され続けることになる。ステップ16での開放電圧SOCの算出方法は、図5を参照して説明した上述の方法と同じである。ステップ16の後は、ステップ13へと戻って処理が繰り返される。
ステップ16にて開放電圧SOCが算出された後、ステップ14にて上式(1)を用いて電流積算SOCを算出する際には、ステップ12で算出された開放電圧SOCではなく、ステップ16にて算出された開放電圧SOCがSOC初期値として用いられる。換言すれば、ステップ14にて電流積算SOCを算出する際に、ステップ12で算出された開放電圧SOCを用いるのは、油圧ショベル起動後に初めて電流積算SOCを算出するときだけである。
以上のように、SOC演算部94は、バッテリ91の充放電状態に応じて、電流積算SOC又は開放電圧SOCを算出する。算出された電流積算SOC及び開放電圧SOCは、コントローラ50(図3参照)に出力される。コントローラ50は、開放電圧SOC又は電流積算SOCと充放電制限閾値とを比較し、開放電圧SOC又は電流積算SOCが充放電制限値を超えた場合には、バッテリ91の充放電を強制的に禁止してバッテリ91の過充電及び過放電を防止する。
次に、図7を参照して、バッテリ91の満電池容量を推定する方法について説明する。図7はSOC推定装置103の電池容量推定部95にて実行される演算処理の手順を示すフローチャートである。
以下の処理は油圧ショベルのイグニッションキーがONに設定され、SOC推定装置103が起動した後に行われる。
ステップ71では、バッテリ91の総充放電時間が所定時間に達したか否かを判定する。具体的には、SOC推定装置103の制御基板の記憶部にバッテリ91の充放電時間を記憶しておき、その記憶された充放電時間の総計が予め定められた所定時間に達したか否かを判定する。
ステップ71の条件が成立した場合、つまりステップ71にてバッテリ91の総充放電時間が所定時間に達したと判定された場合には、バッテリ91の満電池容量を推定する電池容量推定状態へと移行する。所定時間は、充放電の繰り返しに伴うバッテリ91の劣化度合に応じて決められ、例えば数ヶ月に相当する時間が設定される。所定時間としては、充放電時間の総計を算出するのではなく、単なる時間経過に基づいて所定時間を判定するようにしてもよい。
ステップ72では、バッテリ91がスタンバイ充電状態か否かを判定する。スタンバイ充電状態とは、上述したように、油圧ショベルの各アクチュエータが停止した状態で、メインポンプ21から吐出される作動油にて回生モータ71が回転することによってモータジェネレータ81が発電機として機能してバッテリ91が充電されている状態のことである。バッテリ91がスタンバイ充電状態か否かは、第2切換弁74と第1切換弁76(図2参照)のポジションにて判定される。具体的には、コントローラ50からの指令信号によって第2切換弁74が遮断位置eに切り換えられると共に、第1切換弁76が連通位置fに切り換えられた場合には、バッテリ91がスタンバイ充電状態であると判定される。つまり、バッテリ91がスタンバイ充電状態か否かは、コントローラ50から第2切換弁74と第1切換弁76に出力される信号に基づいて判定される。
ステップ72にて、バッテリ91がスタンバイ充電状態でないと判定された場合には、演算処理を終了してステップ71へ戻る。一方、ステップ72にて、バッテリ91がスタンバイ充電状態であると判定された場合には、ステップ73へ進み、電流積算SOC演算部94Bから取得した電流積算SOCと開放電圧SOC演算部94Aから取得した開放電圧SOCとに基づいて満電池容量を推定する。スタンバイ充電状態では、メインポンプ21から安定して吐出される作動油によって回生が行なわれるため、充電電流の変動が小さく、安定した連続充電が行なわれる。したがって、満電池容量の推定をスタンバイ充電状態で行うことによって、バッテリ91に流れる電流を積算するときの測定誤差を抑えることができるため、満電池容量の推定の精度を高めることができる。
図9を参照して、ステップ73での満電池容量の推定方法について説明する。図9は満電池容量の推定方法の手順を示すフローチャートである。
まず、ステップ91では、スタンバイ充電状態において、SOC演算部94からSOC初期値として現状のSOCを取得する。例えば、SOC初期値が50%であるとする。SOC初期値は、開放電圧SOC演算部94Aと電流積算SOC演算部94Bのどちらの演算部で算出したSOCを用いてもよい。
ステップ92では、電流積算SOC演算部94Bからスタンバイ充電が終了した時点での電流積算SOCを取得する。ここで、電流積算SOCを算出する際には、上式(1)中のSOC初期値はステップ91にて取得した値を用いる。例えば、バッテリ91の満電池容量が定格電池容量の50Ahであり、10Aの充電電流で1時間充電した場合には、次式(3)のとおり、電流積算SOCは70%と算出される。
ステップ93では、ステップ91で取得したSOC初期値とステップ92で取得した電流積算SOCとの差分をとり、スタンバイ充電によるバッテリ91の充電量CIを算出する。このように、ステップ93では、電流積算SOCを用いてスタンバイ充電中の所定期間内のバッテリ91の充電量CIを算出する。ここでは、充電量CIは20%と算出される。
ステップ94では、開放電圧SOC演算部94Aからスタンバイ充電が終了した時点での開放電圧SOCを取得する。例えば、セルの平均温度Taが30℃、開放電圧Vbが3.9Vであり、開放電圧SOCマップから、開放電圧SOCが75%と算出されたとする。
ステップ95では、ステップ91で取得したSOC初期値とステップ92で取得した開放電圧SOCとの差分をとり、スタンバイ充電によるバッテリ91の充電量CVを算出する。このように、ステップ94では、開放電圧SOCを用いてスタンバイ充電中の所定期間内のバッテリ91の充電量CVを算出する。ここでは、充電量CVは25%と算出される。
ステップ96では、電流積算SOCから算出されるバッテリ91の充電量CIと開放電圧SOCから算出されるバッテリ91の充電量CVとの比を算出する。ここでは、比は0.8と算出される。
ここで、電流積算SOCの算出式(1)では、後述する記憶部に記憶されているバッテリ91の満電池容量が用いられる。そのため、バッテリ91が劣化して満電池容量が低下すると、電流積算SOCを算出するときの実際の満電池容量は、算出式(1)で用いる満電池容量より小さくなる。したがって、ステップ92で算出された電流積算SOCは、記憶部にバッテリ91の満電池容量を記憶した以降のバッテリ91の劣化が反映されていない値となる。
これに対し、開放電圧SOCの算出手法では、バッテリ91が劣化して満充電容量が低下すると、同じ放電レートで一定時間放電しても、セル電圧はバッテリ91の劣化度合いに応じて低下する。したがって、開放電圧SOCは、バッテリ91の劣化度合が反映された値となる。
このため、電流積算SOCから算出されるバッテリ91の充電量と開放電圧SOCから算出されるバッテリ91の充電量との比は、バッテリ91の劣化度合を表すことになる。
ステップ97では、現在のバッテリ91の満電池容量にステップ96にて算出された比を乗算して、現在のバッテリ91の満電池容量を推定する。ここでは、現在のバッテリ91の満電池容量は40Ahと推定される。このようにして、電流積算SOCから算出される所定期間内のバッテリ91の充電量と開放電圧SOCから算出される所定期間内のバッテリ91の充電量との比に基づいて、バッテリ91の劣化度合に応じた満充電容量が推定される。つまり、電流積算SOC演算部94Bが推定する所定期間内の電流積算SOCと所定期間経過後に開放電圧SOC演算部94Aが推定する開放電圧SOCとを比較することによって、バッテリ91の満充電容量が推定される。
ここで、スタンバイ充電が終了してから所定時間が経過するまでは、セル電圧が安定しないため、正確な開放電圧が検出できないおそれがある。そのため、ステップ94による開放電圧SOCの取得は、スタンバイ充電が終了してから所定時間経過後、例えば数分後に行うことが望ましい。これにより、バッテリ91の満充電容量の推定精度を向上させることができる。ただ、スタンバイ充電が終了してから所定時間が経過するまでにバッテリ91の充放電が行われた場合には、スタンバイ充電中の充電量を正確に把握することが困難となる。したがって、スタンバイ充電が終了してから所定時間が経過して開放電圧SOCを算出するまでは、バッテリ91の充放電を行わないのが望ましい。もしくは、スタンバイ充電が終了してから所定時間が経過するまでにバッテリ91の充放電が行われた場合には、満充電容量の推定を行わないのが望ましい。
ステップ98では、ステップ97で推定されたバッテリ91の推定満充電容量(40Ah)を電流積算SOC演算部94Bに出力し、上式(1)中の満充電容量を推定満充電容量に更新する。つまり、電池容量推定部95(図3参照)は、推定したバッテリ91の推定満充電容量を電流積算SOC演算部94Bに出力し、上式(1)中の満充電容量を推定満充電容量に更新する。ここでは、上式(1)中の満充電容量を定格電池容量の50Ahから推定満充電容量の40Aに更新する。電流積算SOC演算部94Bは、上式(1)を用いて電流積算SOCを算出する際には、ステップ97で推定されたバッテリ91の推定満充電容量を用いる。つまり、電池容量推定部95にてバッテリ91の満充電容量が推定された後は、図4のステップ14にて電流積算SOCを演算する際には、電池容量推定部95にて推定されたバッテリ91の推定満充電容量が用いられる。したがって、満充電容量が更新された後は、電流積算SOC演算部94Bにて演算される電流積算SOC(図4のステップ14にて演算される電流積算SOC)は、バッテリ91の劣化度合が加味された値となる。
SOC推定装置103は、バッテリ91の満充電容量を記憶する記憶部を有している。記憶部は一例としてEEPROMやフラッシュメモリからなり、記憶部は電池容量推定部95により推定された満充電容量を記憶する。電流積算SOC演算部94Bは、記憶部に記憶された満充電容量を用いて、上式(1)より電流積算SOCを算出する。満充電容量を記憶部に記憶しておくことにより、SOC推定装置103を再起動した場合においてもバッテリ劣化を反映させた電流積算SOCを算出することが可能となる。
電流積算SOC演算部94Bにて演算される電流積算SOCはバッテリ91の劣化度合が加味された値となる。そのため、バッテリ91のSOCが精度良く推定されるため、コントローラ50はバッテリ91の劣化度合に応じてバッテリ91の充放電を制限することができる。したがって、バッテリ91の過充電及び過放電を精度良く防止することができるため、バッテリ91の長寿命化が可能となる。従来は、劣化度合を加味したSOCを算出するにはバッテリ91を開放させる必要があった。しかし、本実施形態では、バッテリ91の充放電中(図4のステップ13及び15)にも、バッテリ91を開放させずに精度良くバッテリ91のSOCを推定できる。
ステップ98にて上式(1)中の満充電容量がステップ97にて推定された推定満充電容量に更新された後に、バッテリ91の総充放電時間が所定時間に達しかつバッテリ91がスタンバイ充電状態となった場合について説明する。この場合には、図9に示すフローチャートに従って再びバッテリ91の満電池容量が推定される。その際、ステップ92にて電流積算SOCを算出する際には、上式(1)中の満電池容量として更新された推定満充電容量が用いられる。ここでは、上記具体例で示したように40Ah(図9ステップ97参照)が用いられる。そして、ステップ96にてCIとCVの比が例えば0.9と算出されたとすると、ステップ97では更新された推定満充電容量40Ahと0.9を乗算することによって、バッテリ91の満充電容量が36Ahと推定される。ステップ98では、上式(1)中の満充電容量を40Ahからステップ97で推定された36Ahに再更新する。このように、バッテリ91の総充放電時間が所定時間に達しかつバッテリ91がスタンバイ充電状態となった毎に、バッテリ91の満電池容量が推定される。
ここで、図9のステップ92にて電流積算SOCを算出する際において、上式(1)中の満電池容量として更新された推定満充電容量を用いる代わりに、バッテリ91の定格電池容量を用いるようにしてもよい。この場合には、ステップ97にてバッテリ91の満充電容量の推定値を算出する際には、ステップ96にて算出されたCIとCVの比とバッテリ91の定格電池容量とを乗算する必要がある。
このように、図9のステップ92にて電流積算SOCを算出する際において、上式(1)中の満電池容量の値は、更新された推定満充電容量を用いてもよいし、定格電池容量を用いてもよい。
図7において、ステップ73による満電池容量の推定後、ステップ74にてバッテリ91の総充放電時間のカウントをリセットする。その後、図7に示す演算処理を終了してステップ71へ戻る。
次に、図10を参照して、上記第1実施形態の変形例について説明する。図10は図7のステップ73における満電池容量の推定方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
本変形例では、図7におけるステップ73での満電池容量の推定方法が上記方法と異なる。上記第1実施形態では、図9に示すように、電流積算SOCから算出されるバッテリ91の充電量と開放電圧SOCから算出されるバッテリ91の充電量との比に基づいて、満充電容量を推定するものであった。これに代えて、図10に示す方法にて満電池容量を推定するようにしてもよい。
図10のステップ91,92,94は、図9に示す手順と同じである。
続くステップ96´では、ステップ92で算出された電流積算SOCとステップ94で算出された開放電圧SOCとの差分を算出する。ここでは、差分は5%と算出される。
ステップ97´では、電流積算SOCと開放電圧SOCの差分と満充電容量との関係が規定されたマップを参照して、満電池容量を推定する。マップは実験等によって予め決定され、電池容量推定部95に記憶されている。ここでは、満電池容量はマップから40Ahと推定される。このように、本変形例では、所定期間経過後の電流積算SOCと開放電圧SOCの差分に基づいて、バッテリ91の劣化度合に応じた満充電容量が推定される。
ステップ98では、ステップ97´で推定されたバッテリ91の推定満充電容量(40Ah)を電流積算SOC演算部94Bに出力し、上式(1)中の満充電容量を推定満充電容量に更新する。
以上の第1実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
電流積算SOC演算部94Bは二次電池の劣化度合に応じて推定される満電池容量を用いて電流積算SOCを算出するため、バッテリ91のSOCを精度良く推定することができる。したがって、バッテリ91の過充電及び過放電を精度良く防止することができ、バッテリ91の長寿命化が可能となる。
また、満電池容量の推定は、充電電流の変動が小さく安定した連続充電が行なわれるスタンバイ充電状態にて行われる。したがって、バッテリ91の満電池容量を精度良く推定することができる。
<第2実施形態>
以下、図11及び12を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図11はSOC推定装置103の電池容量推定部95にて実行される演算処理の手順を示すフローチャートである。図7のフローチャートと同じステップには同じ符号を付し、説明は省略する。
上記第1実施形態では、電流積算SOC演算部94Bから取得した電流積算SOCと開放電圧SOC演算部94Aから取得した開放電圧SOCとに基づいて満電池容量を推定するものであった(図7のステップ73)。これに対して、本第2実施形態では、図11のステップ73´に示すように、バッテリ91の内部抵抗と温度に基づいて満電池容量を推定するものである。以下に満電池容量の推定方法について詳しく説明する。
図12を参照して、図11のステップ73´での満電池容量の推定方法について説明する。図12は図11のステップ73´における満電池容量の推定方法の手順を示すフローチャートである。
ステップ121では、電池状態検出部93からバッテリ91の内部抵抗を取得する。
具体的には、電圧検出部93Aにて検出した電圧と電流検出部93Bにて検出した電流とから内部抵抗が検出され、電圧検出部93A及び電流検出部93Bの測定周期毎に電池状態検出部93から内部抵抗を取得する。内部抵抗は、電圧検出部93A及び電流検出部93Bの測定周期毎に取得せずに、所定測定周期毎、例えば10回分の測定周期の移動平均値を取得するようにしてもよい。ここでは、バッテリ91の検出内部抵抗Rdが4.62mΩであるとする。
バッテリ91の開放時の電圧をE0、バッテリ91から負荷Rに電流を供給したときのバッテリ91の端子電圧をE、バッテリ電流をIとすると、検出内部抵抗RdはRd=(E0−E)/Iで求めることができる。また、負荷Rの値が分かっている場合には、バッテリ電流Iを用いずに、検出内部抵抗RdはRd=R×(E/E0−1)で求めることもできる。
ステップ122では、温度検出部93Cからセルの平均温度Taを取得する。ここでは、セルの平均温度Taが0℃であるとする。そして、セルの平均温度Taと理想内部抵抗Riとの関係が規定されたマップを参照して、理想内部抵抗Riを算出する。ここで、理想内部抵抗Riとは、バッテリ91が劣化していない状態での内部抵抗である。マップは実験等によって予め決定され、電池容量推定部95に記憶されている。ここでは、理想内部抵抗Riは、マップから4.2mΩと算出される。
ステップ123では、検出内部抵抗Rdと理想内部抵抗Riの比を算出する。ここでは、比は1.1と算出される。
一般的に、充放電の繰り返しに伴いバッテリ91の劣化が大きくなるほど、バッテリ91の内部抵抗は上昇する。したがって、検出内部抵抗Rdと理想内部抵抗Riの比は、バッテリ91の劣化度合を表すことになる。
ステップ124では、検出内部抵抗Rdと理想内部抵抗Riの比と推定満充電容量割合との関係が規定されたマップを参照して、バッテリ91の推定満充電容量割合を算出する。ここで、推定満充電容量割合とは、バッテリ91が劣化していない状態でのバッテリ91の満充電容量を100%とした値である。マップは実験等によって予め決定され、電池容量推定部95に記憶されている。ここでは、推定満充電容量割合は、マップから95%と算出される。
ステップ125では、現在のバッテリ91の満電池容量とステップ124にて算出された推定満充電容量割合とから、現在のバッテリ91の満電池容量を推定する。ここでは、現在のバッテリ91の満電池容量は47.5Ahと推定される。このようにして、バッテリ91の内部抵抗と温度に基づいて、バッテリ91の劣化度合に応じた満充電容量が推定される。
ステップ126では、ステップ125で推定されたバッテリ91の推定満充電容量(47.5Ah)を電流積算SOC演算部94Bに出力し、上式(1)中の満充電容量を推定満充電容量に更新する。
以上の第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
また、電池状態検出部93で検出されたバッテリ91の内部抵抗と、温度検出部93Cで検出したバッテリ91の温度に対応するマップに記憶されたバッテリ91の内部抵抗と、を比較することによりバッテリ91の満電池容量が推定されるため、簡易にかつ短時間でバッテリ91の満充電容量を推定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、スタンバイ充電として、油圧ショベルの各アクチュエータが停止した状態で、モータジェネレータ81が発電機として機能してバッテリ91が充電される場合について説明した。これに代わり、スタンバイ充電は、二次電池を駆動源とする電動車(駆動体)が停止した状態で、二次電池を例えば家庭に設置された電気コンセントを用いて定置充電する場合であってもよい。定置充電では、充電電流の変動が小さく、安定した連続充電が行なわれる。このように、本発明の実施形態に係るSOC推定装置は、電動車やハイブリッド車に搭載される二次電池に適用することも可能である。