JP6179840B2 - サルナシ由来の高極性有機溶媒抽出物とその利用 - Google Patents

サルナシ由来の高極性有機溶媒抽出物とその利用 Download PDF

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Description

本発明はサルナシの優れた機能を示す高極性有機溶媒抽出物とその利用に関し、さらに詳しくは、発癌物質による癌のイニシエーション、プロモーション過程を含む多段階発癌過程の少なくとも2つ以上の過程に対する抑制作用や抗炎症作用等を示すサルナシ由来の高極性有機溶媒抽出物を含む組成物、及びその医薬、食品、飼料等における利用に関する。
癌患者は年々増加しており、最近では日本人の死亡原因の1位を占めるに至っている。癌の治療は、化学療法、外科的処置または放射線療法などにより行われるが、決して満足のいく治療効果が得られない場合が多い上、多くの場合患者の生活の質の低下を招く。また、癌は、治療後の再発を完全に防ぐことができないという問題もある。従って、他の疾患と同様、予防医学的な観点が求められ、近年では、癌の再発も含めて発癌の予防法が注目されている。一般には、喫煙や食生活等の生活習慣や、ストレスへの対処など環境に配慮した癌予防法が提案されているが、より積極的な手段として、癌の予防に有効な物質の開発が望まれている。
癌の多くは、変異原性の刺激を受けた正常細胞が変異して癌細胞に変わることにより起きることが知られている。すなわち、正常細胞が潜在的腫瘍細胞に変化する不可逆的な段階である「イニシエーション期」と、潜在的腫瘍細胞がクローナルに増殖し、最終的に悪性化する可逆的な段階である「プロモーション期」を含む複数過程を経るとことが知られている。これら発癌イニシエーション、プロモーション作用を持つ化学物質は、それぞれ「発癌イニシエーター」、「発癌プロモーター」と呼ばれる。また、プロモーター作用とは複雑な細胞内シグナル伝達と遺伝子発現制御機構であることが明らかとなり、現在では、発癌には複数の遺伝子の順次変化が必要であるとする「多段階発癌説」が広く受け入れられている。
上記の発癌のメカニズムを考慮し、発癌物質による癌のイニシエーションやプロモーションを抑制または阻害する癌の予防剤が提案されている。例えば、タヒボから単離された化合物の発癌プロモーション阻害作用に基づく抗癌剤(特許文献1)、アガロオリゴ糖のイニシエーション、プロモーション阻害作用に基づく癌抑制剤(特許文献2)、植物由来のプロアントシアニジンの発癌イニシエーション及びプロモーション抑制活性に基づく発癌予防剤(特許文献3)、ヤーコン由来の発癌プロモーション阻害作用に基づく抗癌剤(特許文献4)等がある。また、炎症と癌との密接な関係はよく知られており、炎症反応がイニシエーションのステップにも関与することを示す研究もある。
サルナシ(Actinidia arguta)は、マタタビ属に属する蔓性植物であり、その果汁等が漢方薬や民間薬として利用されているが、発癌物質によるイニシエーション活性やプロモーション活性に対して抑制又は阻害作用を示す物質が果汁中に存在するか否かは知られていなかった。特許文献5にはマタタビ属由来のハーディキウイフルーツなどの果汁等が免疫反応の調節が必要な癌等に有効であることが開示されている。また、非特許文献1には、ヒト食道癌細胞(Eca-109)に対して、ノルマルブチルアルコールによるサルナシからの抽出物が阻害効果を示したことが開示されている。しかし、これまで、サルナシの多段階発癌過程に対する抑制又は阻害作用に関する報告はない。
特許第2669762号 国際公開WO00/43018パンフレット 特表2005−68081号公報 特開2007−23097号公報 特表2008−531584号公報
中薬材Vol.30, No.5, Page564-566 (2007)
本発明の目的は、癌の予防に有効な物質を提供することであり、具体的には、発癌物質による多段階発癌過程の2以上の過程における活性、少なくともイニシエーション活性及びプロモーション活性を効果的に抑制する物質を開発し、ヒトを含む対象における癌の予防に有用な食品や薬品等を提供することである。
本発明者は、発癌物質による多段階発癌過程を効果的に抑制・阻害する天然物由来の物質を得るために鋭意研究を重ね、マタタビ科マタタビ属のサルナシ(Actinidia arguta)の果汁やその高極性有機溶媒抽出物が、多段階発癌過程のうち、少なくとも、発癌のイニシエーション及びプロモーションの両方を抑制しうること、さらに、抗炎症作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は次の通りである。
(1)サルナシ果汁又はサルナシ果汁の高極性有機溶媒抽出物を有効成分とする、発癌抑制に用いる組成物において、高極性有機溶媒抽出物が、酢酸エチル及び/又はヘキサン不溶性である発癌抑制に用いる組成物。
(2)発癌物質によるイニシエーション活性及びプロモーション活性の阻害作用を有する、(1)記載の組成物。
(3)発癌抑制が、発癌物質による炎症の抑制作用である、(1)記載の組成物。
(4)高極性有機溶媒がメタノール、エタノール、n−プロパノール及びアセトンから選択される1つ又はそれ以上の混合溶媒、又はそれらと水の混合溶媒である、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物を含有する発癌抑制に用いる医薬組成物。
(6)癌の予防剤である、(5)記載の医薬組成物。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物を含有する、保健機能食品、食品補助剤、及び一般飲食品から選択される発癌抑制に用いる食品。
(8)(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物を含有する発癌抑制に用いる飼料。
本発明によれば、食品であるサルナシ由来の、癌予防に有効で安全性の高い抽出物を含有する組成物を提供することができる。
本発明の組成物は、癌予防のための医薬組成物、食品、飼料等、様々な形態で提供することが可能である。
また、食品等の形で継続摂取することが可能であり、癌の発現や再発を予防することで社会に貢献することができる。
さらに、発癌と深く関係している炎症性疾患に対しても、塗布または飲用による抑制効果が期待できる。
サルナシ果汁の部分精製工程を示す図である。 種々の変異原性物質DMBA、アフィラトキシンB1、ベンツピレン(B(a)P、MeIQx、PhIP及びTrp−P−2の変異原性に対する、サルナシ果汁の抑制効果を示すエイムステストの結果を示す図である。 発癌プロモーターTPAによるマウスの耳浮腫に対する、サルナシ果汁の抑制効果を示す図である。 発癌物質MeIQxを投与したマウスの肝臓における遺伝子損傷の指標であるDNA付加体形成に対する、サルナシ果汁経口投与による抑制効果を示す図である。 発癌物質を活性化する代謝酵素である、CYP1A1及びCYP1A2に対する、サルナシ果汁の阻害効果を示す図である。 サルナシ果汁のDPPHラジカル消去効果を示す図である。 図1に従って得られた各分画のMeIQxの変異原性に対する抑制効果の変異原性抑制効果を調べたエイムステストの結果である。 図1に従って得られた抽出物のうち、50%メタノール分画の、DMBA、アフィラトキシンB1及びベンツピレン(B(a)P)の変異原性に対する抑制効果を示す図である。 サルナシ果汁の部分精製分画のNO産生抑制効果を示す図である。 発癌プロモーターTPAによるマウスの耳浮腫に対する、図1における100%メタノール抽出物の抑制効果を示す図である。 図1に従って得られた抽出物のDPPHラジカル消去効果を示す図である。 サルナシ果汁の部分精製分画の、マウスにおける皮膚がんの発癌抑制効果を示す図である。 加熱処理したサルナシ果汁の部分精製分画の、皮膚がんの発癌抑制効果を示す図である。
本発明において「サルナシ果汁」とは、マタタビ科の蔓性落葉樹であるサルナシ(Actinidia arguta)の果汁を意味する。サルナシ果汁は、市販品であってもよいが、サルナシの果実から常法により調製することができる。例えば、果実を既知の搾汁機(エアープレス)で処理し、濾過して固形物を除くなどすることにより調製することができる。果汁は液体のままで、あるいは凍結乾燥品の形で用いることができる。
本発明において、「サルナシ果汁の高極性有機溶媒抽出物」とは、サルナシ果汁の高極性有機溶媒による抽出物を意味する。高極性有機溶媒としては、極性が4〜10、好ましくは4〜6、より好ましくは4〜5.5のものが挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール、アセトンから選択される溶媒、又はその混合溶媒、又はそれら有機溶媒と水との混合溶媒が含まれる。好ましい有機溶媒はメタノール単独又は水−メタノール混合溶媒である。混合溶媒中の水の含量は、目的に応じて適宜決定できるが、例えば、水―メタノール系溶媒の場合、抽出溶媒のメタノール濃度は、35〜100重量%、好ましくは40〜100重量%、特に好ましくは 50〜100重量%とすることができる。抽出回数や抽出溶媒の種類、濃度は適宜変更することができる。さらに、サルナシの多段階発癌過程抑制作用に係る2つ以上の活性物質は、1つの条件下での抽出物に含有されていることも、複数の異なる条件下での抽出物に主として含有されていることもあるが、本発明の「組成物」は、これらの抽出物の各々、及びそれらの任意の比率、組み合わせの混合物を包含する。なお、条件とは、溶媒の種類、水との混合比率などを指す。例えば、異なる水分含有率のメタノール溶媒(100%メタノールと50%メタノールなど)で、サルナシ果汁を抽出し、得られた抽出物を適宜混合して本発明の組成物として用いることができる。具体例として、実施例1で調製した100% MeOH分画と50%MeOH分画を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明の「発癌抑制作用を有する組成物」の有効成分である「サルナシ果汁の高極性有機溶媒抽出物」は、サルナシ果汁中の、発癌過程を阻害する成分を含有する高極性有機溶媒抽出物を意味し、好ましくは少なくとも2以上を阻害する成分を含有する抽出物を意味する。抽出物の製造方法は、前記抽出物が得られる限り特に限定されないが、後述の実施例に記載のように、予め低極性溶媒に可溶性の物質を除去しておくことが好ましい。低極性溶媒としては、n-ヘキサン、酢酸エチル等の既知の溶媒、及びそれらの任意の混合溶媒を挙げることができる。ヘキサンと酢酸エチルの1:1混合溶媒が最も好ましい。
本発明において、「発癌性物質」又は「発癌物質」は、WHOの外部組織であるIARC(国際癌研究機関:International Agency for Research on Cancer)の分類にしたがって発癌性リスクの評価一覧に記載されているものを意味し、化学物質に限定されず、放射線、ウイルス、環境など様々な発癌性の要因を含む。一例として、後述の実施例で使用している発癌性物質を挙げることができる。
本発明の実施態様として、サルナシ果汁の高極性有機溶媒抽出物の調製は図1記載の工程に従って行うことができる。
まずサルナシ果汁に対し、容量比で3倍の低極性溶媒(好ましくは50%ヘキサン−50%酢酸エチル混液)を加え、25℃で30分振とうし、有機溶媒層を分液除去する。次いで、得られた水層に対して容量比で3倍の酢酸エチルを加え、25℃で30分振とうし、酢酸エチル可溶性分画を分離する。得られた水層を凍結乾燥し、残留物に適量の100%メタノールに加え、25℃で30分振とうし、メタノール不溶性の残留物を分離する。
得られた100%メタノール不溶性残留物に適量のメタノール−水(1:1)混液を加え、25℃で30分振とうすることにより、抽出する。各抽出工程における溶媒の量は、被抽出物が液体である場合は、被抽出物1重量部に対して溶媒を2〜10、好ましくは5〜10重量部用いる。また、被抽出物が粉末等の固体である場合は、被抽出物1重量部に対して、溶媒を2〜10、好ましくは10重量部用いる。各抽出工程は、同一溶媒で1回〜数回、好ましくは3〜4回行う。
このようにして調製した高極性有機溶媒による最終抽出分画を、例えば減圧濃縮や、減圧乾燥などにより水分及び揮発性成分を除いて濃縮液又は粉末状にすることにより、本発明の発癌抑制作用を有する組成物(以下、「発癌抑制剤」とも称する)を得る。
本発明において、「発癌抑制」とは、発癌性物質による多段階発癌過程の2以上の発癌活性を抑制することを意味する。具体的には、イニシエーション活性及びプロモーション活性の抑制が挙げられる。さらに、発癌と密接に関係する炎症の抑制作用も包含するものとする。これらの活性に対する阻害作用は既知の方法で確認することができ、具体的には実施例記載の方法が挙げられる。
本発明の「発癌抑制作用を有する組成物」を含有する癌予防用の医薬組成物は、投与方法に応じて発癌抑制剤を、適当な賦形剤等と共に当業者既知の方法で製剤化することにより得られる。投与方法としては、経口投与、外用投与、経直腸投与(坐薬)、点眼等の非経口投与が挙げられ、経口投与、外用投与等が好ましい。
本発明の医薬組成物は、顆粒剤、細粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、液剤、懸濁剤など、また注射用の形態としては静脈直接注入用、点滴投与用など、経口又は非経口投与用の任意の剤形であってよい。これらは、常法により製剤化することができ、例えば、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、でんぷん、結晶セルロース、炭酸カルシウム、カオリン、ゼラチン等の担体や、溶剤、溶解補助剤、等張化剤等の通常の添加剤を適宜配合することができる。
経口投与する場合、有効成分である発癌抑制剤の投与量は、投与する患者の性別、症状、年齢、投与方法によって異なるが、通常、成人(体重60kg)1日あたりの投与量が全量で、乾燥重量として50g〜500gであり、好ましくは100g〜250gである。上記1日あたりの量を一度に、もしくは数回に分けて投与することができる。食前、食後、食間を問わない。また投与期間は特に限定されない。非経口投与の場合の投与量は、通常、成人(体重60kg)1日あたりの投与量が全量で、乾燥重量として50g〜500gであり、好ましくは100g〜500gである。
本発明の発癌抑制剤を含有する外用剤は、経皮吸収型であり、必要に応じて公知の添加剤などを混合して常法により、クリーム剤、液剤、ローション剤、乳剤、チンキ剤、軟膏剤、水性ゲル剤、油性ゲル剤、エアゾール剤、パウダー剤、シャンプー、石鹸などの外用製剤等とすることができる。
本発明の発癌抑制剤を外用剤として投与する場合、投与する対象の症状、目的、年齢、投与方法等によって異なるが、通常、成人(体重60kg)1日あたりの投与量が全量で、乾燥重量として10g〜100gであり、好ましくは50g〜100gである。
本発明の発癌抑制剤を含有する食品は、一般的な飲食品の形態をとりうる。例えば、それ自体、またはそれに適当な風味を加えてドリンク剤、例えば清涼飲料、粉末飲料とすることもできる。具体的には、ジュース、牛乳、菓子、ゼリー等に適量を添加して飲食することができる。
本発明の食品は、癌の予防のための特定保健用食品又は栄養機能食品等の保健機能食品として提供することが可能である。
さらに、本発明に係る食品は、濃厚流動食や、食品補助剤として利用することも可能である。食品補助剤として使用する場合、例えば錠剤、カプセル、散剤、顆粒、懸濁剤、チュアブル剤、シロップ剤等の形態に調製することができる。本発明における食品補助剤とは、食品として摂取されるもの以外に栄養を補助する目的で摂取されるものをいい栄養補助剤、ダイエタリーサプリメントなどもこれに含まれる。
食品は、本発明の発癌抑制剤を常法に従って、一般食品の原料と配合することにより、加工製造することができる。
本発明の発癌抑制剤を食品として摂取する場合、成人(体重60kg)1日当たりの摂取量は、通常50g〜500g程度、好ましくは100g〜250g程度である。一日量を、1回から数回に分けて摂取することが好まく、一日あたりの摂取量、または1回あたりの摂取量を1単位包装とすることができる。
本発明における食品中の発癌抑制剤の含有量は、乾燥重量として、通常1〜100重量%であり、好ましくは10〜90重量%であり、さらに好ましくは10〜50重量%である。
栄養補助食品或いは機能性食品の例としては、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などが配合された流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工形態を挙げることができる。上記各種食品には、例えば、スポーツドリンク、栄養ドリンクなどの飲食物は、栄養バランス、風味を良くするために、更にアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物や甘味料、香辛料、香料、色素などを配合することもできる。さらに、食品に通常添加される抗酸化剤として、トコフェロール、L − アスコルビン酸、BHA 、ローズマリー抽出物などを常法に従って用いることができる。
本発明の発癌抑制剤を、家畜、家禽、ペット類の飼料に配合することでこれら動物における癌の予防を行うことができる。形態としては、ドライドッグフード、ドライキャットフード、ウェットドッグフード、ウェットキャットフード、セミモイストドックフード、養鶏用飼料、牛、豚などの家畜用飼料に配合することができる。
また、前述の医薬組成物は、ヒト以外の動物、例えば、牛、馬、豚、羊などの家畜用哺乳類、鶏、ウズラ、ダチョウなどの家禽類、は虫類、鳥類或いは小型哺乳類などのペット類などにも、適宜用いることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、如何なる意味においても、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考例1 サルナシ果汁の調製
サルナシの果実を搾汁機(エアープレス)にて処理し、95℃にてドラム缶に詰め、2〜3ヶ月間保存して、酒石酸結晶を析出させ、酒袋で絞ることによってヤマブドウ果汁を得る。
試験例1 皮膚2段階発癌実験におけるサルナシ果汁の発癌抑制効果
皮膚2段階発癌実験は、発癌過程のモデルとして確立されており、イニシエーション処理として発癌性変異原ジメチルベンツアンスラセン(DMBA)を塗布し、続いて、プロモーション処置としてホルボールエステル(TPA)を塗布して,皮膚発癌を起こさせることからなる。本試験では、サルナシ果汁の各発癌過程に対する予防・抑制効果を調べた。
1. 発癌物質によるイニシエーションに対する抑制効果
発癌性物質の変異原性に対するサルナシ果汁の抑制効果をエイムステストで調べた。 発癌性物質(変異原)として、DMBAを含む以下の6つの発癌性の化合物を用い、各化合物の変異原性が、共存するサルナシ果汁で抑制されるかどうかを調べた。エイムステストでは発癌性物質の存在下、ヒスチジン要求性(His-)のサルモネラ菌が遺伝子変異を起こしてヒスチジン非要求性(His+)に変化する程度に基づいて、該発癌性物質の変異原性を判定することができる。
(1)正常細胞に突然変異を起こさせることで、発癌のイニシエーションをする物質である、DMBA(9,10-ジメチル-1,2-ベンゾアントラセン)
(2)豆類などに寄生するカビ類が産生するカビ毒の一種で、発癌物質の中でも最強、すなわち最も少量の投与で癌発生させる,肝発癌物質アフラトキシンB1
(3)肝発癌物質アフラトキシンB1、燃焼ガスやタバコ煙に含まれる発癌性物質であるベンツピレン(B(a)P)
(4)食品の焼けこげに生じることが知られる3種の発癌性変異原物質ヘテロサイクリックアミン類(MeIQx、PhIP及びTrp-P-2)
(1)DMBAの変異原性に対するサルナシ果汁の抑制効果
DMBA(50nmol)を、突然変異検出用のネズミチフス菌TA100株約108個の懸濁液0.1mL 及び代謝酵素溶液0.5mLと混合して全量を0.75mLとした。この混合物をすべて固形培地に広げて48時間培養すると平均713個の突然変異したネズミチフス菌が生じた。この713個を100%とおいた。
サルナシ果汁0-0.1 mLを、DMBA 50nmolと、突然変異検出用のネズミチフス菌TA100株が約108個入った懸濁液0.1mL と代謝酵素溶液0.5mLとに混合して全量を0.75 mLとした。この混合物をすべて固形培地に広げて48時間培養したところ、変異したネズミチフス菌の生じた数は、サルナシ果汁の用量依存的に減少した。
結果を図2に示す。DMBA (50 nmol)の変異原性は、サルナシ果汁を入れない時の値(713 His+)を100%とし、試験系にサルナシ果汁を約20μL添加すると、50%に抑制された。
(2)肝発癌物質アフラトキシンB1の変異原性に対するサルナシ果汁の抑制効果
DMBAの代わりにアフラトキシンB1を用いる外は上記(1)と同様にして試験を行った。サルナシ果汁は肝発癌物質アフラトキシンB1の変異原性に対して抑制作用を示し、変異原性を50%抑制するサルナシ果汁量(IC50)は約30μLであった(図2)。
(3)ベンツピレン(B(a)P)の変異原性対するサルナシ果汁の抑制効果
DMBAの代わりにベンツピレン(B(a)P)を用いる外は上記(1)と同様にして試験を行った。サルナシ果汁はベンツピレン(B(a)P)の変異原性に対しても抑制効果を示し、B(a)Pの変異原性を50%抑制するサルナシ果汁量(IC50)は約50μLであった(図2)。
(4)ヘテロサイクリックアミン類の変異原性に対するサルナシ果汁の抑制効果 DMBAの代わりにヘテロサイクリックアミン(MeIQx、PhIP、Trp-P-2) を用いる外は上記(1)と同様にして試験を行った。サルナシ果汁はヘテロサイクリックアミン類の変異原性に対しても抗変異原性作用を示した(図2)。
2. 発癌物質によるプロモーションに対する抑制効果
TPAは強力な発がんプロモーターであり、プロテインキナーゼC (PKC) の下流のシグナル伝達経路を活性化させること、また、炎症を起こすことが良く知られている。また、慢性炎症は発癌過程の進展に重要なことも良く知られている。マウスの耳にTPAを塗布すると炎症性の浮腫が起きて、耳が腫れ、耳重量が増加する。従って、サルナシ果汁をマウスの耳に塗布して耳重量の変化を調べ、TPAの起炎症活性に対する抑制作用、即ち発癌プロモーター活性の抑制作用を検討した。
方法
(TPA処理群)
TPA処理群として、溶媒であるアセトン(66%アセトン水)のみをTPA塗布30分前に塗布し、次にマウス(SENCARマウス・オス6週令)8匹の片耳の前面と後面ともに炎症性物質12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate (以下TPAと省略する)のアセトン溶液(85μM)を10μLずつ滴下塗布した。TPA塗布の6時間後に耳重量を測定した。ここで耳重量とは、直径6mmのパンチで耳に穴を開け、その時取れる円形の部分の重量をいう(以下同様)。TPAを塗布したマウスの耳は、6時間後に炎症が起こり、耳が腫れて、耳重量が増加した。無処理群としてとして、溶媒であるアセトン(66%アセトン水)のみを塗布したところ、耳は腫れず、重量も増えなかった。
(サルナシ果汁処理群)
まず参考例1で得られたサルナシ果汁の凍結乾燥粉末(果汁1mLあたり151 mg)をアセトン水混液(66%のアセトンと蒸留水の混合溶液;アセトン:蒸留水=2:1(v/v))に元の果汁の2倍の濃度(302 mg/ mL)、または10倍の濃度(1510 mg/ mL)になるように調製した。このヤマブドウ果汁を、マウス(同上)8匹の耳に、片耳の前面及び後面ともに、10μLを塗布し、その30分後にTPA(85μMの溶液)を片耳の前面及び後面に10μL塗布した。6時間後、マウスの耳は腫れて耳重量は増加したが、果汁を塗らない場合の耳重量と比べて、重量増加が有意に少なかった。
結果
図3に示すように、TPAによる耳重量の増加に対し、サルナシ果汁は有意に抑制効果を示し、浮腫が予防された。すなわち、サルナシ果汁がTPAの作用を予防・抑制することが分かった。
試験例2 発癌物質MeIQxの肝DNA付加体形成に対する、サルナシ果汁の抑制効果
肝癌等の発癌物質であるMeIQxは、体内に入って遺伝子を損傷し,突然変異を起こし、発癌のイニシエーションを起こす事が知られている。本試験では、サルナシ果汁が発癌のどの過程を抑制するか、という点を、MeIQx投与マウスを用い、肝臓における遺伝子損傷のひとつDNA付加体形成に基づいて調べた。
方法
MeIQx投与群としてマウス(CC57BL/6N マウス 6週令 オス)8匹に、まず2日間普通の餌を与えたのち、次の3日間は最終濃度0.005%となるようにMeIQxを混ぜた餌を与え、自由に摂取させた。サルナシ-MeIQx投与群としては、まず2日間サルナシ果汁の凍結乾燥粉末0.35g (元の果汁3mL相当)を餌に混ぜて与え、自由摂取させた。次の3日間はサルナシ果汁の凍結乾燥粉末0.35gとMeIQx(最終濃度0.005%)を餌に混ぜて与え、自由に摂取させた。投与後、マウスから肝臓を取り、肝臓からDNAを抽出した。抽出したDNAにMeIQxが化学的に結合した、MeIQx-DNA付加体量を、DNAの108ヌクレオチド当たりに換算して、ポストラベル法で定量した。すなわちMeIQx-DNA付加体のみに放射性リン酸を結合させ、放射能強度を測定することにより、付加体量を定量した。MeIQx投与群とサルナシ-MeIQx投与群とで8匹の平均と標準偏差を出して、比較した。
結果
図4に示すように、マウスに発癌物質MeIQxを経口投与すると、遺伝子損傷を示すDNA付加体が形成された。マウスに発癌物質とともにサルナシ果汁を経口投与すると、肝臓のDNA付加体が減少し、遺伝子損傷が抑制され、DNAが保護されることが分かった。
試験例3 発癌性物質を活性化する代謝酵素に対する、サルナシ果汁の阻害効果
発癌物質が体内に入って遺伝子を損傷し,突然変異を起こし、発癌のイニシエーションを起こす過程のどこをサルナシ果汁が抑制するのか明らかにするために、体内に入った発癌物質を代謝活性化する酵素をサルナシ果汁が阻害するかどうかを調べた。
方法
CYP1A2酵素活性の測定は、7-メトキシレゾルフィン(0.1mM)と酵素溶液をいれた反応液を37℃で5分間反応させ、7-メトキシレゾルフィンがO-脱メチル化反応によりレゾルフィンに変わる酵素反応を測定することにより行った。生成したレゾルフィンの吸光度を測定することにより、酵素活性を定量した。反応液にサルナシ果汁を入れないときを1とし、反応液にサルナシ果汁を0-0.05mL加えたときのレゾルフィン生成量を定量して、サルナシ果汁を入れないときと比較した。
CYP1A1酵素活性の測定には、反応液に7-エトキシレゾルフィンを(0.1mM) と酵素溶液をいれた反応液を37℃で5分間反応させ、7-エトキシレゾルフィンがO-脱エチル化反応によりレゾルフィンに変わる酵素反応を測定した。
結果
図5に示すように、DMBAやB(a)Pなどを活性化するCYP1A1酵素およびヘテロサイクリックアミン類を活性化するCYP1A2酵素が、ともに、サルナシ果汁で酵素活性抑制されることが分かった。従って、少なくともサルナシ果汁の作用点の一つは代謝活性化を抑制して、発癌物質をDNAと反応できる活性化体へと変化させる反応を抑制することにあることが分かった。
試験例4 サルナシ果汁によるラジカル消去
発癌物質によるイニシエーションにかかわる遺伝子損傷は、DNA付加体形成だけでなく、発癌物質の生体内反応に伴う酸素ラジカルなどのラジカル発生による酸化的DNA損傷が知られている。また、プロモーション過程にも酸化的損傷が関わっていることが知られている。そこで、本試験では、サルナシ果汁にラジカル消去作用があるかどうかを調べた。
方法
1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl (DPPH)溶液(0.2 mM)1mL にサルナシ果汁(0-0.05mL)をふくむ水溶液0.1mLを加え、全量を5mLとし、30分暗所で室温においたのち、517nmの吸光度を測定した。DPPHは紫色をしているが、消去されると無色となるので、517nmの吸光度の減少を測定し、DPPHラジカル消去量を定量した。
結果
図6に示すように、サルナシ果汁はラジカルの一種1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl (DPPH)を消去する活性があることが分かった。従って、サルナシ果汁は、体内で発生したラジカルを消去することで、発癌のイニシエーション過程、プロモーション過程を阻害する可能性のあることが分かった。
実施例1 サルナシ果汁の活性成分を含む抽出物の調製
試験例1〜4に記載の通り、サルナシ果汁に発癌性物質のイニシエーション抑制作用(抗変異原性、DNA付加体抑制、代謝活性化抑制、ラジカル消去)並びにプロモーション抑制作用(浮腫の予防、ラジカル消去)があることが明らかになったので、図1に記載の工程に従って部分精製を行った。
(1)参考例1で調製したサルナシ果汁(水性の液体)500 mLに50%ヘキサン-50%酢酸エチル混液1500 mLを加えて25℃で30分間振とうし、液液抽出を行い、「50%ヘキサン-50%酢エチ分画(略して50% hexane-50%EtOAc分画)」を得た。ついで最初の50%ヘキサン-50%酢酸エチル混液で抽出されなかった成分が溶けている水層500mLを同様に抽出した。
これを再度繰り返して、計3回で得られたものを合わせた。
(2)ついで、50%ヘキサン-50%酢酸エチル混液で抽出されなかった成分が溶けている水層500mLに酢酸エチル1500mLを加え、25℃で30分間振とうして抽出を行い、液液抽出して「酢エチ抽出分画(略してEtOAc分画)」を得た。ついで最初の酢酸エチル混液で抽出されなかった成分が溶けている水層500mLを同様に抽出した。これを再度繰り返して、計3回で得られたものを合わせた。
(3)酢酸エチルで抽出されなかった成分が残る水層を、常法により凍結乾燥し、乾燥粉末58gを得た。この乾燥粉末58g(以下「残留物」)に100%メタノール1500mlを加えて、25℃で溶解する成分を溶かし、「100%メタノール分画」又は「100%MeOH分画」を得た。ついで最初のメタノール抽出で抽出されなかった残留物を同様にメタノール1500mLで抽出した。これを再度繰り返して、計3回で得られたものを合わせた。
(4)100%メタノールに溶けずに残った残留物に50%メタノール−50%水の混液1500mlを加えて、25℃で溶解する成分を溶かし、「50%メタノール-50%水抽出画分」又は「50%MeOH分画」を得た。ついで最初の50%メタノール抽出で抽出されなかった残留物を同様に50%メタノール1500mLで抽出した。これを再度繰り返して、計3回で得られたものを合わせた。
(5)50%メタノール-50%水の混液でも溶けなかった残留物を水に溶かして残留物分画を得た。
次いで、得られた分画の発癌抑制効果を検討した。
試験例5 部分精製分画の発癌抑制活性の検討(1)
(1)実施例1で調製した各部分精製分画のどこに抗変異原性成分を入っているかを発癌性変異原物質MeIQxの変異原性に対する抗変異原性で調べた。サルナシ果汁の代わりに、各精製工程で得た分画を用いる外は、試験例1の1(エイムステスト)と同様にして行った。
結果を図7に示す。図から明らかなように「50%メタノール分画」にMeIQxの変異原性に対する抑制効果があることが分かった。また、「100%メタノール分画」にも、弱いが抗変異原性が見られた。従って、抗変異原性成分がおもには50%メタノールで抽出されたが、100%メタノール中にもわずかに混ざっている可能性があること示唆している。もしくは抗変異原性物質が複数あって、「50%メタノール分画」と「100%メタノール分画」とに分かれて存在する可能性を示唆している。
(2)MeIQxに対する抗変異原性が強い「50%メタノール分画」について、他の発癌物質の変異原性に対する抑制効果を調べた。試験は試験例1の1と同様に行った。
結果を図8に示す。図から明らかに、「50%メタノール分画」は、2段階発癌実験でイニシエーションを起こさせる発癌物質である、DMBAの変異原性を阻害する。また、発癌物質アフラトキシンB1およびB(a)Pの変異原性も阻害することが分かった。
試験例6 部分精製分画の発癌抑制活性の検討(2)
発癌のプロモーター作用抑制において、サルナシ果汁がTPAによる炎症性反応の一つ、浮腫を抑制したことから、部分精製分画の抗炎症作用を調べた。
(1)一酸化窒素(NO)放出試験
マウスのマクロファージ様細胞株であるRAW264細胞はリポ多糖(LPS)により刺激されて炎症性反応の1つである一酸化窒素(NO)放出を行う。放出されたNOは生体内で炎症性因子であるだけでなく、発癌性にも関与している。そこで、RAW細胞からのNO放出をサルナシ分画が抑制できるかどうかを調べた。
RAW264細胞を96穴プレートに1穴(培地0.2mL)あたり、細胞数約2x104となるように入れて、培養した。サルナシ果汁または成分は凍結乾燥したのち、細胞培養培地に溶かし直す。元の果汁当たり0-0.5mL相当量を培地0.02mLに溶かした。細胞のサルナシ試料を加えて1時間培養した。LPSを100g/mLとなるように培地に溶かし、2μLづつ、各穴にいれた。24時間培養した。細胞は穴の底に付着しており、放出されたNOは培養上清に含まれるので、培養上清を0.1mLづつ採取して、グリース反応により発色させ、570nmの吸光度を測定して発生したNO量を定量した。
結果を図9に示す。図9から明らかなように「100%メタノール分画」にNO産生抑制効果があり、「50%メタノール分画」にもわずかにNO産生抑制効果が見られた。
(2)TPAによる浮腫誘発試験
NO放出試験で炎症抑制効果が高い「100%メタノール分画」を用いて、TPAによるマウスの耳の浮腫に対する予防効果を試験例1の2に記載の方法に従い、検討した。結果を図10に示す。
図10から明らかに、100%メタノール分画は有意にTPAによる耳の浮腫を予防した。従って、サルナシ果汁の抗炎症成分は主に「100%メタノール分画」に含まれていると考えられる。
試験例7 部分精製分画の発癌抑制活性の検討(3)
試験例4と同様にして、サルナシ分画にラジカル消去作用があるかどうかを調べた。結果を図11に示す。図11から明らかに、「100%メタノール分画」に最も強いラジカル消去活性があり、「50%メタノール分画」及び「100%EtOAc分画」にもラジカル消去活性が存在する。これは、サルナシにはラジカル消去活性物質が複数存在し、それらが精製に伴って異なる分画に分かれたことを示唆している。
試験例8 部分精製分画の発癌抑制活性の検討(4)
50%メタノール-50%水抽出画分」又は「50%メタノール分画」による、皮膚発癌の抑制効果を調べた。
方法:原理を述べると、マウスの皮膚腫瘍形成は、イニシエーションとプロモーションの二段階からなり、イニシエーション物質を1回塗布し、その1週間後からプロモーション物質を週2回20週間塗ると、その20週の間に皮膚腫瘍が発生する。この間に第3の物質を塗布して腫瘍発生が抑制されれば、発癌が予防されたと言える。この方法が標準的に使われている。
具体的には、マウスをグループI (陽性対照群 8匹)、グループII (サルナシ群 6匹)とグループIII(陰性対照群 3匹)にグループ分けした。1週間慣らしを行い、その5日目にバリカンでマウスの背中の毛を縦約3 cm×横約2 cm剃った。慣らし終了後、イニシエーション物質ジメチルベンツ(a)アンスラセン(DMBA)をアセトンに溶かして、390 nmol/匹(100μL)となるように調整したものを、全てのマウスの背中に100μL塗布した。その1週間後にプロモーション物質12-Tetradecanoylphorbol-13-acetate (TPA)と50%メタノール分画の塗布を開始した。TPAはアセトンに溶かして、1.7 nmol/匹(100μL)となるように調整した。50%メタノール分画は凍結乾燥した後、元の用量の5分の一量の50%アセトンに溶かして、5倍濃度としたものを用意した。
グループI(陽性対照群):溶媒の50%アセトンを150μL塗布し、その30分後にTPAを100μL塗布した。
グループII(サルナシ群):50%メタノール分画を150μL塗布した30分後にTPAを100μL塗布した。
グループ III (陰性対照群):50%メタノール分画を150μL塗布し、その30分後に溶媒のアセトンを100μL塗布し、TPAは塗布しなかった。
このプロモーションを週に2回20週間続け、1週間ごとに腫瘍の形成を、2週間ごとに体重の変化を観察した。
結果:結果を図12に示す。グループIでは5週めに最初のマウスに腫瘍が発生し、15週にはすべてのマウスに腫瘍ができた。一方、50%メタノール分画を塗布したグループIIでは10週めに最初のマウスに腫瘍が発生し,20週経っても半数のマウスに腫瘍が見られなかった。すなわち、腫瘍の発生の遅延と予防効果が見られた。
陰性対照群のグループIIIでは腫瘍発生は見られなかった。20週の間に腫瘍以外の病的変化はどのグループでも見られなかった。また、マウス体重にもグループ間で有意な差は見られなかった。
カプラン・マイヤー法で統計解析したところ、有意水準0.05でグループIとグループII間に有意差があったので、50%メタノール分画にマウス皮膚発癌の予防・抑制効果が見られることが分かった。
試験例9 サルナシ部分精製分画の抗変異原性の熱安定性の検討
サルナシ果実は生食のほか食品加工されるため、加工あるいは殺菌過程で加熱される可能性がある。そこで、サルナシの50%メタノール分画の抗変異原性の熱安定性を検討した。
方法:50%メタノール分画を凍結乾燥した後、元の用量の10分の一量の滅菌水に溶かし直して,10倍濃度としたものを用意した。この溶液を非加熱試料と呼ぶ。非加熱試料をチューブにいれ、90℃の湯浴に10分浸けることにより加熱し、遠心分離(3500rmp、15分)で沈殿を除去したものを加熱試料とした。抗変異原性は次のようにして試験した。発癌性ヘテロサイクリックアミン(MeIQx, 60 pmol) を、突然変異検出用のネズミチフス菌TA98株約108個の懸濁液0.1mL 及び代謝酵素溶液0.5mLと混合して全量を0.75mLとした。この混合物をすべて固形培地に広げて48時間培養すると平均1591個の突然変異したネズミチフス菌が生じた。この1591個を100%とおいた。50%メタノール分画の加熱および非加熱試料を,元の果汁換算で0-0.5 mLとなるようにして、MeIQx 60 pmolと、突然変異検出用のネズミチフス菌TA98株が約108個入った懸濁液0.1mL と代謝酵素溶液0.5mLとに混合して全量を0.7 mLとした。この混合物をすべて固形培地に広げて48時間培養したところ、変異したネズミチフス菌の生じた数は、50%メタノール分画の加熱・非加熱試料ともに用量依存的に減少した。
結果を図13に示す。MeIQx (60 nmol)の変異原性は、50%メタノール分画を入れない時の値(1591 His+)を100%とし、試験系に非加熱試料を元の果汁換算で約60μ\c1?添加すると、50%に抑制された。加熱試料の場合は、元の果汁換算で約140μL添加すると、50%に抑制された。従って、抗変異原性は加熱によりやや減弱するものの、90℃10分の加熱によっても、抗変異原性が残っていることが分かり、ある程度の熱耐性があると分かった。
試験例5〜9の結果より、サルナシ果汁の抗イニシエーション作用物質,すなわち抗変異原性物質は主として「50%メタノール分画」に主に含まれていると考えられ、抗プロモーション作用物質、すなわち抗浮腫、抗NO産生ならびにラジカル消去活性物質は主として「100%メタノール分画」に主に含まれていると考えられる。すなわち、以上の結果は、サルナシ果汁には少なくとも二つの有効成分があり、一つは抗イニシエーション作用、もう一つは抗プロモーション作用を有することを示している。また、活性は90℃で10分間の殺菌処理によっても維持されることが分かった。
本発明の発癌抑制作用を有する組成物は経口摂取又は塗布により、癌の予防効果や抗炎症効果を発揮する。従って、患者数が増加の一途にある癌を予防するための医薬組成物、食品、飼料等として提供することにより、癌発症のリスクが高い対象での発症を抑制することが可能になる。また、炎症抑制効果を有することから、様々な原因の炎症の予防・治療にも有用である。

Claims (8)

  1. サルナシ果汁又はサルナシ果汁の高極性有機溶媒抽出物を有効成分とする、発癌抑制に用いる組成物において、
    高極性有機溶媒抽出物が、酢酸エチル及び/又はヘキサン不溶性である発癌抑制に用いる組成物。
  2. 発癌物質によるイニシエーション活性及びプロモーション活性の阻害作用を有する、請求項1記載の組成物。
  3. 前記発癌抑制が、発癌物質による炎症の抑制である、請求項1記載の組成物。
  4. 高極性有機溶媒がメタノール、エタノール、n−プロパノール及びアセトンから選択される1つ又はそれ以上の混合溶媒、又はそれらと水の混合溶媒である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を含有する発癌抑制に用いる医薬組成物。
  6. 癌の予防剤である、請求項5記載の医薬組成物。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を含有する、保健機能食品、食品補助剤、及び一般飲食品から選択される発癌抑制に用いる食品。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を含有する発癌抑制に用いる飼料。
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