JP6179243B2 - 太陽電池モジュール及びこれに用いられる太陽電池用封止材 - Google Patents
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Description
また、太陽電池を使用する上で問題になるのがホットスポット現象である。ホットスポット現象とは、落葉の付着等により影がかかったセル又は製造不良のセル(ホットスポットセル)に逆バイアスが加わり、抵抗が大きくなって温度上昇を引き起こすという現象である(例えば、非特許文献1を参照)。この現象により、セルの破損や、バックシートに波打ちや膨れ等の外観不良が生じるという問題があり、これに対する対策も重要な課題となっている。
[1] 表面に金属部位を有する太陽電池素子と、少なくとも前記金属部位側面に配される封止樹脂層とを含む太陽電池モジュールであって、前記封止樹脂層が、ポリエチレン系樹脂(A)及び紫外線吸収剤(B)を含有し、かつ、前記ポリエチレン系樹脂(A)の溶解度パラメータ(SP値)と、前記紫外線吸収剤(B)の溶解度パラメータ(SP値)との差の絶対値が6.0(cal/cm3)1/2以下であることを特徴とする太陽電池モジュール。
[2] 前記ポリエチレン系樹脂(A)の溶解度パラメータ(SP値)が7.8〜8.2(cal/cm3)1/2であることを特徴とする前記[1]に記載の太陽電池モジュール。
[3] 前記ポリエチレン系樹脂(A)がエチレン−α−オレフィン共重合体であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の太陽電池モジュール。
[4] 前記紫外線吸収剤の融点が40℃以上である前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
[5] 前記封止樹脂層が、ASTM 2765−95で測定したキシレン可溶物が70質量%以上であることを特徴とする前記[1]乃至[4]のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
[6] 前記[1]乃至[5]のいずれかに記載の封止樹脂層に用いられる太陽電池用封止材。
太陽電池素子表面の金属部位に経時で外観変化(黄変)が発生し難い太陽電池用封止材を得ることができる。
尚、本発明において、封止材及び封止樹脂層なる用語を使用するが、封止材とは、ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物と、紫外線吸収剤とを含有する組成物からなるもの(例えば、シート状)を指し、封止樹脂層とは、封止材が太陽電池モジュールに組み込まれた状態を指す。
本発明の太陽電池モジュールに使用される封止樹脂層の材質としては、ポリエチレン系樹脂が用いられる。具体的なポリエチレン系樹脂は以下に例示するが、それらの樹脂は単独で用いられてもよく、また2種類以上を混合して使用してもよい。また、封止樹脂層は単層でもよく、2層以上積層してなるものでもよい。
ポリエチレン系樹脂の種類としては、特に限定されるものではなく、具体的には超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、または超高密度ポリエチレンなどが挙げられる。中でも線状低密度ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)が、結晶性が低く、透明性や柔軟性に優れるため、太陽電池素子の発電特性を阻害したり太陽電池素子に過剰な応力を加え損傷の原因になる等の不具合を生じにくく、好ましい。
(i)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(ii)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
当該結晶融解熱量は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
当該結晶融解ピーク温度は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
該マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体は、本発明において好適に使用でき、α−オレフィンとして1−オクテンを共重合成分とするエチレン−オクテンマルチブロック共重合体が好ましい。該ブロック共重合体としては、エチレンに対してオクテン成分が多く(約15〜20モル%)共重合されたほぼ非晶性のソフトセグメントと、エチレンに対してオクテン成分が少なく(約2モル%未満)共重合された結晶融解ピーク温度が110〜145℃である高結晶性のハードセグメントが、各々2つ以上存在するマルチブロック共重合体が好ましい。これらのソフトセグメントとハードセグメントの連鎖長や比率を制御することにより、柔軟性と耐熱性の両立を達成することができる。
該マルチブロック構造を有する共重合体の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(Infuse)」が挙げられる。
すなわち、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(II)は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(I)とは区別されるものである。
SP値がこの範囲であれば、紫外線吸収剤がブリードアウトし難くなり、太陽電池素子表面の金属部位の変色(黄変)を抑制でき、また、極性基の影響による、太陽電池素子の金属部位や太陽電池モジュールの金属配線の腐蝕を抑制できる為、好ましい。
ここで、SP値は以下のFedorsの式で表される値を示す。
また、本発明おいては、異なるm(mが2以上の整数)種類のモノマーを共重合させて得た樹脂を用いる場合、SP値は、下記式により計算する。
SP値(δ)=X1δ1+・・・+Xmδm
X1、・・・、Xmはそれぞれ使用するモノマーのモル%であり、かつ、X1+・・・Xm=100モル%である。
δ1、・・・、δmはそれぞれのモノマーのSP値であり、上記式(1)で求めた値である。
さらに、本発明おいては、異なるn(nが2以上の整数)種類の樹脂を用いる場合、SP値は、下記式により計算する。
SP値(δ)=Y1δ1+・・・+Ynδn
Y1、・・・、Ynはそれぞれ使用する樹脂の質量%であり、かつ、Y1+・・・Yn=100質量%である。
δ1、・・・、δnはそれぞれの樹脂のSP値であり、上記式(1)で求めた値である。
ポリエチレン系樹脂のように、飽和炭化水素骨格を有する材料はSP値が小さくなり、例えば、エステル基、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基、シラノール基などの極性基にて変性された材料は、SP値が大きくなる。
前記変性ポリオレフィン系樹脂の種類は特に限定されるものではないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(E−MMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(E−EAA)、エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体(E−GMA)、アイオノマー樹脂(イオン架橋性エチレン−メタクリル酸共重合体、イオン架橋性エチレン−アクリル酸共重合体)、シラン変性ポリオレフィン、及び無水マレイン酸グラフト共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。
これらの変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂と比較して大きいSP値を有する為、上述した変性ポリオレフィン系樹脂を混合する場合は、所望のSP値を超えない範囲であることが重要であり、本発明における封止樹脂層を構成する樹脂組成物100質量%中、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。
前記粘着付与樹脂としては、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、又はそれらの水素添加誘導体などが挙げられる。具体的には、石油樹脂としては、シクロペンタジエン又はその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂があり、テルペン樹脂としてはβ−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が、クマロン−インデン樹脂としては、例えば、クマロン−インデン共重合体や、クマロン−インデン−スチレン共重合体があり、また、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトールなどで変性したエステル化ロジン樹脂などを例示することができる。また、該粘着付与樹脂は主に分子量により種々の軟化温度を有するものが得られるが、既述のポリエチレン系樹脂と混合した場合の相溶性、経時的なブリード性、色調や熱安定性などの点から軟化温度が好ましくは100以上、より好ましくは120℃以上で、かつ、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下の脂環式石油樹脂の水素添加誘導体が特に好ましい。
これらの粘着付与樹脂は、ポリエチレン系樹脂と比較して大きいSP値を有する為、上述した粘着付与樹脂を混合する場合は、所望のSP値を超えない範囲であることが重要であり、本発明における封止樹脂層を構成する樹脂組成物100質量%中、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。
本発明の封止樹脂層は、封止樹脂層の劣化、後記の添加剤の分解を防止するため、紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。
SP値が大きくなると、紫外線吸収効果が大きくなり、添加量を抑制できる為好ましい。一方、SP値が小さくなると、樹脂との相溶性が高くブリードアウトし難くなり、太陽電池素子表面の金属部位の変色(黄変)を抑制できる為好ましいが、本発明においては、前記したポリエチレン系樹脂(A)と紫外線吸収剤(B)とのSP値の差の絶対値が6.0(cal/cm3)1/2以下になるように選択することが重要である。SP値の差の絶対値は、好ましくは5.0(cal/cm3)1/2以下であり、より好ましくは4.5(cal/cm3)1/2以下であり、更に好ましくは4.0(cal/cm3)1/2以下である。SP値の差の絶対値がこの範囲であれば、紫外線吸収剤がブリードアウトし難くなり、太陽電池素子表面の金属部位の変色(黄変)を抑制できる為好ましい。
また、下限値は特に規定されないが、好ましくは1.0(cal/cm3)1/2以上であり、より好ましくは1.5(cal/cm3)1/2以上であり、更に好ましくは2.0(cal/cm3)1/2以上である。SP値の差の絶対値がこの範囲であれば、紫外線吸収効果が充分に発現でき、添加量を抑制できる為、好ましい。
一般に、太陽電池モジュールは朝から日中にかけては発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで温度が上昇し、85〜90℃程度まで達することがある。夕方から夜にかけては温度が低下し、外気温と同様の温度になる。一日毎にこのような温度サイクルを繰り返す。
ここで、紫外線吸収剤の融点以上の環境下に太陽電池モジュールが晒されると、紫外線吸収剤が液状成分として存在する為、ポリエチレン系樹脂からブリードアウトし、太陽電池素子の金属部位付近の樹脂成分の残渣への移行が促進されやすくなるものと考えられるが、融点がこの範囲であれば、太陽電池モジュールとして保管或いは使用(発電)中に固体として存在する時間が長くなり、ブリードアウトし難くなり、太陽電池素子表面の金属部位の変色(黄変)を抑制できる為好ましい。
紫外線吸収剤の融点の更に好ましい範囲は90℃以上であり、より好ましくは100℃以上である。融点がこの範囲であれば、使用(発電)中に固体として存在することができ、ブリードアウトし難くなり、太陽電池素子表面の金属部位の変色(黄変)を抑制できる為好ましい。
又、上限値は特に規定されないが、押出キャスト法での成形温度を考慮すると、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。融点がこの範囲であれば、成形時に溶解し、樹脂中に十分に分散することができ、紫外線吸収効果を十分に発揮できる為、好ましい。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。
一方、上限値は、通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下の範囲である。紫外線吸収剤の添加量がこの範囲であれば、紫外線吸収剤がブリードアウトし難くなり、太陽電池素子表面の金属部位の変色(黄変)を抑制できる為好ましい。
また、本発明に用いられる封止樹脂層には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、耐候安定剤、光拡散剤、造核剤、顔料(例えば白色顔料)、難燃剤、変色防止剤などが挙げられる。本発明においては、シランカップリング剤、酸化防止剤、耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが後述する理由などから好ましい。
本発明においては、用いる封止材は実質的に架橋しない封止材であることが好ましい。ここで、実質的に架橋しないとは、ASTM 2765−95で測定したキシレン可溶物が、通常70質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは95質量%以上であることを言う。
ここで、アウトガス量は以下の方法で得ることが出来る。
日本分析工業(株)製の加熱脱着装置、商品名「P&TオートサンプラーJTD−505III」を用いて、封止材のシート(縦2mm、横2mm)を150℃で10分間加熱し、発生したアウトガスを、キャリアーガスとしてHeガスを用いて、島津工業(株)製の質量分析装置、商品名「ガスクロマトグラフGC−17A」に移送、定量し、得られたデータから、150℃におけるアウトガス量(g/cm2)を求める。
シランカップリング剤は、封止樹脂層の保護材(ガラス、樹脂製のフロントシート、バックシートなど)や太陽電池素子などに対する接着性を向上させるのに有用であり、その例としては、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基のような不飽和基、アミノ基、エポキシ基などとともに、アルコキシ基のような加水分解可能な基を有する化合物を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例としては、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを例示することができる。本発明においては、接着性が良好であり、黄変などの変色が少ないことなどからγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。該シランカップリング剤の添加量は、押出成形時の樹脂圧の増加やゲル、フィッシュアイなどの異物の発生を抑制するため、また、成形品からのブリードアウトなどの不具合を抑制するためには、本発明における封止樹脂層を構成する樹脂組成物100質量%に対し、限定されるものではないが、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。また、接着性を発現させるためには0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。
また、シランカップリング剤と同様に、有機チタネート化合物などのカップリング剤も有効に活用できる。
酸化防止剤としては、限定されるものではないが、種々の市販品が適用でき、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系等のフェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の各種タイプのものを挙げることができる。
ビスフェノール系酸化防止剤としては、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,9,10−テトラオキサスピロ〕5,5−ウンデカン等を挙げることができる。
酸化防止剤の添加量は、本発明における封止樹脂層を構成する樹脂組成物100質量%に対し、限定されるものではないが、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上であり、かつ、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下の範囲で添加することが好ましい。
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。ヒンダードアミン系以外にも光安定化剤として機能するものはあるが、着色している場合が多く、本発明における封止樹脂層には好ましくない。
ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、本発明における封止樹脂層を構成する樹脂組成物100質量%に対し、限定されるものではないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上であり、かつ、0.5質量%以下、好ましくは0.3質量%以下の範囲で添加することが好ましい。
[柔軟性]
本発明に用いられる封止材の柔軟性は、適用される太陽電池の形状や厚み、設置場所などを考慮して適宜調整すれば良いが、例えば、動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E’)が1〜2000MPaであることが好ましい。太陽電池素子の保護の観点からは貯蔵弾性率(E’)は、より低い方が好ましいが、シート形状で前記した封止材を採取した場合のハンドリング性やシート表面同士のブロッキング防止などを考慮すると、3〜1000MPaであることがより好ましく、5〜500MPaであることがさらに好ましく、10〜100MPaであることが特に好ましい。貯蔵弾性率(E’)は、粘弾性測定装置を用いて、振動周波数10Hzで所定温度で測定し、温度20℃における値を求めることで得られる。
本発明に用いられる封止樹脂層の耐熱性は、封止樹脂層を構成する樹脂の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)により影響されるが、とくに、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(II)を含有する場合、その結晶融解ピーク温度が強く影響する。一般に、太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで85〜90℃程度まで昇温するが、結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、封止樹脂層の耐熱性を確保することが出来るため好ましい。耐熱性の評価は、例えば、厚み3mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)と厚み5mmのアルミ板(サイズ;縦120mm、横60mm)の間に厚みが0.5mmのシート状の封止材を重ね、真空プレス機を用いて150℃、15分の条件で積層プレスした試料を作製し、該試料を100℃の恒温槽内で60度に傾斜して設置し500時間経過後の状態を観察し、ガラスが初期の基準位置からずれなかったものを○、ガラスが初期の基準位置からずれたり、シートが溶融したものを×として優劣を評価することができる。
本発明に用いられる封止樹脂層の全光線透過率は、適用する太陽電池の種類、例えばアモルファスの薄膜系シリコン型などや太陽電子素子に届く太陽光を遮らない部位に適用する場合には、あまり重視されないこともあるが、太陽電池の光電変換効率や各種部材を重ね合わせる時のハンドリング性などを考慮し、85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
次に、シート状の封止材の製膜方法について説明する。封止材の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.03mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上であり、かつ、1mm程度以下、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.5mm以下であればよい。
製膜方法としては、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法などを採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性などの面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いる樹脂組成物の流動特性や製膜性などによって適宜調整されるが、概ね80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上であり、かつ、概ね300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下であり、シランカップリング剤などを添加する場合は反応に伴う樹脂圧の増加やフィッシュアイの増加を抑制するために成形温度を低下させることが好ましい。シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの各種添加剤は、予め樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給してもよいし、予め全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給してもよいし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製し供給してもよい。また、必要に応じて、シートを巻物とした場合のシート同士のブロッキング防止や太陽電池素子の封止工程でのハンドリング性やエア抜きのしやすさ向上などの目的のためエンボス加工や種々の凹凸(円錐や角錐形状や半球形状など)加工を行うことができる。さらに、シートを製膜する際に、シート製膜時のハンドリング性を向上するなどの目的のため、別の基材フィルム(延伸ポリエステルフィルム(OPET)や延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)など)と押出ラミネート法やサンドラミネート法などの方法で積層することができる。
太陽電池素子としては、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体型、色素増感型、有機薄膜型等が挙げられる。
本発明における金属部位を有する太陽電池素子の金属部位とは、金属材料からなる導電部位を表す。
太陽電池素子表面には、発生した電気(電荷)を集電する為の導電部位が設けられる。尚、太陽電池素子から発電した電気を外部へ取り出すための配線は、この導電部位に接触するようにして形成される。
この導電部位の材料は、通常金属や、無機及び有機導電材料から選択されるが、本発明においては、導電部位が金属材料からなるものを使用し、その際に本発明の効果を奏し得る。
この金属部位は、銀等の金属成分とバインダーとなる樹脂成分とを有機溶媒(例えば、酢酸エチル)に分散させた金属ペーストを常温で塗布し、高温で溶媒除去と焼成を行うことにより設けられることが一般的であり、樹脂成分として主に用いられる材料は、有機溶媒に対する溶解性の観点から、SP値が比較的高い(10〜15(cal/cm3)1/2)材料(例えば、セルロース樹脂やエポキシ樹脂)が選択されている。尚、この樹脂成分は、高温での焼成において大部分が太陽電池素子表面から除去されるが、一部分は残渣として残ることが推測され、前述した通り、この残渣と紫外線吸収剤との作用により金属部位の外観変化(黄変)が引き起こされているものと思われる。
本発明の太陽電池モジュールは、前記した太陽電池素子と、前記した封止樹脂層とを含むが、より詳細には前記封止材(封止樹脂層)を用い、太陽電池素子を上下の保護材で固定することにより製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができ、好ましくは、前記封止材と、上部保護材と、太陽電池素子と、下部保護材とを用いて作製された太陽電池モジュールが挙げられ、具体的には、上部保護材/封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/封止材(封止樹脂層)/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟むような構成のもの、下部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部保護材を形成させるような構成のもの、上部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。
なお、本発明の太陽電池モジュールにおいて、封止材が2箇所以上の部位に使用される場合、全ての部位に本発明の封止材を用いても、1箇所のみの部位に本発明の太陽電池封止材を用いて、他の箇所には別の封止材を用いてもよい。また、封止材が2箇所以上の部位に使用される場合、各々の部位に使用される本発明の太陽電池封止材を構成する樹脂組成物は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本実施例に用いた紫外線吸収剤を下記に示す。
2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(シプロ化成(株)製、商品名:シーソーブ709、SP値:11.2(cal/cm3)1/2、融点:102℃)(以下、UVA−1と略する)
2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール(シプロ化成(株)製、商品名:シーソーブ703、SP値:11.6(cal/cm3)1/2、融点:137℃)(以下、UVA−2と略する)
2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン(シプロ化成(株)製、商品名:シーソーブ107、SP値:13.5(cal/cm3)1/2、融点:129℃)(以下、UVA−3と略する)
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(シプロ化成(株)製、商品名:シーソーブ101、SP値:12.1(cal/cm3)1/2、融点:63℃)(以下、UVA−4と略する)
2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン(シプロ化成(株)製、商品名:シーソーブ102、SP値:10.7(cal/cm3)1/2、融点:47℃)(以下、UVA−5と略する)
4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成(株)製、商品名:シーソーブ103、SP値:10.3(cal/cm3)1/2、融点:47℃)(以下、UVA−6と略する)
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成(株)製、商品名:シーソーブ100、SP値:14.3(cal/cm3)1/2、融点:142℃)(以下、UVA−7と略する)
2,2’、4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成(株)製、商品名:シーソーブ106、SP値:18.0(cal/cm3)1/2、融点:195℃)(以下、UVA−8と略する)
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(I)として、エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:エンゲージ8200、オクテン含有量:10.1モル%(31質量%)、MFR:5、Tm:65℃、ΔHm:53J/g)を95質量部と、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(II)として、エチレン−オクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズ9100、オクテン含有量:12.8モル%(37質量%)、MFR:1、Tm:119℃、ΔHm:38J/g)を5質量部の割合で混合した樹脂組成物(III)(SP値:8.1(cal/cm3)1/2)(以下、PE−1と略する)に、更に紫外線吸収剤としてUVA−1を0.2質量%と、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503)を0.5質量%添加し、Tダイを備えた40mmφ単軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練し、20℃のキャストロールで急冷製膜することにより厚みが0.5mmのシート状の封止材を得た。
上記で得られた太陽電池モジュールを、300mm×300mmの金属製バットに静置し、85℃のオーブンに入れ、液面が評価用サンプルを下回らないように蒸留水を加えながら、30日経過後の外観を確認し、下記基準で評価した結果を表1に示す。
(1)変色評価
◎:セル表面の金属部位が変色していない。
○:セル表面の金属部位の一部分が変色している。
△:セル表面の金属部位全体が変色している。
×:セル表面の金属部位全体が著しく変色している。
(2)腐食評価
◎:配線表面が変化していない。
○:配線表面の一部が曇っている。
△:配線表面の全体が曇っている。
×:配線表面の全体が著しく曇っている。或いは配線表面に錆びや腐蝕が確認できる。
実施例1において、添加する紫外線吸収剤を表1に示した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。上記と同様に評価した結果も表1に併せて示す。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン(株)製、商品名:エバフレックスEV150、酢酸ビニル含有量:14モル%(33質量%)、MFR:30)(SP値:8.4(cal/cm3)1/2)(以下、EVA−1と略する)に、紫外線吸収剤としてUVA−5を0.2質量%、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503)を0.5質量%、及び架橋剤(アルケマ吉富(株)製、商品名:ルペロックスTBEC)を1質量%添加し、Tダイを備えた40mmφ単軸押出機を用いて設定温度100℃で溶融混練し、20℃のキャストロールで急冷製膜することにより厚みが0.5mmのシート状の封止材を得た。得られた封止材を用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製し、評価した。結果を表1に示す。
表2に示す構成に変更した以外は、実施例5と同様にして太陽電池モジュール作製した。これらの太陽電池モジュールを、下記X〜Zの処理条件によって処理した後、前記基準で、変色評価及び腐食評価を行った。結果を表2に示す。
(処理条件)
X)300mm×300mmの金属製バットに静置し、85℃のオーブンに入れ、液面が評価用サンプルを下回らないように蒸留水を加えながら、30日経過後の外観を確認し、前記基準で評価した。
Y)85℃のオーブンに入れ、30日経過後の外観を確認し、前記基準で評価した。
Z)85℃85%RHの恒温恒湿槽に入れ、30日経過後の外観を確認し、前記基準で評価した。
参考例3〜6に示すように、前記参考例8と同様な太陽電池モジュールを前記Yの処理条件によって処理した後評価した場合や(参考例3)、前記参考例8と同様な太陽電池モジュールを前記Zの処理条件によって処理した後評価した場合や(参考例4)、前記比較例1と同様な太陽電池モジュールを前記Yの処理条件によって処理した後評価した場合や(参考例5)、又は前記比較例1と同様な太陽電池モジュールを前記Zの処理条件によって処理した後評価した場合(参考例6)、参考例8又は比較例1と同様な変色評価結果は確認されなかった。
このように、評価用太陽電池モジュールが下部保護材を有するまま評価した場合や、又は異なる処理条件によって処理した後評価した場合、SP値の差の絶対値が所望の値を超えても変色評価または腐食評価が確認できない場合がある。
評価用太陽電池モジュールに下部保護材を設けず、85℃の温水で処理して評価することは、より短時間で変色を促進させるができ、変色評価又は腐食評価が確認しやすいため、好ましい。
Claims (5)
- 表面に金属部位を有する太陽電池素子と、少なくとも前記金属部位側面に配される封止樹脂層とを含む太陽電池モジュールであって、前記封止樹脂層が、ポリエチレン系樹脂(A)及び融点が100℃以上150℃以下である紫外線吸収剤(B)を含有し、かつ、前記ポリエチレン系樹脂(A)の溶解度パラメータ(SP値)と、前記紫外線吸収剤(B)の溶解度パラメータ(SP値)との差の絶対値が6.0(cal/cm3)1/2以下であり、前記ポリエチレン系樹脂(A)がエチレン−α−オレフィン共重合体であることを特徴とする太陽電池モジュール。
- 前記ポリエチレン系樹脂(A)の溶解度パラメータ(SP値)が7.8〜8.2(cal/cm3)1/2であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
- 前記紫外線吸収剤(B)がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
- 前記封止樹脂層が、ASTM 2765−95で測定したキシレン可溶物が70質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
- 前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の封止樹脂層に用いられる太陽電池用封止材。
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