JP6178689B2 - タングステン耐熱合金、摩擦攪拌接合工具、および製造方法 - Google Patents

タングステン耐熱合金、摩擦攪拌接合工具、および製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高温環境下で用いられる塑性加工用工具、特に摩擦攪拌接合工具に適したタングステン耐熱合金とそれを用いた摩擦攪拌接合工具、およびタングステン耐熱合金の製造方法に関する。
近年、熱間押出用ダイス、継目無製管用ピアサープラグ、射出成形用ホットランナノズル、などの高温環境下で用いられる塑性加工用工具の長寿命化に適する耐熱合金が要求されている。
特に近年開発の進みつつある摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding、以下FSWとも略す)に用いられる回転工具は、摩擦攪拌接合の適用範囲を拡大するため、高温強度および室温硬度の高い材料の開発が進んでいる。
摩擦攪拌接合は、金属部材の接合部に回転工具を押し当て、その摩擦熱により軟化した被接合材を塑性流動させて接合する方法である。摩擦攪拌接合は既に、アルミニウム、マグネシウムなどの低融点、軟質材料の接合において実用化が進み適用範囲が拡大しつつある。しかし現在は、より高融点、硬質な被接合材への適用を図るために、高温強度、耐磨耗性を向上させた実用寿命を有する工具の開発が求められている。
その理由として、FSWでは摩擦熱により被接合材を軟化させた際に、接合条件、被接合材による違いがあるものの、一般には工具の温度が被接合材の融点の70%前後にまで上昇することがあるためである。すなわち低融点のアルミニウムではこの温度が約400℃程度であるのに対し、鉄鋼材では1000〜1200℃に達するため、工具材質にはこの温度域においても被接合材を塑性流動させることが出来る高温強度、靭性および耐摩耗性が要求される。これは、FSW、FSJ(Friction Spot Joining、摩擦点接合)および摩擦攪拌応用技術に使用される工具に共通の課題である。
また、摩擦撹拌接合工具や、熱間加工用工具に用いられる材料は、耐摩耗性と耐欠損性が求められるため、高温での強度や硬度だけではなく、靭性も必要とされる。これまで提案されている耐熱材料として、W、Mo系の耐熱合金が挙げられるが、発明者らもMoにTiCNを添加することによって優れた高温特性を示す合金が得られることを見出し、鋭意開発した結果、TiCNの添加量を調整することによって、硬度、強度と靭性のバランスのとれた材料を開発することができた(非特許文献1)。しかし、W、Mo系耐熱合金が工具材料として使用される用途は、加工対象として鉄系材料を想定しているケースが多く、特に炭素鋼やステンレス鋼は変形抵抗が高いため難加工材として位置づけられる。鉄系の材料を熱間塑性加工する場合、工具の使用中の温度が1000℃前後になるため、Mo系母材の工具を使用すると被処理材に主として含まれるFeと工具に主として含まれるMoとが反応し、Fe−Mo系の金属間化合物が工具表面に形成される問題がある。中でもFeMo(μ相)は、硬くて脆い性質があることが知られており(非特許文献2)、工具表面に形成されるとこの金属間化合物相が脱落するため、工具摩耗量を増大させる原因となり得る。一方、同様に高融点材料として知られているWは、工具使用温度域では金属間化合物を形成しないことが状態図からわかるため、Mo系合金を工具材料として用いた場合には金属間化合物を形成する問題があるが、W系合金を用いることによってその問題を解決することができる。
高融点材料を摩擦撹拌接合するための工具として、W基合金は既に着目されており、W-Re合金や硬質材料との複合材料であるW−Re材料(特許文献1)、W−PcBN(特許文献2)、などが開発されている。また他には、Co基合金(特許文献3、4)、W−TiCN超硬合金(特許文献5、6)、Ni基超合金(特許文献7)、Ir合金(特許文献8)シリコンナイトライド(特許文献9)の摩擦撹拌接合工具が開発されている。
特開2004−358556号公報 特表2003−532543号公報 国際公開第2007/032293号明細書 特開2011−62731号公報 特開平06−279911号公報 特開昭57−47845号公報 特開2009−255170号公報 特開2004−90050号公報 国際公開第2005/105360号明細書
粉体粉末冶金協会講演論文要綱集(平成25年度春季大会)、粉体粉末冶金協会、2013年、25頁 Intermetallics, Vol. 15 (2007) 1573-1581 Phase Diagrams of Binary Tungsten Alloys, Indian Institute of Metal(1991) 89
上記のように、接合対象が鉄系材料である摩擦攪拌接合工具材料として、種々の材料が開発されている。
しかしながら、上記材料には以下のような問題があった。
まず、W−Reは靭性に優れるが摩耗しやすく、PcBNは耐摩耗性に優れるが折損しやすい欠点があった。W−Re/PcBNは耐欠損性と耐摩耗性を両立した非常に優れた材料であるが、高価であるため、実用性に乏しいという問題があった。
一方、Co基合金はチタン合金の接合には有効であるが、ステンレスの接合には耐摩耗性が十分ではなく適用できないという問題があった。
またNi基超合金は、高温での硬度が低いため耐摩耗材料として不十分であった。
さらに、Ir合金は、高融点合金原料のIrが高価である点で実用化が難しいという問題があった。
一方、W−TiCN超硬合金は切削工具としての使用が主であり、脆性材料であるため、高融点材料を接合する用途には不向きであった。
さらに、シリコンナイトライドは、ステンレスの薄板の接合には効果があるが、5mmを超える厚板を接合する場合には、プローブ長が長くなるため折損する可能性が高いという問題があった。
このように、従来の摩擦攪拌接合工具材料は、鉄系材料を接合対象とした場合、強度と実用性を両立させた構造はないのが現状であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は加工対象物に対応した耐力や硬度等の物性と実用性の双方を充足する、塑性加工用工具用のタングステン耐熱合金を提供することにある。
上記した課題を解決するため、本発明者は、W−TiCN合金について再度検討した。
上記の通り、WはMoに比べて脆い特性を持つため、Wに、同様に脆性材料である硬質粒子(TiCN)のみを添加して(特に高温での)高強度化、高硬度を達成するのは困難と考えられていた。
しかしながら、発明者らは、硬質粒子としてTi、Zr、Hfの炭窒化物を所定の割合でWに添加することにより、脆性を極端に損なうことなく、かつMoの場合よりもさらに優れた特性を併せ持つ耐熱材料を得られることを見出し、本発明をするに至った。
即ち、本発明の第1の態様は、Wを主成分とする第1の相と、Ti、Zr、Hfの少なくとも1つの炭窒化物を主成分とする第2の相と、前記第2の相の周囲に設けられ、WとTi、Zr、Hfの少なくとも1つの炭窒化物固溶体を有する第3の相と、を有し、残部が不可避不純物であり、前記炭窒化物の含有量が5体積%以上、30体積%未満である、タングステン耐熱合金である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のタングステン合金を用いた摩擦撹拌接合工具である。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の摩擦撹拌接合工具の表面に、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選択される少なくとも1種以上の元素の炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を含む被膜層を有する、摩擦撹拌接合工具である。
本発明の第4の態様は、第2の態様または第3の態様に記載の摩擦撹拌接合工具を有する、摩擦撹拌接合装置である。
本発明の第5の態様は、W粉末と炭窒化物粉末を混合する(a)と、前記(a)により得られた混合粉を室温中で圧縮成形する(b)と、前記(b)により得られた成形体を少なくとも水素あるいは窒素を含む雰囲気にて、1800℃以上、2000℃以下で加熱して焼結する(c)と、を具える、第1の態様に記載のタングステン耐熱合金を製造する製造方法である。
本発明によれば、従来よりも加工対象物の高融点化に対応した耐力や硬度等の物性と実用性の双方を充足する、塑性加工用工具用のタングステン耐熱合金を提供することができる。
本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金中の各相の模式図である。 本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金の電子顕微鏡による組織写真を模した図であり、淡色部が第1の相1、濃色部が第2の相2、中間色部が第3の相3を示している。 本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金中の炭窒化物の粒径分布を示す図である。 本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金中の炭窒化物の粒径分布を示す図である。 本発明の実施形態に係る摩擦撹拌接合工具の製造方法を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る摩擦撹拌接合工具101を示す側面図である。 3点曲げ試験の概略を示す模式図である。 3点曲げ試験の概略を示す模式図である。 本発明の実施例に係る摩擦攪拌接合工具を形成するタングステン耐熱合金のX線回折結果を示す図である。 本発明の実施例に係る摩擦攪拌接合工具を形成するタングステン耐熱合金の断面の拡大写真を模した図である。
以下、図面を参照して本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
<タングステン耐熱合金組成>
まず、本発明の実施形態に係る摩擦攪拌接合工具(塑性加工用工具)に用いられるタングステン耐熱合金の組成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金中の各相の模式図であり、図2は、前記タングステン耐熱合金の電子顕微鏡による組織写真である。
本発明の実施形態に係る摩擦攪拌接合工具に用いられるタングステン耐熱合金は、図1および図2に示すように、Wを主成分とする第1の相1と、Ti、Zr、Hfの少なくとも1つの炭窒化物を主成分とする第2の相2と、第2の相の周囲に設けられ、WとTi、Zr、Hfの少なくとも1つの炭窒化物固溶体を有する第3の相3と、を有し、残部が不可避不純物であり、炭窒化物の含有量が5体積%以上、30体積%未満である、タングステン耐熱合金である。なお、図1では炭窒化物がTiCNの場合を例示しており、図2はTiCNの含有量を26.8体積%とした場合を例示している。
また、図1および図2では、第3の相3は、第2の相2の周囲を覆うように形成される。
以下、各相および各相を構成する材料について説明する。
<第1の相>
第1の相はWを主成分とする相である。ここでいう主成分とは最も含有量が多い成分であることを意味する(以下同様)。
具体的には、第1の相は例えばWと不可避不純物で構成されるが、後述する炭窒化物の含有量によっては、第1の相に炭窒化物を構成する元素が固溶している場合もある。
第1の相におけるWは高融点、高硬度でかつ高温における強度に優れ、耐熱合金に金属としての物性をもたせるために、必須である。
なお、合金中のWの平均結晶粒径は0.3μm以上、20μm以下であるのが望ましい。これは、平均結晶粒径は0.3μm未満、あるいは20μmを超えると、合金の密度が低くなり過ぎて硬度等の特性を評価できないためである。
<第2の相>
第2の相は、Ti、Zr、Hfの少なくとも1つの炭窒化物を主成分とする相であり、具体的には、例えば上記した炭窒化物と不可避不純物で構成される。
第2の相におけるTi、Zr、Hfの炭窒化物は、Wに添加することにより、後述するように、結晶粒が微細化されて、室温硬度、および高温での0.2%耐力を高めることができるため、必須である。
なお、炭窒化物の代表的なものとしてはTiCNが挙げられるが、TiCNの組成としては、例えばTiC1−x(x=0.3〜0.7)となるものが挙げられ、具体的にはTiC0.30.7、TiC0.50.5、TiC0.70.3などが挙げられる。
この中で代表的なものとしては、TiC0.50.5が知られているが、その他の組成の炭窒化チタン、炭窒化ジルコニウム、炭窒化ハフニウムも、TiC0.50.5と同様に結晶粒の微細化の効果が得られる。
なお、合金中の炭窒化物(例えばTiCN)の含有量が5体積%未満の場合、室温硬度、高温での0.2%耐力を高くする効果が得られず、30体積%以上の場合、靭性が低下するため、上記工具として使用した場合に欠損したり亀裂を生じたりするという不具合が生じる。また、30体積%以上の場合、抗析力がMo−TiCNよりも低下するため、モリブデン耐熱合金に対する優位性が失われる。
そのため、合金中の炭窒化物の含有量は5体積%以上、30体積%未満であることが好ましい。
なお、合金中の炭窒化物の含有量が15体積%を越えると、延性が低下し、脆性破断を起こし易くなるため、合金中の炭窒化物の含有量は5体積%以上、15体積%以下であることが、より好ましく、さらに好ましくは5体積%以上、8体積%以下である。ただし、FSJ用の工具のように、延性より硬度が重要な工具に本発明を適用する場合は、合金中の炭窒化物の含有量が15体積%を越える合金も適用可能である。
<第3の相>
第3の相は第2の相の周囲に形成される層であり、第1の相のWと第2の相の炭窒化物との固溶体を主成分とし、これと不可避不純物で構成される。
<不可避不純物>
本発明に係る摩擦攪拌接合工具を形成するタングステン耐熱合金は、上記した必須の成分に加え、不可避不純物を含む場合がある。
不可避不純物としては、Fe、Ni、Cr、などの金属成分や、C、N、Oなどがある。
<TiCNの粒径>
次に、本発明の実施形態に係る摩擦攪拌接合工具を形成する焼結後のタングステン耐熱合金中の炭窒化物の粒径(第2の相の粒径)について図3および図4を参照して説明する。
図3および図4は本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金中の炭窒化物の粒径分布を示す図である。
ここでは炭窒化物としてTiCNを例に説明するが、炭窒化ジルコニウム、炭窒化ハフニウム等も同様である。
本発明の実施形態に係る摩擦攪拌接合工具を形成する焼結後のタングステン耐熱合金中のTiCNの粒径は、平均粒径が0.1μm以上、10μm以下であるのが好ましい。これは、以下の理由によるものである。
まず、平均粒径を0.1μm以上とする理由について説明する。
仮に、平均粒径を0.1μmよりも小さくする場合、配合するTiCN粉末の平均粒径を0.1μmより小さくする必要がある。しかし、このような微粒子は一般的に凝集し易くなる傾向があり、凝集2次粒子は焼結により顕著な粗大粒を形成し易くなり、また気孔の生成も促し易い。このような顕著な粗大粒子を形成させないためには、焼結温度を低下させる必要があるが、焼結温度の低下は焼結体密度の低下を引き起こしてしまう。
そのため、TiCNの平均粒径は0.1μm以上であるのが好ましい。
次に、平均粒径を10μm以下とする理由について説明する。
仮にタングステン耐熱合金中のTiCNの平均粒径を10μmよりも大きくする場合、粗粒のTiCNが焼結を阻害して焼結歩留まりが極端に悪くなり、工業的とはいえなくなる恐れがある。さらに焼結できたとしても粗粒のTiCN粒子が破壊の起点となって、機械的強度を低下させる恐れがある。
そのため、TiCNの平均粒径は10μm以下であるのが好ましい。
また、焼結体の密度上昇と均一性の確保という観点からは、TiCNの平均粒径は0.1μm以上、3μm以下であることがより好ましい。
なお、詳細は後述するが、ここでいう平均粒径とは、線インターセプト法で求めた値のことである。
また、合金中のTiCN粒は、図3に示すように、0.1μm以上、5.0μm以下の粒子の個数割合が合金中のTiCN粒全体の40%以上、60%以下の割合であるのが好ましい。これは、前述のように、TiCN粒の平均粒径は0.1μm以上、10μm以下であるのが好ましいが、ひとつのほぼ正規分布の粒度を示している場合、粒度分布がブロード過ぎると焼結体組織の不均一性、即ち焼結体部位に関し特性の不均一性につながる可能性があるためであり、一方、非常に均一な粒度の粉末は得られ難く、製造コストの面でデメリットがあるためである。
さらに、TiCN粒は、微粒と粗粒を織り交ぜることにより、添加の効果をより高めることができる。具体的には、図4に示すように、粒径が0.1μm以上、3.5μm以下の粒子の個数割合が合金中のTiCN粒全体の20%以上、40%以下の割合であり、5.0μm以上、7.0μm以下の粒子の個数割合が合金中のTiCN粒全体の10%以上、20%以下の割合であるのがより好ましい。このような分布とすることにより、微粒側の粒径が0.1μm以上、3.5μm以下のTiCN粒は、主としてWの粒界に介在することにより、Wの粒界強度を高める効果に寄与する(効果A)。一方、粗粒側の粒径5.0μm以上、7.0μm以下のTiCN粒は、タングステン耐熱合金のバルク全体の硬度を高める効果に寄与する(効果B)。
なお、粒径が0.1μm以上、3.5μm以下の粒子の個数割合が20%より低いと、粗粒の比率が高くなるため、効果Aが得られ難く、40%より高いと、微粒の比率が高すぎ、効果Bが得られ難いため、好ましくない。
また、粒径が5.0μm以上、7.0μm以下の粒子の個数割合が10%より低いと、粗粒の比率が低くなるため、効果Bが得られ難く、20%より高いと、粗粒の比率が高くなり、効果Aが得られ難いため、好ましくない。
さらに、合金中の炭窒化物の最大結晶粒径は1μm以上、30μm以下とするのが望ましい。これは、最大結晶粒径は1μm未満、あるいは30μmを越えると、合金の密度が低くなり過ぎて硬度等の特性を評価できないためである。
<物性>
次に、本発明の実施形態に係る摩擦攪拌接合工具用のタングステン耐熱合金の物性について説明する。
本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金の強度としては、1200℃における0.2%耐力(曲げ相当)が400MPa以上、かつ室温(ここでは20℃、以下同様)におけるビッカース硬度(室温硬度)が500Hv以上である。
タングステン耐熱合金をこのような物性にすることにより、タングステン耐熱合金を例えばFe系、FeCr系、Ti系用等の摩擦攪拌接合部材のような、高融点、高強度が要求される耐熱部材に適用することができる。
なお、ここでいう0.2%耐力(曲げ相当)とは、曲げ試験を行い、永久ひずみ量が0.2%となる場合の応力を示すものであり、以下「0.2%耐力(曲げ相当)」と記載する。
なお、本発明がタングステン「耐熱」合金であるにも関わらず、室温硬度を条件にしているのは、以下の理由によるものである。
本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金を摩擦攪拌接合工具として用いる場合、工具の摩耗量が工具材料の硬度と密接な関係にあり、硬度が高いほど工具摩耗量を少なくできる効果がある。摩擦攪拌接合の場合、ツールを挿入する際に工具への高い負荷が生じるため、挿入時の摩耗が顕著に現れる。挿入時はまだ工具もワークも発熱が少なく、両者の温度も高くはなっていないため、工具の摩耗量は、室温の硬度に依存することとなる。
また、本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金は、摩擦攪拌接合工具そのものとして使用される場合もあるが、多くの場合は摩擦攪拌接合工具母材として使用され、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選択される少なくとも1種以上の元素の炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を含む被膜が表面に被覆され工具とされる。ここで、実際に工具として使用する場合、まず室温にて工具を接合対象材料に強く押し込みながら回転させ、摩擦熱により接合対象物の温度を上昇させる。よって、回転初期の母材の変形、破壊または母材と被覆膜との剥離がないように、母材の室温硬度が高い(500Hv以上である)ことが必要である。
以上がタングステン耐熱合金の条件である。
<製造方法>
次に、本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金およびそれを用いた摩擦攪拌接合工具の製造方法について、図5を参照して説明する。
本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金およびそれを用いた摩擦攪拌接合工具の製造方法については、上記した条件を満たす摩擦攪拌接合工具が製造できるものであれば、特に限定されるものではないが、図5に示すような方法を例示することができる。
まず、原料粉末を所定の比率で混合して混合粉末を生成する(図5のS1)。
原料としては、W粉末およびTiCN粉末(または炭窒化チタン、炭窒化ジルコニウム、炭窒化ハフニウム等の炭窒化物粉末)が挙げられるが、以下、各粉末の条件について、簡単に説明する。
W粉末は純度99.99質量%以上、Fsss(Fisher Sub-Sieve Sizer)平均粒径0.1μm〜5.0μmのものを用いるのが好ましい。
なお、ここでいうW粉末純度とは、JIS H 1403記載のタングステン材料の分析方法により得たものであり、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Pb、Si、Snの値を除いた金属純分を意味する。
炭窒化物粉末は、純度99.9%以上、Fsss平均粒径0.1μm〜10.0μmのものを用いるのが好ましい。
なお、ここでいう炭窒化物粉末の純度とは、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Si、Snを除いた純分を意味する。
また、粉末の混合に用いる装置や方法については特に限定されることはなく、例えば、乳鉢、V型ミキサー、ボールミルなど公知の混合機を使用することができる。
次に、得られた混合粉末を圧縮成形し、成形体を形成する(図5のS2)。
圧縮成形に用いる装置は特に限定されるものではなく、一軸式プレス機やCIP(Cold Isostatic Pressing)など公知の成形機を使用すればよい。圧縮の際の条件としては、圧縮の際の温度は室温(20℃)でよい。
一方、成形圧はCIPの場合、98〜294MPa(室温)であるのが好ましい。これは、成形圧が98MPa未満の場合は成形体が十分な密度を得られず、また、294MPaを超えると、圧縮装置と金型が大型化し、コスト面で不利になるためである。
次に、得られた成形体を加熱し、焼結する(図5のS3)。
具体的には、少なくとも水素あるいは窒素を含む雰囲気(例えばH、H−Ar、H−N混合雰囲気、減圧N雰囲気等)にて1800℃以上、2000℃以下で加熱するのが好ましい。
これは、加熱温度が1800℃未満の場合、焼結不十分となり焼結体の密度が低くなるためであり、また、加熱温度が2000℃より高いと、TiCNの分解が進行することにより巨大柱状結晶粒の成長へと至り、その結果タングステン耐熱合金の強度が低下してしまうためである。そのため、焼結する際には、1800℃以上、2000℃以下で焼結するのが好ましい。また、水素あるいは窒素を少なくとも含む雰囲気である理由は、水素は原料粉末が含む酸素の還元作用があり、また窒素は焼結中の脱窒を防ぐ効果があるためである。なお、焼結時の圧力は大気圧で可能であるが、これに限定されず、加圧、減圧のいずれでも焼結可能である。
次に、得られた焼結体の相対密度が95%程度であった場合には、不活性雰囲気にて熱間等方圧加圧(Hot Isostatic Pressing 以降HIPとも呼ぶ)することが好ましい。(図5のS4)。ただし、得られた焼結体の相対密度が96%以上となっていれば、HIPを省略しても室温硬度や高温での0.2%耐力を低下させることはほとんどない。
HIPを行う際の具体的な加圧条件としては、温度1400〜1800℃、圧力152.0〜253.3MPaの不活性雰囲気で、HIP処理を行うのが好ましい。これは、この範囲を下回ると密度が上がらなくなり、上回ると大型装置が必要となり製造コストに影響するためである。
このようにして得られた摩擦攪拌接合工具の素材は、切削、研削・研磨等の加工を経て(図5のS5)、摩擦攪拌接合工具が作製される。
以上が本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金とそれを用いた摩擦攪拌接合工具の製造方法である。
<摩擦攪拌接合工具>
本発明の実施形態に係る摩擦攪拌接合工具を形成するタングステン耐熱合金は、上記の構成を有するものであるが、ここで、本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金を用いた摩擦攪拌接合工具の構成について、図6を参照して簡単に説明する。
図6は本発明の実施形態に係る摩擦攪拌接合工具101を示す側面図である。
図6に示すように、摩擦攪拌接合工具101は、接合装置の図示しない主軸と連結されるシャンク102と、接合時に接合対象物の表面と接触するショルダー部103と、接合時に接合対象物に挿入されるピン部104を有している。
このうち、少なくともショルダー103とピン部104の母材は、本発明に係るタングステン耐熱合金で形成される。
また、摩擦攪拌接合工具が使用中の温度によって酸化、また接合対象物と溶着することのないように、タングステン耐熱合金の表面に周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選択される少なくとも1種以上の元素の炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を含む被膜が表面に被覆されるのが好ましい。被膜層の厚さは、1〜20μmが好ましい。被膜層の厚さが1μm未満の場合は、被膜層を設けたことによる効果が期待できない。一方で、被膜層の厚さが20μm以上の場合は、過大な応力が生じ、膜が剥離する恐れがあるため、極端に歩留まりが悪くなる可能性がある。
このような被膜(コーティング層)としては、TiC、TiN、TiCN、ZrC、ZrN、ZrCN、VC、VN、VCN、CrC、CrN、CrCN、TiAlN、TiSiN、TiCrN、並びに少なくともこれらの内の2層以上を含む多層膜を有するものが挙げられる。ここで、コーティング層の各元素の組成比率は任意に設定できる。上記TiCNも本願発明に記載のTiC1−x(x=0.3〜0.7)のX値に限定されるものではない。
コーティング層の形成方法は、特に限定されることなく、公知の方法で被膜形成できる。代表的な方法として、アークイオンプレーティングやスパッタリングなどのPVD(Physical Vapor Deposition)処理、化学反応によりコーティングするCVD(Chemical Vapor Deposition)処理、ガス状元素をプラズマにより分解、イオン化しコーティングするプラズマCVD処理などがあるが、いずれの方法でも単層膜から多層膜まで処理可能であり、本願発明のタングステン耐熱合金を母材とした場合に、優れた密着性を発揮できる。
このように、本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金はタングステンを主成分とする第1の相と、Ti、Zr、Hfの少なくとも1つの炭窒化物を主成分とする第2の相と、第2の相の周囲に設けられ、WとTi、Zr、Hfの少なくとも1つの炭窒化物を含む固溶体を有する第3の相とを有し、残部が不可避不純物であり、炭窒化物の含有量が5体積%以上、30体積%未満である。
そのため、本発明の実施形態に係るタングステン耐熱合金を用いた摩擦攪拌接合工具は従来よりも接合対象物(加工対象物)の高融点化に対応した耐力や硬度等の物性と実用性の双方を充足する。
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
炭窒化物の含有量が異なるタングステン耐熱合金を作製し、室温硬度をモリブデン耐熱合金の場合と比較した。具体的な手順は以下の通りである。
<試料の作製>
まず、原料として、母材(第1相)としてのW粉末および比較例としてMo粉末を、端窒化物としてのTiCN粉末、ZrCN粉末、HfCN粉末を用意した。具体的には、W粉末はアライドマテリアル社製の純度99.99質量%以上、Fsss法による平均粒径が1.2μmのものを用いた。
また、Mo粉末は、アライドマテリアル社製の純度99.99質量%以上、Fsss法による平均粒径が4.3μmのものを用いた。
さらに、TiCN粉末には、株式会社アライドマテリアル製のTiCN粉末・品種名5OR08で、純度99.9質量%以上、Fsss法による平均粒径が0.8μmのものを用いた。
また、ZrCN粉末にはアライドマテリアル製のZrCN粉末・品種名、5OV25で、Fsss法による平均粒径が2.0μm〜3.0μmのものを用いた。
さらに、HfCN粉末は本出願人が試作した、Fsss法による平均粒径が2.0μm〜3.0μmの粉末を用いた。
成形性を促進するバインダーとしてパラフィンを用い、W粉末またはMo粉末に対し、TiCN粉末、ZrCN粉末、HfCN粉末のいずれかを上記粉末全体の体積に対し3〜62体積%を添加した。なお、ここでの体積%は、原料を配合する際に重量を計測し、密度で除して体積比率に換算したものである。
次に、これらの粉末を後述する表1に示す配合比率で、乳鉢で混合して混合粉末を作製し、一軸式プレス機を用いて、温度20℃、成形圧3ton/cmの条件下で圧縮成形し、成形体を得た。
次に、得られた成形体を水素雰囲気下(大気圧)で温度1900℃で加熱し、相対密度90%以上の焼結体を得た。
さらに、焼結体を処理温度1600℃、Ar雰囲気下、圧力202.7MPaでHIP処理し、相対密度約98%のタングステン耐熱合金、および比較例としてのモリブデン耐熱合金を製作した。
<硬度測定>
次に、得られたタングステン耐熱合金およびモリブデン耐熱合金の硬度測定を行った。
具体的には(株)アカシ製マイクロビッカース硬度計(型番:AVK)を用い、測定圧子をダイヤモンドとし、大気中で20℃にて測定荷重20kgを15秒間、試料に対して加えることにより、ビッカース硬度を測定した。測定点数は5点とし、平均値を算出した。
結果を表1に示す。
Figure 0006178689
表1から明らかなように、炭窒化物の含有量が5体積%未満(表1では3体積%)の場合、合金の硬度が純タングステンの硬度(Hv400程度)と同程度であり、炭窒化物を添加する効果が得られないことが分かった。
一方で、炭窒化物の含有量が60%を超えると炭窒化物の割合が多くなり、Mo合金と硬度が変わらなくなるため、非特許文献1に記載のMo−TiCN合金に対する優位性がないことが分かった。
<高温強度測定>
次に、得られた合金の高温強度を評価した。
摩擦攪拌接合工具は、回転しながら工具の横移動により接合を実施するため、高温での回転曲げに対する強度が必要であるが、高温回転曲げ試験は特殊である。そのためここでは単純曲げ試験により高温強度を評価した。さらに摩擦攪拌接合工具は耐変形性が要求されるため、同じ歪量での評価を実施することを目的として便宜上0.2%の歪を生じた際の応力、すなわち0.2%耐力を用いた(一般に0.2%耐力は引張試験時、降伏点が不明瞭な材料の評価に使用される)。
0.2%耐力(曲げ相当)は、以下の手順により測定した。
まず、タングステン耐熱合金およびモリブデン耐熱合金の試料片を長さ:約25mm、幅:2.5mm、厚さ:1.0mmとなるように加工し、表面を#600のSiC研磨紙を用いて研磨した。
次に、図7および図8に示す模式図のように試料片11をピン13の間隔が16mmとなるようにインストロン社製高温万能試験機(型番:5867型)にセットし、Ar雰囲気下で、1200℃で、クロスヘッドスピード1mm/minでヘッド15を試料に押し付けて、3点曲げ試験を行い、0.2%耐力を測定した。0.2%耐力は、3点曲げ試験における曲げ応力と歪みを下記の式を用いて算出して応力歪み線図を描き、0.2%の永久歪みが生じる応力を解析することによって求めた。
曲げ応力=3FL/2bh
曲げ歪み=600sh/L
ここで、F:試験荷重(N)、L:支点間距離(mm)、b:試験片の幅(mm)、h:試験片の厚さ(mm)、s:たわみ量(mm)である。
さらに、上記測定で荷重とたわみ量との関係が得られるので、破断したときのたわみ量を読み取り、靭性を評価した。ただし、たわみ量は6mm以内が装置限界であり、6mmに達した場合は測定を中断しフルベンドとして扱うことにした。
結果を表2に示す。
Figure 0006178689
表2から明らかなように、WにTiCNを30体積%以上含有させると、MoにTiCNを含有させた場合と比べて抗析力が低下するため、TiCNの含有量は30体積%未満とするのが望ましいことが分かった。
また、WにTiCNを15体積%を超えて含有させると、脆性破断を起こすため、TiCNの含有量の上限は15体積%以下とするのがより望ましいことが分かった。
なお、これらの試験で得られた焼結体の炭窒化物の平均粒径は0.7μm、タングステンの平均粒径は0.8μmであった。炭窒化物としては、TiCN以外にZrCN、HfCNも用いたが、TiCNと同等の室温硬度と高温強度が得られた。
<X線回折試験>
次に、上記の合金のうち、WにTiCNを10体積%、20体積%、30体積%、40体積%それぞれ含有させたものについて、以下の条件でX線回折を行った。
装置:PANalytical製X線回折装置(Empyrean)
管球:Cu(KαX線回折)
ソーラースリット:0.04rad
発散スリットの開き角:1/2°
散乱スリットの開き角1°
管電流:40mA
管電圧:45kV
スキャンスピード:0.33°/min
結果を図9に示す。
図9に示すように、X線回折により得られたピークは、TiCNの体積比率が10体積%、20体積%、30体積%、40体積%いずれの場合も、WとTiCNに起因するピークのみが観察され、TiCNが分解することによって生成される不可避化合物に起因するピークは見受けられなかった。そのため、上記の試料ではTiCNの分解が生じていないことが分かった。
(実施例2)
次に、Wに添加する炭窒化物をTiCNとし、TiCNの配合比率を10体積%として、合金中のTiCN、Wの平均粒径およびTiCNの最大粒径を変化させた合金を作製し、相対密度および室温硬度を評価した。
具体的には、TiCNの平均粒径の制御方法は、アライドマテリアル製TiCN粉末(品種名5OR08、5MP15、5MP30)、またはそれを粉砕した粉末を分級処理して調整した粉末を使用し、焼結時間を調整して粒成長の進行を制御する方法で行った。また、タングステンの平均粒径の制御方法は、アライドマテリアル製W粉末を粉砕して分級処理して調整した粉末を使用し、焼結時間を調整して粒成長の進行を制御する方法で行った。
なお、粒径測定はインターセプト法により行った。具体的な手順は以下の通りである。まず、測定箇所となる断面について倍率1000倍の拡大写真を撮り、この写真上において、図10に示すように、任意に直線を引き、この直線が横切る対象となる結晶粒の粒子について、この直線状を横切る個々の結晶粒の粒径を測定し総和を算出した。次に、測定した視野は120μm×90μmとし、50個以上の粒子を測定した。
また、観察された結晶粒がW、TiCNのいずれかであるかの判断は、以下の条件でEPMAによる線分析により行った。
EPMAによる線分析の分析条件
装置 :EPMA1720H(島津製作所製)
加速電圧 :15kV
ビーム電流 :20nA
ビームサイズ :1μm
測定倍率 :5000倍
積分時間 :20s/point
また、相対密度を以下の手順で測定した。ここでいう相対密度とは、作製した試料(バルク)について測定した密度を理論密度で除して%で表した値である。
以下、具体的な測定方法について説明する。
(バルク密度の測定)
バルク密度はアルキメデス法により求めた。具体的には、空中と水中での重量を測定し、下記計算式を用いてバルク密度を求めた。
バルク密度=空中重量/(空中重量−水中重量)×水の密度
(理論密度の測定)
まず、以下の手順でW−TiCN合金の理論密度を求めた。
(1)ICP−AESによりバルク材中のTiの質量比率(0〜1)を求め、化学分析によりC、Nの質量比率も求め、TiCNの質量比率(Zc)を算出し、Wの質量比率(Zm)を1−Zcとして算出した。
(2)Wの密度をMm(=19.3g/cm)、TiCNの密度をMc(=5.1g/cm)とし、上記質量比率を体積比率に換算した。
即ち、TiCNを添加した場合のTiCNの体積比率は以下のように表される。
TiCNの体積比率=[Zc/Mc]/[Zc/Mc+Zm/Mm]
また、Wの体積比率は以下のように表される。
Wの体積比率=[Zm/Mm]/[Zc/Mc+Zm/Mm]
(3)求めた体積比率に密度を乗じてバルク全体の理論密度を求めた。最後に、バルク密度を理論密度で除して相対密度を求めた。
なお、硬度は実施例1と同様に求めた。
結果を表3に示す。
Figure 0006178689
表3から明らかなように、焼結体のTiCNの平均粒径が0.1μm未満または10μmを超える場合、あるいはタングステンの平均粒径が0.3μm未満、または20μmを超える場合、さらにはTiCNの最大粒径が1.0μm未満、または30μmを超える場合は、焼結体の密度が低すぎて相対密度や室温硬度の評価ができなかった。
そのため、TiCNの平均粒径は0.1μm以上、10μm以下、タングステンの平均粒径は0.3μm以上、20μm以下、最大粒径は1.0μm以上、30μm以下であるのが望ましいことが分かった。
(実施例3)
Wに添加する炭窒化物をTiCNとし、TiCNの配合比率を10体積%として、焼結体のTiCNの平均粒径を0.7μm、タングステンの平均粒径を0.8μmとして、TiCNの粒径分布を変化させた試料を作成し、粒径分布の影響を評価した。
具体的には、アライドマテリアル製の炭窒化チタン粉末(品種名5OR08、5MP15、5MP30)、またはそれを粉砕した粉末を分級処理して調整することによりTiCNの粒径が0.1μm以上、5μm以下の個数割合を制御した。
結果を表4に示す。
Figure 0006178689
表4に示すように、合金中のTiCN粒のうち、粒径が0.1μm以上、5.0μm以下のものの個数割合が40%と60%のものは、30%のものと比べて室温硬度と相対密度が優れていた。
また、60%よりも高いものは、非常に均一な粒度の粉末であり得られ難く、実質的に粉末製造が不可能であり、評価不能であった。
この結果から、合金中のTiCN粒のうち、0.1μm以上、5.0μm以下のものの個数割合が40%以上、60%以下のものは、室温硬度と相対密度に優れることがわかった。
(実施例4)
Wに添加する炭窒化物をTiCNとし、TiCNの配合比率を10体積%として、焼結体のTiCNの平均粒径を0.7μm、タングステンの平均粒径を0.8μmとして、TiCNの粒径分布を変化させた試料を作成し、粒径分布の影響を評価した。
具体的には、アライドマテリアル製の炭窒化チタン粉末(品種名5OR08、5MP15、5MP30)、またはそれを粉砕した粉末を分級処理して調整することにより、TiCNの平均粒径が0.1μm以上、3.5μm以下の個数割合、および5μm以上、7μm以下の個数割合を制御した。
結果を表5に示す。
Figure 0006178689
表5に示すように、合金中のTiCN粒のうち、粒径が0.1以上、3.5μm以下のものの個数割合が20%と40%のものは、10%、50%のものと比べて室温硬度および相対密度が優れていた。
同様に、合金中のTiCN粒のうち、粒径が5.0μm以上、7.0μm以下のものの個数割合が10%と20%のものは、5%、30%のものと比べて室温硬度および相対密度が優れていた。
この結果から、合金中のTiCN粒のうち、粒径が0.1以上、3.5μm以下のものの個数割合が20%以上、40%以下で、かつ粒径が5.0以上、7.0μm以下のものの個数割合が10%以上、30%以下のものは、室温硬度、0.2%耐力、および相対密度に優れることがわかった。
(実施例5)
これまで挙げた必要範囲内にあるタングステン合金を用いて、摩擦撹拌接合工具を製作し、ステンレスの摩擦撹拌接合に供した。
具体的には、日立製作所製2次元摩擦攪拌接合装置を用い、工具回転速度600rpm、走行速度100mm/min、工具押し込み量2.5mm、走行距離100mmとして、実施例1のTiCNの配合比率が10体積%の試料を用い、SUS304の突合せ接合を行い工具の摩耗量を評価した。
結果、工具の欠け、割れなど認められず、摩耗も非常に少なく接合状態も良好であった。一方、比較例で示したタングステン合金を用いた場合のうち、特性評価が可能であった例については、摩策撹拌接合工具に供したが、使用中に工具のショルダー部に割れが見受けられたり、プローブが欠損したりする不具合が生じた。
以上、本発明を実施形態および実施例に基づき説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはない。
当業者であれば、本発明の範囲内で各種変形例や改良例に想到するのは当然のことであり、これらも本発明の範囲に属するものと了解される。
例えば、上記した実施形態では、タングステン耐熱合金を摩擦攪拌接合工具に適用した場合について説明したが、本発明は何らこれに限定されることはなく、ガラス溶融用治工具、高温工業炉用部材、熱間押出し用ダイス、継目無製管用ピアサープラグ、射出成形用ホットランナノズル、鋳造用入子金型、抵抗加熱蒸着用容器、航空機用ジェットエンジン及びロケットエンジンなどの高温環境下で用いられる耐熱性部材に適用することができる。
1 第1の相
2 第2の相
3 第3の相
11 試料片
13 ピン
15 ヘッド
101 摩擦攪拌接合工具
102 シャンク
103 ショルダー部
104 ピン部

Claims (15)

  1. Wを主成分とする第1の相と、
    Ti、Zr、Hfの少なくとも1つの炭窒化物を主成分とする第2の相と、
    前記第2の相の表面を覆うように設けられ、WとTi、Zr、Hfの少なくとも1つの炭窒化物固溶体を有する第3の相と、
    を有し、残部が不可避不純物であり、
    前記炭窒化物の含有量が5体積%以上、30体積%未満である、タングステン耐熱合金。
  2. 前記炭窒化物の含有量が5体積%以上、15体積%以下である、請求項1記載のタングステン耐熱合金。
  3. 前記第2相の炭窒化物の平均結晶粒径が、0.1μm以上、10μm以下である、請求項1または2に記載のタングステン耐熱合金。
  4. 前記第2相の炭窒化物の平均結晶粒径が、0.1μm以上、3μm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のタングステン耐熱合金。
  5. 前記第2相の炭窒化物粒は、粒径が0.1μm以上、5.0μm以下のものが、前記第2相の炭窒化物粒全体の40%以上、60%以下の個数割合である、請求項1〜のいずれか一項に記載のタングステン耐熱合金。
  6. 前記第2相の炭窒化物粒は、粒径が0.1μm以上、3.5μm以下のものが、前記第2相の炭窒化物粒全体の20%以上、40%以下の個数割合であり、5.0μm以上、7.0μm以下のものが、前記第2相の炭窒化物粒全体の10%以上、20%以下の個数割合である、請求項1〜のいずれか一項に記載のタングステン耐熱合金。
  7. 前記第2相の炭窒化物の最大粒径は、1.0μm以上、30μm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のタングステン耐熱合金。
  8. 合金中のWの平均粒径が0.3μm以上、20μm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のタングステン耐熱合金。
  9. 室温でのビッカース硬度が500Hv以上で、かつ、1200℃で500MPa以上の0.2%耐力(曲げ相当)または抗折力を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のタングステン耐熱合金。
  10. 室温でのビッカース硬度が500Hv以上で、かつ、1200℃で500MPa以上の0.2%耐力(曲げ相当)を有し、長さ:約25mm、幅:2.5mm、厚さ:1.0mmに加工された場合の、支点間距離を16mmとする3点曲げ試験における破断時のたわみ量が6mm以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載のタングステン耐熱合金。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のタングステン耐熱合金を用いた摩擦撹拌接合工具。
  12. 請求項11の摩擦撹拌接合工具の表面に、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選択される少なくとも1種以上の元素の炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を含む被膜層を有する、摩擦撹拌接合工具。
  13. 請求項11または12に記載の摩擦撹拌接合工具を有する、摩擦撹拌接合装置。
  14. W粉末と炭窒化物粉末を混合する(a)と、
    前記(a)により得られた混合粉を室温中で圧縮成形する(b)と、
    前記(b)により得られた成形体を少なくとも水素あるいは窒素を含む雰囲気にて、1800℃以上、2000℃以下で加熱して焼結する(c)と、
    を具える、請求項1〜10のいずれか一項に記載のタングステン耐熱合金を製造する製造方法。
  15. (d)焼結時または、焼結後に不活性雰囲気にて成形体または焼結体に熱間等方圧加圧を施す、
    を有する、請求項14に記載のタングステン耐熱合金を製造する製造方法。
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