JP6171078B1 - アイガード用のフレーム及びアイガード - Google Patents

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【課題】サージカルキャップとの併用により上方暴露を効果的に防止できるアイガードを提供する。【解決手段】装用者の両眼を覆うアイガード用シールドを着脱可能とする少なくとも一対のシールド装着部12と、装用者が装着したサージカルキャップの前端をアイガード用シールドの前方で係留可能なフック部14と、装用者の額に当接させるヘッド部15とを備えることを特徴とするアイガード用フレームと、前記シールド装着部に対応する箇所にそれぞれ2つの貫通孔と両貫通孔に跨るスリットを設けたことを特徴とするアイガード用シールドとからなるアイガードであって、前記シールド装着部12は、それぞれ前記アイガード用フレームの前額部の一部を湾曲させてなり、前記アイガード用シールドの2つの貫通孔と両貫通孔に跨るスリットに嵌合させることによりアイガード用シールドを着脱可能とした。【選択図】図2

Description

本発明は、医療従事者等が使用する、顔面の上部を覆うアイガードの技術に関する。
医師や看護師等の医療従事者は、手術等の際に顔面の下部にマスクを着用し、患者の血液や体液等の飛散から眼部を保護する必要がある場合には、マスクの上側に顔面の上部を覆うアイガードを装用する。アイガードは、装用者の両眼を覆う透明樹脂シールドを略コの字型のフレームに透明なシールドを装着し、マスクの上から眼鏡のように頭部に装用するものが普及している。
医療現場では、患者から医療従事者への感染予防対策としてマスクやアイガードの装用が重要とされ、マスクやアイガードは一般的に都度新しいものを使用し、使用後は廃棄される。特にアイガードの場合、シールドは一回限りのディスポーザブルであり、フレームは消毒して複数回使用される場合が多い。しかし、手術等一刻を争う多忙な医療現場では、フレームへのシールドの着脱の手間は医療従事者にとって余計な負担となり、シールドの曇りや汚れは視界を低下させる。特にマスクに装着するタイプは、シールドの一部が顔面に触れるため装用者にとって圧迫感が強いだけでなく、位置ズレが生じ易く曇りや汚れも付き易いという問題があった。
かかる問題を踏まえ、本願発明者は、フレーム(以下、単に「フレーム」と記す。)に単一枚を着脱可能に取り付けて装用者の顔面の上部を覆う弾性を有する透明樹脂板の左右両端上縁寄りの左右対称の位置に、それぞれ2つの貫通孔と両貫通孔に跨るスリットとを設けたことを特徴とするシールド(以下、単に「シールド」と記す。)と、弾性を有する棒状体を装用者の頭部に固定可能な略コの字型に形成してなり、装用者の両こめかみの位置においてそれぞれ前記2つの貫通孔とスリットに嵌合する内側向きの湾曲部を設けたことを特徴とするフレームとからなるアイガードを開発して特許第5970145号を取得しており、すでに商品化されて医療機関等において使用されている。
特許第5970145号公報
前記特許発明に係るアイガードは、フレームへのシールドの着脱を効率良く、かつシールドの表面を汚さずに行うことができるため、多忙な医療現場でのアイガード使用の徹底が促進され、医療従事者と医療行為の安全性の向上に貢献している。当該アイガードは手術中等に飛散する患者の血液や体液からの医師や看護師の眼の保護(いわゆる「暴露」の防止)には有効なものの、従来のアイガードと同様に、図1に示すようにアイガードの上部を超えて上方から飛び込んでくる血液や体液に対する暴露までは十分に防げないという問題点があり、医療現場からはかかる「上方暴露」への対策が求められている。
また、手術室等では患者の施術部位に影を生じないよう照らすために無影灯が用いられているが、無影灯は極めて光量が大きいため医師の眼には多大な負担が掛かっている。さらに、レーザーメスを使用する手術ではレーザー光が眼に入る危険性もあるため、医師は有害な光から眼を保護するための保護眼鏡を装用する場合も多い。アイガードのシールド自体は極めて薄く、また防曇性が必要とされるため、さらに遮光フィルタを加工することは困難であるが、アイガードのフレームに装着する眼鏡レンズに遮光性を具備させることは可能である。
本願発明は、手術等の際にアイガードやマスクと共に医師等が着用する帽子(医療現場では「サージカルキャップ」あるいは「メディカルキャップ」と呼ばれているが、以下では「サージカルキャップ」と記す。)に着目し、前記特許発明に係るフレームとシールドを発展させて、サージカルキャップとの併用により上方暴露を効果的に防止できるアイガードを提供することを課題とする。サージカルキャップは、手術中における毛髪の落下や発塵の防止のために装用されるもので、最近では不織布からなる帽体の開口部に紐やゴムが設けられ、頭部に開口部を密着させて毛髪全体を覆うものが普及している。
上記課題の解決のために、請求項1に記載した発明は、少なくとも一対のシールド装着部を備え、前記シールド装着部に対応する箇所にそれぞれ2つの貫通孔と両貫通孔に跨るスリットを設けたアイガード用シールドを着脱可能とするアイガード用フレームであって、装用者が装着したサージカルキャップの前端の側頭部から額に渡る範囲を引っ掛けてアイガード用シールドの前方で係留可能なフック部を備えることを特徴とする。
また、請求項2に記載したアイガード用フレームは、前記シールド装着部が、それぞれ前記アイガード用フレームの前額部の一部を湾曲させてなり、前記2つの貫通孔と両貫通孔に跨るスリットに嵌合させることによりアイガード用シールドを着脱可能としたことを特徴とする。
手術等に先立って、医師等は、マスク、本願発明に係るアイガード、サージカルキャップの順に装用するものとし、サージカルキャップの装用の際には、フレームに設けたフック部にサージカルキャップの前端、具体的には側頭部から額に渡る範囲を引っ掛けて係留するように被ることができる。かかるフック部を有する構成により、サージカルキャップとシールドが一体化して上方に隙間がなくなるため、前述の上方暴露が防止されるのである。
また、フレームへのシールドの装着は、フレームに少なくとも一対を設けたシールド装着部を、それぞれシールドの対応位置に設けた2つの貫通孔と両貫通孔に跨るスリットに嵌合させることで、着脱可能に行えるため、前記特許発明に係るアイガードと同様、フレームへのシールドの着脱を効率良く、かつシールドの表面を汚さずに行うことができる。
さらに、本願発明に係るアイガード用フレームの構成によれば、フレームにシールドを2枚重ねで装着することができる。ここで、内側(顔側)のシールドとして通常の透明な防曇シールドを用い、外側のシールドとして有害な光を遮断する遮光シールドを用いれば、無影灯の光やレーザーメスのレーザー光から医師の眼を守ることができる。
請求項3に記載したアイガード用フレームは、請求項2に記載したアイガード用フレームであって、装用者の額に当接可能なヘッド部をさらに備えることを特徴とする。サージカルキャップを、その前端をフック部に引っ掛ける形で被ることにより、サージカルキャップはその前端と後頭部側との間で引き伸ばされるため、開口部に設けた紐又はゴムの緊張力によりフレーム全体を後方に引っ張る力が働き、サージカルキャップとアイガードとが一体化して、頭部への密着性を高める効果を発揮する。
一方、ヘッド部が装用者の額に当接していることにより、通常の眼鏡のような鼻パッドを設けずともフレームの位置は保持される。これにより、シールドが装用者の顔に触れたり、息で曇ったりする不都合が防がれるだけでなく、マスクとの干渉等によって顔からずれることもなくなる。また、サージカルルーペ等の器具をマウント部に装着した場合も、サージカルキャップによるアイガードを後方に引っ張る力がその重量を支えるため、アイガードがずり落ちることが防がれる。さらに、ヘッド部に汗を吸収するパッドを取り付けることにより、汗止めの効果も発揮させることができる。
なお、本願発明に係るアイガードを装用する際には、サージカルキャップ1枚を用いても良いが、前頭部ではサージカルキャップの前端がフック部に係留されることで額に密着しない形となるため、前髪の一部はサージカルキャップに直接包まれない場合が生じる。この問題に対しては、サージカルキャップ2枚を二重に被り、内側のサージカルキャップにより従前通り毛髪全体を覆い、その上に被った外側のサージカルキャップの前端をフック部に係留することがより好適である。
なお、請求項4に記載したアイガードは、前記アイガード用シールドと、請求項3に記載のアイガード用フレームとからなることを特徴とする。
本願発明に係るアイガードの構成によれば、医療従事者がアイガードを使用する際に、フレームへのシールドの着脱を効率良く、かつシールドの表面を汚さずに行うことができるだけでなく、アイガードの上部を超えて上方から血液や体液が飛び込んでくるいわゆる上方暴露をサージカルキャップによって効果的に防止することができるため、医療従事者と医療行為の安全性をさらに向上させることができる。
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図2は本願発明に係るアイガード全体の一実施形態を示す斜視図、図3はフレーム1のみを示す斜視図、図4はシールド2のみを示す平面図である。また、図5はアイガード全体の正面図、図6は同背面図、図7は同平面図、図8は同底面図、図9は同右側面図である。
フレーム1は、棒状のフレーム部材を、前額部からこめかみ部にかけてのフロント部10と側頭部に固定するための2本のテンプル部11に平面視略コの字型に形成してなり、さらに、フロント部10の中央部には、1本の棒状部材を屈曲させて形成したマウント部13、フック部14、ヘッド部15を、2本のマウント部13の端部を介して取り付けている。また、フロント部10は、前額部と両こめかみ部の位置に、それぞれ一対、合計二対の湾曲を左右対称に設けてシールド装着部12としている。フレーム1の素材としては、外力変形への復元性を有するものとし、使い捨てを前提とするプラスティック等の柔軟な合成樹脂でもよい。しかし、医師等は装用感を重視する傾向があり、資源節約の観点も考慮すれば、フィッティング性、耐久性、耐熱性に優れ、極めて軽量なβチタンを採用し、消毒して反復利用可能とすることがより好適である。また、ヘッド部15には、汗止め効果を発揮するパッド(図示せず)を取り付けても良い。
一方、シールド2は、防曇性を備えた柔軟な透明樹脂板、たとえばトリアセチルセルロース製シールドをトムソン加工により成形して製造可能であり、衛生上の観点から使い捨て用として使用の都度、廃棄する。該シールド2には、前記シールド装着部に対応する箇所にそれぞれ2つの貫通孔21と両貫通孔に跨るスリット22を設けたものとする。
図10はフレーム10にシールド2を装着する工程を示す図である。シールド装着部12をスリット22に押し込んで通過させると、シールド装着部12の両脇部分が貫通孔21に嵌合して固定される。これをすべてのシールド装着部12について行うことでシールド2がフレーム10に装着される。
なお、前記特許発明に係るアイガードでは、シールドをフレームの内側、すなわち顔側から着脱するようシールド装着部を設けているのに対し、第1実施形態に係るアイガードでは、フレーム1の外側からシールド2を着脱するようシールド装着部12を設けている。これは、後述の通り眼鏡レンズ5を着脱可能なブリッジ部材4を取り付ける場合の干渉を避けるためと、マウント部13をフロント部10の内側に取り付けるよう構成しているためである。マウント部13をフロント部10の外側に取り付けるように構成することは可能であるため、ブリッジ部材4の取り付けを考慮しない場合は、前記特許発明と同様、シ−ルド2をフレーム1の内側から着脱するようシールド装着部12を設けるよう構成できる。
また、第1実施形態では、マウント部12、フック部14、ヘッド部15を1本の棒状部材を曲げ加工して一体的に形成し、その両端となる2本のマウント部12を介してフロント部10に設置する構成としているが、これは耐久性や工作性の観点から溶接個所を最小限とするための構成であり、フック部14をサージカルキャップの前端を係留可能とし、ヘッド部15を装用者の額に沿って当接可能な湾曲形状とできる限り、特段本実施形態の構成に限定されるものではない。
図11は第1実施形態に係るアイガード1を装用する際の装用方法を示す連続図であり、図12は装用時の状態を示す側面図である。また、図13はアイガード1と併用するサージカルキャップの略図である。図11に示す如く、装用者は、まず、アイガードを掛けてから内側のサージカルキャップC1を被り、毛髪を完全に覆い(A)、次に、外側のサージカルキャップC2を被り(B)、その後、前端をフレーム1のフック部14に引っ掛けて係留する(C)。これにより、図12に示す如く、外側のサージカルキャップC2の前端はシールド2の上端よりも前方に張り出す形となり、アイガード1と外側のサージカルキャップC2との間に隙間が生じなくなるため、前述の上方暴露が防がれるのである。
また、手術等の医療現場では、シールドの内面に室内の光が反射してものが見えにくくなることが問題となっている。ここで、図13に示す如くサージカルキャップC2に遮光性を有する素材を用いれば、シールド2の前方まで張り出した部分が庇としての役割を果たすため、シールド2の内面に光が侵入することが防がれ、上記の反射の問題も解決できる。
なお、第1実施形態では従来のサージカルキャップ2枚を二重に被ることを想定しているが、図14に示すような前端部のみを二重構造としたサージカルキャップC3を用いれば1枚で事足りる。サージカルキャップC3は、二重構造の前端部の外側を遮光性素材で構成しており、これにより前述の反射の問題も解決される。
さらに、シールド2の厚みは極めて薄いため、通常のシールド2の外側に有害な光を遮断する遮光性を備えた第2のシールド(図示せず)を重ねて装着することができ、無影灯の強烈な光やレーザーメスのレーザー光から医師等の眼を保護することができる。
(第2実施形態)
なお、本願発明に係るアイガード用フレームのうち、フック部とヘッド部を独立させて一対のテンプルを取り付けることにより単体で頭部に装用可能なキャップフック(以下、単に「キャップフック」と記す。)を構成し、前記特許発明に係るアイガードと併用することもできる。図15は、かかるキャップフックの一実施形態と、それをフック部やヘッド部を有しない従来のアイガードと併用する状態を示した斜視図である。
キャップフック3は、第1実施形態に係るアイガードのフック部14とヘッド部15に対応する形状を有する変形リング30にテンプル部31を取り付けた構成である。装用者は、アイガードの上にキャップフック3を重ねて装用した上で、図11と同様の手順でサージカルキャップC1とC2を二重に被り、変形リング部16の前側にサージカルキャップC2の前端を引っ掛けて係留することで、第1実施形態と同様に上方暴露を防止することができる。
以上、本発明に係るアイガード用のフレーム及びアイガードの具体的な構成について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において改良または改変が可能であり、それらは本発明の技術的範囲に属するものである。
本発明は、主に医療従事者が医療現場で使用するアイガードへの適用を想定したものであり、従来のアイガードや前記特許発明に係るアイガードでは完全に防止できない上方暴露を効果的に防止できることから、厳重な感染防止対策が必要とされる手術用アイガードとしての利用に特に適している。
アイガード装用時における上方暴露の危険性を示す図 実施形態に係るアイガードの全体斜視図 実施形態に係るフレームの斜視図 実施形態に係るシールドの平面図 実施形態に係るアイガードの正面図 実施形態に係るアイガードの背面図 第1実施形態のアイガードの平面図 第1実施形態のアイガードの底面図 第1実施形態のアイガードの右側面図 第1実施形態の装着器の正面斜視図 第1実施形態のフレームへのシールドの装着方法を示す連続図 第1実施形態の装用時の状態を示す側面図 アイガードと併用するサージカルキャップの略図 前端部のみ二重構造のサージカルキャップの略図 第2実施形態のキャップフックとその使用状態を示す斜視図
L 血液又は体液
C サージカルキャップ
C1 内側のサージカルキャップ
C2 外側のサージカルキャップ
C3 前端部のみ二重構造のサージカルキャップ
d 第1固定ピンと第2固定ピンの間隔
1 アイガード
10 フレーム
11 テンプル部(第1実施形態)
12 シールド装着部
13 マウント部
14 フック部
15 ヘッド部
2 シールド
20 透明樹脂板
21 貫通孔
22 スリット
3 キャップフック
30 変形リング(第2実施形態)
31 テンプル部(第2実施形態)

Claims (4)

  1. 少なくとも一対のシールド装着部を備え、前記シールド装着部に対応する箇所にそれぞれ2つの貫通孔と両貫通孔に跨るスリットを設けたアイガード用シールドを着脱可能とするアイガード用フレームであって、装用者が装着したサージカルキャップの前端の側頭部から額に渡る範囲を引っ掛けてアイガード用シールドの前方で係留可能なフック部を備えることを特徴とする、アイガード用フレーム。
  2. 前記シールド装着部は、それぞれ前記アイガード用フレームの前額部の一部を湾曲させてなり、前記2つの貫通孔と両貫通孔に跨るスリットに嵌合させることによりアイガード用シールドを着脱可能としたことを特徴とする、請求項1に記載のアイガード用フレーム。
  3. 装用者の額に当接可能なヘッド部をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載のアイガード用フレーム。
  4. 前記アイガード用シールドと、請求項3に記載のアイガード用フレームとからなることを特徴とする、アイガード。
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