以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(エンジン構成)
図1に示すエンジン1は、車両の前部に横置き搭載されると共に、軽油を主成分とした燃料が供給されるディーゼルエンジンであって、複数の気筒11a(1つのみ図示)が設けられたシリンダブロック11と、シリンダヘッド12と、シリンダブロック11の下側に配設され、潤滑用エンジンオイル(以下、単に「オイル」という)が貯溜されたオイルパン13とを有している。各気筒11aに往復動可能に嵌挿されたピストン14の頂面にはリエントラント形燃焼室14aを区画するキャビティが形成されている。このピストン14は、コンロッド14bを介してクランクシャフト15と連結されている。
シリンダヘッド12には、インジェクタ18(燃料噴射弁)とグロープラグ19が設けられている。インジェクタ18は、その燃料噴射口が燃焼室14aに臨むように配設されていて、基本的には圧縮行程上死点付近で、燃焼室14aに燃料を直接噴射供給し、後述するDPFの再生時等には膨張行程以降に燃料を噴射するポスト噴射を行なうようになっている。
エンジン1の一側面には、各気筒11aの吸気ポート16に連通する吸気通路30が接続されている。エンジン1の他側面には、各気筒11aの燃焼室14aからの既燃ガス(排気ガス)を排出する排気通路40が接続されている。
吸気通路30の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ31が配設されている。一方、吸気通路30における下流端近傍にはサージタンク33が設けられている。このサージタンク33よりも下流側の吸気通路30は分岐し、分岐した各独立通路の下流端が各気筒11aの吸気ポート16にそれぞれ接続されている。
吸気通路30におけるエアクリーナ31とサージタンク33との間には、大型及び小型ターボ過給機61,62のコンプレッサ61a,62aと、該コンプレッサ61a,62aにより圧縮された空気を冷却するインタークーラ35と、上記各気筒11aの燃焼室14aへの吸入空気量を調節するスロットル弁36とが配設されている。このスロットル弁36は、基本的には全開状態とされるが、エンジン停止時には、ショックが生じないように全閉状態とされる。
排気通路40の上流側の部分は、各気筒11a毎に分岐して排気ポート17の外側端に接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。
排気通路40における排気マニホールドよりも下流側には、上流側から順に、小型ターボ過給機62のタービン62b、大型ターボ過給機61のタービン61b、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置41、及びサイレンサ42が配設されている。
排気浄化装置41は、上流側から順に並ぶ酸化触媒41aとDPF41bを有する。酸化触媒41a及びDPF41bは1つのケース内に収容されている。酸化触媒41aは、白金又は白金にパラジウムを加えたもの等を担持した触媒を有し、排気ガス中のCO及びHCの酸化反応を促す。DPF41bは、エンジン1の排気ガス中に含まれる煤等のPMを捕集するものであって、例えば、炭化ケイ素(SiC)やコーディエライト等の耐熱性セラミック材によって形成されたウォールフロー型フィルタ、或いは耐熱性セラミックス繊維によって形成された三次元網目状フィルタである。尚、DPF41bに酸化触媒をコーティングしてもよい。
吸気通路30におけるサージタンク33とスロットル弁36の間の部分(つまり小型ターボ過給機62のコンプレッサ62aよりも下流側部分)と、排気通路40における排気マニホールドと小型ターボ過給機62のタービン62bとの間の部分(つまり小型ターボ過給機62のタービン62bよりも上流側部分)とは、排気ガスの一部を吸気通路30に還流するためのEGR通路51によって接続されている。このEGR通路51には、排気ガスの吸気通路30への還流量を調整するためのEGR弁51a及び排気ガスをエンジン冷却水によって冷却するためのEGRクーラ52が配設されている。
吸気通路30には、小型ターボ過給機62のコンプレッサ62aをバイパスするバイパス通路63が接続されている。このバイパス通路63には、該バイパス通路63を流れる空気量を調整するためのバイパス弁63aが配設されている。このバイパス弁63aは、無通電時には全閉状態(ノーマルクローズ)となるように構成されている。
排気通路40には、小型ターボ過給機62のタービン62bをバイパスするバイパス通路64と、大型ターボ過給機61のタービン61bをバイパスするバイパス通路65とが接続されている。バイパス通路64には、該バイパス通路64を流れる排気量を調整するためのレギュレートバルブ64aが配設され、バイパス通路65には、該バイパス通路65を流れる排気量を調整するためのウエストゲートバルブ65aが配設されている。レギュレートバルブ64a及びウエストゲートバルブ65aは共に、無通電時には全開状態(ノーマルオープン)となる。
また、エンジン1は幾何学的圧縮比が12以上15以下であって、圧縮比を比較的低くすることによって排気エミッション性能の向上及び熱効率の向上を図っている。一方で、このエンジン1では、前述した大型及び小型ターボ過給機61,62によってトルクを高めるようにして、幾何学的圧縮比の低いことを補っている。
(ECUについて)
このように構成されたディーゼルエンジン1は、電子制御ユニット(以下、ECUという)10によって制御される。ECU10は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。ECU10には、図2に示すように、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサSW1、燃焼室14aに供給される空気の圧力を検出する過給圧センサSW2、吸入空気の温度を検出する吸気温度センサSW3、クランクシャフト15の回転角を検出するクランク角センサSW4、車両のアクセルペダル(図示省略)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサSW5、DPF41bの上流側の排気圧力を検出する上流側排圧センサSW6、DPF41bの下流側の排気圧力を検出する下流側排圧センサSW7、及び、酸化触媒41aの温度を検出するための触媒温度センサSW8の検出信号が入力され、これらの検出信号に基づいて種々の演算を行うことによってエンジン1や車両の状態を判定し、これに応じてインジェクタ18、グロープラグ19、動弁系のVVM71、各種の弁36、51a、63a、64a、65aのアクチュエータへ制御信号を出力する。
ECU10は、エンジン1の基本的な制御として、主にエンジン回転数及びアクセル開度に基づいて目標トルク(目標となる負荷)を決定し、この目標トルクを発生するように、圧縮上死点付近でインジェクタ18による燃料噴射(メイン噴射)を実行する。但し、ECU10は、エンジン1が減速状態にある場合には、燃料カット制御を実行することで、圧縮上死点付近での燃料のメイン噴射を停止(禁止)する。
ECU10は、DPF再生条件が成立したときには、インジェクタ18により気筒11aの膨張行程で燃焼に寄与しない(トルクを発生しない)ポスト噴射を実行する。ポスト噴射された燃料は、排気ガスと共に酸化触媒41aに供給されて酸化反応を起こし、その反応熱によってDPF41bに供給される排気ガスの温度が上昇し、この温度が高くなった排気ガスによってDPF41bに堆積したPMが燃焼除去される(DPF41bが再生される)。
本実施形態では、DPF41bのPM堆積量をDPF41bの上流側の排気圧力と下流側の排気圧力との差圧ΔPにより評価(推定)し、この差圧ΔPが所定値X以上となることをもって、DPF41bの再生条件成立としている。このDPF再生は、上記差圧ΔPが、再生条件としての所定値Xよりも小さい所定の下限値Y(<X)を下回ることをもって、終了する。
(オイルレベルセンサ)
オイルパン13内に貯留されたオイルレベル(油面高さ)を検出するオイルレベルセンサについて説明する。
オイルパン13内には、超音波式オイルレベルセンサSW9(図1では図示省略)と、オイルポンプ72(図2のみ図示)が設けられている。オイルレベルセンサSW9は、後述する検出管86内のオイルレベルを超音波で検出することでオイルパン13内のオイルレベルを検出する。この検出は、例えば、1秒毎に行われる。
オイルレベルセンサSW9は、図3に示すように、オイルパン13内の車両前後方向中央部であって、車両横方向(左右方向)一方寄りに配置されている。オイルレベルセンサSW9は、図3〜図5に示すように、オイル収容部81と、ベース部82とを有している。
オイル収容部81は、第1オイル開口83aから流入したオイルを収容する。オイル収容部81は、第1ラビリンス室区画部83、第2ラビリンス室区画部84、送受信器収容部85、検出管86、並びにエア抜き管87を有している。
第1ラビリンス室区画部83及び第2ラビリンス室区画部84は有蓋円筒状に形成されている。第2ラビリンス室区画部84は、第1ラビリンス室区画部83よりも径が大きい。送受信器収容部85は有蓋円筒状に形成されている。送受信器収容部85は第2ラビリンス室区画部84よりも径が大きい。第1ラビリンス室区画部83、第2ラビリンス室区画部84及び送受信器収容部85は互いに同心になるように上側からこの順に配置されている。
送受信器収容部85は送受信器88を収容している。この送受信器88は検出管86に対応するように配置されている。送受信器88は、超音波パルスを検出管86内のオイルの液面に向かって発信し、該油面から反射されてきた反射波を受信するものであり、その発信から受信するまでの時間を計測する。
上記検出管86は細長い円筒状に形成されている。検出管86は、その下端開口が送受信器収容部85内に臨むように、送受信器収容部85の天井壁(「第2ラビリンス室区画部84の底壁」ともいう)におけるその中心から若干ずれた部分に上側に突設されている。検出管86は、第1ラビリンス室区画部83の天井壁及び第2ラビリンス室区画部84の天井壁(第1ラビリンス室区画部83の底壁)を貫通している。
第1ラビリンス室区画部83、第2ラビリンス室区画部84の天井壁及び検出管86により区画された空間は第1ラビリンス室89を、第2ラビリンス室区画部84、送受信器収容部85の天井壁及び検出管86により区画された空間は第2ラビリンス室90を、それぞれ構成している。なお、第1ラビリンス室89及び第2ラビリンス室90は、オイルレベルセンサSW9内のオイルレベルの変動を抑制するダンピング手段を構成している。
第1ラビリンス室区画部83の周壁における検出管86とは反対側の部分の下端寄りには第1オイル開口83aが形成されている。オイルパン13内のオイルは第1オイル開口83aから第1ラビリンス室89内に流入出可能になっている。
第1ラビリンス室区画部83及び検出管86の間における第1オイル開口83aの近傍には、第1ラビリンス室89内を第1ラビリンス室区画部83及び検出管86と共に区画する区画板91が設けられている。この区画板91は、第1ラビリンス室区画部83の天井壁及び第2ラビリンス室区画部84の天井壁に接している。
第2ラビリンス室区画部84の天井壁における区画板91の近傍であって、該区画板91に対して第1オイル開口83aとは反対側の部分には、第2オイル開口84aが形成されている。この第2オイル開口84aから第1ラビリンス室89内のオイルは、第2ラビリンス室90内に流入出可能になっている。
第1ラビリンス室区画部83の周壁の内周面には、径方向内側に延びる複数の第1抵抗板92が互いに間隔を空けて配設されている。各第1抵抗板92は、第1ラビリンス室区画部83の天井壁及び第2ラビリンス室区画部84の天井壁に接している。各第1抵抗板92は、検出管86との間に間隙が形成されている。
検出管86の外周面には、径方向外側に延びる複数の第2抵抗板93が互いに間隔を空けて配設されている。各第2抵抗板93は、周方向に隣り合う第1抵抗板92の間に配置されている。各第2抵抗板93は、第1ラビリンス室区画部83の天井壁及び第2ラビリンス室区画部84の天井壁に接している。各第2抵抗板93と第1ラビリンス室区画部83の周壁との間に間隙が形成されている。
第1オイル開口83aから第1ラビリンス室89内に流入したオイルは、第1抵抗板92及び第2抵抗板93によって第1ラビリンス室89内に形成された迷路を通って第2オイル開口84a側に蛇行して流れ、第2オイル開口84aから第2ラビリンス室90内に流入する。このとき、第1ラビリンス室89内に流入したオイルの流れに対して、第1抵抗板92及び第2抵抗板93が抵抗を与える。これにより、検出管86内の油面の高周波変動が抑制され、検出管86内のオイルレベルの変動が抑制される。
第2ラビリンス室90の構成及び作用は、第1ラビリンス室89の構成及び作用とほぼ同様である。つまり、第2オイル開口84aから第2ラビリンス室90内に流入したオイルは、図示しない抵抗板によって第2ラビリンス室90内に形成された迷路を通って蛇行して流れ、送受信器収容部85の天井壁に形成された第3オイル開口85aから送受信器収容部85内に流入する。このとき、第2ラビリンス室90内に流入したオイルの流れに対して抵抗板が抵抗を与える。
また、第1オイル開口83aからオイル収容部81内に流入したオイルは、第1ラビリンス室89、第2ラビリンス室90、送受信器収容部85を通って、検出管86内に流入する。このとき、検出管86内のオイルレベルは、オイルパン13内のオイルレベルの変動に対応して変動する。つまり、検出管86内のオイルレベルは、オイルパン13内のオイルレベルにほぼ一致する。
上記エア抜き管87は、細長い円筒状に形成されている。エア抜き管87は、検出管86よりも径が小さい。エア抜き管87は、その下端開口が第1ラビリンス室89内に臨むように、第1ラビリンス室区画部83の天井壁における中心から検出管86とは反対側に若干ずれた部分に上側に突設されている。エア抜き管87の上端部には、該エア抜き管87を覆う第1キャップ部材94が設けられている。この第1キャップ部材94は有蓋円筒状に形成されている。
第1オイル開口83aからオイル収容部81内に流入したオイルは、第1ラビリンス室89を通ってエア抜き管87内に流入する。このとき、エア抜き管87内のオイルレベルは、オイルパン13内のオイルレベルの変動に対応して変動する。つまり、エア抜き管87内のオイルレベルは、オイルパン13内のオイルレベルにほぼ一致する。
オイル収容部81内に流入したオイルに含まれる空気は、エア抜き管87を通って、第1キャップ部材94の下端開口からオイル収容部81外に排出される。オイルに含まれる空気をオイル収容部81外に排出するのは、オイルに空気が含まれると、超音波パルスが乱反射し、オイルレベルセンサSW9の検出精度が低下するからである。
検出管86の上端部には、該検出管86及び第1キャップ部材94を覆う第2キャップ部材95が設けられている。この第2キャップ部材95は、有蓋有底円筒状に形成されており、オイルパン13内のオイルが検出管86内にその上端開口から流入することを防止する。
第2キャップ部材95の天井壁にはエア開口95aが形成されている。検出管86内の空気はエア開口95aからオイル収容部81外に流出入可能になっている。検出管86及び第1キャップ部材94は第2キャップ部材95の底壁を貫通している。
上記ベース部82は、ベース本体82aとコネクタ部82bを有し、オイルパン13の底壁に固定されていて、オイル収容部81を支持している。
ベース本体82aは、中空に形成されていて、回路基板96を収容している。この回路基板96は、送受信器88に電気的に接続されていて、送受信器88によって計測された、超音波パルスの発信から反射波の受信までの間の時間に基づいて、送受信器88と検出管86内のオイル液面との間の距離を算出(演算)する。これにより、検出管86内のオイルレベルが検出される。
上記コネクタ部82bは、ベース本体82aの側壁から外側に突設されている。コネクタ部82bは、中空に形成されていて、コネクタ97を収容している。このコネクタ97によって回路基板96とECU10とを電気的に接続する。
上記オイル収容部81の外側には複数のリブ98が形成されている。
上記オイルポンプ72は、オイルパン13内に貯留されたオイルをエンジン1の回転部分や摺動部分の潤滑部に供給、循環させる。オイルポンプ72は、クランクシャフト15によって図示しないチェーンで駆動されてオイルを圧送する。このように構成されたオイルポンプ72は、主にエンジン冷却水の温度、エンジン回転数とエンジン負荷に基づいてECU10によって制御される。
(オイルレベル、オイルの希釈状態の判定)
ECU10には、図2に示すように、クランク角センサSW4、アクセル開度センサSW5、オイルレベルセンサSW9、車速を検出する車速センサSW10、オイルパン13内のオイルの温度(油温)を検出する油温センサSW11、車両の前後方向の加速度を検出する前後GセンサSW12、車両の横方向の加速度を検出する横GセンサSW13、エンジン回転数を検出するセンサ等の検出信号が入力される。ECU10は、これらの検出信号に基づいて種々の演算を行うことによってオイルパン13内のオイルレベルの状態、燃料によるオイルの希釈状態、エンジン1や車両の状態を判定し、これに応じて図示しないインストルメントパネルに設けられたオイルランプ(ワーニングランプ)73(報知手段)へ制御信号を出力する。
オイルレベルの状態に関しては、オイルレベルが適切なレベル(エンジン停止時におけるオイルパン13内のオイルの許容上限レベルであるXレベルと、エンジン停止時におけるオイルパン13内のオイルの許容下限レベルであるLレベルの間にある)か否かの判定を行なう(図3参照)。
ECU10は、オイルパン13内のオイルレベルの平均値(以下、「オイルレベル平均値」という)を所定のインターバルで算出する算出部(レベル算出手段)10a、各種データの記憶部10b、オイルレベル平均値が所定の閾値に達しているか否かを判定するレベル判定部10c、オイルレベル平均値に基いてオイルの希釈状態を検出する希釈検出部10d、並びにオイル希釈状態に基いてオイルの劣化を判定する劣化判定部10eとして機能する。
算出部10aは、車両運転時(エンジン運転時)のオイルレベルセンサSW9の検出値(その単位はmm)に基づいてオイルレベル平均値を算出する。算出部10aは、抽出部10f(影響抑制手段、抽出手段)と、補正部10gと、平均算出部10hとを有している。
抽出部10fは、抽出条件が成立しているときに、該成立時におけるオイルレベルセンサSW9の検出値(出力生データ)を抽出(サンプリング)する。
抽出条件とは、オイルレベルセンサSW9の検出値の抽出が妥当と判定し得る所定の条件である。本実施形態では、(1)オイルレベルセンサSW9とECU10の通信が正常状態であること、(2)オイルポンプ72によるオイルの供給圧(吐出圧。以下、「油圧」という)がロー制御(油圧を所定圧以下にする低圧制御)されていること、(3)エンジン回転数が750〜3000rpmであること、(4)車速が5km/h以上であること、(5)オイルパン13内の油温が20〜120℃であること、(6)前後方向の加速度が0.2G未満であること、並びに、(7)Lレベル及び希釈状態の判定においては横方向の加速度が0.2G(所定値)未満であること、Xレベルの判定においては横方向の加速度が0.08G(所定値)未満であることをもって、抽出条件成立としている。
上記条件(1)を設定したのは、オイルレベルセンサSW9やECU10が異常状態で、オイルレベル平均値を算出することを防止するためである。
上記条件(2)を設定したのは、油圧がロー制御とハイ制御(油圧を所定圧よりも高くする高圧制御)に切り換えられると、油面が変動するためである。つまり、ロー制御時、ハイ制御時の両方でオイルレベル平均値を算出すると、その精度が低下すると共に、そのロジックが複雑になる(例えば、ロー制御用、ハイ制御用のオイルレベル補正マップの両方が必要になる)からである。また、高圧側では、オイルの循環量が多いと共に、エンジン回転数が主に高回転になるため、油面の変動が大きく、オイルレベルの安定検出に不向きだからである。
上記条件(3)を設定したのは、エンジン回転数が高回転になると、エアレーションが増大したり、クランクシャフトやチェーンの回転によって油面が攪乱されたりするため、オイルレベルの検出精度が低下するからである。なお、エンジン回転数の上限値(3000rpm)は、油圧のロー制御、ハイ制御の切換え時におけるエンジン回転数に基づいて設定されている。一方、下限値(750rpm)は、例えば、アイドル回転数に基づいて設定されている。
上記条件(4)を設定したのは、停車時にオイルレベルを検出すると、車両が傾斜にあるとき、オイルレベルの検出精度が低下するからである。一方、走行時には、規則的な傾斜を連続走行する頻度が低いため、オイルレベルの検出精度の低下は少ない。
上記条件(5)の油温範囲は、エンジン1の暖機完了前にドライビングサイクルを完了する短距離・短時間走行時における油温を含む範囲に設定されている。特に、短距離・短時間走行を繰り返し行うと、油温が低温であるため、オイル中に混入した燃料が蒸発せず、オイルの希釈が進み、オイルレベルが増加していく。一方で、油温が低すぎると、オイルの粘度や循環特性が不安定になるという弊害が生じる。そこで、油温の下限値(20℃)は、短距離・短時間走行時における油温の上昇特性とその走行時間、上記弊害に基づいて設定されている。一方、上限値(120℃)は、高速走行時における油温に基づいて設定されている。
上記条件(6)を設定したのは、前後方向の加速度が大きくなると、オイルレベルの変動が大きくなるため、オイルレベルの安定検出に不向きだからである。また、「0.2G未満」に設定したのは、車両走行時には、前後方向の加速度が0.2G未満である割合が高く、オイルレベル平均値の算出の、母数確保に大きな影響を及ぼさないからである。
上記条件(7)を設定したのは、横方向の加速度が大きくなると、油面の変動が大きくなるため、オイルレベルの安定検出に不向きだからである。Lレベル及び希釈状態の判定において、「0.2G未満」に設定したのは、車両走行時には、横方向の加速度が0.2G未満である割合が高く、オイルレベル平均値の算出の、母数確保に大きな影響を及ぼさないからである。Xレベルの判定の判定において、「0.08G未満」に設定したのは、Xレベルを超えるオイルレベルを早期に確実に検出するためである。なお、エンジン1が車両の前部に横置き搭載されると共に、オイルレベルセンサSW9が、オイルパン13内の車両前後方向中央部であって、車両横方向一方側寄りに配置されているため、横方向の加速度の方が前後方向の加速度よりも、油面の変動に大きな影響を及ぼす。
以上のように、抽出部10fは、オイルレベルセンサSW9の検出値から、油面不安定時における検出値、及び、オイルレベルセンサSW9による検出不可時における検出値を選別、除去し、それ以外の検出値を抽出する。
但し、抽出部10fは、Lレベル及び希釈状態の判定においては、車両走行時に、横方向の加速度が0.2G(所定値)以上になったとき(例えば、横方向の加速度が0.2G以上である状態の継続時間が5秒未満であるとき)には、再び0.2G未満になった(戻った)時から7秒(所定期間)の間、抽出条件が成立していても、オイルレベルセンサSW9の検出値を抽出しない。
横方向の加速度が0.2G以上になったときには(例えば、車両の旋回時)、オイルパン13内のオイルの片寄りによってオイルレベルセンサSW9内の油面が低周波変動し、オイルレベルセンサSW9内のオイルレベルが変動する。ここで、オイルレベルセンサSW9では、ラビリンス室89,90(ダンピング手段)を設けることによって、オイルレベルセンサSW9内の油面の高周波変動を抑制するため、横方向の加速度の発生時には、オイルレベルセンサSW9内のオイルがオイルパン13へ流出しないものの、油面の低周波変動に対し、オイルレベルセンサSW9の応答遅延が発生する。このため、横方向の加速度が再び0.2G未満になり、オイルパン13内のオイルの片寄りがなくなっても、オイルレベルセンサSW9内の油面がほぼ安定する(オイルレベルセンサSW9が正常状態になる)まで時間を要する。つまり、横方向の加速度が再び0.2G未満になっても、その後しばらくの間、オイルレベルセンサSW9の検出値は、横方向の加速度(油面の低周波変動)の影響を受ける。そこで、車両走行時に、横方向の加速度が0.2G以上になったときには、再び0.2G未満になった時から7秒の間、オイルレベルセンサSW9の検出値を抽出しない。なお、「7秒」と設定したのは、実験を予め行うと、横方向の加速度の発生時における油面の低周波変動に対し、オイルレベルセンサSW9の応答遅延時間が約7秒だったからである。
さらに、抽出部10fは、車両走行時に、横方向の加速度が0.2G以上で且つその方向が一定方向である状態が5秒(所定時間)以上継続したときには、再び0.2G未満になった(復帰した)時から30秒(第2所定期間)の間、抽出条件が成立していても、オイルレベルセンサSW9の検出値を抽出しない。
横方向の加速度が0.2G以上で且つその方向が一定方向である状態が比較的長時間継続したとき(例えば、比較的長時間、一定方向に旋回走行しているとき)、特に、オイルパン13内のオイルレベルが後述するLレベルに近付く又は達したときには、オイルパン13内のオイルの片寄りによってオイルレベルセンサSW9がオイルから暴露し、オイルレベルセンサSW9内のオイルが第1開口83aからオイルパン13へと流出すると共に、空気がオイルレベルセンサSW9内に流入する。このとき、横方向の加速度が再び0.2G未満になり、オイルパン13内のオイルの片寄りがなくなっても、オイルがオイルレベルセンサSW9内に再び流入し且つ油面がほぼ安定する(オイルレベルセンサSW9が正常状態になる)まで時間を要する。そこで、車両走行時に、横方向の加速度が0.2G以上で且つその方向が一定方向である状態が5秒以上継続したときには、再び0.2G未満になった時から30秒の間、オイルレベルセンサSW9の検出値を抽出しない。なお、「30秒」に設定したのは、実験を予め行うと、オイルレベルセンサSW9内のオイルがすべて流出したときに、オイルレベルセンサSW9が正常状態になるまで約30秒を要したからである。また、この「30秒」には、オイルレベルセンサSW9の応答遅延時間(7秒)が含まれている。
以上のように、抽出部10fは、抽出条件が成立しているときに、オイルレベルセンサSW9の検出値から、横方向の加速度が0.2G以上になったときにおいて再び0.2G未満になった時から7秒の間に検出されたもの、及び、横方向の加速度が0.2G以上で且つその方向が一定方向である状態が5秒以上継続したときにおいて再び0.2G未満になった時から30秒の間に検出されたもの以外のものを抽出する。
一方、Xレベルの判定においては、抽出部10fは、車両走行時に、横方向の加速度が0.08G(所定値)以上の状態から0.08G未満になった(戻った)ときは、その時から7秒(所定期間)を経過した後に、他の抽出条件が成立することを条件に、オイルレベルセンサSW9の検出値の抽出を再開する。
補正部10gは、Lレベル及び希釈状態の判定において、抽出部10fによって抽出されたオイルレベルセンサSW9の検出値(サンプル値)を該検出値毎に補正し、エンジン停止時におけるオイルパン13内のオイルレベルに相当する値(以下、停止時オイルレベル相当値という)を予測算出する。この算出は以下のように行なう。
まず、記憶部10bからオイルレベル補正マップを読み出す。このオイルレベル補正マップは、記憶部10bに予め記憶されていて、実験を予め行うことによって、エンジン回転数及び油温をパラメータとして、該エンジン回転数及び油温と補正係数(制御定数)の関係を定めている。ここで、エンジン回転数が変化すると、オイルの供給量が変化し、オイルレベルが変化する。さらに、油温が変化すると、オイルの粘度が変化すると共に、オイル自体の膨張・収縮によってその体積が変化するため、オイルの循環量が変化し、オイルレベルが変化する。
次いで、読み出したオイルレベル補正マップを用いて、クランク角センサSW4及び油温センサSW11によってそれぞれ検出されたエンジン回転数及び油温に基づいて、補正係数を算出する。続いて、オイルレベルセンサSW9の検出値と算出した補正係数に基づいて、エンジン1の暖機完了後(油温は約80℃)にイグニッションOFFにして5分放置した時における停止時オイルレベル相当値を算出する。
ここに、本実施形態では、上記記憶部10bに、Lレベル側判定用の専用のオイルレベル補正マップと、Xレベル側判定用の専用のオイルレベル補正マップと、希釈状態判定用の専用のオイルレベル補正マップとが記憶されている。
ここで、Lレベル側判定用とXレベル側判定用のそれぞれのオイルレベル補正マップを用いるのは、オイルパン13内のオイルレベルがXレベルに近付く又は達すると、オイルポンプ72やバランサ装置(図示せず)がオイルに浸漬する部分の体積が増加すると共に、オイルパン13のXレベル側とLレベル側では、その形状が相違するため、オイルパン13内のオイルレベルがXレベルに近付く又は達したときには、Lレベルに近付く又は達したときよりも、オイルレベルの変動が大きい。そこで、Xレベル側判定用のオイルレベル補正マップと、Lレベル側判定用のオイルレベル補正マップは相違している。
なお、エンジンの構成においては、バランサ装置がなく、Xレベル側とLレベル側とでオイルの体積変化が殆ど同じである際は、共通のオイルレベル補正マップを用いることもできる。
さらに、希釈状態判定用の専用のオイルレベル補正マップを用いるのは、LレベルからXレベルまでの間の希釈状態判定に利用するため、上記Xレベル側判定用及びLレベル側判定用の精度を高める専用のオイルレベル補正マップとは相違するものである。この希釈状態判定用の専用のオイルレベル補正マップを用いることで希釈判定精度を高めている。
平均算出部10hは、補正部10gによって算出された停止時オイルレベル相当値を平均することによって、Xレベルの判定用のオイルレベル平均値AX、並びにLレベル及び希釈状態の判定に使用するオイルレベル平均値ALを算出する。オイルレベル平均値AX及びオイルレベル平均値ALの算出手法は同じであり、停止時オイルレベル相当値が3000データ得られた時、及び、100km走行した時のうちいずれか早い方の時に、その時までに得られた停止時オイルレベル相当値を平均することによって、エンジン停止時で且つ車両水平時におけるオイルパン13内のオイルレベルに相当するオイルレベル平均値AX,ALを算出する。
このようにオイルレベル平均値を算出すると、油面を変動させる走行時外乱(例えば、前後方向の加速度や横方向の加速度等)の影響が除外される。つまり、一定の時間走行すると、前方向の加速度と後方向の加速度の発生頻度、及び、左方向の加速度と右方向の加速度の発生頻度が、それぞれほぼ同様になり、前後方向、横方向の加速度による油面の変動が相殺される。
レベル判定部10cは、オイルレベル平均値AXがXレベルに相当する所定の上限値SX以上であるか否か、並びに、オイルレベル平均値ALがLレベルに相当する所定の下限値SL以下であるか否かを判定する。
なお、図3に示すKレベルとは、オイルレベルセンサSW9の検出限界(検出上限レベル)であり、Fレベルとは、エンジン停止時におけるオイルパン13内のオイルの通常上限レベルである。さらに、図3に示すように、エンジン停止時に、オイルパン13内のオイルレベルがXレベル、Fレベル又はLレベルに達していても、エンジン運転時には、そのオイルレベルが低下する。
そして、ECU10は、レベル判定部10cによってXレベル側判定用のオイルレベル平均値AXが所定の上限値SX以上であると2回連続して判定されたときには、エンジン停止時で且つ車両水平時におけるオイルパン13内のオイルレベルがXレベルに達している、つまり、点灯条件が成立しているとして、オイルランプ73を点灯させる制御信号を出力する。これにより、オイルパン13内のオイルレベルがXレベルに達している旨を報知し、オイルの交換を促す。なお、点灯条件が成立するまで、ロジックをリセットせずに継続する。
さらに、ECU10は、レベル判定部10cによってLレベル側判定用のオイルレベル平均値ALが所定の下限値SL以下であると2回連続して判定されたときには、エンジン停止時で且つ車両水平時におけるオイルパン13内のオイルレベルがLレベルに達している、つまり、点灯条件が成立しているとして、オイルランプ73を点灯させる制御信号を出力する。これにより、オイルパン13内のオイルレベルがLレベルに達している旨を報知し、オイルの補給又は交換を促す。なお、点灯条件が成立するまで、ロジックをリセットせずに継続する。二つのドライビングサイクルを跨ぐときも同様である。
(オイルレベル判定の流れ)
ECU10のオイルレベル判定の流れについて説明する。
まず、Xレベル側のオイルレベル判定の流れについて図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。ステップSA1では、オイルレベルセンサSW9の検出値等が入力される。続くステップSA2では、抽出部10fによって、上述の抽出条件(1)〜(7)が成立しているときに、ステップSA1において入力されたオイルレベルセンサSW9の検出値を抽出する。但し、横方向の加速度が0.08G以上の状態から0.08G未満になったときは、その時から7秒を経過するまではオイルレベルセンサSW9の検出値の抽出しない。
ステップSA3では、補正部10gによって、ステップSA2において抽出されたオイルレベルセンサSW9の検出値を補正し、Xレベル側判定用の停止時オイルレベル相当値を予測算出する。すなわち、記憶部10bから読み出したXレベル側判定用のオイルレベル補正マップを用いて、クランク角センサSW4及び油温センサSW11によってそれぞれ検出されたエンジン回転数及び油温に基づいて、補正係数を算出する。続いて、オイルレベルセンサSW9の検出値と算出した補正係数に基づいて、エンジン1の暖機完了後にイグニッションOFFにして5分放置した時における停止時オイルレベル相当値を算出する。
続くステップSA4では、ステップSA3で算出された停止時オイルレベル相当値が3000データ分、得られたか、又は、100km走行したか否かを判定する。YESであれば、ステップSA5に進み、NOであれば、ステップSA1に戻る。
ステップSA5では、平均算出部10hによって、ステップSA3で算出された停止時オイルレベル相当値を平均することによって、Xレベル側判定用のオイルレベル平均値AXを算出する。すなわち、停止時オイルレベル相当値が3000データ分、得られた時、及び、100km走行した時のうちいずれか早い方の時に、その時までに得られた停止時オイルレベル相当値を平均することによって、オイルレベル平均値AXを算出する。
続くステップSA6では、ステップSA5において算出されたオイルレベル平均値AXが所定の上限値SX以上であるか否かを判定する。ステップSA6の判定結果がYESで上限値SX以上の場合は、エンジン停止時で且つ車両水平時におけるオイルパン13内のオイルレベルがXレベルに達しているとして、ステップSA7に進む。一方、その判定結果がNOで上限値SX未満の場合は、ステップSA1に戻る。
ステップSA7では、ステップSA6においてオイルレベル平均値AXが所定の上限値SX以上であると判定された(NG判定された)のは2回連続であるか否かを判定する。ステップSA7の判定結果がYESでNG判定が2回連続の場合は、ステップSA8に進む。一方、その判定結果がNOでNG判定が1回目等の場合は、オイルランプ73の誤点灯を防止するために、オイルレベル平均値をもう1回(1サイクル)算出すべく、ステップSA1に戻る。
ステップSA8では、オイルランプ73へ制御信号を出力し、オイルランプ73を点灯させる。その後、エンドに進む。
なお、オイルランプ73の点灯後にイグニッションOFFにすると、オイルランプ73は消灯する。その後、オイルが交換され、ロジックがリセットされると、再びイグニッションONになったときに、オイルランプ73は点灯しない。一方、オイルが交換されないと、再びイグニッションONになったときに、オイルランプ73は再点灯する。
続いて、Lレベル側のオイルレベル判定の流れについて図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。ステップSB1及びステップSB2は、それぞれステップSA1及びステップSA2と同様の処理であるが、横方向の加速度が0.2G以上の状態から0.2G未満になったときは、その時から7秒を経過するまではオイルレベルセンサSW9の検出値の抽出しない点、並びに横方向の加速度が0.2G以上で且つその方向が一定方向である状態が5秒以上継続したときには、再び0.2G未満になった時から30秒の間はオイルレベルセンサSW9の検出値を抽出しない点が相違する。
ステップSB3では、補正部10gによって、ステップSB2において抽出されたオイルレベルセンサSW9の検出値を補正し、Lレベル側判定用の停止時オイルレベル相当値を予測算出する。すなわち、記憶部10bから読み出したLレベル側判定用のオイルレベル補正マップを用いて、クランク角センサSW4及び油温センサSW11によってそれぞれ検出されたエンジン回転数及び油温に基づいて、補正係数を算出する。続いて、オイルレベルセンサSW9の検出値と算出した補正係数に基づいて、エンジン1の暖機完了後にイグニッションOFFにして5分放置した時における停止時オイルレベル相当値を算出する。
続くステップSB4では、ステップSB3で算出された停止時オイルレベル相当値が3000データ分、得られたか、又は、100km走行したか否かを判定する。YESであれば、ステップSB5に進み、NOであれば、ステップSB1に戻る。
ステップSB5では、平均算出部10hによって、ステップSB3で算出された停止時オイルレベル相当値を平均することによって、Lレベル側判定用のオイルレベル平均値ALを算出する。すなわち、停止時オイルレベル相当値が3000データ分、得られた時、及び、100km走行した時のうちいずれか早い方の時に、その時までに得られた停止時オイルレベル相当値を平均することによって、オイルレベル平均値ALを算出する。
続くステップSB6では、ステップSB5において算出されたオイルレベル平均値ALが所定の下限値SL以下であるか否かを判定する。ステップSB6の判定結果がYESで下限値SL以下の場合は、エンジン停止時で且つ車両水平時におけるオイルパン13内のオイルレベルがLレベルに達しているとして、ステップSB7に進む。一方、その判定結果がNOで下限値SLよりも大きい場合は、ステップSB1に戻る。
ステップSB7では、ステップSB6においてオイルレベル平均値ALが所定の下限値SL以下であると判定された(NG判定された)のは2回連続であるか否かを判定する。ステップSB7の判定結果がYESでNG判定が2回連続の場合は、ステップSB8に進む。一方、その判定結果がNOでNG判定が1回目等の場合は、オイルランプ73の誤点灯を防止するために、オイルレベル平均値をもう1回算出すべく、ステップSB1に戻る。
ステップSB8では、オイルランプ73へ制御信号を出力し、オイルランプ73を点灯させる。その後、エンドに進む。
なお、オイルランプ73の点灯後にイグニッションOFFにすると、オイルランプ73は消灯する。その後、オイルが補給又は交換されると、再びイグニッションONになったときに、オイルランプ73は点灯しない。一方、オイルが補給、交換されないと、再びイグニッションONになったときに、オイルランプ73は再点灯する。
本実施形態によれば、上述のオイルレベルセンサSW9の検出値抽出手法により、オイルパン13内のオイルレベルを高精度に検出することができる。したがって、オイルパン13内のオイルレベルが適切なレベルであるか正確に判定することができる。
(オイル希釈状態の検出)
希釈検出部10dは、レベル変化量算出手段、期間希釈率算出手段、オイル総希釈率算出手段、オイル補給判定手段、及び総希釈率補正手段を備えている。
レベル変化量算出手段は、算出部10aで算出されるオイルレベル平均値ALに基いて、上記インターバル期間(停止時オイルレベル相当値が3000データ得られるまで期間、及び、走行距離が100kmに達するまでの期間の短い方)のオイルレベルの実変化量TUDIFを算出する。このTUDIFはオイルレベル平均値ALの今回値AL(n)から前回値AL(n−1)を差し引いた値である。
本実施形態では、インターバル期間のエンジンの運転に伴うエンジンオイルからの燃料成分(希釈成分)の揮発を考慮して、実変化量TUDIFを補正する。すなわち、エンジンの高回転・高負荷運転のようなLOC(オイル消費)が多い運転シーンでは、エンジンオイルが消費される一方、油温が高くなるため、エンジンオイルに混入している燃料成分が揮発する。エンジンオイルの消費自体は、オイルと燃料が同時に消費される現象であるから、エンジンオイルの希釈率に大きな影響を与えないが、燃料成分の揮発はエンジンオイルの希釈率を低下させる。
そこで、本実施形態では、エンジンオイルからの燃料の揮発に係るパラメータとして車両の走行距離を採用し、インターバル期間の走行距離に所定係数LOCを掛けて実変化量TUDIFを減算補正したレベル変化量ALDIF(=TUDIF−LOC×走行距離)を求め、これを希釈率の演算に用いる。これにより、燃料の揮発によるエンジンオイルの希釈率の低下を後述の今回希釈率に反映させるようにしている。上記パラメータとして、走行距離に代えて、エンジン運転履歴(所定の高回転・高負荷領域での運転時間、或いは油温が所定値以上になった時間など)を採用してレベル変化量を補正するようにしてもよい。
期間希釈率算出手段は、レベル変化量ALDIFに基いて、予めレベル変化量に対して設定されたエンジンオイルの希釈率に係る特性データを参照して、上記インターバル期間に希釈されたエンジンオイルの希釈率を今回希釈率OLSDILとして算出する。希釈率に係る特性データとしては、オイルレベルの初期値AL(1)とレベル変化量ALDIFの二次元マップに、AL(1)とALDIFに対応する希釈率情報が設定された特性マップを採用することができる。また、希釈率はレベル変化量ALDIFに略比例し、初期値AL(1)が変わってもその特性(傾き)に差異がなく、その特性は線形補間しても問題がないレベルであるから、当該傾き、すなわち、比例定数kを特性データとして採用することもできる。本実施形態は比例定数kを特性データとして採用する例である。今回希釈率については、さらに、前回希釈率OLSDIL(n−1)を加味した重み付け平均化を行なって今回希釈率OLSDIL(n)とし、誤差を少なくする。
オイル総希釈率算出手段は、前回までのオイル総希釈率TDIL(n−1)に今回希釈率OLSDIL(n)加算して今回のオイル総希釈率TDIL(n)を算出する。
オイル補給判定手段は、オイルレベルの実変化量TUDIFに基づき、その値が所定値Bを超えるとき、すなわち、インターバル期間の実変化量TUDIFが所定値Bを超える増大変化量であるときに、当該インターバル期間にエンジンオイルの補給があったと判定する。
総希釈率補正手段は、エンジンオイルの補給が判定されたときに、前回得られたオイル総希釈率TDIL(n−1)を当該増大変化量に応じて低下補正した総希釈率を今回のエンジンオイル総希釈率TDIL(n)として算出する。
具体的には、前回のオイルレベル平均値AL(n−1)をエンジンオイル総量に換算したVoil(n−1)と前回のオイル総希釈率TDIL(n−1)に基いて当該エンジンオイルに混入している燃料成分量Vfuelを算出する(Vfuel=Voil(n−1)×TDIL(n−1))。そして、今回のオイルレベル平均値AL(n)をエンジンオイル総量に換算したVoil(n)と燃料成分量Vfuelから求まる希釈率を今回のオイル総希釈率TDIL(n)として算出する(TDIL(n)=Vfuel÷Voil(n))。
エンジンオイルの補給が判定されたときは、オイル総希釈率TDILを補正することなく、前回のエンジンオイル総希釈率TDIL(n−1)を今回のオイル総希釈率TDIL(n)としてもよい。
劣化判定部10eは、エンジン運転時間が所定値を超えたこと、エンジンオイル中の酸化防止剤の残存量が所定値以下になったこと、並びにオイル総希釈率TDIL(n)が所定値以上になったこと、のいずれかの劣化条件が成立するとき、オイルランプ(報知手段)73の点灯信号を出力し、エンジンオイルの交換を促す。
(オイル希釈状態検出の流れ)
ECU10によるオイル希釈状態検出の流れについて、図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。ステップSC1では、図7のステップSB1〜SB5と同様の処理ステップで、記憶部10bから読み出した希釈状態判定用の専用のオイルレベル補正マップを用いてオイルレベル平均値ALが算出される。ステップSC2において、オイルレベルの初期値AL(1)が記憶されているか否かが判定される。初期値AL(1)が記憶されていないときはステップSC3に進み、初回のレベルAL(1)と二回目のレベルAL(2)とのレベル差ALCHKが演算される。続くステップSC4において、レベル差ALCHKが所定値A未満であるか否かが判定される。レベル差ALCHKが所定値A未満であるときは当該レベルAL(1)が初期値AL(1)として記憶される。レベル差ALCHKが所定値A以上であるときは、二回目のレベルAL(2)を初回レベルAL(1)に置き換え、レベル差ALCHKが所定値A未満になるまで、ステップSC1〜SC4が繰り返される。
ステップSC2において、オイルレベルの初期値AL(1)が記憶されているときは、ステップSC6に進み、オイルレベルの実変化量TUDIFが演算される。次いで、ステップSC7において、実変化量TUDIFが所定値Bよりも大である(オイル補給)か否かが判定される。実変化量TUDIFが所定値B以下である(インターバル期間のオイル補給なし)ときはステップSC8に進み、LOC(オイル消費)を加味したオイルレベル変化量ALDIFが算出される。続くステップSC9において、レベル変化量ALDIFがゼロよりも大きいか否かが判定される。
レベル変化量ALDIFがゼロよりも大きいときはステップSC10に進み、レベル変化量ALDIFに基いて、レベル変化量−希釈率の特性データ(比例定数k)を参照して、今回希釈率OLSDILを算出する(OLSDIL=ALDIF×k)。続くステップSC11において、前回希釈率OLSDIL(n−1)を加味した重み付け平均化を行なって今回希釈率OLSDIL(n)を算出する。続くステップSC12において、前回までのオイル総希釈率TDIL(n−1)に今回希釈率OLSDIL(n)加算して今回のオイル総希釈率TDIL(n)を算出する。
続くステップSC13において、今回のオイル総希釈率TDIL(n)が劣化判定用の所定値を超えるか否かが判定される。オイル総希釈率TDIL(n)が所定値を超えるときはステップSC14に進み、エンジンオイルの交換を促すべく、オイルランプ73の点灯信号が出力される(オイル劣化報知)。
ステップSC7において、実変化量TUDIFが所定値Bよりも大である(オイル補給)と判定されたときはステップSC15に進む。そして、前回のオイル総希釈率TDIL(n−1)を当該増大変化量に応じて低下補正し、これを今回のエンジンオイル総希釈率TDIL(n)としてリターンする。
なお、ステップSC9において、レベル変化量ALDIFがゼロ以下であるときはステップSC1にリターンする。
(オイル希釈状態検出の流れに関する他の実施形態)
図9に示すフローチャートは、図8に示すフローチャートの一部を変更した他の実施形態を示す。
ステップ変更に関しては、ステップSC9において、レベル変化量ALDIFがゼロ以下であるときは、エンジンの高回転・高負荷運転のようなLOC(オイル消費)が多い運転シーンが続き、エンジンオイルが消費される一方、油温が高く、エンジンオイルに混入している燃料成分が多く揮発する。そこで、ステップSC16において、エンジン回転数とエンジン負荷と油温及び運転時間を基に設定した燃料揮発特性マップを用いて、マイナスのレベル変化量ALDIFに基いてマイナスの今回希釈率OLSDILを算出する。これにより、オイル総希釈率TDILを減算補正するようにしている。
(オイルレベルセンサSW9の検出値の抽出に関して)
上記実施形態では、オイルレベルセンサSW9の検出値の抽出において、0.08G、0.2G、7秒、及び30秒を閾値として設定したが、これ以外の任意の値に設定しても良い。
また、上記7秒の閾値に関し、横方向の加速度が0.08G以上又は0.2G以上になってから再び0.08G未満又は0.2G未満になるまでの間の時間が長いほど(すなわち、車両の旋回時間が長いほど)、当該時間閾値を長くするようにしてもよい。これによれば、オイルパン13内のオイルレベルをより一層高精度に検出することができる。したがって、オイルパン13内のオイルレベルが適切なレベルであるかより一層正確に判定することができる。
また、上記実施形態では、油圧のロー制御時(抽出条件の成立時)に、オイルレベルセンサSW9の検出値を抽出したが、オイルポンプ72によるオイルの供給量が所定量以下であるときに、オイルレベルセンサSW9の検出値を抽出しても良い。
(レベル判定に関する他の実施形態)
上記実施形態では、レベル判定部10cによって2回連続してNG判定されたときに、オイルランプ73を点灯させたが、これに限らず、例えば1回、NG判定されたときに、オイルランプ73を点灯させても良い。
(その他)
上記実施形態では、エンジン1の燃料を軽油を主成分としたものにしたが、これに限らず、例えば、アルコール燃料(例えば、エタノール燃料)にしても良い。
本発明がガソリンエンジン搭載車両にも適用できることはもちろんである。