以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[電子写真感光体]
本実施形態に係る電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称す)は、特定の画像形成装置に用いられる。つまり、電子写真感光体と、帯電部材を前記電子写真感光体に接触させて前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える画像形成装置に用いられる。
尚、前記帯電部材は、導電性弾性層と、前記導電性弾性層上に設けられ、前記電子写真感光体と接する導電性表面層であって、樹脂と、含有量が前記樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下の多孔質樹脂粒子と、含有量が前記樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下のシリコーンオイルと、を含む導電性表面層と、を有する帯電部材である。
上記特定の画像形成装置に用いられる本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有し、且つ該電荷輸送層は、電荷輸送能を有し下記一般式(1)で表され且つ全固形分に対する含有比率が5.0質量%以上22.0質量%以下である化合物、並びに下記一般式(A)に示す構造および下記一般式(B)に示す構造を含むポリカーボネート共重合体を含む。
(一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、またはアリール基を表す。尚、前記アルキル基、アルコキシ基、およびアリール基は、それぞれ置換基を有していてもよい。m0およびn0は、それぞれ独立に、0または1を表す。n1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ独立に、0以上5以下の整数を表す。尚、n1が2以上である場合における複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、またR2乃至R6についても同義である。)
(一般式(A)および一般式(B)中、R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、または炭素数6以上12以下のアリール基を表す。Xは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、直鎖もしくは分岐アルキレン基、またはシクロアルキレン基を表す。尚、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、直鎖もしくは分岐アルキレン基、およびシクロアルキレン基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。n7、n8、n9およびn10は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を表す。尚、n7が2以上である場合における複数のR7はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、またR8乃至R10についても同義である。)
なお、本明細書において導電性とは、20℃における体積抵抗率が1×1013Ωcm未満であることを意味する。
従来から、感光体に帯電部材を接触させて感光体表面を帯電する接触帯電方式が用いられている。しかし、接触帯電方式を用いた場合、帯電部材と感光体とが接触する直前および直後において両者の間に微小な間隔があく領域、いわゆる微小ギャップがあり、この微小ギャップにて帯電部材から感光体に向かって放電が発生する。この放電が生じる微小ギャップの領域は、ギャップの形状にもよるものの通常ではごく狭い領域であるため、短時間の放電によって急激に感光体表面の電位が上昇することから、非接触帯電方式に比べて微小な帯電ムラが発生しやすくなる。その結果、露光後の潜像電位にもムラが発生し、形成される画像の画質上で、ドットの欠けや飛び散りが発生しざらつき感が増大することがあった。
尚、前記ざらつき感は特にハーフトーン画像において顕著な傾向にある。また、プロセススピードの速い画像形成装置であるほど帯電部材を通過する時間が短く、帯電による電場で開放された感光体中の残留キャリアが表層まで到達する頻度にばらつきが発生しやすいことから、前記ざらつき感が更に顕著になる傾向にある。
これに対して、本実施形態に係る感光体は、前記一般式(1)で表され且つ全固形分に対する含有比率が5.0質量%以上22.0質量%以下である化合物、並びに前記一般式(A)に示す構造および前記一般式(B)に示す構造を含むポリカーボネート共重合体を含む電荷輸送層を備える。該構成を備えることで、電荷輸送層における電荷移動度が高められ、感光体表面の電位の上昇が抑制されて、微小な帯電ムラの発生が抑制されるものと考えられる。
また、本実施形態に係る感光体は、含有量が前記樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下の多孔質樹脂粒子と、含有量が前記樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下のシリコーンオイルと、を含む導電性表面層を有する帯電部材を備えた画像形成装置に用いられる。これにより、メカニズムは明確ではないものの、前記感光体と該帯電部材との相互作用により、更に効果的に微小な帯電ムラの発生が抑制され、その結果画像におけるざらつき感の発生を抑制し得ることが見出された。
次いで、本実施形態に係る感光体の構成について図1を参照して説明するが、本実施形態は図1によって限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る感光体の層構成を示す模式断面図である。
図1に示す感光体は、導電性基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2Bがこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの2層から構成される。図1に示す感光体においては電荷輸送層2Bが最外表面を構成する最表面層である。
尚、図1では電荷輸送層2Bが最表面層である態様を示したが、更に電荷輸送層2Bの外周面側に保護層等の他の層を設けた態様であってもよい。また、図1では導電性基体1上に下引層4を介して電荷発生層2Aを設けた態様を示したが、下引層4がない態様であってもよい。
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m2/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好まい、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着せる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro−Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4−189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基材からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp−型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn−型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n−型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012−155282号公報の段落[0288]〜[0291]に記載された化合物(CG−1)〜(CG−27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n−型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn−型とする。
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、電荷輸送材料が結着樹脂中に分散して形成される。尚、電荷輸送層は、電荷輸送能を有し前記一般式(1)で表され且つ全固形分に対する含有比率が5.0質量%以上22.0質量%以下である化合物を含み、また前記一般式(A)に示す構造および前記一般式(B)に示す構造を含むポリカーボネート共重合体を含む。
・電荷輸送材料
電荷輸送層は、電荷輸送材料として前記一般式(1)で表される化合物を含む。
尚、前記一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、またはアリール基を表す。尚、前記アルキル基、アルコキシ基、およびアリール基は、それぞれ置換基を有していてもよい。m0およびn0は、それぞれ独立に、0または1を表す。n1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ独立に、0以上5以下の整数を表す。尚、n1が2以上である場合における複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、またR2乃至R6についても同義である。
一般式(1)において、R1乃至R6が表すアルキル基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、オクタデシル基などの直鎖のものや、イソプロピル基、t−ブチル基などの分岐鎖が挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基、イソプロピル基が望ましい。
一般式(1)において、R1乃至R6が表すアルコキシ基としては、炭素数1以上20以下のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ、これらの中でもメトキシ基が望ましい。
一般式(1)において、R1乃至R6が表すハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、これらの中でもフッ素、塩素が望ましい。
一般式(1)において、R1乃至R6が表すアリール基としては、炭素数6以上30以下のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニリル基などが挙げられ、これらの中でもフェニル基、ナフチル基が望ましい。
また、R1乃至R6が表すアルキル基、アルコキシ基、およびアリール基は、それぞれ置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば上記例示したハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基が挙げられる。
尚、R1乃至R6の置換位置としては、p位またはm位が好ましい。
R1乃至R6で表される置換基の数であるn1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ独立に0以上5以下の整数を表す。n1乃至n6は、それぞれ独立に0または1が好ましく、0が更に好ましい。
一般式(1)において、(R1)n1、(R2)n2、(R3)n3、(R4)n4、(R5)n5、および(R6)n6としては、それぞれ独立に、n1乃至n6が0(つまり置換基がなく全てが水素原子)であるか又はn1乃至n6が1で且つR1乃至R6がアルキル基もしくはアルコキシ基であることが望ましく、更にはn1乃至n6が0であるか又はn1乃至n6が1で且つR1乃至R6が炭素数1以上3以下のアルキル基もしくは炭素数1以上3以下のアルコキシ基であることがより望ましい。また、n1乃至n6が0であるか又はn1乃至n6が1で且つR1乃至R6がメチル基もしくはメトキシ基であることが更に望ましい。
m0およびn0は、それぞれ独立に0または1を表す。中でも、m0が0且つn0が1であるか、m0が1且つn0が1であることがより好ましく、m0が1且つn0が1であることが更に好ましい。
ここで、一般式(1)で表される化合物における各基の好ましい具体例として、例示化合物1−1乃至1−20を以下に示す。尚、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6において「H」と記載されている箇所はつまり「n1、n2、n3、n4、n5、またはn6が0」であることを表し、その他の置換基が記載されている箇所は「n1、n2、n3、n4、n5、またはn6が1」であることを表す。また、置換基に記載されている数値は置換位置を表し、即ち「4−Me」とはメチル基が4位に置換していることを表す。
但し、本実施形態はこれら化合物に限定されるものではない。
一般式(1)で表される化合物は、電荷輸送層の全固形分に対する含有比率が5.0質量%以上22.0質量%以下である。5.0質量%未満では電荷輸送能に劣り、特にプロセススピードの速い画像形成装置(いわゆる高速機)では充分な潜像電位が確保し得ず、中間から高濃度域の画像で画像濃度が低下する。一方22.0質量%を超えると電荷輸送層の強度が低下し、画像形成サイクルの繰り返しによる電荷輸送層の摩耗が生じ、耐久性に劣る。
電荷輸送層には、一般式(1)で表される化合物以外にも、他の電荷輸送材料を併用してもよい。また、他の電荷輸送材料として高分子電荷輸送材料を併用してもよい。以下、他の電荷輸送材料について説明する。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
構造式(a−1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、−C6H4−C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は−C6H4−CH=CH−CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
構造式(a−2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、−C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は−CH=CH−CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
ここで、構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C6H4−CH=CH−CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
高分子電荷輸送材料としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。
他の電荷輸送材料の具体例としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノンジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。
一般式(1)で表される化合物と他の電荷輸送材料とを併用する場合の、一般式(1)で表される化合物と他の電荷輸送材料の質量比としては、例えば1:5から5:1の範囲が挙げられる。すなわち、一般式(1)で表される化合物と他の電荷輸送材料とを併用する場合、電荷輸送材料全体における一般式(1)で表される化合物の含有量としては、例えば17質量%以上83質量%以下の範囲が挙げられる。
電荷輸送層中における結着樹脂と電荷輸送材料との質量比としては、例えば2:8から8:2の範囲が挙げられる。すなわち、電荷輸送層全体に対する電荷輸送材料の含有量としては、例えば20質量%以上80質量%以下の範囲が挙げられ、40質量%以上60質量%以下の範囲であってもよい。
・結着樹脂
電荷輸送層は、結着樹脂として前記一般式(A)に示す構造および前記一般式(B)に示す構造を含むポリカーボネート共重合体(以下単に「特定のポリカーボネート樹脂」と称す)を含む。
尚、一般式(A)および一般式(B)において、R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、または炭素数6以上12以下のアリール基を表す。Xは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、直鎖もしくは分岐アルキレン基、またはシクロアルキレン基を表す。尚、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、直鎖もしくは分岐アルキレン基、およびシクロアルキレン基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。n7、n8、n9およびn10は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を表す。尚、n7が2以上である場合における複数のR7はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、またR8乃至R10についても同義である。
一般式(A)において、(R7)n7および(R8)n8は、それぞれ独立に、n7およびn8が0(つまり置換基がなく全てが水素原子)であるかまたはn7およびn8が1で且つR7およびR8が炭素数1以上6以下のアルキル基もしくは炭素数6以上12以下のアリール基であることが望ましく、更にはn7およびn8が0であるかまたはn7およびn8が1で且つR7およびR8がメチル基もしくはフェニル基であることがより望ましい。
一般式(A)で表される構造単位として、具体的には、下記構造式(A1)で表される構造単位であることが望ましい。
一般式(B)において、(R9)n9および(R10)n10は、それぞれ独立に、n9およびn10が0(つまり置換基がなく全てが水素原子)であるかまたはn9およびn10が1で且つR9およびR10が炭素数1以上6以下のアルキル基もしくは炭素数6以上12以下のアリール基であることが望ましく、更にはn9およびn10が0であるかまたはn9およびn10が1で且つR9およびR10がメチル基もしくはフェニル基であることがより望ましい。
一般式(B)において、Xは、−CR11R12−基(但し、R11およびR12は、各々独立に水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、または炭素数6以上12以下のアリール基を表す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基を表すことが好ましく、−CR11R12−基、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基がより好ましく、−CR11R12−基が更に望ましい。
また、−CR11R12−中のR11およびR12は、各々独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基または炭素数6以上12以下のアリール基が望ましく、その中でもメチル基またはフェニル基がより望ましい。
一般式(B)で表される構造単位として、具体的には、下記構造式(B1)〜(B3)で表される構造単位であることが望ましい。
ここで、一般式(A)で表される構造単位と、一般式(B)で表される構造単位と、を含む共重合体であるポリカーボネート樹脂は、例えば、下記一般式(2A)で表される4,4’−ジヒドロキシビフェニル化合物および下記一般式(2B)で表されるビスフェノール化合物を原料として用い、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物との重縮合またはビスアリールカーボネートとのエステル交換反応等の方法によって得られる。
一般式(2A)および(2B)中、R7、R8、R9、R10、n7、n8、n9、n10、Xは、一般式(A)および一般式(B)中のものと同義である。
ここで、一般式(2A)で表される4,4’−ジヒドロキシビフェニル化合物として具体的には、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジシクロヘキシルビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルビフェニル等が挙げられる。これら4,4’−ジヒドロキシビフェニル化合物は、1種単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
一方、一般式(2B)で表されるビスフェノール化合物として具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(2−tert−アミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらビスフェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
特定のポリカーボネート樹脂において、一般式(A)で表される構造単位の共重合比は、ポリカーボネート樹脂を構成する全構造単位に対して5モル%以上95モル%以下の範囲がよく、望ましくは5モル%以上50モル%以下の範囲、さらに望ましくは15モル%以上25モル%以下の範囲である。
また、特定のポリカーボネート樹脂において、一般式(A)で表される構造単位と一般式(B)で表される構造単位との共重合モル比(下記例示化合物におけるm:n比に相当)は、例えば、一般式(A):一般式(B)=95:5以上5:95以下の範囲がよく、望ましくは50:50以上5:95以下の範囲、さらに望ましくは30:70以上10:90以下の範囲である。
特定のポリカーボネート樹脂の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、例示化合物中、m、nは共重合比を示す。
特定のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量としては、20000以上1200000以下の範囲が望ましく、40000以上100000以下の範囲がより望ましく、60000以上80000以下の範囲が更に望ましい。
尚、特定のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定は、以下の方法で行われる。即ち、樹脂1gをメチレンクロライド100cm3に溶解し、25℃の測定環境下でウベローデ粘度計で、その比粘度ηspを測定し、ηsp/c=〔η〕+0.45〔η〕2cの関係式(ただしcは濃度(g/cm3)より極限粘度〔η〕(cm3/g)をもとめ、H.Schnellによって与えられている式、〔η〕=1.23×10−4Mv0.83の関係式より粘度平均分子量Mvをもとめる一点測定法が用いられる。
尚、機能を損ねない範囲で、特定のポリカーボネート樹脂と共に、他の結着樹脂を併用してもよい。当該他の結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらの他の結着樹脂は、単独または2種以上混合して用いてもよい。
ここで、特定のポリカーボネート樹脂は、電荷輸送層の固形分全量に対して例えば10質量%以上90質量%以下であることがよく、望ましくは30質量%以上90質量%以下であり、より望ましくは50質量%以上90質量%以下である。
また。結着樹脂(特定のポリカーボネート樹脂+他の結着樹脂)と電荷輸送材料との配合比(質量比)は10:1乃至1:5が望ましい。
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
例えば電荷輸送層は、フッ素粒子を含んでもよい。
フッ素粒子としては、例えばフッ素樹脂の粒子が挙げられ、フッ素樹脂としては例えば4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体等が挙げられる。これらの中でも特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
フッ素粒子の一次粒径としては、例えば0.05μm以上1μm以下の範囲が挙げられ、0.1μm以上0.5μm以下の範囲であってもよい。
電荷輸送層中におけるフッ素粒子の含有量としては、例えば2質量%以上15質量%以下の範囲が挙げられる。
上記電荷輸送層形成用の塗布液中にフッ素粒子を分散させるための分散方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等のメディアレス分散機を利用する方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
また、塗布液中におけるフッ素粒子の分散安定剤として、例えば、フッ素系界面活性剤や、フッ素系グラフトポリマーを用いてもよい。フッ素系グラフトポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチルメタクリレートよりグラフト重合された樹脂等が挙げられる。
上記フッ素系界面活性剤やフッ素系グラフトポリマーの添加量としては、例えば、フッ素粒子の質量に対して1質量%以上5質量%以下の質量が挙げられる。
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは20μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上40μm以下の範囲内に設定される。
膜厚が上記下限値以上であることにより、本実施形態の電荷輸送層による移動度の向上が顕著となり、画像のざらつき感をより抑制し得る。更に電荷輸送層の膜減り代が確保され長期に渡り画像のざらつき感を抑制し得る。一方上記上限値以下であることにより、本実施形態の電荷輸送層内の電荷輸送材料と結着樹脂の偏析、所謂海島状態が低減され、移動度の向上が顕著となり、画像のざらつき感をより抑制し得る。
・感光層への添加剤
さらに、本実施形態の電子写真感光体には、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層(電荷発生層または電荷輸送層)中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。
たとえば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。ヒンダードアミン系化合物ではビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。有機イオウ系酸化防止剤としてジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどが挙げられる。有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィートなどが挙げられる。
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果が得られる。
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤として2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系光安定剤として2−(−2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(−2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル−)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル−)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル−)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。その他の化合物として2,4,ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメートなどがある。
また、少なくとも1種の電子受容性物質を本実施形態の電子写真感光体に含有せしめてもよい。本実施形態の感光体に使用される電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
また、塗布液には、塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを添加してもよい。
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、−OH、−OR[但し、Rはアルキル基を示す]、−NH2、−SH、−COOH、−SiRQ1 3−Qn(ORQ2)Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1〜3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電部材を前記電子写真感光体に接触させて前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。
尚、電子写真感光体として前述の本実施形態に係る電子写真感光体を用いる。
また、帯電部材として、導電性弾性層、並びに前記導電性弾性層上に設けられ、前記電子写真感光体と接する導電性表面層であって、樹脂と、含有量が前記樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下の多孔質樹脂粒子と、含有量が前記樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下のシリコーンオイルと、を含む導電性表面層を有する帯電部材を用いる。
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体および帯電手段を備える部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体および帯電手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体および帯電手段以外に、例えば、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を被転写体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
なお、図2には、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
−帯電部材−
図4は、本実施形態における帯電部材を示す概略斜視図である。図5は、本実施形態における帯電部材の概略断面図である。なお、図5は、図4のA−A断面図である。
本実施形態における帯電部材121は、図4及び図5に示すように、例えば、導電性支持体30(以下「支持体30」と称する)と、導電性支持体30の外周面上に設けられた導電性弾性層31(以下「弾性層31」と称する)と、導電性弾性層31の外周面上に設けられ、像保持体と接する導電性表面層32(以下「表面層32」と称する)と、を有するロール部材である。なお、支持体30と弾性層31との間は、例えば、接着層(不図示)が設けられている。
そして、表面層32は、樹脂と、導電剤と、含有量が樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下の多孔質樹脂粒子と、含有量が前記樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下のシリコーンオイルと、を含んでいる。
像保持体(感光体)と接する表面層32を有する帯電部材(接触方式の帯電部材)において、目的とする表面粗さを付与し、表面層32へのトナーの外添剤の被覆(フィルミング)を抑制する目的で、表面層32に多孔質樹脂粒子を配合することが知られている。多孔質樹脂粒子を表面層32に配合すると、多孔質樹脂粒子が樹脂との密着性が高いことから、粒子の表面層32からの離脱と共に、表面層32の割れの発生が抑制され易くなる。
しかしながら、各成分を含む塗布液の塗膜の加熱を経て、表面層32を形成するとき、加熱により、塗膜内部で渦流が生じ、その結果、セル構造が現れるベナードセルと呼ばれる現象が生じることがある。このベナードセル現象が生じると、セル構造の境界部に多孔質樹脂粒子が偏在し、目的とする表面粗さが付与されないばかりでなく、表面層の抵抗均一性が低下する。その結果、像保持体に対する均一帯電性も低下し、画像の粒状性が悪化する。特に、高いプロセス速度で画像を形成する場合、又は解像度が高い高画質の画像を形成するときに、画像の粒状性の悪化が顕著に現れる。
そこで、本実施形態における帯電部材121では、表面層32に、多孔質樹脂粒子を樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下で配合すると共に、シリコーンオイルを樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下で配合する。この量で、多孔質樹脂粒子及びシリコーンオイルを表面層32に配合することにより、表面層32を形成するときに生じるベナードセル現象の発生が抑制される。
このため、本実施形態における帯電部材121では、表面層32において、多孔質樹脂粒子の分散性が高まり、抵抗均一性の悪化が抑制される。その結果、粒状性に優れた画像が得られる。
但し、本実施形態における帯電部材121は、ロール部材に限られず、弾性層31及び表面層32を有していれば、ブレード部材、ブラシ部材、フィルム部材のいずれでもあってもよい。また、本実施形態における帯電部材121は、上記層構成に限られず、例えば、支持体30と弾性層31との間に中間層を設けた構成、又は、弾性層31と表面層32との間に抵抗調整層若しくは移行防止層を設けた構成であってもよい。
以下、本実施形態における帯電部材121の詳細について説明する。なお、以下、符号は省略して説明する。
(支持体)
支持体は、帯電部材の電極および支持部材として機能するものであり、例えば、その材質としては鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属又は合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;等が挙げられる。導電性支持体としては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂、セラミック部材)等も挙げられる。支持体は、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
(接着層)
接着層の材質としては、支持体と弾性層とを接着し、導電性を有する組成物である公知の接着剤が挙げられる。この接着剤としては、例えば、電子導電剤を含有する樹脂組成物、導電性樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。
(弾性層)
弾性層は、弾性材料と、導電剤と、を含む。弾性層は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。なお、弾性層は、抵抗調整層を兼ねていることがよい。
弾性材料としては、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム、これらを混合したゴム等が挙げられる。
これらの弾性材料の中でも、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、これらを混合したゴムが好ましい。
ゴム材料は、発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
導電剤としては、電子導電性物質、イオン導電性物質が挙げられる。
電子導電性物質としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の公知の金属酸化物が挙げられる。
イオン導電性物質としては、例えば、四級アンモニウム塩、アルカリ金属の過塩素酸塩、アルカリ土類金属の過塩素酸塩等の公知の塩が挙げられる。
これらの導電剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
導電剤の含有量は、弾性層の目的とする特性が得られる範囲内であれば、特に制限はない。
具体的には、電子導電性物質の場合、導電剤の含有量は、弾性材料100質量部に対して、1質量部以上90質量部以下であることが好ましい。
一方、イオン導電性物質の場合、導電剤の含有量は、弾性材料100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
弾性層におけるその他の添加剤としては、軟化剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の周知の添加剤が挙げられる。
弾性層の体積抵抗率は、例えば、弾性層が抵抗調整層を兼ねる場合、例えば、103Ωcm以上1014Ωcm以下がよく、好ましくは105Ωcm以上1012Ωcm以下、より好ましくは107Ωcm以上1012Ωcm以下である。
弾性層の体積抵抗率は、次に示す方法により測定された値である。弾性層からシート状の測定試料を採取し、その測定試料に対し、JIS−K−6911(1995)に従って、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加した後、その流れる電流値より、下記式を用いて算出する。
体積抵抗率(Ωcm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料厚(cm))
弾性層の表面粗さRzは、トナー又はゴミが表面層の凹部に溜まることを抑制する点から、例えば、20μm以下がよい。
弾性層の表面粗さRzは、次に示す方法により測定された値である。JIS B 0601(1994)に従って、弾性層(帯電部材)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を測定し、その平均値とした。測定装置としては、東京精密株式会社製、サーフコム1400を用いる。測定条件は、カットオフ:0.8mm、測定長:2.4mm、トラバーススピード:0.3mm/secとする。
弾性層の厚みは、帯電部材を適用する装置によって異なるが、例えば、1mm以上10mm以下がよく、好ましくは2mm以上5mm以下である。
弾性層の厚みは、次に示す方法により測定された値である。弾性層(帯電部材)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を片刃ナイフで切り取り、切り取った試料の断面を5から50倍の厚みに応じて適切な倍率で観察して、膜厚を測定してその平均値とした。測定装置は、キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX−200を用いる。
(表面層)
表面層は、樹脂と、多孔質樹脂粒子と、シリコーンオイル(以下「ポリシロキサン」と称する場合もある)と、を含む。表面層は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂。ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等)が挙げられる。また、樹脂は、硬化性樹脂を硬化剤若しくは触媒により硬化又は架橋したものが好ましい。
ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含む共重合体である。なお、共重合ナイロンには、6ナイロン、66ナイロン等の他の重合単位を含んでいてもよい。
これらの中でも、汚れ防止の観点から、樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、表面層の耐摩耗性、多孔質樹脂粒子の離脱抑制の点から、ポリアミド樹脂がより好ましい。
特に、ポリアミド樹脂としては、表面層の耐摩耗性、多孔質樹脂粒子の離脱抑制の点から、アルコキシメチル化ポリアミド(アルコキシメチル化ナイロン)が好ましく、より好ましくはメトキシメチル化ポリアミド(N−メトキシメチル化ナイロン)である。
なお、樹脂は、表面層の機械的強度を向上させ、表面層の割れの発生を抑制する点から、架橋構造を有することがよい。樹脂が架橋構造を有する場合、表面層のゲル分率は50%以上100%以下が好ましく、より好ましくは60%以上100%以下である。
ゲル分率の測定は、JIS K6796に準じて行われる。具体的には、表面層から測定試料を採取する。採取した測定試料の質量を測定し、これを溶剤抽出前の質量とする。次に、測定試料を、表面層形成用の塗布液を調製するのに用いる溶剤中に24時間浸漬した後、溶剤をろ過し、残留した残留物をろ過し、重量を測定する。この重量を抽出後の質量とする。そして、下記式に従って、ゲル分率を算出する。
・式:ゲル分率=100×(溶剤抽出後の質量)/(溶剤抽出前の質量)
多孔質樹脂粒子としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の多孔質粒子が挙げられる。
多孔質樹脂粒子の個数平均粒径は、例えば、0.1μm以上30μm以下がよく、好ましくは0.5μm以上20μm以下、より好ましくは1μm以上15μm以下である。
多孔質樹脂粒子の個数平均粒径は、次の方法により測定された値である。まず、多孔質樹脂粒子をSEM試料台に貼りつけた導電性両面テープ上に保持し、これをサンプルとする。このサンプルをSEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。例えば、多孔質樹脂粒子サンプルをFE−SEM(日本電子製 JSM−6700F),加速電圧5kVの条件下二次電子像を観察する。そして、多孔質樹脂粒子50個の各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として、その平均値を個数平均粒径とする。
多孔質樹脂粒子の含有量は、樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下であり、好ましくは5質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
多孔質樹脂粒子の含有量を3質量%以上とすると、目的とする表面層の表面粗さが実現され易くなり、粒状性の向上と共に、トナーの外添剤の被覆(フィルミング)が抑制され難くなる。一方、多孔質樹脂粒子の含有量を25質量部以下とすると、表面層の抵抗均一性の低下が抑えられ、粒状性が向上する。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル等のストレートシリコーン;アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル、フルオロアルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル基変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル;が挙げられる。
これらのシリコーンオイルの中でも、画像の粒状性を向上させる点から、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリシロキサン鎖の側鎖、両末端、及び方末端の少なくとも一つを、ポリアルキレンオキサイドで変性したシリコーンオイルが挙げられる。
脂肪酸エステル変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリシロキサン鎖の側鎖、両末端、及び方末端の少なくとも一つを、ポリエステルで変性したシリコーンオイルが挙げられる。
シリコーンオイルの含有量は、樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であり、好ましくは0.3質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。
シリコーンオイルの含有量を0.1質量部以上とすると、表面層32を形成するときに生じるベナードセル現象の発生が抑制され、粒状性に優れた画像が得られる。一方、シリコーンオイルの含有量を10質量部以下とすることで、表面層からシリコーンオイルが染み出す現象(ブリード)の発生が抑制され易くなり、帯電部材の保管特性が向上する。
表面層におけるその他の添加剤としては、例えば、導電剤、多孔質粒子以外の充填剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の通常表面層に添加され得る周知の添加剤が挙げられる。
表面層の体積抵抗率は、例えば、103Ωcm以上1014Ωcm以下がよく、好ましくは105Ωcm以上1012Ωcm以下、より好ましくは107Ωcm以上1012Ωcm以下がよい。
表面層の体積抵抗率は、次に示す方法により測定された値である。表面層をアルミやステンレス等の金属の平板又は体積抵抗が10Ωcm以下のシート状のゴム材等に塗布し、測定試料を得る。その測定試料に対し、JIS−K−6911(1995)に従って、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加した後、その流れる電流値より、下記式を用いて算出する。
体積抵抗率(Ωcm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料膜厚(cm))
ここで、フルデバイス(部材全体)の抵抗としては、シート状に形成した弾性層上に表面層を片面のみ形成して、測定試料を得る。その測定試料に対し、JIS−K−6911(1995)に従って、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/測定試料の厚み)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加した後、その流れる電流値より、下記式を用いて算出する。
式: 体積抵抗率(Ωcm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料の厚み(cm))
表面層の表面粗さRzは、画像の粒状性を向上させると共に、トナーの外添剤の被覆(フィルミング)を抑制する点から、2μm以上10μm以下がよく、好ましくは3μm以上8μm以下、より好ましくは3μm以上6μm以下である。
表面層の表面粗さRzは、次に示す方法により測定された値である。JIS B 0601(1994)に従って、表面層(帯電部材)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を測定し、その平均値とした。測定装置としては、東京精密株式会社製、サーフコム1400を用いる。測定条件は、カットオフ:0.8mm、測定長:2.4mm、トラバーススピード:0.3mm/secとする。
表面層の表面自由エネルギーは、繰り返し画像を形成しても、粒状性に優れた画像を得られる点から、例えば、50mN/m以上90mN/m以下がよく、好ましくは55mN/m以上90mN/m以下である。
表面層の表面自由エネルギーは、次に示す方法により測定された値である。常温常湿(22℃、55%RH)環境下で、表面自由エネルギーの双極子成分、分散成分および水素結合成分が既知である試薬として純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレン、エチレングリコールを使用し、接触角計CA−X(商品名;協和界面株式会社製)を用いて、表面層の表面に対する接触角を測定し、測定結果に基づき表面自由エネルギー解析ソフトEG−11(商品名;協和界面株式会社製)を用いて、Fowkesの式に基づく表面自由エネルギーを算出する。但し、試薬の滴下量は2.5μLとし、接触角測定までの時間は試薬を滴下してから60秒後の接触角を測定する。
ここで、帯電部材の表面のダイナミック超微小硬度は、汚染や割れの点から、例えば、0.04以上0.5以下がよく、好ましくは0.08以上0.3以下である。
帯電部材の表面のダイナミック超微小硬度(以下、「DH」とも称する)は、圧子を試料に一定の押込み速度(mN/s)で進入させたときの試験荷重をP(mN)、押込み深さをD(μm)としたとき、下記式より算出された硬度である。但し、下記式において、αは圧子形状による定数を表す。
式:DH=α×P/D2
なお、ダイナミック超微小硬度の測定は、ダイナミック超微小硬度計DUH−W201S((株)島津製作所社製)により行った。ダイナミック超微小硬度は、軟質材料測定により、三角錐圧子(頂角:115°、α:3.8584)を、帯電部材の表面層に押込み速度0.14mN/s、試験荷重1.0mNで進入させた時の押込み深さDを測定することにより求められる。
表面層の厚みは、弾性層からのブリード物(滲み出す液状物)及びブルーム物(析出する固形物)の帯電部材の表面への移動を抑制すると共に、表面層の抵抗安定性の点から、例えば、2μm以上25μm以下がよく、好ましくは3μm以上20μm以下であり、より好ましくは3μm以上15μm以下であり、更に好ましくは5μm以上15μm以下である。
表面層の厚みは、次に示す方法により測定された値である。表面層(帯電部材)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を片刃ナイフで切り取り、切り取った試料の断面を倍率1000倍で観察して、膜厚を測定してその平均値とした。測定装置は、キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX−200を用いる。
表面層は、各成分を溶剤に分散させて塗布液を調製し、先立って形成した弾性層上に、この塗布液を塗布した後、加熱することで形成する。
塗布液の塗布方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、フロー塗布法、リング塗布法、ダイ塗布法、インクジェット塗布法等が挙げられる。
塗布液に用いる溶剤としては、特に限定されず一般的なものが使用され、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などの溶媒を使用してもよい。また、これらの他、種々の溶媒を使用してもよいが、電子写真感光体の生産に一般的に使用される浸漬塗布法を適用するためには、アルコール溶剤若しくはケトン溶剤、又はそれらの混合溶剤が挙げられる。
−帯電装置−
以下、本実施形態における帯電装置について説明する。
図6は、本実施形態における帯電装置の概略斜視図である。
本実施形態における帯電装置は、帯電部材として、上記本実施形態における帯電部材を適用した形態である。
具体的には、本実施形態における帯電装置12は、図6に示すように、例えば、帯電部材121と、クリーニング部材122と、が特定の食い込み量で接触して配置されている。そして、帯電部材121の基材30およびクリーニング部材122の基材122Aの軸方向両端は、各部材が回転自在となるように導電性軸受け123(導電性ベアリング)で保持されている。導電性軸受け123の一方には電源124が接続されている。
なお、本実施形態における帯電装置は、上記構成に限られず、例えば、クリーニング部材122を備えない形態であってもよい。
クリーニング部材122は、帯電部材121の表面を清掃するための清掃部材であり、例えば、ロール状で構成されている。クリーニング部材122は、例えば、円筒状または円柱状の基材122Aと、基材122Aの外周面に弾性層122Bと、で構成される。
基材122Aは、導電性の棒状部材であり、その材質は例えば、鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。また、基材122Aとしては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。基材122Aは、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
弾性層122Bは、多孔質の3次元構造を有する発泡体からなり、内部や表面に空洞や凹凸部(以下、セルという。)が存在し、弾性を有していることがよい。弾性層122Bは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、オレフィン、メラミンまたはポリプロピレン、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレン、シリコーン、ニトリル、等の発泡性の樹脂材料またはゴム材料を含んで構成される。
これらの発泡性の樹脂材料またはゴム材料のなかでも、帯電部材121との従動摺擦によりトナーや外添剤などの異物を効率的にクリーニングすると同時に、帯電部材121の表面にクリーニング部材122の擦れによるキズをつけ難くするために、また、長期にわたり千切れや破損が生じ難くするために、引き裂き、引っ張り強さなどに強いポリウレタンが特に好適に適用される。
ポリウレタンとしては、特に限定するものではなく、例えば、ポリオール(例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなど)と、イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなど)の反応物が挙げられ、これらの鎖延長剤(例えば1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど)による反応物であってもよい。なお、ポリウレタンは、発泡剤(水やアゾ化合物(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)を用いて発泡させるのが一般的である。
弾性層122Bのセル数としては、20/25mm以上80/25mm以下であることが好ましく、30/25mm以上80/25mm以下であることがさらに好ましく、30/25mm以上50/25mm以下であることが特に好ましい。
弾性層122Bの硬さとしては、100N以上500N以下が好ましく100N以上400N以下がさらに好ましく、150N以上400N以下が特に好ましい。
導電性軸受け123は、帯電部材121とクリーニング部材122とを一体で回転自在に保持すると共に、当該部材同士の軸間距離を保持する部材である。導電性軸受け123は、導電性を有する材料で製造されていればいかなる材料および形態でもよく、例えば、導電性のベアリングや導電性の滑り軸受けなどが適用される。
電源124は、導電性軸受け123へ電圧を印加することにより帯電部材121とクリーニング部材122とを同極性に帯電させる装置であり、公知の高圧電源装置が用いられる。
本実施形態における帯電装置12では、例えば、電源124から導電性軸受け123に電圧が印加されることで、帯電部材121とクリーニング部材122とが同極性に帯電する。
−露光装置−
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
−現像装置−
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
−クリーニング装置−
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
−転写装置−
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
−中間転写体−
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」および「%」は質量基準を意味する。
(帯電ローラAの作製)
−弾性層の形成−
表1に示した組成の混合物(表1の配合比は部)をオープンロールで混練りし、SUS303を材質とする直径8mmの導電性支持体表面に接着層を介してプレス成形機を用いて直径12.5mmのロールを形成した。その後、研磨により直径12mmの導電性弾性ロールを得た。
−表面層の形成−
表2に示した組成の混合物(表2の配合比は部)15部をメタノール85部で希釈し、ビーズミルにて分散し得られた分散液を、得られた導電性弾性ロールの弾性層の外周面に浸漬塗布した後、140℃で30分間加熱して架橋させ、乾燥し、厚さ10μmの表面層を形成し、帯電ロールAを得た。
(帯電ローラBの作製)
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を3.3部、シリコーンオイルBYK−307の配合比を8部とした以外は、帯電ローラAと同様に形成し帯電ローラBとした。
(帯電ローラCの作製)
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を20部、シリコーンオイルBYK−307の配合比を0.2部とした以外は、帯電ローラAと同様に形成し帯電ローラCとした。
(帯電ローラDの作製(比較用))
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を25部、シリコーンオイルBYK−307の配合比を0部とした以外は、帯電ローラAと同様に形成し帯電ローラDとした。
(帯電ローラEの作製(比較用))
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を1部、シリコーンオイルBYK−307の配合比を12部とした以外は、帯電ローラAと同様に形成し帯電ローラEとした。
(感光体Aの作製)
−下引層−
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m2/g)100部をメタノール500部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、KBM603(信越化工業学社製)0.75部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛粒子60部と、アクセプターとしてヒドロキシアントラキノン1.2部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15部と、をメチルエチルケトン85部に溶解した溶液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0部と、を添加し、下引層形成用塗布液を得た。下引層形成用塗布液の塗布温度24℃における粘度は235mPa・sであった。
この塗布液を、浸漬塗布法にて塗布速度220mm/minで直径40mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ24μmの下引層を得た。
−電荷発生層−
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶15部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10部およびn−ブチルアルコール300部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層形成用塗布液を得た。電荷発生層形成用塗布液の塗布温度24℃における粘度は1.8mPa・sであった。
この塗布液を前記下引層上に浸漬塗布法にて塗布速度65mm/minで塗布し、150℃で10分間乾燥して電荷発生層を得た。
−電荷輸送層−
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子8部(平均一次粒径:0.2μm)と、フッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー(重量平均分子量30000)0.01部と、をテトラヒドロフラン4部、トルエン1部とともに20℃の液温に保ち、48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液(A液)を得た。
次に、電荷輸送材料として、前記一般式(1)においてn0=1、m0=1、n1、n2、n3、n4、n5及びn6が全て0の化合物(例示化合物1−11)を1.2部、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミンを2.6部、結着樹脂として、一般式(A)および一般式(B)の繰り返し単位からなるポリカーボネート共重合体(例示化合物(A−3)、一般式(A)に示す構造と一般式(B)に示す構造とのモル比(m:n比)=25:75、重量平均分子量40000、(以下「ポリカーボネート1」と称す))6部、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1部を混合して、テトラヒドロフラン24部及びトルエン11部を混合溶解して、混合溶解液(B液)を得た。
前記B液に前記A液を加えて攪拌混合した後、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、500kgf/cm2まで昇圧しての分散処理を6回繰り返した液に、フッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL−100 信越化学工業社製)を5ppm添加し、十分に攪拌して電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を電荷発生層上に塗布して143℃で40分間乾燥して32μmの厚さの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。このようにして得た電子写真感光体を感光体Aとした。
(感光体Bの作製)
例示化合物1−11の量を1.9部、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミンの量を2.1部とした以外は、感光体Aと同様に作製したものを感光体Bとした。
(感光体Cの作製)
例示化合物1−11の量を3.8部、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミンの量を0部とした以外は、感光体Aと同様に作製したものを感光体Cとした。
(感光体Dの作製(比較用))
例示化合物1−11の量を0部、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミンを4部とした以外は、感光体Aと同様に作製したものを感光体Dとした。
(感光体Eの作製(比較用))
例示化合物1−11の量を4部、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミンの量を0部、結着樹脂としてポリカーボネート1の量を5.8部とした以外は、感光体Aと同様に作製したものを感光体Eとした。
(感光体Fの作製(比較用))
例示化合物1−11の量を0.5部、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミンの量を3.5部とした以外は、感光体Aと同様に作製したものを感光体Fとした。
(感光体Gの作製(比較用))
電荷輸送材料を、下記化学式で表されるトリフェニルアミン誘導体1.2部に変更した以外は、感光体Aと同様に作製したものを感光体Gとした。
(感光体H〜Kの作製)
電荷輸送層の膜厚を下記表3に示した値に変更した以外は、感光体Aと同様に作製したものを感光体H、I、J、Kとした。
<評価>
以上により作製した帯電ローラおよび感光体を、富士ゼロックス社製700 Digital Color Pressに搭載し、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
・カラーノイズ(ざらつき感)
カラーノイズの評価は、各20mm×20mmの大きさのパッチを、画像密度10%から100%まで、10%毎に採取し、最もざらつき感の大きいパッチを選択した。次に、当該パッチを、セイコーエプソン社製ES−10000スキャナを用いて、200dpiの解像度にてスキャンし、その出力値を反射濃度Dに換算し、縦方向に平均化することで、濃度ムラプロファイルを採取した。当該プロファイルの最大値と最小値の差分を、カラーノイズ値とした。
G1:ざらつき感がない。カラーノイズ値0以上0.01以下
G2:わずかにざらつき感がある。カラーノイズ値0.01超0.02以下
G3:ざらつき感がある。カラーノイズ値0.02超0.04以下
G4:大きなざらつき感がある。カラーノイズ値0.04超
・帯電スジ
帯電スジの評価は、画像密度5%のランダムチャートを10000枚採取したのち、画像密度30%の全面ハーフトーン画像を出力し、ハーフトーン上の白抜けスジ本数を確認することにより評価した。
G1:白抜けスジなし
G2:1本以上3本以下の白抜けスジ発生
G3:4本以上20本以下の白抜けスジ発生
G4:20本を超える白抜けスジ発生
・感光体摩耗
感光体摩耗量の評価は、画像密度5%のランダムチャートを10000枚採取したのち、感光体表面膜厚を測定することで評価した。渦電流式膜厚測定装置(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて感光体の膜厚を測定し、予め測定しておいた感光体の膜厚との差(μm)を求めた。
尚、上記表3における「多孔質樹脂粒子含有量」および「シリコーンオイル含有量」は樹脂100部に対する含有量を、「一般式(1)化合物含有比率」は電荷輸送層の全固形分に対する含有比率を表す。