JP6167024B2 - ダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシート - Google Patents

ダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシート Download PDF

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Description

本発明は、半導体ウェハ等の被切断物を素子小片に切断分離する際に、当該被切断物が貼付されるダイシングシートおよび当該ダイシングシートに用いられる基材フィルムに関するものである。
シリコン、ガリウムヒ素等の半導体ウェハ、ガラス基板、アルミナ基板等の基板類および各種パッケージ類(本明細書において、これらを「被切断物」と総称する。)は、大径の状態で製造され、これらは素子小片(本明細書において、「チップ」という。)に切断分離(ダイシング)される。
このダイシング工程に付される被切断物は、ダイシング工程およびそれ以降の工程における被切断物およびチップの取扱性の確保を目的として、ダイシングシートが、切断のための切削工具が近接する側と反対側の被切断物表面にあらかじめ貼り付けられている。このようなダイシングシートは、通常、基材フィルムとしてポリオレフィン系フィルムまたはポリ塩化ビニル系フィルム等が使用され、該基材フィルム上に粘着剤層が設けられている。
ダイシング工程の具体的な手法として一般的なフルカットダイシングでは、回転する丸刃によって被切断物の切断が行われる。このとき、ダイシングシートが貼り付けられた被切断物が確実に切断されるように、被切断物のみならず粘着剤層も切断され、さらに基材フィルムの一部も切断されることがある。
このとき、粘着剤層および基材フィルムを構成する材料からなる切削片がダイシングシートから発生し、得られるチップがその切削片によって汚染される場合がある。そのような切削片の形態の一つに、ダイシングライン上、またはダイシングにより分離されたチップの断面付近に付着する、糸状の切削片がある。
上記のような糸状の切削片がチップに多量に付着したままチップの封止を行うと、チップに付着する糸状の切削片が封止の熱で分解し、この熱分解物がパッケージを破壊したり、得られるデバイスにて動作不良の原因となったりする。この糸状の切削片は洗浄により除去することが困難であるため、糸状の切削片の発生によってダイシング工程の歩留まりは著しく低下する。それゆえ、ダイシングシートを用いてダイシングを行う場合には、糸状の切削片の発生を防止することが求められている。
また、複数のチップが硬化した樹脂で封止されているパッケージを被切断物としてダイシングする場合には、半導体ウェハをダイシングする場合と比べ、より厚い刃幅のダイシングブレードが使用され、ダイシングの切り込み深さもより深くなる。このため、ダイシング時に切断除去される基材フィルム量が半導体ウェハの場合よりも増えるため、糸状の切削片の発生量も増加する傾向にある。
このような切削片の発生を抑制することを目的として、特許文献1には、ダイシングシートの基材フィルムとして、電子線またはγ(ガンマ)線が1〜80Mrad照射されたポリオレフィン系フィルムを用いる発明が開示されている。当該発明では、電子線またはγ線の照射により基材フィルムを構成する樹脂が架橋し、切削片の発生が抑制されると考えられる。
特許文献1においては、電子線またはγ線が照射されるポリオレフィン系フィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アイオノマー共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリブテン等の樹脂が例示されている。
ここで、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。「エチレン−(メタ)アクリル酸共重体」は、エチレン−アクリル酸共重合体であってもよいし、エチレン−メタクリル酸共重合体であってもよく、またエチレン−アクリル酸−メタクリル酸共重合体であってもよい。他の類似用語も同様である。
基材フィルムに関し、表面に半田バンプのような大きな段差の凹凸形状を有する半導体ウェハをダイシングする際に、半導体ウェハの破損や回路形成面の汚染を防止し得る半導体ウェハダイシング用保護シートとして、特許文献2には、主面に半導体集積回路が形成された半導体ウェハのダイシングに際して、主面に貼着して用いる半導体ウェハダイシング用保護シートであって、基材シートの片面に、(a)密度が800〜890kg/mであり、(b)40℃における降伏応力が1×10Pa以下であり、且つ、(c)25℃における貯蔵弾性率E´が1×10Pa以上である樹脂層(A)を備えてなる半導体ウェハダイシング用保護シートが開示されている。
特開平5−211234号公報 特許第4667308号
しかしながら、電子線またはγ線の照射は、上記のような樹脂を一度フィルム状に成形した後に行われるため、製造工程が一つ増えることとなり、製造コストが一般の基材フィルムに比べ高くなる傾向にある。
さらに、近年、被切断物がダイシング加工によって個片化されて得られるチップは、当該チップを発光部材の基材として適用する場合などにおいて、平面視で少なくとも一辺の長さが10mm以上となることがある。本明細書において、平面視で長さが10mm以上となる辺を少なくとも一つ有するチップを「長辺チップ」ともいう。
長辺チップを得るためのダイシング加工では、通常のチップ(本明細書において、「通常のチップ」とは、平面視で長さが10mm以上となる辺を有さないチップを意味する。)に比べてダイシングピッチが大きくなる傾向がある。その結果、ダイシング対象の外接円の直径D(単位:mm)のダイシング加工を行う際のダイシングピッチL(単位:mm)に対する比率D/Lが小さくなる場合があった。このような場合の具体例として、D/Lが31以下となる場合が挙げられる。本明細書において、「ダイシングピッチ」とは、ダイシング加工によって形成されたダイシングラインのうち、互いに平行であって最も近位な2本のダイシングラインの中心線間の距離を意味する。ダイシング加工が回転するダイシングブレードによって行われる場合には、ダイシングブレードの回転方向に直交する方向へのダイシングブレードの送り幅がダイシングピッチとなる。
上記の長辺チップを得るためのダイシング加工が行われる場合(そのような場合の具体例として、D/Lが31以下となる場合が挙げられる。)には、従来技術に係るダイシングシート用基材フィルムでは、ダイシング工程後のエキスパンド工程においてカーフ交点に集中する応力が高まり、このカーフ交点を起点として基材フィルムが破断してしまう場合があった。
本発明は、かかる現状を鑑み、ダイシング工程において長辺チップを得るためのダイシング加工が行われる場合であっても、ダイシング加工中に切削片が発生しにくく、かつエキスパンド工程において破断が生じにくい基材フィルム(本明細書において、「エキスパンド性に優れる基材フィルム」ともいう。)、当該基材フィルムを備えたダイシングシート、および当該基材フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく本発明者らが検討した結果、基材フィルムを切削片抑制層(A)およびエキスパンド層(B)を備えるものとし、エキスパンド層(B)を構成する樹脂として、エチレン系樹脂(b1)に加えて、所定の長さのアルキル基からなる側鎖を有する構成単位を有するポリオレフィンであるオレフィン系樹脂(b2)を用いることにより、ダイシング工程において長辺チップを得るためのダイシング加工が行われる場合であってもエキスパンド工程において破断が生じにくい基材フィルムが得られやすくなるとの新たな知見を得た。
かかる知見により得られた本発明は次のとおりである。
第1に本発明は、ダイシングシートの基材フィルムであって、前記基材フィルムは、切削片抑制層(A)と、前記切削片抑制層(A)の一方の主面上に積層されたエキスパンド層(B)とを備え、前記切削片抑制層(A)は、芳香族系環および脂肪族系環の少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂である環含有樹脂(a1)と、当該環含有樹脂(a1)以外のオレフィン系熱可塑性樹脂である非環式オレフィン系樹脂(a2)とを含有し、前記エキスパンド層(B)は、エチレン系樹脂(b1)と、炭素数が2以上8以下のオレフィンからなる群から選ばれた2種以上を含む単量体(m2)を重合してなるオレフィン系樹脂(b2)とを含有し、前記エキスパンド層(B)の密度は885kg/m以上920kg/m以下であり、前記基材フィルムの厚さに対する前記エキスパンド層(B)の厚さの比率が20%以上80%以下であり、前記切削片抑制層(A)を形成するためのせん断速度が10〜10(単位:1/s)における樹脂組成物(α)の温度210℃の粘度の平均値の、前記エキスパンド層(B)を形成するためのせん断速度が10〜10(単位:1/s)における樹脂組成物(β)の温度210℃の粘度の平均値に対する比率は、1/4.5以上4.5以下であることを特徴とする基材フィルムを提供する(発明1)。
上記発明(発明1)において、前記エチレン系樹脂(b1)は、エチレンに由来する構造単位の含有比率が、当該樹脂を形成する単量体換算で、60質量%以上100質量%以下であってもよい(発明2)。
上記発明(発明1または2)において、前記オレフィン系樹脂(b2)を形成するために用いられた前記単量体(m2)は、エチレンおよびプロピレンの少なくとも一方を含んでもよい(発明3)。
上記発明(発明3)において、前記エキスパンド層(B)内の前記オレフィン系樹脂(b2)の含有量は、10質量%以上55質量%以下であってもよい(発明4)。
上記発明(発明1から4)において、前記エキスパンド層(B)の23℃における引張弾性率は220MPa以下であってもよい(発明5)。
上記発明(発明1から5)において、前記エキスパンド層(B)に含有されるオレフィン系樹脂(b2)の密度は860kg/m以上910kg/m以下であってもよい(発明6)。
上記発明(発明1から6)において、前記エキスパンド層(B)に含有されるオレフィン系樹脂(b2)は、示差走査熱量計により測定された融解ピーク温度が75℃以上、および示差走査熱量計により測定された融解熱が33J/g以上100J/g以下の少なくとも一方を満たしてもよい(発明7)。
上記発明(発明1から7)において、前記エキスパンド層(B)に含有されるオレフィン系樹脂(b2)は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が70,000以上130,000以下、およびポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)のポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対する比率(Mw/Mn)が2以上4.5以下の少なくとも一方を満たしてもよい(発明8)。
上記発明(発明1から8)において、前記基材フィルムの厚さが50μm以上200μm以下であってもよい(発明9)。
第2に本発明は、上記発明(発明1から9)のいずれかに係る基材フィルムと、当該基材フィルムの2つの主面のうち、前記エキスパンド層(B)よりも前記切削片抑制層(A)に近位な方の主面上に配置された粘着剤層とを備えたことを特徴とするダイシングシートを提供する(発明10)。
第3に本発明は、上記発明(発明1から9)のいずれかに係る基材フィルムの製造方法であって、前記切削片抑制層(A)を形成するための樹脂組成物(α)と前記エキスパンド層(B)を形成するための樹脂組成物(β)とを共押出成形して、前記切削片抑制層(A)と前記エキスパンド層(B)との積層体を得る共押出成形工程を備えることを特徴とする基材フィルムの製造方法を提供する(発明11)。
上記発明(発明11)において、前記樹脂組成物(α)および前記樹脂組成物(β)が共押出成形されるべく互いに接したときの、せん断速度が10〜10(単位:1/s)における前記樹脂組成物(α)の粘度の平均値の、せん断速度が10〜10(単位:1/s)における前記樹脂組成物(β)の粘度の平均値に対する比率は、1/4.5以上4.5以下であってもよい(発明12)。
本発明によれば、ダイシング工程において長辺チップを得るためのダイシング加工が行われる場合であっても、ダイシング加工中に切削片が発生しにくく、かつエキスパンド工程において破断が生じにくい基材フィルムが提供される。また、本発明により、上記の基材フィルムを備えたダイシングシートも提供される。さらに、本発明の製造方法によれば、上記の基材フィルムを効率的に製造することが可能である。
本発明の一実施形態に係るダイシングシートの断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係るダイシングシートの構成要素やその製造方法等について説明する。
1.基材フィルム
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1は、基本構成として、基材フィルム2上に配置された粘着剤層3を備える。この基材フィルム2は、切削片抑制層(A)と、切削片抑制層(A)の一方の主面上に積層されたエキスパンド層(B)とを備えるものである。
基材フィルム2は、切削片抑制層(A)とエキスパンド層(B)であったり、切削片抑制層(A)とエキスパンド層(B)の間に別の層が積層されていたり、エキスパンド層(B)に積層された切削片抑制層(A)の反対側の面に別の層が積層されていてもよい。基材フィルム2は、切削片抑制層(A)とエキスパンド層(B)が直接、積層された構成を備えることが好ましい。いずれの場合においても、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1では、基材フィルム2の2つの主面のうち、エキスパンド層(B)よりも切削片抑制層(A)に近位な方の主面上に、粘着剤層3は配置される。
(1)切削片抑制層(A)
切削片抑制層(A)は芳香族系環および脂肪族系環の少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂である環含有樹脂(a1)と、この環含有樹脂(a1)以外のオレフィン系熱可塑性樹脂である非環式オレフィン系樹脂(a2)とを含有する。
環含有樹脂(a1)と非環式オレフィン系樹脂(a2)とは、それぞれの樹脂を構成する高分子が環状骨格を備える化学構造(環状構造)を実質的に有するか否かの点で相違することに基づいて、密度、引張弾性率、軟化点、流動化温度、メルトマスフローレート(MFR)などの物理特性が相違する。
環含有樹脂(a1)を含有させたことの効果(切削片の発生が抑制されること、以下、「切削片抑制効果」ともいう。)を安定的に得る観点から、切削片抑制層(A)中の環含有樹脂(a1)の含有量は3.0質量%超えとされることが好ましく、3.5質量%以上とすることがさらに好ましく、5.0質量%以上とすることが特に好ましい。一方、切削片抑制層(A)の加工性の低下などを抑制する観点から、切削片抑制層(A)中の環含有樹脂(a1)の含有量を60.0質量%以下とすることが好ましく、55質量%以下とすることがより好ましく、45質量%以下とすることがさらに好ましい。したがって、切削片抑制層(A)における環含有樹脂(a1)の含有量は5.0質量%以上45質量%以下とすることが特に好ましい。また、切削片抑制効果をより安定的に得る観点から、環含有樹脂(a1)の含有量の非環式オレフィン系樹脂(a2)の含有量に対する質量比率は、0.8から1.25の範囲以外とすることが好ましい。
続いて、環含有樹脂(a1)および非環式オレフィン系樹脂(a2)について詳しく説明する。
(1−1)環含有樹脂(a1)
環含有樹脂(a1)は芳香族系環および脂肪族系環の少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂である。
芳香族系環とは、少なくとも一つの環状骨格を備える化学構造(本明細書において、かかる化学構造を「環状構造」という。)であって、その環状骨格の少なくとも一つがヒュッケル則を満たして環状に非局在化する電子を有するものをいう。以下、この環状に非局在化する電子を有する環状骨格を芳香環という。芳香環は、ベンゼン環のような単環やナフタレン環のような縮合環に大別される。芳香環を形成する骨格原子は、炭素のみからなっていてもよいし、ピリジン、フラン、チオフェンなどのように骨格原子の一つ以上が炭素以外の元素である複素環であってもよい。さらに、シクロペンタジエニドアニオンなどの非ベンゼノイド芳香環も本実施形態に係る芳香族系環に含まれるものとする。本実施形態に係る芳香族系環の骨格を構成する原子数に制限はなく、この骨格を形成する原子一つ以上に対して、メチル基、水酸基などの官能基が結合していてもよい。この場合において、テトラヒドロナフタレンのように芳香環に結合する官能基が環状構造をなしていてもよい。
脂肪族系環とは、環状骨格のいずれもが芳香族系環が有する環状に非局在化する電子を有さない環状構造をいう。換言すれば、脂肪族系環とは芳香環以外の環状骨格からなる環状構造である。脂肪族系環を形成する環状骨格は、シクロヘキサンのような単環、ノルボルナン、アダマンタンのような架橋環、デカリンのような縮合環、スピロ[4,5]デカンのようなスピロ環が例示される。ノルボルネンなどのように脂肪族系環の環状骨格をなす結合の一部が不飽和結合であってもよいし、テトラヒドロフランのように脂肪族系環の環状骨格を形成する原子の一部が炭素以外の元素であってもよい。本実施形態に係る脂肪族系環を構成する骨格原子数に制限はない。脂肪族系環の環状骨格を形成する原子に結合する水素の一つ以上に対して、メチル基、水酸基などの官能基が置換されていてもよい。また、シクロヘキサノン等の環状ケトンやγ−ブチロラクトン等のラクトンのように骨格原子がカルボニル基を構成していてもよい。
環含有樹脂(a1)を構成する熱可塑性樹脂(以下、高分子ということがある。)における芳香族系環および脂肪族系環の位置は任意である。環含有樹脂(a1)を構成する高分子における主鎖の一部をなしていてもよいし、環状構造を有する官能基(例えばフェニル基、アダマンチル基など)としてこの高分子の主鎖または側鎖に結合していてもよい。芳香族系環が主鎖の一部をなす高分子として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアリールケトンなどが例示される。脂肪族系環が主鎖の一部をなす高分子として、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ノルボルネンをモノマーとするノルボルネン樹脂、ノルボルネンおよびエチレンをモノマーとするコポリマー、テトラシクロドデセンおよびエチレンをモノマーとするコポリマー、ジシクロペンタジエンおよびエチレンをモノマーとするコポリマーなどが例示される。環状構造を有する官能基として、上記のフェニル基、アダマンチル基以外に、フルオレン基、ビフェニル基のような環集合からなる基も例示される。
芳香族系環と脂肪族系環とが一つの高分子内に含まれていてもよく、その場合の形態は、双方が主鎖の一部をなしていてもよいし、一方または双方が主鎖または側鎖に官能基として結合していてもよい。後者の例として、アセナフチレンコポリマーのように主鎖の一部をなす部分は脂肪族環であるが、官能基としてナフタレン環構造を有するものが挙げられる。
環含有樹脂(a1)の好ましい構造は、架橋環骨格の環を含む脂肪族系環が樹脂を構成する高分子の主鎖の少なくとも一部を構成する構造であって、そのような構造を備える樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環メタセシス重合体水素化ポリマー(具体的には日本ゼオン社製ZEONEX(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ノルボルネンとエチレンとのコポリマー(具体的にはポリプラスチックス社製TOPAS(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ジシクロペンタジエンとテトラシクロペンタドデセンとの開環重合に基づくコポリマー(具体的には日本ゼオン社製ZEONOR(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、エチレンとテトラシクロドデセンとのコポリマー(具体的には三井化学社製アペル(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ジシクロペンタジエンおよびメタクリル酸エステルを原料とする極性基を含む環状オレフィン樹脂(具体的にはJSR社製アートン(登録商標)シリーズとして入手可能である。)などが好ましい。
また、環含有樹脂(a1)は、芳香族系環が樹脂を構成する高分子の主鎖の少なくとも一部を構成する構造であることも好ましい。そのような構造を備える樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(具体的には、旭化成ケミカルズ社製アサフレックスシリーズ、電気化学工業社製クリアレンシリーズ、シェブロンフィリップス社製Kレジンシリーズ、BASF社製スタイロラックスシリーズ、アトフィナ社製フィナクリアシリーズ)として入手可能である。
環含有樹脂(a1)を構成する高分子は、1種類であってもよいし、複数種類の高分子をブレンドしてなるものであってもよい。本明細書において、高分子の種類が異なるとは、分岐の状態(すなわち、高分子のアーキテクチャー)、分子量、高分子を構成する単量体の配合バランスおよび高分子を構成する単量体の組成ならびにこれらの組み合わせが物理特性などに大きな影響を与える程度に異なることをいう。
環含有樹脂(a1)は架橋構造を有していてもよい。架橋構造をもたらす架橋剤の種類は任意であり、ジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物やエポキシ基を有する化合物が典型的である。架橋剤は、環含有樹脂(a1)を構成する高分子の1種類同士の間で架橋してもよいし、異なる種類の高分子間で架橋してもよい。架橋剤の結合部位も任意である。環含有樹脂(a1)を構成する高分子における主鎖を構成する原子と架橋していてもよいし、側鎖や官能基など主鎖以外を構成する原子と架橋していてもよい。架橋の程度も任意であるが、架橋の程度が過度に進行すると、環含有樹脂(a1)を含む切削片抑制層(A)の加工性(特に成形性)が過度に低下したり、切削片抑制層(A)の表面性状が過度に劣化したり、切削片抑制層(A)の耐脆性が低下することが懸念されるため、このような問題が発生しない範囲に留めるべきである。
環含有樹脂(a1)は、結晶性を有するものであってもよいし、非結晶性であってもよい。環含有樹脂(a1)は、非環式オレフィン系樹脂(a2)と混ぜ合わせフィルム状に成形する観点から、非結晶性であることが好ましい。
(1−2)非環式オレフィン系樹脂
非環式オレフィン系樹脂(a2)は、上記の環含有樹脂(a1)以外の、つまり、芳香族系環および脂肪族系環のいずれも実質的に有さないオレフィン系熱可塑性樹脂からなる。本実施形態において、オレフィン系熱可塑性樹脂とは、前述のとおり、オレフィンを単量体とするホモポリマーおよびコポリマー、ならびにオレフィンとオレフィン以外の分子とを単量体とするコポリマーであって重合後の樹脂におけるオレフィン単位に基づく部分の質量比率が1.0質量%以上である熱可塑性樹脂の総称を意味する。
本実施形態に係る非環式オレフィン系樹脂(a2)を構成する高分子は直鎖状であってもよいし、側鎖を有していてもよい。また、非環式の官能基を有していてもよく、その種類および置換密度は任意である。アルキル基のように反応性の低い官能基であってもよいし、カルボン酸基のように反応性が高い官能基であってもよい。
非環式オレフィン系樹脂(a2)は、少なくとも1種の非環式ポリオレフィン(本明細書において、「非環式ポリオレフィン」とは、環状構造を有さないオレフィンを単量体とするホモポリマーおよびコポリマーの総称を意味する。)からなることが好ましい。非環式オレフィン系樹脂(a2)が非環式ポリオレフィンからなる場合には、非環式オレフィン系樹脂(a2)と環含有樹脂(a1)との物理特性の相違はより顕著となるため、切削片抑制効果が得られやすい。非環式ポリオレフィンにおける分岐の程度は特に限定されない。
非環式オレフィン系樹脂(a2)の具体例として、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレン―オレフィン共重合体(エチレンとエチレン以外のオレフィンとを単量体とするコポリマー)、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。
非環式オレフィン系樹脂(a2)を構成する高分子は、1種類であってもよいし、複数種類の高分子をブレンドしてなるものであってもよい。
非環式オレフィン系樹脂(a2)としては、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレン―オレフィン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン共系重合体であることが好ましく、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレン―オレフィン共重合体であることがより好ましい。
エチレン−オレフィン共重合体を構成するオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのプロピレン、炭素数が4以上18以下のαオレフィン単量体などが挙げられる。
上記の非環式オレフィン系樹脂(a2)が、エチレン−オレフィン共重合体である場合、重合後の樹脂におけるエチレン単位に基づく部分の質量比率が1.0質量%以上あればよい。エチレン単位に基づく部分の質量比率が上記の範囲であれば、切削片抑制効果が安定的に得られやすい。
非環式オレフィン系樹脂(a2)と環含有樹脂(a1)との間の物理特性の相違を大きくして、切削片抑制効果を安定的に得る観点から、上記の重合後の樹脂におけるエチレン単位に基づく部分の質量比率は、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
ここで、非環式オレフィン系樹脂(a2)は架橋構造を有していてもよい。架橋構造をもたらす架橋剤の種類は任意であり、ジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物やエポキシ基を有する化合物が典型的である。架橋剤は、非環式オレフィン系樹脂(a2)を構成する高分子の1種類同士の間で架橋してもよいし、異なる種類の高分子間で架橋してもよい。架橋剤の結合部位も任意である。架橋剤は、非環式オレフィン系樹脂(a2)を構成する高分子における主鎖を構成する原子と架橋していてもよいし、側鎖や官能基など主鎖以外を構成する原子と架橋していてもよい。架橋の程度も任意であるが、架橋の程度が過度に進行すると、非環式オレフィン系樹脂(a2)と環含有樹脂(a1)との物理特性の差が小さくなり、切削片の発生を抑制する機能が低下する傾向を示すことが懸念される。したがって、架橋の程度はこのような問題が発生しない範囲に留めるべきである。
本実施形態に係る非環式オレフィン系樹脂(a2)における熱可塑性の好ましい程度をメルトフローレート(190℃、2.16kgf)の範囲で示せば、0.5g/10分以上10g/10分以下であり、2.0g/10分以上7g/10分以下であればより好ましい。切削片抑制層(A)における良好な相分離構造を実現する観点から、非環式オレフィン系樹脂(a2)のメルトフローレートは環含有樹脂(a1)のメルトフローレートと同等以上であることが好ましい。
非環式オレフィン系樹脂(a2)は、非晶性であっても、結晶性を有してもよい。
(1−3)切削片抑制層(A)における他の成分
切削片抑制層(A)は上記の環含有樹脂(a1)および非環式オレフィン系樹脂(a2)に加えて、他の成分を含有してもよい。そのような他の成分として、イソプレンゴムやニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、またはその共重合体などの熱可塑性エラストマー樹脂が例示される。これらの他の成分の切削片抑制層(A)中の含有量は、切削片抑制層(A)の切削片抑制効果が得られる範囲に設定することが好ましい。
(2)エキスパンド層(B)
エキスパンド層(B)は、エチレン系樹脂(b1)と、炭素数が2以上8以下のオレフィンからなる群から選ばれた2種以上を含む単量体(m2)を重合してなるオレフィン系樹脂(b2)を含有する。
(2−1)エチレン系樹脂(b1)
本明細書において、「エチレン系樹脂(b1)」とは、エチレンに由来する構成単位を含む高分子を主成分とする熱可塑性樹脂を意味する。エチレン系樹脂(b1)が有する構成単位全体に対する、エチレンに由来する構成単位のモル比率は、50%以上であることが好ましい。エチレンに由来する構造単位の含有比率は、エチレン系樹脂(b1)を形成する単量体換算で、60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上99.5質量%以下であることがより好ましい。この場合には、エキスパンド層(B)が形状加工性に優れる、基材フィルム2の一方の主面がエキスパンド層(B)の面からなる場合において基材フィルム2が耐ブロッキング性に優れる(本明細書において、「基材フィルム2が耐ブロッキング性に優れる」と略記する。)、優れたエキスパンド性を有する基材フィルム2が得られるといった特性の少なくとも1つを得ることが実現されやすくなる。
エチレン系樹脂(b1)としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m以上、930kg/m未満)、超低密度ポリエチレン(VLDPE,密度:880kg/m以上、910kg/m未満)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体などのエチレン系樹脂などが挙げられる。エチレン系樹脂(b1)は、上記の樹脂の中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
(2−2)オレフィン系樹脂(b2)
オレフィン系樹脂(b2)を与える単量体(m2)に含まれる炭素数が2以上8以下のオレフィンの具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘキセン、2,4−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、2−エチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2−オクテン、2,3,3−トリメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘプテン、2−プロピル−1−ペンテンなどが挙げられる。これらの中でも、単量体(m2)は、エチレンおよびプロピレンの少なくとも一方を含むことが好ましい。単量体(m2)が炭素数4以上のオレフィンを含む場合には、重合反応を容易に進行させる観点から、かかるオレフィンは、1位の炭素がエチレン性不飽和結合の一部をなすαオレフィンであることが好ましい。さらに、重合反応をより容易に進行させる観点から、αオレフィンの中でも、エチレン性不飽和結合の一部をなす2位の炭素に水素が1つ結合していることが好ましい。
オレフィン系樹脂(b2)を与える単量体(m2)は、炭素数が2以上8以下のオレフィン以外の化合物(以下、「その他の化合物」ともいう。)を含んでもよい。その他の化合物として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルなどエチレン性不飽和結合を有する化合物が例示される。
エキスパンド層(B)内のオレフィン系樹脂(b2)の含有量は特に限定されない。エキスパンド性に優れる基材フィルム2をより安定的に得る観点および耐ブロッキング性に優れる基材フィルム2をより安定的に得る観点から、エキスパンド層(B)内のオレフィン系樹脂(b2)の含有量を10質量%以上55質量%以下とすることが好ましく、12質量%以上50質量%以下とすることがより好ましく、15質量%以上45質量%以下とすることが特に好ましい。
オレフィン系樹脂(b2)の密度は860kg/m以上910kg/m以下であることが好ましい。オレフィン系樹脂(b2)の密度が860kg/mよりも過度に低い場合には、耐ブロッキング性に優れる基材フィルム2が得られにくくなるおそれがある。オレフィン系樹脂(b2)の密度が910kg/mよりも過度に高い場合には、エキスパンド性に優れる基材フィルム2が得られにくくなるおそれがある。耐ブロッキング性およびエキスパンド性の双方に優れる基材フィルム2をより安定的に得る観点から、オレフィン系樹脂(b2)の密度は861kg/m以上908kg/m以下であることがより好ましく、862kg/m以上905kg/m以下であることが特に好ましい。
オレフィン系樹脂(b2)の融解ピーク温度は、エキスパンド性に優れる基材フィルム2をより安定的に得る観点から、75℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、85℃以上であることが特に好ましい。また、オレフィン系樹脂(b2)の融解熱量ΔHは、エキスパンド性に優れる基材フィルム2をより安定的に得る観点から、33J/g以上100J/g以下であることが好ましく、45J/g以上90J/g以下であることがより好ましく、55J/g以上80J/g以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において、融解ピーク温度および融解熱量ΔHは、JIS K7121:2012(ISO 3146:2000)に準拠して示差走査熱量計(DSC)により測定された融解曲線から求めることができる。具体的には、DSCを用い、試料を−40℃から250℃まで、速度20℃/分で昇温し、−40℃まで急速冷却を行い、再度、速度20℃/分で250℃まで昇温し、250℃で5分間保持した後、速度20℃/分で−40℃まで降温させることで、融解ピークを示す融解曲線を得て、得られた融解曲線から、融解ピーク温度および融解熱量ΔHを算出する。
オレフィン系樹脂(b2)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、エキスパンド性に優れる基材フィルム2をより安定的に得る観点から、70,000以上130,000以下であることが好ましく、75,000以上120,000以下であることがより好ましく、80,000以上110,000以下であることが特に好ましい。また、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)のポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対する比率(Mw/Mn)は、エキスパンド性に優れる基材フィルム2をより安定的に得る観点から、2以上4.5以下であることが好ましく、2.1以上4.0以下であることがより好ましく、2.2以上3.5以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)およびポリスチレン換算数平均分子量(Mn)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により測定される場合の値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC−8121GPC/HT」に、昭和電工製GPCカラム「Shodex GPC HT−806M」×2をこの順序で連結したものを用い、測定溶媒:o−ジクロロベンゼン、オーブン温度:135℃、試料濃度:0.2%(w/v)の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
(2−3)エキスパンド層(B)における他の成分
エキスパンド層(B)は上記のエチレン系樹脂(b1)およびオレフィン系樹脂(b2)に加えて、他の成分を含有してもよい。そのような他の成分として、イソプレンゴムやニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、またはその共重合体などの熱可塑性エラストマー樹脂が例示される。これらの他の成分のエキスパンド層(B)中の含有量は、エキスパンド層(B)に由来してエキスパンド性に優れる基材フィルム2が得られることができる範囲に設定することが好ましい。
(2−4)エキスパンド層(B)の特性
エキスパンド層(B)の23℃における貯蔵弾性率は220MPa以下であることが好ましい。当該貯蔵弾性率が過度に高い場合には、基材フィルム2のエキスパンド性が高まりにくくなるおそれがある。エキスパンド性に優れる基材フィルム2をより安定的に得る観点から、エキスパンド層(B)の23℃における貯蔵弾性率は210MPa以下であることがより好ましく、200MPa以下であることがより好ましい。
エキスパンド層(B)の密度は885kg/m以上920kg/m以下である。エキスパンド層(B)の密度が885kg/mよりも過度に低い場合には、耐ブロッキング性に優れる基材フィルム2が得られにくくなるおそれがある。エキスパンド層(B)の密度が920kg/mよりも過度に高い場合には、エキスパンド性に優れる基材フィルム2が得られにくくなるおそれがある。耐ブロッキング性およびエキスパンド性の双方に優れる基材フィルム2をより安定的に得る観点から、エキスパンド層(B)の密度は888kg/m以上918kg/m以下であることがより好ましく、890kg/m以上915kg/m以下であることがさらに好ましく、900kg/m以上910kg/m以下であることがさらにより好ましく、902kg/m以上910kg/m以下であることが最も好ましい。
(3)基材フィルム2のその他の構成
本実施形態に係る基材フィルム2の厚さは、通常40μm以上300μm以下であり、好ましくは50μm以上200μm以下である。基材フィルム2が複層である場合は、基材フィルム2の総厚のうち、切削片抑制層(A)の厚さは、通常20μm以上120μm以下であり、好ましくは30μm以上100μm以下である。切削片抑制層(A)が上記の厚さであれば、切削片抑制効果がより安定帝に得られやすくなる。エキスパンド層(B)の厚さは、通常20μm以上180μm以下であり、好ましくは30μm以上100μm以下である。エキスパンド層(B)が過度に薄い場合には、エキスパンド層(B)が上記の組成上の特徴を有していても、エキスパンド性に優れる基材フィルム2が得られにくくなることもある。
基材フィルム2の厚さに対するエキスパンド層(B)の厚さの比率は20%以上80%以下である。かかる比率が過度に低い場合には、結果的にエキスパンド層(B)が過度に薄くなって、上記のように、エキスパンド性に優れる基材フィルム2が得られにくくなることもある。一方、上記の比率が過度に高い場合には、結果的に切削片抑制層(A)が過度に薄くなって、切削片抑制効果が安定的に得られにくくなるおそれがある。
本実施形態に係る基材フィルム2の引張弾性率は、80MPa以上300MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が80MPa未満であると、ダイシングシート1にウェハを貼着した後、リングフレームに固定した際、基材フィルム2が柔らかいために弛みが発生し、搬送エラーの原因となることがある。一方、基材フィルム2の引張弾性率が300MPaを超えると、エキスパンド工程時に加わる荷重が大きくなるため、リングフレームからダイシングシート1自体が剥がれたりするなどの問題が発生するおそれがある。
後述するように、本実施形態に係る基材フィルム2を共押出成形により製造する場合など、切削片抑制層(A)を形成するための樹脂組成物(α)およびエキスパンド層(B)を形成するための樹脂組成物(β)を用いる場合には、せん断速度が10〜10(単位:1/s)における樹脂組成物(α)の温度210℃の粘度の平均値の、せん断速度が10〜10(単位:1/s)における樹脂組成物(β)の温度210℃の粘度の平均値に対する比率(本明細書において、「粘度比率1」ともいう。)が、1/4.5以上4.5以下であることが好ましい。かかる比率が過度に低い場合や逆に過度に高い場合には、これらの樹脂組成物から切削片抑制層(A)およびエキスパンド層(B)を備える積層体を形成することが困難となることもある。かかる積層体を形成することをより容易にする観点から、粘度比率1は、1/3.5以上3.5以下であることがより好ましく、1/2.5以上2.5以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において、樹脂組成物の粘度はCrossモデルを用いて導出した。この場合、下記数式1および数式2を用いて導出する。
Figure 0006167024

Figure 0006167024

上記式中、ηは回帰式より求められる任意の温度・せん断速度における粘度(単位:1/s)、γはせん断速度(単位:1/s)、τは臨界せん断応力(単位:Pa・s)、cは指数、ηは臨界粘度(単位:1/s)、aは粘度(単位:Pa・s)、Tは温度係数(単位:K)、Tは温度(単位:K)を示す。
(4)基材フィルム2の製造方法
基材フィルム2の製造方法は特に限定されない。Tダイ法、丸ダイ法等の溶融押出法;カレンダー法;乾式法、湿式法等の溶液法などが例示され、いずれの方法でもよい。切削片抑制層(A)に含まれる環含有樹脂(a1)および非環式オレフィン系樹脂(a2)ならびにエキスパンド層(B)に含まれるエチレン系樹脂(b1)およびオレフィン系樹脂(b2)がいずれも熱可塑性樹脂であることを考慮し、生産性高く基材フィルム2を製造する観点から、溶融押出法またはカレンダー法を採用することが好ましい。これらのうち、溶融押出法により製造する場合には、切削片抑制層(A)およびエキスパンド層(B)を構成する成分(例えば、樹脂組成物(α)および樹脂組成物(β))をそれぞれ混練し、得られた混練物から直接、または一旦ペレットを製造したのち、公知の押出機を用いて製膜すればよい。
基材フィルム2を構成する各樹脂層を積層する方法も特に限定されない。共押出し等によって各樹脂層を形成すると同時に積層してもよいし、個別に製造された樹脂層を接着剤等により貼付して積層してもよい。樹脂組成物(α)および樹脂組成物(β)を用いて共押出成形により切削片抑制層(A)とエキスパンド層(B)との積層体を製造する場合には、成形安定性を高める観点から、樹脂組成物(α)および樹脂組成物(β)が共押出成形されるべく互いに接したときの、せん断速度が10〜10(単位:1/s)における樹脂組成物(α)の粘度の平均値の、せん断速度が10〜10(単位:1/s)における樹脂組成物(β)の粘度の平均値に対する比率(本明細書において、「粘度比率2」ともいう。)を、1/4.5以上4.5以下とすることが好ましい。かかる積層体を形成することをより容易にする観点から、粘度比率1は、1/3.5以上3.5以下であることがより好ましく、1/2.5以上2.5以下であることが特に好ましい。
2.ダイシングシート1におけるその他の構成要素
ダイシングシート1における基材フィルム2以外の構成要素として、基材フィルム2の2つの主面のうち、エキスパンド層(B)よりも切削片抑制層(A)に近位な方の主面上に配置された粘着剤層3、およびこの粘着剤層3の基材フィルム2に対向する側と反対側の面、つまり被切断物に貼付されるための面を保護するための剥離シートが例示される。
(1)粘着剤層3
粘着剤層3を構成する粘着剤としては、特に限定されず、ダイシングシートとして通常用いられるものを使用することができ、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等の粘着剤が用いられ、また、エネルギー線硬化型(紫外線硬化型を含む)や加熱硬化型の粘着剤であってもよい。また、本実施形態におけるダイシングシート1がダイシング・ダイボンディングシートとして使用される場合には、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた粘接着剤、熱可塑性接着剤、Bステージ接着剤等が用いられる。
粘着剤層3の厚さは、通常は3μmから100μm、好ましくは5μmから80μm程度である。
(2)剥離シート
粘着剤層3を保護するための剥離シートは任意である。
剥離シートとして、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等を用いることができる。また、これらの架橋フィルムを用いてもよい。さらに、これらのフィルムの複数が積層された積層フィルムであってもよい。
上記剥離シートの剥離面(粘着剤層3と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
なお、剥離シートの厚さについては特に限定されず、通常、20μmから150μm程度である。
3.ダイシングシート1の製造方法
上記の基材フィルム2および粘着剤層3、ならびに必要に応じて用いられる剥離シート等の積層体からなるダイシングシート1の製造方法は特に限定されない。
ダイシングシート1の製造方法についていくつかの例を挙げれば、次のようになる。
(i)剥離シート上に粘着剤層3を形成し、その粘着剤層3上に基材フィルム2を圧着して積層する。このとき、粘着剤層3の形成方法は任意である。
粘着剤層3の形成方法の一例を挙げれば次のようになる。粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製する。ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって、基材フィルム2の2つの主面のうち、エキスパンド層(B)よりも切削片抑制層(A)に近位な方の主面に塗布する。基材フィルム2上の塗布剤からなる層を乾燥させることにより、粘着剤層3が形成される。
上記の方法以外の例として、別途シート状に形成した粘着剤層3を基材フィルム2に貼付してもよい。
(ii)基材フィルム2を形成し、その上に粘着剤層3を形成し、必要に応じさらに剥離シートを積層する。このときの粘着剤層3の形成方法は上記のとおり任意である。
上記(i)、(ii)の方法以外の例として、別途シート状に形成した粘着剤層3を基材フィルム2に貼付してもよい。
4.チップの製造方法
本実施形態に係るダイシングシート1を用いてチップ、特に長辺チップを製造する方法について説明する。
まず、本実施形態に係るダイシングシート1の粘着剤層3の面を、被切断物の一方の主面に貼付する。粘着剤層3の面が剥離シートにより保護されている場合には、その剥離シートをはがして粘着剤層3の面を表出させればよい。この被切断物へのダイシングシート1の貼付を、貼付装置を用いて行う場合には、通常、リングフレームに対するダイシングシート1の貼付も行われる。こうして、リングフレームの開口部内に、ダイシングシート1に貼着した被切断物が位置する積層構造体が得られる。
次に、上記の積層構造体をダイシングテーブル上に載置して、被切断物の粘着剤層3に対向する側と反対側の面から、ダイシング加工を行って、被切断物を個片化する(ダイシング工程)。
上記のダイシング工程を経ることにより、ダイシングシート1上には、被切断物が個片化されてなる複数のチップが互いに近接した状態で配置されている。この状態では、一つのチップをピックアップする際に、そのチップが、これに隣接するチップと接触するおそれがあり、このようなチップ接触が生じると、ピックアップが適切に行われなかったり、チップに欠けなどの品質上の問題が生じたりする可能性が高まる。そこで、ダイシング工程後に、ダイシングシート1に張力を付与するエキスパンド工程が行われる。ダイシングシート1に張力が付与されると、ダイシングシート1は主面内方向に伸長してチップ間距離が増大する。このとき、ダイシングシート1におけるチップが貼着している部分は、チップにより固定されているため伸長しにくく、チップが貼着していない部分(カーフ交点の近傍)が主として伸長する。
ここで、前述のように、ダイシングピッチが大きくなって、ダイシング対象の外接円の直径D(単位:mm)のダイシング加工を行う際のダイシングピッチL(単位:mm)に対する比率D/Lが小さくなると、カーフ交点数が少なくなる。このため、エキスパンド工程を実施すると、ダイシングシートのカーフ交点に引張応力が集中しやすくなる。その結果、従来技術に係るダイシングシートでは、カーフ交点において基材フィルムが破断しやすくなってしまう。この傾向は長辺チップを得ようとする場合(一具体例として、D/Lが31以下の場合が挙げられる。)に顕著であるが、本実施形態に係る基材フィルム2を備えるダイシングシート1を用いた場合には、D/Lが31以下であっても基材フィルム2の破断は生じにくい。したがって、本実施形態に係る基材フィルム2を備えるダイシングシート1を用いた場合には、ダイシング工程によって長辺チップを形成した場合であっても、エキスパンド工程で不具合が生じにくい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(基材フィルムの作製)
環含有樹脂(a1)としてのシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製,製品名:TOPAS(登録商標)8007)30質量部と、非環式オレフィン系樹脂(a2)としての低密度ポリエチレン(住友化学社製,製品名:スミカセン(登録商標)L705)70質量部とを、二軸混練機(東洋精機製作所社製,ラボプラストミル)にて210℃で溶融混練し、切削片抑制層(A)を形成するための樹脂組成物(α)を得た。
エチレン系樹脂(b1)としての低密度ポリエチレン(住友化学社製,製品名:スミカセン(登録商標)L705、密度:919kg/m)70質量部と、オレフィン系樹脂(b2)としてのαオレフィン共重合体(三井化学社製,製品名:タフマー(登録商標)DF640,密度:864kg/m)30質量部とを、二軸混練機(東洋精機製作所社製,ラボプラストミル)にて210℃で溶融混練し、エキスパンド層(B)を形成するための樹脂組成物(β)を得た。前述のCrossモデルを用いて、樹脂組成物(α)および樹脂組成物(β)のそれぞれについて、10〜10(単位:1/s)における樹脂組成物(α)の温度210℃の粘度の平均値を導出し、表1に示した。また、導出したそれぞれの粘度の平均値から求めた粘度比率2(いずれの樹脂についても共押出成形における樹脂温度は210℃に設定されていたため、粘度比率1と同一の値であった。)を表1に示した。他の実施例および比較例において用いた樹脂組成物(α)および樹脂組成物(β)の粘度の平均値およびこれらの平均値から算出した粘度比率2についても、表1に示した。
得られた樹脂組成物(α)および樹脂組成物(β)を用いて、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,ラボプラストミル)によって、樹脂温度210℃として共押出成形し、厚さ50μmの切削片抑制層(A)とその一方の主面に接するように積層された厚さ50μmのエキスパンド層(B)とからなる厚さ100μmの基材フィルムを得た。
(粘着剤の調製)
n−ブチルアクリレート95質量部およびアクリル酸5質量部を共重合してなる共重合体(Mw:500,000)100質量部,ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw:8000)120質量部,イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社,コロネート(登録商標)L)5質量部,光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製,イルガキュア184)4質量部とを混合し、エネルギー線硬化型粘着剤組成物を得た。
(ダイシングシート)
得られたエネルギー線硬化型粘着剤組成物を、シリコーン処理された剥離フィルム(リンテック株式会社製,SP−PET3811(S))上に乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して、粘着剤層と剥離フィルムとからなる積層体を形成した。次いで、この積層体を上記の基材フィルムに貼り合せ、積層体における粘着剤層を基材フィルム上に転写し、これをダイシングシートとした。
〔実施例2〕
実施例1において、エチレン系樹脂(b1)の種類をエチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポン社製,製品名:ニュクレルN0908C,密度:930kg/m)に変更する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例3〕
実施例1において、エチレン系樹脂(b1)の種類を直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE,宇部丸善ポリエチレン社製,製品名:ユメリット2040F,密度:918kg/m)に変更し、エチレン系樹脂(b1)の含有量を90質量部に、オレフィン系樹脂(b2)の含有量を10質量部に変更する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例4〕
実施例3において、エチレン系樹脂(b1)の含有量を70質量部に、オレフィン系樹脂(b2)の含有量を30質量部に変更する以外は、実施例3と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例5〕
実施例3において、エチレン系樹脂(b1)の含有量を50質量部に、オレフィン系樹脂(b2)の含有量を50質量部に変更する以外は、実施例3と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例6〕
実施例4において、切削片抑制層(A)の厚さを20μmに変更し、エキスパンド層(B)の厚さを80μmに変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例7〕
実施例4において、切削片抑制層(A)の厚さを80μmに変更し、エキスパンド層(B)の厚さを20μmに変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例8〕
実施例4において、オレフィン系樹脂(b2)の種類を他のαオレフィン共重合体(三井化学社製,製品名:タフマー(登録商標)A−4070S,密度:870kg/m)に変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例9〕
実施例4において、オレフィン系樹脂(b2)の種類を他のαオレフィン共重合体(三井化学社製,製品名:タフマー(登録商標)A−4085S,密度:885kg/m)に変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例10〕
実施例4において、オレフィン系樹脂(b2)の種類をプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製,製品名:プライムポリプロ(登録商標)F−744NP,密度:900kg/m)に変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例11〕
実施例4において、オレフィン系樹脂(b2)の種類を他のαオレフィン共重合体(三井化学社製,製品名:タフマー(登録商標)DF140,密度:905kg/m)に変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例12〕
実施例11において、エチレン系樹脂(b1)の種類を他のオレフィン系樹脂(日本ポリエチレン社製,製品名:ノバテックLD LJ802,密度:918kg/m)に変更する以外は、実施例11と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔比較例1〕
実施例4において、エチレン系樹脂(b1)の含有量を100質量部にして、オレフィン系樹脂(b2)を含有させないことに変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔比較例2〕
実施例4において、エチレン系樹脂(b1)の含有量を40質量部に、オレフィン系樹脂(b2)の含有量を60質量部に変更した。切削片抑制層(A)とエキスパンド層(B)との積層体は耐ブロッキング性に劣ったことから、この積層体の巻収体を適切に展開することができなかった。それゆえ、本例では、ダイシングシートの原材料としての基材フィルムを製造することができなかった。
〔比較例3〕
実施例4において、切削片抑制層(A)の厚さを10μmに変更し、エキスパンド層(B)の厚さを90μmに変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔比較例4〕
実施例4において、切削片抑制層(A)の厚さを90μmに変更し、エキスパンド層(B)の厚さを10μmに変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔比較例5〕
実施例4において、オレフィン系樹脂(b2)の種類を他のオレフィン系樹脂(C6−LLDPE,プライムポリマー社製,製品名:エボリュー(登録商標)SP3530,密度:931kg/m)に変更する以外は、実施例4と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔比較例6〕
実施例4において、エチレン系樹脂(b1)の種類を他のオレフィン系樹脂(日本ポリエチレン社製,製品名:ノバテックLD LJ902,密度:915kg/m)に変更した。かかるオレフィン系樹脂は低粘度であったことから、樹脂組成物(α)および樹脂組成物(β)についての粘度比率2は1/4.5未満となった。このため、樹脂組成物(α)および樹脂組成物(β)の共押出成形を行うことができなかった。
以上の実施例および比較例の条件を表1にまとめて示す。
Figure 0006167024
〔試験例1〕(切削片観察)
実施例および比較例で製造したダイシングシートの粘着剤層をミラーウエハに貼付した後、ダイシング装置(DISCO社製,DFD−651)にセットし、以下の条件でダイシングを行った。
・ワーク(被切断物):ミラーウエハ
・ワークサイズ:6インチ径,厚さ350μm
・ダイシングブレード:ディスコ社製 27HECC
・ブレード回転数:30,000rpm
・ダイシングスピード:10mm/秒
・切り込み深さ:基材フィルムを粘着剤層との界面から20μmの深さまで切り込み
・ダイシングサイズ:15mm×15mm〔試験例1−1〕
5mm×15mm〔試験例1−2〕
いずれのダイシング条件においても、ダイシングピッチの最大値L(単位:mm)に対する被切断物の外接円の直径D(単位:mm)の比率D/Lは10であった。
その後、基材フィルム側から紫外線を照射(160mJ/cm)して、切断されたチップを剥離した。縦および横のダイシングラインのうち、それぞれの中央付近における縦の1ラインおよび横の1ラインに発生した糸状の切削片の個数を、デジタル顕微鏡(キーエンス社製,VHX−100,倍率:100倍)を用いてカウントした。次の評価基準にて評価した。
〔試験例1−1〕
A:15mm×15mm角でダイシングした際の切削片の個数が0個以上15個以下
B:15mm×15mm角でダイシングした際の切削片の個数が16個以上20個以下
C:15mm×15mm角でダイシングした際の切削片の個数が21個以上
〔試験例1−2〕
X:5mm×15mm角でダイシングした際の切削片の個数が0個以上10個以下
Y:5mm×15mm角でダイシングした際の切削片の個数が11個以上15個以下
Z:5mm×15mm角でダイシングした際の切削片の個数が16個以上
試験例1−1についてはAおよびBについて良好と判定し、Cを不良と判定した。試験例1−2についてはXおよびYについて良好と判定し、Zを不良と判定した。結果を表2に示す。
〔試験例2〕(エキスパンド性評価)
実施例および比較例で製造したダイシングシートの粘着剤層に6インチウエハを貼付した後、このダイシングシートをフラットフレームに装着して、厚さ20μmのダイヤモンドブレードにより、ダイシングシート上のウエハに対してフルカットのダイシング加工を行って、15mm×15mm角のチップ〔試験例2−1〕または5mm×15mm角のチップ〔試験例2−2〕を得た。いずれのダイシング条件においても、ダイシングピッチの最大値L(単位:mm)に対する被切断物の外接円の直径D(単位:mm)の比率D/Lは10であった。
次に、エキスパンディング治具(NEC社マシナリー製ダイボンダー,製品名:CSP−100VX)を用いて、その一方の主面上にチップが貼着した状態にあるダイシングシートを速度120mm/分で10mm(条件1)または速度120mm/分で40mm(条件2)引き落とすことによりエキスパンド工程を実施した。エキスパンド工程後のダイシングシートについて、破断の発生の有無を観察した。次の評価基準にて評価した。
〔試験例2−1〕
A:15mm×15mm角でダイシングした際の2条件のいずれについても破断が確認されない
B:15mm×15mm角でダイシングした際の一方の条件において破断が確認された
C:15mm×15mm角でダイシングした際の2条件のいずれについても破断が確認された
〔試験例2−2〕
X:5mm×15mm角でダイシングした際の2条件のいずれについても破断が確認されない
Y:5mm×15mm角でダイシングした際の一方の条件において破断が確認された
Z:5mm×15mm角でダイシングした際の2条件のいずれについても破断が確認された
試験例2−1についてはAおよびBについて良好と判定し、Cを不良と判定した。試験例2−2についてはXおよびYについて良好と判定し、Zを不良と判定した。結果を表2に示す。
Figure 0006167024
表2から明らかなように、実施例で製造したダイシングシートによれば、長辺チップが貼付したダイシングシートであっても、エキスパンド工程後に破断が生じにくかった。
本発明に係るダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシートは、半導体ウェハや各種パッケージ類等のダイシングに好適に用いられる。
1…ダイシングシート
2…基材フィルム
(A)切削片抑制層
(B)エキスパンド層
3…粘着剤層

Claims (12)

  1. ダイシングシートの基材フィルムであって、
    前記基材フィルムは、切削片抑制層(A)と、前記切削片抑制層(A)の一方の主面上に積層されたエキスパンド層(B)とを備え、
    前記切削片抑制層(A)は、芳香族系環および脂肪族系環の少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂である環含有樹脂(a1)と、当該環含有樹脂(a1)以外のオレフィン系熱可塑性樹脂である非環式オレフィン系樹脂(a2)とを含有し、
    前記エキスパンド層(B)は、エチレン系樹脂(b1)と、炭素数が2以上8以下のオレフィンからなる群から選ばれた2種以上を含む単量体(m2)を重合してなるオレフィン系樹脂(b2)とを含有し、
    前記エキスパンド層(B)の密度は885kg/m以上920kg/m以下であり、
    前記基材フィルムの厚さに対する前記エキスパンド層(B)の厚さの比率が20%以上80%以下であり、
    前記切削片抑制層(A)を形成するためのせん断速度が10〜10(単位:1/s)における樹脂組成物(α)の温度210℃の粘度の平均値の、前記エキスパンド層(B)を形成するためのせん断速度が10〜10(単位:1/s)における樹脂組成物(β)の温度210℃の粘度の平均値に対する比率は、1/4.5以上4.5以下であることを特徴とする基材フィルム。
  2. 前記エチレン系樹脂(b1)は、エチレンに由来する構造単位の含有比率が、当該樹脂を形成する単量体換算で、60質量%以上100質量%以下である、請求項1に記載の基材フィルム。
  3. 前記オレフィン系樹脂(b2)を形成するために用いられた前記単量体(m2)は、エチレンおよびプロピレンの少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載の基材フィルム。
  4. 前記エキスパンド層(B)内の前記オレフィン系樹脂(b2)の含有量は、10質量%以上55質量%以下である、請求項3に記載の基材フィルム。
  5. 前記エキスパンド層(B)の23℃における引張弾性率は220MPa以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の基材フィルム。
  6. 前記エキスパンド層(B)に含有されるオレフィン系樹脂(b2)の密度は860kg/m以上910kg/m以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の基材フィルム。
  7. 前記エキスパンド層(B)に含有されるオレフィン系樹脂(b2)は、示差走査熱量計により測定された融解ピーク温度が75℃以上、および示差走査熱量計により測定された融解熱が33J/g以上100J/g以下の少なくとも一方を満たす、請求項1から6のいずれか一項に記載の基材フィルム。
  8. 前記エキスパンド層(B)に含有されるオレフィン系樹脂(b2)は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が70,000以上130,000以下、およびポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)のポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対する比率(Mw/Mn)が2以上4.5以下の少なくとも一方を満たす、請求項1から7のいずれか一項に記載の基材フィルム。
  9. 前記基材フィルムの厚さが50μm以上200μm以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の基材フィルム。
  10. 請求項1から9のいずれか一項に記載される基材フィルムと、当該基材フィルムの2つの主面のうち、前記エキスパンド層(B)よりも前記切削片抑制層(A)に近位な方の主面上に配置された粘着剤層とを備えたことを特徴とするダイシングシート。
  11. 請求項1から9のいずれか一項に記載される基材フィルムの製造方法であって、
    前記切削片抑制層(A)を形成するための樹脂組成物(α)と前記エキスパンド層(B)を形成するための樹脂組成物(β)とを共押出成形して、前記切削片抑制層(A)と前記エキスパンド層(B)との積層体を得る共押出成形工程を備えることを特徴とする基材フィルムの製造方法。
  12. 前記共押出成形工程において、前記樹脂組成物(α)および前記樹脂組成物(β)が共押出成形されるべく互いに接したときの、せん断速度が10〜10(単位:1/s)における前記樹脂組成物(α)の粘度の平均値の、せん断速度が10〜10(単位:1/s)における前記樹脂組成物(β)の粘度の平均値に対する比率は、1/4.5以上4.5以下である、請求項11に記載の基材フィルムの製造方法。
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