JP6163327B2 - クラッチ機構、クラッチ付減速機、および減速機付モータ - Google Patents
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Description
このようなクラッチとしては、特許文献1に示すように、例えば、電動モータの回転が入力される駆動回転体と、駆動回転体と係合し、電動モータの回転を出力する従動回転体と、これら駆動回転体と従動回転体とを収容するケーシングと、ケーシングと従動回転体との間に配置されたロックプレートとを備えた構成のクラッチ機構を本発明者らが既に提案している。
このような構成においては、従動回転体101とロックプレート102とにより駆動回転体103を挟持するよりも先に、従動回転体101の第一凸部104と、ロックプレート102の第二凸部105とが突き合わさると、従動回転体101とロックプレート102との間で駆動回転体103に軸方向のガタが生じてしまう。このため、従動回転体101とロックプレート102とにより駆動回転体103を挟持した状態で、第一凸部104と第二凸部105との間に、若干の軸方向のクリアランスC1を設定する必要がある。
しかし、図15(b)に示すように、上記のクリアランスC1が大きくなればなるほど、第一凸部104と第二凸部105との間の周方向のクリアランスC2が大きくなる。すると、従動回転体1側が周方向に回転してウインドガラスが下がり得るガタが大きくなってしまうという問題がある。
そこでなされた本発明の目的は、低コストで、構成部品間のガタを減らしてロック性を高めることのできるクラッチ機構、クラッチ付減速機、および減速機付モータを提供するものである。
このように、移動規制部材により駆動回転体の軸方向への移動を規制することで、第一凸部の第一先端面と第二凸部の第二先端面とを、駆動回転体の軸方向において互いに突き合わせた構成を実現できる。これにより、駆動体の周方向における第一傾斜面と第二傾斜面との間隔を小さくすることができ、従動回転体の回転方向のガタを小さく抑えることができる。このとき、部品精度を特に高める必要がなく、コスト上昇も抑えることができる。
また、第一先端面と第二先端面とが軸方向において部分的に突き当たるため、第一先端面と第二先端面とのフリクションロスを小さく抑えることができる。フリクションロスを小さく抑えることにより、第一凸部の第一先端面と第二凸部の第二先端面とを突き合わせた状態としても、クラッチ機構を確実に正常動作させることができる。
また、フリクションロスを抑えるという目的からして、突き当たり部は、なるべく小さく、しかも内周側に設けるのが好ましい。
緩み止め機構としては、通常のダブルナットや緩み止め剤ではなく、より強固にナットの緩みを阻止できるよう、例えばキャッスルナットと割りピン等を用いる。
次に、この発明の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
図1は、減速機付モータ1の外観を示す平面図である。
同図に示すように、減速機付モータ1は、例えば、車両のパワーウインド装置等に用いられるものであって、電動モータ2と電動モータ2に連結されたウォーム減速機(クラッチ付減速機)3とを備え、ウォーム減速機3にクラッチ機構4が内装されている。
電動モータ2としては、例えば、ブラシ付直流モータなどが用いられ、複数(例えば、6つ)の永久磁石が配設されている有底筒状のヨーク5と、ヨーク5の内側に回転自在に設けられたアーマチュア6とを備えている。アーマチュア6は、回転軸7と、回転軸7に外嵌固定されているアーマチュアコア(不図示)と、回転軸7の一端側に設けられるコンミテータ(不図示)とを有している。アーマチュアコアには、巻線を巻装するための複数(例えば、9つ)のスロット(不図示)が形成されている。回転軸7の一端には、ウォーム減速機3が連結されている。
図2は、ウォーム減速機3の分解斜視図である。
図1、図2に示すように、ウォーム減速機3は、アーマチュア6の一端側を受け入れるホルダ部8と、ウォームギア9、およびクラッチ機構4を収納するギア収納部10とが一体成形されたケーシング11を有している。
ホルダ部8は電動モータ2側に開口部8aを有する箱状に形成されたものであって、アーマチュア6に設けられている不図示のコンミテータや、このコンミテータに摺接するブラシを収納するようになっている。
ここで、電動モータ2の回転軸7は、ホルダ部8を貫通してウォーム軸収納部17内に突出している。そして、回転軸7は、ウォーム軸収納部17に収納されているウォーム軸15と相対回転不能に連結されており、回転軸7とウォーム軸15とが一体となって回転するようになっている。
図2、図3(a)に示すように、ウォームホイール16は、略円板状に形成されたものであって、外周面にウォーム軸15に噛合う歯部34が形成されている。
ウォームホイール16の径方向中央には、センターシャフト28を挿通するための挿通孔35が形成されている。この挿通孔35の周囲には、軸方向平面視で略扇状に形成された3つの係合孔36が周方向に等間隔で形成されている。
また、ウォームホイール16のクラッチ収納部18のエンド部18a側には、中央の大部分に軸方向平面視で略円形状の収納凹部39が形成されている。この収納凹部39には、後述するロックプレート38が収納される。
図4、図5に示すように、このウォームホイール16は、ウォームホイール16に対してセンターシャフト28の先端側でセンターシャフト28に装着されたCリング(移動規制部材)71により位置決めされ、ウォームホイール16の軸方向に沿ってセンターシャフト28の先端側への移動が拘束されている。Cリング71は、センターシャフト28の外周面に周方向に連続して形成されたCリング溝28bに嵌め込まれ、センターシャフト28および挿通孔35よりも外周側に張り出している。
図4に示すように、クラッチ機構4は、フェーシング材(摩擦部材)37、ロックプレート38、スラストプレート40a、ウェイブワッシャ40b、スラストプレート40a、ウォームホイール16、およびドライブプレート(従動回転体)41を備えている。そして、この順でクラッチ収納部18に収納され、ロックプレート38、ウォームホイール16、およびドライブプレート41がセンターシャフト28に回転自在に支持されている。
このフェーシング材37は、ロックプレート38に摩擦力を付勢するための摩擦板としての役割を有する。フェーシング材37は鉄系若しくは銅系の金属、または硬質ゴムなどで形成することが望ましい。樹脂などを用いると摩耗粉が多量に発生し、クラッチ機構4が正常に動作しなくなるおそれがある。
また、クラッチ収納部18のエンド部18aには、回り止め凹部42を含む径方向中央の大部分に、ロックプレート38を受け入れる凹部49が形成されている。すなわち、回り止め凹部42は、凹部49上に形成されていることになる。凹部49には、ロックプレート38が載置されている。
図2、図6に示すように、ロックプレート38は、略円板状に形成されたプレート本体43を有している。プレート本体43の外径は、ウォームホイール16の収納凹部39の直径よりもやや小さく設定されている。これにより、ロックプレート38は、ウォームホイール16の収納凹部39に埋没した状態になっている。
また、プレート本体43のウォームホイール16側の面には、ウォームホイール16の係合孔36に対応する部位に、軸方向平面視略扇状の凸部46が3箇所設けられている。
同図に示すように、この凸部46は係合孔36の第二孔36bに挿入された状態になっている。すなわち、ウォームホイール16が回転すると係合孔36の第二孔36bと凸部46とが係合し、ロックプレート38とウォームホイール16とが共回りするようになっている。
凹部47の傾斜面47aは、傾斜角度θが大きいほど、ロックプレート38の凹部47の傾斜面47aとドライブプレート41の楔部(第一凸部)52aの傾斜面52a’との間の周方向のクリアランスが小さくなる。また、傾斜角度θが小さいほど、ロックプレート38をフェーシング材37に押圧して摩擦力を発揮させるのに必要な軸方向の力が大きくなる。したがって、凹部47の傾斜面47aの傾斜角度θは、例えば20°〜30°とするのが好ましい。
図2、図3(b)、図4、図7に示すように、ウォームホイール16のロックプレート38とは反対側の面には、ドライブプレート41が設けられている。ドライブプレート41は、略円板状に形成されたプレート本体50を有している。プレート本体50の径方向略中央には、センターシャフト28を挿通するための挿通孔51が形成されている。
ウォームホイール16の第一孔36aにドライブプレート41の凸部52が挿入されているので、ロックプレート38は、ウォームホイール16とクラッチ収納部18との間に配置された状態になると共に、ドライブプレート41とクラッチ収納部18との間に配置された状態になる。
すなわち、クラッチ機構4のうち、ウォームホイール16は、電動モータ2の回転軸7の回転がウォーム軸15を介して入力される駆動回転体の役割を有している。一方、ドライブプレート41は、駆動回転体であるウォームホイール16の回転をパワーウインド装置に出力する従動回転体の役割を有している。
図8(a)、図8(b)に示すように、ナット33には、センターシャフト28の雄ネジ部32に締結した状態でナット33を拘束するための緩み止め機構として、例えば周方向に間隔を隔てて複数本のスリット33aが形成されたキャッスルナットが用いられる。そして、このキャッスルナットのスリット33aと、センターシャフト28に形成された貫通孔28aに割りピン70を貫通させることにより、ナット33が緩んでしまうことを確実に防止できる。
図2、図4に示すように、ボトムカバー56の中央からは、ドライブプレート41のみ突出した状態になっている。
ボトムカバー56の内周縁には、クラッチ収納部18の内部の密閉性を高めるためにゴム製のシール部材57が設けられている。ドライブプレート41のプレート本体50は、シール部材57と摺動する。
なお、ドライブプレート41の楔部52aと、ロックプレート38の突起72とが突き当たっているが、突起72は凸部46に比較すれば十分に小さく、部分的に突き当たっているに過ぎない。しかもこの突起72は、ロックプレート38の内周側に形成されている。このため、ロックプレート38の凸部46とドライブプレート41の凸部52との間で生じる摩擦は小さくて済む。
一方、ウォームホイール16に形成されている第二孔36bは、第一孔36aよりも段差により周方向に幅広に形成されている。このため、ウォームホイール16が回転した際、第一孔36a、および第二孔36bの壁面がそれぞれドライブプレート41の凸部52とロックプレートの凸部46とに同時に当接するようになっている。
次に、図9(a)、図9(b)、図9(c)に基づいて、クラッチ機構4の作用について説明する。なお、以下の説明において、減速機付モータ1を車両に搭載されているパワーウインド装置に用いた場合について説明する。
まず、図9(a)に示すように、減速機付モータ1の電動モータ2を停止させた状態にあっては、ウォームホイール16の係合孔36内でロックプレート38の凸部46、およびドライブプレート41の凸部52がフリーな状態になっている。また、ロックプレート38は、ウェイブワッシャ40bによってややフェーシング材37側に向かって押圧された状態になっている(図2参照)。
図9(c)に示すように、電動モータ2が停止状態であって、かつドライブプレート41に回転力が作用すると、ウォームホイール16、およびロックプレート38は停止したままの状態でドライブプレート41のみが回転し始める(図9(c)の矢印参照)。
すると、ロックプレート38が停止したままであるので、ドライブプレート41の凸部52に設けられている楔部52a’とロックプレート38の凸部46に設けられている凹部47とが当接する。
したがって、上述の実施形態によれば、ウォームホイール16がCリング71により軸方向において拘束されているので、ロックプレート38とドライブプレート41とでウォームホイール16を挟み込んで軸方向に拘束する必要がなくなる。これにより、ロックプレート38の凸部46とドライブプレート41の凸部52とを直接突き当てた状態とすることができる。
そして、ウォームホイール16の係合孔36内において、ロックプレート38の凸部46とドライブプレート41の凸部52とが直接突き当たった状態で、互いに軸方向で対向配置されているので、ロックプレート38の凹部47の傾斜面47aとドライブプレート41の楔部52aの傾斜面52a’との間の周方向のクリアランスを、安定して小さくすることができる。これによって、ドライブプレート41の周方向の回転ガタを小さくすることができ、ウインドガラスのガタを抑えることができる。
ロックプレート38の凸部46とドライブプレート41の凸部52との間で生じる摩擦抵抗を抑えることができる。加えて、突起72が突き当たることによって、例えばロックプレート38の凹部47やドライブプレート41の楔部52aに製造誤差があってもその影響を受けるのを避け、ドライブプレート41とロックプレート38の当たり具合を一定にすることができる。
この図10(a)に示すように、同じ軸方向の力を発揮させるのであれば、ロックプレート38を大径化するほど、傾斜面47aの傾斜角度θを大きくすることができる。
図10(b)は、傾斜面47aの傾斜角度θと、ロックプレート38の凹部47の傾斜面47aとドライブプレート41の楔部52aの傾斜面52a’との間の周方向のクリアランスと、の相関を示す図である。
このようにして、凹部47の傾斜面47aの傾斜角度θを大きくすることで、ドライブプレート41の周方向の回転ガタ(出力軸ガタ)を小さくすることができ、ウインドガラスのガタを抑えることができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ロックプレート38に突起72を設けるようにした。しかしながら、これに限られるものではなく、図11に示すように、ドライブプレート41の凸部52の端面に設けられている楔部52aの先端部に、突起(突き当たり部)75を設けるようにしてもよい。
この突起75は、ロックプレート38の凹部47の周方向中央に係背された溝48に突き当たることで、ロックプレート38の凸部46とドライブプレート41の凸部52とを直接突き当てて、互いに軸方向で対向配置されるようにする。
さらに、ロックプレート38の凹部47に代わって、ドライブプレート41の楔部52aの傾斜面52a’を弓状に形成してもよいし、楔部52aの傾斜面52a’、および凹部47の傾斜面47aの両者52a’,47a共に弓状に形成してもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
2 電動モータ
3 ウォーム減速機(クラッチ付減速機)
4 クラッチ機構
7 回転軸
9 ウォームギア
11 ケーシング
15 ウォーム軸
16 ウォームホイール(駆動回転体)
17 ウォーム軸収納部
18 クラッチ収納部
28 センターシャフト(シャフト)
33 ナット
33A 第一ナット
33B 第二ナット
33a スリット
36 係合孔
37 フェーシング材(摩擦部材)
37a ベース部
37b 周壁部
37c 傾斜面
38 ロックプレート
41 ドライブプレート(従動回転体)
43 プレート本体
43a 斜面
46 凸部(第二凸部)
47 凹部(第二先端面)
47a 傾斜面(第二傾斜面)
50 プレート本体
52 凸部(第一凸部)
52a 楔部(第一先端面)
52a’ 傾斜面(第一傾斜面)
70 ピン
71 Cリング(移動規制部材)
72 突起(突き当たり部)
75 突起(突き当たり部)
78 ボルト
Claims (5)
- 電動モータの回転が入力され、軸方向に貫通する複数の係合孔が周方向に沿って形成された駆動回転体と、
前記駆動回転体の軸方向一端面側に配置され、前記係合孔に挿入される第一凸部を有して前記駆動回転体と係合し、前記電動モータの回転を出力する従動回転体と、
前記駆動回転体の軸方向他端面側に配置され、前記係合孔に挿入される第二凸部を有したロックプレートと、
前記駆動回転体の軸方向への移動を規制する移動規制部材と、
前記駆動回転体、前記従動回転体、前記ロックプレートを収容するケーシングと、を備え、
前記第一凸部の第一先端面と前記第二凸部の第二先端面とが、前記駆動回転体の軸方向において互いに突き合わされるとともに、
前記第一先端面および前記第二先端面のうち何れか一方は、周方向中央から周方向両端にかけて高さが減少する第一傾斜面を有し、前記第一先端面、および前記第二先端面のうち何れか他方は、周方向中央から両端にかけて高さが増加する第二傾斜面を有して、前記第一傾斜面と前記第二傾斜面とが、前記駆動回転体の周方向において互いに間隔を隔てており、
前記第一先端面および前記第二先端面の何れか一方に、前記第一先端面および前記第二先端面の何れか他方と前記軸方向において部分的に突き当たる突き当たり部が形成されていることを特徴とするクラッチ機構。 - 前記ロックプレートと前記ケーシングとの間に、前記ケーシングより摩擦係数の大きい材料からなる摩擦部材が設けられ、
前記ロックプレートは、前記第二凸部よりも外周側に延びるプレート部を有し、
前記ロックプレートが前記ケーシング側に向かって前記従動回転体の軸方向に沿って押圧されたときに、前記プレート部の外周部が前記摩擦部材との間で摩擦力を生じることによって、前記従動回転体の回転が阻止されることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ機構。 - 前記ケーシング、前記ロックプレート、前記駆動回転体、前記従動回転体を貫通し、前記ロックプレート、前記駆動回転体、前記従動回転体を回転自在に支持するシャフトと、
前記シャフトの先端部に螺入され、前記ケーシングとの間で前記ロックプレート、前記駆動回転体、前記従動回転体を挟み込むナットと、
前記ナットが緩む方向への前記ナットの回転を機械的に阻止する緩み止め機構と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクラッチ機構。 - 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のクラッチ機構の駆動回転体をウォームホイールとし、
前記ウォームホイールに噛合い、かつ前記電動モータに連結されるウォーム軸を設けたことを特徴とするクラッチ付減速機。 - 請求項4に記載のクラッチ付減速機に前記電動モータを取り付け、
前記電動モータの回転軸と前記ウォーム軸とを相対回転不能に連結したことを特徴とする減速機付モータ。
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