JP6160659B2 - 人工股関節置換術用手術器具 - Google Patents

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Description

本発明は、患者の関節を人工股関節に置換する手術において用いられる、人工股関節置換術用手術器具に関する。
従来より、股関節に異常が認められた患者に対して、股関節の一部又は全部を人工股関節に置換する人工股関節置換術が行われている。そして、上述したような人工股関節においては、骨盤の臼蓋に、窪み状のシェル及びライナーが設置される。また、大腿骨に対しては、骨頭の一部又は全部を置換するコンポーネントが用いられる。
上記シェルは、臼蓋に固定される。また、シェルの内側にライナーが固定される。一方、大腿骨用のコンポーネントは、大腿骨に固定されたステムと、ステムのネック部に連結された骨頭ボールとを含む。骨頭ボールは、ライナーの内側に配置される。上記の構成により、大腿骨の動きに合わせて骨頭ボールがライナーに対して摺動する。
人工股関節の置換手術時には、例えば、患者の大腿骨の近位部の骨頭が切除された後、近位部に、ステムを挿入するための孔が形成される。この孔は、近位部に、ステムの形状を模したステムブローチを挿通し、近位部の内部の骨組織を削ることで形成される。上記の孔の形成が完了した後には、この孔にステムブローチを入れたままの状態で、ステムブローチの近位部に、ネックトライアルが固定される。次いで、ネックトライアルの先端(近位端)に、ボールトライアルが嵌め込まれる(例えば、非特許文献1乃至3参照)。そして、この状態で、患者の脚がどのように動くか等を確認し、患者に装着するステムの形状、及び骨頭ボールの形状を決定する。
その後、ボールトライアル、ネックトライアル、及びステムブローチの順に、患者の体内から取り出される。その後、ステムが患者の大腿骨に固定される。このステムのネック部には、ボールトライアルの形状に対応する形状の骨頭ボールが装着される。
また、大腿骨の近位部にステムブローチを挿入した後、患者の脚の可動領域を広くする等のために、大腿骨の近位部の端面を削って均す場合がある。この場合、カルカーリーマーを用いて大腿骨の近位部の端面を削る。カルカーリーマーは、例えば、軸の先端に円板状の部分が形成され、当該円板状の一端面に刃が形成された構成を有している。
「手術手技 SL−PLUS セメントレス フェモラル ヒップシステム(Surgical Technique SL-PLUS Cementless Femoral Hip System)」、(スイス)、スミス&ネフュー社(Smith&Nephew)、p.5〜14、インターネット<URL:http://www.aura-group.cz/pdf/SL-Plus%20Surgical%20technique.pdf> 「手術手技 ジンマー M/L テーパー ヒップ プロテーゼ ウィズ キネクティブ テクノロジー(Surgical Technique Zimmer M/L Taper Hip Prosthesis with Kinectiv Technology)」、(米国)、ジンマー社(Zimmer)、p.5〜15、インターネット<URL: http://www.zimmer.com/content/pdf/en-US/ML_Taper_with_Kinectiv_Surgical_Technique_(97-7713-002-00_Rev_3)_(08_2010).pdf> 「手術手技 テーパーロック(Surgical Technique Taperloc)」、(米国)、バイオメット社(Biomet)、p.4〜6、インターネット<URL: http://www.biomet.com/orthopedics/getFile.cfm?id=1007&rt=inline>
人工股関節置換術に用いられる手術器具として、特許文献1〜3に記載の構成では、何れにおいても、手術時の作業に手間がかかってしまう。
具体的には、特許文献1記載の構成では、ボールトライアル及びネックトライアルをステムブローチから取り外す際、まず、ボールトライアルをネックトライアルから取り外すという、第1作業を行う。次に、ネックトライアルに設けられたボタンを押操作することで、ネックトライアルとステムブローチとのロックを解除するという第2作業を行う。その後、ネックトライアルをステムブローチから引き抜くという第3作業を行う。このように、ネックトライアルの取り外しに多くの作業が必要であり、手術に手間がかかる。
また、特許文献2に記載の構成では、当該特許文献2の図6及び図7等に示されているように、大腿骨の近位部に孔をあけるためのステムブローチの近位部の形状は、カルカーリーマを取り付けることができる形状となってはいない。このため、カルカーリーマを用いる際には、まず、ステムブローチを大腿骨から取り外した後、別のブローチ等を近位部の孔に挿入する。そして、その後、上記別のブローチにカルカーリーマを取り付けた状態で、大腿骨の近位部の端面を削る必要があり、手術に手間がかかる。
また、特許文献3に記載の構成では、当該特許文献3の図9に示されているように、ステムブローチの近位部から、円柱状の凸部が突出している。このため、ステムブローチを大腿骨に取付けた状態において、患者の臼蓋側に処置を施す際に、凸部が邪魔になる。術者によっては、大腿骨にステムブローチを嵌合した後、臼蓋側にシェルを設置する作業を行うことがある。これにより、シェルの設置位置を容易に決めることができる。しかしながら、このようなシェル設置作業の際等に、上記の凸部が邪魔になり、手術野が狭くなるため、手術の手間がかかる。上記の凸部を手術野から除去するためには、ステムブローチの全体を大腿骨から取り外す必要があるけれども、この場合、ステムブローチは、大腿骨の止血のために必要であり、大腿骨から取り外すことはできない。
本発明は、上記実情に鑑みることにより、手術にかかる手間を低減することができる、人工股関節置換術用手術器具を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための第1発明に係る人工股関節置換術用手術器具は、患者の大腿骨の近位部に、ステムが配置される孔部を形成するためのステムブローチと、前記近位部の端面を切削するための切削部材を前記ステムブローチに接続するためのアダプタと、前記切削部材と、を備え、前記ステムブローチは、ステムブローチ本体と、当該ステムブローチ本体の外側面に形成された刃部と、前記ステムブローチ本体の近位部に形成された嵌合孔部と、を含み、前記アダプタは、前記嵌合孔部に対して着脱可能な嵌合部と、当該嵌合部から突出する支柱と、を含み、前記支柱は、前記切削部材が前記近位部の端面を切削する動作を許容するように、前記切削部材を支持可能であり、前記嵌合孔部は、前記嵌合部全体を収容可能に構成され、前記切削部材は、軸部を有し、この軸部に、前記支柱に嵌合可能な挿通孔が形成されており、前記切削部材は、前記支柱に前記挿通孔が挿通された状態において、前記支柱に対して回転自在であり、前記切削部材の前記軸部の一端面に、前記近位部を切削するための刃形成部が形成され、前記嵌合部は、前記支柱が設けられる天面を有し、前記天面は、前記ステムブローチ本体の近位端面と面一に配置され、前記刃形成部は、前記近位端面および前記天面と面一に並ぶことが可能に配置されているとともに、前記ステムブローチ本体の近位部との接触によって回転規制されるように配置されていることを特徴とする。
この発明によると、嵌合孔部にアダプタの嵌合部を取り付け、更に、アダプタの支柱に、切削部材を取り付けることができる。これにより、切削部材をアダプタ及びステムブローチによって安定して支持した状態で、切削部材を動かすことができる。これにより、術者は、近位部の端面を容易に切削することができるので、手術にかかる手間を低減することができる。また、大腿骨に孔部を形成するためのステムブローチを、アダプタ及び切削部材を保持するための部材を兼用することができる。よって、アダプタを大腿骨に設置するために、ステムブローチを大腿骨から取り外し、アダプタ取付用の部材を別途用意して大腿骨に取り付けるという手間が必要無い。よって、手術にかかる手間をより少なくできる。また、アダプタをステムブローチから取り外した状態の場合、人工股関節置換術用手術器具は、ステムブローチの近位部から突出する部分が無い。このため、ステムブローチを大腿骨に取付けた状態において、患者の臼蓋側に処置を施す際等に、人工股関節置換術用手術器具が邪魔にならずに済む。これにより、手術野を広く確保することができるので、手術の手間を低減することができる。
第2発明に係る人工股関節置換術用手術器具は、第1発明の人工股関節置換術用手術器具において、前記嵌合孔部および前記嵌合部は、それぞれ、前記ステムブローチの厚み方向と直交する方向に細長く延びる五角形形状に形成されていることを特徴とする。
この発明によると、ステムブローチの嵌合孔部に嵌合部をセットするときに、嵌合部の向きが本来の向きと反対の状態で嵌合孔部に挿入されることを防ぐことができる。
第3発明に係る人工股関節置換術用手術器具は、第1発明又は第2発明の人工股関節置換術用手術器具において、前記天面は、前記ステムブローチの厚み方向と直交する方向に延びる形状に形成されていることを特徴とする。
第4発明に係る人工股関節置換術用手術器具は、第1発明乃至第3発明の何れかの人工股関節置換術用手術器具において、前記ステムブローチに着脱可能に構成され前記ステムブローチを操作するためのブローチハンドルと、前記ステムブローチに着脱可能に構成されるとともにボールトライアルを着脱可能なネックトライアルと、をさらに備え、前記ブローチハンドルおよび前記ネックトライアルは、前記嵌合孔部に挿入可能な嵌合部を含んでいることを特徴とする。
第5発明に係る人工股関節置換術用手術器具は、第4発明の人工股関節置換術用手術器具において、前記ステムブローチの前記嵌合孔部の内側面は、係合部を含み、前記ブローチハンドルおよび前記ネックトライアルに設けられた抜け止め用部材に、前記係合部が係合可能に構成されていることを特徴とする。
本発明によると、手術にかかる手間を低減することができる、人工股関節置換術用手術器具を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係る人工股関節置換術用手術器具を用いて患者に設置された人工股関節について、骨盤及び大腿骨の一部とともに示す断面図である。 人工股関節置換術用手術器具の側面図である。 (a)は、ステムブローチの厚み方向と直交する方向から見たステムブローチの側面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線に沿う、ステムブローチの主要部の断面図であり、(c)は、図3(b)の矢印IIIc方向から見たステムブローチの側面図である。 (a)は、ネックトライアルの側面図であり、(b)は、ネックトライアルの正面図であり、(c)は、ネックトライアルの側面図であり、(d)は、ネックトライアルのネックトライアル本体を底面側から見た図である。 図4(c)のV−V線に沿う断面図である。 図2のボールトライアルの周辺の拡大図である。 (a)は、アダプタ及び切削部材の側面図であり、(b)は、アダプタの底面図である。 ブローチハンドルの側面図である。 (a)及び図9(b)は、それぞれ、ブローチハンドルの斜視図である。 図9(b)の嵌合部周辺の拡大図である。 大腿骨の近位部に孔部を形成する作業を説明するための側面図であり、一部を断面で示している。 図11に続いて、大腿骨の近位部に孔部を形成する作業を説明するための側面図であり、一部を断面で示している。 図12に続いて、大腿骨の近位部に孔部を形成する作業を説明するための側面図であり、一部を断面で示している。 図13に続いて、大腿骨の近位部に孔部を形成する作業を説明するための側面図であり、一部を断面で示している。 (a)、(b)は、それぞれ、ネックトライアル及びボールトライアルの着脱作業について説明するための側面図であり、一部を断面で示している。 (a)は、ネックトライアル及びボールトライアルの着脱作業について説明するための側面図であって、一部を断面で示しており、(b)は、ネックトライアル及びステムブローチの主要部の断面図である。 (a)、(b)は、それぞれ、ネックトライアル及びボールトライアルの着脱作業について説明するための側面図であり、一部を断面で示している。 (a)、(b)は、それぞれ、大腿骨の近位部の端面を均す作業について説明するための側面図であり、一部を断面で示している。 本発明の変形例について説明するための主要部の断面図であり、一部を断面で示している。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、患者の股関節を人工股関節に置換する手術において用いられる、人工股関節置換術用手術器具として広く適用することができるものである。
図1は、本発明の一実施の形態に係る人工股関節置換術用手術器具を用いて患者に設置された人工股関節100について、骨盤101及び大腿骨102の一部とともに示す断面図である。図1に示すように、人工股関節100は、ステム103と、骨頭ボール104と、臼蓋101aに設置されたシェル105及びライナー106と、を備えて構成されている。ステム103、骨頭ボール104及びシェル105のそれぞれの材料としては、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼等の金属材料、ポリエチレン、PEEK等の高分子材料、及びアルミナ、ジルコニア等のセラミックス材料を例示することができる。
ステム103は、細長い棒状に形成されており、当該ステム103の途中部が屈曲した形状を有している。ステム103は、ステム本体103aと、ネック部103bと、を備えて構成されている。
ステム本体103aは、大腿骨102の髄腔部102aに形成された孔部102bに挿入されており、骨セメント等を用いて大腿骨102に固定されている。ステム本体103aは、大腿骨102の長手方向に沿って延びており、当該ステム本体103aの近位部から遠位部に向かうに従い、先細りとなる形状を有している。
ネック部103bは、ステム本体103aの近位部から突出する部分として設けられている。ネック部103bは、ステム本体103aの長手方向に対して傾斜した方向に延びている。ネック部103bの基端部は、先細り形状に形成されている。ネック部103bは、中間部から先端部にかけて、直径が略一定の円柱状に形成されている。ネック部103bの先端に、骨頭ボール104が固定されている。
骨頭ボール104は、球状に形成されており、人工股関節100の骨頭部分を構成している。尚、本実施形態では、骨頭ボール104がステム103に連結される構成を例にとって人工股関節を説明しているが、この通りでなくてもよい。例えば、骨頭ボール104がステム103に一体に形成されていてもよい。骨頭ボール104は、ライナー106を介してシェル105に受けられている。
シェル105及びライナー106は、骨盤101に保持され、且つ、骨頭ボール104と協働して球面継手を形成しており、骨盤101に対する大腿骨102の運動を許容する。シェル105は、カップ状に形成された、窪みを有する部材であり、骨盤101の臼蓋101aに固定されている。シェル105に、ライナー106が圧入固定されている。
ライナー106は、合成樹脂等を用いて形成されている。ライナー106は、カップ状に形成された、窪みを有する部材である。ライナー106の内側面に、骨頭ボール104が摺動可能に接触している。上記の構成により、骨頭ボール104がライナー106の内側面に対して摺動することにより、大腿骨102が臼蓋101aに対して変位する。
上記の構成を有する人工股関節100に関して、孔部102bの形成作業、及び骨頭ボール104の選定作業等は、図2に示す人工股関節置換術用手術器具1を用いて行われる。図2は、人工股関節置換術用手術器具1の側面図である。
図2に示すように、人工股関節置換術用手術器具(以下、単に手術器具ともいう)1は、ステムブローチ2と、ネックトライアル3と、ボールトライアル4と、アダプタ5と、切削部材6と、ブローチハンドル7と、を備えて構成されている。図1及び図2に示すように、ステムブローチ2は、大腿骨102の近位部102cに、ステム103が配置される孔部102bを形成するための骨切り部材として設けられている。ステムブローチ2は、ステム103と概ね同様の外郭形状を有している。ステムブローチ2は、例えば、金属材料を用いて形成されている。
ステムブローチ2は、所定の厚みを有する板状に形成されている。ステムブローチ2は、ステムブローチ本体8と、多数の刃部9と、を有している。ステムブローチ本体8は、近位部8aと、遠位部8bとを有している。ステムブローチ2を、その厚み方向と直交する方向から見たとき、即ち、図2に示すように見たとき、ステムブローチ本体8は、略円弧状に形成されており、近位部8aから遠位部8bに向かうに従い、先細りとなっている。近位部8aには、近位端面8cが形成されている。
図3(a)は、ステムブローチ2の厚み方向と直交する方向から見たステムブローチ2の側面図である。図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線に沿う、ステムブローチ2の主要部の断面図である。図3(c)は、図3(b)の矢印IIIc方向から見たステムブローチ2の側面図である。
図2、図3(a)、図3(b)及び図3(c)に示すように、近位端面8cは、細長い略矩形の面として設けられている。近位端面8cには、嵌合孔部10が形成されている。嵌合孔部10は、ステムブローチ本体8の近位部8aに配置された保持部として設けられており、ネックトライアル3、アダプタ5、及びブローチハンドル7とを、択一的に嵌合可能に構成されている。
嵌合孔部10は、近位端面8cに対して直交する方向に窪んだ形状を有している。嵌合孔部10の深さは、たとえば、10mm程度である。嵌合孔部10は、ホームベース形状(五角形形状)に形成されている。このように、嵌合孔部10をホームベース形状にすることで、ステムブローチ2にネックトライアル3をセットするときに、ネックトライアル3の向きが本来の向きと反対の状態でステムブローチ2に挿入されることを防ぐことができる。嵌合孔部10は、底面11と、内側面12とを含んでいる。
底面11は、近位端面8cと平行に延びている。内側面12は、近位端面8cと、底面11との間に延びており、近位端面8cに対して直交している。内側面12は、第1〜第5内側面13〜17を有している。第1内側面13及び第2内側面14は、互いに傾斜するテーパ状面として設けられており、全体としてV字状をなしている。近位端面8cと直交する方向から見て、第1内側面13及び第2内側面14の一端は、互いに繋がっており、他端は、それぞれ、第3内側面15の一端及び第4内側面16の一端に繋がっている。
第3内側面15及び第4内側面16は、互いに平行に延びる部分として設けられており、近位端面8cの長手方向と平行に延びている。第3内側面15及び第4内側面16は、それぞれ、第5内側面17に繋がっている。第5内側面17は、第1内側面13及び第2内側面14に対して、近位端面8cの長手方向に向かい合っている。第5内側面17には、第1係合部18が形成されている。
第1係合部18は、第5内側面17に形成された窪み部であり、滑らかに湾曲した形状を有している。第1係合部18のうち、近位端面8cに隣接する部分は、第1カム面18aとされている。第1カム面18aは、嵌合孔部10の深さ方向D1に対して傾斜しており、深さ方向D1に沿って近位端面8cに進むに従い、第5内側面17からの深さが小さくなっている。即ち、第1カム面18aは、後述する嵌合部23を、嵌合孔部10から引き抜く方向(深さ方向D1の一方)に対して、傾斜している。
ステムブローチ本体8の外側面8dには、多数の刃部9が形成されている。尚、外側面8dは、ステムブローチ本体8の外表面のうちの、近位端面8c以外の部分として設けられている。各刃部9は、たとえば、数mm程度の大きさを有している。ステムブローチ2を大腿骨102(図1参照)の近位部102c内に挿入し、且つ近位部102cに対して変位させることにより、刃部9は、髄腔部102aの骨組織を切削する。ステムブローチ2に対しては、ネックトライアル3を着脱可能である。ネックトライアル3は、ステムブローチ本体8の近位部8aから延びる首部として設けられており、人工股関節100のネック部103b(図1参照)に相当する部分である。
図4(a)は、ネックトライアル3の側面図であり、図4(b)は、ネックトライアル3の正面図であり、図4(c)は、ネックトライアル3の側面図であり、図4(d)は、ネックトライアル3のネックトライアル本体21を底面側から見た図である。尚、図4(a)のネックトライアル3は、図4(b)のネックトライアル3を左側から見た状態を示している。また、図4(c)のネックトライアル3は、図4(b)のネックトライアル3を右側から見た状態を示している。図5は、図4(c)のV−V線に沿う断面図である。
図4(a)、図4(b)、図4(c)及び図5に示すように、ネックトライアル3は、ネックトライアル本体21と、ロック部材22と、を備えている。
ネックトライアル本体21は、金属製の部材である。本実施形態では、ネックトライアル本体21の全体が、単一の材料を用いて一体に形成されている。尚、ネックトライアル本体21は、複数の部材を互いに固定して形成されていてもよい。ネックトライアル本体21は、所定の厚みを有する小片状に形成されている。ネックトライアル本体21は、嵌合部23と、突出部24と、を含んでいる。
図4(a)〜図4(d)に示すように、嵌合部23は、ステムブローチ2の嵌合孔部10に嵌合される部分として設けられている。嵌合部23は、細長いブロック状に形成されている。嵌合部23は、ステムブローチ2の嵌合孔部10の形状に対応する形状に形成されている。具体的には、嵌合部23は、所定の第1軸線L1に沿って延びている。第1軸線L1に沿う、嵌合部23の長さは、嵌合孔部10の深さよりは小さくされている。第1軸線L1と平行な方向から見たとき、嵌合部23は、ホームベース形状(五角形形状)に形成されている。このように、嵌合部23をホームベース形状にすることで、ステムブローチ2の嵌合孔部10にネックトライアル3をセットするときに、ネックトライアル3の向きが本来の向きと反対の状態で嵌合孔部10に挿入されることを防ぐことができる。嵌合部23は、底面31と、外側面32とを有している。
底面31は、ネックトライアル本体21の後述する端面24dと平行に延びている。外側面32は、底面31と端面24dとの間に延びており、底面31に対して直交している。外側面32は、第1〜第5外側面33〜37を有している。第1外側面33及び第2外側面34は、互いに傾斜するテーパ状面として設けられており、全体としてV字状をなしている。第1軸線L1と直交する方向から見て、第1外側面33及び第2外側面34の一端は、互いに繋がっており、他端は、それぞれ、第3外側面35の一端及び第4外側面36の一端に繋がっている。
第3外側面35及び第4外側面36は、互いに平行に延びる部分として設けられている。第3外側面35及び第4外側面36は、それぞれ、第5外側面37に繋がっている。第5外側面37は、第3外側面35及び第4外側面36とは直交する方向に延びている。また、第5外側面37は、第1外側面33及び第2外側面34に対して、嵌合部23の長手方向に向かい合っている。
上記の構成を有する嵌合部23に対して傾斜するように、突出部24が延びている。突出部24は、嵌合部23が嵌合孔部10に嵌合しているときに、嵌合孔部10から突出する部分として設けられている。突出部24は、第2軸線L2(所定の長手方向)に沿って延びている。第2軸線L2は、第1軸線L1と交差し、且つ、第1軸線L1に対して傾斜している。本実施形態では、第1軸線L1に対する第2軸線L2の傾斜角度は、約20度である。正面視(図4(b)に示す方向から見たとき)において、突出部24は、嵌合部23から遠ざかるに従い、第1外側面33及び第5外側面37のうちの第1外側面33側に進むように延びている。
突出部24は、正面視において、嵌合部23から遠ざかるに従い先細りとなる形状に形成されている。具体的には、突出部24は、基端部24aと、中間部24bと、先端部24cと、を有している。基端部24aは、嵌合部23に接続される部分として設けられている。基端部24aのうち、嵌合部23側を向く端面24dは、第1軸線L1と直交する方向を向いている。この端面24dと、ステムブローチ2の近位端面8cとは、嵌合部23の周方向全域に亘って面接触可能である。
突出部24の先端部24cは、略円柱状に形成された部分として設けられている。また、先端部24cは、ボールトライアル4(図2参照)を受けるための受け部として設けられ、且つ、ロック部材22が突出する部分として設けられている。
また、ネックトライアル3は、ロック部材22を保持するための構成を有している。具体的には、図4(c)及び図5に示すように、ネックトライアル本体21には、ロック部材22を配置するための収容孔部38及び収容溝39が形成されている。収容孔部38及び収容溝39には、ロック部材22が収容されており、ロック部材22は、後述するように、支軸48を中心として、ロック方向D2及びロック解除方向D3に揺動可能とされている。
収容孔部38は、ネックトライアル本体21の先端部24cに形成されており、当該先端部24cを貫通している。収容孔部38は、第2軸線L2に沿って延びており、円柱状の空間を形成している。収容溝39は、突出部24及び嵌合部23に形成された溝部分であり、収容孔部38に連続している。収容溝39は、ネックトライアル本体21の厚み方向の中間部に形成されている。ネックトライアル本体21は、当該ネックトライアル本体21の幅方向における一端部21a及び他端部21bを有しており、収容溝39は、一端部21aに開放されている。一端部21a及び他端部21bのうちの一端部21a側に、嵌合部23の第5外側面37が配置されている。
収容溝39は、第1部分41と、第2部分42と、第3部分43と、を含んでいる。
第1部分41は、収容孔部38に連続する部分として設けられている。第1部分41は、突出部24の中間部24bに形成されている。第1部分41における収容溝39の底部41aは、ネックトライアル本体21の他端部21bに隣接して配置されている。底部41aには、第1受け部44が形成されている。第1受け部44は、ロック部材22がロック方向D2へ変位することを規制するために設けられている。
第2部分42は、第1部分41に連続する部分として設けられており、突出部24の中間部24bに配置されている。第2部分42の底部42aは、底部41aに対して、一端部21a側に突出している。第2部分42における収容溝39の底部42aには、保持孔45が形成されている。保持孔45は、弾性部材46を保持している。
弾性部材46は、ロック部材22をロック方向D2側に付勢するために設けられている。弾性部材46は、例えば、コイルばねであり、圧縮されることにより、弾性反発力(付勢力)を生じる。弾性部材46は、保持孔45の底に受けられている、弾性部材46の一部は、保持孔45から突出しており、ロック部材22に接触している。ネックトライアル3に外力が作用していないとき、弾性部材46の弾性反発力によって、ロック部材22が、第1受け部44に押圧されている。
弾性部材46に隣接する位置に、第2受け部47が設けられている。第2受け部47は、ロック部材22がロック解除方向D3へ過度に変位することを規制するために設けられている。第2受け部47は、第2部分42における収容溝39の底部42aに形成されている。第2受け部47と第1受け部44との間に、弾性部材46が配置されている。また、第2軸線L2が延びる方向において、第2受け部47と、第1受け部44との間に、支軸48が配置されている。ネックトライアル3に外力が作用していないとき、第2受け部47とロック部材22とは、所定量離隔している。
弾性部材46から嵌合部23側に進んだ位置に、第3部分43が配置されている。第3部分43は、突出部24の基端部24a及び嵌合部23に亘って形成されており、第2部分42と連続している。第3部分43における収容溝39の底部43aは、一端部21aから深い位置に配置されている。これにより、ロック部材22は、ロック方向D2及びロック解除方向D3の何れの方向に揺動したときでも、底部43aと接触しない。
図4(b)及び図5を参照して、次に、収容溝39に保持されるロック部材22について説明する。ロック部材22は、ネックトライアル3がステムブローチ2から抜けることを規制するために設けられている。本実施形態では、ロック部材22の全体が、単一の材料を用いて一体に形成されている。尚、ロック部材22は、複数の部材を互いに固定して形成されていてもよい。
ロック部材22は、細長い棒状の部材であり、当該ロック部材22の長手方向の中間部の一側部が窪んだ形状とされている。ロック部材22は、収容溝39に収容された近位部22a、中間部22b及び遠位部22cと、収容孔部38を挿通する軸部22dと、を有している。
ロック部材22の近位部22aは、収容溝39の第1部分41に収容されている。近位部22aは、ロック部材22のうち、ネックトライアル本体21に連結される部分として設けられている。近位部22aには、支軸48が貫通している。支軸48は、ネックトライアル本体21の中間部24bに支持されている。支軸48の中心軸線は、第1軸線L1上に配置されている。ロック部材22は、支軸48を中心として、ロック方向D2及びロック解除方向D3に揺動可能である。
また、近位部22aは、第1ストッパ部49を有している。第1ストッパ部49は、第1受け部44と接触する部分として設けられている。第1ストッパ部49は、近位部22aのうち、第1受け部44と対向する側面に形成された、平坦な面である。第1ストッパ部49が第1受け部44と接触することにより、ロック部材22は、それ以上ロック方向D2へ変位することを規制される。
ロック部材22の中間部22bは、収容溝39の第2部分42に収容されている。中間部22bのうち、底部42aと対向する側面22eには、弾性部材46が接触している。これにより、ロック部材22は、弾性部材46から、ロック部材22をロック方向D2へ付勢する弾性反発力を受けている。また、側面22eには、第2ストッパ部50が形成されている。第2ストッパ部50は、ロック部材22の第1ストッパ部49が第1受け部44に受けられている状態からロック解除方向D3へ所定量変位したときに、第2受け部47と接触する部分として設けられている。第2ストッパ部50は、側面22eから突出する突起状に形成されている。
ロック部材22の遠位部22cは、収容溝39の第3部分43に収容されている。遠位部22cには、第2係合部52が設けられている。第2係合部52は、山形形状の突起として設けられている。第2係合部52は、ロック部材22の第1ストッパ部49が第1受け部44に受けられているときに、嵌合部23の第5側面37からネックトライアル本体21の外方へ突出している。第2係合部52は、第2カム面52aを含んでいる。第2カム面52aは、嵌合部23を嵌合孔部10から引き抜く方向(深さ方向D1の一方)に対して傾斜している。第2係合部52は、ステムブローチ2の第1係合部18にロックされることにより、嵌合孔部10からの嵌合部23の抜けを規制する。即ち、ステムブローチ2からのネックトライアル3の抜けを規制する。一方、第2係合部52は、第1係合部18に対してロック解除方向D3へ変位することにより、第1係合部18とのロックを解除され、嵌合孔部10から嵌合部23を抜くことが可能となる。即ち、ステムブローチ2からネックトライアル3を抜くことが可能となる。
ロック部材22の軸部22dは、ボールトライアル4(図2参照)と係合するための部分として設けられている。軸部22dは、近位部22aから収容孔部38を挿通し、更に、突出部24の先端部24cからネックトライアル本体21の外方へ突出している。軸部22dは、ロック部材22の揺動に伴って、収容孔部38内をロック方向D2及びロック解除方向D3に変位可能である。本実施形態では、軸部22dは、円柱状に形成されている。軸部22dのうち、ネックトライアル本体21から突出する部分には、第3係合部53が設けられている。第3係合部53は、ネックトライアル本体21の長手方向に沿って突出部24から突出している。
図6は、図2のボールトライアル4の周辺の拡大図である。図6に示すように、ボールトライアル4は、ネックトライアル3に対して着脱可能であり、人工股関節100の骨頭ボール104(図1参照)に相当する部分である。ボールトライアル4は、真球状の部材の一部を切除した形状を有している。ボールトライアル4の外側面は、球状部56と、面取り部57と、を含んでいる。球状部56は、真球状に形成されている。面取り部57は、平坦な面として設けられている。
面取り部57には、挿通孔部58が形成されている。挿通孔部58は、面取り部57と直交する方向に延びており、突出部24の先端部24c、及びロック部材22の軸部22dを挿通可能である。挿通孔部58は、大径部58aと、小径部58bとを有している。大径部58aは、突出部24の先端部24cと嵌合するために設けられており、挿通孔部58の開口部から、ボールトライアル4の奥側へ向かって延びている。
大径部58aには、環状の溝からなる結合部58cが形成されている。当該結合部58cには、弾性部材59が保持されている。弾性部材59は、突出部24の先端部24cに、弾性的に圧縮されつつ嵌合することにより、ボールトライアル4をネックトライアル3に保持する。即ち、結合部58cは、弾性部材59を介して、突出部24の先端部24cに取り外し可能に結合される。ネックトライアル3とボールトライアル4との間に弾性部材59を介在させていることにより、ボールトライアル4をネックトライアル3に対して着脱し易くすることができる。尚、結合部58cの直径を先端部24cの直径と略同じにし、結合部58cを直接先端部24cに結合させてもよい。大径部58aの奥側に、小径部58bが配置されている。
小径部58bは、軸部22dの直径と略同じ直径を有しており、円柱状の空間を形成している。小径部58bの内側面には、第4係合部54が設けられている。第4係合部54は、円筒状に形成されている。結合部58cが突出部24の先端部24cに結合しているとき、第4係合部54は、第3係合部53と係合する。これにより、ロック部材22の揺動が規制される。即ち、第2係合部52は、ロック解除方向D3へ変位することを規制される。
尚、ボールトライアル4は、複数備えられている(図2及び図6では、ボールトライアル4は、1つのみ図示)。各ボールトライアル4は、球状部56の大きさが異なっている点以外は同様の構成を有しているので、詳細な説明は省略する。
図7(a)は、アダプタ5及び切削部材6の側面図であり、図7(b)は、アダプタ5の底面図である。尚、図7(a)において、ステムブローチ2の一部を、想像線である2点鎖線で示している。図7(a)及び図7(b)を参照して、切削部材6は、例えば、カルカーリーマーである。切削部材6は、大腿骨102の近位部102cの端面102dを切削して均すために設けられている。大腿骨102の近位部102cの端面102dを均すことで、大腿骨102を骨盤に対して動かすときに大腿骨102が骨盤と接触することを防止する。切削部材6は、アダプタ5を介してステムブローチ2に支持される。
アダプタ5は、ステムブローチ2の嵌合孔部10に対して着脱可能な金属製の部材であり、ステムブローチ2と切削部材6とを接続するために設けられている。アダプタ5は、切削部材6を支持可能に構成されている。本実施形態では、アダプタ5の全体が、単一の材料を用いて一体に形成されている。尚、アダプタ5は、複数の部材を互いに固定して形成されていてもよい。アダプタ5は、嵌合部67と、支柱68とを有している。
嵌合部67は、ステムブローチ2の嵌合孔部10に嵌合される部分として設けられている。嵌合部67が嵌合孔部10に嵌合されることにより、アダプタ5は、ステムブローチ2に保持される。嵌合部67は、ステムブローチ2の嵌合孔部10の形状に対応する形状に形成されている。
具体的には、嵌合部67は、所定の第3軸線L3に沿って延びている。第3軸線L3に沿う、嵌合部67の長さは、嵌合孔部10の深さと略同様である。第3軸線L3と平行な方向から見て、嵌合部67は、ホームベース形状(五角形形状)に形成された細長い部分である。このように、嵌合部67をホームベース形状にすることで、ステムブローチ2の嵌合孔部10に嵌合部67をセットするときに、嵌合部67の向きが本来の向きと反対の状態で嵌合孔部10に挿入されることを防ぐことができる。嵌合部67の外面は、天面70と、底面71と、外側面72とを含んでいる。
天面70及び底面71は、それぞれ、平坦な面として設けられており、互いに平行に延びている。外側面72は、天面70と底面71との間に延びており、底面71に対して直交している。外側面72は、第1〜第5外側面73〜77を有している。第1外側面73及び第2外側面74は、互いに傾斜するテーパ状面として設けられており、全体としてV字状をなしている。第3軸線L3と直交する方向から見て、第1外側面73及び第2外側面74の一端は、互いに繋がっており、他端は、それぞれ、第3外側面75の一端及び第4外側面76の一端に繋がっている。
第3外側面75及び第4外側面76は、互いに平行に延びる部分として設けられている。第3外側面75及び第4外側面76は、それぞれ、第5外側面77に繋がっている。第5外側面77は、第3外側面75及び第4外側面76とは直交する方向に延びている。また、第5外側面77は、第1外側面73及び第2外側面74に対して、嵌合部67の長手方向に向かい合っている。嵌合部67は、嵌合孔部10に対して、すきまばめ又は中間ばめによって保持される。
嵌合部67の天面70から、支柱68が突出している。支柱68は、切削部材6が近位部102cの端面102dを切削する動作を許容するように、切削部材6を支持可能である。具体的には、支柱68は、天面70と直交する方向に延びる円柱状に形成されている。支柱68の外周面は、円筒面とされている。嵌合部67が嵌合孔部10に嵌合しているとき、支柱68は、ステムブローチ2の近位端面8cから当該近位端面8cと直交するように突出している。また、嵌合部67が嵌合孔部10に嵌合されている状態において、支柱68を近位端面8cと直交する方向から見たとき、支柱68は、近位端面8cの中心に配置される。尚、支柱68を近位端面8cと直交する方向から見たとき、支柱68の中心は、近位端面8cの中心からずれた位置に配置されていてもよい。この支柱68には、切削部材6が取り外し可能に装着される。
切削部材6は、細軸部6aと、太軸部6bとを含んでいる。細軸部6aは、術者の手又は図示しない治具によって保持される部分として設けられている。術者は、手で直接、又は治具を介して細軸部6aを回転させることにより、切削部材6を回転させる。細軸部6aは、本実施形態では、円柱状に形成されている。尚、細軸部6aは、軸状に形成されていればよく、細軸部6aは、多角柱形状であってもよい。
太軸部6bは、円柱状に形成されている。太軸部6bの直径は、細軸部6aの直径よりも大きい。太軸部6bと細軸部6aとは、同軸に結合されている。太軸部6bの一端面6cには、刃形成部6dが設けられている。刃形成部6dは、1又は複数(本実施形態において、4つ)設けられている。本実施形態では、複数の刃形成部6dが、太軸部6bの周方向に沿って並んで配置されている。各刃形成部6dは、太軸部6bの周方向の一方に向かうに従い、太軸部6bの一端面6cからの高さが高くなる傾斜状に形成されている。太軸部6bの周方向における、各刃形成部6dの先端には、刃部6eが形成されている。刃部6eによって、大腿骨102の近位部102cの端面102dが削られる。
また、太軸部6bには、支柱挿通孔6fが形成されている。支柱挿通孔6fは、支柱68が挿通される孔として設けられており、太軸部6bの軸方向に沿って延び、一端面6cに開放されている。支柱挿通孔6fに支柱68が挿通されているとき、太軸部6bは、支柱68に対して回転可能である。支柱挿通孔6fの内周面は、円筒状に形成されている。これにより、太軸部6bは、支柱68に対して摺動回転可能である。
図8は、ブローチハンドル7の側面図であり、図9(a)及び図9(b)は、それぞれ、ブローチハンドル7の斜視図である。尚、図8においては、ステムブローチ2の一部を、想像線である2点鎖線で図示している。図8、図9(a)及び図9(b)に示すように、ブローチハンドル7は、ステムブローチ2を操作する(動かす)ための操作部材として設けられており、ステムブローチ2に対して着脱可能である。
ブローチハンドル7は、全体として、細長い棒状に形成されている。ブローチハンドル7は、ケース79と、フック部材80と、第1レバー81と、第2レバー82と、を有している。
ケース79は、フック部材80及び第1レバー81を収容するために設けられている。ケース79は、ケース本体83と、嵌合部84と、把持部85と、を有している。
ケース本体83は、細長く延びる棒状に形成された中空の部材である。ケース本体83の長手方向の一端部83aに、把持部85が固定されている。把持部85は、ケース本体83の長手方向と直交する方向に延びており、術者によって把持される。
ケース本体83の内部空間86は、ケース本体83の長手方向に細長い空間として設けられており、ケース本体83の一側面83cにおいて、ケース本体83の長手方向の大部分に亘って開放されている。また、ケース79の内部空間86は、ケース本体83の他側面83dにも開放されている。具体的には、ケース本体83の他側面83dと、嵌合部84の後述する第5外側面97に亘って、切欠部87が形成されている。ケース本体83の長手方向における他端部83bに、嵌合部84が配置されている。
嵌合部84は、ステムブローチ2の嵌合孔部10に嵌合される部分として設けられている。嵌合部84は、ステムブローチ2の嵌合孔部10の形状に対応する形状に形成された細長い部分である。図10は、図9(b)の嵌合部84周辺の拡大図である。図10に示すように、嵌合部84は、所定の第4軸線L4に沿って延びている。第4軸線L4と平行な方向から見て、嵌合部84は、ホームベース形状(五角形形状)に形成されている。このように、嵌合部84をホームベース形状にすることで、ステムブローチ2の嵌合孔部10(図8参照)に嵌合部84をセットするときに、嵌合部84の向きが本来の向きと反対の状態で嵌合孔部10に挿入されることを防ぐことができる。嵌合部84は、底面91と、外側面92とを含んでいる。
外側面92は、底面91に対して直交している。外側面92は、第1〜第5外側面93〜97を有している。第1外側面93及び第2外側面94は、互いに傾斜するテーパ状面として設けられており、全体としてV字状をなしている。第4軸線L4と直交する方向から見て、第1外側面93及び第2外側面94の一端は、互いに繋がっており、他端は、それぞれ、第3外側面95の一端及び第4外側面96の一端に繋がっている。
第3外側面95及び第4外側面96は、互いに平行に延びる部分として設けられている。第3外側面95及び第4外側面96は、それぞれ、第5外側面97に繋がっている。第5外側面97は、第3外側面95及び第4外側面96とは直交する方向に延びている。また、第5外側面97は、第1外側面93及び第2外側面94に対して、嵌合部84の長手方向に向かい合っている。この嵌合部84にフック部材80が配置されている。
図8に示すように、フック部材80は、内部空間86に収容されており、内部空間86に対して進退変位可能である。フック部材80は、ブローチハンドル7とステムブローチ2とをロックするために設けられている。
フック部材80は、鉤状に形成されており、支軸110と、第1連結部111と、第5係合部112と、を有している。支軸110は、ケース本体83の他端部83bに支持されている。フック部材80は、支軸110を中心に、ケース本体83に対して揺動可能である。支軸110に隣接した位置に、第5係合部112が配置されている。
第5係合部112は、フック部材80の鉤状部分の先端に形成された部分であり、ステムブローチ2の第1係合部18と係合可能に構成されている。第5係合部112は、フック部材80の揺動に伴って、ケース79の外部に突出した状態と、内部空間86に収容された状態との間で変位可能である。フック部材80は、第1連結部111に連結された第1レバー81によって操作される。第1連結部111は、内部空間86内に配置されている。第1連結部111は、例えば軸状に形成されており、第1レバー81に相対回転可能に連結されている。
図8及び図9(a)に示すように、第1レバー81は、内部空間86内に配置されており、第2レバー82の動作に伴って、一端部83c側から内部空間86の外方に突出可能である。第1レバー81は、ケース本体83の長手方向に沿って延びる細長い棒状部材である。第1レバー81の両端部は、それぞれ、第1連結部111及び第2レバー82の後述する第2連結部113に連結されている。
第2レバー82は、第1レバー81を操作するために設けられている。第2レバー82は、細長く延びる棒状に形成されている。第2レバー82の一端部82aは、内部空間86に収容されている。第2レバー82の一端部82aは、第2連結部113と、支軸115と、を有している。
第2連結部113は、軸状に形成されており、第1レバー81の一端部に相対回転可能に連結されている。支軸115は、ケース本体83の一端部83aに形成された支軸挿通孔114に挿通されている。支軸挿通孔114は、一端部83a側から他端部83b側に延びる長孔である。第2レバー82の一端部82aから、把持部82bが延びている。把持部82bは、術者が第2レバー82を操作する際に把持される部分として設けられている。把持部82bは、ケース79からは突出している。
次に、手術器具1の使用方法について説明する。具体的には、手術器具1を用いて、大腿骨102の近位部102cに孔部102bを形成する作業、ネックトライアル3及びボールトライアル4の着脱作業、及び、大腿骨102の近位部102cの端面102dを切削する作業について、説明する。
[大腿骨の近位部に孔部を形成する作業]
図11を参照して、大腿骨102の近位部102cに孔部102bを形成する際には、まず、図示しないやすり等の工具によって、患者の大腿骨頭を削除し、更に、大腿骨102の近位部102cの髄腔部102aに、下孔107を形成する。下孔107は、大腿骨102の長手方向に延びる細長い孔である。
次に、ブローチハンドル7にステムブローチ2を結合する。具体的には、術者は、第2レバー82の先端を、ケース本体83の一端部83a側へ持ち上げる。これに伴い、第1レバー81は、ケース本体83の一端部83a側に持ち上がり、フック部材80は、支軸110回りに揺動し、第5係合部112がケース79内に退避する。
この状態で、ブローチハンドル7の嵌合部84を、ステムブローチ2の嵌合孔部10に挿入する。次に、図12に示すように、術者は、ブローチハンドル7の第2レバー82の先端をケース79に対して押し下げる。これにより、第1レバー81は、ケース本体83の他端部83b側に変位し、フック部材80は、支軸110回りに揺動する。その結果、第5係合部112は、ケース79の外方に突出し、ステムブローチ2の第1係合部18に係合する。これにより、ブローチハンドル7は、ステムブローチ2にロックされる。
術者は、ブローチハンドル7を把持した状態で、ステムブローチ2を、患者の大腿骨102の下孔107に挿通し、近位部102cの髄腔部102aを削る。これにより、図13に示すように、大腿骨102に孔部102bが形成され、当該孔部102bにステムブローチ2が保持される。
次に、図14に示すように、術者は、第2レバー82の先端を再度持ち上げる。これにより、フック部材80の第5係合部112は、ケース79内に収容され第1係合部18との係合を解除される。この状態で、術者がブローチハンドル7を持ち上げることにより、ブローチハンドル7を、ステムブローチ2から引き抜く。
[ネックトライアル及びボールトライアルの着脱作業]
次に、図15(a)に示すように、ネックトライアル3を用意する。そして、ネックトライアル本体21の嵌合部23を、ステムブローチ2の嵌合孔部10に挿入する。この際、図15(b)に示すように、ロック部材22は、嵌合孔部10との係合によって、弾性部材46の弾性反発力に抗して支軸48回りをロック解除方向D3に変位する。その後、図16(a)に示すように、ロック部材22の第1係合部18が第2係合部52に対向することで、再びロック方向D2へ変位する。これにより、第1係合部18と第2係合部52とが係合する。
第1係合部18と第2係合部52とが係合しているとき、弾性部材46は、ネックトライアル本体21とロック部材22とに弾性反発力を作用する。これにより、図16(b)に示すように、嵌合部23の第1外側面33及び第2外側面34は、それぞれ、嵌合孔部10の第1内側面13及び第2内側面14に押圧される。したがって、嵌合部23は、嵌合孔部10に安定した姿勢で保持される。
次に、術者は、図17(a)に示すように、ボールトライアル4を用意し、当該ボールトライアル4の挿通孔部58に、ネックトライアル本体21の突出部24の先端部24cを挿通する。これにより、図17(b)に示すように、ボールトライアル4の結合部58cは、弾性部材59を介して、突出部24の先端部24cに保持される。また、第4係合部54は、第3係合部53と係合することにより、ロック部材22の揺動を規制する。
この状態において、嵌合部23を嵌合孔部10から引き抜く力F1が生じた場合、第2係合部52の第2カム面52aは、第1係合部18の第1カム面18aから、ロック解除方向D3を向く成分を有する力F2を受ける。しかしながら、ロック部材22の揺動が規制されているので、ロック部材22は揺動せず、第2係合部52は、ロック解除方向D3へ揺動することはない。即ち、第1係合部18と第2係合部52とのロックは解除されず、ネックトライアル3は、ステムブローチ2から抜けない。
術者は、この状態で、患者の脚の可動領域、及びボールトライアル4の摺動状態等を確認する作業を行う。当該確認作業の間、第2係合部52が第1係合部18にロックされているので、ネックトライアル3は、ステムブローチ2から不用意に外れることはない。確認作業の結果、ネックトライアル3に装着されているボールトライアル4と同じ大きさの骨頭ボール(図示せず)を用いることが適当でないと判断された場合、術者は、球状部56の大きさの異なる別のボールトライアル4を用意する。そして、ネックトライアル3に装着されているボールトライアル4をネックトライアル3から取り外した後、用意した別のボールトライアル4を再度、ネックトライアル3に装着する。
一方、ネックトライアル3に装着されているボールトライアル4と同じ大きさの骨頭ボール(図示せず)を用いることが適当であると判断された場合、術者は、ボールトライアル4をネックトライアル3から取り外す。そして、ネックトライアル3を、ステムブローチ2から取り外す。
具体的には、図17(a)に示すように、ボールトライアル4がネックトライアル3から取り外されることにより、第3係合部53と第4係合部54との係合が解除される。これにより、ロック部材22の揺動規制が解除される。この状態で、ネックトライアル3の嵌合部23を嵌合孔部10から引き抜く力F1が生じた場合、第2係合部52の第2カム面52aは、第1係合部18の第1カム面18aから、ロック解除方向D3を向く成分を有する力F2を受ける。
このとき、ロック部材22の揺動規制が解除されているので、上記力F2(引き抜き力F1)が所定値に達すると、ロック部材22は、弾性部材46の弾性反発力に抗して、ロック解除方向D3へ変位する。その結果、図15(b)に示すように、嵌合部23を嵌合孔部10から引き抜くことが可能となり、ネックトライアル3は、術者の手に把持されて引っ張られることで、ステムブローチ2から取り外される。
術者によっては、大腿骨102の孔部102bにステムブローチ2を嵌め合わせた状態で、ステムブローチ2を大腿骨102の止血に利用しつつ、臼蓋側にシェル105(図示せず)を設置するための作業を行う。このように、孔部102bの位置、即ち、ステムの設置位置を決めた後にシェル105の設置位置を決めることにより、シェル105の設置位置を容易に決定することができる。
[大腿骨の近位部の端面を均す作業]
次に、大腿骨102の近位部102cの端面102dを切削して均す作業を説明する。この作業を行う際には、まず、図18(a)に示すように、大腿骨102の近位部102cにステムブローチ2を配置する。次に、アダプタ5及び切削部材6を用意する。そして、図18(b)に示すように、アダプタ5の嵌合部67を、嵌合孔部10に挿通し、更に
、アダプタ5の支柱68を、切削部材6の支柱挿通孔6fに挿通する。そして、この状態で、術者は、切削部材6を回転させることにより、大腿骨102の近位部102cの端面102dを切削し、当該端面102dを均す。切削部材6による端面102dの切削作業が完了した後は、切削部材6及びアダプタ5は、ステムブローチ2から取り外される。
以上説明したように、本実施形態の手術器具1によると、ボールトライアル4と、ステムブローチ2にロックされたネックトライアル3とをステムブローチ2に対して取り外す作業を、僅か2つの作業で容易に行うことができる。具体的には、前述したように、まず、術者は、ボールトライアル4をネックトライアル3から引き抜く第1作業を行う。これにより、ボールトライアル4の第4係合部54とロック部材22の第3係合部53との係合が解除され、ロック部材22の変位規制が解除される。次いで、術者は、ネックトライアル3をステムブローチ2から引き抜く第2作業を行う。この際、第2係合部52は、変位規制が解除されているので、ロック解除方向D3へ変位することができる。これにより、ネックトライアル3の引き抜き作業と同時に、第1係合部18と第2係合部52とのロック解除を行うことができる。よって、ネックトライアル3の引き抜き作業の前に、第1係合部18と第2係合部52とのロックを解除するためだけの作業を行う必要が無く、作業数の低減を通じて手術にかかる手間を少なくできる。
また、ネックトライアル3は、ステムブローチ2の嵌合孔部10から取り外すことが可能である。このため、嵌合孔部10にアダプタ5を取り付け、当該アダプタ5に、切削部材6等、ネックトライアル3以外の他の部材を支持させることができる。これにより、ネックトライアル3を装着するためのステムブローチ2の嵌合孔部10を、上記他の部材を保持するための孔部として兼用することができる。よって、上記他の部材の設置のために、ステムブローチ2を大腿骨102から取り外し、上記別の部材を設置するための部材を別途用意し、大腿骨に取り付けるという手間が必要無い。よって、手術に係る手間をより少なくできる。
更に、ネックトライアル3をステムブローチ2から取り外した状態の場合、手術器具1は、ステムブローチ本体8の近位部8aから突出する部分が無い。このため、ステムブローチ2を大腿骨102に取付けた状態において、患者の臼蓋101a側に処置を施す際に、手術器具1が邪魔にならずに済む。これにより、手術野を広く確保することができるので、手術の手間を低減することができる。従って、手術器具1によると、手術にかかる手間を低減することができる。
また、手術器具1によると、嵌合部23を嵌合孔部10から引き抜く力F1が生じた場合、第2係合部52の第2カム面52aは、第1係合部18の第1カム面18aから、ロック解除方向D3を向く成分を有する力F2を受ける。
これにより、ステムブローチ2をネックトライアル3から引き抜く作業の際に、第2カム面52aが第1カム面18aから受ける力によって、ロック部材22を、より確実にロック解除方向D3に変位させることができる。したがって、ロック解除作業の手間の低減を通じて、手術にかかる手間をより低減できる。
また、手術器具1によると、第1カム面18a及び第2カム面52aは、嵌合部23を嵌合孔部10から引き抜く方向(深さ方向D1の一方)に対して傾斜している。
これにより、ステムブローチ2をネックトライアル3から引き抜く作業の際、第2カム面52aは、第1カム面18aに対してスムーズに摺動することができる。これにより、術者は、ステムブローチ2をネックトライアル3から引き抜く作業を、小さい力でスムーズに行うことができ、手術にかかる手間をより少なくできる。
また、手術器具1によると、嵌合部23が嵌合孔部10に十分に深く挿入されることで、ロック部材22の第2係合部52は、第1係合部18に向かい合う位置に到達する。すると、第2係合部52は、弾性部材46の付勢力によって、第2係合部52側へ変位され、当該第2係合部52と係合する。したがって、術者は、嵌合部23を嵌合孔部10に挿入する作業を行うことにより、第2係合部52を第1係合部18に係合させる作業を一括して行うことができる。これにより、術者が行う作業をより少なくすることができるので、手術にかかる手間を、より少なくすることができる。また、ネックトライアル3の嵌合部23がステムブローチ2の嵌合孔部10に嵌合しているとき、第2係合部52は、弾性部材46の付勢力によって、第1係合部18側に付勢される。これにより、ボールトライアル4をネックトライアル3から外した際にも、第2係合部52は、第1係合部18に軽くロックされた状態を維持することができる。その結果、ボールトライアル4をネックトライアル3から取り外した際に、ネックトライアル3がステムブローチ2から勝手に抜けることを抑制できる。このように、ネックトライアル3の意図しない抜けを抑制できる結果、術者は、ネックトライアル3に向ける注意を少なくすることができるので、手術にかかる手間をより低減することができる。また、ネックトライアル3を孔部から引き抜くための力F1が所定値に達すると、ロック部材22は、弾性部材46の弾性反発力に抗して、ロック解除方向D3へ変位することができる。これにより、ネックトライアル3をステムブローチ2に対して引っ張るという僅かな1つの作業で、第2係合部52と第1係合部18とのロックを解除し、且つ、ネックトライアル3をステムブローチ2から引き抜くことができる。よって、ネックトライアル3をステムブローチ2から容易に取り外すことができる。
また、手術器具1によると、ロック部材22は、ネックトライアル本体に対して支軸48回りに揺動可能に支持されている。
これにより、ロック部材22とネックトライアル本体21とを連結する構成を簡素にすることができる。また、このような簡素な構成であるので、ロック部材22をネックトライアル本体21に支持する構造が大型化せずに済み、ネックトライアル3を小型にすることができる。
また、手術器具1によると、第2受け部47が設けられていることにより、ロック部材22がロック解除方向D3へ過度に変位することを抑制できる。このため、ステムブローチ2が意図しない動きを生じることを抑制できる。これにより、ネックトライアル3の取り扱いをより容易にすることができる。その結果、手術にかかる手間を、より低減することができる。
また、手術器具1によると、第1受け部44が設けられていることにより、ロック部材22がロック方向D2へ過度に変位することを抑制できる。即ち、ロック部材22がネックトライアル本体21から過度に突出することを抑制できる。このため、ネックトライアル3をステムブローチ2に取り付ける際に、ロック部材22がステムブローチ2の嵌合孔部10の周囲に接触してロック部材22を挿入することができない事態を防止できる。これにより、ネックトライアル3をステムブローチ2に挿入する際に必要な注意を少なくでき、ネックトライアル3をステムブローチ2に取り付ける手間を、より低減することができる。
また、手術器具1によると、ボールトライアル4をネックトライアル本体21の突出部24の先端部24cに嵌合させることにより、ボールトライアル4の第4係合部54を、突出部24の先端部24cから突出する第3係合部53に係合させることができる。したがって、ボールトライアル4をネックトライアル本体21に嵌合させる作業を行うことで、第3係合部53と第4係合部54とを係合させる作業も一括して行うことができる。これにより、手術にかかる手間を、より低減することができる。
また、手術器具1によると、嵌合孔部10にアダプタ5を取り付け、更に、アダプタ5に切削部材6を取り付けることができる。これにより、切削部材6をアダプタ5及びステムブローチ2によって安定して支持した状態で、術者は、切削部材6を動かすことができる。これにより、術者は、大腿骨102の近位部102cの端面102dを容易に切削することができるので、手術にかかる手間を、より低減することができる。
また、手術器具1によると、嵌合孔部10にアダプタ5の嵌合部23を取り付け、更に、アダプタ5の支柱68に、切削部材6を取り付けることができる。これにより、切削部材6を、アダプタ5及びステムブローチ2によって安定して支持した状態で、切削部材6を動かすことができる。これにより、術者は、大腿骨102の近位部102cの端面102dを容易に切削することができるので、手術にかかる手間を、より低減することができる。また、アダプタ5をステムブローチ2から取り外した状態のとき、手術器具1は、ステムブローチ本体8の近位部8aから突出する部分が無い。このため、ステムブローチ2を大腿骨102に取付けた状態において、患者の臼蓋101a側に処置を施す際に、手術器具1が邪魔にならずに済む。これにより、手術野を広く確保できるので、手術の手間を低減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)前述の実施形態では、ボールトライアルの外側面が、球状部と面取り部とを含む形態を例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、ボールトライアルの外側面は、球状部に形成された二面幅部を更に有していてもよい。二面幅部は、互いに平行な平坦面であり、術者によって把持される。このような二面幅部を設けることで、術者は、ボールトライアルをネックトライアルに対して着脱する作業を、より容易に行うことができる。
(2)前述の実施形態では、ロック部材は、支軸を介してネックトライアル本体に揺動可能に支持される形態を例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、ロック部材は、ネックトライアル本体に対して、直線方向にスライド可能に支持されていてもよく、ネックトライアル本体に対するロック部材の支持の形態は、特に限定されない。
(3)前述の実施形態では、ロック部材の第3係合部は、ネックトライアル本体の突出部の長手方向に沿って突出部から突出する形態を例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図19に示すように、ロック部材22の第3係合部53Aは、突出部24の長手方向と交差する方向に沿って突出部24から突出していてもよい。この場合、第3係合部53Aは、突出部24の中間部24bに形成された孔部(図示せず)を通ってネックトライアル本体21の外方に突出している。ボールトライアル4の面取り部57には、第4係合部54Aが形成されている。第4係合部54Aは、第3係合部53Aに係合することにより、ロック部材22の揺動を規制する。
この場合、ボールトライアル4をネックトライアル本体21の突出部24の先端部24cに嵌合させることにより、ボールトライアル4の第4係合部54Aを、第3係合部53Aに係合させることができる。したがって、ボールトライアル4をネックトライアル本体21に嵌合させる作業を行うことで、第3係合部53Aと第4係合部54Aとを係合させる作業も一括して行うことができる。これにより、手術にかかる手間を、より低減することができる。
(4)前述の実施形態では、アダプタは、嵌合孔部に対して、すきまばめ又は中間ばめとなるように嵌合される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、アダプタの内部にボールプランジャ等の付勢部材を設け、当該付勢部材をアダプタの第5側面からアダプタの外方に突出させてもよい。これにより、アダプタの第1外側面及び第2外側面を、嵌合孔部の第1内側面及び第2内側面に押圧することができ、アダプタを、嵌合孔部に、より確実に保持しておくことができる。
(5)前述の実施形態では、ステムブローチに関して、嵌合孔部の底面は、ステムブローチの近位端面と平行に延びている形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。嵌合孔部の底面は、曲面等、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。また、嵌合孔部の第1〜第5内側面は、それぞれ、平坦面である形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第1〜第5内側面は、それぞれ、曲面等、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。
(6)前述の実施形態では、ネックトライアルに関して、嵌合部の底面は、突出部の端面と平行に延びる平坦面である形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ネックトライアルの嵌合部の底面は、曲面形状、及び多角錐形状等、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。また、ネックトライアルの嵌合部の第5外側面は、当該嵌合部の第3外側面及び第4外側面に対して直交する平坦面である形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ネックトライアルの嵌合部の第5外側面は、曲面形状等、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。ネックトライアルの嵌合部の第1〜第4外側面のそれぞれについても同様に、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。
(7)前述の実施形態では、アダプタに関して、嵌合部の底面は、嵌合部の天面と平行に延びる平坦面である形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。アダプタの底面及び天面は、それぞれ、曲面形状、及び多角錐形状等、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。また、アダプタの嵌合部の第5外側面は、当該嵌合部の第3外側面及び第4外側面に対して直交する平坦面である形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。アダプタの嵌合部の第5外側面は、曲面形状等、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。アダプタの嵌合部の第1〜第4外側面のそれぞれについても同様に、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。
(8)前述の実施形態では、ブローチハンドルに関して、嵌合部の底面は、当該嵌合部の外側面と直交する平坦面である形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ブローチハンドルの嵌合部の底面は、それぞれ、曲面形状、及び多角錐形状等、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。また、ブローチハンドルの嵌合部の第5外側面は、当該嵌合部の第3外側面及び第4外側面に対して直交する平坦面である形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ブローチハンドルの嵌合部の第5外側面は、曲面形状等、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。ブローチハンドルの嵌合部の第1〜第4外側面のそれぞれについても同様に、平坦面以外の形状に形成されていてもよい。
(9)前述の実施形態では、ネックトライアル本体に関して、嵌合部に対して傾斜するように突出部が延びている形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ネックトライアル本体の嵌合部と突出部とは、同軸に形成されていてもよい。即ち、ネックトライアル本体の嵌合部の第1軸線と、ネックトライアル本体の突出部の第2軸線とは、一致していてもよい。また、これら第1軸線の位置と第2軸線の位置とは、ずれていてもよい。
(10)前述の実施形態では、手術器具は、ステムブローチと、ネックトライアルと、ボールトライアルと、アダプタと、切削部材と、ブローチハンドルと、を備える形態を例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、手術器具は、ステムブローチと、ネックトライアルと、ボールトライアルとを備える構成であってもよい。また、手術器具は、ステムブローチとアダプタとを備える構成であってもよい。
本発明は、患者の関節を人工股関節に置換する手術において用いられる、人工股関節置換術用手術器具として、広く適用することができる。
1 人工股関節置換術用手術器具
2 ステムブローチ
5 アダプタ
6 切削部材
6f 支柱挿通孔(挿通孔)
8 ステムブローチ本体
8a ステムブローチの近位部
8d ステムブローチ本体の外側面
9 刃部
10 嵌合孔部
67 アダプタの嵌合部
68 支柱
70 天面
102 大腿骨
102b 孔部
102c 大腿骨の近位部
103 ステム

Claims (5)

  1. 患者の大腿骨の近位部に、ステムが配置される孔部を形成するためのステムブローチと、
    前記近位部の端面を切削するための切削部材を前記ステムブローチに接続するためのアダプタと、
    前記切削部材と、
    を備え、
    前記ステムブローチは、ステムブローチ本体と、当該ステムブローチ本体の外側面に形成された刃部と、前記ステムブローチ本体の近位部に形成された嵌合孔部と、を含み、
    前記アダプタは、前記嵌合孔部に対して着脱可能な嵌合部と、当該嵌合部から突出する支柱と、を含み、
    前記支柱は、前記切削部材が前記近位部の端面を切削する動作を許容するように、前記切削部材を支持可能であり、
    前記嵌合孔部は、前記嵌合部全体を収容可能に構成され、
    前記切削部材は、軸部を有し、この軸部に、前記支柱に嵌合可能な挿通孔が形成されており、
    前記切削部材は、前記支柱に前記挿通孔が挿通された状態において、前記支柱に対して回転自在であり、
    前記切削部材の前記軸部の一端面に、前記近位部を切削するための刃形成部が形成され
    前記嵌合部は、前記支柱が設けられる天面を有し、
    前記天面は、前記ステムブローチ本体の近位端面と面一に配置され、
    前記刃形成部は、前記近位端面および前記天面と面一に並ぶことが可能に配置されているとともに、前記ステムブローチ本体の近位部との接触によって回転規制されるように配置されていることを特徴とする、人工股関節置換術用手術器具。
  2. 請求項1に記載の人工股関節置換術用手術器具であって、
    前記嵌合孔部および前記嵌合部は、それぞれ、前記ステムブローチの厚み方向と直交する方向に細長く延びる五角形形状に形成されていることを特徴とする、人工股関節置換術用手術器具。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の人工股関節置換術用手術器具であって
    記天面は、前記ステムブローチの厚み方向と直交する方向に延びる形状に形成されていることを特徴とする、人工股関節置換術用手術器具。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の人工股関節置換術用手術器具であって、
    前記ステムブローチに着脱可能に構成され前記ステムブローチを操作するためのブローチハンドルと、
    前記ステムブローチに着脱可能に構成されるとともにボールトライアルを着脱可能なネックトライアルと、
    をさらに備え、
    前記ブローチハンドルおよび前記ネックトライアルは、前記嵌合孔部に挿入可能な嵌合部を含んでいることを特徴とする、人工股関節置換術用手術器具。
  5. 請求項4に記載の人工股関節置換術用手術器具であって、
    前記ステムブローチの前記嵌合孔部の内側面は、係合部を含み、
    前記ブローチハンドルおよび前記ネックトライアルに設けられた抜け止め用部材に、前記係合部が係合可能に構成されていることを特徴とする、人工股関節置換術用手術器具。
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