JP6160129B2 - 定着装置、及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は複写機、ファクシミリ、プリンタなどの電子写真式画像形成装置に使用される定着装置に関し、より具体的には無端状の定着部材と、加圧部材との間にニップ部を形成し、該ニップ部を通る記録媒体上のトナー画像を定着処理する定着装置、及びその定着装置を搭載した画像形成装置に関するものである。
プリンタ、複写機、ファクシミリなどの画像形成装置に対し、近年、省エネルギー化、高速化といった市場要求が強くなってきている。
画像形成装置は、電子写真記録、静電記録、磁気記録等の画像形成プロセスにより、画像転写方式もしくは直接方式により、未定着トナー画像を記録材シート、印刷紙、感光紙、静電記録紙などの記録媒体上に形成する。未定着トナー画像を定着させるための定着装置としては、熱ローラ方式、フィルム加熱方式、電磁誘導加熱方式等の接触加熱方式による定着装置が広く採用されている。
このような定着装置の一例として、ベルト方式の定着装置(例えば、特許文献1:特開2004−286922公報)や、セラミックヒータを用いたサーフ定着(フィルム定着)方式の定着装置(例えば、特許文献2:特許第2861280号)が知られている。
ベルト方式の定着装置では、近年、さらなるウォームアップ時間(電源投入時等の常温状態から印刷可能なリロード温度までに要する時間)や、ファーストプリント時間(印刷要求を受けた後で、印刷準備を経て印字動作を行い排紙が完了するまでの時間)の短縮化が望まれている(課題1)。
また、画像形成装置の高速化に伴い、単位時間当たりの通紙枚数が増え、必要熱量が増大しているため、特に連続印刷の当初において熱量が不足する不具合、所謂、温度落ち込みが問題となり、解決が望まれている(課題2)。
課題1を解決する方法として、セラミックヒータを用いたサーフ定着が提案されている。このサーフ定着方式によれば、ベルト方式の定着装置に比べて低熱容量化、小型化を可能とすることができる。しかし、ニップ部のみを局所加熱しているため、その他の部分は加熱されておらず、ニップ部の用紙入口においてベルトが最も冷えた状態にあり、定着不良が発生しやすくなるという問題がある。
また、ベルト方式の高速機においては無端ベルトの回転が速く、ニップ部以外での無端ベルトの放熱が多くなるため、より定着不良が発生しやすくなるという問題がある(課題3)。
以上のような課題1〜3を解決するために、無端ベルトを用いる構成において、無端ベルト全体を温めることを可能にし、加熱待機時からのファーストプリントタイムを短縮することができ、かつ高速回転時の熱量不足を解消して、高生産の画像形成装置に搭載されても、良好な定着性を得ることができるようにした定着装置が提案されている(特許文献3:特開2007−334205公報)。
図10は特許文献3に記載された定着装置の概略図である。無端ベルト201の内部に固定されたパイプ状の金属熱伝導体202は、無端ベルト201の回転方向への移動をガイドするように配置されており、金属熱伝導体202内の熱源203により金属熱伝導体202を介して無端ベルト201を加熱する。さらに無端ベルト201を介して金属熱伝導体202に接することにより、ニップ部Nを形成する加圧ローラ204を備え、加圧ローラ204の回転に連れ回りするようにして無端ベルト201を周方向に移動させる。この構成により、定着装置を構成する無端ベルト全体を温めることを可能にし、加熱待機時からのファーストプリントタイムを短縮することができ、かつ高速回転時の熱量不足を解消することが可能となっている。
更なる省エネ性、及びファーストプリントタイム向上のために、無端ベルトを金属熱伝導体を介して間接的に加熱する構成から、無端ベルトを(金属熱伝導体を介さずに)直接加熱する構成が提案されている。この構成では伝熱効率を大幅に向上させることにより消費電力を低減すると共に、加熱待機時からのファーストプリントタイムを更に短縮することができる。また、金属熱伝導体レスによるコストダウンが可能となる。しかしこの構成では、急速な昇温により発生した熱応力でベルトが変形するという問題が発生し、急速な昇温を抑制するための制御が必要となる。
従来、機内の温度上昇を抑制してトナーの凝集を抑えるためにファンによる対流で発熱部を冷却し、異常画像の出力を防ぐ定着装置が提案されている(特許文献4:特開平11−174941号公報、特許文献5:特開2004−226806公報。また、定着装置周辺部材の耐熱温度以下に保つためにファンによる冷却を行う構成が提案されている(特許文献6:特開2001−235997公報)。
しかし、いずれの従来例も比較的長時間での機内温度上昇を想定した空冷による放熱構成であり、省エネ性及びファーストプリントタイム向上のために低熱容量の無端ベルトを局部的に直接加熱する定着装置における急速な温度上昇に対応することは難しい。
以上のように、従来、省エネ性、及びファーストプリントタイムを向上させて、熱効率を更に高める方法として、無端ベルト状の定着部材を、その内側に配置した金属熱伝導体を介して間接的に加熱する構成から、無端ベルトを金属熱伝導体を介さずに直接加熱する構成が提案された。しかし、金属熱伝導体がなくなったことで無端ベルトを支える手段がなくなり、強度不足に陥った無端ベルトが変形、破損する事態が多発し、異常画像の出力に繋がった。特に瞬間的に無端ベルトが局部的に温度上昇することに起因した熱応力による変形が課題となった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、定着部材として低熱容量化された無端状の定着ベルトを用いると共に、内部の熱源により直接定着ベルトを加熱するようにした定着装置において、定着ベルトの急速な昇温を防止して熱応力による定着部材の変形とそれに起因した異常画像を防止することができる定着装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の定着装置は、熱源と、該熱源を内部に有して回転自在に支持され、且つ該熱源と対向した被加熱部位を加熱される無端状の定着部材と、前記被加熱部位を回避した前記定着部材の外周面と接してニップ部を形成する加圧ローラと、を備えた定着装置であって、前記被加熱部位は前記熱源と対向して直接加熱され、前記定着部材の回転速度が正規の回転速度よりも低下し、前記熱源から前記被加熱部位に単位時間当たりに与えられる熱エネルギーが所定値を越える場合に、対流により前記被加熱部位を冷却する対流手段を備えたことを特徴とする。














本発明によれば、省エネ性、及びファーストプリントタイム向上のための低熱容量化による定着ベルトの強度低下と、それに起因した定着ベルトの変形、破損を、対流手段によって高温化する部位の熱ネルギーをコントロールすることで防止して異常画像を防ぎ、品質が高く省エネ性の高い定着装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の構成説明図である。 本発明の一実施形態に係る定着装置を示す構成図である。 定着ベルトが回転を停止している室温状態から電力投入した後の時間経過に伴う電力と熱源の温度上昇との関係を示したグラフ図である。 定着ベルトが局部的に変形した状態を示す図である。 (a)及び(b)は強制対流手段の構成例を示す定着装置の断面図、及び概略構成を示す斜視図である。 強制対流手段を作動させる場合の手順を示したフローチャートである。 連続通紙直後のオーバーシュート温度(温度遷移)を示すグラフ図である。 画像形成装置による画像形成動作が停止された時に強制対流手段を作動させる手順を示すフローチャートである。 (a)は三本ヒータタイプの熱源を示した略図であり、(b)は二本ヒータタイプの熱源を示した略図である。 特許文献3に記載された定着装置の概略図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は本発明の定着装置を備えた画像形成装置の一例の構成について説明する図である。
画像形成装置1は、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式を用いるカラープリンタあるが、本発明はこの方式に限ることはなく、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
画像形成装置1は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成されたトナー像が、各感光体ドラムに対峙しながら矢印A1方向に移動する無端ベルトである中間転写体(以下、転写ベルトという)11に対して1次転写されて夫々のトナー像が重畳転写される。その後、記録紙等の記録媒体Pに対して一括転写(1次転写)される。
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されている。ブラック画像形成を行う感光体ドラム20Bkを対象として説明すると、感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bk、現像装置40Bk、1次転写ローラ12Bk及びクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込み(静電潜像形成)には、光書込装置8が用いられる。
転写ベルト11は、駆動ローラ72及び従動ローラ73により支持されている。
転写ベルト11に対する各色トナー像の重畳転写では、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの上方には、転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkを備えた転写ベルトユニット10が対向配設される。更に、転写ベルト11に従動し、連れ回りする2次転写ローラ5と、転写ベルト11に対向配設され転写ベルト11上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置13が配置されている。
更に、各感光体ドラムと転写ベルト11との間の2次転写部に向けて搬送される記録媒体を積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた記録媒体を、トナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、各感光体ドラムと転写ベルト11との間の2次転写部に向けて繰り出すレジストローラ対4と、記録媒体の先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサとが設けられている。
更に、画像形成装置1には、トナー像が転写された記録媒体Pにトナー像を定着させるためのベルト定着方式の定着ユニットとしての定着装置100と、定着済みの記録媒体を画像形成装置1の本体外部に排出する排紙ローラ7と、画像形成装置1の本体上部に配設されて排紙ローラ7により排出された記録媒体を積載する排紙トレイ17と、排紙トレイ17の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9C、9M、9Bkとが備えられている。
シート給送装置61は、最上位の記録媒体の上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の記録媒体をレジストローラ対4に向けて給送する。
図2は本発明の一実施形態に係る定着装置を示す構成図である。
定着装置100は、そのケーシング内部に無端状(環状)の定着部材としての定着ベルト101と、ハロゲンヒータ等から成る熱源105と、加圧部材としての加圧ローラ150と、を有し、熱源105により定着ベルト101が内周側から直接加熱される。
無端状の定着ベルト101の内部には、定着ベルト101を介して対向する加圧ローラ150とニップ部Nを形成するニップ形成部材120があり、定着ベルト内面と直接(もしくは、図示しない摺動シートを介して間接的に)摺動する。
図2ではニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状であっても良い。ニップ部の形状は凹形状の方が、記録媒体先端の排出方向が加圧ローラ寄りになり、分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。
定着ベルト101は、ニッケルやSUSなどの金属薄板や、ポリイミドなどの樹脂材料から成る薄板を基材として用いた無端ベルト(或いは、フィルム)である。定着ベルトの基材表層には、PFA層、PTFE層などの離型層を形成し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。定着ベルトの基材と離型層との間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があっても良い。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム層を100[μm]以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
定着ベルト101の内部にはニップ形成部材120を支持するための支持部材122(ステー)を設け、加圧ローラ150により圧力を受けるニップ形成部材120の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。支持部材122は軸方向両端部を、定着ベルトの両端部を回転自在に保持する保持部材125(フランジ)により保持固定され位置決めされている。また、熱源105と支持部材122との間に反射部材127を備え、熱源105からの輻射熱などにより支持部材122が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費を抑制している。ここで反射部材127を備える代わりに、支持部材122表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることか可能となる。
熱源105は、図示したハロゲンヒータでも良いが、IH(Induction Heating)であっても良いし、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であっても良い。
加圧ローラ150は芯金151の周面に弾性ゴム層152を備えており、離型性を得るために表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。加圧ローラ150は画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源155からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。また、加圧ローラ150はスプリングなどにより定着ベルト101側に押し付けられており、弾性ゴム層152が押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有している。加圧ローラ150は中空のローラであっても良く、加圧ローラ150にハロゲンヒータなどの熱源を有していても良い。弾性ゴム層152はソリッドゴムでも良いが、加圧ローラ150内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いても良い。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルトの熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
定着ベルト101は、駆動源155により回転する加圧ローラ150からの駆動力がニップ部Nで定着ベルトに伝達されることにより回転する。定着ベルト101は、ニップ部Nでは加圧ローラと支持部材122との間に挟み込まれて回転し、ニップ部以外(軸方向両端部)では両端開口部内周を保持部材125(フランジ)により保持されて回転自在にガイドされる。
上記のような構成により安価で、ウォームアップが速い定着装置を実現することが可能となる。
<実施形態例>
以下、定着装置100内に、無端状の定着部材としての定着ベルト101と、加圧部材としての加圧ローラ150を有し、熱源としてのハロゲンヒータ105により定着ベルト101の特定部位(被加熱部位H)を内周側から輻射熱を利用して直接加熱する構成について例示的に説明する。
この実施形態に係る定着装置100は、固定された熱源105と、熱源を内部に有して回転自在に支持され、且つ熱源と対向した被加熱部位Hを加熱される無端状の定着ベルト(定着部材)101と、定着ベルトの回転停止時、或いは回転速度の低下時に熱源から被加熱部位に単位時間当たりに与えられる熱エネルギーが所定値を越える場合に、強制対流(対流)により被加熱部位から熱を奪って周方向温度(及び軸方向温度)を均一化させる強制対流手段(対流手段)160を備えた構成が特徴的である。
室温中における定着ベルトの非回転状態からの立ち上げによる温度上昇時や、連続通紙後に印刷を停止した時に、定着ベルト内に蓄えられた熱(ヒータガラス管への蓄熱、ステイへの蓄熱)は、熱源105に最も近く、且つ反射部材127からの輻射熱を直接受ける被加熱部位Hに指向的、集中的に伝わり、局所的に温度を急激に上昇させる。
被加熱部位Hには、格別に図示しないサーミスタ(温度センサ)を配置し、被加熱部位の温度が規定値を越えた場合のみに強制対流手段160としてのファンを駆動して送風して冷却する。定着ベルト101の温度、特に過熱されやすい被加熱部位H分の温度は常時温度検知手段(サーミスタ)166でモニターしており、ある一定の温度を越えたことが検知されると、制御手段156がファンを駆動して送風冷却する。一箇所が過熱状態になる場合とは、加圧ローラが停止しているために定着ベルトが回転せずに熱源からの熱を一箇所に集中的に受ける場合と、加圧ローラが回っているにもかかわらず定着ベルトが回転していない(スリップ)ことにより一箇所に集中的に熱を受ける場合と、種々の原因により定着ベルトの回転速度が正規値よりも低下している場合を想定している。
図3は、定着ベルトが回転を停止している室温状態から電力投入した後の時間経過に伴う電力と熱源の温度上昇との関係を示したグラフである。
約1200Wの電力投入に対して温度上昇率は最大45℃/sとなるため、図2中の被加熱部位Hが熱エネルギーを集中的に受け、定着ベルトに周方向の温度偏差が形成されて熱応力が発生し、図4中に示したように定着ベルト101に凹み状の変形が発生する。変形が発生した定着ベルトは画質の劣化をもたらすため、交換が必要となる。
定着ベルトの両端部が保持部材125により支えられている構成では、定着ベルトの長手方向の温度偏差が同じ程度であっても、長手方向中央の変形量が一番大きくなり、定着ベルトの変形は長手方向の中央付近に集中して多発する。またポリイミドベルトに代表される樹脂やゴムのように弾性の大きい定着ベルトは、熱応力により変形しても復元されるため熱応力の影響はない。しかし、板厚が1mm以下の薄い金属ベルトにおいては、弾性域を超える変形は塑性変形による凹み状の変形をもたらし、この変形部位が画像に反映されて出力されるため、温度偏差を解消することが必要となる。
30秒以下の短時間で定着ベルトの熱変形が起こらない温度上昇率は、実測結果によれば3℃/s程度であることが判明しており、この許容温度上昇率以上の熱量を投入する場合には熱源の電力構成を見直すか、或いは空気流によって温度上昇部位の熱を強制的に奪う手段、即ち強制対流手段160を設けることで定着ベルトの熱変形を防ぐことが可能となる。
<強制対流手段>
強制対流手段160は、被加熱部位Hに対して、単位時間当たりに急激に、許容温度上昇率を超えて熱エネルギーが与えられた場合に、空気を強制対流させることにより熱を空気に伝達させて奪う手段である。例えば、画像形成装置内部には機内の温度上昇を抑えるファンが設けられているが、このファンを利用して定着装置内部に空気の流路を形成し放熱させることができる。この際、加温された空気は上方へ移動するため、被加熱部位Hの下方から上方へ向けて空気を流すことで効率良く熱伝達させて被加熱部位Hの温度を低下させることが可能となり、定着ベルトの変形を防止できる。ファンとしては、機内温度上昇抑制用のファンと、定着装置の放熱用のファンを併用して良いし、定着装置内部に定着ベルトからの放熱用のファンを別途設けても構わない。
ファンは、被加熱部位Hの下方から上方へ向けて空気を移動させることにより、該被加熱部位を冷却するが、ファン自体は被加熱部位の下方(吸入口)に配置しても上方(排出口)に配置してもよい。また、送風される空気が出来るだけ被加熱部位Hに沿って軸方向へ移動するように送風経路を選定することが好ましい。
図5(a)及び(b)は強制対流手段の構成例を示す定着装置の断面図、及び概略構成を示す斜視図である。
ファン162を回転させた際の定着装置100内における空気の流量は通風抵抗により変化するため、定着装置内部に最適な空気の流路を形成する必要がある。
図5(a)の断面図に示すように定着装置の外ケース、或いは外装カバー180の、定着ベルト101の下方側と上方側に夫々空気の吸入口181と排出口182を設ける。更に(b)に示すように、吸入口と排出口との間に相当する定着装置内部にガイド、ルーバー等の導風手段164を設ける。ファン162は、この例では、排出口側に設けているが、吸入口に設けても良い。ファン162を駆動して、吸入口から外気を導入し、被加熱部Hの外側面に対して冷却風を供給する。このことにより、被加熱部位を最も効率的に冷却するための空気流路を定着装置内に形成し、定着ベルト側に優先的に空気を流して、被加熱部位Hからの放熱を効率化できる。また、導風手段164は、定着装置の外ケースや外装カバーに一体に設けても構わないし、別の部品として設置しても構わない。
図6は上記実施形態において強制対流手段160を作動させる場合の手順を示したフローチャートである。
画像形成装置1が画像形成動作を開始して定着装置が定着動作を開始すると、温度検知手段166が定着ベルトの被加熱部位Hの温度をモニター開始し、定着ベルトの回転数がスリップ状態にあると見なし得る程度(許容範囲を下回っている値)まで低下(停止を含む)しており、且つ被加熱部位Hの温度が正常温度を超えた場合には、制御手段156が強制対流手段160であるファンを駆動させる(S1〜S6)。
その後、被加熱部位Hの温度が正常値に戻った場合には(S6、YES)、強制対流手段160を停止させる(S7)。
次に、図2の装置構成において、経時的に定着ベルト101の摺動負荷が増加した場合には、加圧ローラ150が回転する一方で、加圧ローラに連れ回りする筈の定着ベルトがスリップを起こして回転停止と似た状態となる。この場合には、熱源105から、熱源と対向する定着ベルトの被加熱部位Hに対して継続的に熱エネルギーが与えられるため、被加熱部位が局所的に急激に温度上昇して過熱する。
被加熱部位Hの温度状況は、温度検知手段166(サーミスタ)が検知する。
本実施形態では、定着ベルト101の回転停止時、或いは回転速度が正規の値よりも低下した時に、定着ベルトの一定範囲(被加熱部位H)に与えられる熱エネルギーが許容範囲を越える条件となった場合に、ファンを駆動する等して定着ベルトの被加熱部位から強制対流により熱を奪うようにしている。
定着ベルトのスリップの程度が僅かである場合には、画像形成装置の制御手段156は異常発生とは判断しないために、熱源を点灯させたまま画像形成を継続しようとする。このため、図2中に示した被加熱部位Hが反射部材127からの熱エネルギーを集中的に受けることとなり、定着ベルト101に図4に示した如き変形を生じさせる。
なお、スリップの有無、スリップの程度は、定着ベルトの適所に設けたロータリーエンコーダ(回転速度検知手段165)により定着ベルトの回転速度、回転速度の変化を検知することにより、制御手段は知ることができる。
また、経時などで定着ベルトの摺動負荷が増加して回転速度が低下したり、停止することがある。即ち、定着ベルトの内面は、経時的に表面性が悪化することにより摩擦抵抗が大きくなる。このため、両端を支持する保持部材125との間の抵抗が増大することがあり、定着ベルトが回転しにくくなる。
このような不具合に対しても、図5に示した構成例のように、強制対流手段160を用いて被加熱部位Hを適時強制冷却することにより、単位時間当たりの急激な温度上昇を抑制することができる。即ち、定着ベルトの速度が正規の値を下回った時に、被加熱部位Hへ供給される過剰な熱エネルギーを強制対流手段による冷却空気の送風によって逃がすことにより、被加熱部位が許容温度を越えて上昇することを防止し、被加熱部位の変形を防止することができる。
定着ベルト101の回転停止時、或いは回転速度が正規の値よりも低下した時に強制対流手段160を作動させる手順は、図6のフローチャートによる。なお、本実施形態ではステップ3において定着ベルトが回転していても、回転速度が正規値よりも低い場合(スリップ発生時)にはステップ4へ進んで温度検知を行う。
次に、異常検知による画像形成動作の停止、電源OFFによる画像形成装置本体への電力供給停止、カバーオープンによる画像形成動作停止時等には、定着モータから加圧ローラへの駆動力伝達が停止され、加圧ローラ及び定着ベルトが回転を停止させる。
連続して画像形成を行っている途中で画像形成動作が緊急停止されて定着ベルトの回転停止が起きると、連続通紙直後のオーバーシュート温度(温度遷移)を示す図7のグラフのように、定着ベルト内部に蓄熱された熱が、熱源105に最も近く、且つ反射部材127からの反射熱が集中する被加熱部位Hに指向的に伝わり、局所的に急激に熱エネルギーが与えられる。被加熱部位が許容温度を超えた過熱状態になると、定着ベルト101に図4に示した如き変形を生じさせる。
このような不具合に対しても、図5に示した構成例のように、強制対流手段160を用いて被加熱部位Hを適時強制冷却することにより、単位時間当たりの急激な温度上昇を抑制することができる。即ち、被加熱部位Hへ供給される過剰な熱エネルギーを強制対流手段による冷却空気の送風によって逃がすことにより、被加熱部位が許容温度を越えて上昇することを防止し、被加熱部位の変形を防止することができる。
画像形成装置による画像形成動作が停止された時に強制対流手段160を作動させる手順は、図8のフローチャートによる。
即ち、画像形成装置1が画像形成動作を開始すると定着装置が定着動作を開始するが(S11、S12)、画像形成動作が停止すると(S13、YES)、温度検知手段166が定着ベルトの被加熱部位Hの温度をモニターし、被加熱部位Hの温度が正常温度を超えた場合には、制御手段156が強制対流手段160であるファンを駆動させる(S14、15)。
その後、被加熱部位Hの温度が正常値に戻った場合には(S16、YES)、強制対流手段160を停止させる(S17)。
次に、定着ベルトの回転停止状態、或いは回転速度が低下した場合に、熱源105からの熱が反射部材127により反射されて輻射熱として伝わる被加熱部位Hが最高温度になることは上述の通りである。この被加熱部位を冷却するために、その周辺に空気を流し、熱を逃がすことが定着ベルトの変形を抑制するのに最も効果がある。
ところで、定着装置には、記録媒体のサイズの違いに対応するために複数本の熱源(ヒーター)を定着ベルト101内に配置したものがある。
図9(a)は三本ヒータタイプの熱源を示した略図であり、(b)は二本ヒータタイプの熱源を示した略図である。
これらの複数のヒータを備えた定着装置の場合は、記録媒体の幅方向寸法の違い、搬送位置の違いに応じて発熱させるヒータが異なるため、定着ベルトの停止時における定着ベルトの温度が定着ベルトの周方向で異なるばかりでなく、軸方向でも異なってくる。つまり、点灯していないヒータと対向する定着ベルト部分は過熱状態にならない。過熱により最高温度になる部分は、ヒータの電力密度が最大となる部分であり、その部分が最も熱応力が大きい部分となる。このように、定着ベルトが最高温度になる箇所はヒータの配光構成や印刷モードなどを考慮して決定し、最高温度に達した部分のみに送風して強制冷却すればよい。
なお、定着ベルトが最高温度に達するのは、ヒータの電力密度が高く、且つ記録媒体サイズよりもヒータ発光長が長いために熱が記録媒体に奪われずに定着スリーブに直接伝わる通紙状態となる場合である。ヒータの電力密度や記録媒体サイズを1条件に統一できるのであれば、強制対流させるタイミング、ガイドの構造、冷却風を流す部位についても、最高温度に達する部位を一箇所に絞ることができる筈である。しかし、ヒータや記録媒体サイズのパターンは無限に存在するため、最高温度に達するのは電力密度が高く、かつ記録媒体の幅方向サイズを越えた位置にヒータがある場合である。
ガイドの構造、冷却風を流す部位についても、最高温度に達する部位の違いに応じて選定する。
<構成、作用、効果のまとめ>
第1の本発明に係る定着装置100は、固定された熱源105と、該熱源を内部に有して回転自在に支持され、且つ該熱源と対向した被加熱部位Hを加熱される無端状の定着部材(定着ベルト)101と、被加熱部位を回避した定着部材の外周面と接してニップ部Nを形成する加圧ローラ150と、を備え、定着部材の回転停止時、或いは正規の回転速度よりも低下した時に、熱源から被加熱部位に単位時間当たりに与えられる熱エネルギーが所定値を越える場合に、強制対流により被加熱部位から熱を奪う強制対流手段160を備えている。
この構成によれば、定着ベルトが回転停止、或いは回転速度が正規速度よりも低下した時に過熱状態となる被加熱部位Hを送風により冷却することにより、定着ベルトの周方向温度、或いは軸方向温度を均熱化し、被加熱部位の局部的な熱応力変形を防止することができる。このため、通常の稼動時における熱量の損失をなくし、かつ不要な摺動負荷を減らすことができる。
定着ベルトの変形が抑制されることにより、異常画像の発生を防止することができ、定着ベルトの低熱容量化による強度低下を防ぐと共に、省エネ性を両立させることができる。
第2の本発明に係る定着装置100では、強制対流手段160は、熱源105の下方、若しくは上方に設けられたファン162により、被加熱部位Hの下方から上方へ向けて空気を移動させることにより、該被加熱部位を冷却する構成とした。
この構成によれば、定着ベルトの回転停止、或いは回転速度が正規速度よりも低下した時に、定着ベルトの周方向温度、軸方向温度を均熱化することで、熱応力による定着ベルトの局部変形を防止できる。このため、通常の稼動時における熱量の損失をなくし、かつ不要な摺動負荷を減らすことができる。
第3の本発明に係る定着装置100では、ファン162により下方から上方へ向けて移動する空気を、被加熱部位Hへ案内する導風手段を備えている。
この構成によれば、被加熱部Hに対して効率よく冷却用の空気を送り、周方向温度、軸方向温度の均熱化を素早く行うことができ、熱応力による定着ベルトの局部変形を防止できる。このため、通常の稼動時における熱量の損失をなくし、かつ不要な摺動負荷を減らすことができる。
第4の本発明に係る定着装置100では、制御手段156は、熱源105から定着ベルト101への熱供給中に該定着ベルトの回転速度が正規の値よりも低下した場合(回転停止を含む)に、強制対流手段160を作動させて被加熱部位Hを冷却するように構成したものである。
これによれば、スリップ等により定着ベルトの回転が遅くなった場合に、強制対流により、熱源により加熱状態となった被加熱部位Hから熱を逃がすことができ、熱応力による定着ベルトの局部変形を防止できる。このため、通常の稼動時における熱量の損失をなくし、かつ不要な摺動負荷を減らすことができる。
第5の本発明に係る定着装置100では、制御手段156は、定着部材101の緊急停止時に、強制対流手段160を作動させて被加熱部位を冷却するように構成した。
これによれば、異常検知による停止時や、カバーオープンによる停止時に熱源からの余熱により過熱状態となった被加熱部位Hから熱を逃がすことができる。
定着ベルトの周方向温度、軸方向温度を均熱化することで、熱応力による定着ベルトの局部変形を防止できる。このため、通常の稼動時における熱量の損失をなくし、かつ不要な摺動負荷を減らすことができる。
第6の本発明に係る定着装置100では、強制対流手段160により冷却空気を対流させる部位を、定着ベルトの最高温度となる部位、及びその周辺とした。
これによれば、熱源からの熱伝達状態が最も高く、温度が最も上昇すると考えられる部分に冷却風を強制対流させることで周方向温度、軸方向温度を均熱化することができる。
定着ベルトの周方向温度、軸方向温度を均熱化することで、熱応力による定着ベルトの局部変形を防止できる。このため、通常の稼動時における熱量の損失をなくし、かつ不要な摺動負荷を減らすことができる。
1…画像形成装置、3…給送ローラ、4…レジストローラ対、5…次転写ローラ、7…排紙ローラ、8…光書込装置、10…転写ベルトユニット、11…転写ベルト、17…排紙トレイ、20…感光体ドラム、30…帯電装置、40…現像装置、50…クリーニング装置、61…シート給送装置、72…駆動ローラ、73…従動ローラ、100…定着装置、101…定着ベルト、105…熱源、120…ニップ形成部材、122…支持部材、125…保持部材、127…反射部材、12…次転写ローラ、13…中間転写ベルトクリーニング装置、150…加圧ローラ、151…芯金、152…弾性ゴム層、155…駆動源、156…制御手段、160…強制対流手段、162…ファン、164…導風手段、165…回転速度検知手段、166…温度検知手段、180…外装カバー、181…吸入口、182…排出口。
特開2004−286922公報 特許第2861280号 特開2007−334205公報 特開平11−174941号公報 特開2004−226806公報 特開2001−235997公報

Claims (7)

  1. 熱源と、
    該熱源を内部に有して回転自在に支持され、且つ該熱源と対向した被加熱部位を加熱される無端状の定着部材と、
    前記被加熱部位を回避した前記定着部材の外周面と接してニップ部を形成する加圧ローラと、
    を備えた定着装置であって、
    前記被加熱部位は前記熱源と対向して直接加熱され、
    前記定着部材の回転速度が正規の回転速度よりも低下し、前記熱源から前記被加熱部位に単位時間当たりに与えられる熱エネルギーが所定値を越える場合に、対流により前記被加熱部位を冷却する対流手段を備えたことを特徴とする定着装置。
  2. 熱源と、
    該熱源を内部に有して回転自在に支持され、且つ該熱源と対向した被加熱部位を加熱される無端状の定着部材と、
    前記被加熱部位を回避した前記定着部材の外周面と接してニップ部を形成する加圧ローラと、を備えた定着装置であって、
    前記定着部材の回転速度が正規の回転速度よりも低下し、前記熱源から前記被加熱部位に単位時間当たりに与えられる熱エネルギーが所定値を越える場合に、対流により前記被加熱部位を冷却する対流手段を備え
    前記対流手段は、ファンにより、前記被加熱部位の下方から上方へ向けて空気を移動させることにより、該被加熱部位を冷却する構成としたことを特徴とする定着装置。
  3. 前記対流手段は、ファンにより、前記被加熱部位の下方から上方へ向けて空気を移動させることにより、該被加熱部位を冷却する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  4. 前記熱源からの熱を前記被加熱部位に反射する反射部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の定着装置。
  5. 前記ファンにより移動する空気を、前記被加熱部位へ案内する導風手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の定着装置。
  6. 前記対流手段により空気を対流させる部位を、前記定着部材の最高温度となる部位、及びその周辺としたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の定着装置。
  7. 請求項1乃至6の何れか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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