JP6157682B2 - ドアビーム及びドアビームの取付構造 - Google Patents

Description

本発明は、車両のドアのインナーパネルに取り付けるドアビーム及びドアビームの取付構造に関する。

アルミニウム合金押出形材からなるドアビームは、一般に、一対のフランジ（車体幅方向外側に配置されるアウターフランジ及び車体幅方向内側に配置されるインナーフランジ）と、両フランジを連結する一対のウエブを有する。このドアビームは、長手方向を車体前後方向に向けて車両のドアのアウターパネルとインナーパネルの間に配置され、その端部がインナーパネルに、ブラケットなしで直接又はブラケットを介して取り付けられる。その場合、ドア内での収納スペースの確保又はボルト締結の便宜等のため、ドアビームの長手方向の一部領域に予め潰し加工を施す場合がある。

特許文献１には、アルミニウム合金押出形材からなるドアビームの端部に潰し加工を施し、一対のウエブを外側に座屈させ、潰した箇所の幅方向中央部にボルト穴を開け、インナーパネルの取付部にボルトで取り付けることが記載されている。特許文献１のドアビームでは、潰し加工はアウターフランジ側からインナーフランジ側に向けて行われている。
特許文献２には、アルミニウム合金押出形材からなるドアビームの端部に潰し加工を施したとき、一対のウエブが共に外側又は内側に対称的に座屈するように、前記一対のウエブを予め外側又は内側に湾曲又は屈曲させ、若しくはウエブの内側又は外側に凹部を形成することが記載されている。特許文献２の図５に示す例では、潰し加工はアウターフランジ側及びインナーフランジ側から両フランジの中央部に向けて行われている。

特許文献３には、アルミニウム合金押出形材からなるドアビームの端部に潰し加工を施し、一対のウエブを外側に座屈させることが記載されている。特許文献３のドアビームでは、潰し加工はアウターフランジ側からインナーフランジ側に向けて行われている（図１０参照）。
特許文献４には、アウターフランジとインナーフランジのほか、両フランジの中間に中間フランジを有するアルミニウム合金形材（押出形材）からなるドアビームの端部に潰し加工を施すことが記載されている。潰し加工はアウターフランジ側からインナーフランジ側に向けて行われている（図３参照）。

特開平９−５８３８６号公報 特開２００３−１１８３６７号公報 特開２００３−２５２０５６号公報 特開２０１５−１４７４９０号公報

アルミニウム合金押出形材からなるドアビームは、長手方向を車体前後方向に向けて車両のドアのアウターパネルとインナーパネルの間に配置され、その両端部がブラケットを介し又は介さずに、インナーパネルにボルト締め、リベット、溶接等の接合手段により固定される。図５Ａに示すように、端部が潰し加工されていないドアビーム３１は、取付部のスペース（アウターパネル１２とインナーパネル１３のすき間）が小さい場合、車幅方向の高さＷを大きく取ることができず、衝突時の吸収エネルギーが小さくなる。その点は、図５Ｂに示すように、端部がアウターフランジ側からインナーフランジ側に向けて潰し加工されたドアビーム４１でも同様である。

本発明は、このような従来のドアビームの問題点に鑑みてなされたもので、車両のドアのアウターパネルとインナーパネルの間の限られたスペースに、従来に比べて車幅方向の高さＷの大きいドアビームを収容できるようにすることを目的とする。

本発明に係るドアビームは、インナーフランジ及びアウターフランジと、これらを連結する一対の平板状のウエブを有するアルミニウム合金押出形材からなり、長手方向の端部に前記ウエブの高さ方向に潰されている塑性加工部を有し、前記塑性加工部で前記ウエブが外側に座屈しており、前記塑性加工部において、前記アウターフランジが元の位置に位置し、前記インナーフランジが元の位置より前記アウターフランジ側に近い位置に位置していることを特徴とする。なお、ウエブの高さ方向とは、ドアビームがドア内に設置されたときに車体幅方向となる方向である。
車のドア内に設置された上記ドアビームは、アウターフランジを車体幅方向外側に向け、かつ長手方向を車体前後方向に向けて車のドアのアウターパネルとインナーパネルの間に配置され、前記塑性加工部（端部）でインナーパネルに固定される。
上記ドアビームは、前記アルミニウム合金押出形材の端部をインナーフランジ側からアウターフランジ側に向けて潰し加工することにより製造することができる。

本発明に係るドアビームは、前記塑性加工部のインナーフランジが、潰し加工により元の位置よりアウターフランジ側に近い位置に位置しているため、従来より車幅方向の高さＷの大きいドアビームでも、ドア内の限られた収納スペースへ収納しやすい。また、ドアビームの車幅方向の高さＷを大きくすることができるので、衝突時の吸収エネルギーを大きくすることができる。

本発明に係るドアビームの潰し加工前の断面図（１Ａ）、及び潰し加工後の断面図（１Ｂ）である。 図１に示すドアビームの潰し加工前の平面図（２Ａ）、及び潰し加工後の平面図（２Ｂ）である。 本発明に係るさらに別のドアビームの潰し加工前の平面図と断面図（３Ａ）、及び潰し加工後の平面図と断面図（３Ｂ）である。 端部にインナーフランジ側からアウターフランジ側に向けて潰し加工をしたドアビームを、車両のドア内（アウターパネルとインナーパネルの間）の収納スペースに設置したときの取付構造を示す平面図である。 端部に潰し加工を施していない従来のドアビームの取付構造（５Ａ）、及び端部に潰し加工を施した従来のドアビームの取付構造（５Ｂ）を示す平面図である。

以下、図１〜４を参照して、本発明に係るドアビーム及びドアビームの取付構造、並びにドアビームの製造方法について説明する。
本発明に係るドアビームはアルミニウム合金押出形材からなり、図１Ａ及び図２Ａに、潰し加工前（押し出しのまま）のアルミニウム合金押出形材の断面形状及び平面形状の一例を示す。このドアビーム１（アルミニウム合金押出形材）は、それぞれ均一厚さのアウターフランジ２、インナーフランジ３、及び両フランジ２，３を連結する一対のウエブ４，５からなり、実質的に左右対称形状をしている。

アウターフランジ２は、ドア内に設置されたとき車体幅方向外側に配置される部分で、所定の曲率（外周部の曲率半径Ｒが例えば５０〜５００ｍｍ）で外側に凸湾曲している。インナーフランジ３は平板状で、ドア内に設置されたとき車体幅方向内側に配置される部分である。ウエブ４，５は平板状で、インナーフランジ３に対し垂直に形成され、ドア内に設置されたとき高さ方向（図１Ａ，２Ａにおいて上下方向）が車体幅方向に略平行に向けられる。
アウターフランジとウエブが連結する箇所の内側コーナーにおいて、アウターフランジ２（接線６）とウエブ４，５が作る角度をθ１とし、同箇所の外側コーナーにおいて、アウターフランジ２（接線６）とウエブ４，５が作る角度をθ２としたとき、θ１＞θ２である。

ドアビーム１（アルミニウム合金押出形材）は、一方又は両方の端部がウエブ４，５の高さ方向に潰し加工される。ドアビームの端部を、例えばいずれも平らな加圧面を有する上下型７，８で挟んで潰し加工を行うと、潰し加工の開始当初、アウターフランジ２は加圧されて曲率が低下し始め、一方、前記角度θ１，θ２は余り変化しない。このため、ドアビーム１に対しウエブ４，５を外側に押し出す力が作用し、ウエブ４，５が外側に座屈（曲げ変形）する。
図１Ｂ及び図２Ｂに潰し加工後のドアビームの断面形状及び平面形状を示す。潰し加工後のアウターフランジ２は、曲率が当初（潰し加工前）の曲率Ｋより低下し又は平坦化される。

図２Ａ，図２Ｂに示すように、潰し加工は、インナーフランジ３側からアウターフランジ２側に向けて、ウエブ４，５の高さ方向（車体幅方向）に行われる。これにより、潰し加工が行われた部位（塑性加工部９）では、インナーフランジ３は、潰し加工による潰し量（潰し高さ）Ｈと同じ距離だけ、アウターフランジ２側に向けて移動し、元の位置よりアウターフランジ２に近い位置に位置している。一方、アウターフランジ２は、塑性加工部９において、曲率が当初（潰し加工前）の曲率Ｋより低下し又は平坦化されるが、実質的に高さ方向に移動せず、元の位置に位置している（元の高さを保っている）。

本発明に係る別のドアビームを、図３に示す。このドアビームはアルミニウム合金押出形材からなり、図３Ａに、潰し加工前（押し出しのまま）のアルミニウム合金押出形材の平面形状と断面形状を示す。このドアビーム１１（アルミニウム合金押出形材）は、それぞれ均一厚さで平板状のアウターフランジ２、インナーフランジ３、及び両フランジ２，３を連結する一対のウエブ４，５からなり、実質的に左右対称形状をしている。

図３Ｂに示すように、ドアビーム１１（アルミニウム合金押出形材）は、一方又は両方の端部が潰し加工される。潰し加工は、インナーフランジ３側からアウターフランジ２側に向けて、ドアビーム１１（アルミニウム合金押出形材）の高さ方向に行われる。潰し加工に伴い、ウエブ４，５が外側に座屈（曲げ変形）する。これにより、潰し加工が行われた部位（塑性加工部９）では、インナーフランジ３は、潰し加工による潰し量（潰し高さ）Ｈと同じ距離だけ、アウターフランジ２側に向けて移動し、元の位置よりアウターフランジ２側に近い位置に位置している。一方、アウターフランジ２は、塑性加工部９において、実質的に高さ方向に移動せず、元の位置に位置している（元の高さを保っている）。

図４に、車両のドア内に設置した本発明に係るドアビームを示す。図４において、１２はアウターパネル、１３はインナーパネル、２１はインナーパネル１３に固定したドアビームである。ドアビーム２１は、ドアビーム１，１１と同様に、両端部にインナーフランジ３側からアウターフランジ２側に向けて潰し加工が行われている。ドアビーム２１のインナーフランジ３は、潰し加工が行われた部位（塑性加工部）において、潰し加工による潰し量（潰し高さ）と同じ距離だけ、アウターフランジ２側に移動し、元の位置よりアウターフランジ２側に近い位置に位置している。

図４に示すドアビーム２１は、両端部が潰し加工を受けて車幅方向高さが小さく、ドア内の取付部のスペースが小さくても、インナーパネル１３への取り付けに支障はない。また、中央部（両端部以外）は車幅方向高さが大きいが、車幅方向内側にのみ突出しているので、インナーパネル１３側のスペース１５に支障なく収容できる。このように、ドアビーム２１は、車幅方向の高さＷが大きくても、ドア内の限られたスペースに設置できる。これにより、ドアビーム２１のエネルギー吸収量を増加させることができ、一方、同じエネルギー吸収量であれば、従来のドアビーム（図５参照）より軽量化が可能となる。
なお、図４に示すドアビーム２１は、ブラケットレスドアビームであるが、本発明はブラケット付きドアビーム（ブラケットを介してインナーパネルに固定するタイプ）にも適用できる。

１，１１，２１ ドアビ−ム
２ アウターフランジ
３ インナーフランジ
４，５ ウエブ
７，８ 潰し加工の上下金型
９ 潰し加工が行われた箇所（塑性加工部）
１２ ドアのアウターパネル
１３ ドアのインナーパネル

Claims (2)

1. インナーフランジ及びアウターフランジと、これらを連結する一対の平板状のウエブを有するアルミニウム合金押出形材からなり、長手方向の端部に前記ウエブの高さ方向に潰されている塑性加工部を有し、前記塑性加工部以外で前記ウエブが潰されず平板状のままで、前記塑性加工部で前記ウエブが外側に座屈しているドアビームであり、前記塑性加工部において、前記アウターフランジが元の位置に位置し、前記インナーフランジが元の位置より前記アウターフランジ側に近い位置に位置していることを特徴とするドアビーム。
2. 請求項１に記載されたドアビームが、前記アウターフランジを車体幅方向外側に向け、かつ長手方向を車体前後方向に向けて車のドアのアウターパネルとインナーパネルの間に配置され、前記塑性加工部が前記インナーパネルに固定されていることを特徴とするドアビームの取付構造。

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