JP6156685B2 - 防音構造体 - Google Patents
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Description
特許文献1の防音構造体は、グラスウール等の吸音材が充填されたパネル材を支柱で支持した構造を有するものであって、支柱がパネル材で隠れるように設置することで防音効果を得るようにしたものである。
また、特許文献2の防音構造体は、パネル材の表面に、いわゆるヘルムホルツ共鳴器を構成する開口を並設するものであって、ヘルムホルツ共鳴器による吸音を利用した防音構造を備えている。
通気性や採光性を得るために、例えば、パネル材をルーバー状や柵状に細く形成することが考えられるが、このようにすると、ルーバーの間や柵の間を入射音が通過してしまい、入射音を効果的に遮ることが難しかった。
また、特許文献2の防音構造体では、ヘルムホルツ共鳴器としての中空体が構成されているが、中空体に連通するスリットの側方を空気が通る際に笛鳴り現象が生じるおそれがあった。
このように、通気性や採光性と、防音性という、相反する2つの機能に対応するとともに、笛鳴り現象に対応した防音構造体は現状得られていない。
また、形材の押出し時に開口部が形成される構成とすることで、打ち抜き加工等の機械的加工が不必要となり、コスト低減および生産性が向上する。
本実施形態に係る防音構造体としての柵Fは、図1に示すように、複数本の中空体1を連結部材5で連結してなる。複数本の中空体1は、ベランダ等の支持構造部K上に設けられた固定部K1上に並設されている。固定部K1の上面K2は、水平かつ平坦に形成されている。
なお、図1に示した柵Fを構成する中空体1の設置個数は、ベランダ等の設置状況等に応じて適宜変更することができる。また、連結部材5は、図示しない支柱に支持してもよいし、図示しない構造物に支持してもよい。例えば、支柱は、固定部K1上にアンカーボルト等によって立設される。なお、支柱は、アルミニウム合金製の押出形材から形成することができる。
そして中空体1の前面には、不規則流発生部として機能する突起部31(凹部32)が設けられた前面板30が取り付けられている。
なお、ビスポケット18は、押出成形する際に一緒に形成するのがよい。また、ビスポケット18は、断面C字状の開断面である必要はなく、固定ビス42を螺合可能な形状であれば、特に限定されない。
右側部13の内側には、右側部13と平行に係合壁17が突出形成されている。係合壁17は、溝部16の右後壁16bの後面から後方へ延出しており、右側部13との間に挿入空間S1を形成している。この挿入空間S1には、第2の形材20の右側部23の前壁23aが挿入される。係合壁17の後端部には、傾斜部17aが形成されている。傾斜部17aは、後方へ向けて右側部13から離れる方向に傾斜している。このような傾斜部17aは、第2の形材20の前壁23aを挿入空間S1に挿入する際のガイドとして機能する。傾斜部17aの前端部17bは、挿入空間S1にくさび状に突出している。この前端部17bは、第2の形材20の右側部23の前壁23aに形成された小突起23dに係合可能であり、前壁23aを挿入空間S1に抜け止め保持する。
傾斜部27aの後端部27bは、第1の形材10の左側部12の後壁12bに形成された小突起12dに係合可能であり、後壁12bを挿入空間S2に抜け止め保持する。
左側部22の後部22bは、後部21の後方へ延在しており、後端部22eが内側へ向けて直角に折曲形成されている。
右側部23の前壁23aは、段部23cを介して内側(中空部14側)にオフセット形成され前方へ延出している。前壁23aの右側面には、小突起23dが形成されている。また、前壁23aの前端部23gは、第1の形材10の右側部13側へ向けて直角に折曲形成されている。このような前壁23aは、図4に示すように、第1の形材10に設けられた挿入空間S1に挿入されて、第1の形材10の右側部13に係合される。
中空体1と連結部材5との組み付けは、連結部材5の縦部5aの挿通孔5cにワッシャ26aを介してボルト26を挿通し、このボルト26を固定用空間24に配置した固定部材25のボルト挿通孔25cに螺合することによって行われる。
このような突起部31は、中空体1の側面に沿う空気の流れを不規則な方向に変化させる機能を有している。
なお、突起部31は、左側部12よりも左側方へ突出し、また、右側部13よりも右側方へ突出する例を示したが、これに限られることはなく、前部11の前面において、突起部31の突出端31aが左側部12の外面よりも内側に位置し、また、右側部13の外面よりも内側に位置するように形成してもよい。
なお、前面板30は、入射音(騒音)を反射する反射部材としても機能する。
前面板30は、入射音を反射する反射面として機能するようになっているので、例えば、柵Fに対して前側から入射音が入射されると、前面板30で入射音の一部が直接的に反射される。
なお、中空体1間への入射音のうち、主にどの周波数域の音が反射されるかについては、スリット20Sを含む中空部14の仕様(ヘルムホルツ共鳴器の仕様)により設定することができる。
さらに、前面板30に設けられた突起部31により、スリット20S近辺の空気の流れが好適に乱されることとなり、スリット20Sの側方を空気が通過する際に生じることのある笛鳴り現象が好適に抑制される。
また、中空体1の内面には、形材の軸方向に延びる固定用のビスポケット18,28が形成されているので、ビスポケット18,28を用いて、中空体1の上下の開口をカバー部材40で容易に閉塞することができ、ひいてはヘルムホルツ共鳴器としての機能を容易に高めることができる。したがって、防音機能を有する柵F(高欄、フェンス等の防音構造体)を容易に組み立てることができる。
なお、上下の複数のカバー部材40を、並設方向に長い1つのカバー部材とすることで、柵Fの枠組みとすることもできる。このようにすることで、柵Fの仕上げが容易となる。
なお、アルミニウム合金製の押出形材に代えて合成樹脂により第1の形材10や第2の形材20等、さらには前面板30を成形してもよい。
本実施形態に係る防音構造体としての柵Fが前記第1実施形態と異なるところは、図10に示すように、突起部31Aが第1の形材10Aに一体的に設けられている点である。
第1の形材10Aは、図11,図12に示すように、前部11に溝部15,16(図4参照)が形成されておらず、左側部12および右側部13が前部11よりも前方へ若干延出されて、突起部31Aが前部11の左右縁部に形成されている。
このような突起部31Aにおいても、前記第1実施形態と同様に、中空体1の側面に沿う空気の流れを不規則な方向に変化させる機能を有している。
はじめに、図15に示した例は、第1の形材10Bにおける右側部13の後端部13fが、第2の形材20Bにおける右側部23の前端部23fと間隔を空けて対峙するようになっており、この前端部23fとの間にスリット20Sを構成したものである。つまり、本変形例においてスリット20Sは、形材の押出方向に連続して形成され、第1の形材10Bおよび第2の形材20の押出時に形成される。
なお、固定用リブ19には、係止リブ19aが形成されている。
第1の形材10Cは、4つの挿入空間S3〜S6を有しており、これらの挿入空間S3〜S6に挿入される挿入壁202〜205が第2の形材20Cに設けられている。
第1の形材10Cの前部101には、突起部31Bが設けられており、また、第1の形材10Cに一体的に設けられた後部104と後壁105,106で囲われて、固定用空間24が形成されている。
なお、第1の形材10Cの左側部102の外側面および第2の形材20Cの右側部201の外側面には、複数の縦溝102a,201aが形成されている。この縦溝102a,201aは、吸音効果の向上、笛鳴り現象の抑制に寄与する。
<実施例>
実施例の柵として、図1で示したスリット20Sを有する中空体1をベースとし、仕様の異なる14種類の前面板を取り付けた柵No.1〜14を試料として、スリット20Sの形成された面に風を当てることで笛鳴り現象を測定した。
なお、前面板は、図18(a)(c)に示すように、突起部31を両側に形成したもの(両側加工、柵No.1〜12)と、突起部31を片側に形成したもの(片側加工、柵No.13,14)と、を用意した。また、図17に示したNo.1〜14は、図19に示した柵No.1〜14に備わる前面板にそれぞれ対応している。なお、図22〜図26において、「1」〜「14」の周波数特性は柵No.1〜14に対応している。
なお、各試料において、隣接する中空体1間の距離は30[mm]とした。
そして、柵Fは、図20(c)に示すように、中心G1を中心として時計周りに中心軸O1から角度θ回転させて、スリット20Sの形成された面に対してダクト口61から吹き出された風が直接当たるように設置した。ここで、角度θは最も笛鳴り現象の生じ易い状態となる14度に設定した。
また、風洞装置60の風速は、15.4m/sに設定した。
比較例に係る柵として、前面板(突起部)を有しないアルミニウム合金製の押出形材からなる中空体1で、柵を作成した。比較例に係る柵において、隣接する中空体間の距離は30[mm]とした。図19において、柵No.0は比較例に係る柵であり、また、図22〜図26において、「0」で示した周波数特性は、比較例に係る柵の周波数特性を表している。
・風洞設備:低騒音型風洞(鳥取大学製作、風洞吹出口:300mm×300mm)
・マイクロホン:NL−27(リオン(株)製)
・周波数分析器:OR34J((株)東陽テクニカ製)
<試験方法>
まず、比較例の柵において、音圧レベル(SPL[dB])の高い周波数(笛鳴り現象が発生する周波数)を特定するために、風洞装置60と比較例の柵とを前記した所定の距離に設置し、風洞装置60のダクト口61から柵のスリット20Sに風が当たるように風洞装置60を運転した。そして、マイクMを通じて笛鳴り音の計測を行った。
次に、風洞装置60と各試料とを前記した所定の距離に設置し、同様に、風洞装置60のダクト口61から柵のスリット20Sに風が当たるように風洞装置60を運転し、マイクMを通じて笛鳴り音の計測を行った。
結果を図21〜図26に示す。
また、中空体1は、矩形状としたが、より前後方向に長い扁平状としてもよい。また、各実施形態や変形例において、中空体1は、縦方向(垂直方向)に配置したものを示したが、これに限られることはなく、横方向(水平方向)や斜めに傾斜する方向に配置してもよい。
5 連結部材
10,10A〜10C 第1の形材
11 前部
15,16 溝部(凹状部)
18,28 ビスポケット
20,20B,20C 形材
20S スリット(開口部)
24 固定用空間(配置用溝)
30 前面板
31,31A,31B 突起部
33 取付用リブ(挿入部)
35 係止部材
Claims (12)
- 複数の中空体が間隔を空けて並設されてなる防音構造体であって、
前記各中空体は、
ヘルムホルツ共鳴器として機能する中空部を有し、前記中空体の並設方向の側面には、前記中空部に連通して長手方向に延びる開口部が設けられており、
音が入射される側となる前部側には、前記中空体の側面に沿う空気の流れを不規則な方向に変化させる不規則流発生部が設けられており、
前記不規則流発生部は、波形状または凹凸状の輪郭を有する形状であることを特徴とする防音構造体。 - 前記中空体の前面に取り付けられる前面板を備え、
前記不規則流発生部は、前記前面板に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防音構造体。 - 前記中空体の前面に形成された凹状部と、
前記前面板の背面に設けられ、前記凹状部に挿入される挿入部と、
前記挿入部に装着され前記凹状部の内面に抜け止め係止される係止部材と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の防音構造体。 - 前記不規則流発生部は、前記中空体に一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防音構造体。
- 前記不規則流発生部は、前記中空体の前方へ突出していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の防音構造体。
- 前記不規則流発生部は、前記中空体の並設方向に突出していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の防音構造体。
- 前記中空体は、当該中空体の軸方向に延びる2つ以上の形材を嵌合により組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の防音構造体。
- 前記中空体の背面には、構造体に固定するための固定部材の配置用溝が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の防音構造体。
- 前記中空体の内面には、形材の軸方向に延びる固定用のビスポケットが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の防音構造体。
- 前記中空体は、アルミニウム合金製または樹脂製の押出形材からなることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の防音構造体。
- 前記開口部は、形材の押出し時に形成されることを特徴とする請求項10に記載の防音構造体。
- 前記中空部には吸音材が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の防音構造体。
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