以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施例1)
<インクジェット印刷装置の全体構成>
本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1の構成について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1の構成を示す構成図である。
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを備えている。
サイド給紙部10は、用紙Pが積層される給紙台11と、この給紙台11から最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させるピックアップ給紙部12と、このピックアップ給紙部12によって搬送された用紙Pを斜行補正して、所定の搬送タイミングで循環搬送路CR上へ搬送するレジスト部14とを備えている。搬送方向におけるレジスト部14の手前には、レジストセンサ141が設けられており、搬送される用紙Pの先端又は後端を検出する。
内部給紙部20は、用紙Pが積層される給紙台21aと、この給紙台21aから最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させるピックアップ給紙部22aと、用紙Pが積層される給紙台21bと、この給紙台21bから最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させるピックアップ給紙部22bと、用紙Pが積層される給紙台21cと、この給紙台21cから最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させるピックアップ給紙部22cと、用紙Pが積層される給紙台21dと、この給紙台21dから最上位置の用紙Pのみを給紙搬送路FR上へ搬送させるピックアップ給紙部22dとを備えている。
このように、レジスト部14には、サイド給紙部10及び内部給紙部20から用紙Pが搬送され、さらに、後述する反転部50からも用紙Pが搬送される。
そのため、搬送方向におけるレジスト部14の手前には、給紙された用紙Pの搬送経路と、一方の面が印刷された用紙が循環して搬送されてくる経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと称し、それ以外の経路を循環搬送路CRと称している。
印刷部30は、複数の印字ヘッドが組み込まれたインクジェットユニット31と、インクジェットユニット31の対向面に設けられた環状の搬送ベルト133とを備えており、レジスト部14により給紙された用紙Pは、環状の搬送ベルト133内に、用紙の搬送路面の裏面に対応して設置された吸引ファン131によって搬送ベルト133上に吸引され、所定の搬送速度で搬送されながら、インクジェットユニット31から吐出されたインクにより用紙Pに印刷される。
印刷部30により印刷された用紙Pは、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって筐体内を循環搬送路CR上を搬送される。循環搬送路CR上には、循環搬送路CR上を搬送された用紙Pを排紙部40へ誘導するか、又は循環搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構43が備えられている。
切り替え機構43は、用紙Pを、後述する排紙部40又は反転部50のいずれか1方へ誘導するために、切り替える。
排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41に用紙Pを誘導する一対の排紙ローラ42とを有している。そして、切り替え機構43により排紙部40に誘導された用紙Pは、排紙ローラ42により排紙台41に搬送され、排紙台41に印刷面を下にして積載される。
反転部50は、用紙Pを反転させる反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へ用紙Pを搬送し、又は反転台51から循環搬送路CR上へ用紙Pを搬送する反転ローラ52とを備えている。
切り替え機構43により反転部50に誘導された用紙Pは、反転ローラ52により循環搬送路CRから反転台51に搬送され、所定時間経過後、反転台51から循環搬送路CRへ搬送されることにより、循環搬送路CRに対して表裏が反転する。そして、表裏が反転された用紙Pは、循環搬送路CR上に設けられた搬送ローラ53等の複数のローラにより循環搬送路CR上を印刷部30へ向かって搬送される。
また、インクジェット印刷装置1の全体を制御する制御部80を有している。この制御部80は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを制御することにより、印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行する。
図2は、本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1が備えるインクジェットユニット31の平面図である。
インクジェットユニット31は、主走査方向、即ち用紙Pの搬送方向と直交する方向に2列のノズルが配列されたライン型の複数のインクジェットヘッド110,112,114を有する。
そして、インクジェットユニット31の下部を用紙Pが副走査方向(用紙Pの搬送方向)に搬送されながら、複数のインクジェットヘッド110,112,114からインクが吐出されることにより印刷される。
インクジェットユニット31は、ブラック(K)のインクを貯留したインクジェットヘッド110a〜110fと、シアン(C)及びマゼンダ(M)のインクを貯留したインクジェットヘッド112a〜112fと、イエロー(Y)のインクを貯留したインクジェットヘッド114a〜114fとを備えている。なお、インクジェットヘッド110a〜110fと、インクジェットヘッド112a〜112fと、インクジェットヘッド114a〜114fとは、吐出されるインク色が異なるが、同一の物理構造を有している。
インクジェットヘッド110a〜110fは、主走査方向に対して平行になるように、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列された上流側のノズル列121と、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列された下流側のノズル列123とが配置されている。2列のノズル列121,123は、主走査方向のノズルの位置がそれぞれずらして設けられており、2列のノズル列121,123から同色(ここでは、ブラック)のインクが吐出されることにより、600dpiの解像度を実現する。
また、インクジェットヘッド110a〜110fには、ブラック(K)のインクを収容するインク室が設けられており、このインク室内にはピエゾ素子が配置されている。そして、供給された駆動信号に基づいて、ピエゾ素子にインクが吐出する駆動電圧が印加されることにより、インク室に連通するノズルからブラック(K)のインクを、“0”〜“10”の11階調のドロップ単位で吐出する。
このように、主走査方向に2列に配置されたノズル列121,123からブラック(K)のインクが吐出されることにより、600(dpi)の解像度で印字することができる。また、ノズル列121,123の一方のノズル列からブラック(K)のインクが吐出されることにより、300(dpi)の解像度で印字することもできる。
一方、インクジェットヘッド112a〜112fは、主走査方向に対して平行になるように、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列されシアン(C)のインクを吐出する上流側のノズル列124と、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列されマゼンダ(M)のインクを吐出する下流側のノズル列125とが1列づつ配置されている。
また、インクジェットヘッド112a〜112fには、それぞれシアン(C)のインクを収容するインク室と、マゼンダ(M)のインクを収容するインク室とが設けられており、このインク室内にはピエゾ素子が配置されている。そして、駆動信号に基づいてピエゾ素子にインクを吐出する駆動電圧が印加されることにより、シアン(C)、マゼンダ(M)それぞれのインク室に連通するノズルからシアン(C)、マゼンダ(M)それぞれのインクが“0”〜“10”の11階調のドロップ単位で吐出される。
このように、主走査方向に2列に配置されたノズル列124,125のうち、上流側のノズル列124からシアン(C)のインクが吐出され、下流側のノズル列125からマゼンダ(M)のインクが吐出されることにより、シアン(C)、マゼンダ(M)がそれぞれ300(dpi)の解像度で印字される。
このとき、ブラック(K)の解像度に比較して、シアン(C)、マゼンダ(M)の解像度は300(dpi)と低いので、ドットゲイン(印刷したときの網点の太り)を大きくしている。高解像度の場合、細線や細字などの再現性向上や写真の粒状感を低減するため、ドットゲインを小さくして、高精細な画像を実現するが、低解像度の場合、ベタ部などにおいてぼそついた画像にならないように、画素の埋まりを良くするためドットゲインを大きくする。具体的には、ブラック(K)のインクよりシアン(C)、マゼンダ(M)のインクの方が浸透性を良くさせることにより、ドットゲインを大きくすることができる。
インクジェットヘッド114a〜114fは、300dpiの解像度を実現するピッチ間隔でノズルが配列されたノズル列が、主走査方向に対して平行になるように2列に配列されており、上流側にはイエロー(Y)のインクを吐出するノズル列127が配置され、下流側には、予備インクのノズル列128が配置されている。
また、インクジェットヘッド114a〜114fには、イエロー(Y)のインクを収容するインク室と、予備インクを収容するインク室とが設けられており、このインク室内にはピエゾ素子が配置されている。そして、駆動信号に基づいてピエゾ素子にインクを吐出する駆動電圧が印加されることにより、イエロー(Y)、予備インク色それぞれのインク室に連通するノズルからイエロー(Y)、予備インク色それぞれのインクが“0”〜“10”の11階調のドロップ単位で吐出される。
このように、主走査方向に2列に配置されたノズル列のうち、上流側のノズル列127からイエロー(Y)のインクが吐出され、下流側のノズル列128から予備インクが吐出されることにより、イエロー(Y)、予備インク色がそれぞれ300(dpi)の解像度で印字される。
また、ブラック(K)の解像度に比較して、イエロー(Y)、予備インク色の解像度は低いので、シアン(C)、マゼンダ(M)と同様に、ドットゲインを大きくしている。
なお、予備インクは、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)でも良いし、ライトシアン(LC)やライトマゼンダ(LM)であっても良い。
<インクジェット印刷装置1の機能構成>
次に、本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1の機能構成について説明する。
図3は、本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1の機能構成を示した図である。
図3に示すように、インクジェット印刷装置1は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50と、操作パネル部70と、制御部80とを備える。これらの構成のうち、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とについては、上述したので、説明を省略する。
制御部80は、CPU81と、CPU81の動作プログラムや各種テーブル等を格納したROM82と、画像読取り部(図示せず。)が読取ったRGB画像データまたはコンピュータ装置(図示せず。)等が送信してきたRGB画像データ、さらには操作パネル部70またはコンピュータ装置(図示せず。)からの各種印刷条件を含む印刷ジョブを記憶するRAM83を有している。
図3に示すように、CPU81は、ROM82に格納された動作プログラムを実行することにより、本装置全体、すなわちサイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50と、操作パネル部70等の動作を制御する。
また、CPU81は、ドロップデータ生成部81aと、色つき判定部81bと、隣接画素有無判定部81cと、補正ドロップデータ生成部81dとを備える。
ドロップデータ生成部81aは、画像データに基づいて、インク色毎に各画素のドロップ数を示すドロップデータを生成する。
色つき判定部81bは、ドロップデータ生成部81aにより生成されたドロップデータに基づいて、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)(第2インク色)のインクの注目画素が第2インク色のインクに対してブラック(K)(第1インク色)のインクの画素と重畳しないとき色つきが発生すると判定する。
隣接画素有無判定部81cは、色つき判定部81bにより、色つきが発生すると判定された場合、色つきが発生する第2インク色のインクの注目画素に対して所定の方向に第1インク色のインクを吐出する隣接画素があるか否かを判定する。
補正ドロップデータ生成部81dは、隣接画素有無判定部81cにより隣接画素がないと判定された場合に、色つきが発生すると判定された第2インク色のインクの画素と重畳する第1インク色のインクのドロップ数を色つきが発生すると判定された第2インク色のインクの画素と重畳しない画素に分配する補正ドロップデータを生成する。
図4は、本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1における色つき防止処理を簡略的に説明した図である。
コンピュータ装置等から送信されRAM83に記憶されたRGB画像データ200は、RGB毎にそれぞれ0〜255のRGB値として構成されている。ここでは、図4に示すように、RGB画像データ200は、600(dpi)の解像度で、RGB画像データ200a〜200dの4画素が一列に並んで配置された細線を例に挙げて説明する。
CPU81のドロップデータ生成部81aは、RGB画像データ200に対して、色変換処理を実行することにより、0〜100(%)のCMYK値として構成されるCMYK画像データ210を生成する。上述したように、ブラック(K)の解像度は600(dpi)であるので、RGB画像データ200a〜200dに対応して、CMYK画像データ210a〜210dには、それぞれK(ブラック)値=100(%)の画像データとして配置される。
一方、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の解像度は300(dpi)であるので、RGB画像データ200a〜200bに対応して、CMYK画像データ210aに、それぞれシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)値=60(%)の画像データとして配置される。また、RGB画像データ200c〜200dに対応して、CMYK画像データ210cに、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)値=60(%)の画像データとして配置される。
さらに、ドロップデータ生成部81aは、CMYK画像データ210に対して中間調処理を実行することにより、CMYK毎に0〜10ドロップの11階調のドロップ数を示すドロップデータ220を生成する。
上述したように、ブラック(K)の解像度は600(dpi)であるので、ドロップデータ生成部81aは、CMYK画像データ210a〜210dのKの画像データに対応して、10(ドロップ)のドロップ数のドロップデータ220a〜220dを生成する。さらに、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の解像度は300(dpi)であるので、ドロップデータ生成部81aは、CMYK画像データ210a,210cのCMYの画像データに対応して、5(ドロップ)のドロップ数のドロップデータ220e,220fを生成する。
このとき、ブラック(K)の解像度に比較して、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の解像度は低く、ブラック(K)のドットゲインに比較して、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)のドットゲインの方が大きい。
そのため、ドロップデータ220に示すように、Kのドロップデータ220a〜220bからはみ出して、CMYのドロップデータ220eが配置されており、CMYのインクに対してKのインクが重畳されていない色つき領域221が発生している。
同様に、Kのドロップデータ220c〜220dからはみ出して、CMYのドロップデータ220fが配置されており、CMYのインクに対してKのインクが重畳されていない色つき領域222が発生している。
このように、色つき領域221,222が発生すると、ブラック(K)の画素近傍にCMYが印刷されるので、ブラック(K)の画像を縁取ったように表現されるので、印刷品質が低下することになる。
そこで、本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1では、色つき領域221,222が発生すると、ドロップデータ220に基づいて、Kのドロップ数を色つきが発生する方向に分配することにより補正ドロップデータ230を生成する。
具体的には、補正ドロップデータ生成部81dが、10(ドロップ)のKのドロップデータ220aを、8(ドロップ)のKのドロップデータ230aと、2(ドロップ)のKのドロップデータ231aとに分配し、2(ドロップ)のKのドロップデータ231aを色つき領域221を埋めるように配置する。
同様に、補正ドロップデータ生成部81dが、10(ドロップ)のKのドロップデータ220bを、8(ドロップ)のKのドロップデータ230bと、2(ドロップ)のKのドロップデータ231bとに分配し、2(ドロップ)のKのドロップデータ231bを色つき領域221を埋めるように配置する。
また、補正ドロップデータ生成部81dは、Kのドロップデータ220c,220dについても同様に、ドロップデータ220に基づいて、Kのドロップ数を色つきが発生する方向に分配して配置する。
このようにして、Kのドロップデータを色つき領域221,222を埋めるように配置することにより、CMYによる色つきを防止することができる。
図5は、本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1における処理手順を示したフローチャートである。
図5に示すように、印刷が要求されると(S101;YES)、ドロップデータ生成部81aは、色変換処理を実行する(S103)。具体的には、ドロップデータ生成部81aは、RGB画像データからCMYK画像データを生成する。
次に、ドロップデータ生成部81aは、中間調処理を実行する(S105)。具体的には、ドロップデータ生成部81aは、CMYK画像データからドロップデータを生成する。
そして、色つき判定部81bは、ドロップデータに基づいて、ある1つの有効画素である注目画素の周辺領域に有効画素があるか否かを判定する(S107)。
ステップS107において、周辺領域に有効画素がないと判定された場合(NOの場合)、色つき判定部81bは、その注目画素を孤立点と判定する(S131)。
一方、ステップS107において、周辺領域に有効画素があると判定された場合(YESの場合)、色つき判定部81bは、主走査方向又は副走査方向いずれかに2以上連続した有効画素があるか否かを判定する(S109)。
ステップS109において、主走査方向又は副走査方向いずれかに一方向に2以上連続した有効画素があると判定された場合(YESの場合)、その注目画素は細線に含まれていると判定し(S115)、主走査方向及び副走査方向いずれにも2以上連続した有効画素があると判定された場合(NOの場合)、その注目画素はその他の画像パターンに含まれていると判定する(S111)。
図6は、図5に示した本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1のフローチャートにおけるステップS107,S109,S111,S115,S131の処理を説明した図である。図6(a)は、孤立点と判定された画素パターンの一例を示した図であり、図6(b)は、細線と判定された画素パターンの一例を示した図である。ここでは、600(dpi)の画素密度に対して1マスを1(dpi)として4×4のマトリックスで表している。即ち、4×4のマトリックスの1マスが1画素を表しており、600(dpi)の場合、1画素に1つのドロップデータが割り付けられている。
図6(a)に示すように、色つき判定部81bは、画素302bを注目画素Aとし、この注目画素Aの周辺を囲む8画素301a〜301c,302c,303a〜303c,302aを周辺領域B1とし、この周辺領域B1に有効画素があるか否かを判定する。ここで、有効画素とは、Kインクのドロップ数が“1”〜“10”の画素のことをいい、ここでは、網掛けで示している。
図6(a)に示した例では、注目画素Aに有効画素が配置されており、周辺領域B1には、有効画素が配置されていない。そのため、色つき判定部81bは、周辺領域B1に有効画素がないので、注目画素Aは孤立点であると判定する。
また、図6(b)に示すように、色つき判定部81bは、画素306bを注目画素A2としたときに、この注目画素A2の周辺を囲む8画素305a〜305c,306c,307a〜307c,306aを周辺領域B1とし、この周辺領域B1に有効画素があるか否かを判定する。
図6(b)に示した例では、画素306a,306cに、有効画素が配置されている。そのため、色つき判定部81bは、周辺領域B1に有効画素があると判定し、さらに、周辺領域B1における、注目画素A2の主走査方向に2以上連続した有効画素があると判定する。
さらに、注目画素A2を、1画素づつA3,A4に移動して、同様に、色つき判定部81bが、周辺領域B1に有効画素があるか否か、及び主走査方向又は副走査方向いずれかに2以上連続した有効画素があるか否かを判定することにより、有効画素A1〜A4は、細線であると判定する。
図5に戻り、ステップS111において、その他と判定された場合、補正ドロップデータ生成部81dが補正ドロップデータを生成することなく、CPU81は、ドロップデータ生成部81aにより生成されたドロップデータを設定する(S113)。
一方、ステップS115において、注目画素が細線に含まれていると判定されると(S115)、色つき判定部81bは、CMYのドロップデータを取得し(S117)、CMYの色つきが発生すると判定された場合(S119;YES)、色つき方向を特定する(S121)。
図6(b)に示した例では、注目画素A1,A2にあるKインクの有効画素に重畳するように、CMYインクの画素401が配置されると共に、注目画素A3,A4にあるKインクの有効画素に重畳するように、CMYインクの画素402が配置されている。このとき、CMYインクの画素401が重畳している周辺領域B1の画素307a,307bのKインクのドロップ数は“0”であり、CMYインクの画素402が重畳している周辺領域B1の画素307c,307dのKインクのドロップ数は“0”である。
このように、注目画素A1,A2のKインクの有効画素からはみ出して、CMYインクの画素401が配置されると、画素307a,307bが、CMYのインクに対してKのインクが重畳されていない色つき領域となる。同様に、注目画素A3,A4のKインクの有効画素からはみ出して、CMYインクの画素402が配置されると、画素307c,307dが、CMYのインクに対してKのインクが重畳されていない色つき領域となる。
そのため、色つき判定部81bは、画素307a,307bや画素307c,307dのような色つき領域がある場合に、色つきが発生すると判定する。
そして、色つき判定部81bは、注目画素A1〜A4のKインクの有効画素に対して、色つきが発生する画素307a〜307dの方向を色つき方向X1として特定する。このように、主走査方向に配列された細線の場合、色つき方向としては、X1方向かX2方向のいずれか一方となり、例えば、副走査方向に配列された細線の場合、色つき方向としては、X3方向かX4方向のいずれか一方となる。
図5に戻り、ステップS121において、色つき方向が特定されると、隣接画素有無判定部81cは、隣接画素があるか否かを判定する(S123)。具体的には、隣接画素有無判定部81cは、画素401をCMYインクの注目画素としたときに、CMYインクの注目画素401に隣接する画素があるか否か、即ち、周辺領域の色つきが発生する側のさらに周辺領域B1である隣接領域B2にK(第1インク色)の有効画素があるか否かを判定する。
図6(b)に示した例では、周辺領域B1の色つきが発生する画素307a〜307d側のさらに周辺領域である画素308a〜308dが、隣接領域B2となる。
ここでは、隣接領域B2の画素308a〜308dのKインクのドロップ数は“0”であるので、隣接画素有無判定部81cは、隣接領域にKインクの有効画素はない、即ち隣接画素はないと判定する。
図5に戻り、ステップS123において、隣接画素はないと判定された場合(NOの場合)、補正ドロップデータ生成部81dは、注目画素のKのドロップ数を色つきが発生する方向に分配することにより補正ドロップデータを生成する(S125)。
図7は、図5に示した本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1のフローチャートにおけるステップS125の処理を説明した図である。図7(a)は、CMYKのインクの配置の一例を示した図であり、図7(b)(c)は、Kインクのドロップ数の分配の一例を示した図である。
図7(a)に示した例では、Kのドロップデータ601,602からはみ出して、CMYのドロップデータ603が配置されており、CMYのインクに対してKのインクが重畳されていない色つき領域604が発生している。
そこで、図7(b)に示すように、補正ドロップデータ生成部81dは、10(ドロップ)のKのドロップデータ601を、8(ドロップ)のKのドロップデータ611と、2(ドロップ)のKのドロップデータ613とに分配し、2(ドロップ)のKのドロップデータ613を色つき領域604を埋めるように配置する。同様に、補正ドロップデータ生成部81dは、10(ドロップ)のKのドロップデータ602を、8(ドロップ)のKのドロップデータ612と、2(ドロップ)のKのドロップデータ614とに分配し、2(ドロップ)のKのドロップデータ614を色つき領域604を埋めるように配置する。
このようにして、本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1は、周辺領域においてCMYのインクに対してKのインクが重畳されていない色つきの発生を防止することができる。
なお、図7(b)に示した例では、ドロップデータ611のドロップ数とドロップデータ613のドロップ数との分配割合を8:2としたが、これに限らない。
図7(c)に示すように、補正ドロップデータ生成部81dは、10(ドロップ)のKのドロップデータ601を、5(ドロップ)ずつKのドロップデータ621,623に分配し、ドロップデータ623で色つき領域604を埋めるように配置する。同様に、補正ドロップデータ生成部81dは、10(ドロップ)のKのドロップデータ602を、5(ドロップ)ずつKのドロップデータ622,624に分配し、ドロップデータ624で色つき領域604を埋めるように配置してもよい。
また、このKのドロップデータの分配割合は、画像の種類に応じて決定しても良いし、用紙Pの用紙種類に応じて決定しても良い。
例えば、Kのドロップデータが文字列である場合、文字認識率を上げるために、線幅を広げることなく、色つきを低減させることが望ましい。
そこで、補正ドロップデータ生成部81dは、線幅を広げないように、図7(b)に示すように、ドロップデータ611のドロップ数とドロップデータ613のドロップ数との分配割合を8:2とする。
一方、Kのドロップデータが写真画像である場合、色ムラの発生を防止するために、補正ドロップデータ生成部81dは、図7(c)に示すように、ドロップデータ621のドロップ数とドロップデータ623のドロップ数との分配割合を5:5とする。
このように、Kのドロップデータの分配割合を、画像の種類に応じて決定することにより、認識性や色ムラなどの影響度合いが異なる画像の種類に応じて適切な配分を行うことができる。
また、分配割合を用紙Pの用紙種類に応じて決定する場合、用紙Pの浸透性に基づいて分配割合を決定するようにしてもよい。
例えば、用紙Pが普通紙の場合、浸透性が高いのでインクが滲みやすく、マット紙は、浸透性が低いのでインクは滲み難い。インクジェット用紙の浸透性は、普通紙とマット紙との中間の浸透性を有する。
そこで、用紙Pの浸透性が高い場合、即ち、用紙Pが普通紙の場合、線幅を広げないように、図7(b)に示すように、ドロップデータ611のドロップ数とドロップデータ613のドロップ数との分配割合を8:2とする。
一方、用紙Pの浸透性が低い場合、即ち、用紙Pがマット紙の場合、より色つき低減の効果を得るため、図7(c)に示すように、ドロップデータ611のドロップ数とドロップデータ613のドロップ数との分配割合を5:5とする。
また、用紙Pの浸透性が中程度の場合、即ち、用紙Pがインクジェット用紙の場合、その中間として、ドロップデータ611のドロップ数とドロップデータ613のドロップ数との分配割合を6:4とする。
このように、補正ドロップデータ生成部81dは、Kのドロップ数を色つきが発生する方向に分配することにより補正ドロップデータを生成する。
図5に戻り、ステップS123において、隣接画素があると判定された場合(YESの場合)、ステップS125のような分配処理を実行すると、分配により色つき領域を埋めるように配置された周辺領域の有効画素と、隣接領域の有効画素が接触し、細線が太線になるなど元画像と異なる画像となって印刷される場合がある。
そこで、補正ドロップデータ生成部81dは、隣接画素がある場合、Kのドロップデータの分配処理を行わない。
この場合、色つきが発生してしまうので、補正ドロップデータ生成部81dは、色つき原因となるCMYのドロップデータを削除することにより、CMYKのインクを吐出しないように補正ドロップデータを生成する(S127)。
このように、コンポジット黒を印刷する場合、隣接画素があると判定された場合、CMYKのインクを吐出しないように補正ドロップデータを生成することにより、黒色の濃度は低くなるものの、画像同士の接触を防止しつつ、色つきの発生も防止することができる。
一方、ステップS131において、注目画素が孤立点であると判定されると、色つき判定部81bは、CMYのドロップデータを取得し(S133)、CMYの色つきが発生すると判定された場合(S135;YES)、色つき方向を特定する(S137)。
図6(a)に示した例では、注目画素AにあるKインクの有効画素に重畳するように、CMYインクの画素403が配置されている。このとき、CMYインクの画素401が重畳している周辺領域B1の画素302c,303b,303cのKインクのドロップ数は“0”である。
このように、注目画素AのKインクの有効画素からはみ出して、CMYインクの画素403が配置されると、画素302c,303b,303cが、CMYのインクに対してKのインクが重畳されていない色つき領域となる。
そのため、色つき判定部81bは、画素302c,303b,303cのような色つき領域がある場合に、色つきが発生すると判定し、注目画素AのKインクの有効画素に対して、色つき領域が発生する画素302cの方向であるX3方向と、色つき領域が発生する画素303cの方向であるX8方向と、色つき領域が発生する画素302bの方向であるX1方向との3方向を色つき方向として特定する。
このように、孤立点の場合、色つき方向としては、X3,X8,X1方向か、X1,X6,X4か、X4,X7,X2方向か、X2,X5,X3方向かのいずれかとなる。
図5に戻り、ステップS137において、色つき方向が特定されると、隣接画素有無判定部81cは、隣接画素があるか否かを判定する(S139)。隣接画素有無判定部81cは、隣接画素があるか否かを判定する(S139)。具体的には、隣接画素有無判定部81cは、画素403をCMYインクの注目画素としたときに、CMYインクの注目画素403に隣接する画素があるか否か、即ち、周辺領域B1の色つきが発生する側のさらに周辺領域である隣接画素B2にK(第1インク色)の有効画素があるか否かを判定する。
図6(a)に示した例では、周辺領域B1の色つきが発生する画素302c,303b,303c側のさらに周辺領域である画素301d,302d,303d,304d,304c,304b,304aが、隣接領域B2となる。
ここでは、隣接領域B2のKインクのドロップ数は“0”であるので、隣接画素有無判定部81cは、隣接領域B2にKインクの有効画素はない、即ち隣接画素はないと判定する。
図5に戻り、ステップS139において、隣接画素はないと判定された場合(NOの場合)、補正ドロップデータ生成部81dは、注目画素のKのドロップ数を色つきが発生する周辺領域の画素に分配することにより補正ドロップデータを生成する(S125)。
図8は、図5に示した本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1のフローチャートで孤立点の場合におけるステップS125の処理を説明した図である。図8(a)は、CMYKのインクの配置の一例を示した図であり、図8(b)(c)は、Kインクのドロップ数の分配の一例を示した図である。
図8(a)に示した例では、Kのドロップデータ701からはみ出して、CMYのドロップデータ703が配置されており、CMYのインクに対してKのインクが重畳されていない色つき領域704が発生している。
そこで、図8(b)に示すように、補正ドロップデータ生成部81dは、10(ドロップ)のKのドロップデータ701を、5(ドロップ)のKのドロップデータ711と、X3方向の1(ドロップ)のKのドロップデータ712と、X8方向の3(ドロップ)のKのドロップデータ714と、X1方向の1(ドロップ)のKのドロップデータ713と、に分配し、色つき領域704を埋めるように配置する。
なお、図8(b)に示した例では、ドロップデータ711のドロップ数と、ドロップデータ712のドロップ数と、ドロップデータ713のドロップ数と、ドロップデータ714のドロップ数との分配割合を、5:1:1:3としたが、これに限らない。
図8(c)に示すように、補正ドロップデータ生成部81dは、10(ドロップ)のKのドロップデータ701を、4(ドロップ)のKのドロップデータ721と、2(ドロップ)ずつKのドロップデータ722,723,724とに分配し、色つき領域704を埋めるように配置してもよい。
また、このKのドロップデータの分配割合は、細線と同様に、画像の種類に応じて決定しても良いし、用紙Pの用紙種類に応じて決定しても良い。
例えば、Kのドロップデータが文字列である場合、文字認識率を上げるために、線幅を広げることなく、色つきを低減させるために、補正ドロップデータ生成部81dは、線幅を広げないように、図8(b)に示すように、ドロップデータ711のドロップ数と、ドロップデータ712のドロップ数と、ドロップデータ713のドロップ数と、ドロップデータ714のドロップ数との分配割合を、5:1:1:3とする。
一方、Kのドロップデータが写真画像である場合、色ムラの発生を防止するために、補正ドロップデータ生成部81dは、図8(c)に示すように、ドロップデータ721のドロップ数と、ドロップデータ722のドロップ数と、ドロップデータ723のドロップ数と、ドロップデータ724のドロップ数との分配割合を、4:2:2:2とする。
このように、Kのドロップデータの分配割合を、画像の種類に応じて決定することにより、認識性や色ムラなどの影響度合いが異なる画像の種類に応じて適切な配分を行うことができる。
また、分配割合を用紙Pの用紙種類に応じて決定する場合、用紙Pの浸透性に基づいて分配割合を決定するようにしてもよい。
例えば、用紙Pが普通紙の場合、浸透性が高いのでインクが滲みやすく、マット紙は、浸透性が低いのでインクは滲み難い。インクジェット用紙の浸透性は、普通紙とマット紙との中間の浸透性を有する。
そこで、用紙Pの浸透性が高い場合、即ち、用紙Pが普通紙の場合、線幅を広げないように、図8(b)に示した分配割合とし、用紙Pの浸透性が低い場合、即ち、用紙Pがマット紙の場合、より色つき低減の効果を得るため、図8(c)に示した分配割合とする。
このように、補正ドロップデータ生成部81dは、Kのドロップ数を色つきが発生する方向に分配することにより補正ドロップデータを生成する。
図5に戻り、ステップS125において、補正ドロップデータが生成されると、全ドロップデータを判定したか否かを判定する(S140)。これにより、全ての画素について、注目画素として、ステップS107以降の処理を実行することができるので、画像データの全体に対して、画像の識別性を低下させることなく、色つきの発生を防止することができる。
以上のように、本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置1によれば、画像データに基づいて、インク色毎に各画素のドロップ数を示すドロップデータを生成するドロップデータ生成部81aと、ドロップデータ生成部81aにより生成されたドロップデータに基づいて、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)(第2インク色)のインクの注目画素が第2インク色のインクに対してブラック(K)(第1インク色)のインクの画素と重畳しないとき色つきが発生すると判定する色つき判定部81bと、色つき判定部81bにより、色つきが発生すると判定された場合、色つきが発生する第2インク色のインクの注目画素に対して所定の方向に第1インク色のインクを吐出する隣接画素があるか否かを判定する隣接画素有無判定部81cと、隣接画素有無判定部81cにより隣接画素がないと判定された場合に、色つきが発生すると判定された第2インク色のインクの画素と重畳する第1インク色のインクのドロップ数を色つきが発生すると判定された第2インク色のインクの画素と重畳しない画素に分配する補正ドロップデータを生成する補正ドロップデータ生成部81dとを備えるので、画像の識別性を低下させることなく、色つきの発生を防止することができる。
また、本発明の一実施例では、それぞれ2列に配置されたノズル列を有するインクジェットヘッド110,112,114を備えたインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明したが、ノズル列は2列に限らず、3列以上であってもよい。