JP6154125B2 - 油分離器内蔵の圧縮機 - Google Patents
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Description
特許文献1では、スクロール圧縮機構の固定スクロールの端板に対向するリアハウジングに外周部から孔あけすることによって、円筒状の空間(油分離室)を内包する油分離器を形成している。その油分離器の上部には、冷媒ガスの導入口が形成されている。その導入口から導入されて油分離器の内周面に沿って移動する冷媒ガスを油分離器の下部に向けてガイドするために、油分離器内の上部には、筒状の下降流発生部が設置されている。下降流発生部は、油分離器の下部に向けて立ち上がる螺旋状のガイド面が形成された部品とされている。
また、特許文献2では、固定スクロールの端板に形成されるリブと、端板に対向するケーシングに形成されるリブとが合体されることで油分離器が構成されている。冷媒ガスの導入口は、固定スクロール側の側壁に形成されている。
また、特許文献3のように、衝突による分離と遠心分離とを組み合わせることによっても、良好な油分離性能が得られるが、部品点数が増加し、コスト増、大型化を招く。
一方、特許文献2のように、スクロール端板とケーシングとに形成される一対のリブにより油分離器を構成すれば、コスト、サイズは抑えられる。しかし、油分離の性能を上げるために下降流形成部を設置しようとすると、コスト増、大型化を招く。
それを上述したガス流のガイド部を設けることなく実現するためには、導入口からガスを旋回流に対する接線方向下側に向けて確実に導入する。
それには、例えば、圧縮機構との間にチャンバを形成するハウジングに、図8に示すように、孔あけにより円筒状の油分離室81を形成するとともに、その油分離室81の軸線に対して交差する方向からの孔あけにより導入経路82を形成する。ここでは、必要流量を確保するために導入経路82が2本形成されている。それらの導入経路82は、旋回流の接線方向下側に向けてガスが導入されるように、油分離器の径方向に対して所定の傾きを持って油分離室の側壁を貫通している。油分離室81に通じるハウジング80外周部の開口83は、外部に向けてガスを吐出するポートとして用いられる。
上記の構成によれば、チャンバ内のガスが導入経路82を流れることでガス流の向きが定まるので、導入経路82の終端82Aの開口から、狙いの向きでガスが導入される。しかし、油分離室81とは別途、導入経路82の孔あけを要する上、導入経路82に通じるハウジング80外周部の開口84を塞ぐ処置が必要となる。
しかも、油分離室81内の側方から、旋回流の接線方向下側に向けて孔あけするのに十分な肉厚が必要となるので、ハウジング80が厚くなる。それにより、圧縮機の小型化が阻害されてしまう。
そうしてなされた本発明の圧縮機は、流体を圧縮して吐出する圧縮機構と、圧縮機構との間に、圧縮機構から吐出される流体のチャンバを形成するハウジングと、を備えている。
圧縮機構のハウジング側に位置する部分、およびその部分に対向するハウジングの部分とのいずれか一方である第1対向部には、流体から油が遠心分離される分離室を内包する油分離器が設けられている。
そして、本発明は、チャンバ内の流体を分離室に導入するための導入部が、油分離器を貫通する貫通孔と、第1対向部に対向する第2対向部において貫通孔に対向する孔対向部と、を備え、導入部には、貫通孔の周縁部の一端側から孔対向部まで立ち上がる正面壁と、周縁部の他端側をなし、正面壁に対して交差する方向に延在し、孔対向部に間隔をおいて対向する気流案内縁と、が形成され、導入部は、分離室の一端側に形成され、正面壁において分離室の一端側から、気流案内部側に向けて第1側壁が形成され、第1側壁は、正面壁との間に鈍角をなし、正面壁において分離室の他端側から、気流案内縁に向けて第2側壁が形成され、第2側壁は、正面壁に対して第1側壁よりも小さい鈍角で正面壁に対して傾斜していることを特徴とする。
本発明の圧縮機では、導入部は、分離室の一端側に形成され、正面壁において分離室の一端側から、気流案内部側に向けて第1側壁が形成され、第1側壁は、正面壁との間に鈍角をなしている。
第1側壁により、流体に分離室の他端側に向かう成分を付与できるため、気流のガイド部材を別途設けることなく、分離室の他端側に向かう旋回流を確実に形成することができる。これにより、コストを抑えながら、分離室の全体に亘り遠心分離作用を発揮させて、油分離効果を向上させることができる。
正面壁に対する勾配が第2側壁よりも第1側壁の方が大とされるため、上述した第1側壁による流体の配向効果が維持される。
その上で、第1側壁と第2側壁との間に、気流案内縁側で拡がり、正面壁側で狭まる流路が形成されるので、拡開側から流体がスムーズに流入し、流路が次第に狭くなるにつれて流体が流速を上げて正面壁に衝突する。それにより、衝突による油分離の効果を向上させることができる。
このようにすると、正面壁の案内縁側の面が油分離器の内周面に向いていない場合と比べて、壁面衝突時の圧力損失が小さくなるために、遠心分離による油分離の効率を高めることができる。
そうすると、導入部から分離室内に導入される流体が、パイプの外周面と分離室の内周面との間で旋回流を形成し、油が分離された流体がパイプの内側を通って上昇するので、上昇する流体によって油を巻き上げることを防止できる。
その凹凸の形成による表面積増大により、油の捕捉量が増すので、油の分離効率を向上させることができる。
図1に示す圧縮機1は、モータ10と、モータ10の出力により回転されるスクロール圧縮機構11と、それらを収容するハウジング12と、モータ10を駆動制御する回路部13と、それを収納する回路収納部14とを備えている。
圧縮機1は、モータ10により回転される回転軸15を水平方向に向けて車両に設置され、車両に搭載される空気調和機を構成する。
スクロール圧縮機構11は、ハウジング12に固定される固定スクロール30と、回転軸15に固着された偏心ピン18にブッシュ19を介して設けられる旋回スクロール17とを備えている。回転軸15の回転に伴って旋回スクロール17が固定スクロール30に対して公転旋回運動される。
モータ10が位置する本体ハウジング21の他端側には、空気調和機の冷媒回路から本体ハウジング21内に冷媒ガスを吸入するための吸入管24が設けられている。また、本体ハウジング21の他端側には、回路収納部14が一体化されている。
これら固定スクロール30の端板31およびサイドハウジング40は、鉛直方向に沿っていずれも起立した姿勢とされ、互いに対向している。
図2に示す固定スクロール30の端板31は、略円盤状とされ、その中央部には、固定スクロール30と旋回スクロール17との間に形成される圧縮室から吐出チャンバR1内に冷媒ガスを吐出するための吐出ポート31Pが厚み方向に貫通して形成されている。端板31には、冷媒圧力が過大になると開通するバイパスポート32,33も形成されている。それら吐出ポート31Pおよびバイパスポート32,33には図示しないリード弁が設けられており、そのリード弁はリテーナ34により所定の開度に規制されている。
それらのボス部35のうち2つを繋ぐリブ37が背面36に突設されている。
リブ37よりも下方には、端板31を厚み方向に貫通する油戻し孔38が形成されている。
油戻し孔38は、端板31の下端部に位置し、その周縁部がボス部35と同じ高さで背面36から突出している。
また、背面36には、サイドハウジング40に設けられる油分離器50の貫通孔61(図3)に対向する孔対向部62も突設されている。孔対向部62には、貫通孔61の周縁部全体を覆う大きさの平坦な先端面621が形成されている。
孔対向部62は、一つのボス部35に一体化されている。
円環状の周壁42の周方向の複数箇所には、本体ハウジング21にサイドハウジング40を締結するためのボルト45(図1)が各々挿通されるボルト挿通部44が形成されている。
また、ハウジング側対向部41の内面には、端板31のリブ37に対応する位置に隔壁43が突設されている。隔壁43にリブ37が突き当てられることにより、図1に示すように、吐出チャンバR1と、吐出チャンバR1よりも容積が小さい下側の貯油室R2とにサイドハウジング40の内部が仕切られている。
隔壁43よりも上方には、吐出チャンバR1内の冷媒が所定圧力よりも高圧になると開通するHPリリーフバルブ25が設けられている(図1にも記載)。
貯油室R2内には、油分離器50の底部53から排出される油を一旦受け止める堰部48が形成されている。
堰部48の外側には、端板31の油戻し孔38の周縁部に突き当てられる油戻し孔対向部46が設けられている。
油戻し孔対向部46には、周壁42の下端部内周に沿って、油戻し孔38の周縁部に突き当てられる部分から一段低い溝462が形成されている。
貯油室R2内の油は、溝462から油戻し孔38に入り、本体ハウジング21内へと戻される。
上記のような油戻し孔38および油戻し孔対向部46の構造によれば、溝462に流入する油によって溝462を冷媒ガスに対して封止できるので、油戻し孔38への冷媒ガスの吹き抜けを防止できる。
油分離器50は、その軸線方向Aがハウジング側対向部41の姿勢に倣って起立した姿勢で、サイドハウジング40に一体に形成されている。油分離器50の本体である分離器本体51は、その半分程度がハウジング側対向部41に埋設され、残りの半分程度がハウジング側対向部41上に露出している。
なお、分離器本体51に、円筒状のパイプを採用し、そのパイプをハウジング側対向部41に固定することもできる。
また、分離器本体51は、鉛直方向に対して傾斜した姿勢に設けることもできる。
分離室52は、サイドハウジング40の外周から、隔壁43までの孔あけにより、油分離器50と軸線が一致する有底筒状に形成されている。サイドハウジング40外周の開口が、上述の吐出ポート55とされている。分離室52の横断面は、必ずしも真円でなくてもよく、少し偏平な円や楕円も許容される。
分離室52の上端側に、分離室52内に冷媒を導入するための導入部60が位置している。導入部60は、分離器本体51を貫通する貫通孔61と、上述した端板31の孔対向部62とを備えている。
貫通孔61は、分離室52が延在する軸線方向Aに沿って、ハウジング側対向部41を平面視したときに縦長に形成されている。
その貫通孔61の周縁部61Aは、正面壁70と、第1側壁71と、第2側壁72と、案内縁73とを有している。正面壁70、第1側壁71、および第2側壁72は、分離器本体51から孔対向部62の先端面621に対して垂直に立ち上がっている。
正面壁70が、分離室52の肉厚を径方向に沿って切削することで形成されているのに対し、貫通孔61の幅方向の他端側に位置する案内縁73は、図5(a)に示すように、分離器本体51の肉厚を径方向に対して傾斜する方向に沿って切削することで形成されている。その切削面は、分離器本体51の肉厚を正面壁70に対して直交方向に横断している。それにより、案内縁73は、正面壁70に対しては直交方向に延在し、孔対向部62に対しては平行に間隔をおいて延在している。冷媒ガスは、案内縁73と孔対向部62との間で整流され、正面壁70に向けて案内される。
第1側壁71は、正面壁70の一端側から案内縁73と重なる位置まで形成されている。第1側壁71は、正面壁70に滑らかに連続し、正面壁70との間に鈍角(90°<θ1<180°)の角度θ1をなしている。
第2側壁72は、正面壁70の他端側から案内縁73の手前まで形成されている。第2側壁72は、正面壁70に滑らかに連続し、正面壁70に対して、角度θ1よりも小さい鈍角の角度θ2をなして傾斜している。
角度θ1および角度θ2が鈍角とされているので、第1側壁71と第2側壁72の間の間隔Sは、案内縁73側に向けて次第に拡がり、その反対に、正面壁70に向けて次第に狭まっている。
上方に向いている第2側壁72よりも下方に向いている第1側壁71の方が、正面壁70に対する勾配が大きいため(θ1>θ2)、第1側壁71と第2側壁72との間を流れる冷媒ガス流には、下方に向かう成分が与えられる。
孔対向部62と正面壁70、第1側壁71、および第2側壁72とは、その間にシール部材などを挟んで突き当てられていてもよい。
なお、正面壁70、第1側壁71、および第2側壁72は、孔対向部62に形成することもできる。
図6(a)では、いずれも孔対向部62から突出する正面壁70、第1側壁71、および第2側壁72(図示省略)の各々の先端面が貫通孔61の周縁部に突き当てられている。
そして、図6(b)では、正面壁70、第1側壁71、および第2側壁72(図示省略)の各々が、孔対向部62から貫通孔61の周縁部に向けて突出する部分P1と、貫通孔61の周縁部から孔対向部62に向けて突出し、部分P1に突き当てられる部分P2とから構成されている。
冷媒ガスから分離された油は、底部53の油排出孔54から貯油室R2へと流出し、油戻し孔対向部46の溝462を経由し、油戻し孔38に設けられた図示しない絞りを経て、本体ハウジング21内に戻される。そして、本体ハウジング21内の冷媒ガスに混入された状態で、軸受等の摺動部に供給される。
なお、油戻し孔38に設けられる絞りは、細長い管路や螺旋ピン等で形成される。
そうすることにより、導入部60を最小限の厚みで形成することができる。導入部60を含めた油分離器50を薄型化できることにより、圧縮機1の小型化・軽量化に寄与できる。
しかも、導入部60は、案内縁73と孔対向部62との間に開口し、その開口に正面壁70が正対する構造とされるので、正面壁70への衝突による分離作用と、分離室52内の旋回流による遠心分離作用とによって、良好な油分離性能を得ることができる。
本実施形態の導入部60により、冷媒ガスを衝突させるための他の部材を油分離器50に設けることなく、衝突による分離作用が得られるので、油分離器50の部品点数が増えず、部品調達や組み付けのコストを抑えられる。
なお、図示を省略するが、冷媒ガス流に下方に向かう成分を付与する目的で、正面壁70の第1側壁71側の端部が案内縁73に近づくように、正面壁70を軸線方向Aに対して傾斜させることもできる。
さらに、第1側壁71と第2側壁72との間隔Sが正面壁70に向けて次第に狭められていることにより流速が高まるので、油の分離効率を高めることができる。
導入部60から分離室52内に導入される冷媒ガスは、パイプ58の外周面と分離室52の内周面との間で旋回流を形成する。そして、油が分離された冷媒ガスはパイプ58の内側を通って上昇する。パイプ58により、外周側の油分離の流路と、油が除去された冷媒ガスの流路とが隔てられるので、上昇するガス流によって油を巻き上げることなく、油が除去された冷媒ガスをそのまま吐出ポート55から吐出させることができる。また、導入部60から導入される冷媒ガスが、油分離後の冷媒ガス流により巻き上げられて上昇することなく、底部53まで旋回流を形成するので、確実に遠心分離できる。
本発明は、第2側壁72が正面壁70に対して直角をなしていたり、若干鋭角に形成されている構成をも許容する。
その他、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
10 モータ
11 スクロール圧縮機構
12 ハウジング
13 回路部
14 回路収納部
15 回転軸
17 旋回スクロール
21 本体ハウジング
23 固定部
24 吸入管
25 HPリリーフバルブ
29 吐出管
30 固定スクロール
31 端板(第2対向部)
31P 吐出ポート
35 ボス部
36 背面
37 リブ
38 油戻し孔
40 サイドハウジング
41 ハウジング側対向部(第1対向部)
42 周壁
43 隔壁
44 ボルト挿通部
45 ボルト
46 油戻し孔対向部
47 ボス部
48 堰部
49 ボルト
50 油分離器
51 分離器本体
51A 内周面
52 分離室
53 底部
54 油排出孔
55 吐出ポート
58 パイプ
60 導入部
61 貫通孔
61A 周縁部
62 孔対向部
70 正面壁
70A 斜面
71 第1側壁
72 第2側壁
73 案内縁(気流案内縁)
621 先端面
A 軸線方向
R1 吐出チャンバ
R2 貯油室
θ1,θ2 角度
Claims (5)
- 流体を圧縮して吐出する圧縮機構と、
前記圧縮機構との間に、前記圧縮機構から吐出される流体のチャンバを形成するハウジングと、を備え、
前記圧縮機構の前記ハウジング側に位置する部分、およびその部分に対向する前記ハウジングの部分とのいずれか一方である第1対向部に、流体から油が遠心分離される分離室を内包する油分離器が設けられ、
前記チャンバ内の流体を前記分離室に導入するための導入部は、
前記油分離器を貫通する貫通孔と、
前記第1対向部に対向する第2対向部において前記貫通孔に対向する孔対向部と、を備え、
前記導入部には、
前記貫通孔の周縁部の一端側から前記孔対向部まで立ち上がる正面壁と、
前記周縁部の他端側をなし、前記正面壁に対して交差する方向に延在し、前記孔対向部に間隔をおいて対向する気流案内縁と、が形成され、
前記導入部は、前記分離室の一端側に形成され、
前記正面壁において前記分離室の一端側から、前記気流案内部側に向けて第1側壁が形成され、
前記第1側壁は、前記正面壁との間に鈍角をなし、
前記正面壁において前記分離室の他端側から、前記気流案内縁に向けて第2側壁が形成され、
前記第2側壁は、前記正面壁に対して前記第1側壁よりも小さい鈍角で前記正面壁に対して傾斜している、
ことを特徴とする圧縮機。 - 前記孔対向部には、前記貫通孔の前記周縁部の全体を覆う大きさの平坦な先端面が形成されている、
請求項1に記載の圧縮機。 - 前記正面壁の前記気流案内縁側の面は、前記貫通孔を通じて前記油分離器の内周面に向いている、
請求項1または2に記載の圧縮機。 - 前記分離室内には、パイプが設置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の圧縮機。 - 前記正面壁の表面および前記油分離器の内周面の少なくとも一方には、凹凸が付けられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の圧縮機。
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