JP6152929B1 - 油井用低合金高強度継目無鋼管 - Google Patents

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Abstract

耐SSC性に優れた油井用低合金高強度継目無鋼管を提供する。質量%で、C:0.25〜0.31%、Si:0.01〜0.35%、Mn:0.45〜0.70%、P:0.010%以下、S:0.001%以下、O:0.0015%以下、Al:0.015〜0.080%、Cu:0.02〜0.09%、Cr:0.8〜1.5%、Mo:1.1〜1.6%、V:0.01〜0.06%、Nb:0.005〜0.015%、B:0.0015〜0.0030%、Ti:0.005〜0.020%、N:0.005%以下、を含有し、N含有量に対するTi含有量の比の値(Ti/N)が3.0〜4.0であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、応力−歪曲線における0.4%歪時の応力に対する0.7%歪時の応力の比の値(σ0.7/σ0.4)が1.02以下であり、降伏強度が861MPa以上であるようにする。

Description

本発明は、油井やガス井用の、特に硫化水素を含むサワー環境下における耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)に優れた高強度継目無鋼管に関する。なお、ここでいう「高強度」とは、降伏強度が861MPa以上(125ksi以上)の強度を有する場合をいうものとする。
近年、原油価格の高騰や、近い将来に予想される石油資源の枯渇という観点から、従来、省みられなかったような高深度の油田や、硫化水素等を含む、いわゆるサワー環境下にある厳しい腐食環境の油田やガス田等の開発が盛んになっている。このような環境下で使用される油井用鋼管には、高強度で、かつ優れた耐食性(耐サワー性)を兼ね備えた材質を有することが要求される。
このような要求に対し、例えば、特許文献1には、重量%で、C:0.2〜0.35%、Cr:0.2〜0.7%、Mo:0.1〜0.5%、V:0.1〜0.3%を含む低合金鋼からなり、析出している炭化物の総量とその内のMC型炭化物の割合を規定した、耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼が開示されている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.10〜1.0%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.1〜1.0%、Al:0.003〜0.08%、N:0.008%以下、B:0.0005〜0.010%、Ca+O(酸素):0.008%以下を含み、さらにTi:0.005〜0.05%、Nb:0.05%以下、Zr:0.05%以下、V:0.30%以下から選択される1種または2種以上を含有する鋼の鋼中介在物性状について、連続した非金属介在物の最大長さおよび粒径20μm以上の個数を規定した、耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼材が開示されている。
また、特許文献3に、質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜2.5%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.001〜0.1%、Ca:0.0005〜0.005%を含有する鋼のCa系非金属介在物組成、CaとAlの複合酸化物および鋼の硬さをHRCで規定した、耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼が開示されている。
これらの特許文献1〜3に開示された技術の鋼の耐硫化物応力腐食割れ性とは、NACE(National Association of Corrosion Engineeringの略)TM0177 method Aに規定されている、丸棒引張試験片をNACE TM0177記載の試験浴中で一定応力を負荷したまま720時間浸漬した際のSSC発生の有無を意味している。一方、近年、油井用鋼管のさらなる安全確保を目的に、NACE TM0177 method Dに規定されている、DCB(Double Cantilever Beam)試験を実施することにより得られる硫化水素腐食環境下での応力拡大係数KISSC値が規定値以上を満足することが求められるようになりつつある。上記先行技術にはこのようなKISSC値を向上させる具体的な対策は開示されていない。
一方、特許文献4には、質量%で、C:0.2〜0.35%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.025%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.10%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.5〜1.0%、Ti:0.002〜0.05%、V:0.05〜0.3%、B:0.0001〜0.005%、N:0.01%以下、O:0.01%以下を含有する鋼の[211]結晶面の半価幅と水素拡散係数からなる式を所定の値に規定することで、耐硫化物応力腐食割れ性に優れた、降伏強度861MPa以上の低合金油井管用鋼が開示されている。この文献の実施例には、上述のKISSC値も記載されている。
特開2000−178682号公報 特開2001−172739号公報 特開2002−60893号公報 特開2005−350754号公報
しかしながら、特許文献4の実施例におけるKISSC値は、0.1atm(=0.01MPa)の硫化水素ガスを飽和させた5質量%食塩+0.5質量%酢酸水溶液(「A浴」と記載)のものがほとんどで、降伏強度が861MPa超えのもので1atm(=0.1MPa)の硫化水素ガスを飽和させた5質量%食塩+0.5質量%酢酸水溶液(「B浴」と記載)での実施例は記載されていない。一般に、耐硫化物応力腐食割れ性は硫化水素ガス飽和分圧が大きいほど感受性が高くなることが知られており、今後開発がなされる、高い硫化水素ガス飽和条件の井戸環境にて、上述の降伏強度861MPa以上の油井用低合金鋼管として使用するにはまだ不安がある。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、降伏強度861MPa以上の高強度を有しつつ、さらに高い硫化水素ガス飽和環境、具体的には硫化水素ガス分圧0.02MPa以下のサワー環境下における優れた耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)、特に、安定して高いKISSC値を示す油井用低合金高強度継目無鋼管を提供することを目的としている。
本発明者等は、上述の課題を解決するため、最初に種々の化学組成および鋼のミクロ組織を有する降伏強度が861MPa以上の継目無鋼管から、NACE TM0177 method Dにもとづいて、厚さ10mm、幅25mm、長さ100mmのDCB試験片を各3本以上ずつ採取し、DCB試験に供した。DCB試験の試験浴は、0.2気圧(0.02MPa)の硫化水素ガスを飽和させた24℃の0.5質量%CHCOOH+CHCOONa混合水溶液とした。この試験浴に所定条件で楔を導入したDCB試験片を336時間浸漬した後、浸漬中にDCB試験片に発生した亀裂の長さaと、楔開放応力Pを測定し、下記式(2)によってKISSC(MPa√m)を算出した。
Figure 0006152929
ここで、図1は、DCB試験片の模式図である。図1に示すように、hはDCB試験片の各アーム高さ(height of each arm)、BはDCB試験片の厚さ、BnはDCB試験片のウェブ厚さ(web thickness)である。これらは、NACE TM0177 method Dに規定された数値を用いた。なお、KISSC値の目標は、油井管の想定最大切欠欠陥と負荷加重条件から26.4MPa√m以上(24ksi√inch以上)とした。得られたKISSC値を、試験片を供した継目無鋼管の平均硬さ(ロックウェルCスケール硬さ)で整理したグラフを図2に示す。DCB試験で得られたKISSC値は、継目無鋼管の硬さの増加に伴い低下する傾向にあるが、同じ硬さでも数値が大きくばらつくことがわかった。
さらに、鋼の化学組成に着目すると、同じ硬さでもMo含有量が1.1%以上の鋼種は、KISSC値が高めの値を示していることがわかった。しかしながら、Mo含有量が1.1%以上のものであっても、まだばらつきの最小値は目標とする26.4MPa√m以上を満足しないものがあった。
このばらつきの原因を鋭意調査した結果、そのばらつき具合が、鋼管の降伏強度を測定した際に得られた応力−歪曲線によって異なることをつきとめた。図3に応力−歪曲線の例を示す。図3に示す2つの鋼管の応力−歪曲線(実線Aと破線B)は、降伏応力に相当する0.5〜0.7%歪の応力値は変わらないが、片方(破線B)は連続降伏をしており、もう片方(実線A)は上降伏点が現出している。そして、連続降伏型の応力−歪曲線(破線B)を呈した鋼の方がKISSC値のばらつきが大きいことを見出した。本発明者らは、さらに鋭意研究を行い、KISSC値のばらつきの大小を、この応力−歪曲線の0.4%歪時の応力(σ0.4)に対する0.7%歪時の応力(σ0.7)の比の値(σ0.7/σ0.4)によって整理を行い、図4に示すように、継目無鋼管のσ0.7/σ0.4を1.02以下とすることで、1.02超えの場合にくらべてKISSC値のばらつきを約半分にできしうることを見出した。
ここで、KISSC値のばらつきを約半分にするということは、硬さ−KISSC値相関においてKISSC値のばらつきの下限となる鋼の硬さが高硬度側まで広がることを意味する。具体的には、図4において、鋼管のσ0.7/σ0.4が1.02を超える場合(図中、白丸参照)は、ロックウェルCスケール硬さが30.2という低い値であっても、KISSC値の目標とした26.4MPa√mを下回る値が発生するのに対し、鋼管のσ0.7/σ0.4が1.02以下の場合(図中、黒丸参照)は、ロックウェルCスケール硬さが31.2という高い値であっても、26.4MPa√m以上を満足しうる。すなわち、高強度化しても安定して高いKISSC値を得ることができる。
以上より、硫化水素を含むサワー環境下で使用する継目無鋼管を高強度化しつつ、安定して高いKISSC値を得ることができるという知見が得られた。なお、継目無鋼管の応力−歪曲線における0.4%歪時の応力(σ0.4)に対する0.7%歪時の応力(σ0.7)の比の値が低いことによって安定して高いKISSC値を得ることができる理由として、以下の理由が考えられる。DCB試験のような初期切欠が存在する状態で応力が付与された際、その切欠先端で塑性変形が起こる可能性があり、塑性変形が起こった場合は硫化物応力腐食割れ感受性が増大する。一方で、図2に示すような、σ0.7/σ0.4が高い、すなわち0.4〜0.7%歪領域ではまだ連続降伏をしない引張特性を有する鋼の場合は、切欠先端の塑性変形が抑制できるため、硫化物応力腐食割れ感受性が変化せず、安定して高いKISSC値が得られる。
継目無鋼管のσ0.7/σ0.4を安定して1.02以下にするためには、後述する鋼の化学組成の限定に加え、応力−歪曲線を連続降伏型にしないように鋼のミクロ組織をマルテンサイトとし、かつマルテンサイト以外のミクロ組織の生成を極力抑制し、さらにMoの2次析出量を増加させるために、焼入れ時に焼入れ温度を高めてMoを極力固溶させる必要がある。なお、上記の2次析出量について、焼入れ前に析出していた析出Moを1次析出物とし、焼入れ時には固溶していて、焼戻し後に析出したMoを2次析出物とする。
一方、σ0.4値を高くするには結晶粒の細粒化が必要で、逆に焼入れ温度が低い方が好ましい。これらを両立するために、継目無鋼管の製造において、まず鋼管成形のための熱間圧延時の圧延終了温度を高くし、圧延終了後、直接焼入(DQとも記す。DQとは、熱間圧延終了段階において、まだ鋼管温度が高い状態からただちに焼入れを行うことを指す。)を施す。すなわち、圧延終了温度を高くして、一旦Moを極力固溶させ、その後鋼管の焼入および焼戻し熱処理時の焼入れ温度を低くすることで、上述したMoの2次析出量の増加とミクロ組織の細粒化が両立し、σ0.7/σ0.4を安定して1.02以下にすることができる。また、鋼管の熱間圧延後にDQを適用できない場合は、焼入および焼戻し熱処理を複数回行い、特に初回の焼入れ温度を1000℃以上に高温化することでDQの効果を代替することができる。
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、下記の要旨からなる。
[1]質量%で、
C:0.25〜0.31%、
Si:0.01〜0.35%、
Mn:0.45〜0.70%、
P:0.010%以下、
S:0.001%以下、
O:0.0015%以下、
Al:0.015〜0.080%、
Cu:0.02〜0.09%、
Cr:0.8〜1.5%、
Mo:1.1〜1.6%、
V:0.01〜0.06%、
Nb:0.005〜0.015%、
B:0.0015〜0.0030%、
Ti:0.005〜0.020%、
N:0.005%以下、
を含有し、
N含有量に対するTi含有量の比の値(Ti/N)が3.0〜4.0であり、
残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
応力−歪曲線における0.4%歪時の応力に対する0.7%歪時の応力の比の値(σ0.7/σ0.4)が1.02以下である降伏強度が861MPa以上である油井用低合金高強度継目無鋼管。
[2]前記組成に加えてさらに、質量%で、
W:0.1〜0.2%、
Zr:0.005〜0.03%
のうちから選ばれた1種または2種を含有する[1]に記載の油井用低合金高強度継目無鋼管。
[3]前記組成に加えてさらに、質量%で、
Ca:0.0005〜0.0030%
を含有し、さらに、質量%で、組成比が下記(1)式を満足する長径5μm以上のCaとAlとからなる酸化物系の鋼中非金属介在物の個数が100mm当り20個以下である[1]または[2]に記載の油井用低合金高強度継目無鋼管。
(CaO)/(Al)≧4.0 (1)
なお、ここでいう「高強度」とは、降伏強度が861MPa以上(125ksi以上)の強度を有することを指す。なお、降伏強度の上限値は、特に限定されないが、960MPaであることが好ましい。
また、本発明の油井用低合金高強度継目無鋼管は、耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)に優れており、耐硫化物応力腐食割れ性に優れるとは、NACE TM0177 methodDにもとづくDCB試験であって、0.2気圧(0.02MPa)の硫化水素ガスを飽和させた24℃の0.5質量%CHCOOHとCHCOONaとの混合水溶液を試験浴としたDCB試験を3回行った場合に3回全てにおいて、上記の式(2)から得られるKISSCが安定して26.4MPa√m以上であることを指す。
本発明によれば、降伏強度861MPa以上の高強度を有しつつ、さらに高い硫化水素ガス飽和環境、具体的には硫化水素ガス分圧0.02MPa以上のサワー環境下における優れた耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)、特に、安定して高いKISSC値を示す低合金高強度継目無鋼管を提供することができる。
DCB試験片の模式図である。 鋼管の硬さとKISSC値の関係を示す図である。 ISSC値のばらつき方が異なる鋼管の応力−歪曲線を示す図である。 鋼管の応力−歪曲線図から得られるσ0.7/σ0.4を1.02以下とすることでKISSC値のばらつきが低減することを示す図である。
本発明の鋼管は、質量%で、C:0.25〜0.31%、Si:0.01〜0.35%、Mn:0.45〜0.70%、P:0.010%以下、S:0.001%以下、O:0.0015%以下、Al:0.015〜0.080%、Cu:0.02〜0.09%、Cr:0.8〜1.5%、Mo:1.1〜1.6%、V:0.01〜0.06%、Nb:0.005〜0.015%、B:0.0015〜0.0030%、Ti:0.005〜0.020%、N:0.005%以下、を含有し、N含有量に対するTi含有量の比の値(Ti/N)が3.0〜4.0であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、応力−歪曲線における0.4%歪時の応力に対する0.7%歪時の応力の比の値(σ0.7/σ0.4)が1.02以下であり、降伏強度が861MPa以上である油井用低合金高強度継目無鋼管である。
まず、本発明の鋼管の化学組成の限定理由について説明する。以下、特に断わらないかぎり質量%は単に%で記す。
C:0.25〜0.31%
Cは、鋼の強度を増加させる作用を有し所望の高強度を確保するために重要な元素であり、降伏強度が861MPa以上の高強度化を実現するためには、0.25%以上のCの含有を必要とする。一方、0.31%を超えるCの含有は、σ0.7/σ0.4の著しい上昇を引き起こし、KISSC値のばらつきを大きくする。このため、Cは0.25〜0.31%とする。好ましくは、Cは0.27%以上である。好ましくは、Cは0.30%以下である。
Si:0.01〜0.35%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶して鋼の強度を増加させ、焼戻時の急激な軟化を抑制する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上のSiの含有を必要とする。一方、0.35%を超えるSiの含有は、粗大な酸化物系介在物を形成し、KISSC値のばらつきを大きくする。このため、Siは0.01〜0.35%とする。好ましくは、Siは0.01〜0.04%である。
Mn:0.45〜0.70%
Mnは、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させるとともに、Sと結合しMnSとしてSを固定して、Sによる粒界脆化を防止する作用を有する元素であり、本発明では0.45%以上のMnの含有を必要とする。一方、0.70%を超えるMnの含有は、σ0.7/σ0.4の著しい上昇を引き起こし、KISSC値のばらつきを大きくする。このため、Mnは0.45〜0.70%とする。好ましくは、Mnは0.50%以上である。好ましくは、Mnは0.65%以下である。
P:0.010%以下
Pは、固溶状態では粒界等に偏析し、粒界脆化割れ等を引き起こす傾向を示し、本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、0.010%までは許容できる。このようなことから、Pは0.010%以下とする。
S:0.001%以下
Sは、鋼中ではほとんどが硫化物系介在物として存在し、延性、靭性や、耐硫化物応力腐食割れ性等の耐食性を低下させる。Sの一部は固溶状態で存在する場合があるが、その場合には粒界等に偏析し、粒界脆化割れ等を引き起こす傾向を示す。このため、Sは、本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、過剰な低減は精錬コストを高騰させる。このようなことから、本発明では、Sは、その悪影響が許容できる0.001%以下とする。
O(酸素):0.0015%以下
O(酸素)は不可避的不純物として、AlやSi等の酸化物として鋼中に存在する。特に、その粗大な酸化物の数が多いと、KISSC値のばらつきを大きくする要因となる。このため、O(酸素)は、その悪影響が許容できる0.0015%以下とする。好ましくは、O(酸素)は0.0010%以下である。
Al:0.015〜0.080%
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nと結合しAlNを形成して固溶Nの低減に寄与する。このような効果を得るために、Alは0.015%以上の含有を必要とする。一方、0.080%を超えてAlを含有すると、酸化物系介在物が増加しKISSC値のばらつきを大きくする。このため、Alは0.015〜0.080%とする。好ましくは、Alは0.05%以上である。好ましくは、Alは0.07%以下である。
Cu:0.02〜0.09%
Cuは、耐食性を向上させる作用を有する元素であり、微量添加した場合、緻密な腐食生成物が形成され、SSCの起点となるピットの生成・成長が抑制されて、耐硫化物応力腐食割れ性が顕著に向上するため、本発明では、0.02%以上のCuの含有を必要とする。一方、0.09%を超えてCuを含有すると、継目無鋼管の製造プロセス時の熱間加工性が低下する。このため、Cuは0.02〜0.09%とする。好ましくは、Cuは0.03%以上である。好ましくは、Cuは0.05%以下である。
Cr:0.8〜1.5%
Crは、焼入れ性の増加を介して、鋼の強度の増加に寄与するとともに、耐食性を向上させる元素である。また、Crは、焼戻時にCと結合し、MC系、M系、M23系等の炭化物を形成し、とくにMC系炭化物は焼戻軟化抵抗を向上させ、焼戻しによる強度変化を少なくして、降伏強度の向上に寄与する。861MPa以上の降伏強度の達成には、0.8%以上のCrの含有を必要とする。一方、1.5%を超えてCrを含有しても、効果が飽和するため、経済的に不利となる。このため、Crは0.8〜1.5%とする。好ましくは、Crは0.9%以上である。好ましくは、Crは1.1%以下である。
Mo:1.1〜1.6%
Moは、焼入れ性の増加を介して、鋼の強度の増加に寄与するとともに、耐食性を向上させる元素である。このMoについては、本発明者らは特に、MC系の炭化物を形成する点に着目した。そして、焼戻し後に2次析出するMoC炭化物は焼戻軟化抵抗を向上させ、焼戻による強度変化を少なくして、降伏強度の向上に寄与し、鋼の応力−歪曲線を連続降伏型から降伏型の形状にさせることを、本発明者らは知見した。特に、本発明では、特定量のMoが、上述のように硫化水素ガス分圧0.2気圧(0.02MPa)以上のサワー環境で、高い降伏強度とKISSC値の両立に有効であることが、本発明者らの鋭意研究の成果としてわかった。このような効果を得るためには、1.1%以上のMoの含有を必要とする。一方、1.6%を超えてMoを含有すると、MoC炭化物が粗大化し、硫化物応力腐食割れの起点となってむしろKISSC値が低下する原因となる。このため、Moは1.1〜1.6%とする。好ましくは、Moは1.2%以上である。好ましくは、Moは1.5%以下である。
V:0.01〜0.06%
Vは、炭化物あるいは窒化物を形成し、鋼の強化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上のVの含有を必要とする。一方、0.06%を超えてVを含有すると、V系炭化物が粗大化して硫化物応力腐食割れの起点となり、むしろKISSC値が低下する。このため、Vは0.01〜0.06%とする。好ましくは、Vは0.03%以上である。好ましくは、Vは0.05%以下である。
Nb:0.005〜0.015%
Nbは、オーステナイト(γ)温度域での再結晶を遅延させ、γ粒の微細化に寄与し、焼入直後の鋼の下部組織(例えばパケット、ブロック、ラス)の微細化に極めて有効に作用する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上のNbの含有を必要とする。一方、0.015%を超えてNbを含有しても効果が飽和する。このため、Nbは0.005〜0.015%とする。ここで、パケットとは、平行に並んだ同じ晶癖面を持つラスの集団から成る領域と定義され、ブロックは、平行でかつ同じ方位のラスの集団から成る。好ましくは、Nbは0.009%以上である。
B:0.0015〜0.0030%
Bは、微量の含有で焼入れ性向上に寄与する元素であり、本発明では0.0015%以上のBの含有を必要とする。一方、0.0030%を超えてBを含有しても、効果が飽和するかあるいはFe硼化物(Fe−B)の形成により、逆に所望の効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Bは0.0015〜0.0030%とする。好ましくは、Bは0.0020〜0.0030%である。
Ti:0.005〜0.020%
Tiは、窒化物を形成し、鋼中の余剰Nを低減させて上述のBの効果を有効にする。また、Tiは、鋼の焼入れ時においてオーステナイト粒のピン止め効果による粗大化の防止に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上のTiを含有することを必要とする。一方、0.020%を超えるTiの含有は、鋳造時に粗大なMC型窒化物(TiN)の形成が促進され、かえって焼入れ時のオーステナイト粒の粗大化を招く。このため、Tiは0.005〜0.020%とする。好ましくは、Tiは0.008%以上である。好ましくは、Tiは0.015%以下である。
N:0.005%以下
Nは、鋼中不可避的不純物であり、Ti、Nb、Al等の窒化物形成元素と結合しMN型の析出物を形成する。さらに、これらの窒化物を形成した残りの余剰Nは、Bと結合してBN析出物も形成する。この際、B添加による焼入れ性向上効果が失われるため、余剰Nはできるだけ低減することが好ましく、Nは0.005%以下とする。
N含有量に対するTi含有量の比の値(Ti/N):3.0〜4.0
Ti含有によるTiN窒化物形成でのオーステナイト粒ピン止め効果、および余剰N抑制によるBN形成防止を通じたB含有による焼入れ性向上効果を両立させるために、Ti/Nを規定する。Ti/Nが3.0を下回る場合、余剰Nが発生し、BN形成することで焼入れ時の固溶Bが不足する結果、焼入れ終了時のミクロ組織がマルテンサイトとベイナイト、あるいはマルテンサイトとフェライトの複合組織となり、このような複合組織を焼戻した後の応力−歪曲線が連続降伏型となって、σ0.7/σ0.4の値が上昇する。一方、Ti/Nが4.0を超える場合、TiNの粗大化によってオーステナイト粒ピン止め効果が低減し、必要とする細粒組織が得られない。このため、Ti/Nは3.0〜4.0とする。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物であるが、上記の基本の組成に加えてさらに、必要に応じて、W:0.1〜0.2%、Zr:0.005〜0.03%のうちから選ばれた1種または2種を選択して含有してもよい。加えて、Caを0.0005〜0.0030%含有し、質量%で、組成比が(CaO)/(Al)≧4.0であり、長径が5μm以上のCaとAlとからなる酸化物系の鋼中非金属介在物の個数が100mm当り20個以下であってもよい。
W:0.1〜0.2%
Wは、Moと同様に、炭化物を形成し析出硬化により強度の増加に寄与するとともに、固溶して、旧オーステナイト粒界に偏析して耐硫化物応力腐食割れ性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、0.1%以上のWを含有することが望ましいが、0.2%を超えるWの含有は、耐硫化物応力腐食割れ性を低下させる。このため、Wを含有する場合、Wは0.1〜0.2%とする。
Zr:0.005〜0.03%
ZrはTiと同様に、窒化物を形成しピン止め効果によって、焼入れ時のオーステナイト粒成長抑制に有効である。必要な効果を得るためには、0.005%以上のZrを含有することが望ましい。一方、0.03%を超えてZrを含有しても効果が飽和する。このため、Zrを含有する場合、Zrは0.005〜0.03%とする。
Ca:0.0005〜0.0030%
Caは、連続鋳造時のノズル詰まり防止に有効で、必要な効果を得るためには0.0005%以上のCaを含有することが望ましい。一方、Caは、Alと複合した酸化物系非金属介在物を形成し、特に0.0030%を超えてCaを含有した場合、粗大なものが多数存在し、耐硫化物応力腐食割れ性を低下させる。具体的には、Ca酸化物(CaO)とAl酸化物(Al)との組成比が、質量%で(1)式を満たす介在物が特に悪影響を及ぼすことから、長径が5μm以上かつ(1)式を満たす介在物の個数を100mm当り20個以下とすることが望ましい。なお、この介在物の個数は、鋼管管端の周方向任意1箇所より管長手直交断面の走査型電子顕微鏡(SEM)用試料を採取し、該試料について、少なくとも管外面、肉厚中央、管内面の3か所について介在物のSEM観察、およびSEMに付随する特性X線分析装置での化学組成の分析結果によって算出することができる。このため、Caを含有する場合、Caは0.0005〜0.0030%とする。また、この場合、質量%で、組成比が下記(1)式を満足する長径5μm以上のCaとAlとからなる酸化物系の鋼中非金属介在物の個数が100mm当り20個以下であるようにする。好ましくは、Caは0.0010%以上である。好ましくは、Caは0.0016%以下である。
(CaO)/(Al)≧4.0 (1)
上記の介在物の個数は、脱炭精錬終了後に行うAl脱酸処理時のAl投入量の管理、およびCa添加前の溶鋼中Al、O、Ca分析値に応じた量のCaを添加することにより制御することができる。
本発明では、上記した組成を有する鋼管素材の製造方法はとくに限定する必要はないが、上記した組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉または真空溶解炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法または造塊−分塊圧延法等、通常の方法でビレット等の鋼管素材とすることが好ましい。鋼管素材は、熱間成形により継目無鋼管に成形される。熱間成形方法はピアサー穿孔の後、マンドレルミル圧延、プラグミル圧延のいずれかの方法を用いて所定の肉厚に成形後、適切な縮径圧延までを熱間で行われる。σ0.7/σ0.4を安定して1.02以下とするために、熱間圧延後に直接焼入れ(DQ)を実施することが望ましい。さらに、このDQ終了時点のミクロ組織がマルテンサイトとベイナイト、あるいはマルテンサイトとフェライトといった複合組織になることで、その後焼入および焼戻熱処理を行った後の鋼の結晶粒径やMo等の2次析出量が不均質となってσ0.7/σ0.4の値が1.02を超えることを防ぐ必要がある。そのために、DQ開始をオーステナイト単相域から行えるように、熱間圧延の終了は950℃以上であることが好ましい。一方、DQ終了時点の鋼管の温度は200℃以下であることが好ましい。継目無鋼管成形後、目標とする降伏強度861MPa以上を達成するために、鋼管の、焼入れ(Q)および焼戻し(T)を実施する。このときの焼入れ温度は結晶粒の細粒化の観点から930℃以下とすることが好ましい。一方、焼入れ温度が860℃未満の場合は、Mo等の固溶が不十分でその後の焼戻し終了時の2次析出量が確保できない。このため、焼入れ温度は860〜930℃とすることが好ましい。焼戻し温度は、オーステナイト再変態を避けるため、Ac温度以下とする必要があるが、600℃未満だとMo等の2次析出量が確保できない。このため、焼戻し温度は、少なくとも600℃以上とすることが好ましい。
熱間圧延後にDQを適用できない場合は、複数回焼入れおよび焼戻しを行い、特に初回の焼入れ温度を950℃以上としてDQの効果を代替することができる。
次に、本発明鋼管の機械的性質の限定理由について説明する。
応力−歪曲線における0.4%歪時の応力(σ0.4)に対する0.7%歪時の応力(σ0.7)の比の値(σ0.7/σ0.4)が1.02以下
前述したように、KISSC値のばらつきは鋼の応力−歪曲線の形状によって大きく異なる。この点について、本発明者等が鋭意研究した結果、0.4%歪時の応力(σ0.4)に対する0.7%歪時の応力(σ0.7)の比の値(σ0.7/σ0.4)が1.02以下の場合に、KISSC値のばらつきがほぼ半減することを知見した。このため、本発明では、σ0.7/σ0.4は1.02以下とする。
なお、本発明では、JIS Z2241に基づく引張試験により、降伏強度、0.4%歪時の応力(σ0.4)、および0.7%歪時の応力(σ0.7)を測定することができる。
また、本発明のミクロ組織は、特に限定されないが、主相をマルテンサイトとし、その他の残部の組織としては、フェライト、残留オーステナイト、パーライト、ベイナイト等の1種、2種以上の組織が面積率で、5%以下であれば、本願発明の目的を達成できる。
以下、実施例に基づいてさらに本発明を詳細に説明する。
表1に示す組成の鋼を転炉法で溶製後、連続鋳造法でブルーム鋳片とした。このブルーム鋳片を熱間圧延にて丸断面のビレットに成形した。さらに、このビレットを素材として、表2に示すビレット加熱温度に加熱後、熱間でマンネスマン穿孔−プラグミル圧延−縮径圧延を実施し、表2および表3に示す圧延終了温度で圧延を終了して継目無鋼管に成形した。鋼管は直接焼入れ(DQ)、あるいは空冷(0.2〜0.5℃/s)で室温度(35℃以下)まで冷却し、その後、表2および表3に示す鋼管の熱処理条件(Q1温度:1回目の焼入れ温度、T1温度:1回目の焼戻し温度、Q2温度:2回目の焼入れ温度、T2温度:2回目の焼戻し温度)で熱処理を実施した。最終焼戻し終了段階で管端の周方向任意1箇所より引張試験片および、DCB試験片をそれぞれ採取した。なお、DCB試験片は各鋼管より3本以上ずつ採取した。
採取した引張試験片を用いて、JIS Z2241の引張試験を行い、降伏強度、0.4%歪時の応力(σ0.4)、および0.7%歪時の応力(σ0.7)を測定した。
また、採取したDCB試験片を用いて、NACE TM0177 methodDにもとづき、DCB試験を実施した。DCB試験の試験浴は、0.2気圧(0.02MPa)の硫化水素ガスを飽和させた24℃の0.5質量%CHCOOH+CHCOONa混合水溶液とした。この試験浴に所定条件で楔を導入したDCB試験片を336時間浸漬した後、浸漬中にDCB試験片に発生した亀裂の長さaと、楔開放応力Pを測定し、以下の式(2)によってKISSC(MPa√m)を算出した。
降伏強度については、861MPa以上であるものを合格とした。また、KISSC値については、3本全てで26.4MPa√m以上のものを合格とした。
Figure 0006152929
ここで、hはDCB試験片の各アーム高さ(height of each arm)、BはDCB試験片の厚さ、BnはDCB試験片のウェブ厚さ(web thickness)である。これらは、NACE TM0177 method Dに規定された数値を用いた(図1参照)。
Figure 0006152929
Figure 0006152929
Figure 0006152929
化学組成とσ0.7/σ0.4が本発明範囲内であった鋼管1〜7は、いずれも降伏強度861MPa以上で、DCB試験浴が0.2気圧(0.02MPa)の硫化水素ガスを飽和させた24℃の0.5質量%CHCOOH+CHCOONa混合水溶液であれば、各3本のDCB試験で得られたKISSC値はいずれも大きくばらつくことなく目標とする26.4MPa√m以上を全て満足した。
一方、化学組成のCが本発明範囲の下限を下回った比較例8(鋼No.G)、Mnが本発明範囲の下限を下回った比較例9(鋼No.H)、Crが本発明範囲の下限を下回った比較例10(鋼No.I)は、目標とする降伏強度861MPa以上を達成できなかった。
化学組成のMoが本発明範囲の下限を下回った比較例11(鋼No.J)、および逆に上限を上回った比較例12(鋼No.K)は、いずれも3本のDCB試験中3本とも目標とする26.4MPa√m以上を満足しなかった。
また、化学組成のNbが本発明範囲の下限を下回った比較例13(鋼No.L)、Bが本発明範囲の下限を下回った比較例14(鋼No.M)は、σ0.7/σ0.4が本発明範囲外となった結果、KISSC値が大きくばらついて、3本のDCB試験中2本が目標とする26.4MPa√m以上を満足しなかった。
Ti/N比が本発明範囲の下限を下回った比較例15(鋼No.N)は、σ0.7/σ0.4が本発明範囲外となった結果、KISSC値が大きくばらついて、3本のDCB試験中2本が目標とする26.4MPa√m以上を満足しなかった。
一方、Ti/N比が本発明範囲の上限を超えた比較例16(鋼No.O)も、σ0.70.4が本発明範囲外となった結果、KISSC値が大きくばらついて、3本のDCB試験中1本が目標とする26.4MPa√m以上を満足しなかった。
化学組成は本発明範囲に適合したものの、最終焼戻し温度が低かった比較例17は、σ0.7/σ0.4が本発明範囲外となった結果、3本のDCB試験中3本とも目標とする26.4MPa√m以上を満足しなかった。また、同様に最終焼戻し前の焼入れ温度が低かった比較例18は、σ0.7/σ0.4が本発明範囲外となった結果、KISSC値が大きくばらついて、3本のDCB試験中各2本が目標とする26.4MPa√m以上を満足しなかった。直接焼入れ(DQ)を行わず、かつ、鋼管の焼入および焼戻し熱処理を1回しか行わなかった比較例19は、σ0.7/σ0.4が本発明範囲外となった結果、KISSC値が大きくばらついて、3本のDCB試験中1本が目標とする26.4MPa√m以上を満足しなかった。
表4に示す組成の鋼を転炉法で溶製後、連続鋳造法でブルーム鋳片とした。このブルーム鋳片を熱間圧延にて丸断面のビレットに成形した。さらに、このビレットを素材として、表5に示すビレット加熱温度に加熱後、熱間でマンネスマン穿孔―プラグミル圧延―縮径圧延を実施し、表5に示す圧延終了温度で圧延を終了して継目無鋼管に成形した。鋼管は直接焼入れ(DQ)、あるいは空冷(0.2〜0.5℃/s)で室温度(35℃以下)まで冷却し、その後、表5に示す鋼管の熱処理条件(Q1温度:1回目の焼入れ温度、T1温度:1回目の焼戻し温度、Q2温度:2回目の焼入れ温度、T2温度:2回目の焼戻し温度)で熱処理を実施した。最終焼戻し終了段階で管端の周方向任意1箇所より管長手直交断面のSEM用試料、引張試験片、およびDCB試験片をそれぞれ採取した。なお、DCB試験片は各鋼管より3本以上ずつ採取した。
採取したSEM用試料の管外面、肉厚中央および管内面の3か所について介在物のSEM観察とSEMに付随する特性X線分析装置での化学組成の分析を行い、長径が5μm以上かつ(1)式を満たすCaとAlからなる酸化物系の鋼中の非金属介在物の個数(個/mm)を算出した。
(CaO)/(Al)≧4.0 (1)
また、採取した引張試験片を用いて、JIS Z2241にて引張試験を行い、降伏強度、0.4%歪時の応力(σ0.4)、および0.7%歪時の応力(σ0.7)を測定した。
また、採取したDCB試験片を用いて、NACE TM0177 methodDにもとづき、DCB試験を実施した。DCB試験の試験浴は、0.2気圧(0.02MPa)の硫化水素ガスを飽和させた24℃の0.5質量%CHCOOH+CHCOONa混合水溶液とした。この試験浴に所定条件で楔を導入したDCB試験片を336時間浸漬した後、浸漬中にDCB試験片に発生した亀裂の長さaと、楔開放応力Pを測定し、式(2)によってKISSC(MPa√m)を算出した。
降伏強度については、861MPa以上であるものを合格とした。また、KISSC値については、3本全てで26.4MPa√m以上のものを合格とした。
Figure 0006152929
Figure 0006152929
化学組成、介在物個数およびσ0.7/σ0.4が本発明範囲内であった鋼管2−1〜2−4は、いずれも降伏強度861MPa以上で、各3本のDCB試験で得られたKISSC値はいずれも大きくばらつくことなく目標とする26.4MPa√mを全て満足した。
一方、Caの上限が本発明範囲の上限を上回った比較例2−5(鋼No.T)は、KISSC値が大きくばらついて、3本のDCB試験中1本が目標とする26.4MPa√mを満足しなかった。また、比較例2−6(鋼No.U)は、二次精錬時に添加された他元素の合金鉄に含まれる不純物CaによってCa添加前の溶鋼中Ca量が高い状態であることを考慮せずにCa添加を行ったため、Caは本発明範囲内であったが、長径が5μm以上かつ(1)式を満たすCaとAlからなる酸化物系の鋼中の非金属介在物の個数が本発明範囲の上限を上回り、KISSC値が大きくばらついて、3本のDCB試験中1本が目標とする26.4MPa√mを満足しなかった。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.25〜0.31%、
    Si:0.01〜0.35%、
    Mn:0.45〜0.70%、
    P:0.010%以下、
    S:0.001%以下、
    O:0.0015%以下、
    Al:0.015〜0.080%、
    Cu:0.02〜0.09%、
    Cr:0.8〜1.5%、
    Mo:1.1〜1.6%、
    V:0.01〜0.06%、
    Nb:0.005〜0.015%、
    B:0.0015〜0.0030%、
    Ti:0.005〜0.020%、
    N:0.005%以下、
    を含有し、
    N含有量に対するTi含有量の比の値(Ti/N)が3.0〜4.0であり、
    残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    応力−歪曲線における0.4%歪時の応力に対する0.7%歪時の応力の比の値(σ0.7/σ0.4)が1.02以下である降伏強度が861MPa以上である油井用低合金高強度継目無鋼管。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
    W:0.1〜0.2%、
    Zr:0.005〜0.03%
    のうちから選ばれた1種または2種を含有する請求項1に記載の油井用低合金高強度継目無鋼管。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.0030%
    を含有し、さらに、質量%で、組成比が下記(1)式を満足する長径5μm以上のCaとAlとからなる酸化物系の鋼中非金属介在物の個数が100mm当り20個以下である請求項1または2に記載の油井用低合金高強度継目無鋼管。
    (CaO)/(Al)≧4.0 (1)
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