別途、定義しない限り、全ての技術的および科学的用語は、開示された実施形態の属する分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。
本明細書で使用するとき、用語「a」または「an」は、文脈上明らかに別途指示しない限り、「少なくとも1つ」または「1つまたはそれ以上」を意味する。
本明細書で使用するとき、用語「約」は、数値が概数であって、わずかに変動しても開示された実施形態の実施に著しい影響は与えないことを意味する。数値限定が用いられるとき、文脈によって別途指示されていない限り、「約」は、数値が±10%で変動し得るが、依然として開示された実施形態の範囲内であることを意味する。
本明細書で使用するとき、用語「アルケニル」は、1つまたはそれ以上の炭素−炭素二重結合と、2〜20個の炭素原子とを有する直鎖または分岐鎖のアルキルを意味し、限定されないが、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、アルケニル鎖は、2〜10炭素原子長、2〜8炭素原子長、2〜6炭素原子長、または2〜4炭素原子長である。
本明細書で使用するとき、用語「アルコキシ」は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のO−アルキル基を意味し、限定されないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシなどを含む。いくつかの実施形態において、アルコキシ鎖は、1〜10炭素原子長、1〜8炭素原子長、1〜6炭素原子長、1〜4炭素原子長、2〜10炭素原子長、2〜8炭素原子長、2〜6炭素原子長、または2〜4炭素原子長である。
本明細書で使用するとき、用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基は、1〜20個、2〜20個、1〜10個、2〜10個、1〜8個、2〜8個、1〜6個、2〜6個、1〜4個、2〜4個、1〜3個、または2もしくは3個の炭素原子を含有し得る。アルキル基の例としては、限定されないが、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n−プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル)、ペンチル(例えば、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2−メチル−1−ペンチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチルなどが挙げられる。
本明細書で使用するとき、用語「アルキニル」は、1つまたはそれ以上の炭素−炭素三重結合と2〜20個の炭素原子とを有する直鎖または分岐鎖のアルキルを意味し、限定されないが、アセチレン、1−プロピレン、2−プロピレンなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、アルキニル鎖は、2〜10炭素原子長、2〜8炭素原子長、2〜6炭素原子長、または2〜4炭素原子長である。
本明細書で使用するとき、用語「動物」には、限定されないが、ヒトおよび非ヒト脊椎動物、例えば、野生動物、家庭内動物、および農業用動物が挙げられる。
本明細書で使用するとき、用語「アリール」は、単環式、二環式、または多環式(例えば、2、3、または4つの縮合環を有する)芳香族炭化水素を意味する。いくつかの実施形態では、アリール基は、6〜20個の炭素原子、または6〜10個の炭素原子を有する。アリール基の例としては、限定されないが、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、インダニル、インデニル、テトラヒドロナフチルなどが挙げられる。
本明細書で使用するとき、用語「アリールオキシ」は、−O−アリール基を意味し、ここでアリールは本明細書で定義された通りである。アリールオキシ基は、置換されていなくてもよく、または1もしくは2つの適切な置換基で置換されていてもよい。アリールオキシ基のアリール環は、6個の炭素原子を含む単環式環(本明細書では、「(C6)アリールオキシ」と称する)でもよい。
本明細書で使用するとき、用語「ベンジル」は、−CH2−フェニルを意味する。
本明細書で使用するとき、用語「炭素環」は、飽和または不飽和の、場合により環の一部としてO、SまたはN原子を含有している、5または6員環式環である。炭素環の例としては、限定されないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンタ−1,3−ジエン、フェニル、および上に列挙された任意の複素環が挙げられる。
本明細書で使用するとき、用語「担体」は、投与される化合物と一緒に用いられる希釈剤、佐剤、または賦形剤を意味する。薬学的担体は、水または油のような液体であり得、石油、動物、植物または合成起源の油などが挙げられ、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油であり得る。また薬学的担体は、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであってもよい。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤を使用してもよい。
本明細書で使用するとき、用語「化合物」は、本明細書に記載する化合物の全ての立体異性体、互変異性体および同位体を意味している。
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」(ならびに「comprise」、「comprises」および「comprised」のようなcomprisingの任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「have」および「has」のようなhavingの任意の形態、)、「含む(including)」(ならびに「includes」および「include」のようなincludingの任意の形態)または「含有する(containing)」(ならびに「contains」および「contain」のようなcontainingの任意の形態)は、包括的または開放的であり、列挙されていない要素または方法の工程の追加を除外するものではない。
本明細書で使用するとき、用語「シクロアルキル」は、20個までの環形成炭素原子を含有する環化されたアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を含む非芳香環式炭化水素を意味する。シクロアルキル基としては、単環式環系または多環式環系(例えば、縮合環系、架橋環系、およびスピロ環系)を挙げることができる。いくつかの実施形態において、多環式環系としては、2、3または4つの縮合環が挙げられる。シクロアルキル基は、3〜15、3〜10、3〜8、3〜6、4〜6、3〜5または5もしくは6個の環形成炭素原子を含有し得る。シクロアルキル基の環形成炭素原子は、場合により、オキソまたはスルフィドによって置換されていてもよい。シクロアルキル基の例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカルニル(norcarnyl)、アダマンチルなどが挙げられる。さらにシクロアルキルの定義には、シクロアルキル環に縮合した(と共通の結合を有する)1つまたはそれ以上の芳香環を有する部分、例えばペンタン、ペンテン、ヘキサンなどのベンゾまたはチエニル誘導体(例えば2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル、または1H−インデン−2(3H)−オン−1−イル)が含まれる。
本明細書で使用するとき、用語「糖尿病」は、「I型糖尿病」および「II型糖尿病」を含み、しばしば関連する合併症、例えば、肥満および高コレステロールを伴う。
本明細書で使用するとき、用語「ハロ」は、ハロゲン基、限定されないが、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
本明細書で使用するとき、用語「ヘテロアリール」は、20個までの環形成原子(例えばC)を有し、少なくとも1つのヘテロ原子環員(環形成原子)、例えば、硫黄、酸素または窒素を有する芳香族複素環を意味する。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、それぞれ独立して硫黄、酸素または窒素である、1つまたはそれ以上のヘテロ原子環形成原子を有する。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、3〜20個の環形成原子、3〜10個の環形成原子、3〜6個の環形成原子、または3〜5個の環形成原子を有する。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、2〜14個の炭素原子、2〜7個の炭素原子、または5もしくは6個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、1〜4個のヘテロ原子、1〜3個のヘテロ原子、または1もしくは2個のヘテロ原子を含有する。ヘテロアリール基は、単環式および多環式(例えば、2、3または4つの縮合環)系が挙げられる。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、フリル、キノリル、イソキノリル、チエニル、イミダゾリル、チアゾリル、インドリル(インドール−3−イルなど)、ピリル、オキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンズチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾチエニル、プリニル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリニル、ピラニル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、チアントレニル、ピラゾリル、インドリジニル、イソインドリル、イソベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、キサンテニル、2H−ピロリル、ピロリル、3H−インドリル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソオキサゾリル、フラザニル、フェノキサジニル基などが挙げられる。適切なヘテロアリール基としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、3−アミノ−1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、ピリジン、および2−アミノピリジンが挙げられる。
本明細書で使用するとき、用語「複素環」または「複素環式環」は、5〜7員の単環もしくは二環式、または7〜10員の二環式複素環式環系を意味し、これらの環は飽和であっても不飽和であってもよく、炭素原子とN、O、およびSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子とからなり、NおよびSヘテロ原子は場合により酸化されていてもよく、Nヘテロ原子は場合により第四級化されていてもよく、例えば上で定義した複素環のいずれかがベンゼン環に縮合されている二環式基が挙げられる。特に、1個の酸素または硫黄、1〜3個の窒素原子、または1もしくは2個の窒素原子と結合した1個の酸素または硫黄を含有する環が有用である。複素環式環は、安定した構造の生成をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子で結合し得る。複素環式基の例としては、限定されないが、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロロジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾイル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、およびオキサジアゾリルが挙げられる。モルホリノは、モルホリニルと同じである。
本明細書で使用するとき、用語「ヘテロシクロアルキル」は、20個までの環形成原子を有する非芳香族複素環を意味し、環化アルキル、アルケニル、およびアルキニル基であり、ここでは環形成炭素原子の1つまたはそれ以上が、ヘテロ原子(例えば、O、N、またはS原子)で置き換えられる。ヘテロシクロアルキル基は、単環式または多環式(例えば、縮合系、架橋系またはスピロ系)であり得る。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、1〜20個の炭素原子、または3〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、3〜14個の環形成原子、3〜7個の環形成原子、または5もしくは6個の環形成原子を含有する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、1〜4個のヘテロ原子、1〜3個のヘテロ原子、または1もしくは2個のヘテロ原子を含有する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、0〜3個の二重結合を含有する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、0〜2個の三重結合を含有する。ヘテロシクロアルキル基の例としては、限定されないが、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、2,3−ジヒドロベンゾフリル、1,3−ベンゾジオキソール、ベンゾ−1,4−ジオキサン、ピペリジニル、ピロリジニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピラゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニル、ピロリジン−2−オン−3−イルなどが挙げられる。さらに、ヘテロシクロアルキル基の環形成炭素原子およびヘテロ原子は、場合により、オキソまたはスルフィドによって置換されていてもよい。例えば、環形成S原子は、1または2個の酸素で置換され得る(S(O)またはS(O)2を形成する)。別の例では、環形成C原子は、酸素によって置換され得る(カルボニルを形成する)。さらにヘテロシクロアルキルの定義には、限定されないが、ピリジニル、チオフェニル、フタリミジル、ナフタリミジル、および複素環のベンゾ誘導体(例えば、インドレン、イソインドレン、イソインドリン−1−オン−3−イル、4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−5−イル、5,6−ジヒドロチエノ[2,3−c]ピリジン−7(4H)−オン−5−イルおよび3,4−ジヒドロイソキノリン−1(2H)−オン−3イル基)を含む非芳香族複素環式環に縮合した(と共通の結合を有する)1つまたはそれ以上の芳香環を有する部分が含まれる。ヘテロシクロアルキル基の環形成炭素原子およびヘテロ原子は、場合により、オキソまたはスルフィドによって置換されていてもよい。
本明細書で使用するとき、用語「個体」または「患者」は、相互に交換可能に使用され、任意の動物を意味し、例えば、マウス、ラット、他のげっ歯動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類(例えば、ヒト)のような哺乳動物を意味する。
本明細書で使用するとき、句「必要とする」は、動物または哺乳動物が、特別な方法または処置を必要とするものとして特定されていることを意味する。いくつかの実施形態において、特定は、任意の診断手段によるものであり得る。本明細書に記載された方法および処置において、動物または哺乳動物は、それを必要とする動物または哺乳動物であり得る。
本明細書で使用するとき、句「1から5までの整数」は、1、2、3、4、または5を意味する。
本明細書で使用するとき、用語「単離された」は、本明細書に記載の化合物が、(a)天然資源(例えば植物もしくは細胞(例えば細菌培養物))または(b)有機合成化学反応混合物(例えば、従来技術によるもの)のいずれかの他の成分から分離されたことを意味する。
本明細書で使用するとき、用語「哺乳動物」は、げっ歯動物(すなわち、マウス、ラットもしくはモルモット)、サル、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、またはヒトを意味する。いくつかの実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
本明細書で使用するとき、用語「n員」(nは整数)は、典型的には、ある部分の環形成原子の数を表し、ここでは環形成原子の数はnである。例えば、ピリジンは、6員ヘテロアリール環の例であり、チオフェンは、5員ヘテロアリール環の例である。
本明細書で使用するとき、句「場合により置換されている」は、置換が任意選択的であり、それゆえ置換されていない原子および部分ならびに置換されている原子および部分の両方を含むことを意味する。「置換されている」原子または部分は、指定された原子または分子上のいずれかの水素が、指定された原子また部分の正常な価数を超えないことおよび置換により安定した化合物が生じることを条件として、示された置換基から選択される基と置き換えられる場合があることを示す。例えば、メチル基が場合により置換されている場合、次いで炭素原子上の3つの水素原子が置換基と置き換えられる場合がある。
本明細書で使用するとき、句「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断内で、ヒトおよび動物の組織と接触しての使用に適切な化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を意味する。いくつかの実施形態において、「薬学的に許容される」とは、連邦政府または州政府の管理当局によって承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方において、動物(特にヒト)で使用するために列挙されていることを意味する。
本明細書で使用するとき、句「薬学的に許容される塩(複数可)」は、限定されないが、酸性または塩基性基の塩類を意味する。本質的に塩基性の化合物は、様々な無機酸および有機酸と、多様な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、非毒性の酸付加塩の酸であり、すなわち、薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩、限定されないが、硫酸塩、チオ硫酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカル酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、炭酸水素塩、マロン酸塩、メシル酸塩、エシレート、ナパジシル酸塩(napsydisylate)、トシル酸塩、ベシル酸塩、オルトリン酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)塩)を形成する酸である。アミノ部分を含む化合物は、前述の酸に加えて、様々なアミノ酸と一緒に薬学的に許容される塩を形成し得る。本質的に酸性の化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンと、塩基性塩を形成することができる。そのような塩の例としては、限定されないが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム、マグネシウム、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、および鉄の塩が挙げられる。また本発明は、本明細書に記載の化合物であって1つまたはそれ以上の第三級アミン部分を有する化合物の、第四級アンモニウム塩も含む。
本明細書で使用するとき、用語「フェニル」は−C6H5を意味する。フェニル基は、置換されていなくてもよく、または1つ、2つもしくは3つの適切な置換基で置換されていてもよい。
本明細書で使用するとき、用語「予防」または「予防すること」は、特別の疾患、病態または障害に罹患するリスクを低下させることを意味する。
本明細書で使用するとき、用語「精製された」は、単離されたとき、単離物が、本明細書に記載された化合物を、該単離物の重量を基準として、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%含有することを意味する。
本明細書で使用するとき、句「第四級アンモニウム塩」は、1つまたはそれ以上の第三級アミン部分を有する開示された化合物の誘導体であって、親化合物の第三級アミン部分の少なくとも1つが、該第三級アミン部分のアルキル化(例えばメチル化、エチル化)による第四級アンモニウムカチオンへの変換(および該カチオンのCl−、CH3COO−およびCF3COO−のようなアニオンによる平衡化)により改変されている誘導体を意味する。
本明細書で使用するとき、句「実質的に単離された」は、化合物が、形成されたまたは検出された環境から少なくとも部分的にまたは実質的に分離されている化合物を意味する。
本明細書で使用するとき、句「適切な置換基」または「置換基」は、本明細書に記載した化合物またはそれらの調製に有用な中間体の合成的または薬学的有用性を無効にしない基を意味する。適切な置換基の例としては、限定されないが、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルキニル、C5〜C6アリール、C1〜C6アルコキシ
、C3〜C5ヘテロアリール、C3〜C6シクロアルキル、C5〜C6アリールオキシ、−CN、−OH、オキソ、ハロ、ハロアルキル、−NO2、−CO2H、−NH2、−NH(C1〜C8アルキル)、−N(C1〜C8アルキル)2、−NH(C6アリール)、−N(C5〜C6アリール)2、−CHO、−CO(C1〜C6アルキル)、−CO((C5〜C6)アリール)、−CO2((C1〜C6)アルキル)、および−CO2((C5〜C6)アリール)が挙げられる。当業者は、本明細書に記載の化合物の安定性ならびに薬理学的および合成的活性に基づき、適切な置換基を容易に選び得る。
本明細書で使用するとき、句「治療上有効な量」は、研究者、獣医、医師または他の臨床家により組織、系、動物、個体またはヒトにおいて求められる生物学的もしくは医学的応答を誘発する、活性化合物または薬剤の量を意味する。治療的効果は、処置される障害または所望の生物学的効果によって変わる。そのように、治療的効果は、障害に関連する症状の重症度の低下、および/もしくは障害の進行の(部分的もしくは完全な)阻害、または、障害もしくは副作用の治療、治癒、予防または除去の改良であり得る。治療反応を誘発するために必要とされる量は、対象の年齢、健康、大きさ、および性別に基づいて決定され得る。最適な量は、処置に対する対象の応答のモニタリングに基づいて決定し得る。
本明細書で使用するとき、用語「処置する」、「処置された」または「処置すること」は、治療的処置と、望ましくない身体的状態、障害もしくは疾患の予防もしくは減速(縮小)または有益もしくは所望の臨床的結果を得ることを目標とする、防御もしくは予防的手段との両方を意味する。本発明の目的に関して、有益または所望の臨床的結果としては、限定されないが、症状の緩和;病態、障害、もしくは疾患の程度の減少;病態、障害、もしくは疾患の状態の安定化(すなわち、悪化がない);病態、障害、もしくは疾患の進行の発現の遅延または減速;病態、障害もしくは疾患の状態の(部分的または全体的)改善または緩解、(検出できるものであっても検出できないものであってもよい);少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善(患者が判別し得るものである必要はない)、または病態、障害もしくは疾患の増強もしくは改良が挙げられる。処置には、過剰レベルの副作用のない、臨床的に有意義な反応を誘発することが含まれる。処置には、さらに、処置を受けていない場合に予測される寿命と比較して、寿命を延ばすことが含まれる。
本開示の化合物は、それらの化学構造および/または化学名によって本明細書において特定される。化合物が、化学構造と化学名の両方によって称されており、その化学構造と化学名が矛盾する場合、化学構造により、化合物のアイデンティティーを確定する。
本明細書の様々な箇所において、化合物の置換基は、グループ、または範囲で開示されている。本発明には、そのようなグループおよび範囲の構成要素の個別の組み合わせのいずれも全て含むことが特に意図されている。例えば、用語「C1〜6アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、C4アルキル、C5アルキルおよびC6アルキルの直鎖および/または分岐鎖を個々に開示することが特に意図されている。
可変部分が2回以上現れる化合物については、各可変部分は、可変部分を定義するマーカッシュグループから選択される異なる部分であり得る。例えば、同じ化合物に同時に存在する2つのR基を有する構造と記載される場合、2つのR基は、Rを定義するマーカッシュグループから選択される異なる部分を表し得る。別の例では、場合により複数の置換基が形式、例えば
で指定される場合、置換基Rは、「s」の回数、環の上に現れることができ、Rは各出現において異なる部分であり得る。さらに、上の例において、可変T
1は水素を含むと定義され、T
1がCH
2、NHなどであるとき、任意のHが置換基と置き換えられ得る。
さらに、明確性のために別々の実施形態の文脈で開示されている本開示の一定の特長が、単一の実施形態において組み合わせて与えられ得ることも、認められる。反対に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載されている本開示の様々な特長は、別々に、または任意の適切な部分的組み合わせで与えられ得る。
本開示には、適用できるのであれば、本開示の化合物の立体異性体、ジアステレオマーおよび光学的立体異性体ならびにそれらの混合物の使用も包含されることが理解される。さらに、本開示の化合物の立体異性体、ジアステレオマーおよび光学的立体異性体ならびにそれらの混合物も、本開示の範囲内である。非限定的な例において、混合物は、ラセミ体であってもよく、一方の立体異性体を他方と等しくない割合で含んでもよい。さらに、化合物は、実質的に純粋な立体異性体、ジアステレオマーおよび光学的立体異性体(例えば、エピマー)として提供されてもよい。
本明細書に記載される化合物は、非対称であってもよい(例えば、1つまたはそれ以上の立体中心を有してもよい)。全ての立体異性体、例えば、鏡像体およびジアステレオマーは、別途指示されていない限り、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。非対称的に置換されている炭素原子を含有する化合物は、光学的に活性な形態またはラセミ形態で単離することができる。光学的に活性な出発原料から光学的に活性な形態を調製する方法は、当該分野で公知であり、例えば、ラセミ混合物の分割または立体選択的合成による方法がある。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体も、本明細書に記載の化合物中に存在でき、そのような安定な異性体の全てが本開示で企図されている。化合物のcisおよびtrans幾何異性体も本開示の範囲内に含まれており、異性体の混合物または分離された異性体形態として単離され得る。立体異性または幾何異性が可能な化合物が、特定のR/Sまたはcis/trans立体配置に言及していない構造または名称で指定されている場合、そのような異性体の全てが熟考されることが意図される。
化合物のラセミ混合物の分割は、当該分野で公知の多数の方法のいずれによっても実施することができ、例えば、光学的に活性な塩形成有機酸であるキラル分割酸を用いた分別再結晶によって行うことができる。分別再結晶法に適切な分割剤としては、限定されないが、光学的に活性な酸、例えば、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸および乳酸のDおよびL形態、ならびに様々な光学的に活性なカンファースルホン酸、例えばβ−カンファースルホン酸が挙げられる。分別結晶方法に適している他の分割剤としては、限定されないが、α−メチルベンジルアミン(例えばSおよびR形態、またはジアステレオマー的に純粋な形態)、2−フェニルグリシノール、ノルエフェドリン、エフェドリン、N−メチルエフェドリン、シクロヘキシルエチルアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンの立体異性体的に純粋な形態が挙げられる。ラセミ混合物の分割も、光学的に活性な分割剤(例えば、ジニトロベンゾイルフェニルグリシン)を充填したカラム上の溶離によって実施することができる。適切な溶離溶剤組成物は、当業者によって決定され得る。
化合物は、互変異性形態も含み得る。互変異性形態は、プロトンの移動と付随して、単結合と隣接する二重結合が交換することにより生じる。互変異性形態は、同じ実験式および全電荷を有する異性体のプロトン化状態であるプロトトロピー互変異性体(prototropic tautomer)を含む。プロトトロピー互変異性体としては、限定されないが、ケトン−エノール対、アミド−イミド酸対、ラクタム−ラクチム対、アミド−イミド酸対、およびエナミン−イミン対、ならびに、プロトンが複素環系の2つまたはそれ以上の位置を占め得る環形態、例えば、限定されないが、1H−および3H−イミダゾール、1H−、2H−および4H−1,2,4−トリアゾール、1H−および2H−イソインドール、ならびに1H−および2H−ピラゾールが挙げられる。互変異性形態は、平衡状態であってもよく、適当な置換によって一方の形態に立体的に固定されていてもよい。
また化合物としては、水和物および溶媒和物ならびに酸無水物および非溶媒和物形態が挙げられる。
化合物は、さらに、中間体または最終化合物で生じる全ての原子の同位体を含み得る。同位体には、原子番号が同じで質量数が異なる原子が含まれる。例えば、水素の同位体としては、トリチウムおよびジューテリウムが挙げられる。
いくつかの実施形態において、化合物、またはその薬学的に許容される塩は、実質的に単離される。部分的な分離には、例えば、本開示の化合物が多く存在する組成物が含まれ得る。実質的な分離には、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%含有する組成物を含み得る。化合物とそれらの塩類を単離する方法は、当該技術分野で日常的に用いられている。
開示された化合物は適切であるが、他の官能基を組み入れた化合物も、類似した結果を奏することが予測される。特に、チオアミドとチオエステルは、非常に類似した特性を有することが想定される。芳香環の間の距離は、化合物の幾何学的パターンに影響を与える場合があり、当該距離は、可変長の脂肪族鎖を組み込むことによって変化させることができる。この脂肪族鎖は、場合により置換されていてもよく、もしくはアミノ酸、ジカルボン酸またはジアミンを含んでもよい。化合物内のモノマー間の距離および相対的な配向も、アミド結合を、さらなる追加の原子を有する代替物で置き換えることによって変化することができる。したがって、カルボニル基をジカルボニルで置き換えることにより、モノマー間の距離およびジカルボニル単位の傾向が変化し、2つのカルボニル部分が対峙する配置をとり、化合物の周期性が変わる。ピロメリット酸無水物は、化合物の高次構造と物理学的特性を変化させ得る単純なアミド結合への、さらに別の選択肢を示す。近代的な固相有機化学の方法(E.AthertonおよびR. C. Sheppard、Solid Phase Peptide Synthesis A Practical Approach IRL Press Oxford 1989)により、今や5,000ダルトンに近い分子量の単分散化合物の合成が可能になっている。他の置換パターンも、同様に有効である。
本明細書に記載の化合物には、プロドラッグと称する誘導体も含まれる。プロドラッグは、化合物に存在する官能基を、親化合物が常法またはin vivoでの切断により形成されるように改変することによって調製することができる。プロドラッグの例としては、化合物のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリルまたはカルボキシル基に付随した1つまたはそれ以上の分子部分を含有し、患者に投与したとき、インビボで切断されて遊離のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリルまたはカルボキシル基をそれぞれ形成する本明細書に記載の化合物が含まれる。プロドラッグの例としては、本明細書に記載の化合物のアルコール官能基およびアミン官能基のアセテート、ホルメートおよびベンゾエート誘導体が挙げられる。プロドラッグの調製および使用は、T. Higuchiら、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、the A.C.S. Symposium Series 14巻、およびBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B. Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987で議論されている(これらの両方を、参照によって全体として本明細書に組み入れる)。
アミン官能基を含有する化合物は、N−オキシドを形成してもよい。本明細書において、アミン官能基を含有する化合物への言及には、そのN−オキシドも含まれる。化合物がいくつかのアミン官能基を含有する場合、1つまたはそれ以上の窒素原子が酸化されてN−オキシドを形成してもよい。N−酸化物の例としては、窒素含有複素環の第三級アミンまたは窒素原子のN−オキシドが挙げられる。N−酸化物は、対応するアミンを、過酸化水素または過酸(例えば、ペルオキシカルボン酸)などの酸化剤で処理することにより形成し得る(Advanced Organic Chemistry、Jerry March著、第4版、Wiley Interscienceを参照)。
本発明は、式Vの化合物:
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、適切な置換基であり、またはR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、水素、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールオキシ、ベンジル、シクロアルキル、ハロゲン、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、−CN、−OH、−NO
2、−CF
3、−CO
2H、−CO
2アルキル、もしくは−NH
2であり、
R
8は、アルキルまたは水素であり、
Xは、O、S、NHまたはN−アルキルであり、
Zは、OまたはSである)
またはその薬学的に許容される塩を提供する。
いくつかの実施形態において、R8は、アルキル、例えばメチルである。いくつかの実施形態において、R8は、水素である。
いくつかの実施形態において、Xは、酸素である。
いくつかの実施形態において、Zは、酸素である。
いくつかの実施形態において、R2〜R6の少なくとも1つは、アルキル、例えばメチルである。いくつかの実施形態において、R2〜R6の少なくとも1つは、ハロゲン、例えばクロロである。いくつかの実施形態において、R2〜R6の少なくとも1つは、−CNである。いくつかの実施形態において、R2〜R6の少なくとも1つは、−OHである。いくつかの実施形態において、R2〜R6の少なくとも1つは、−NO2である。いくつかの実施形態において、R2〜R6の少なくとも1つは、−CF3である。いくつかの実施形態において、R2〜R6の少なくとも1つは、−CO2Hである。いくつかの実施形態において、R2〜R6の少なくとも1つは、−NH2である。いくつかの実施形態において、R2〜R6の少なくとも1つは、−アルコキシである。
いくつかの実施形態において、R2はアルキル(例えばメチル)であり、R1およびR3〜R8はそれぞれ水素であり、XとZはOである。いくつかの実施形態において、R2はハロゲン(例えばクロロ)であり、R1およびR3〜R8はそれぞれ水素であり、XとZはOである。いくつかの実施形態において、R3はアルキル(例えばメチル)であり、R1、R2およびR4〜R8はそれぞれ水素であり、XとZはOである。
いくつかの実施形態において、R3は、ハロゲン(例えば、クロロ)であり、R1、R2およびR4〜R8は、それぞれ水素であり、XとZはOである。
いくつかの実施形態において、R4は、アルキル(例えば、メチル)であり、R1〜R3およびR5〜R8はそれぞれ水素であり、XとZはOである。
いくつかの実施形態において、R4は、ハロゲン(例えば、クロロ)であり、R1〜R3およびR5〜R8はそれぞれ水素であり、XとZはOである。
いくつかの実施形態において、R5は−CF3であり、R1〜R4およびR6〜R8はそれぞれ水素であり、XとZはOである。いくつかの実施形態において、R5−NH2、ならびにR1〜R4およびR6〜R8は、それぞれ水素であり、XとZはOである。
いくつかの実施形態において、R6は−CF3であり、R1〜R5およびR7〜R8はそれぞれ水素であり、XとZはOである。いくつかの実施形態では、R6はNH2であり、ならびにR1〜R4およびR7〜R8は、それぞれ水素であり、XとZはOである。
また本開示は、式Iの化合物:
(式中、
R
1はアルキル基であり、
Xはハロゲンであり、
YはO、SまたはNHであり、
ZはOまたはSであり、
nは0〜5の整数であり、mは0または1であり、但し、m+nは5以下である)
またはその薬学的に許容される塩を提供する。
いくつかの実施形態において、アルキル基はメチルであり、nは1である。
いくつかの実施形態において、ハロゲンは塩素であり、mは1である。
いくつかの実施形態において、YはOである。
いくつかの実施形態において、ZはOである。
いくつかの実施形態において、R1はメチルであり、YはOであり、ZはOであり、nは1であり、mは0である。いくつかの実施形態において、R1はメタ位である。
いくつかの実施形態において、Xは塩素であり、YはOであり、ZはOであり、nは0であり、mは1である。いくつかの実施形態において、Xはメタ位である。
また本開示は、式IIの化合物:
(式中、
R
1はアルキル基であり、
Xはハロゲンであり、
nは0〜5の整数であり、mは0または1であり、但し、m+nは5以下である)
またはその薬学的に許容される塩を提供する。
いくつかの実施形態において、アルキル基はメチルであり、nは1である。
いくつかの実施形態において、ハロゲンは塩素であり、mは1である。
いくつかの実施形態において、R1はメチルであり、nは1であり、mは0である。いくつかの実施形態において、R1はメタ位である。
いくつかの実施形態において、Xは塩素であり、nは0であり、mは1である。いくつかの実施形態において、Xはメタ位である。
また本開示は、式IIIの化合物:
(式中、
R
1はアルキル基であり、
nは0〜5の整数である)
またはその薬学的に許容される塩を提供する。
いくつかの実施形態において、R1はメチルであり、nは1である。いくつかの実施形態において、R1はメタ位である。
また本開示は、式IVの化合物:
(式中、
Xはハロゲンであり、
mは0〜1の整数である)
またはその薬学的に許容される塩を提供する。
いくつかの実施形態において、Xはクロロであり、mは1である。いくつかの実施形態において、Xはメタ位である。
式I〜IVによって包含される化合物および本明細書に記載の方法で有用な化合物の実例としては、限定されないが、
(この化合物は、トリミドン(Tolimidone)、CP−26154および2(1H)−ピリミジノン、5−(3−メチルフェノキシ)としても知られる)、
本明細書に記載の化合物は、当業者に公知の有機化学技術、例えば、米国特許第3,922,345号に記載の技術によって合成することができ、当該特許を、参照によって全体として本明細書に組み入れる。
開示の化合物は、インシュリンを含む組成物中に含まれ、組成物により哺乳動物に投与される。適切なインシュリンとしては、限定されないが、注射用インシュリン、経皮インシュリン、吸入インシュリン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。インシュリンの選択肢として、インシュリン誘導体、分泌促進薬、増感薬または摸倣薬が使用されてもよい。本開示の化合物と組み合わせて使用されるインシュリン分泌促進薬としては、限定されないが、ホルスコリン、ジブチルcAMPおよびイソブチルメチルキサンチン(IBMX)が挙げられる。
インシュリンには、4種の型があり、これらはインシュリンの作用発現と作用期間によって区別されている。速効作用型インシュリン(例えば、Humalog)は、作用発現が早く(15分以内)、作用持続時間が最大5時間で、注射時点で摂取した食事に対する必要性を満たす。短時間作用型インシュリン(例えば、Humulin)も作用発現が早く、投与後1時間以内に摂取した食事に対する必要性を満たすものであり、作用持続時間は最大8時間である。中間作用型インシュリン(例えば、NPH)には、作用発現が遅く(1〜2時間)、作用持続時間は最大24時間である。長時間作用型インシュリン(例えば、Lantus、Levemir)は、作用発現が遅く、投与後の作用持続時間は最大36時間である。これらのインシュリンは、血糖レベルを調節するために、典型的に、様々な組み合わせで投与される。
本明細書に記載される化合物は、化合物が活性となる任意の経路で任意の従来の様式によって投与され得る。投与は、全身性、局所性、または経口であり得る。例えば、投与は、限定されないが、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、経口、バッカル、舌下、または眼内経路、または膣内に、吸入、デポー注射、またはインプラントによるものであり得る。投与の仕方は、標的とする病原体か微生物に依存し得る。投与の特別な経路の選択は、臨床家に公知の方法にしたがって、所望の臨床的反応が得られるように、臨床家によって選択または調整し得るものである。
いくつかの実施形態において、処置を必要とする領域に、局所的に、1つまたはそれ以上の化合物または薬学的に許容される塩を投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、制限的ではないが、手術中の局所注入によって、例えば手術の後の傷包帯と共に行う、局所適用によって、注射によって、カテーテルによって、坐薬によって、またはインプラントによって(ここで、インプラントは、多孔性、非多孔性、またはゼラチン性材料であり、膜(例えばシラスティック(sialastic)膜)、または繊維が挙げられる)によって、達成し得る。
いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、インシュリンおよび少なくとも1つの他の治療薬との併用療法で使用することができる。本開示の化合物、インシュリンおよび治療薬は、相加的に、または相乗的に、作用し得る。いくつかの実施形態において、本開示の化合物を含む組成物は、本開示の化合物と同じ組成物または異なる組成物の一部であり得るインシュリンおよび他の治療薬と同時にまたは連続的に投与される。別の実施形態において、本開示の化合物を含む組成物は、インシュリンおよび別の治療薬の投与の前にまたは後に投与される。本開示の化合物が処置に有用となる障害の多くは慢性障害であるので、一実施形態において、併用療法は、本開示の化合物を含む組成物、インシュリン、および他の治療薬を含む組成物を投与する間、例えば特定の治療薬に関連する毒性を最小限にするために、相互に変更することを含む。各薬物または治療薬の投与期間は、例えば、1カ月、3カ月、6カ月または1年であり得る。特定の実施形態において、本開示の組成物が、インシュリンと、有害な副作用(例えば、限定されないが、毒性)を産生する可能性のある他の治療薬と同時に投与されるとき、当該治療薬は、有害な副作用を誘発する量の閾値未満の量で投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物は、インシュリンならびに別の糖尿病薬、血圧薬および/またはコレステロール薬と組み合わせて投与することができる。
本発明の組成物は、スタチンと一緒に投与することができる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用されるスタチンとしては、限定されないが、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、およびセリバスタチンが挙げられる。
本発明の組成物は、PPARアゴニスト(例えば、チアゾリジンジオンまたはフィブラート)と共にと投与することもできる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用されるチアゾリジンジオンとしては、限定されないが、ピログリタゾン、シグリタゾン、5−((4−(2−(メチル−2−ピリジニルアミノ)エトキシ)フェニル)メチル)−2,4−チアゾリジンジオン、トログリタゾン、WAY−120,744、エングリタゾン、AD5075、ダルグリタゾンおよびロシグリタゾンが挙げられる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用されるフィブラートとしては、限定されないが、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、クロフィブラート、またはシプロフィブラートが挙げられる。前述のように、治療上有効な量のフィブラートまたはチアゾリジンジオンには、しばしば有毒な副作用がある。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、インシュリンおよびPPARアゴニストと組み合わせて投与され、ここでPPARアゴニストの投与量は、有害な副作用を伴う量より少ない量である。
本発明の組成物は、胆汁酸結合樹脂と一緒に投与することもできる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用される胆汁酸結合樹脂としては、限定されないが、コレスチラミン、コレスチポール塩酸塩が挙げられる。
本発明の組成物は、ナイアシンまたはニコチン酸と一緒に投与することもできる。
本発明の組成物は、RXRアゴニストと一緒に投与することもできる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用されるRXRアゴニストとしては、限定されないが、LG100268、LGD1069、9−cisレチノイン酸、2−(1−(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)−シクロプロピル)−ピリジン−5−カルボキシル酸、または4−((3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)2−カルボニル)安息香酸が挙げられる。
本発明の組成物は、抗肥満薬と一緒に投与することもできる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用される抗肥満薬としては、限定されないが、β−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト、例えば、β−3レセプターアゴニスト、シブトラミン、ブプロピオン、フルオキセチン、およびフェンテルミンが挙げられる。
本発明の組成物は、ホルモンと一緒に投与することもできる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用されるホルモンとしては、甲状腺ホルモンおよびエストロゲンが挙げられる。
本発明の組成物は、チルホスチン(tyrophostine)またはその類似体と一緒に投与することもできる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用されるチルホスチン(tyrophostine)としては、限定されないが、チルホスチン(tryophostine)51が挙げられる。
本発明の組成物は、スルホニル尿素系薬物と一緒に投与することもできる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用されるスルホニル尿素系薬物としては、限定されないが、グリソキセピド、グリブライド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリボルヌリド、トルブタミド、トラザミド、グリピジド、グリクラジド、グリキドン、グリヘキサミド、フェンブタミド、およびトルシクラミドが挙げられる。
本発明の組成物は、ビグアニドと一緒に投与することもできる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用されるビグアニドとしては、限定されないが、メトホルミン、フェンホルミンおよびブホルミンが挙げられる。
本発明の組成物は、α−グルコシダーゼ阻害剤と共に投与することもできる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用されるα−グルコシダーゼ阻害剤としては、アカルボースおよびミグリトールが挙げられる。
本発明の組成物は、apo A−Iアゴニストと一緒に投与することもできる。一実施形態において、apo A−Iアゴニストは、apo A−Iミラノ形態(apo A−IM)である。いくつかの実施形態において、本開示の化合物およびインシュリンと組み合わされる投与用のapoEは、Abrahamsenによる米国特許第5,721,114号に記載の方法によって産生される。いくつかの実施形態において、apo A−Iアゴニストは、ペプチドアゴニストである。いくつかの実施形態において、本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて投与されるapo A−Iペプチドアゴニストは、米国特許第6,004,925号または同第6,037,323号に記載のペプチドである。
本発明の組成物は、アポリポタンパク質E(apoE)と一緒に投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用される投与用のapoEは、米国特許第5,834,596号に記載の方法によって産生される。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、HDL上昇薬;HDLエンハンサー;またはアポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−IVおよび/もしくはアポリポタンパク質遺伝子のレギュレータと共に投与することができる。
本発明の組成物は、公知の心血管薬と一緒に投与することができる。本開示の化合物およびインシュリンと組み合わせて使用される、心疾患を予防または処置するための心血管薬としては、限定されないが、末梢抗アドレナリン薬、中枢作用性抗高血圧薬(例えばメチルドパ、メチルドパHCL)、抗高血圧性直接血管拡張薬(例えば、ジアゾキシド、ヒドララジンHCL)、レニン−アンギオテンシン系作用薬、末梢血管拡張薬、フェントラミン、抗狭心症薬、強心性配糖体、強心性血管拡張薬(例えば、アムリノン、ミルリノン、エノキシモン、フェノキシモン、イマゾダン、サルマゾール(sulmazole)、抗心律不整薬(antidysrhythmic drug)、カルシウム流入遮断薬、ラニチン、ボセンタンおよびレズリンが挙げられる。
本発明の組成物は、照射を伴う処置または1つもしくはそれ以上の化学療法剤と共に投与され得る。放射線処置に関して、放射線は、γ線またはX線であり得る。放射線療法の一般的な概説については、Hellman、Chapter 12:Principles of Radiation Therapy Cancer、in:Principles and Practice of Oncology、DeVitaら、編集、第2版、J.B. Lippencott Company、Philadelphiaを参照されたい。有用な化学療法剤としては、メトトレキセート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルバジン(procarbizine)、エトポシド、カンプトテシン(campathecin)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、さらに1つまたはそれ以上の化学療法剤を含むか、および/または放射線療法と同時に投与される。いくつかの実施形態において、化学療法または放射線療法が、本発明の組成物の投与の前にまたは後で、少なくとも1時間、5時間、12時間、1日間、1週間、1カ月間または数カ月間(例えば最大3カ月間)、本開示の組成物の投与に引き続き、投与される。
投与される化合物、インシュリンおよび他の治療薬の量は、治療上有効な量である。投与される投与量は、処置される対象の特徴、例えば、処置される特定の動物、年齢、体重、健康状態、併用処置があればその種類、および処置の頻度に依存し、当業者(例えば、臨床家)が容易に決定し得るものである。特定の投与計画の選択は、所望の臨床的応答が得られるように、臨床家に公知の方法にしたがって、臨床家が選択または調整もしくは用量設定し得るものである。
本明細書に記載の化合物、インシュリン、および特別な疾患、病態または障害の処置および/または予防に有効な他の治療薬の量は、疾患、病態または障害の性質および程度に依存し、標準的な臨床技術によって決定され得る。さらに、最適な投与量範囲の特定に役立てるために、in vitroまたはin vivo分析を場合により用いてもよい。
組成物中で用いられる正確な用量は、投与経路および障害の深刻度に依存し、担当医の判断および個々の患者の状況に従って決定されるべきものである。しかしながら、経口投与に適切な投与量範囲は、一般的に、体重1キログラム当たり約0.001ミリグラム〜約200ミリグラム、体重1キログラム当たり約0.01ミリグラム〜約100ミリグラム、体重1キログラム当たり約0.01ミリグラム〜約70ミリグラム、体重1キログラム当たり約0.1ミリグラムから約50ミリグラム、体重1キログラム当たり約0.5ミリグラム〜約20ミリグラム、体重1キログラム当たり約1ミリグラム〜約10ミリグラムである。いくつかの実施形態において、経口用量は、体重1キログラム当たり約5ミリグラムである。
いくつかの実施形態において、静脈内(i.v.)投与に適した投与量範囲は、体重1kg当たり約0.01mg〜約500mg、体重1kg当たり約0.1mg〜約100mg、体重1kg当たり約1mg〜約50mg、または体重1kg体重当たり約10mg〜約35mgである。他の投与の仕方についての適切な投与量範囲は、当業者に公知の上記投与量に基づいて計算することができる。例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、硬膜外麻酔、舌下腺、大脳内、膣内、経皮投与または吸入による投与の推奨用量は、体重1kg当たり約0.001mg〜約200mg、約0.01mg〜約100mg、約0.1mg〜約50mg、または約1mg〜約20mgの範囲である。有効量は、in vitroまたは動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から推定してもよい。そのような動物モデルおよびシステムは、当該分野において周知である。
本明細書に記載の化合物は、注射による非経口投与(例えばボーラス注射または連続注入)のために製剤化することができる。化合物は、約15分から約24時間の期間にわたって皮下に連続注入して投与してもよい。注入用製剤は、単位投薬形態で、例えばアンプルまたは複数回投与容器で、添加された保存剤と一緒に用いて、提供し得る。組成物は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性ビヒクルの乳剤の形態をとることができ、製剤化剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤を含有することができる。いくつかの実施形態において、注射剤は、短時間作用型、デポー、または皮下もしくは筋肉内に注射されるインプラントまたはペレット形態である。いくつかの実施形態において、非経口投薬形態は、溶液、懸濁液、乳剤または乾燥粉末の形態である。
経口投与については、本明細書に記載される化合物は、当該分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせて製剤化することができる。そのような担体により、化合物は、処置される患者によって経口摂取されるための、錠剤、丸剤、ドラジェ、カプセル剤、乳剤、液体、ゲル剤、シロップ剤、カシェ剤、ペレット剤、散剤、顆粒剤、スラリー、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液などに製剤化され得る。経口使用のための医薬調製物は、固体の賦形剤を加えて、場合により得られた顆粒の混合物を粉砕して、および所望であれば錠剤およびドラジェのコアを得るために適切な補助剤を添加して顆粒合剤に加工することにより、得ることができる。適切な賦形剤としては、限定されないが、充填剤、例えば、糖(限定されないが、ラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトール);セルロース調製物、例えば、限定されないが、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。所望であれば、崩壊剤、例えば、限定されないが、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)を添加することもできる。
経口投与される組成物には、1つまたはそれ以上の任意選択的な薬剤、(例えば、甘味料(例えば果糖、アスパルテームもしくはサッカリン);香料(例えば、ペパーミント、ウインターグリーンオイルもしくはチェリー);着色剤;および保存剤を加えて、薬学的に口当たりの良い調製物を提供することができる。さらに、錠剤または丸剤の形態においては、組成物は、胃腸管での崩壊および吸収を遅延させ、延長された時間での持続的な作用を得るために、被覆してもよい。さらに、浸透圧的に活性が駆動される化合物を選択的透過膜により囲むことも、経口投与される化合物に対して適している。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準ビヒクルを含み得る。そのようなビヒクルは、適切な医薬品等級のものである。
ドラジェコアは、適切なコーティングを施して提供され得る。この目的のために、濃縮された糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有して使用してもよい。染料または顔料は、活性化合物の用量が異なる組み合わせの特定または特徴付けを行うために、錠剤またはドラジェコーティングに添加することができる。
経口で使用可能な医薬調製物としては、ゼラチンで作製されるプッシュフィットカプセル(push−fit capsule)、およびゼラチンと、グリセリンまたはソルビトールなどの可塑化剤とで作製される軟質の密封カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセル剤には、有効成分と、充填剤(例えばラクトース)、結合剤(例えばデンプン)、および/または潤滑剤(例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウム)および場合により安定剤とを混合させて含有することができる。軟カプセル剤では、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール)中に、溶解または懸濁化し得る。さらに、安定剤を添加してもよい。
バッカル投与については、組成物は、例えば、従来の様式で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとることができる。
吸入による投与については、本明細書に記載の化合物は、加圧されたパックまたは噴霧器から提供されるエアロゾルスプレーの形態で、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素もしくは他の適切なガス)を用いて送達させることができる。加圧されたエアロゾルの場合には、投与量単位は、計量された量を送達するための弁を提供することにより決定し得る。吸入器または注入器で使用するためのゼラチンなどのカプセル剤およびカートリッジは、化合物の粉末合剤および適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)を含有させて製剤化することができる。
本明細書に記載される化合物は、坐剤または停留浣腸剤などの直腸組成物、例えば、従来の坐剤基材(カカオ脂または他のグリセリドなど)を含有する組成物に、製剤化することもできる。本明細書に記載された化合物は、膣用組成物、例えば、膣クリーム剤、坐剤、ペッサリー、膣内リングおよび子宮内避妊器具などに含めて製剤化することができる。
経皮的な投与では、化合物は硬膏に適用することができ、または最終的に生物組織に供給される経皮的な治療システムによって適用することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、クリーム、溶液、粉末、乳濁液、懸濁液、半固形体、軟膏、ペースト、ゲル、ゼリー、およびフォーム、またはそれらのいずれかを含有するパッチで提供することができる。
本明細書に記載される化合物は、デボー調製物として製剤化することもできる。そのような長時間作用型の製剤は、埋込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。デポー注射は、約1〜約6カ月またはより長い間隔で投与することができる。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマーまたは疎水性材料を用いて(例えば、許容される油中の乳剤として)もしくはイオン交換樹脂を用いて、またはわずかに可溶性の誘導体(例えばわずかに可溶性の塩)として、製剤化することができる。
また別の実施形態では、化合物は、制御放出システムで送達し得る。一実施形態において、ポンプが使用され得る(Langer、supra;Sefton、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng.、1987、14、201頁; Buchwaldら、Surgery、1980、88、507頁;Saudekら、N. Engl. J. Med.、1989、321、574頁を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用し得る(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise編、CRC Pres.、Boca Raton、Fla.(1974); Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall編、Wiley、New York(1984);Rangerら、J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem.、1983、23、61頁を参照;またLevyら、Science、1985、228、190頁Duringら、Ann. Neurol.、1989、25、351頁;Howardら、J. Neurosurg.、1989、71、105頁を参照)。また別の実施形態では、制御放出システムにおいて、本明細書に記載の化合物を標的(例えば、肝臓)の付近に置くことができ、したがって、必要とされる量は、全身用量のほんの一部となる(例えば、Goodson、in Medical Applications of Controlled Release、supra、2巻、115〜138頁(1984)を参照)。Langer、Science、1990、249、1527〜1533頁により概説において議論されている他の制御放出システムも使用し得る。
そのような製剤において、化合物を、薬学的に許容される希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、バッファー、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、および保存剤などとともに含有し得ることも、当該分野において公知である。医薬組成物は、さらに、適切な固体またはゲル相の担体または賦形剤も含むことができる。そのような担体または賦形剤の例としては、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えばポリエチレングリコール)が挙げられる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、薬剤、例えば限定されないが、局所的鎮痛剤(例えばリドカイン)、バリア装置(barrier device)(例えばGelClair)またはリンス(例えばCaphosol)と共に使用することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、ベシクル、特にリポソーム内に入れて送達させることができる(Langer、Science、1990、249、1527〜1533頁;Treatら、in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez−BeresteinおよびFidler編、Liss、New York、353〜365頁(1989);Lopez−Berestein、前掲、317〜327頁を参照;一般的には前掲参照)。
適切な組成物としては、限定されないが、経口の非吸収性組成物が挙げられる。適切な組成物には、限定されないが、生理食塩水、水、シクロデキストリン溶液、pH3〜9の緩衝液も含み得る。
本明細書に記載した化合物またはその薬学的に許容される塩は、複数の賦形剤、例えば限定されないが、精製水、プロピレングリコール、PEG400、グリセリン、DMA、エタノール、ベンジルアルコール、クエン酸/クエン酸ナトリウム(pH3)、クエン酸/クエン酸ナトリウム(pH5)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンHCl(pH7.0)、0.9%生理食塩水、および1.2%生理食塩水、ならびにこれらの組み合わせと共に製剤化し得る。いくつかの実施形態において、賦形剤は、プロピレングリコール、精製水およびグリセリンから選ばれる。
いくつかの実施形態において、製剤は、固体に凍結乾燥されてもよく、使用に先立って例えば水で再構成されてもよい。
哺乳動物に投与されるとき(例えば、獣医学的使用のために動物へ、または臨床的使用のためにヒトへ投与されるとき)、化合物は、単離形態で投与されてもよい。
ヒトに投与されるとき、化合物は無菌であり得る。化合物を静脈内投与するとき、水が、適切な担体である。食塩水および水性デキストロースおよびグリセリン溶液も、特に注射溶液のための液状担体として、用いることができる。適切な薬学的担体としては、賦形剤、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセリンモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールなどが挙げられる。本発明の組成物は、所望であれば、湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有することができる。
本明細書に記載の組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル、粉末、徐放性製剤、坐薬、エアロゾル、スプレーまたは使用に適した任意の他の形態の形態をとり得る。適切な医薬的担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、A.R. Gennaro編Mack Publishing Co.に記載されている。
一実施形態において、化合物は、常法に従って、ヒトへの投与に適した医薬組成物として、製剤化される。典型的に、化合物は、無菌の等張性水性緩衝液の溶液である。必要な場合、組成物は、さらに可溶化剤を含むことができる。静脈内投与のための組成物は、場合により、注射部位の痛みを緩和するための局所麻酔薬(例えばリドカイン)を含んでもよい。一般的に、成分は、別々に、または単位投薬形態で一緒に混合して、凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、密閉容器(例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサシェ剤)に入れて、供給される。化合物を注入によって投与するとき、化合物を、例えば、無菌の医薬品等級の水または生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて、分配してもよい。化合物を注射によって投与する場合は、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを備えさせ、成分を投与前に混合させるようにしてもよい。
医薬品組成物は、単位投薬形態であり得る。そのような形態において、組成物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割されていてもよい。単位投薬形態は、パッケージされた調製物、個別の量の調製物を含むパッケージ(例えば、パケット化錠剤、カプセル剤)、およびバイアルもしくはアンプルに入れた散剤であり得る。単位投薬形態は、それ自体、カプセル、カシェ剤、または錠剤であり得、またはこれらのいずれかが適当な数でパッケージされた形態であり得る。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、液体の形態であり得、この場合、活性薬剤(すなわち、本明細書に開示の表面的に両親媒性のポリマーまたはオリゴマーの1つ)は、溶液に、懸濁液に、または乳剤として、または溶液/懸濁液として、存在する。いくつかの実施形態において、液体組成物は、ゲルの形態である。他の実施形態において、液体組成物は、水溶液である。別の実施形態において、組成物は、軟膏の形態である。
適切な保存剤としては、限定されないが、水銀含有物質、例えば、フェニル水銀塩(例えば、酢酸フェニル水銀、ホウ酸塩および硝酸塩)およびチメロサール;安定化二酸化塩素;第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化セチルピリジニウム);イミダゾリジニル尿素;パラベン(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンおよびブチルパラベンならびにそれらの塩);フェノキシエタノール;クロロフェノキシエタノール;フェノキシプロパノール;クロロブタノール;クロロクレゾール;フェニルエチルアルコール;EDTA二ナトリウムまたはソルビン酸およびその塩類が挙げられる。
場合により、1つまたはそれ以上の安定剤を組成物に含み、必要とされる化学的安定性を増強させてもよい。適切な安定剤としては、限定されないが、キレート剤または錯化剤、例えばカルシウム錯化剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。例えば、EDTAまたはその塩(例えば二ナトリウム塩)の適当な量を、組成物に含み、超過カルシウムイオンと錯体形成させて保存中のゲル形成を防ぐこともできる。EDTAまたはその塩を、約0.01%〜約0.5%の量で含むことが適切であり得る。EDTA以外の保存剤を含有する実施形態の場合、EDTAまたはその塩、より詳細には、EDTA二ナトリウムは、約0.025重量%〜約0.1重量%の量で存在することができる。
1つまたはそれ以上の酸化防止剤を、組成物に含むこともできる。適切な酸化防止剤としては、限定されないが、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ポリクオタニウム−1、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、または当業者に公知の他の薬剤を含むことができる。そのような保存剤は、典型的に、約0.001重量%〜約1.0重量%で用いられる。
いくつかの実施形態において、化合物は、許容される可溶化剤によって少なくとも部分的に溶解される。特定の許容される非イオン界面活性剤(例えばポリソルベート80)が、可溶化剤として有用であり得、同様に、許容されるグリコール、ポリグリコール(例えばポリエチレングリコール400)(PEG−400)およびグリコールエーテルが有用であり得る。
溶液および溶液/懸濁液組成物のための適切な可溶化剤は、シクロデキストリンである。適切なシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、アルキルシクロデキストリン(例えば、メチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、ジエチル−β−シクロデキストリン)、ヒドロキシアルキルシクロデキストリン(例えば、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、カルボキシ−アルキルシクロデキストリン(例えば、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン)、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン(例えば、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン)などから選ぶことができる。シクロデキストリンの適用は、Rajewskiら、Journal of Pharmaceutical Sciences、1996、85、1155〜1159頁に概説されている。許容されるシクロデキストリンは、場合により、組成物中に、約1〜約200mg/ml、約5〜約100mg/ml、または約10〜約50mg/mlの濃度で存在し得る。
いくつかの実施形態において、組成物は、場合により、懸濁化剤を含有する。例えば、これらの実施形態において、組成物が水性懸濁液または水溶液/懸濁液である場合、組成物は懸濁化剤として1つまたはそれ以上のポリマーを含有し得る。有用なポリマーとしては、限定されないが、水溶性ポリマー、例えばセルロースポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、および水不溶性ポリマー(例えば、架橋カルボキシル含有ポリマー)が挙げられる。しかしながら、いくつかの実施形態において、組成物は、抗微生物ポリマーまたはオリゴマー活性薬剤、賦形剤またはそれらの両方についても、実質的な量の固体粒子状物質を含有していないが、その理由は、固体粒子状物質がもし存在すれば、処置を受けた目に不快感および/または刺激を引き起こし得るためである。
組成物に含むことができる1つまたはそれ以上の許容されるpH調整剤および/または緩衝剤としては、酸(例えば、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、塩酸);塩基(例えば、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリス−ヒドロキシメチルアミノメタン);および緩衝剤、(例えば、クエン酸塩/デキストロース、炭酸水素ナトリウムおよび塩化アンモニウム)が挙げられる。そのような酸、塩基および緩衝剤は、組成物のpHを維持するために必要とされる量において許容される範囲で含まれる。
場合により、1つまたはそれ以上の許容される界面活性剤(好ましくは非イオン性界面活性剤または共溶剤)を、組成物の成分の溶解性の増強、物理的安定性の付与、または他の目的のために、組成物に含むことができる。適切な非イオン界面活性剤としては、限定されないが、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油(例えばポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油);およびポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル(例えばオクトキシノール10(オクトキシノール40));ポリソルベート20、60および80;ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン界面活性剤(例えばPluronic(登録商標)F−68、F84およびP−103);シクロデキストリン;または当業者に公知の他の薬剤が挙げられる。典型的に、そのような共溶剤または界面活性剤は、約0.01重量%〜約2重量%のレベルで、組成物中で用いられる。
1つまたはそれ以上の潤滑剤も、場合により、涙液分泌を促進するため、または「ドライアイ」治療薬として、組成物に含むことができる。そのような薬剤としては、限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。涙液分泌の促進は、涙液が生来不足していて、涙液の分泌を正常程度に回復させる場合のみ、本発明において有益であることが理解される。過度の涙液分泌が生じる場合には、眼中の組成物の滞留時間を低下させてもよい。
また本開示は、本明細書に開示された1つまたはそれ以上の化合物または組成物が充填された1つまたはそれ以上の容器を含む医薬パックまたはキットも提供する。そのような容器(複数可)には、場合により、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって規定された形態の添付文書を付随させることができ、その添付文書は、本書に記載された病態、疾患または障害を処置するためのヒト投与についての製造、使用または販売に関する当局の承認を示すものである。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載の2つ以上の化合物または組成物を含有する。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載の化合物とインシュリン、および場合により別の治療薬とを、注射用単一投薬形態(例えば単回用量を注射可能装置、例えば針付き注射器に入れた形態)で含む。
また本開示は、哺乳動物におけるI型および/またはII型糖尿病の処置方法であって、それを必要とする哺乳動物に、有効量のインシュリンおよび許容される量の1つまたはそれ以上の上記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、処置方法を提供する。いくつかの実施形態において、哺乳動物は、処置前に、I型もしくはII型糖尿病または糖尿病前症と予め診断されていてもよい。いくつかの実施形態において、正式な診断はなされていなくてもよく;いくつかの実施形態において、哺乳動物は、I型もしくはII型糖尿病または糖尿病前症に罹患している疑いがあり、処置が望ましいと認識され得る。いくつかの実施形態において、方法は、肥満および糖尿病の合併症、例えば高コレステロール血症、高血圧症、冠性心疾患;糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、勃起障害および腎臓病を処置するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、インシュリンと同時にまたは連続的に投与することができる。したがって、いくつかの実施形態において、インシュリンが最初に投与され、その後、本明細書に記載の式I〜Vのいずれか1つの化合物が投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の式I〜Vのいずれか1つの化合物が最初に投与され、その後、インシュリンが投与される。いくつかの実施形態において、インシュリンと本明細書に記載の式I〜Vのいずれか1つの化合物とは、同時に投与される。同時に投与されるとき、インシュリンおよび本明細書に記載の式I−Vのいずれか1つの化合物は、別々の医薬組成物中に存在してもよく、または一緒にして、本明細書に記載の多くの医薬組成物のいずれか1つのように、一つの医薬組成物中に存在させてもよい。いくつかの実施形態において、インシュリンのための投与計画は、インシュリンおよび本明細書に記載された式I〜Vのいずれか1つの化合物の両方を投与するために使用し得る。
いくつかの実施形態において、式I〜Vの化合物の有効量は、約0.1mg/kg〜約100mg/kg、約0.5mg/kg〜約50mg/kg、約1mg/kg〜約25mg/kg、または約5mg/kg〜約20mg/kgのいずれか1つである。
インシュリン注射の用量レベルおよび頻度は、糖尿病の種類(I型またはII型)、インシュリン受容体の感度の状態、年齢、および血糖レベルに依存して変動し、個別の患者に応じて適合される。インシュリンについての開始用量は、以下のとおりである:速攻作用型インシュリン(例えば、Humalog)は開始用量0.5U/kg/日で投与され、短時間作用型のインシュリン(例えば、Humulin)は開始用量0.5U/kg/日で投与され、中間作用型インシュリン(例えば、NPH)および長時間作用型インシュリン(例えば、Lantus)は開始用量0.2U/kg/日で投与される。
いくつかの実施形態において、速効作用型インシュリン(例えば、Humalog)または短時間作用型インシュリン(例えば、Humulin)は、約0.05U/kg/日〜約5U/kg/日、約0.1U/kg/日〜約2.5U/kg/日、または約0.3U/kg/日〜約0.8U/kg/日の開始用量で、(式I〜Vの化合物と共に)投与される。いくつかの実施形態において、速効型インシュリン(例えば、Humalog)または短時間作用型インシュリン(例えば、Humulin)は、約0.5U/kg/日の開始用量で、(式I−Vの化合物と共に)投与される。
いくつかの実施形態において、中間作用型インシュリン(例えば、NPH)および長時間作用型インシュリン(例えば、Lantus)は、約0.01U/kg/日〜約3U/kg/日、約0.05U/kg/日〜約0.6U/kg/日、または約0.1U/kg/日〜約0.3U/kg/日の開始用量で、(式I〜Vの化合物と共に)投与される。いくつかの実施形態において、中間作用型インシュリン(例えば、NPH)、および長時間作用型インシュリン(例えば、Lantus)は、開始用量約0.02U/kg/日で、(式I−Vの化合物と共に)投与される。
本開示が、より効率的に理解されるために、実施例を下記に示す。これらの実施例が、例示のみを目的とするものであって、いかなる様式においても、特許請求されている実施形態を限定するものではないことが理解されるべきである。これらの実施例を通して、特に別途明記していない場合は、分子クローニング反応および他の標準的な組換えDNA技術は、Maniatisら、Molecular Cloning − A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press (1989)に記載の方法にしたがって、市販の試薬を使用して、実施した。
実施例1:Db/db試験1
本試験では、およそ16週齢の雄DbDb Lep欠損マウス(Harlan Laboratories)を使用した。実験計画は表1に示した。
手法:マウスを、1グループ当たり6匹のマウスからなる4つのグループに分けた。血糖レベルは、Accu−Chek Aviva Glucometers(Roche Diagnostics)を使用して測定した。血糖レベルの時間は、投与後72時間まで測定した。各試験の前に、血糖値測定器(Glucometer)の較正を行った。血液(5μL)を、尾の切片から採取し、グルコース試験片に直接加えた。グルコースレベルは、mg/dLで示した。
試験1では、動物を4時間絶食させてから、試験物質を投与し、次いで、8時間点まで継続的に絶食させた。次いで、動物に、28時間点の4時間前まで自由に摂食させ、その点から最後の血糖グルコース測定時間点まで、マウスを絶食させた。
データは平均±SEMとして表した。データは、二元配置分散分析、次いでボンフェローニ事後検定により分析した。1グループ当たりN=6。
結果:試験1において、16週齢のdb/dbマウスは、平均して482mg/dLの、空腹時血糖レベルを示した。インシュリンにより、血糖レベルが低下し、投与後3時間で平均166.5mg/dLとなった。血糖レベルは、8時間までに、インシュリン処置マウスの基線レベルに戻った。化合物102の投与は、投与後のどの時間点においても、血糖レベルに著しい影響を与えなかった。しかしながら、化合物102とインシュリンとを共投与することにより、インシュリンの応答が延長され、投与後、少なくとも52時間まで、血糖の有意な低下が観察された。この研究所の過去のデータからは、16週齢のdb/dbマウスのインシュリンレベルが1ng/mL以下であり、これに対し、7週齢のdb/dbマウスのインシュリンのピークレベルは約10ng/mLであり、糖尿病でない痩せた対照マウスのインシュリンレベルは、平均して約2〜5ng/mLであることが示された。結果は図1に示した。
化合物102とインシュリンとの共投与により、インシュリン血糖低下反応が増強された。*p<0.05(インシュリンとインシュリン/化合物102共投与との比較)。化合物102処置群の統計学的に有意でないわずかな血糖の低下は、依然として高齢db/d/bマウスにある低レベルのインシュリン産生の結果であると予測された。
実施例2:Db/db試験2
本試験では、およそ18週齢の雄DbDb Lep欠損マウス(Harlan Laboratories)を使用した。実験計画は表2に示した。
手法:マウスを、1グループ当たり6匹のマウスからなる4つのグループに分けた。血糖レベルは、Accu−Chek Aviva Glucometers(Roche Diagnostics)を使用して測定した。血糖レベルの時間は、投与後72時間まで測定した。各試験の前に、血糖値測定器の較正を行った。血液(5μL)は、尾の切片から採取し、グルコース試験片に直接加えた。グルコースレベルは、mg/dLで示した。
試験2では、動物は、各血糖測定時間点の4時間前に断食させ、後に、自由な摂食に戻した。
データは平均±SEMとして表した。データは、二元配置分散分析、次いでボンフェローニ事後検定により分析した。1グループ当たりN=6。
結果:第2の試験は、24〜72時間の時間窓で化合物102がインシュリンの作用に与える効果を再度確認するために、特に、インシュリン/化合物102の組み合わせによる正常レベル(すなわち、ビヒクルで処置された動物のレベル)に戻るまでの効果を理解するために行った。第2の試験は、第1の試験と、以下の3点で異なっていた:1)マウスは試験時に18週齢であった、2)インシュリン用量レベルは3から1.5U/kgに低下させた、3)血糖レベルは投与後72時間まで測定した。
この試験において、空腹時血糖レベルは平均して420mg/dLであった。インシュリン単独投与または化合物102単独投与の24時間後において、血糖レベルは、ビヒクル対照と差異がなかった。しかしながら、インシュリンと化合物102との共投与においては、24、36および48時間点で、顕著な血糖低下が誘発された。インシュリン/化合物102を共投与した動物の血糖レベルは、72時間までに、基線レベルに戻った。結果を図2に示した。
化合物102とインシュリンとを共投与することにより、インシュリンの血糖低下レベルが増強した。*p<0.05;**p<0.01(インシュリンとインシュリン/化合
物共投与との比較)。インシュリン処置群は、血糖低下を示さなかった。その理由は、インシュリン活性は、通常、血糖低下作用が2〜4時間で最大となり、8時間までにはその作用が終了するためである。この試験では期間は調べなかった。24および36時間点におけるインシュリン処置群のわずかな血糖上昇は、インシュリン処置群でしばしば観察される「リバウンド」効果であった。
実施例3:ストレプトゾシン(Streptozocoin)試験
本試験では、およそ8週齢の雄CD−1:ICRマウス(Charles River)を使用した。実験計画は表3に示した。マウスへのストレプトゾシン投与により、膵臓のβ細胞が破壊されるため、これを利用してI型糖尿病モデルを作製した。膵臓β細胞の損失に応じて、マウスは高血糖になった。これらのマウスは、インシュリン応答性であった。
手法:ストレプトゾシン投与:マウスへのストレプトゾシン投与を、標準的方法にしたがって実施した。簡潔には、マウスに、STZを、70mg/kgの用量で、1、3および8日目に投与した。各投与の前に18時間の断食を行った。マウスに、インシュリン(0.5U)を、2および9日目に投与した。11日目に、血糖レベルを測定した。血糖値が300mg/dL未満のマウスは、試験から除外した。マウスを、無作為に、処置グループに分けた。
マウスを、最初のSTZ投与後14日目に、インシュリン耐性試験で試験した。マウスに、インシュリン(0.35U、皮下注射)を投与し、その30分後に、化合物102(100mg/kg、腹腔内投与)を投与した。
血糖は、化合物102またはビヒクルの投与後、5、15、30、60、90、120、180、240、360および480分で測定した。血液を、尾の切片から採取し、グルコースレベルの低下を、血糖値測定器(Accu−Chek Aviva Glucometers;Roche Diagnostics)で測定した。
データは平均±SEMとして表した。データは、二元配置分散分析、次いでボンフェローニ事後検定により分析した。1グループ当たりN=6。
結果:ストレプトゾシン投与により、血糖レベルは、500mg/dL超に増加した。血糖のこのレベルは、膵臓のβ細胞が、完全に破壊されたことを示していた。化合物102の投与では、投与後6時間までのどの時間点においても、血糖レベルは影響を受けなかった。インシュリン投与により、投与の90分後に、血糖レベルが、546mg/dL(基線)から263mg/dLへ低下した。血糖レベルは、投与後4.5時間で基線レベルに戻った。
インシュリンとの併用において、化合物102は、インシュリン作用を強化させた。化合物102は、インシュリン投与の30分後に投与した。化合物102は、インシュリン介在性血糖低下を増強させ、血糖を157mg/dLまで低下させた(対照的に、インシュリン単独の場合は、263mg/dLであった)。さらに、血糖レベルは、投与後6時間までさらに低下した。
これらのデータは、化合物102が、I型糖尿病マウスにおけるインシュリンの作用を強化し、延長したことを示す。
ストレプトゾシンI型糖尿病マウスにおけるビヒクル処置および化合物102の処置では、化合物102またはビヒクルを時間点0で投与した。血糖レベルは投与後6時間まで測定した。化合物102は、インシュリン欠損マウスの血糖レベルに影響を与えなかった。インシュリンと化合物102との組み合わせでは、インシュリンを投与してから30分後に、化合物102を投与した。化合物102は時間点0で投与した。血糖レベルは投与後6時間まで測定した。化合物102の投与により、インシュリン介在性血糖低下が強化され、延長された。*p<0.05(インシュリンの単独処置と比較するとき)。***p<0.001(インシュリンの単独処置と比較するとき)。データは平均±SEMとして表した。データは、二元配置分散分析、次いでボンフェローニ事後検定により分析した。結果は図3に示した。
これらの研究において、化合物102とインシュリンとの共投与により、db/dbマウスにおいてインシュリン介在性血糖低下応答の実質的な延長が生じ、さらに化合物102をインシュリン処置I型糖尿病マウスに投与することにより、インシュリンの作用が強化され、延長された。
これらのデータは、化合物102が、後期II型糖尿病患者およびI型糖尿病患者におけるインシュリンの作用を延長させるためのインシュリンの補助療法として使用し得ることを示唆している。
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