[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、第1実施形態に係るベローズポンプ1の断面図を示す。図2に、前記ベローズポンプ1における第1ポンプ部2Aの断面図を示す。なお、図1において、矢印X1は前記ベローズポンプ1の左右方向左側を指し、矢印X2は前記ベローズポンプ1の左右方向右側を指している。
前記ベローズポンプ1は、その左右方向に並設された前記第1ポンプ部2Aおよび第2ポンプ部2Bを有する複胴型ベローズポンプ(往復動ポンプ)である。前記第1ポンプ部2Aおよび前記第2ポンプ部2Bは、実質的に左右対称構造となっているので、以下では主として前記第1ポンプ部2Aについて説明し、適宜前記第2ポンプ部2Bについて説明する。
図1、図2に示すように、前記ベローズポンプ1において、前記第1ポンプ部2Aは、ポンプケース3と、ベローズ4と、可動体5と、駆動装置6と、吸入側逆止弁7と、吐出側逆止弁8とを備えている。
前記ポンプケース3は、流体を吸入するための吸入流路11と、流体を吐出するための吐出流路12と、空気を供給または排出するための通気孔20とを有している。本実施形態において、前記ポンプケース3は、中空の略円柱状の容器であり、軸心方向が左右方向となるように配置されている。詳しくは、前記ポンプケース3は、ポンプボディ13と、中間カバー14と、端部カバー15とを備えている。
前記ポンプボディ13は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂から構成されており、円柱状に形成されている。前記ポンプボディ13は、前記第2ポンプ部2Bにおけるポンプボディ13を兼ねるものであり、軸心方向が左右方向となるように配置されている。そして、前記ポンプボディ13の内部に、前記吸入流路11および前記吐出流路12が備えられている。
前記吸入流路11は、一端部が前記ポンプボディ13の外周面に開口しかつ他端部が前記ポンプボディ13の右端面に開口するように設けられ、前記一端部側で流体の貯留タンクなどと接続されている。前記吐出流路12は、一端部が前記ポンプボディ13の外周面に開口しかつ他端部が前記ポンプボディ13の右端面に開口するように設けられ、前記一端部側で流体の移送先である所望の機器に接続されている。
前記中間カバー14は、前記ポンプボディ13と略同一の外径を有する円筒状に形成されている。前記中間カバー14は、軸心方向が左右方向となるように配置されて、前記ポンプボディ13の右方でこれと同軸心上に並設されている。そして、前記中間カバー14は、左端部が前記ポンプボディ13の右端面により左方から閉塞されるように、前記ポンプボディ13に連結されている。
前記端部カバー15は、前記中間カバー14と略同一の外径を有する有底円筒状に形成されている。前記端部カバー15は、軸心方向が左右方向となるように配置されて、前記中間カバー14の右方でこれと同軸心上に並設されている。そして、前記端部カバー15は、開放側の左端面が前記中間カバー14の右端部を右方から閉塞するように、前記中間カバー14に連結されている。
このように連結された前記ポンプボディ13、前記中間カバー14および前記端部カバー15により前記ポンプケース3が構成されて、その内部に前記ベローズ4を収容するための収容空間が形成されている。前記収容空間は、前記ポンプボディ13、前記中間カバー14および前記端部カバー15に適宜設けられたシール材によって、高い気密性を確保されている。
そして、前記端部カバー15に、前記通気孔20が設けられている。前記通気孔20は、前記収容空間(後述の空気室23)と前記ポンプケース3の外部とを連通させるべく前記端部カバー15を貫通するように設けられている。前記通気孔20は、前記ポンプケース3の外部に配置された前記駆動装置6と接続されている。
前記端部カバー15には、また、近接センサ21を含む検知装置22が設けられている。本実施形態において、前記検知装置22は、後述のように前記ベローズ4の伸縮に応じて当該ベローズ4の他端部(右端部)と一体的に移動する前記可動体5の接近を前記近接センサ21が検出することで、前記ベローズ4の伸縮状態を検知し得るように構成されている。
前記ベローズ4は、前記通気孔20と連通する前記空気室23が前記ポンプケース3内に形成されるように前記ポンプケース3(前記収容空間)に収容されて、流体を前記吸入流路11から吸入しかつ前記吐出流路12へ吐出するために伸縮可能に構成されている。本実施形態において、前記ベローズ4は、前記吸入流路11および前記吐出流路12と連通するように一端部(左端部)が前記ポンプケース3に連結されて、前記ポンプケース3に対して伸縮可能に構成されている。
ここでは、前記ベローズ4は、一端部(左端部)が前記ポンプボディ13に対して固定された状態で、他端部(右端部)が前記空気室23を左右方向に移動するように伸縮可能に構成されている。つまり、前記ベローズ4の伸縮方向が左右方向とされている。前記空気室23は、前記ポンプケース3に適宜設けられたシール材によって、高い気密性を確保されている。
前記ベローズ4は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂から構成されており、伸縮方向の一端部である左端部が開放されかつ他端部である右端部が内部にポンプ室を形成し得るように閉塞された蛇腹状に形成されている。詳しくは、前記ベローズ4は、ベローズ本体24と、固定フランジ25と、可動フランジ26とを備えている。
前記ベローズ本体24は、実質的に有底筒状に形成されており、左右方向に交互に設けられた山部および谷部を外周部に備えている。前記ベローズ本体24はその内部に所定体積の流体を吸入し得るとともに、前記吸入側逆止弁7の少なくとも一部および前記吐出側逆止弁8の少なくとも一部を収容し得るように構成されている。
前記固定フランジ25は、前記ベローズ本体24の山部のうち隣り合う山部(左端の山部)との間に固定側係合溝が形成されるように、前記ベローズ本体24の左端部から径方向外側に突設されている。前記可動フランジ26は、前記ベローズ本体24の山部のうち隣り合う山部(右端の山部)との間に可動側係合溝が形成されるように、前記ベローズ本体24の右端部から径方向外側に突設されている。
そして、前記ベローズ本体24の左端部および前記固定フランジ25が、前記流入流路11の開口および前記吐出流路12の開口を囲むように前記ポンプボディ13の右端面に取り付けられている。この状態で、前記ポンプケース3の内周面に固定された環状の係合板28が前記固定側係合溝に係合されて、前記ベローズ4の伸縮方向の一端部(左端部)が、前記ポンプケース3に対して固定されている。
前記可動体5は、前記空気室23に臨むように前記ベローズ4に連結されて、前記ベローズ4を伸縮させるべく可動し得るように構成されている。本実施形態において、前記可動体5は、前記ベローズ4の右方に前記空気室23が区画され得るように、前記ベローズ4に連結された状態で前記ポンプケース3に収容されている。
前記可動体5は、所定の肉厚(左右幅)および前記ベローズ4の可動フランジ26よりも大きな外径を有する円板状部材から構成されている。前記可動体5は、軸心方向が左右方向となるように配置されて、前記ベローズ4の右方でこれと同軸心上に並設されている。そして、前記可動体5は、前記ベローズ4の右端部を嵌合溝34に嵌めて右方から覆うように設けられている。
前記可動体5の左方には、前記ベローズ4を囲む環状の連結板36が設けられている。前記連結板36は、前記ベローズ4の右端部が前記嵌合溝34に嵌められた状態で、前記可動側係合溝に係合されるとともに、ボルトなどで前記可動体5に固定されている。これにより、前記可動体5が、前記ベローズ4の右端部と一体的に移動し得るように、前記ベローズ4に連結されている。
前記ベローズ4の周囲には、複数の連結棒37が備えられている。前記複数の連結棒37は、軸心方向が左右方向となるように配置されて、前記ベローズ4の周方向に所定間隔ごとに設けられている。前記複数の連結棒37は、一方の端部で前記可動体5に固定されるとともに、前記ポンプボディ13を貫通して前記第2ポンプ部2Bにおける収容空間まで延設されている。
ここで、前記複数の連結棒37は、前記第2ポンプ部2Bにおける複数の連結棒37を兼ねるものであり、前記第1ポンプ部2Aにおける前記可動体5と前記第2ポンプ部2Bにおける可動体5との間にわたって延設されている。そして、前記複数の連結棒37は、左右方向に移動可能なように前記ポンプボディ13にシール軸受け39を介して支持されている。
前記駆動装置6は、前記通気孔20を介して前記空気室23に加圧空気を供給して、前記ベローズ4が収縮するように前記可動体5を可動させ得るように構成されている。さらに、前記駆動装置6は、前記通気孔20を介して前記空気室23から空気を排出させて、前記ベローズ4が伸長するように前記可動体5を可動させ得るように構成されている。
本実施形態において、前記駆動装置6は、前記第2ポンプ部2Bにおける駆動装置6を兼ねるものであり、前記第1ポンプ部2Aにおける前記可動体5および前記第2ポンプ部2Bにおける前記可動体5を用いて、前記第1ポンプ部2Aにおける前記ベローズ4と、前記第2ポンプ部2Bにおけるベローズ4とを背反的に伸縮させ得るようになっている。
詳しくは、前記駆動装置6は、空気供給装置から構成されており、コンプレッサ41と、通気路42と、給気路43と、排気路44と、第1切替弁45と、第2切替弁46と、コントローラ47とを有している。
前記通気路42は、前記通気孔20を介して前記空気室23に対し供給または排出される空気を流通させ得るものである。前記通気路42は、配管などから構成され、前記空気室23と連通するように当該通気路42の長手方向一端部で前記通気孔20に連通接続されている。
前記給気路43は、前記コンプレッサ41により生成された所定圧力の空気(加圧空気)を前記空気室23に向けて流通させ得るものである。前記給気路43は、配管などから構成され、長手方向一端部で前記通気路42の長手方向他端部に連通接続されるとともに、長手方向他端部で前記コンプレッサ41に連通接続されている。ここで、前記給気路43は、長手方向途中で前記第2ポンプ部2B側の前記給気路43と合流するものとなっている。
前記排気路44は、前記空気室23から排出された空気を前記ポンプケース3の外部へ導き得るものである。前記排気路44は、配管などから構成され、長手方向一端部で前記通気路42と前記給気路43との接続部に接続されている。
前記第1切替弁45は、前記コンプレッサ41からの加圧空気を前記第1ポンプ部2Aにおける前記通気路42に向かって流通させ得る第1状態と、前記第2ポンプ部2Bにおける前記通気路42に向かって流通させ得る第2状態とを択一的にとり得るように構成されている。前記第1切替弁45は、電磁弁などから構成され、前記給気路43の合流部に設けられている。
前記第2切替弁46は、前記コンプレッサ41からの加圧空気を前記給気路43から前記通気路42に向かって流通させ得る第1状態と、前記空気室23から排出された空気を前記通気路42から前記排気路44に向かって流通させ得る第2状態とを択一的にとり得るように構成されている。前記第2切替弁46は、電磁弁などから構成され、前記通気路42と前記給気路43と前記排気路44との接続部に設けられている。
前記コントローラ47は、前記第1切替弁45および前記第2切替弁46を制御するためのものである。前記コントローラ47は、前記コンプレッサ41からの加圧空気を前記第1ポンプ部2Aにおける前記空気室23と前記第2ポンプ部2Bにおける空気室23とに対し交互に供給し、かつ加圧空気が供給される空気室23と反対側の空気室23の空気を前記排気路44に導くことができるように、前記第1切替弁45および前記第2切替弁46を制御する構成とされている。
図3、図4、図5、図6に、前記第1ポンプ部2Aの模式図を示す。図2、図3、図4、図5、図6に示すように、前記駆動装置6は、放出口48と、開閉弁60とをさらに有している。
前記放出口48は、前記空気室23から排出された空気を前記ポンプケース3の外部へ放出するためのものである。本実施形態において、前記放出口48は、前記空気室23と連通するように前記排気路44の長手方向他端部に設けられ、前記ポンプケース3の外部に開口するように配置されている。
前記開閉弁60は、前記放出口48を開閉可能なものである。前記開閉弁60は、弁体64の自重により前記放出口48を閉じていて、前記ベローズ4が最大に伸長することを許容すべく前記ベローズ4の伸長による前記空気室23の内部圧力の変動に応じて前記放出口48を開き得るように構成されている。本実施形態において、前記開閉弁60は、弁ケース61と、弁孔62と、弁座部63と、前記弁体64とを有している。
前記弁ケース61は、有底円筒状に形成され、上方に開口するように設置されている。前記弁ケース61の底部66には、前記排気路44の長手方向他端部が連結されている。前記弁ケース61の内周面は、前記弁ケース61の開口部67の内径が前記底部66の内径より大きくなるようにテーパ状に形成されている。
前記弁孔62は、前記弁ケース61の底部66に設けられ、前記排気路44の長手方向他端部に設けられた前記放出口48と連通されている。これにより、前記弁ケース61の内部と前記排気路44とが連通されている。前記弁座部63は、前記弁ケース61における前記弁孔62周囲の内周面に形成されている。
前記弁体64は、前記弁ケース61に上下方向に摺動(滑動)可能に収容され、前記弁座部63に着座または離座するように構成されている。前記弁体64は、自重により前記弁座部63に着座する方向(下方)へ移動しており、自重よりも大きな力が前記放出口48側から加わった場合にだけ前記弁座部63から離座する方向(上方)へ移動するようになっている。
また、前記弁体64は、前記弁ケース61の内周面に沿う形状(本実施形態においては、円錐台形状)とされ、前記弁座部63に着座したとき、前記弁ケース61の内部における前記弁ケース61の底部66との間に気密状の空間68を形成し得るようになっている。
こうして、前記開閉弁60は、前記駆動装置6の第2切替弁46が前記第1状態をとるとき(すなわち、前記ベローズ4を収縮させる吐出行程のとき)には、前記通気路42と前記排気路44との間が遮断されることから、前記弁体64を自重により前記弁座部63に着座させて前記放出口48を閉じ、空気を前記放出口48から前記ポンプケース3の外部へ放出させないようになっている。
一方、前記開閉弁60は、前記駆動装置6の第2切替弁46が前記第2状態をとるとき(すなわち、前記ベローズ4を伸長させる吸入行程のとき)には、図5に示すように、前記通気路42と前記排気路44とが連通されることから、前記空間68に前記空気室23が連通して、前記弁体64に前記空気室23の内部圧力が付与されるようになっている。そして、前記開閉弁60は、基本的に前記放出口48を閉じているが、前記空気室23の内部圧力が前記弁体64の自重よりも大きくなっている間は前記弁体64を前記弁座部63から離座させて前記放出口48を開き、前記空気室23の空気を放出するようになっている。
ここでは、この空気の放出によって前記空気室23の内部圧力が漸次低下するが、この際に前記空気室23の内部圧力がある程度低下した段階(少なくとも前記ベローズ4が最大に伸長する直前の段階)で、前記弁体64の自重が前記空気室23の内部圧力よりも大きくなるように構成されている。これにより、前記段階で前記空気室23の空気の放出が規制されて、前記ベローズ4の伸長にともなって前記空気室23の内部圧力が再び上昇することとなる。なお、前記ベローズ4が最大に伸長する直前の段階とは、前記ベローズ4が最大伸長幅に対して好ましくは85〜90パーセントまで伸長した段階をいう。
また、前記吸入側逆止弁7は、前記吸入流路11から前記ベローズ4内に向かう流体の流れのみを許容するように構成されている。本実施形態において、前記吸入側逆止弁7は、前記吸入流路11と前記ベローズ4内とを連通させた状態で前記ポンプボディ13の右端面に固定された弁ケース54と、前記弁ケース54内に収容された弁体55およびコイルばね56とを備えている。
そして、前記吸入側逆止弁7は、前記ベローズ4が伸張する際に前記弁体55を弁座から離間させて開放状態となり、前記吸入流路11から前記ベローズ4内への流体の吸引を許容し、かつ、前記ベローズ4が収縮する際に前記弁体55を弁座に当接させて閉塞状態となり、前記ベローズ4内から前記吸入流路11への流体の逆流を阻止し得るように構成されている。
前記吐出側逆止弁8は、前記ベローズ4内から前記吐出流路12に向かう流体の流れのみを許容するように構成されている。本実施形態において、前記吐出側逆止弁8は、前記ベローズ4内と前記吐出流路12とを連通させた状態で前記ポンプボディ13の右端面に固定された弁ケース57と、前記弁ケース57内に収容された弁体58およびコイルばね59とを備えている。
そして、前記吐出側逆止弁8は、前記ベローズ4が収縮する際に前記弁体58を弁座から離間させて開放状態となり、前記ベローズ4内から前記吐出流路12への流体の吐出を許容し、かつ、前記ベローズ4が伸長する際に前記弁体58を弁座に当接させて閉塞状態となり、前記ベローズ4内から前記吐出流路12への流体の逆流を阻止し得るように構成されている。
以上のような構成により、本実施形態に係る前記ベローズポンプ1の作動時には、前記ベローズポンプ1が図1に示される状態である場合、前記駆動装置6のコントローラ47により前記第1切替弁45および前記第2切替弁46が制御され、前記第2ポンプ部2Bにおける前記空気室23に前記通気路42および前記給気路43などを介して前記コンプレッサ41からの加圧空気が供給される。したがって、前記第2ポンプ部2Bでは、前記可動体5が右方に移動して、前記ベローズ4が収縮する。この収縮に連動して前記複数の連結棒37が右方に移動し、前記第1ポンプ部2Aにおける前記ベローズ4が最大伸長状態となるまで伸長する。また、前記第1ポンプ部2Aでは、前記空気室23の空気の一部が前記排気路44に導かれて、前記放出口48から前記ポンプケース3の外部へ放出される。
この際、前記第2ポンプ部2Bにおいては、前記吸入側逆止弁7が閉塞状態となりかつ前記吐出側逆止弁8が開放状態となっており、前記ベローズ4内から前記吐出流路12に向かって流体が吐出される(吐出行程)。前記第1ポンプ部2Aにおいては、前記吸入側逆止弁7が開放状態となりかつ前記吐出側逆止弁8が閉弁しており、前記ベローズ4内に前記吸入流路11から流体が吸入される(吸入行程)。
その後、前記第1ポンプ部2Aにおいて、前記検知装置22によって前記ベローズ4が最大伸長状態になったことが検知されると、この検知情報に基づいて前記コントローラ47により前記第1切替弁45および前記第2切替弁46が制御され、前記第1ポンプ部2Aにおける前記空気室23に前記通気路42および前記給気路43などを介して前記コンプレッサ41からの加圧空気が供給される。したがって、前記第1ポンプ部2Aでは、前記可動体5が左方に移動して、前記ベローズ4が収縮を開始する。この収縮に連動して前記複数の連結棒37が左方に移動し、前記第2ポンプ部2Bにおける前記ベローズ4が伸長を開始する。また、前記第2ポンプ部2Bでは、前記空気室23の空気の一部が排気路44に導かれて、前記放出口48から前記ポンプケース3の外部へ放出される。
この際、前記第1ポンプ部2Aにおいては、前記内部圧力が負圧から正圧に変化することによって前記吸入側逆止弁7が閉塞状態となりかつ前記吐出側逆止弁8が開放状態となって、前記ベローズ4内から前記吐出流路12に向かって流体が吐出される(吐出行程)。前記第2ポンプ部2Bにおいては、前記内部圧力が正圧から負圧に変化することによって前記吸入側逆止弁7が開放状態となりかつ前記吐出側逆止弁8が閉弁して、前記ベローズ4内に前記吸入流路11から流体が吸入される(吸入行程)。
このように、前記ベローズポンプ1においては、前記第1ポンプ部2Aにおける前記ベローズ4および前記第2ポンプ部2Bにおける前記ベローズ4が背反的に伸縮するのにともなって、双方の前記ベローズ4に関する流体の吸入行程と吐出行程とが交互に行われ、流体が移送され得るようになっている。つまり、前記ベローズポンプ1は、前記第1ポンプ部2Aおよび前記第2ポンプ部2Bを用いて、実質的に連続して流体を吐出できるようになっている。
そのうえで、前記ベローズポンプ1においては、吸入行程が開始すると、その直後には、前記空気室23の内部圧力が前回の吐出行程で高められていることから、前記開閉弁60がこの内部圧力を付与されて、図3に示すように、前記放出口48を開くこととなる。これにより、前記空気室23の空気が、図3に示す黒塗り矢印のように流れて前記放出口48から前記ポンプケース3の外部へ放出され、前記空気室23の内部圧力が低下する。前記空気室23の内部圧力がある程度低下した段階で、図4に示すように、前記開閉弁60が前記放出口48を閉じることとなる。
そして、この状態(前記空気室23の空気の放出が規制された状態)で前記ベローズ4が最大まで伸長しようとするので、前記空気室23の内部圧力が前記ベローズ4の伸長にともなって次第に上昇することとなる。なお、この際、前記空気室23の内部圧力が前記開閉弁60の弁体64の自重よりも大きい値(前記ベローズ4が最大に伸長することを許容しない値近く)まで上昇した場合には、前記開閉弁60が前記放出口48を開いて、図5の二点鎖線で示すように前記空気室23の空気の一部が前記ポンプケース3の外部へ排出される。そのため、前記空気室23の内部圧力が過剰に上昇はせず、前記ベローズ4の伸長が過度に妨げられることがない。
これにより、前記ベローズ4が図6に示すように最大伸長状態に至るときには、前記空気室23の内部圧力が適度に上昇した状態になって、前記ベローズ4の伸長速度が空気の排気抵抗により低下し、ひいては前記吸入流路11から前記ベローズ4内への流体の吸入速度が低下する。したがって、吸入行程から吐出行程に切り替わったとき、すなわち前記ベローズ4が伸長状態から収縮状態に切り替わったとき、閉塞状態になった前記吸入側逆止弁7に、前記吸入流路11からの流体が比較的穏やかに衝突することとなる。よって、ウォータハンマ現象を従来に比べて緩和することができ、これに起因する前記ベローズポンプの振動を低減できる。
しかも、ウォータハンマ現象の発生の原因となる流体と前記吸入側逆止弁7との衝突を緩和すべく、従来のように流体の吸入速度を単に遅く設定しておくわけではないので、ポンプ性能を大きく低下させずに済む。
このように、本実施形態に係る前記ベローズポンプ1によれば、ポンプ性能を大きく低下させることなく、吸入行程から吐出行程への切り替わりの際にウォータハンマ現象に起因して発生する振動を低減できる。その結果、前記ベローズポンプ1から当該ベローズポンプ1に接続された配管および機器などへ伝播される振動も低減でき、この振動に起因する不具合の発生を極力回避できる。
なお、本実施形態において、前記開閉弁60(前記弁体64)の自重は、前記空気室23の内部圧力が前記ポンプケース3の外部圧力(たとえば、大気圧)よりも大きい状態で前記放出口48が閉じられ、かつ、前記ベローズ4が最大に伸長することが許容される大きさに設定することが好ましく、前記空気室23に設定される内部圧力の状況によって前記開閉弁60(前記弁体64)の自重も適宜に設定されるものである。
また、本発明における開閉弁は、本実施形態においては前記弁体64の自重のみにより前記放出口48を閉じ得る前記開閉弁60とされているが、これに限定されるものではない。本発明における開閉弁は、たとえば、図7(a)に示すように、横方向に伸縮可能な付勢部材71の付勢力により弁体72を用いて前記放出口48を閉じ得る開閉弁73としてもよいし、図7(b)に示すように、弁体76の自重と、上下方向に伸縮可能な付勢部材75の付勢力とにより、弁体76を用いて前記放出口48を閉じ得る開閉弁77としてもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図8に、第2実施形態に係るベローズポンプ101の断面図を示す。なお、図8において第1実施形態と同一の符号を付した部材は、同一または実質的に同一の部材であることを示し、適宜、その説明を省略する。
第2実施形態に係る前記ベローズポンプ101は、第1実施形態に係る前記ベローズポンプ1が複胴型のベローズポンプであるのに対し、単胴型のベローズポンプである点で、第1実施形態に係る前記ベローズポンプ1と相違している。
図8に示すように、前記ベローズポンプ101は、ポンプケース103と、ベローズ4と、可動体5と、駆動装置106と、吸入側逆止弁7と、吐出側逆止弁8とを備えるとともに、ポンプ軸115と、移動体116とを備えている。
前記ポンプケース103は、前記ベローズ4を収容するための第1収容空間と、前記移動体116を収容するための第2収容空間とを隔壁104を挟んで隣り合うように備えている。そして、前記ポンプケース103と前記ベローズ4との間に気密状の第1空気室107が形成されるとともに、前記ポンプケース103と前記移動体116との間に気密状の第2空気室108が形成されている。
前記ポンプケース103には、第1通気孔111が設けられている。前記第1通気孔111は、前記第1空気室107と前記ポンプケース103の外部とを連通させるべく前記ポンプケース103を貫通するように設けられている。そして、前記第1通気孔111は、前記駆動装置106の第1通気路125と接続されている。
前記ポンプケース103には、第2通気孔112が設けられている。前記第2通気孔112は、前記第2空気室108と前記ポンプケース103の外部とを連通させるべく前記ポンプケース103を貫通するように設けられている。そして、前記第2通気孔112は、前記駆動装置106の第2通気路126と接続されている。
前記駆動装置106は、前記第1通気孔111を介して前記第1空気室107に加圧空気を供給して、前記ベローズ4が収縮するように前記可動体5を可動させ得るように構成されている。また、前記駆動装置106は、前記第1通気孔111を介して前記第1空気室107から空気を排出させて、前記ベローズ4が伸長するように前記可動体5を可動させ得るように構成されている。
本実施形態においては、前記駆動装置106は、コントローラ130により第1切替弁131、第2切替弁132および第3切替弁133を制御することで、給気路127および前記第1通気路125・前記第2通気路126を用いて、コンプレッサ41により生成された所定圧力の空気(加圧空気)を前記第1空気室107と前記第2空気室108とに対して交互に供給し得るように構成されている。
また、前記駆動装置106は、加圧空気が供給される前記第2空気室108(前記第1空気室107)と反対側の前記第1空気室107(前記第2空気室108)の空気を第1排気路128(第2排気路129)に導き、第1放出口48(第2放出口49)から前記ポンプケース103の外部へ放出し得るように構成されている。前記第1放出口48には、当該第1放出口48を開閉可能な開閉弁60が設けられている。
前記ポンプ軸115は、軸心方向が左右方向となるように配置され、前記隔壁104を貫通するように設けられている。前記ポンプ軸115は、左右方向に移動可能なように前記隔壁104に支持されている。そして、前記ポンプ軸115は、左端部で前記可動体5と固定され、右端部で前記移動体116と固定されて、前記移動体116とともに前記可動体5と連動して移動し得るようになっている。
前記移動体116には、センシング片134が固定されている。前記ポンプケース103には、前記センシング片134を挟むように配置された左右の近接センサ21からなる検知装置136が設けられている。前記検知装置136は、前記ベローズ4の伸縮に応じて左右方向に移動する前記センシング片134の接近を検出することで、前記ベローズ4の伸縮状態を検知し得るように構成されている。
以上のような構成により、前記ベローズポンプ101の作動時には、前記ベローズポンプ101が図8に示される状態である場合、前記駆動装置106のコントローラ130により前記第1切替弁131、前記第2切替弁132および前記第3切替弁133が制御され、前記第2空気室108に前記給気路127および前記第2通気路126を介して前記コンプレッサ41からの加圧空気が供給される。これにより、前記移動体116ひいては前記ポンプ軸115が右方に移動するとともに、この移動に連動して前記可動体5が右方に移動して、前記可動体5に連結された前記ベローズ4が伸長を開始する。また、前記第1空気室107の空気の一部が前記第1排気路128に導かれて、前記第1放出口48から前記ポンプケース103の外部へ放出される。
その後、前記検知装置136によって前記ベローズ4が最大伸長状態になったことが検知されると、この検知情報に基づいて前記コントローラ130により前記第1切替弁131、前記第2切替弁132および前記第3切替弁133が制御され、前記第1空気室107に前記給気路127および前記第1通気路125を介して前記コンプレッサ41からの加圧空気が供給される。これにより、前記ベローズ4が収縮を開始する。この収縮により前記可動体5が左方に移動し、この移動に連動して前記ポンプ軸115ひいては前記移動体116が左方に移動する。また、前記第2空気室108の空気が前記第2排気路129に導かれて、前記第2放出口49から前記ポンプケース103の外部へ放出される。
そして、前記検知装置136によって前記ベローズ4が最収縮状態になったことが検知されると、この検知情報に基づいて前記コントローラ130により前記第1切替弁131、前記第2切替弁132および前記第3切替弁133が制御され、再び前記第2空気室108に前記給気路127および前記第2通気路126を介して前記駆動装置106から空気が供給される。このように、前記ベローズポンプ101においては、前記ベローズ4の伸縮に応じて流体の吸入行程と吐出行程とが交互に行われ、当該流体が移送され得るようになっている。
そのうえで、前記ベローズポンプ101の吸入行程において前記ベローズ4が伸長する際、前記開閉弁60により前記第1放出口48が主として閉じられて、前記ベローズ4が伸長しても前記第1空気室107から空気が排出されにくくなっているので、前記第1空気室107の内部圧力が次第に上昇することとなる。これにより、前記ベローズ4が最大伸長状態に至るときには、前記第1空気室107の内部圧力が適度に上昇した状態になって、前記ベローズ4の伸長速度が低下し、ひいては前記吸入流路11から前記ベローズ4内への流体の吸入速度が低下する。したがって、本実施形態に係る前記ベローズポンプ101によっても、第1実施形態と同様に、ポンプ性能を大きく低下させることなく、吸入行程から吐出行程への切り替わりの際にウォータハンマ現象に起因して発生する振動を低減できる。