JP6152193B2 - 有機溶剤耐性を有するポリアミド限外濾過膜、及びその製造方法 - Google Patents

有機溶剤耐性を有するポリアミド限外濾過膜、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機溶剤に対する耐性に優れたポリアミド限外濾過膜に関する。更に詳しくは、本発明は、電子分野、食品分野、製薬分野、発酵分野、光学分野等において使用される種々の有機溶媒に対して優れた耐性を備えるポリアミド限外濾過膜に関する。また、本発明は、当該ポリアミド限外濾過膜の製造方法に関する。更に、本発明は、当該ポリアミド限外濾過膜を利用した限外濾過膜モジュールに関する。
従来、限外濾過膜は、浄水分野で細菌やウィルスの除去、工業分野で蛋白質や酵素等の熱に弱い物質の分離又は濃縮、医療分野で人工透析、医薬品や医療用水製造時のウィルスや蛋白質の除去、超純水の製造、電着塗料の回収、製糸・パルプ工場の汚水処理、含油排水の処理、ビル排水の処理、果汁の清澄化、生酒の製造、チーズホエーの濃縮・脱塩、濃縮乳の製造、卵白の濃縮、バイオリアクターへの利用、気体中の微粒子除去、原子力発電所の水処理等、様々な分野で実用化されている。そして、限外濾過膜は、様々な分野で利用されるため、有機溶媒を含む溶液の処理に使用されることもあり、その実用性を高めるために、優れた有機溶剤耐性を備えていることが求められている。
限外濾過膜を用いた濾過では、1nmから100nmの範囲の多孔質膜の微小な細孔により、水中に溶存する蛋白質、高分子等から、ウイルス、コロイドなどの微粒子まで分離することができる。限外濾過膜の細孔径は、電子顕微鏡でも観測・測定することは困難であり、また細孔径のばらつきもあるので、膜の分離性能を表すには膜の代表細孔径では十分とはいえず、分離性能の指標として分画分子量が主として使われている。なお、限外濾過膜で分離できる対象物質の大きさは分画分子量の前後で明確に区切られるものではなく、ある幅を持っている。
高分子材料を原料として限外濾過膜を作製する際に工業的に良く用いられる方法としては相分離法が挙げられる。相分離法は、大きく非溶媒誘起相分離法(NIPS法)と熱誘起相分離法(TIPS法)に分けることができる。NIPS法は、高分子材料を良溶媒に溶解させて均一な高分子溶液を作製し、この高分子溶液を非溶媒に浸漬することによって、非溶媒の浸入、良溶媒の外部雰囲気への溶出によって相分離を起こさせる方法である。NIPS法では、マクロボイドによる指状構造となり、その長所としては、装置がシンプルであること、表面に緻密層が形成された非対称構造を作りやすく流量を上げやすいこと、歴史が長く多くの多孔質膜の作製に利用されており実績があること等が挙げられる。NIPS法の短所としては、強度が出にくいこと、室温で溶解する良溶媒が必要となること等が挙げられる。一方、TIPS法は、比較的新しい方法であり、高分子材料に対して低温では溶解しないが高温で溶解する溶媒を選択し、高温で溶解させた均一な高分子溶液を1相領域と2相領域の境界であるバイノダル(binodal)線以下の温度へ冷却させることにより相分離を誘起し、高分子の結晶化やガラス転移により構造を固定する方法である。TIPS法は、スポンジ状の均質構造になる傾向があり、長所としては高強度にできること、低温で溶解する溶媒がない高分子にも適用できることが挙げられ、短所としては装置が複雑である、非対称構造を作り限外濾過膜のような微細構造を作るのが困難という点が挙げられる。
上記のような理由から、TIPS法によって製膜された限外濾過膜で商業的に実用化されているものはなく、非特許文献1によってTIPS法により酢酸セルロースからなる限外濾過膜が作製できることが初めて示されたところであった。
従来、限外濾過膜の素材としては、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等の高分子素材が知られている。酢酸セルロースは、加工性が良く分離性にも優れており、限外濾過膜として多用されているが、耐熱性及び耐有機溶剤性の点で欠点がある。また、ポリアクリロニトリル及びポリフッ化ビニリデンは、耐有機溶剤性及び耐熱性の点で酢酸セルロースよりも優れており、多孔性膜として実用化されているものの、非プロトン性極性溶媒等の有機溶剤には簡単に溶解するという欠点があり、未だ十分に満足できる特性の膜素材であるとは言えない。更に、ポリスルホン及びポリエーテルスルホンは、耐熱性に優れており、加工性も良く、各種の分画特性の中空糸膜を含めた限外濾過膜として実用に供されているが、これらも耐有機溶剤性の点で問題がある。
また、有機溶剤耐性に優れた限外濾過膜として、ポリフェニレンスルフィド(PPS)を使用する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリフェニレンスルフィド(PPS)膜が、耐熱性及び耐有機溶剤性で非常に優れていることが報告されており、特許文献2及び3では、PPSを用いた中空糸膜の製造方法も検討されている。しかしながら、特許文献1及び2では、延伸法による多孔質化が採用されており、平均孔径が大きくなっており精密濾過膜としては使えるが限外濾過膜の性能は有していない。更に、特許文献3には、相分離法により作製された限外濾過膜が開示されているが、製膜溶媒に沸点202℃を示すN−メチル−2−ピロリドンを使用し且つ加圧下250℃での製造条件を採用しており、工業的生産における実用化が困難な技術といえる。また、特許文献4には、PPSを用いた多孔質体を酸化処理して、スルフィド結合をスルフォン結合に変換することにより、更に耐熱性及び耐有機溶剤性を向上させる方法が提案されている。しかしながら、PPSを用いた多孔質体自体は、前述の種々の方法で加工し、その後スルフィド結合を選択的に酸化する方法によって製造されるため、分画性能と実用性の面において問題を残している。
更に、PPS以外の素材を利用して有機溶剤耐性に優れた膜を製造する技術も報告されている。例えば、特許文献5には、多官能性アミノ基化合物を用いることにより耐有機溶剤性膜を製造できることが報告されているが、非常に高圧での分離操作が必要とされており、しかも処理できる透水量が少ないという問題点があり、実用レベルには達していない。また、非特許文献2には、ポリイミドを使用したナノ濾過膜が開示されているが、ポリイミドは高価な材料である上、当該ナノ濾過膜は、分子量が非常に小さいゲラニオールを分離対象としており、分画分子量が1000〜200000程度の限外濾過膜として機能し得るものではない。更に、特許文献6及び7には、無機材料を原料とした耐有機溶剤性のセラミック分離膜が報告されているが、これらのセラミック分離膜では、高圧での分離操作が必要とされる上、透水量も少なく、実用レベルには達していない。
一方、ポリアミド系樹脂を用いて多孔質膜を製造する方法が種々検討されている。例えば、特許文献8〜11には、ポリアミド系樹脂を用いた多孔質膜をNIPS法で製造する技術に関して、ギ酸を溶媒として用いる手法が開示されているが、ギ酸を使用するために安全衛生上問題があり、また得られる膜は孔径が大きく限外濾過膜として機能し得るものではなかった。また、特許文献12には、ポリアミド6をポリカプロラクトンと混合してヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したものをキャストし、そこからカプロラクトンを抽出して多孔質化する方法が開示されているが、使用する溶媒や抽出除去する高分子化合物が高価で、製造コストの高騰を招くためで実用的とはいえない。更に、特許文献13には、半芳香族ポリアミドを用いた多孔質膜に関し、N−メチル−2−ピロリドン又はジメチルスルホキシドに塩化リチウムを添加することにより溶解して製膜する方法が開示されており、更に得られた多孔質膜は高いアルブミン阻止率を示すことも開示されている。しかしながら、特許文献13に記載の多孔質膜では、塩化リチウムの残存により有機溶媒耐性が著しく低下する問題があり、また膜厚を薄くしなければ透水量が実用レベルに達しないという問題がある。
また、ポリアミド系樹脂を用いた多孔質膜をTIPS法により製造する方法も検討されている。例えば、特許文献14には、TIPS法で種々の樹脂を多孔質膜化する技術が開示されており、ポリアミド6が一例として挙げられているが、特許文献14に記載の多孔質膜は、孔径が大きく限外濾過膜として使用できるものではない。また、特許文献15には、ポリアミド系樹脂を用いてTIPS法による中空糸膜を製造する方法が開示されているが、得られる中空糸膜は孔径が1.4μmと非常に大きく、分画分子量が1000〜200000程度の限外濾過膜として機能し得るものではない。更に、特許文献15には、ポリアミドの溶剤としてグリセリンやエチレングリコールが開示されているが、これらの溶媒を使用してポリアミドの製膜を行っても、得られる多孔質膜は実用に耐えるだけの強度を持たせることができないという欠点もある。特許文献16には、加水分解安定なポリアミド膜の製造方法に関し、酸化防止剤を含む溶剤を用いて脂肪族ポリアミドの製膜を行う方法が開示されているが、実際に製造されるポリアミド膜の最大孔径が大きく、限外濾過膜としては使用できるものではない。更に、非特許文献3には、ポリアミド12とポリエチレングリコールを含む溶剤系を用いて、多孔質膜が製造できることが報告されている。特許文献17には、ポリアミド11と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はスルホランとを含む溶剤系を用いて、多孔質膜が製造できることが報告されている。非特許文献4には、ポリアミド6及びポリアミド12の多孔質膜がトリエチレングリコールを溶媒として製造できることが開示されている。しかしながら、非特許文献3−4及び特許文献17に開示されている多孔質膜は、強度が弱く孔径が大きいことから限外濾過膜としては使用できるものではない。また、特許文献18には、半芳香族ポリアミドを用いた多孔膜をTIPS法により製造した例が開示されているが、この多孔膜は平均孔径が0.01〜10μmと大きく、限外濾過膜として使用し得るものではない。
このように、ポリアミド系樹脂を用いた多孔質膜については、種々検討されているものの、多種の有機溶剤に対する耐性に優れ、限外濾過膜として使用し得るものは、依然として開発されていないのが現状である。また、有機溶剤に強いとされるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子素材を用いた多孔質膜については、精密濾過膜(MF膜)での報告はあるものの、限外濾過膜に関する報告は皆無である。
特開昭58−67733号公報 特開昭59−59917号公報 特開昭60−248202 号公報 特開昭63−225636号公報 特開平3−127617号公報 特開2003−10657号公報 特開2004−911号公報 特開昭57−105212号公報 特開昭58−65009号公報 米国特許4340479号 米国特許4477598号 特開2000−1612号公報 再公表2004−6991号公報 特開昭58−164622号公報 特開昭60−52612号公報 特表2003−534908号公報 米国特許4247498号 特開2005−193193号公報
K.Hirami,Y.Ohmukai,T.Maruyama,H.Matsuyama,Desalin.Water.Treat.,17,262−267(2010). R.Valadez−Blanco, A.G.Livingston,Journal of Membrane Science 326,332−342(2009). B.J.Cha,K.Char,J.J.Kim,S.S.Kim,C.K.Kim,Journal of membrane science 108,219−229(1995) 「膜技術 第2版」、Marcel Mulder著、吉川正和、松浦剛、仲川勤 監修、株式会社アイピーシー発行、95頁(1997)
本発明は、上記のような問題点を解決し、様々なタイプの有機溶剤に対して耐性を有するポリアミド限外濾過膜を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討したところ、(1)150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度ではポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度でポリアミド樹脂を溶解させた製膜原液を調製し、(2)次いで前記製膜原液を所定形状にて100℃以下の凝固浴中に押し出すことにより、ポリアミド樹脂を膜状に凝固させる工程において、所定形状にて押し出された前記製膜原液の少なくとも一方の表面に対して、前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶性を有し且つポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液を接触させることによって、緻密な微細孔を有する緻密層が膜表面に形成された限外濾過膜を製造できることを見出した。更に、当該限外濾過膜は、分画分子量及び透水量の点で実用レベルを十分に満たしており、しかもさまざまなタイプの有機溶剤に対して優れた耐性を備え得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の限外濾過膜、その製造方法、及び限外濾過モジュールを提供する。
項1. ポリアミド樹脂を用いて形成された限外濾過膜であって、少なくとも一方の表面に緻密層が形成されていることを特徴とする、限外濾過膜。
項2. アルコール類、非プロトン性極性溶媒、炭化水素類、高級脂肪酸、ケトン類、エステル類、及びエーテル類よりなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤に対する耐性を有する、項1に記載の限外濾過膜。
項3. 中空糸膜形状であり、内腔側表面及び外側表面の少なくとも一方に緻密層が形成されている、項1又は2に記載の限外濾過膜。
項4. 分画分子量が1000〜200000である、項1〜3のいずれか1項に記載の限外濾過膜。
項5. 下記第1〜3工程を有する限外濾過膜の製造方法:
150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度ではポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度でポリアミド樹脂を溶解させた製膜原液を調製する第1工程、
前記製膜原液を所定形状にて100℃以下の凝固浴中に押し出すことにより、ポリアミド樹脂を膜状に凝固させる工程であって、該工程において、所定形状にて押し出された前記製膜原液の少なくとも一方の表面に対して、前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶性を有し且つポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液を接触させる第2工程、及び
第2工程で形成された膜から溶媒を除去する第3工程。
項6. 中空糸膜形状の限外濾過膜の製造方法であり、
前記第2工程が、二重管構造の中空糸製造用二重管状ノズルを用い、外側の環状ノズルから前記製膜原液を吐出すると共に内側のノズルから内部液を吐出し、凝固浴中に浸漬させる工程であって、
前記内部液及び凝固浴の少なくとも一方に、前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶性を有し且つポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液を使用する、項4に記載の限外濾過膜の製造方法。
項7. 前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶性を有し且つポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液が、水、水含有量が80質量%以上の水溶液、1−プロパノール、2−プロパノール、イソブタノール、分子量300以上のポリエチレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリアセチン、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選択される少なくとも1種である、項5又は6に記載の限外濾過膜の製造方法。
項8. モジュールケースに、項1〜4のいずれか1項に記載の限外濾過膜が収容されてなる、限外濾過膜モジュール。
本発明の限外濾過膜は、多種の有機溶剤に対して優れた耐性を備えており、工業的に使用されている様々なタイプの有機溶剤と接触しても膜特性を安定に維持できる。また、本発明の限外濾過膜は、分画分子量及び透水量の点でも優れており、食品工業、製薬工業、半導体産業等の分野で好適に用いることができる。また、本発明の限外濾過膜は、親水性が高いために、除去対象物質が親水性のものである場合には吸着効果によって除去性能が向上でき、一方で疎水性物質の吸着が抑えられることから疎水性物質が膜表面を覆い処理流量が低下するファウリングを防ぐことができ、効率的な濾過処理を実現できる。
本発明の中空糸膜の透水量を測定する装置の概略図である。 本発明の中空糸膜を製造する方法の一実施態様を示す装置図である。 本発明の中空糸膜を製造するための紡糸口金の模式図である。 実施例1の中空糸膜の内表面、外表面の電子顕微鏡写真である。 実施例3の中空糸膜の内表面、外表面の電子顕微鏡写真である。 比較例1の中空糸膜の内表面、外表面の電子顕微鏡写真である。
1.限外濾過膜
本発明の限外濾過膜は、ポリアミド樹脂を用いて形成された限外濾過膜であって、少なくとも一方の表面に緻密層が形成されていることを特徴とする。以下、本発明の限外濾過膜について詳述する。
本発明に用いられるポリアミド樹脂としては、特に制限されず、ポリアミドのホモポリマー、ポリアミドの共重合体、又はこれらの混合物を使用することがでる。ポリアミドのホモポリマーとしては、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T等が挙げられる。また、ポリアミドの共重合体としては、具体的には、ポリアミドとポリテトラメチレングリコール又はポリエチレングリコール等のポリエーテルとの共重合体等が挙げられる。また、ポリアミドの共重合体におけるポリアミド成分の比率については、特に制限されないが、例えば、ポリアミド成分が占める割合として、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上が挙げられる。ポリアミドの共重合体においてポリアミド成分の比率が上記範囲を充足することにより、一層優れた有機溶剤耐性を備えさせることができる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、架橋の有無は問わないが、製造コストを低減させるという観点から、架橋されていないものが好ましい。
また、ポリアミド樹脂の相対粘度については、特に制限されないが、例えば、2.0〜7.0が挙げられる。このような相対粘度を備えることにより、限外濾過膜の製造時に、成形性や相分離の制御性が向上し、限外濾過膜に対して優れた形状安定性を備えさせることが可能になる。なお、ここで、相対粘度とは、96%硫酸100mLに1gのポリアミド樹脂を溶解した溶液を用い、25℃でウベローデ粘度計によって測定した値を指す。
本発明において、前記ポリアミド樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明の限外濾過膜は、上記のポリアミド樹脂の他に本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、フィラーが含まれていてもよい。フィラーを含むことにより、限外濾過膜の強度、伸度、弾性率を向上させることができる。特に、フィラーを含むことにより、濾過の際に高圧をかけても、限外濾過膜が変形し難くなるという効果も得られる。添加するフィラーの種類については、特に制限されず、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカー、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維等の繊維状フィラー;タルク、ハイドロタルサイト、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート等の珪酸塩;酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラック、シリカ、黒鉛等の非繊維フィラー等の無機材料が挙げられる。これらのフィラーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのフィラーの中でも、好ましくは、タルク、ハイドロタルサイト、シリカ、クレー、酸化チタン、更に好ましくは、タルク、クレーが挙げられる。
フィラーの含有量については、特に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂100質量部当たり、フィラーが5〜100質量部、好ましくは10〜75質量部、更に好ましくは25〜50質量部が挙げられる。このような含有量でフィラーを含むことにより、限外濾過膜の強度、伸度、弾性率の向上を図ることができる。
また、本発明の限外濾過膜には、孔径制御や膜性能の向上等のために、必要に応じて、増粘剤、酸化防止剤、表面改質剤、滑剤、界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。
本発明の限外濾過膜では、少なくとも一方の表面に、緻密層が形成されている。本発明において、「緻密層」とは、緻密な微細孔が集合している領域であって、倍率10000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において実質的に細孔の存在が認められない領域を示す。本発明のポリアミド限外濾過膜において、緻密層の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.01〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.5μmが挙げられる。
本発明の限外濾過膜は表面の少なくとも一方に緻密層が形成されていればよい。例えば、本発明の限外濾過膜が平膜形状の場合、表表面と裏表面のいずれか少なくとも一方に緻密層が形成されていればよい。また、例えば、本発明の限外濾過膜が中空糸形状の場合、内腔側表面と外側表面のいずれか少なくとも一方に緻密層が形成されていればよい。
本発明の限外濾過膜では、緻密層以外の領域は多孔質構造になっている。以下、緻密層以外の領域を「多孔質領域」と表記することもある。多孔質領域とは、具体的には、倍率2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において実質的に細孔の存在が認められる領域を示す。本発明の限外濾過膜の性能は、ほぼ緻密層の部分で決定されることから多孔質領域はいわゆる支持層と考えることができ、多孔質領域における孔径については、緻密層を保持する程度の強度と流体の透過にとって著しい妨げにならない限り特に制限されない。
本発明の限外濾過膜の厚みについては、その用途、緻密層の厚み、備えさせる透水量等に応じて適宜設定されるが、例えば、50〜600μm、好ましくは100〜300μmが挙げられる。
本発明の限外濾過膜の流量については、特に制限さればいが、純水を用いて試験した際の透水量が、例えば、1L/(m2・atm・h)以上、好ましくは10L/(m2・atm・h)以上、更に好ましくは20〜200L/(m2・atm・h)が挙げられる。このような透水量を備えることにより、濾過効率に優れ、実用的レベルを満足する量の濾過処理を行うことが可能になる。
ここで、限外濾過膜が中空糸形状である場合には、前記透水量は、内圧式濾過によって測定される値であり、以下の手順で測定される。先ず、中空糸膜10本を30cm長に切断しU字型に折り曲げ、端部を外径8mm、内径6mmのナイロン硬質チューブに挿入し、反対側にゴム栓をした後、2液混合型で室温硬化型のウレタン又はエポキシ樹脂を導入し封止し、固化後に下部を切断することにより中空糸膜内径部が開口したモジュールを作製する。次いで、このモジュールを図1に示すような透水量評価装置にセットし、送液ポンプ13で25℃の純水を中空糸膜の内側に流し、約0.6MPaの圧力をかけて所定時間(分)、膜の外側に透過した水を受け皿18で回収し容量(L)を測定する。透水量(L/(m2・atm・h))は以下の式により算出される。
また、限外濾過膜が平膜形状である場合には、前記透水量は、デッドエンド式濾過によって測定される値であり、以下の手順で測定される。高圧ポンプを接続したGEウォーターテクノロジーズ社製のSepa−CF平膜試験セルを用い、平膜形状の限外濾過膜を所定の大きさ(19.1cm×14.0cm、セル中の有効膜面積:155cm2)にカットしてセルに固定し、25℃の純水を流して所定の圧力で透過した水を回収し容量(L)を測定する。透水量(L/(m2・atm・h))は以下の式により算出される。
本発明の限外濾過膜において、分画分子量は、特に制限されず、緻密層の厚さ、緻密層以外の領域の孔径等を適宜調整することにより適宜設定することができるが、例えば1000〜200000、好ましくは1000〜40000、更に好ましくは1000〜6000が挙げられる。分画分子量は、特定の分子量を持つ物質を90%以上阻止可能な膜の細孔サイズを表わすものであり、その阻止できる物質の分子量にて表される。
分画分子量の測定に用いられる特定の分子量を持つ物質としては、具体的には、ポリエチレングリコール(分子量:200〜40,000)、デキストラン(分子量:10,000〜200,000)、ラフィノース(分子量:590)、ビタミンB12(分子量:1,360)、インシュリン(分子量:5,700)、チトクロームC(分子量:13,400)、ミオグロビン(分子量:17,000)、ヘプシン(分子量:35,000)、オバアルブミン(分子量:43,000)、牛血清アルブミン(分子量:67,000)、アルドラーゼ(分子量:142,000)、γ−グロブリン(分子量:150,000)等が挙げられる。分画分子量は、上記で例示した物質を純水に0.1〜1.0質量%で溶解し、図1に示すようなろ過装置で0.10〜1.00MPaの圧力でろ過を行い、膜を透過した液を回収し、透過液内の物質濃度から阻止率を求めることによって評価することができる。上記のようにして求めた阻止率が90%を超える物質の内、最小値の分子量が限外濾過膜の分画分子量となる。
本発明の限外濾過膜は、様々な種類の有機溶剤と接触しても、強度や伸びの変化を抑制して膜構造を安定に保持する特性(有機溶剤耐性)を備えている。より具体的には、アルコール類、非プロトン性極性溶媒、炭化水素類、高級脂肪酸、ケトン類、エステル類、エーテル類等の有機溶剤への耐性を有する。かかる有機溶剤の種類としては、具体的には以下のものが例示される。
アルコール類:メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等の1級アルコール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等の2級アルコール、ターシャリーブチルアルコール等の3級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン等の多価アルコール。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソプロピルケトン等。
エーテル類:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等。及び、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類。
非プロトン性極性溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、スルホラン等。
エステル類:酢酸エチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等。
炭化水素類:石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、流動パラフィン、ガソリン、及び鉱油。
高級脂肪酸:オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のカルボキシル基以外の炭素数が4以上(好ましくは4〜30)の脂肪酸。
とりわけ、本発明の限外濾過膜が備える有機溶剤耐性の好適な例として、下記の有機溶剤の少なくも1種、好ましくは全てに対する耐性を備えていることが挙げられる。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソプロピルケトン等。
エーテル類:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等。及び、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類。
非プロトン性極性溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、スルホラン等。
エステル類:酢酸エチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等。
なお、本発明の限外濾過膜は下記に示すようなフェノール類、含ハロゲン溶剤、低級有機酸に対しては耐性を持たないことがある。
フェノール類:フェノール、クレゾール等。
含ハロゲン溶剤:ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等。
低級有機酸:ギ酸、酢酸、酪酸。
本発明の限外濾過膜が備える有機溶剤耐性として、具体的には、前記有機溶剤に25℃で14時間浸漬した際に、浸漬後の限外濾過膜の強度及び伸びの変化が、浸漬前に比べて±30%以下、好ましくは±20%未満であることが挙げられる。具体的には、当該強度及び伸びの変化は、下記式に従って算出される。
ここで、限外濾過膜の強度及び伸びとは、引張試験機にてチャック間距離50mm、引張速度50mm/分、温度25℃の条件で引張試験を行った際に測定される破断強度及び破断伸度である。限外濾過膜が平膜形状の場合には、幅10mm、長さ100mmの短冊状にしたサンプルを用いて測定され、限外濾過膜が中空糸形状の場合には、長さ100mmサンプルを用いて測定される。
本発明の限外濾過膜の形状については、特に制限されず、平膜形状、中空糸膜形状等の任意の形状から選択することができるが、中空糸膜形状は、限外濾過モジュールの単位体積当たりの濾過面積が多く、効率的に限外濾過処理を行うことが可能になるので、本発明において好適である。また、本発明の限外濾過膜は、単独で自立膜として作製されてもよく、また、精密濾過膜の支持体上に積層された形状であってもよい。かかる支持体としては、有機溶剤に耐性のある素材であることが好ましく、具体的には、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等の高分子素材;焼結金属、セラミック等の無機素材等が挙げられる。
2.限外濾過膜の製造方法
本発明の限外濾過膜は、少なくとも一方の表面に緻密層が形成され、緻密層以外の領域は多孔質構造になっており、一般的なTIPS法やNIPS法を単独で採用する製造条件では製造できないが、TIPS法及びNIPS法の双方の原理を用いることによって製造される。具体的には、本発明の限外濾過膜は、下記第1〜3工程を経て製造される。
第1工程:150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度ではポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度でポリアミド樹脂を溶解させた製膜原液を調製する。
第2工程:前記製膜原液を所定形状にて100℃以下の凝固浴中に押し出すことにより、ポリアミド樹脂を膜状に凝固させる工程であって、該工程において、所定形状にて押し出された前記製膜原液の少なくとも一方の表面に対して、前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶性を有し且つポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液を接触させる。
第3工程:第2工程で形成された限外濾過膜から溶媒を除去する。
以下、本発明の限外濾過膜の製造方法について工程毎に詳述する。
第1工程
第1工程では、150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度ではポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度でポリアミド樹脂を溶解させた製膜原液を調製する。
150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度ではポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒としては、例えば、非プロトン性極性溶媒、グリセリンエーテル類、多価アルコール類、有機酸及び有機酸エステル類、高級アルコール類等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒の具体例としては、スルホラン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどが挙げられる。グリセリンエーテル類の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。多価アルコール類の具体例としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール(分子量100〜10000)等が挙げられる。有機酸及び有機酸エステル類の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、サリチル酸メチル、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等が挙げられる。これらの中でも、より高い強度を備える限外濾過膜を得るという観点から、好ましくは、非プロトン性極性溶媒、多価アルコール類;更に好ましくは、スルホラン、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、プロピレングリコール、へキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール(分子量100〜600);特に好ましくは、スルホラン、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの有機溶媒を1種単独で使用しても十分な効果が得られるが、2種類以上を混合して用いることで、相分離の順序や構造が異なることに起因して、更に効果的な限外濾過膜を作製できることもある。
製膜原液中のポリアミド樹脂の濃度としては、特に制限されないが、例えば、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは12〜35質量%が挙げられる。製膜原液中のポリアミド樹脂の濃度が前記範囲を充足することにより、限外濾過膜に優れた強度を備えさせることができ、また適度な透液性能を備えさせることができる。
また、ポリアミド樹脂を前記有機溶媒に溶解するに当たり、溶媒の温度を100℃以上にしておくことが必要である。具体的には、その系の相分離温度の10〜50℃高い温度、好ましくは20〜40℃高い温度で溶解させるのがよい。その系の相分離温度とは、ポリアミド樹脂と溶媒を十分に高い温度で混合したものを徐々に冷却し、液−液相分離又は結晶析出による固−液相分離が起こる温度である。相分離温度の測定は、ホットステージを備えた顕微鏡等を使用することで好適に行うことができる。
また、限外濾過膜の孔径制御や性能向上のために、必要に応じて製膜原液には、フィラー、増粘剤、酸化防止剤、表面改質剤、滑剤、界面活性剤等を添加してもよい。
第2工程
第2工程は、前記製膜原液を所定形状にて100℃以下の凝固浴中に押し出すことにより、ポリアミド樹脂を膜状に凝固させる工程であって、該工程において、所定形状にて押し出された前記製膜原液の少なくとも一方の表面に対して、前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶性を有し且つポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液を接触させる。
ここで、前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶性を有し且つポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液(以下、緻密層形成用凝固液と表記することもある)とは、25℃以下の温度にて前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶するが、沸点以下又は200℃以下の温度にてポリアミド樹脂を溶解させない溶剤を指す。このような緻密層形成用凝固液として、具体的には、水、水含有量が80質量%以上の水溶液等の水性溶剤;1−プロパノール、2−プロパノール、イソブタノール等の1価アルコール類;分子量300以上のポリエチレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリアセチン、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、トリアセチン、トリエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
当該第2工程において、凝固浴中に所定形状にて押し出された前記製膜原液は、緻密層形成用凝固液と接触した表面において緻密層が形成される。前記製膜原液が緻密層形成用凝固液と接触した表面近傍では冷却による熱誘起相分離より、溶媒交換による非溶媒相分離が優勢に進行し、従来のTIPS法よりも緻密な構造が表面に形成される。
例えば、中空糸形状の限外濾過膜を形成する場合であれば、二重管構造の中空糸製造用二重管状ノズルを用い、外側の環状ノズルから前記製膜原液を吐出すると共に内側のノズルから内部液を吐出し、凝固浴中に浸漬すればよい。この際、前記内部液と凝固浴の内、少なくとも一方に緻密層形成用凝固液を使用すればよい。また、前記内部液と凝固浴の内、少なくとも一方には、前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶性を有し且つポリアミド樹脂とは親和性が高い凝固液(以下、多孔質構造形成用凝固液と表記することもある)を使用してもよい。多孔質構造形成用凝固液と接触した前記製膜原液の表面には、多孔質構造が形成される。即ち、内部液及び凝固浴の双方に緻密層形成用凝固液を使用した場合には、内腔側表面と外側表面の双方に緻密層が形成され、内部が多孔質領域である中空糸状限外濾過膜が製造される。また、内部液として緻密層形成用凝固液を使用し、且つ凝固浴として多孔質構造形成用凝固液を使用した場合には、内腔側表面に緻密層が形成され、内部と外側表面は多孔質領域である中空糸形状の限外濾過膜が製造される。また、内部液として多孔質構造形成用凝固液を使用し、且つ凝固浴として緻密層形成用凝固液を使用した場合には、外側表面に緻密層が形成され、内腔側表面と内部が多孔質領域である中空糸形状の限外濾過膜が製造される。
ここで、多孔質構造形成用凝固液とは、25℃以下の温度にて前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶し、且つ沸点以下の温度にてポリアミド樹脂を溶解させる溶剤を指す。このような多孔質構造形成用凝固液として、具体的には、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、及びこれらの20質量%以上を含む水溶液が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びポリエチレングリコール200よりなる群から選択される少なくとも1種、並びにこれらを25〜75質量%の割合で含む水溶液;更に好ましくは、グリセリン、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びプロピレングリコールよりなる群から選択される少なくとも1種、並びにこれらを40〜80質量%の割合で含む水溶液が挙げられる。
なお、中空糸形状の限外濾過膜の形成において、製膜時の二重管状ノズル温度が100℃以上に達することから、内部液として使用される緻密層形成用凝固液又は多孔質構造形成用凝固液は、上記の凝固浴で例示したものの中で、製膜時のノズル温度より沸点が高いものを選択することが好ましい。
また、中空糸製造用二重管状ノズルとしては、溶融紡糸において芯鞘型の複合繊維を作製する際に用いられるような二重管状構造を有する口金を用いることができる。中空糸製造用二重管状ノズルの断面構造の一例を図2に示す。中空糸製造用二重管状ノズルの外側の環状ノズルの径、内側のノズルの径については、中空糸膜の内径と外径に応じて適宜設定すればよい。
また、中空糸製造用二重管状ノズルの外側の環状ノズルから前記製膜原液を吐出させる際の流量については、特に制限されないが、例えば2〜30g/分、好ましくは3〜20g/分、更に好ましくは5〜15g/分が挙げられる。また、内部液の流量については、中空糸製造用二重管状ノズルの内側ノズルの径、使用する内部液の種類、製膜原液の流量等を勘案して適宜設定されるが、製膜原液の流量に対して、0.1〜2倍、好ましくは0.2〜1倍、更に好ましくは0.4〜0.7倍が挙げられる。
また、平膜形状の限外濾過膜を形成する場合には、前記緻密層形成用凝固液を凝固浴と使用して、当該凝固浴中に前記製膜原液を所定形状にて押し出して浸漬させればよい。
本第3工程において、凝固浴の温度は、100℃以下であればよいが、好ましくは0〜100℃、更に好ましくは5〜60℃が挙げられる。凝固浴の好適な温度は、製膜原液に使用した有機溶媒、凝固液組成により変わるが、一般により低い温度にすることで熱誘起相分離が優先して進み、より高い温度にすることで非溶媒相分離が優先して進む傾向がある。即ち、内腔側表面に緻密層が形成された中空糸膜を製造する場合であれば、内腔側表面の緻密層を内部構造に近づけるためには凝固浴を低い温度に設定することが好ましく、内腔側表面の緻密層をより緻密にし、内部構造を粗大にするには凝固浴を高い温度に設定することが好ましい。
斯して第2工程を実施することにより、製膜原液が凝固浴中で凝固すると共に、少なくとも一方の表面に緻密層が形成された限外濾過膜が形成される。
第3工程
第3工程では、第2工程で形成された限外濾過膜から溶媒を除去する。
中空糸膜から凝固液を除去する方法については、特に制限されず、ドライヤーで乾燥させて凝固液を揮散させる方法であってもよいが、抽出溶媒に浸漬して限外濾過膜内で相分離を起こしている凝固液を抽出除去する方法が好ましい。有機溶媒の抽出除去に使用される抽出溶媒としては、安価で沸点が低く抽出後に沸点の差などで容易に分離できるものが好ましく、例えば、水、グリセリン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサン、石油エーテル、トルエンなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくは水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、更に好ましくは水、メタノール、イソプロパノールが挙げられる。特に水に溶解する凝固液を抽出する場合には、水でシャワリングしながら巻取りを行えば同時に溶媒抽出も行うことができ効率的である。また、フタル酸エステル、脂肪酸等の水に不溶の有機溶媒を抽出する際は、イソプロピルアルコール、石油エーテル等を好適に用いることができる。また、抽出溶媒に限外濾過膜を浸漬する時間としては、特に制限されないが、例えば0.2時間〜2ヶ月間、好ましくは0.5時間〜1ヶ月間、更に好ましくは2時間〜10日間が挙げられる。限外濾過膜に残留する凝固液を効果的に抽出除去する為に、抽出溶媒を入れ替えたり、攪拌したりしてもよい。
斯して第3工程を実施することにより、本発明の限外濾過膜が製造される。
本発明の限外濾過膜の製造は、前述する第1〜3工程を経ればよく、その製造に使用される装置については、特に制限されないが、中空糸形状の限外濾過膜を製造する場合であれば、図3に示すような乾湿式紡糸に用いられる一般的な装置が好適に使用される。図3に示す装置を例として挙げて、中空糸形状の限外濾過膜の製造フローを以下に概説する。第1工程で調製された製膜原液は、コンテナ3に収容される。又は、コンテナ3中で第1工程を実施し、製膜原液を調製してもよい。コンテナ3に収容された製膜原液と、内部液導入口5から導入された内部液は、それぞれ定量ポンプ4によって計量され、中空糸製造用二重管状ノズル(紡糸口金)6に送液される。中空糸製造用二重管状ノズル(紡糸口金)6から吐出された製膜原液は、わずかなエアーギャップを介して凝固浴7に導入され、冷却固化される。製膜原液が冷却固化される過程で、熱誘起の相分離が起こって、海島構造を有する中空糸膜状限外濾過膜8が得られる。このようにして得られた中空糸膜状限外濾過膜8を巻き取り機9で巻き取りながら、ボビンを設置しているボビン巻き取り機10にて巻き取りを行う。巻き取った空糸膜状限外濾過膜8は抽出溶媒を用いて凝固液を除去して中空糸膜状限外濾過膜が得られる。
3.限外濾過膜モジュール
本発明の限外濾過膜は、被処理液流入口や透過液流出口等を備えたモジュールケースに収容され、限外濾過モジュールとして使用される。
本発明の限外濾過膜が中空糸形状である場合には、中空糸膜モジュールとして使用される。
具体的には、中空糸膜モジュールは、本発明の中空糸状限外濾過膜を束にし、モジュールケースに収容して、中空糸状限外濾過膜束の端部の一方又は双方をポッティング剤により封止して固着させた構造であればよい。中空糸膜モジュールには、被処理液の流入口又は濾液の流出口として、中空糸状限外濾過膜の外壁面側を通る流路と連結した開口部と、中空糸状限外濾過膜の中空部分と連結した開口部が設けられていればよい。
中空糸膜モジュールの形状は、特に制限されず、デッドエンド型モジュールであっても、クロスフロー型モジュールであってもよい。中空糸膜モジュールの形状として、具体的には、中空糸膜束をU字型に折り曲げて充填し、中空糸状限外濾過膜束の端部を封止後カットして開口させたデッドエンド型モジュール;中空糸状限外濾過膜束の一端の中空開口部を熱シール等により閉じたものを真っ直ぐに充填し、開口している方の中空糸状限外濾過膜束の端部を封止後カットして開口させたデッドエンド型モジュール;中空糸状限外濾過膜束を真っ直ぐに充填し、中空糸状限外濾過膜束の両端部を封止し片端部のみをカットして開口部を露出させたデッドエンドモジュール;中空糸状限外濾過膜束を真っ直ぐに充填し、中空糸状限外濾過膜束の両端部を封止し、中空糸状限外濾過膜束の両端の封止部をカットし、フィルターケースの側面に2箇所の流路を作ったクロスフロー型モジュール等が挙げられる。
モジュールケースに挿入する中空糸状限外濾過膜の充填率は、特に制限されないが、例えば、モジュールケース内部の体積に対する中空部分の体積を入れた中空糸状限外濾過膜の体積が30〜90体積%、好ましくは35〜75体積%、更に好ましくは45〜65体積%が挙げられる。このような充填率を満たすことによって、十分な濾過面積を確保しつつ、中空糸状限外濾過膜のモジュールケースへの充填作業を容易にし、中空糸状限外濾過膜の間をポッティング剤が流れ易くすることができる。
中空糸膜モジュールの製造に使用されるポッティング剤については、特に制限されないが、中空糸膜モジュールを有機溶剤の処理に使用する場合には、有機溶剤耐性を備えていることが望ましく、このようなポッティング剤の例として、ポリアミド、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレア樹脂等が挙げられる。これらのポッティング剤の中でも、硬化した時の収縮や膨潤が小さく、硬度が硬過ぎないものが好ましい。ポッティング剤の好適な例として、ポリアミド、シリコン樹脂、ポリエチレンが挙げられる。これらのポッティング剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
中空糸膜モジュールに使用するモジュールケースの材質については、特に制限されず、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、更に好ましくはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
また、本発明の限外濾過膜が、平膜形状である場合には、プレートアンドフレーム型、スタック型等のシート型モジュール、スパイラル型モジュール、回転平膜型モジュール等として使用される。
本発明の限外濾過膜を利用した限外濾過膜モジュールは、半導体工業、食品工業、医薬品工業、医療品工業等の分野で、水の浄化、異物の除去等に使用される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中、中空糸状限外濾過膜の透水量は上述した方法により行った。また、高分子の阻止率の測定は、20000以下の分子量についてはポリエチレングリコール、20000より上の分子量についてはデキストランを用いて、それぞれ水に0.1質量%溶解させたものを原液として通液し、透過した液を回収して高速液体クロマトグラフィーによって透過液中の溶質濃度を測定し、下記式に従って溶質阻止率を算出することにより行った。
実施例1
ポリアミド6のチップ(ユニチカ(株)製A1030BRT、相対粘度3.53)170g、スルホラン(東京化成(株)製)830gを180℃で1.5時間攪拌し溶解させ、撹拌速度を下げて1時間脱泡し製膜原液を調製した。製膜原液を定量ポンプを介して紡糸口金に送液し、13.0g/分で押出した。紡糸口金の孔径は外径1.5mm、内径0.6mmのものを用いた。内部液にはポリエチレングリコール300(PEG300)を5.0g/分の送液速度で流した。押出された製膜原液は10mmのエアーギャップを介して、5℃の50質量%プロピレングリコール水溶液からなる凝固浴に投入して冷却固化させ、20m/分の引取り速度にて引き取った。得られた中空糸を24時間、水に浸漬して溶媒を抽出し、中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜は透水量が10L/(m2・atm・h)であり、デキストラン40000(和光純薬工業製、分子量32000〜45000)を用いた溶質阻止率は98%であり、ポリエチレングリコール20000(和光純薬工業製、分子量15000〜25000)を用いた溶質阻止率は88%であった。得られた中空糸膜の表面構造を走査型電子顕微鏡(10000倍)にて観察したところ、内腔側表面は、孔の見えないスキン層(緻密層)となっており、スポンジ状の多孔質構造を介して、外側表面は多孔質構造になっていた(図4参照)。
実施例2
凝固浴をPEG300に変えたこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は透水量が4L/(m2・atm・h)であり、デキストラン40000を用いた溶質阻止率は99%、ポリエチレングリコール20000を用いた溶質阻止率は97%、ポリエチレングリコール6000(和光純薬工業製、分子量7300〜9300)を用いた溶質阻止率は90%であった。得られた中空糸膜の表面構造を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、内腔側表面は、孔の見えないスキン層(緻密層)となっており、外側表面は多孔質構造になっていた。
実施例3
内部液をトリアセチンに変えたこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の透水量は3L/(m2・atm・h)であり、ポリエチレングリコール6000を用いた溶質阻止率は98%、ポリエチレングリコール2000(和光純薬工業製、分子量1850〜2150)を用いた溶質阻止率は91%であった。得られた中空糸膜の表面構造を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、内腔側表面は、孔の見えないスキン層(緻密層)となっており、スキン層厚みは実施例1で得られた膜より厚かった。また、内部はスポンジ状の多孔質構造を介して、外側表面は多孔質構造になっていた(図5参照)。
実施例4
凝固浴を40℃の水にし、内部液にスルホランを用いたこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の透水量は150L/(m2・atm・h)であり、デキストラン200000(和光純薬工業製、平均分子量180000〜210000)を用いた溶質阻止率は98%であり、デキストラン60000(和光純薬工業製、分子量60000〜90000)を用いた溶質阻止率は28%であった。
実施例5
製膜原液に使用する溶媒としてジメチルスルホン609gとスルホラン221gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は透水量が18L/(m2・atm・h)であり、デキストラン40000を用いた溶質阻止率は95%、ポリエチレングリコール20000を用いた溶質阻止率は90%であった。得られた中空糸膜の表面構造を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、内腔側表面は、孔の見えないスキン層(緻密層)となっており、外側表面は多孔質構造になっていた。
実施例6
樹脂としてポリアミド11のチップ(アルケマ社製リルサンBESV0 A FDA、相対粘度2.50)150g、製膜原液としてγ−ブチロラクトン(和光純薬(株)製)850gを用い、180℃で1.5時間攪拌し溶解させ、撹拌速度を下げて1時間脱泡し製膜原液を調製した。この製膜原液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は、透水量が5L/(m2・atm・h)であり、デキストラン40000を用いた溶質阻止率は99%、ポリエチレングリコール20000を用いた溶質阻止率は98%、ポリエチレングリコール6000を用いた溶質阻止率は90%であった。得られた中空糸膜の表面構造を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、内腔側表面は、孔の見えないスキン層(緻密層)となっており、外側表面は多孔質構造になっていた。
実施例7
樹脂としてポリアミドMXD6のチップ(三菱エンジニアリングプラスチックス社製レニー6121、相対粘度3.49)170gを用い、製膜原液を製造する際の溶解温度を170℃としたこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は、透水量が2L/(m2・atm・h)であり、デキストラン40000を用いた溶質阻止率は99%、ポリエチレングリコール20000を用いた溶質阻止率は97%、ポリエチレングリコール6000を用いた溶質阻止率は92%であった。得られた中空糸膜の表面構造を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、内腔側表面は、孔の見えないスキン層(緻密層)となっており、外側表面は多孔質構造になっていた。
実施例8
ポリアミド6樹脂を200g、スルホランを800gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の透水量は5L/(m2・atm・h)であり、デキストラン40000を用いた溶質阻止率は99%であり、ポリエチレングリコール20000の溶質阻止率は94%であり、ポリエチレングリコール6000の溶質阻止率は45%であった。得られた中空糸膜の表面構造を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、内腔側表面は、孔の見えないスキン層(緻密層)となっており、外側表面は多孔質構造になっていた。
比較例1
内部液にグリセリンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の透水量は2400L/(m2・atm・h)であり、デキストラン200000を用いた溶質阻止率は5%であった。得られた中空糸膜の表面構造を電子顕微鏡によって観察したところ、内腔側表面、外側表面共に多孔質構造となっており、表面に緻密層が形成されていなかった(図6)。
試験例1:耐有機溶剤性の試験
実施例1、6及び7で得られた中空糸膜を50℃で1時間乾燥し、表1に示す各有機溶剤に25℃で14時間浸漬し、浸漬後の強度及び伸びの変化(%)について、上述した方法により評価した。また、比較として、ポリスルホン製の限外濾過膜ラボモジュールSLP−1053(旭化成ケミカルズ製、公称分画分子量10000)の中空糸膜(比較例2)を用いて、同様の評価を行った。
得られた結果を表1に示す。この結果から、表面に緻密層が形成されている中空糸膜(実施例1、6及び7)では、多種の有機溶剤に浸漬しても、強度及び伸びが変化せず、安定に維持されていた。一方、表面に緻密層が形成されていないポリスルホン製限外濾過膜(比較例2)では、殆どの有機溶剤によって、強度及び伸びが大きく変化し、有機溶剤耐性の点で劣っていた。
1:攪拌モーター
2:加圧ガス流入口
3:コンテナ
4:定量ポンプ
5:内部液(又はガス)導入口
6:紡糸口金
7:凝固浴
8:中空糸限外濾過膜
9:引き取り機
10:ボビン用巻取り機(水洗シャワー取り付け)
11:内部液(又はガス)流入孔
12:製膜原液流入孔
13:送液ポンプ
14:圧力計
15:中空糸膜
16:圧抜きバルブ
17:受け皿

Claims (6)

  1. ポリアミド樹脂を用いて形成された限外濾過膜であって、
    前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド11、及びポリアミドMXD6よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
    少なくとも一方の表面に緻密層が形成されており、
    分画分子量が1000〜40000であることを特徴とする、限外濾過膜。
  2. 前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド6である、請求項1に記載の限外濾過膜。
  3. アルコール類、非プロトン性極性溶媒、炭化水素類、高級脂肪酸、ケトン類、エステル類、及びエーテル類よりなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤に対する耐性を有する、請求項1又は2に記載の限外濾過膜。
  4. 中空糸膜形状であり、内腔側表面及び外側表面の少なくとも一方に緻密層が形成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の限外濾過膜。
  5. 分画分子量が1000〜6000である、請求項1〜のいずれか1項に記載の限外濾過膜。
  6. モジュールケースに、請求項1〜のいずれか1項に記載の限外濾過膜が収容されてなる、限外濾過膜モジュール。
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