JP6151000B2 - 円筒容器の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも一方の面の表面に金属が露出した金属板を用いた円筒容器の製造方法に関する。
従来より、金属板を円筒に絞り加工する場合、円板に打ち抜かれたブランクが用いられている。しかしながら、長尺の金属圧延板から円板などのブランクを打ち抜く場合、打ち抜かれるブランク同士が千鳥状になるように配列し、隣接するブランク同士の間隙となる不要部分が最も少なくなるように配列しても、略三角形の不要部分がスクラップ部分として必然的に生じてしまい、歩留まりが低下してしまうという問題がある。これに対し、このようなスクラップ部分の発生を低減させるために、特許文献1では、ブランクを六角形形状に打ち抜く技術が提案されている。
その一方で、ブランクを六角形形状とした場合には、角部の影響により、円形状とした場合と比較して、絞り加工を行った際に、容器高さが他の部分よりも高くなる部分(耳)が発生しやすくなるという問題がある。これに対して、特許文献2では、樹脂層を有する樹脂被覆鋼板からなる六角形形状のブランクを用いて、絞り加工を行う際に、絞り加工用ダイスとして、しわ押さえ面の六角形形状の角部に対応する部分に、複数の溝を有する溝形成部を有する絞り加工用ダイスを用いる方法が開示されている。
国際公開第98/51426号パンフレット 国際公開第99/48631号パンフレット
しかしその一方で、引用文献2の技術においては、樹脂層を有する樹脂被覆鋼板を用いた場合には、容器高さが他の部分よりも高くなる部分(耳)の発生を有効に抑えることができるものの、本発明者らが検討したところ、樹脂層を有しない、表面に金属が露出した金属板を用いた場合には、容器高さが他の部分よりも高くなる部分(耳)の発生を抑えることができないことがわかった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、少なくとも一方の面の表面に金属が露出した金属板を用いた円筒容器を製造する際に、生産性が高く、しかも、容器高さが他の部分よりも高くなる部分(耳)の発生を有効に抑えることのできる製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題に対し鋭意研究した結果、少なくとも一方の面の表面に金属が露出した金属板を用いた場合に、金属板から、六角形形状のブランクを得て、得られた六角形形状のブランクを用いて円筒容器を製造する際に、絞り加工用ダイスとして、その表面の六角形形状のブランクの辺に対応する部分に、周方向に沿って形成された所定形状の溝を複数有するものを用いることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、少なくとも一方の面の表面に金属が露出した金属板を用いて、円筒容器を製造する方法であって、前記金属板から、六角形形状のブランクを得る工程と、前記ブランクの周辺部を絞り加工用ダイスと、ブランクホルダとで挟持した状態で、前記ブランクの中央部をポンチで押し込むことで、前記ブランクを円筒形状に加工する工程とを備え、前記絞り加工用ダイスとして、その表面の前記ブランクの辺に対応する部分に、周方向に沿って形成された複数の溝を有するものを用い、前記複数の溝は、それぞれ、溝自体の幅W が1〜5mm、溝間の幅W が1〜5mm、溝の深さdが0.1〜1mmであり、前記ブランクの金属が露出した面が前記複数の溝と対向した状態であり、かつ、前記ブランクの辺が前記複数の溝に対応した位置となるように、前記ブランクの周辺部を絞り加工用ダイスと、ブランクホルダとで挟持して、前記ブランクを円筒形状に加工することを特徴とする円筒容器の製造方法が提供される。
本発明の円筒容器の製造方法においては、前記ブランクの辺に対応する部分に周方向に沿って形成された複数の溝は、周方向において15°〜45°の幅で形成されていることが好ましい。
本発明によれば、少なくとも一方の面の表面に金属が露出した金属板を用いた円筒容器を製造する際に、生産性が高く、しかも、容器高さが他の部分よりも高くなる部分(耳)の発生を有効に抑えることのできる製造方法を提供することにある。
図1(A)は、金属板10から、六角形形状のブランク20を打ち抜く場合の模式図、図1(B)は、金属板10から、円形状のブランク20aを打ち抜く場合の模式図である。 図2は、本実施形態により得られる六角形形状のブランク20の構成を示す概略平面図である。 図3は、本実施形態で用いる絞り加工用ダイス30の構成を示す概略斜視図である。 図4は、本実施形態における絞り加工方法を示す概略図である。 図5(A)は、本実施形態で用いる絞り加工用ダイス30のしわ押さえ面32の具体的な構成を示す概略表面図であり、図5(B)は、図5(A)のVb−Vb線に沿う断面図である。 図6は、六角形形状のブランク20と、溝形成部322との位置関係を説明するための図である。 図7は、実施例1における、高さバラツキΔHの測定結果を示すグラフである。 図8は、実施例1における、厚みバラツキΔtの測定結果を示すグラフである。 図9は、比較例1における、高さバラツキΔHの測定結果を示すグラフである。 図10は、比較例1における、厚みバラツキΔtの測定結果を示すグラフである。
以下、本実施形態に係る円筒容器の製造方法を図面に基づいて説明する。
<六角形形状のブランクを得る工程>
まず、本実施形態においては、図1(A)に示すように、少なくとも一方の面の表面に金属が露出した金属板10(以下、単に「金属板10」とする。)から、六角形形状の複数のブランク20を打ち抜くことで、円筒容器を形成するための六角形形状の複数のブランク20を得る。なお、図1(A)は、金属板10から、六角形形状のブランク20を打ち抜く場合の模式図である。
金属板10としては、特に限定されず、有機樹脂層を実質的に有さず、少なくとも一方の面の表面に金属が露出した金属の板であればよいが、両表面に金属が露出した金属の板を好適に用いることができる。このような少なくとも一方の面の表面に金属が露出した金属の板としては、たとえば、電池容器用途に用いられる金属板、飲料容器用途に用いられる金属板、食料容器用途に用いられる金属板などが挙げられる。本実施形態において、金属板10の具体例としては、特に限定されないが、鋼板、ティンフリースチール、ぶりき板、アルミニウム合金板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛―コバルトーモリブデン複合めっき鋼板、亜鉛―ニッケル合金めっき鋼板、亜鉛―鉄合金めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、銅めっき鋼板あるいはステンレス鋼板などの各種金属の板を挙げることができる。
本実施形態によれば、図1(A)に示すように、金属板10から、円筒容器を形成するためのブランクを得る際に、ブランクを六角形形状に打ち抜くことで、図1(B)に示すように、ブランクを円形状に打ち抜き、円形状の複数のブランク20aを得る場合と比較して、ブランク同士の間隙となる不要部分を少なく抑えることができ、これにより歩留まりの向上が可能となる。特に、図1(B)に示すように、ブランクを円形状に打ち抜いた場合には、比較的面積の広い略三角形の不要部分が発生してしまうのに対し、図1(A)に示すように、ブランクを六角形形状に打ち抜いた場合には、このような不要部分が発生しないため、金属板10の利用効率を効果的に高めることができ、これにより歩留まりの向上が可能となる。
図2は、本実施形態により得られる六角形形状のブランク20の構成を示す概略平面図である。図2に示すように、六角形形状のブランク20は、六角形形状を基本とし、その角部が円弧状に丸めた形状を有するものであることが好ましい。角部を円弧状に丸めた形状とすることにより、円筒容器に成形した際における、角部に起因する(特に、角部が鋭角形状であることに起因する)高さバラツキの発生を有効に防止することができる。六角形形状のブランク20の角部に形成された円弧状に丸めた形状の曲率半径Rおよび対角線長さ2r(2r’)は、得ようとする製品サイズに応じて適宜設定すればよいが、その比R/2rおよびR/2r’が、好ましくは0.15〜0.45の範囲であり、より好ましくは0.25〜0.40の範囲である。この範囲より小さいとブランクの形状が円形に近づきすぎて歩留まりが低下し、この範囲より大きいと角部の影響により缶に成形したときの高さばらつきが大きくなる。
さらに、図1(A)、図2に示す例においては、六角形形状のブランク20を、金属板10の圧延方向に対して、六角形形状のブランク20を構成する辺のうち、一対の辺が直交するような方向で打ち抜くような態様としたが、このような態様に特に限定されるものではなく、たとえば、一対の辺が圧延方向と平行となる方向で打ち抜くような態様としてもよい。
また、図1(A)、図2に示す例においては、六角形形状のブランク20を、正六角形を基本とする形状としているが、特に限定されず、圧延による金属板10の異方性を考慮したような六角形形状としてもよい。すなわち、図2中において、圧延方向と直交する対角線の長さ2rと、他の対角線の長さ2r’との関係が2r≠2r’であるような六角形形状(すなわち、正六角形以外の六角形形状であり、かつ、対向する辺の長さがそれぞれ同じとなっている六角形形状)としてもよい。
<絞り加工工程>
次いで、本実施形態では、上記のようにして得られた六角形形状のブランク20について、絞り加工を行うことにより、円筒形状に加工する。
本実施形態においては、図3に示すように円形の開口部31としわ押さえ面32とを有し、さらにしわ押さえ面32から開口部31にかけて、所定の曲率半径で移行する肩部33を有する絞り加工用ダイス30を用いて、六角形形状のブランク20の絞り加工を行う。具体的には、図4に示すように、六角形形状のブランク20を、その中心が絞り加工用ダイス30の中心と一致するように絞り加工ダイス30のしわ押さえ面32上に置き、その上に、ポンチ50が貫通自在となるように穿孔されたドーナツ形状のブランクホルダ40を当接し、絞り加工ダイス30のしわ押さえ面32と、ブランクホルダ40とで、六角形形状のブランク20の周辺部を挟持した状態で、ポンチ50を矢印方向に下降させることで、六角形形状のブランク20の絞り加工が行われる。
なお、絞り加工用ダイス30には、六角形形状のブランク20が絞り加工用ダイス30の開口部31に円滑に圧入するように、しわ押さえ面32から開口部31にかけては所定の曲率半径で移行する肩部33が設けられている。また、六角形形状のブランク20には、ブランクホルダ40を介してしわ発生を抑制する荷重(しわ押さえ荷重)が負荷されている。このようにして、六角形形状のブランク20について、絞り加工を行うことにより、円筒形状に加工し、円筒容器を得ることができる。
ここで、本実施形態においては、絞り加工用ダイス30として、図5(A)に示すように、しわ押さえ面32上に、絞り加工を行う六角形形状のブランク20の6つの辺に対応する位置に、6つの溝形成部322を有するものを用いる。ここで、図5(A)は、本実施形態で用いる絞り加工用ダイス30のしわ押さえ面32の具体的な構成を示す概略表面図であり、図5(B)は、図5(A)のVb−Vb線に沿う断面図である。図5(A)、図5(B)に示すように、溝形成部322は、しわ押さえ面32の周方向に沿って形成された深さdの複数の溝部(凹部)322aを備えている。なお、本実施形態では、図5(A)に示すように、この溝形成部322は、絞り加工を行う六角形形状のブランク20の6つの辺に対応する位置に形成されている。すなわち、本実施形態では、溝形成部322は、角度θ=60°おきに等間隔で形成されている。
そして、本実施形態では、図4に示すように、絞り加工用ダイス30、ブランクホルダ40およびポンチ50を用いて、六角形形状のブランク20の絞り加工を行う際には、図6に示すように、六角形形状のブランク20(図中、破線で示している。)を、絞り加工用ダイス30のしわ押さえ面32上に、配置し、絞り加工用ダイス30とブランクホルダ40とで、六角形形状のブランク20の周辺部を挟持した状態で、絞り加工を行う。すなわち、六角形形状のブランク20を、金属が露出している面を、絞り加工用ダイス30のしわ押さえ面32に対向する方向とし、かつ、ブランク20の六角形形状の6つの辺の位置が、溝形成部322に対応する位置となり、六角形形状の6つの角部の位置が、溝部が形成されていない平滑部321に対応する位置となるように、しわ押さえ面32上に配置して、絞り加工を行う。
そして、本実施形態によれば、絞り加工を行う際に、溝形成部322の作用により、ポンチ50で押し込んだ際における、六角形形状のブランク20の辺に対応する部分の開口部31への引き込み速度Vを、平滑部321と当接している角部に対応する部分の開口部31への引き込み速度Vよりも遅くすることができる。すなわち、本実施形態によれば、六角形形状のブランク20の角部に対応する部分の開口部31への引き込み速度Vを相対的に速くすることができ、これにより、角部に起因する、容器高さが他の部分よりも高くなる部分(耳)の発生を有効に防止することができる。
なお、本実施形態において、このような作用を奏する理由としては、必ずしも明らかではないが、溝形成部322に形成された複数の溝部322aの作用により、凹部322a形成部分において、六角形形状のブランク20の露出した金属表面の食い込みが発生し、この食い込みにより、六角形形状のブランク20の辺に対応する部分の開口部31への引き込み速度Vが、相対的に遅くなることに起因すると考えられる。
一方で、上述した特許文献2(国際公開第99/48631号パンフレット)のように、樹脂層を有する樹脂被覆鋼板からなる六角形形状のブランクを用いた場合には、金属表面が露出していないため、このような食い込みが発生しないものと考えられ、そのため、この場合には、溝形成部322は、平滑部321と比較して摩擦軽減部として作用するものと考えられる。
また、溝形成部322の形成角度θは、六角形形状のブランク20の辺に対応する部分の開口部31への引き込み速度Vが、角部に対応する部分の開口部31への引き込み速度Vとの関係で適正な範囲となるように、15°〜45°の範囲とすることが好ましく、20°〜40°の範囲とすることがより好ましい。なお、しわ押さえ面32上に形成する6つの溝形成部322の形成角度θは、全て同じであっても、異なっていてもよいが、得られる円筒容器において、容器高さが他の部分よりも高くなる部分(耳)の発生をより適切に抑制することができるという点より、6つの溝形成部322の形成角度θは、全て同じであることが好ましい。また、平滑部321の形成角度θは、溝形成部322の形成角度θに応じて設定すればよい。
なお、図5に示す例では、溝形成部322を形成する溝部322aの数を3個としたが、溝部322aの数は特に限定されず、六角形形状のブランク20の辺に対応する部分の開口部31への引き込み速度Vが、角部に対応する部分の開口部31への引き込み速度Vとの関係で適正な範囲となるように設定すればよい。また、溝部322aの幅wは、特に限定されないが、好ましくは1〜5mmであり、また、溝部322a間の幅wも、特に限定されないが、好ましくは1〜5mmである。なお、各溝部322aの幅wおよび各溝部322a間の幅wは、同じであっても異なっていてもよい。また、溝部322aの深さdは、特に限定されず、六角形形状のブランク20の露出した金属表面の食い込みが発生するような深さとすればよいが、好ましくは0.1〜1mmである。
また、本実施形態において、六角形形状のブランク20について絞り加工を行う際における、絞り加工ダイス30およびブランクホルダ40による、六角形形状のブランク20の挟持力は、六角形形状のブランク20の寸法や材料の強度に応じて、適宜設定すればよく、特に限定されない。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上述した実施形態では、絞り加工用ダイス30のしわ押さえ面32上に、溝形成部322を設けるような構成を例示したが、溝形成部322をブランクホルダ40の、六角形形状のブランク20と当接する面に設けるような構成としてもよい。さらには、絞り加工用ダイス30のしわ押さえ面32およびブランクホルダ40の両方に溝形成部322を設けるような構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、溝形成部322を、複数の溝部322aを備えるような構成としたが、溝部322aは複数である必要はなく、たとえば、一つであってもよい。特に、このように溝形成部322を、一つの溝部322aのみを有するような構成とした場合でも、溝部322a形成部分において、六角形形状のブランク20の露出した金属表面の食い込みを発生させることができ、これにより六角形形状のブランク20の辺に対応する部分の開口部31への引き込み速度Vを、相対的に遅くすることができ、結果として、角部に起因する、容器高さが他の部分よりも高くなる部分(耳)の発生を有効に防止することができる。なお、その一方で、溝形成部322を、複数の溝部322aからなるものとすることにより、六角形形状のブランク20に印加される応力を分散することができるため、六角形形状のブランク20の材質や形状等によっては、溝形成部322を、複数の溝部322aからなるものとすることが好ましい。
同様に、上述した実施形態では、溝部322aを周方向に沿った形状を有するものとしたが、このような形状に特に限定されるものではなく、六角形形状のブランク20の露出した金属表面の食い込みを発生させることができるような凹部形状を有するものであれば何でもよい。
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
まず、金属板10として、板厚が0.25mmの、樹脂層を有しないニッケルめっき低炭素鋼板を準備した。そして、準備したニッケルめっき低炭素鋼板から、図2に示すような六角形形状のブランクを打ち抜いた。なお、本実施例では、対角線長さ2r=57mmであり、かつ、角部に形成された円弧状に丸めた形状の曲率半径Rを下記の通りに変化させた正六角形形状のブランク試料1〜4を準備した。
試料1:2r=57mm、R=24.5mm
試料2:2r=57mm、R=22.0mm
試料3:2r=57mm、R=19.5mm
試料4:2r=57mm、R=17.0mm
そして、得られたブランク試料1〜4を用いて、図3〜5に示す絞り加工ダイス30、ブランクホルダ40、およびポンチ50を用いて、ブランク試料1〜4の六角形形状の辺が絞り加工ダイス30の溝形成部322に対応する位置となるように、絞り加工ダイス30と、ブランクホルダ40とで挟持した状態(すなわち、図6に示すような状態)で、絞り加工を行い、容器高さ約18mmの円筒容器を製造した。なお、本実施例では、絞り加工ダイス30として、以下の構成を有するものを用いた。
しわ押さえ面32の外径:φ57mm
しわ押さえ面32の内径:φ32mm
しわ押さえ面32の溝形成部322の角度θ:30°
しわ押さえ面32の平滑部321の角度θ:30°
溝形成部322間の角度θ:60°
溝形成部322中の溝部322aの数:4
溝部322aの幅w:1.5mm
溝部322a間の幅w:1.5mm
溝部322aの深さd:0.3mm
また、ブランクホルダ40としては、絞り加工ダイス30のしわ押さえ面32と同じ外径および内径を有するものを用い、ポンチ50としては、ポンチ径:φ31.4mmであるものを用い、絞り加工ダイス30とブランクホルダ40による挟持力:20kNとした。
そして、得られた円筒容器について、周方向12箇所について、容器高さと、容器底面から13mmの高さ位置における側壁厚みとを測定し、高さバラツキΔH(ΔH=「容器高さの最大値」−「容器高さの最小値」)、および、厚みバラツキΔt(Δt=「側壁厚みの最大値」−「側壁厚みの最小値」)を算出した。高さバラツキΔHの結果を図7に、厚みバラツキΔtの結果を図8に、それぞれ示す。
また、本実施例においては、比較のため、ブランク試料1〜4について、絞り加工ダイス30として溝形成部322を有しないものを用いて、絞り加工を行った際における、高さバラツキΔH、および厚みバラツキΔtの測定、さらには、ブランク試料1〜4の六角形形状の角部が溝形成部322に対応する位置となるように、絞り加工ダイス30と、ブランクホルダ40とで挟持した状態(すなわち、図6に示すような状態から、六角形形状のブランクを30°回転させた状態)として、絞り加工を行った際における、高さバラツキΔH、および厚みバラツキΔtの測定も行った。そして、これらの結果も、図7、図8に併せて示した。
図7、図8に示すように、ブランク試料1〜4の全てにおいて、六角形形状の辺が絞り加工ダイス30の溝形成部322に対応する位置となるように、絞り加工ダイス30と、ブランクホルダ40とで挟持した状態(すなわち、図6に示すような状態)で、絞り加工を行った場合には、高さバラツキΔHおよび厚みバラツキΔtの改善効果が高いことが確認できる。一方で、六角形形状の角部が溝形成部322に対応する位置となるように、絞り加工ダイス30と、ブランクホルダ40とで挟持した状態(すなわち、図6に示すような状態から、六角形形状のブランクを30°回転させた状態)とした場合には、ブランク試料1〜4の全てにおいて、絞り加工ダイス30として溝形成部322を有しないものを用いた場合よりも、高さバラツキΔHおよび厚みバラツキΔtが大きくなる結果となった。
比較例1
金属板10として、板厚が0.25mmのニッケルめっき低炭素鋼板に代えて、厚さ0.22mmの低炭素鋼板に、樹脂層として、15μmのポリエステル樹脂をラミネートしてなるラミネート鋼板を用いて、図2に示すような六角形形状のブランクを打ち抜いた。なお、比較例1では、対角線長さ2r=57mmであり、角部に形成された円弧状に丸めた形状の曲率半径R=17.0mmとした正六角形形状のブランク試料5を作製した。
そして、作製したブランク試料5を用い、絞り加工ダイス30とブランクホルダ40による挟持力を15kNとした以外は、実施例1と同様にして、絞り加工を行い、容器高さ約18mmの円筒容器を製造した。そして、実施例1と同様にして、高さバラツキΔH、および厚みバラツキΔtの測定も行った。結果を、図9、図10に示す。図9、図10においては、対角線長さ2rおよび曲率半径Rを同様とした試料4の結果も併せて示した。なお、比較例1において、絞り加工ダイス30とブランクホルダ40による挟持力を20kNとすると、樹脂層が損傷してしまうため、このような樹脂層の破損を防止するため、挟持力を15kNとした。
また、比較例1においても、比較のため、ブランク試料5について、絞り加工ダイス30として溝形成部322を有しないものを用いて、絞り加工を行った際における、高さバラツキΔH、および厚みバラツキΔtの測定、さらには、ブランク試料5の六角形形状の角部が溝形成部322に対応する位置となるように、絞り加工ダイス30と、ブランクホルダ40とで挟持した状態(すなわち、図6に示すような状態から、六角形形状のブランクを30°回転させた状態)として、絞り加工を行った際における、高さバラツキΔH、および厚みバラツキΔtの測定も行った。そして、これらの結果も、図9、図10に併せて示した。
図9、図10に示すように、樹脂層としてのポリエステル樹脂をラミネートしてなるラミネート鋼板を用いた場合には、六角形形状の角部が溝形成部322に対応する位置となるように、絞り加工ダイス30と、ブランクホルダ40とで挟持した状態(すなわち、図6に示すような状態から、六角形形状のブランクを30°回転させた状態)で、絞り加工を行った試料5では、高さバラツキΔHおよび厚みバラツキΔtは多少改善するものの、樹脂層を有しないニッケルめっき鋼鈑を用いたブランク試料4と比較して、その改善度合いは極めて低いものであった。
10…金属板
20…六角形状のブランク
30…絞り加工ダイス
32…しわ押さえ面
321…平滑部
322…溝形成部
322a…溝部
40…ブランクホルダ
50…ポンチ

Claims (2)

  1. 少なくとも一方の面の表面に金属が露出した金属板を用いて、円筒容器を製造する方法であって、
    前記金属板から、六角形形状のブランクを得る工程と、
    前記ブランクの周辺部を絞り加工用ダイスと、ブランクホルダとで挟持した状態で、前記ブランクの中央部をポンチで押し込むことで、前記ブランクを円筒形状に加工する工程とを備え、
    前記絞り加工用ダイスとして、その表面の前記ブランクの辺に対応する部分に、周方向に沿って形成された複数の溝を有するものを用い、
    前記複数の溝は、それぞれ、溝自体の幅W が1〜5mm、溝間の幅W が1〜5mm、溝の深さdが0.1〜1mmであり、
    前記ブランクの金属が露出した面が前記複数の溝と対向した状態であり、かつ、前記ブランクの辺が前記複数の溝に対応した位置となるように、前記ブランクの周辺部を絞り加工用ダイスと、ブランクホルダとで挟持して、前記ブランクを円筒形状に加工することを特徴とする円筒容器の製造方法。
  2. 前記ブランクの辺に対応する部分に周方向に沿って形成された複数の溝は、周方向において15°〜45°の幅で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の円筒容器の製造方法。
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