以下、本発明に係る無線通信システム及び無線コントローラの実施形態について、図面を用いて説明する。この無線通信システムでは、無線コントローラが無線送信機から登録要求信号を受信したときの受信電界強度が第1の閾値以上であれば、無線コントローラは、無線送信機からの受信電界強度は十分であるとみなして、無線送信機からの電波を安定的に受信できるか否かを確認する電波テストを行わずに無線送信機を通信対象機器として登録する。また、この無線通信システムは、日々の運用において無線コントローラが登録済みの無線送信機から信号を受信したときの通信品質のバラつき度が安定評価閾値より大きい場合には、以後新たに無線送信機を登録するときに電波テストを不要と判定することを禁止する。この無線通信システムは、過去の通信品質のバラつき度から無線通信環境が安定的であるか否かを判別して電波テストの免除可否を決めることで、無線通信環境の変動があっても、通信品質を担保しつつ、無線送信機の登録可否を効率的に判定することを図る。
図1は、警備システム1の概略構成図である。警備システム1は、監視区域2となる住宅などに設置され、監視区域2内の異常の有無を監視する。警備システム1は、警備装置10と、複数の防犯センサ20と、携帯端末30とを有する。警備システム1は無線通信システムの一例であり、警備装置10、複数の防犯センサ20及び携帯端末30は、特定小電力無線又は無線LANなどの無線ネットワークを介して互いに無線通信可能である。以下では、警備システム1による監視区域2が住宅である場合を例として説明するが、監視区域2は、店舗又は事業所などの住宅以外の場所でもよい。
警備装置10は、無線コントローラの一例であり、住宅内の壁面などに設置される。警備装置10は、インターネットなどの通信回線網50を介して監視センタ40内のセンタ装置41に接続されている。警備装置10は、監視中の防犯センサ20から侵入者などの異常を検知したことを示す検知信号を受信すると、監視区域2に異常が発生したと判定して、遠隔のセンタ装置41に異常信号を送信する。
防犯センサ20は、無線送信機の一例であり、監視区域2である住宅内外の各所に設置される。防犯センサ20は、監視区域2内への侵入者を検知すると、警備装置10に検知信号を送信する。この検知信号は、検知対象イベントが発生したことを示すイベント信号の一例である。
携帯端末30は、警備システム1の保守員が所持するPDA、スマートフォンなどの携帯可能な端末である。携帯端末30は、例えば警備システム1に新たな防犯センサ20を登録するときに、保守員により操作される。
監視センタ40は、警備会社などが運営するセンタ装置41を備えた施設であり、管制員が監視区域2を常時監視している。センタ装置41は、一つ又は複数のコンピュータで構成されている。監視センタ40では、警備装置10からセンタ装置41が受信した異常信号に基づいて、対処すべき監視区域2の情報が表示部42に表示され、利用者に対する確認処理又は監視区域2への警備員の対処指示などの必要な措置がとられる。
図2は、警備装置10の概略構成図である。警備装置10は、通信部11と、センサI/F12と、周辺機器I/F13と、表示部14と、操作部15と、記憶部16と、制御部17とを有する。
通信部11は、通信回線網50に接続され、通信回線網50を介してセンタ装置41との間で警備情報の通信を行う。警備情報とは、現在の警備モード及び監視区域2の異常有無などの、監視区域2において異常監視を行うために収集生成される情報である。さらに、通信部11は、予め設定された間隔(例えば1分)ごとにセンタ装置41に定期信号を送信して、疎通確認を行う。そのために、通信部11は、センタ装置41との間の通信においてVPN(Virtual Private Network)トンネルを構築し、このVPNトンネルを介して暗号化通信を行う。通信部11によるセンタ装置41との通信には、予め警備装置10に固有に設定された識別情報が付加される。
センサI/F12は、防犯センサ20が無線で接続されるI/F(インタフェース)であって、防犯センサ20との間で特定小電力無線にて通信を行う無線通信手段として機能する。通信規格は特定小電力無線に限らず、IEEE802.11諸規格のいずれかに準拠したいわゆる無線LAN又はBluetooth(登録商標)などの、公知の無線通信規格であってよい。なお、図1には示していないが、監視区域2には、防犯センサ20の他にも火災検知用のセンサ及び非常ボタンなどの複数のセンサが設置されていてもよく、これらのセンサもセンサI/F12に接続されている。
周辺機器I/F13は、保守員が所持する携帯端末30などの警備装置10の周辺機器が無線で接続されるI/Fであって、携帯端末30との間で特定小電力無線にて通信を行う無線通信手段として機能する。さらに、周辺機器I/F13は、保守員に対して警備装置10の情報を出力する出力手段として機能する。なお、本実施形態では説明のためセンサI/F12と区別して説明するが、周辺機器I/F13とセンサI/F12は、共通の無線通信手段として構成されていてよい。通信規格は特定小電力無線に限らず、IEEE802.11諸規格のいずれかに準拠したいわゆる無線LAN又はBluetooth(登録商標)などの、公知の無線通信規格であってよい。
表示部14は、液晶ディスプレイにて構成される表示デバイスである。表示部14は、例えば操作部15と一体化された液晶タッチパネルディスプレイにより構成される。表示部14は、警備装置10の操作画面などを表示する。表示部14は、周辺機器I/F13と同様に、保守員に対して警備装置10の情報を出力する出力手段として機能する。
操作部15は、例えば表示部14と一体化された液晶タッチパネルディスプレイにより構成され、液晶タッチパネルディスプレイ上に操作シンボルとして表示される各種の入力用のアイコンを有する。操作部15は、警備装置10の警備モードの設定などに際し利用者により操作される。利用者によりアイコンが選択されると、操作部15は、対応する信号を制御部17に入力する。例えば、利用者が操作部15を操作してある特定のアイコンを選択することで、防犯センサ20により監視を行う警備セットモード、又は防犯センサ20による監視を行わない警備解除モードといった警備モードの設定が行われる。また、操作部15は非常通報のアイコンを有し、利用者がこれを操作するとセンタ装置41に非常通報が行われる。
記憶部16は、ROM、RAM又はHDDにて構成され、自己を特定するための識別情報と各種プログラムなどを記憶しており、さらに、警備装置10を動作させるための各種情報を記憶する。例えば、記憶部16は、現在設定されている警備モードを示す情報、センサ登録情報及び通信品質情報などを記憶する。
センサ登録情報は、監視区域2内で警備装置10の通信対象となる防犯センサ20などの機器の情報である。センサ登録情報は、保守員により操作部15を介して予め行われる初期登録操作、又は携帯端末30から警備装置10に送信される設定信号により入力される。例えば、センサ登録情報は、警備装置10に接続される防犯センサ20などの機器の通信アドレス、名称、種別、設置場所、登録フラグ及び強度フラグなどを機器ごとに記憶したテーブル情報である。登録フラグは、対象の機器が制御部17の登録処理により通信対象として登録済みか否かを識別するための情報である。ここでは、登録フラグがONであると対象の機器が登録済みであることを示し、登録フラグがOFFであると対象の機器が登録されていないことを示すものとする。また、強度フラグは、防犯センサ20の登録時に警備装置10が受信した登録要求信号の受信電界強度が十分であったか否かを識別するための情報である。
また、通信品質情報は、警備装置10が防犯センサ20と通信を行ったときの通信品質を示す情報である。例えば、通信品質情報は、防犯センサ20から受信された検知信号の受信電界強度を、その防犯センサ20の識別番号及び受信時刻の情報とともに記憶したテーブル情報である。
制御部17は、CPU、ROM及びRAMなどを含むマイクロコンピュータ並びにその周辺回路で構成され、上述した各部を制御する。
図3は、警備装置10の制御部17の機能ブロック図である。制御部17は、上記のマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、登録処理部171と、信号強度判定部172と、テスト確認部173と、テスト処理部174と、警備監視部175と、通信品質記憶処理部176と、通信品質判定部177とを有する。
登録処理部171は、警備装置10が携帯端末30から登録処理開始信号を受信すると、登録要求信号の待ち受けを開始して、防犯センサ20を警備装置10に登録するための登録処理を開始する。登録処理開始信号は、防犯センサ20を警備装置10に登録する際に、保守員の操作により携帯端末30から警備装置10に送信される。登録要求信号は、登録処理開始信号が警備装置10に送信された後、保守員が防犯センサ20を操作することにより、防犯センサ20から警備装置10に送信される。登録要求信号には、送信元の防犯センサ20を識別する防犯センサ20の通信アドレスが含まれる。なお、登録処理部171は、登録処理開始信号に拠らず、防犯センサ20から登録要求信号を受信すると、その防犯センサ20について登録処理を開始するようにしてもよい。
登録処理部171は、登録要求信号の受信電界強度が後述する強度判定閾値以上であるか、又は後述する電波テストで複数の電波テスト信号の受信電界強度に基づいて通信可能であると判定された場合に、登録要求信号に含まれる識別情報に対応する防犯センサ20を通信対象機器として登録する。具体的には、登録処理部171は、記憶部16に記憶されているセンサ登録情報において、登録要求信号に含まれる通信アドレスに対応する防犯センサ20の登録フラグをONにする。
その際、登録処理部171は、登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上であった防犯センサ20を、特定の防犯センサ20として識別可能に記憶部16のセンサ登録情報に記憶する。例えば、登録処理部171は、登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上であった防犯センサ20について、センサ登録情報の強度フラグをONにする。一方、登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値未満であった防犯センサ20については、センサ登録情報の強度フラグはOFFのままとする。
一方、登録処理部171は、登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値未満であり、かつ電波テストで複数の電波テスト信号の受信電界強度に基づいて通信可能でないと判定された場合には、対象の防犯センサ20を通信対象機器として登録しない。その場合、センサ登録情報において、登録要求信号に含まれる通信アドレスに対応する防犯センサ20の登録フラグは、OFFのままになる。
信号強度判定部172は、登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値(第1の閾値)以上であるか否かを判定する。
強度判定閾値は、防犯センサ20の電波が十分に強いと判断できるか否かを識別するための閾値であって、防犯センサ20が警備装置10と確実に通信できる受信電界強度の下限値として設定される。強度判定閾値は、警備装置10がキャリアセンスで周辺の無線電波を検知したと判定するときの閾値、及びテスト処理部174が電波テストで電波テスト信号を受信した(受信OK)と判定するときの閾値よりも、高いレベルの閾値である(強度判定閾値>電波テスト閾値)。強度判定閾値は、例えば、テスト処理部174が電波テストで電波テスト信号を受信OKと判定するレベルより20%など所定量強度が高い値として予め設定される。
あるいは、信号強度判定部172は、監視区域2内の複数の防犯センサ20から受信電界強度にバラつきのない防犯センサ20を抽出して、それらの受信電界強度から強度判定閾値を設定してもよい。その際、例えば、信号強度判定部172は、直近1週間などの期間内における各防犯センサ20についての受信電界強度を記憶部16の通信品質情報から読み出し、防犯センサ20ごとにその期間内の受信電界強度について分散、標準偏差又は最大値と最小値の差などのバラつき度を算出する。さらに、信号強度判定部172は、算出されたバラつき度が受信電界強度の安定性を評価するための安定評価閾値以下である防犯センサ20を抽出する。そして、信号強度判定部172は、抽出された防犯センサ20ごとに、直近の期間内の受信電界強度について平均値、中央値又は下限値を算出し、そのいずれかの値から例えば10%などの所定量強度が低い値を強度判定閾値として決定するとよい。
テスト確認部173は、登録処理において、電波テストを行うか否かを判定する。具体的には、信号強度判定部172により防犯センサ20の登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上と判定されていれば、テスト確認部173は、その防犯センサ20の電波テストは不要と判定する。一方、信号強度判定部172により防犯センサ20の登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値未満と判定されていれば、テスト確認部173は、その防犯センサ20の電波テストが必要と判定する。
テスト確認部173は、判定結果を携帯端末30に出力する。あるいは、テスト確認部173は、判定結果を表示部14に出力してもよい。保守員は、携帯端末30などに表示される判定結果を見て防犯センサ20についての電波テストの要否を確認し、電波テストが必要な場合には電波テストを開始する操作を行う。
その際、受信手段を有さず送信のみ可能な防犯センサ20については、保守員は手動で防犯センサ20を操作して、防犯センサ20から警備装置10に複数の電波テスト信号を送信させる。送受信が可能な防犯センサ20については、保守員は、手動で防犯センサ20を操作して電波テスト信号を送信させてもよいし、携帯端末30を操作して携帯端末30から警備装置10と防犯センサ20にテスト開始信号を送信し、これにより防犯センサ20から警備装置10に電波テスト信号を自動送信させてもよい。また、テスト確認部173にて電波テストが必要と判定されたときに、警備装置10から対象の防犯センサ20にテスト開始信号を送信し、これにより電波テスト信号を自動送信させてもよい。
また、テスト確認部173は、通信品質判定部177により後述する通信品質のバラつき度が安定評価閾値より大きいと判定されると、以後新たな防犯センサ20から受信する登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上であっても、その防犯センサ20の電波テストが必要と判定する。すなわち、テスト確認部173が電波テストは不要と判定することが禁止される。ただし、電波テスト不要との判定が禁止された後でも、通信品質判定部177により通信品質のバラつき度が安定評価閾値以下と判定されると、テスト確認部173は、新たな防犯センサ20から受信する登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上であれば、電波テストは不要であるとの判定を再び行う。すなわち、テスト確認部173が電波テストは不要と判定することが許容される。
テスト処理部174は、テスト確認部173が電波テスト要と判定すると、複数の電波テスト信号を待ち受ける。あるいは、テスト処理部174は、テスト確認部173が電波テスト要と判定した後に警備装置10が携帯端末30からテスト開始信号を受信すると複数の電波テスト信号を待ち受けるようにしてもよい。そして、テスト処理部174は、防犯センサ20からの電波テスト信号を受信して、防犯センサ20からの受信電界強度についての電波テストを行い、防犯センサ20と通信可能か否かを判定する。
電波テスト信号は、防犯センサ20からの受信電界強度を判定するために用いられる、警備装置10にとって既知の波形を有する信号である。電波テスト信号は、例えば3秒周期で10回など、防犯センサ20から間欠的に複数回送信される。
テスト処理部174は、個々の電波テスト信号を受信すると、その受信電界強度が電波テスト閾値(第2の閾値)以上であれば、その電波テスト信号を受信OKと判定する。電波テスト閾値は、上記の強度判定閾値よりも低いレベルの閾値である(強度判定閾値>電波テスト閾値)。電波テスト閾値は、防犯センサ20からの信号を警備装置10が識別できるレベルの閾値として設定される。
テスト処理部174は、最初に受信電界強度が電波テスト閾値以上の電波テスト信号を受信すると、予め設定されたテスト時間タイマーを起動して、そのタイマーの設定時間が経過するまでに電波テスト信号を受信OKと判定した回数を計数する。テスト時間タイマーは、防犯センサ20が電波テスト信号を送信し終えるまでの時間間隔に対応するように設定される。例えば、電波テスト信号が3秒周期で10回送信されるならば、テスト時間タイマーは30秒とする。
テスト処理部174は、電波テスト信号を受信OKと判定した回数が基準回数以上であれば、対象の防犯センサ20と通信可能である(以下、電波テストは「合格」であるという)と判定する。一方、テスト処理部174は、電波テスト信号を受信OKと判定した回数が基準回数未満であれば、対象の防犯センサ20と通信可能でない(以下、電波テストは「不合格」であるという)と判定する。この基準回数は、防犯センサ20からの電波を安定的に受信できるとみなせる回数の下限値として設定され、例えば、電波テスト信号の送信回数の70%に相当する回数とする。テスト処理部174は、判定結果を携帯端末30に出力する。
また、テスト処理部174は、テスト確認部173が電波テスト要と判定した後に、予め定められた待ち受け時間(例えば3分)が経過しても電波テスト信号を受信しなければ、電波テスト信号の待ち受けを終了する。この場合、テスト処理部174は、対象の防犯センサ20についての電波テストを不合格と判定する。
警備監視部175は、センサ登録情報に通信対象として登録済みの(すなわち、登録フラグがONになっている)防犯センサ20から検知信号に基づき、監視区域2の異常の有無を判定する。警備監視部175は、利用者が操作部15を操作することで、防犯センサ20による監視を行う警備セットモードか、又は防犯センサ20による監視を行わない警備解除モードに設定される。警備監視部175は、警備セットモードに設定されているときに、センサ登録情報に通信対象として登録済みの防犯センサ20から検知信号を受信すると、監視区域2に異常が発生したと判定して、通信部11よりセンタ装置41に異常信号を送信する。一方、警備監視部175は、警備解除モードに設定されているときは、センサ登録情報に通信対象として登録済みの防犯センサ20から検知信号を受信しても、その検知信号を無視する。
通信品質記憶処理部176は、登録済みの防犯センサ20から警備装置10が検知信号を受信したときの通信品質を記憶部16に記憶する。例えば、通信品質記憶処理部176は、この通信品質として検知信号の受信電界強度を、送信元の防犯センサ20の識別番号及び受信時刻の情報とともに記憶部16の通信品質情報に記憶する。このように、通信品質記憶処理部176は、日々の運用において警備装置10が防犯センサ20から検知信号を受信したときの受信電界強度などの通信品質を示す情報を記憶しておく。それにより、警備装置10の運用を開始した後で防犯センサ20を追加又は交換するときに、新しい防犯センサ20についての電波テストを不要と判定してよいか否かをそのときの無線通信環境に応じて判断できるようにする。
通信品質判定部177は、予め定められた期間における各防犯センサ20との通信品質のバラつき度の大きさを判定する通信品質判定処理を、例えば1週間ごとなどの予め定められたタイミングで実行する。通信品質判定処理において、通信品質判定部177は、まず直近1週間などの予め定められた期間における各防犯センサ20との通信品質を記憶部16の通信品質情報から読み出して、そのバラつき度を算出する。なお、以下では、バラつき度の算出についての予め定められた期間を直近1週間として説明するが、この期間は数日又は数週間などでもよい。通信品質判定処理が実行されるタイミングも、数日ごと又は数週間ごとなどでもよい。
通信品質判定部177は、例えば、その期間内に各防犯センサ20から受信された検知信号の受信電界強度を読み出す。そして、通信品質のバラつき度として、通信品質判定部177は、例えば、監視区域2内で登録されている全ての防犯センサ20からの直近1週間における受信電界強度について、分散、標準偏差又は最大値と最小値の差などを算出する。これらの値が小さいほど、通信品質のバラつき度も小さくなる。あるいは、通信品質判定部177は、全ての防犯センサ20について、個別に直近1週間における受信電界強度の分散、標準偏差又は最大値と最小値の差などを算出し、それらの値の平均値を通信品質のバラつき度としてもよい。
そして、通信品質判定部177は、予め定められた期間における通信品質のバラつき度が通信品質の安定性を評価するための安定評価閾値以下であるか否かを判定する。安定評価閾値は、防犯センサ20との通信品質が安定していると判断できる通信品質のバラつき度の上限値として設定される。例えば、ある期間における受信電界強度のバラつき度が安定評価閾値以下であれば、受信電界強度の時間変動が小さく、無線通信環境は安定であると言える。一方、ある期間における受信電界強度のバラつき度が安定評価閾値より大きければ、受信電界強度の時間変動が大きく、無線通信環境は不安定であると言える。
なお、通信品質判定部177は、監視区域2内で登録されている全ての防犯センサ20ではなく、登録されている防犯センサ20の中で、登録時の登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上であった防犯センサ20について、通信品質のバラつき度の大きさを判定してもよい。この場合、通信品質判定部177は、記憶部16のセンサ登録情報を参照して、強度フラグがONになっている特定の防犯センサ20の識別情報を抽出し、これらの特定の防犯センサ20から受信した検知信号の受信電界強度を記憶部16の通信品質情報から読み出す。そして、通信品質判定部177は、例えば、抽出された特定の防犯センサ20(複数あればその全て)の直近1週間における受信電界強度について、分散、標準偏差又は最大値と最小値の差などのバラつき度を算出する。あるいは、通信品質判定部177は、抽出された特定の防犯センサ20について、個別に直近1週間における受信電界強度の分散、標準偏差又は最大値と最小値の差などを算出し、それらの値の平均値を通信品質のバラつき度としてもよい。そして、通信品質判定部177は、特定の防犯センサ20について算出されたバラつき度が安定評価閾値以下であるか否かを判定する。
この判定の結果、通信品質のバラつき度が安定評価閾値より大きければ、通信品質判定部177は、テスト確認部173が新たな防犯センサ20の登録処理について電波テストは不要と判定することを禁止する。一方、通信品質のバラつき度が安定評価閾値以下であれば、通信品質判定部177は、テスト確認部173が新たな防犯センサ20の登録処理について電波テストは不要と判定することを許容する。
このように、通信品質判定部177は、特に登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上であった防犯センサ20について通信品質のバラつき度を判定することで、電波テストを省略できるような強い受信電界強度を示していた防犯センサ20と警備装置10との無線通信環境がその後も安定的であるか否かを判別する。これらの防犯センサ20については、警備装置10で受信される電波が十分に強いと判断できるため、検知信号の受信電界強度のバラつき度は小さいはずである。それにもかかわらず、そのバラつき度が安定評価閾値より大きいと判定された場合には、無線通信環境が不安定になったと考えられる。そこで、通信品質判定部177は、このような無線通信環境の変動を考慮して、電波テストを省略するか否かをテスト確認部173が判定するように制御する。
図4は、防犯センサ20の機能ブロック図である。防犯センサ20は、検知部21と、記憶部22と、無線通信部23と、入力部24と、制御部25とを有する。
検知部21は、防犯センサ20の監視方向から入力される物理量に基づき、人の存在を検知する。検知部21は、例えば、熱線の変動により人の存在を検知する熱線センサ、超音波により人の存在を検知するセンサ、入力画像から人の存在を検知する画像センサ、及び磁界の変化を検知して扉の開放を検知する近接センサなど、人の存在を検知する公知の検知手段で構成される。
記憶部22は、各防犯センサ20を識別する通信アドレス及び処理プログラムなどを記憶する。
無線通信部23は、警備装置10及び携帯端末30と無線信号を送受信するためのアンテナと、そのアンテナに接続される通信制御部とを備える。無線通信部23は、特定小電力無線などの通信規格に従って、警備装置10及び携帯端末30との間で通信を行う。無線通信部23から警備装置10又は携帯端末30に送信される無線信号には、少なくとも記憶部22に記憶された自己の通信アドレスが含まれる。無線通信部23は、自己の識別情報を含む登録要求信号と複数の電波テスト信号とを警備装置10に送信する送信部として機能する。
入力部24は、例えば、防犯センサ20の電子基盤上に設けられたマイクロスイッチである。入力部24は、保守員に操作されて、登録要求信号又は電波テスト信号の送信指示を制御部25に入力する。あるいは、入力部24は、携帯端末30又は警備装置10からの指示コマンドの入力を受ける受信手段として構成されてもよい。この場合、入力部24は、例えば、携帯端末30又は警備装置10からテスト開始信号を受信すると、これを電波テスト信号の送信指示として制御部25に入力する。
制御部25は、CPU、ROM及びRAMなどを含むマイクロコンピュータ並びにその周辺回路で構成され、上述した各部を制御して防犯センサ20として動作させる。制御部25は、入力部24から登録要求信号の送信指示が入力されると、無線通信部23から警備装置10に登録要求信号を送信させる。また、制御部25は、入力部24から電波テスト信号の送信指示が入力されると、無線通信部23から警備装置10に、予め設定された回数の電波テスト信号を送信させる。登録要求信号は単発的な信号であるが、電波テスト信号は、上記の通り、例えば3秒周期で10回送信など、予め設定された回数だけ間欠的に送信される。また、制御部25は、検知部21が人の存在を検知したときに、無線通信部23から警備装置10に検知信号を送信させる。
図5は、携帯端末30の機能ブロック図である。携帯端末30は、無線通信部31と、操作表示部32と、制御部33とを有する。
無線通信部31は、警備装置10及び防犯センサ20と無線信号を送受信するためのアンテナと、そのアンテナに接続される通信制御部とを備える。無線通信部31は、特定小電力無線などの通信規格に従って、警備装置10及び防犯センサ20との間で通信を行う。
操作表示部32は、例えば液晶タッチパネルディスプレイにより構成され、警備装置10の登録処理の状況などを表示する。操作表示部32は、各種の入力用のアイコンを操作シンボルとして液晶タッチパネルディスプレイ上に表示し、保守員によりアイコンが選択されると、対応する信号を制御部33に入力する。
制御部33は、CPU、ROM及びRAMなどを含むマイクロコンピュータ並びにその周辺回路で構成され、上述した各部を制御する。制御部33は、保守員が入力したコマンドに応じて、無線通信部31より警備装置10又は防犯センサ20に、各種制御に関する無線信号を送信させる。例えば、制御部33は、保守員が入力したコマンドに応じて、無線通信部31から登録処理開始信号又はテスト開始信号を送信させる。
図6は、防犯センサ20の登録処理に関する警備システム1の動作例を示したシーケンス図である。図6は、警備装置10が受信した防犯センサ20からの登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上であり、防犯センサ20の電波テストが行われない場合の動作例を示す。
まず、保守員の操作により、携帯端末30は、警備装置10に登録処理開始信号を送信する(ステップS1)。警備装置10の登録処理部171は、携帯端末30から登録処理開始信号を受信すると、登録要求信号の待ち受けを開始する(ステップS2)。一方、携帯端末30の操作表示部32は、警備装置10が登録要求信号を待ち受けている旨を表示する(ステップS3)。
保守員は、登録要求信号待ち受けの表示を確認すると、手動で防犯センサ20の入力部24を操作して、登録要求信号の送信指示を入力する。図6では、保守員によるこの操作を、ステップS3とステップS4の間の破線で示している。
入力部24に登録要求信号の送信指示が入力されると、防犯センサ20の制御部25は、無線通信部23から警備装置10に登録要求信号を送信させる(ステップS4)。警備装置10の信号強度判定部172は、登録要求信号を受信すると、その受信電界強度が強度判定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS5)。図6の例では、登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上であるとする。このため、テスト確認部173は、対象とする防犯センサ20の電波テストは不要と判定し、判定結果を携帯端末30に出力する(ステップS6)。
この判定結果を受信すると、携帯端末30の操作表示部32は、防犯センサ20の登録に成功した旨を表示する(ステップS7)。一方、警備装置10の登録処理部171は、記憶部16に記憶されているセンサ登録情報において、受信した登録要求信号に含まれる通信アドレスに対応する防犯センサ20の登録フラグをONにする(ステップS8)。また、このとき、登録処理部171は、登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値以上であった防犯センサ20を特定の防犯センサ20として識別可能にするため、対応する強度フラグをONにする。以上で、防犯センサ20の登録処理に関する警備システム1の動作は終了する。
図7は、防犯センサ20の登録処理に関する警備システム1の別の動作例を示したシーケンス図である。図7は、警備装置10が受信した防犯センサ20からの登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値未満であり、防犯センサ20の電波テストが行われる場合の動作例を示す。
ステップS21からステップS25の処理は、図6のステップS1からステップS5の処理と同一であるため、説明を省略する。図7の例では、防犯センサ20から警備装置10が受信した登録要求信号の受信電界強度が強度判定閾値未満であるとする。このため、テスト確認部173は、対象とする防犯センサ20の電波テストが必要と判定し、判定結果を携帯端末30に出力する(ステップS26)。
この判定結果を受信すると、携帯端末30の操作表示部32は、防犯センサ20を警備装置10に登録するために電波テストを行う旨を表示する(ステップS27)。一方、警備装置10のテスト処理部174は、電波テスト信号を待ち受ける(ステップS28)。
保守員は、電波テストを行う旨の表示を確認すると、手動で防犯センサ20の入力部24を操作して、電波テスト信号の送信指示を入力する。あるいは、保守員は携帯端末30を操作して、携帯端末30から警備装置10と防犯センサ20にテスト開始信号を送信し、これにより防犯センサ20の入力部24に電波テスト信号の送信指示を入力する。図7では、保守員によるこの操作を、ステップS27とステップS29の間の破線で示している。なお、携帯端末30からのテスト開始信号を受信したことに応じて警備装置10がステップS28を実行し、テスト処理部174が電波テスト信号を待ち受けるようにしてもよい。
入力部24に電波テスト信号の送信指示が入力されると、防犯センサ20の制御部25は、無線通信部23から警備装置10に、例えば3秒周期で10回送信など予め設定された回数だけ間欠的に電波テスト信号を送信させる(ステップS29)。図7では、複数回の電波テスト信号の送信を、ステップS29とステップS31の間における複数の矢印で示している。
テスト処理部174は、最初に受信電界強度が電波テスト閾値以上の電波テスト信号を受信すると、テスト時間タイマーを起動する(ステップS30)。そして、テスト処理部174は、テスト時間タイマーの設定時間が経過するまでに電波テスト信号を受信OKと判定した回数を計数し、その回数が基準回数以上であるか否かを判定する(ステップS31)。図7の例では、テスト処理部174が電波テスト信号を受信OKと判定した回数は基準回数以上であるとする。このため、テスト処理部174は、対象とする防犯センサ20の電波テストは合格と判定し、判定結果を携帯端末30に出力する(ステップS32)。
この判定結果を受信すると、携帯端末30の操作表示部32は、防犯センサ20の登録に成功した旨を表示する(ステップS33)。一方、警備装置10の登録処理部171は、記憶部16に記憶されているセンサ登録情報において、受信した登録要求信号に含まれる通信アドレスに対応する防犯センサ20の登録フラグをONにする(ステップS34)。このとき、対応する強度フラグはOFFのままとなる。以上で、防犯センサ20の登録処理に関する警備システム1の動作は終了する。
なお、ステップS30で起動されたテスト時間タイマーの設定時間が経過するまでにテスト処理部174が電波テスト信号を受信OKと判定した回数が基準回数未満であれば、テスト処理部174は、ステップS32で不合格の判定結果を携帯端末30に出力する。この判定結果を受信すると、携帯端末30の操作表示部32は、ステップS33で防犯センサ20の登録に失敗した旨を表示する。そして、警備装置10の登録処理部171は、ステップS34の処理を行わず、対象とする防犯センサ20の登録フラグをOFFのままとする。
図8は、検知信号受信処理の動作例を示したフローチャートである。警備監視部175は、登録済みの防犯センサ20から検知信号を受信すると、図8の検知信号受信処理を実行する。
まず、警備監視部175は、受信された検知信号に含まれる送信元の防犯センサ20の識別情報を記憶部16のセンサ登録情報と照合し、送信元の防犯センサ20が登録済みの防犯センサ20であるか否かを判定する(ステップS41)。送信元の防犯センサ20が登録済みの防犯センサ20でない場合(ステップS41でNo)には、そのまま検知信号受信処理は終了する。
一方、送信元の防犯センサ20が登録済みの防犯センサ20である場合(ステップS41でYes)には、警備監視部175は、検知信号の受信に応じて警備監視処理を行う(ステップS42)。例えば、警備監視部175は、警備セットモードに設定されているときは、監視区域2に異常が発生したと判定して通信部11よりセンタ装置41に異常信号を送信する。警備監視部175は、警備解除モードに設定されているときは、受信された検知信号を無視する。
そして、通信品質記憶処理部176は、受信された検知信号の受信電界強度を、送信元の防犯センサ20の識別番号及び受信時刻の情報とともに記憶部16の通信品質情報に記憶する(ステップS43)。以上で検知信号受信処理は終了する。
図9は、通信品質判定処理の動作例を示したフローチャートである。通信品質判定部177は、例えば1週間ごとなどの予め定められたタイミングで、図9の通信品質判定処理を実行する。
通信品質判定部177は、まず直近1週間などの予め定められた期間内に各防犯センサ20から受信された検知信号の受信電界強度を、記憶部16の通信品質情報から読み出す(ステップS61)。次に、通信品質判定部177は、例えば、監視区域2内で登録されている全ての防犯センサ20の直近1週間における受信電界強度について、分散、標準偏差又は最大値と最小値の差などのバラつき度を算出する(ステップS62)。
そして、通信品質判定部177は、ステップS62で算出したバラつき度が安定評価閾値以下であるか否かを判定する(ステップS63)。バラつき度が安定評価閾値より大きければ(ステップS63でNo)、通信品質判定部177は、テスト確認部173が新たな防犯センサ20の登録処理について電波テストは不要と判定することを禁止する(ステップS64)。一方、バラつき度が安定評価閾値以下(ステップS63でYes)であれば、通信品質判定部177は、テスト確認部173が新たな防犯センサ20の登録処理について電波テストは不要と判定することを許容する(ステップS65)。以上で通信品質判定処理は終了する。
以上説明したように、警備システム1では、警備装置10が防犯センサ20から登録要求信号を受信したときの受信電界強度が強度判定閾値以上であれば、警備装置10は、防犯センサ20からの受信電界強度は十分であるとみなして、防犯センサ20からの電波を安定的に受信できるか否かを確認する電波テストを行わずに防犯センサ20を通信対象機器として登録する。また、警備システム1は、日々の運用において警備装置10が登録済みの防犯センサ20から信号を受信したときの通信品質のバラつき度が安定評価閾値より大きい場合には、以後新たに防犯センサ20を登録するときに電波テストを不要と判定することを禁止する。警備システム1は、過去の通信品質のバラつき度から無線通信環境が安定的であるか否かを判別して電波テストの免除可否を決めることで、無線通信環境の変動があっても、通信品質を担保しつつ、防犯センサ20の登録可否を効率的に判定することができる。