以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、運転席横のコンソール部1にはシフトレバー2が備えられ、該シフトレバー2には、操作ポジションとして、P(駐車)ポジション、R(後退)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、及びB(ブレーキ)ポジションが設定されており、この実施形態では、車両前方から後方に向けて、直列に、P、R、N、Dの各ポジションが隣接して配置され、最も後方のDポジションの側方にBポジションが隣接して設けられている。また、シフトレバー2のノブ2aには、所定のポジション間の操作を許可するためのロックリリースボタン3が設けられている。
図2は、前記シフトレバー2の軸部2bを案内するガイドプレート4を示し、前記各ポジションの配置に従い、P、R、N、Dの各ポジションが位置する前後方向に延びる第1ガイド溝4aと、該第1ガイド溝4aの後方側の端部のDポジションから側方に延びて、先端がBポジションとされる第2ガイド溝4bとを有する。
そして、図2(a)に示すように、Pポジションから他のポジションへの操作は、前記ロックリリースボタン3を押し、かつブレーキペダルを踏み込んでいることが操作許可条件とされ、また、同図(b)に示すように、N→R操作、及びR→P操作は、ロックリリースボタン3を押すことが操作許可条件とされている。換言すれば、Dポジション、Nポジション間の操作、及び、Dポジション、Bポジション間の操作は、常に無条件で可能とされている。
図3は、本発明の第1実施形態に係る車両の制御システムを示すもので、この実施形態に係る車両は、駆動源としてのエンジン11と、該エンジン11の出力を変速すると共に車両を減速させる減速装置としての機能を有する無段変速機12と、該無段変速機12の出力を分割して左右の駆動輪13、13に伝達する差動装置14と、車両を制動するホイールブレーキ装置15、15とを有している。
無段変速機12は、変速比を段階的に変化するように構成され、変速比を減速側に変化させることによりエンジン回転数を上昇させてエンジンの回転抵抗を増大させて車両を減速させることができ、車両を減速させる減速装置としての機能を有する。
ホイールブレーキ装置15、15は、車両を直接的に制動するものであり、左右のホイールブレーキ装置15、15のシリンダに供給するブレーキ圧を制御する油圧制御回路16にブレーキ圧制御信号を出力することにより所定のブレーキ圧を供給して制動力を得ることができ、車両を減速させる減速装置としての機能を有する。
前記車両では、車両減速状態で、前記無段変速機12の変速比を減速側に段階的に変化させることにより、あるいは前記ホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧を段階的に高くすることにより、車両減速度が大きくなる。
そして、前記無段変速機12及び前記ホイールブレーキ装置15、15を制御して車両減速度を段階的に変化させるコントロールユニット21が備えられ、このコントロールユニット21に、前記シフトレバー2がP、R、N、Dのいずれかのポジションにあるときに、そのポジションを検出するポジションセンサ22からの信号と、前記シフトレバー2がBポジションにあるときに、それを検出するBポジションスイッチ23からの信号と、運転者のアクセルペダルの踏込量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ24からの信号とが入力されるようになっている。
なお、前記ポジションセンサ22に代え、例えば、P、R、N、Dのポジションごとにスイッチを備えるなど、シフトレバー2のポジションの検出方法としては適宜選択可能である。
前記コントロールユニット21は、前記ポジションセンサ22及びBポジションスイッチ23からの信号と、アクセル開度センサ24からの信号とに基づき、運転者の要求減速度レベルを判定すると共に、判定したレベルの車両減速度が得られるように、前記無段変速機12の変速比及び前記ホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧を段階的に変更するように制御信号を出力する。
次に、図4、図5のフローチャートに従って、前記コントロールユニット21による運転者の要求減速度レベル判定制御と、判定したレベルの車両減速度が得られるように前記無段変速機12の変速比及び前記ホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧を制御する減速度制御の具体的動作を説明する。
まず、図4により要求減速度レベル判定制御の動作を説明すると、コントロールユニット21は、まず、ステップS1で、前記ポジションセンサ22及びBポジションスイッチ23からの信号に基づき、シフトレバー2のD→B操作、即ち、DポジションからBポジションへの操作が行われたか否かを判定する。
そして、D→B操作が行われたことを判定すれば、次にステップS2で、今回のBポジションへの操作前のシフトレバー2のDポジションでの滞在時間が所定時間、例えば1秒以下であったか否かを判定する。
今回のBポジションへの操作が、通常のドライブモードでの走行後の最初の操作であったとすると、その操作前のシフトレバー2のDポジションでの滞在時間は前記所定時間より長いはずであるから、今回のBポジションへの操作が通常のドライブモードでの走行後の最初の操作であったと判断され、その場合は、ステップS3で、今回のBポジションへの操作による要求減速度レベルNをレベル1と判定する。そして、ステップS4で、コントロールユニット21に備えられたメモリ21aに「1」を書き込む。
次に、ステップS1に戻り、再びシフトレバー2のD→B操作が行われたか否かを判定し、Bポジションに保持されている間、及び、その後のB→D操作によってポジションがDとされている間は、次にD→B操作が行われるまで、そのままステップS1のみを繰り返し実行する。
そして、前回のD→B操作の後、再びD→B操作が行われれば、ステップS2を再度実行し、今回のBポジションへの操作の前のDポジションでの滞在時間が前記所定時間以下であったか否かを判定し、所定時間以下のときは、ステップS5で、今回のD→B操作におけるDポジションへの操作前のポジションがBポジションであったか否かを判定する。
Dポジションへの操作前のポジションがBポジションであったとき、換言すれば、今回のD→B操作がB→D→B操作であったときは、その操作中におけるDポジションでの滞在時間が前記所定時間以下であるので、今回のB→D→B操作は、最初のD→B操作による要求減速度レベル1よりも、高いレベルの減速度を要求している可能性があると判断する。
つまり、運転者が初めからレベル1で得られる減速度よりも大きな減速度を要求しているときは、前記B→D→B操作が最初のD→B操作に連続して、一連のD→B→D→B操作として行われ、また、最初のD→B操作によって得られたレベル1の減速度では不十分で、さらに大きな減速度を求める場合は、D→B操作の後、改めてB→D→B操作が行われることになるが、いずれの場合にも、このような場合は、B→D→B操作におけるBポジションからDポジションへ戻した後のBポジションへの操作は直ちに行われるので、Dポジションでの滞在時間は前記所定時間以下になる。そこで、これらの場合は、運転者の要求減速度レベルNはレベル1より大きい可能性があると判断するのである。
これに対し、B→D→B操作において、BポジションからDポジションに戻した後、前記所定時間が経過した後に改めてBポジションへの操作が行われた場合は、BポジションからDポジションに戻す操作は、運転者がブレーキモードの走行を終了し、通常のドライブモードに戻すためのものと考えられるので、コントロールユニット21は、ステップS2から前記ステップS3を実行し、Dポジションに戻した後のBポジションへの操作は、ドライブモードでの走行中に行われた最初のD→B操作であると判定し、要求減速度レベルNをレベル1と判定する。
なお、前記ステップS5で、今回のD→B操作におけるDポジションへの操作前のポジションがBポジションでなかった場合、即ち、今回の操作が、P、RまたはNポジションからDポジションへ操作された後のBポジションへの操作である場合は、ドライブモードからブレーキモードへの切り換えのための最初のD→B操作であると考えられるので、この場合も、前記ステップS3で、要求減速度レベルNをレベル1と判定する。
そして、上記のようにして、今回のD→B操作が、要求減速度レベルNを上げるためのB→D→B操作として行われた可能性があると判断されれば、さらに、ステップS6で、このB→D→B操作の間、車両は減速状態にあったか否かをアクセル開度センサ24からの信号に基づいて判定し、アクセル開度が全閉もしくはこれに近いごく小さな開度のときは、減速状態にあったものと判定する。
B→D→B操作の間、運転者のアクセルペダルの踏み込みにより、車両が一時的にせよ非減速状態となったときは、Dポジションへの戻し操作は、一旦ブレーキモードを終了するためのものと判断されるので、この場合は、Dポジションでの滞在時間が前記所定時間以下であっても、コントローラ21はステップS6から前記ステップS3を実行し、今回のB→D→B操作による要求減速度レベルNをレベル1と判定する。
一方、今回のB→D→B操作において、Dポジションでの滞在時間が所定時間以下であり、かつ、この操作が車両減速状態を維持したまま行われたものであるときは、運転者が初めから大きな減速度を要求しているか、または、前回のD→B操作による減速度では不十分で、さらに大きな減速度を要求しているかのいずれかであると判断し、ステップS7で、前記ステップS4でメモリ21aに記録した前回のD→B操作の際に設定した要求減速度レベルNを読み出し、ステップS8で、これに1を加えて、要求減速度レベルNを一段階高める。そして、ステップS4で、この新たな要求減速度レベルNを前記メモリ21aに書き込む。
そして、このB→D→B操作が、減速状態が維持されている状態で、かつ、Dポジションでの滞在時間が所定時間以下の条件で繰り返されると、ステップS1、S2、S5〜S8、S4が繰り返し実行され、そのつど、要求減速度レベルNの値が1ずつ大きくされてメモリ21aに上書きされる。
例えば、ドライブモードでの走行中において、一連のD→B→D→B操作が行われ、或いは、D→B操作の後、改めてB→D→B操作が行われたときは、N=2となり、また、一連のD→B→D→B→D→B操作が行われ、或いは、D→B操作の後、B→D→B操作が断続的に2回行われたときは、N=3となる。つまり、所定の条件の下でのD→B操作の回数が要求減速度レベルNとなる。
一方、コントロールユニット21は、以上のような要求減速度レベルNの判定制御と並行して、そのレベルNに対応する車両減速度が得られるように減速度制御を実行する。
この制御は、図5のフローチャートに従って行われ、まずステップS11で、前記要求減速度レベル判定制御のステップS4でメモリ21aに書き込まれた現時点の要求減速度レベルNを読み込む。
そして、ステップS12で、この要求減速度レベルNがレベル1であるか否かを判定し、レベル1と判定されたときは、ステップS13で、目標減速度Fが設定される。
ここで、目標減速度Fは、要求減速度レベルNがレベル1のときは所定量に設定され、レベル2以上のときはレベル1からレベルが1段高くなるごとに所定量ずつ加算され、レベル1では第1所定量、レベル2では第1所定量+第2所定量、レベル3では第1所定量+第2所定量+第3所定量…となる。
その場合に、この実施形態では、図6に示すように、要求減速度レベルNがレベル2以上のときには、レベル1からレベルが高くなるごとに加算される減速度の増加量は一定とされ、その値をΔFとすると、第2所定量、第3所定量、…、第N所定量はそれぞれ、ΔFとされる。
一方、要求減速度レベルNがレベル1のときは、減速度の増加量は、レベル2以上のときにレベルが高くなるごとに加算される減速度の増加量ΔFより小さく設定され、第1所定量は(1/2)×ΔFとされている。したがって、目標減速度Fは、下記数1で示す式に従って設定される。
なお、この実施形態では、第1所定量は(1/2)×ΔFとされ、第2所定量はΔFとされ、第1所定量は第2所定量の二分の一に設定されているが、第1所定量は第2所定量より小さく設定されるのであれば、これに限定されるものでなく、例えば第1所定量を第2所定量の三分の一に設定するようにしてもよい。また、要求減速度レベルNがレベル2以上のときは、レベルが高くなることによる減速度の増加量が一定のΔFとされているが、減速度の増加量を各レベルで異なるように設定することも可能である。
そして、コントロールユニット21は、ステップS14で、ステップS13において上記のようにして設定された目標減速度Fとなるように、即ち目標減速度(1/2)×ΔFとなるように、ホイールブレーキ装置15、15のホイールブレーキ制御量、即ちブレーキ圧を高くするブレーキ圧制御量を算出し、ステップ15で、ステップS14において算出されたホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧制御量に対応する制御信号を油圧制御回路16に出力してホイールブレーキ装置15、15による減速制御を実行する。
一方、前記ステップS12で、現在の要求減速度レベルNがレベル1でないと判定されたときは、ステップS16で、ステップS11で読み込まれた現在の要求減速度レベルNに応じて減速度の増加量が設定される。上記のように、この実施形態では、減速度の増加量はΔFに設定される。
ステップS16において現在の要求減速度レベルNに応じた減速度の増加量が設定されると、ステップS17で、この減速度の増加量ΔFを得るために、コントロールユニット21は、ステップS16で設定された減速度の増加量と変速機12の現減速比と車速とに基づいて無段変速機12の減速比の増加量を算出する。なお、コントロールユニット21は、変速機12の現減速比と車速等の情報を備えている。
そして、コントロールユニット21は、ステップS18で、変速機12による減速制御が可能であるか否かを判定し、ステップS12においてレベル1でないと判定された要求減速度レベルNがレベル2以上のときに、変速機12による減速度制御を許可するか禁止するかを判定する。
変速機12による減速度制御を許可するか禁止するかは、変速機12の現減速比とステップS17で算出された減速比の増加量と車速とに基づいて、変速機12による減速度制御を実行した減速比増加後のエンジン回転数を算出し、算出したエンジン回転数が許容回転数、例えば7000rpm以下であるか否かで判定する。
ステップS18で変速機12による減速度制御を禁止すると判定されたときは、即ち変速機12による減速度制御後のエンジン回転数が許容回転数以下でないと判定されたときは、ステップS19で、ステップS16で設定された減速度の増加量ΔFを得るための、ホイールブレーキ装置15、15のホイールブレーキ制御量、即ちブレーキ圧を高くするブレーキ圧制御量を算出し、ステップ15で、ステップS19において算出されたホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧制御量に対応する制御信号を油圧制御回路16に出力してホイールブレーキ装置15、15によるさらなる減速制御を実行する。
一方、ステップS18で変速機12による減速度制御を許可すると判定されたときは、即ち変速機12による減速度制御後のエンジン回転数が許容回転数以下であると判定されたときは、ステップS15で、ステップS17において算出された減速比の増加量に対応する制御信号を無段変速機12に出力して無段変速機12の変速比を減速側に変化させて無段変速機12によるさらなる減速制御を実行する。
例えば、ステップS11で読み込まれる現在の要求減速度レベルNが、レベル1からレベル2になると、ステップS12でレベル1でないと判定され、ステップS16でレベル2に応じて減速度の増加量ΔFが設定され、ステップS17で、無段変速機12の減速比の増加量が算出され、ステップS18で変速機12による減速制御が可能であるか否かが判定される。
そして、ステップS18で変速機12による減速度制御を禁止すると判定されたときは、ステップS19でホイールブレーキ装置15、15のホイールブレーキ制御量が算出され、ステップS15でホイールブレーキ装置15、15によるさらなる減速制御が実行され、一方、ステップS18で変速機12による減速度制御を許可すると判定されたときは、ステップS15で無段変速機12によるさらなる減速制御が実行される。
ステップS11で読み込まれる現在の要求減速度レベルNが、レベル3以上の場合についてもレベル2の場合と同様に、レベルが高くなるごとに、ステップS16でレベルNに応じて減速度の増加量ΔFが設定され、ステップS17で無段変速機12の減速比の増加量が算出され、ステップS18で変速機12による減速制御が可能であるか否かが判定される。
そして、ステップS18で変速機12による減速度制御を禁止すると判定されたときは、ステップS19でホイールブレーキ装置15、15のホイールブレーキ制御量が算出され、ステップS15でホイールブレーキ装置15、15によるさらなる減速制御が実行され、一方、ステップS18で変速機12による減速度制御を許可すると判定されたときは、ステップS15で無段変速機12によるさらなる減速制御が実行される。
これにより、ドライブモードでの走行中に、シフトレバーがDポジションからBポジションに操作されてブレーキモードに移行したときに、D→B操作の回数に基づいて運転者の要求減速度レベルNが判定されると共に、そのレベルNに応じた車両減速度が得られることになり、運転者の要求に適合した減速度での減速走行が実現される。
以上のように、要求減速度レベルNがレベル1のときは、ホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧を高くすることにより第1所定量の車両減速度が得られるようにホイールブレーキ装置15、15を制御すると共に、要求減速度レベルNがレベル2のときは、レベル1からレベル2になるときに無段変速機12の変速比を減速側に変化させる、あるいはホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧をさらに高くすることにより第1所定量に第2所定量を加えた車両減速度が得られるように無段変速機12あるいはホイールブレーキ装置15を制御し、第1所定量は第2所定量より小さくされるので、最初のD→B操作による減速度制御の実行が抑制されることになる。
DポジションとBポジションの間の操作力を軽くした結果、シフトレバー2の不用意なBポジションへの操作が起きやすくなっても、これによる予期せぬ急減速やショックの発生等の車両の予期せぬ挙動が抑制され、乗員に違和感を与えることが少なくなる。
このホイールブレーキ装置15、15による減速度制御は、車両を直接的に制動するものであるので、無段変速機12の変速比を減速側に変化させることによりエンジン回転数を上昇させてエンジンの回転抵抗を増大させる減速度制御に比して、減速度の小さな制御を精度良く行うことができる。
一方、最初のD→B操作の後、B→D→B操作が行われたときは、上記のような不用意な操作ではなく、より大きな減速度を得るために運転者が意識的に操作したものと判断されるから、この場合は、即ち要求減速度レベルがレベル2のときは、第1所定量に該第1所定量より大きな第2所定量を加えた車両減速度を得るための制御が行われる。
その結果、シフトレバー2のDポジション、Bポジション間の操作力を軽くして、ブレーキモードでの軽快な操作性と耐誤操作性とを両立させながら、運転者の要求に応じた減速度が得られる車両が実現される。
そして、本実施形態によれば、シフトレバー2のDポジション、Bポジション間の操作だけで運転者の要求減速度レベルNが判定され、そのレベルNに応じた車両減速度が得られるので、運転者の要求に応じた車両減速度を実現するために、例えばBポジションの両側にプラスポジションとマイナスポジションを設けるといった構成が不要となる。
その結果、これらのポジションへの操作を検出するスイッチが不要となって、構造の簡素化や部品点数の削減が実現されると共に、シフトレバーの操作領域の拡大が回避されて、シフトレバー周辺のデザインやレイアウトの自由度が向上することになる。
また、本実施形態によれば、シフトレバー2の操作ポジションとして、前記Dポジションに隣接してNポジションが設けられている場合に、Dポジション、Bポジション間のシフトレバー2の操作方向がDポジション、Nポジション間の操作方向と異なり、かつ、DポジションとBポジションを含むシフトレバー2の操作線上には、これらのポジション以外のポジションが存在しないので、例えばB→D操作の際に誤ってNポジションに操作するなど、DポジションまたはBポジションへの操作時に誤って他のポジションに操作することが確実に防止される。
特に、DポジションとBポジションとの間のシフトレバー2の操作力を小さく設定して、軽快な操作性を実現させた場合にも、この発明によれば、上記のような他のポジションへの誤操作が効果的に防止され、軽快でかつ確実な操作性が得られる。
以上の実施形態は、無段変速機12を搭載した車両の場合のものであるが、自動変速機を搭載した車両では、D→B操作が行われれば第1所定量の車両減速度が得られるようにホイールブレーキ装置15、15を制御し、さらにB→D→B操作が行われれば一段シフトダウンするなど、要求減速度レベルNがレベル2以上のときに、自動変速機の変速段をシフトダウンさせるようにすることも可能である。
図7は、本発明の第2実施形態に係る車両の減速度制御動作を示すフローチャートである。第2実施形態に係る車両は、図3に示す第1実施形態に係る車両の無段変速機12に代えて、例えば10段などの所定の変速段を有する自動変速機が搭載されることを除き、図3に示す第1実施形態に係る車両と同様の構成を備えている。
第2実施形態に係る車両においても、第1実施形態に係る車両と同様に、コントロールユニット21は、まず、図4に示すフローチャートに従って、ポジションセンサ22、Bポジションスイッチ23及びアクセル開度センサ24からの信号に基づき、シフトレバーの操作に応じた運転者の要求減速度レベルNを判定する。
そして、第2実施形態に係る車両では、コントロールユニット21は、図7のフローチャートに従って、そのレベルNに対応する車両減速度が得られるように減速度制御を実行する。
第1実施形態に係る車両と同様に、ステップS11で、現時点の要求減速度レベルNを読み込み、ステップS12で、要求減速度レベルNがレベル1であるか否かを判定し、レベル1と判定されたときは、ステップS13で、目標減速度Fが設定される。
目標減速度Fは、この実施形態では、要求減速度レベルNがレベル1のときは、減速度の増加量である第1所定量に設定され、第1所定量は、要求減速度レベルNがレベル2のときにレベル1からレベル2になるときに前記自動変速機の変速段を一段シフトダウンさせることにより得られる車両減速度の増加量である第2所定量ΔFの二分の一、即ち(1/2)×ΔFに設定される。
目標減速度Fはまた、要求減速度レベルNがレベル2以上のときは、レベル1からレベルが高くなるごとに、前記自動変速機の変速段を一段シフトダウンさせることにより得られる車両減速度の増加量である第N所定量が加えられる。
なお、この実施形態においても、第1所定量は(1/2)×ΔFとされ、第2所定量はΔFとされ、第1所定量は第2所定量の二分の一に設定されているが、第1所定量は第2所定量より小さく設定されるのであれば、これに限定されるものでなく、例えば第1所定量を第2所定量の三分の一に設定するようにしてもよい。
そして、コントロールユニット21は、ステップS14で、ステップS13において設定された目標減速度Fとなるように、ホイールブレーキ装置15、15のホイールブレーキ制御量を算出し、ステップ15でホイールブレーキ装置15、15による減速制御を実行する。
一方、前記ステップS12で、現在の要求減速度レベルNがレベル1でないと判定されたときは、ステップS28で、前記自動変速機による減速制御が可能であるか否かを判定し、ステップS12においてレベル1でないと判定された要求減速度レベルNがレベル2以上のときに、前記自動変速機による減速度制御を許可するか禁止するかを判定する。
前記自動変速機による減速度制御を許可するか禁止するかは、前記自動変速機の変速段を現変速段から一段シフトダウンさせたときの減速比と車速とに基づいて、前記自動変速機による減速度制御を実行した減速比増加後のエンジン回転数を算出し、算出したエンジン回転数が許容回転数、例えば7000rpm以下であるか否かで判定する。
ステップS28で前記自動変速機による減速度制御を禁止すると判定されたときは、即ち前記変速機による減速度制御後のエンジン回転数が許容回転数以下でないと判定されたときは、ステップS29で、前記自動変速機の変速段を現変速段から一段シフトダウンさせることにより得られる車両減速度の増加量である第N所定量を得るための、ホイールブレーキ装置15、15のホイールブレーキ制御量、即ちブレーキ圧を高くするブレーキ圧制御量を算出し、ステップ15で、ステップS29において算出されたホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧制御量に対応する制御信号を油圧制御回路16に出力してホイールブレーキ装置15、15によるさらなる減速制御を実行する。
一方、ステップS28で前記自動変速機による減速度制御を許可すると判定されたときは、即ち前記変速機による減速度制御後のエンジン回転数が許容回転数以下であると判定されたときは、ステップS15で、自動変速機の変速段を一段シフトダウンさせる制御信号を自動変速機に出力して自動変速機の変速段を一段シフトダウンさせて自動変速機によるさらない減速制御を実行する。
これにより、第2実施形態に係る車両においても、ドライブモードでの走行中に、シフトレバーがDポジションからBポジションに操作されてブレーキモードに移行したときに、D→B操作の回数に基づいて運転者の要求減速度レベルNが判定されると共に、そのレベルNに応じた車両減速度が得られることになり、運転者の要求に適合した減速度での減速走行が実現される。
そして、要求減速度レベルNがレベル1のときは、ホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧を高くすることにより第1所定量の車両減速度が得られるようにホイールブレーキ装置15、15を制御すると共に、要求減速度レベルNがレベル2のときは、レベル1からレベル2になるときに自動変速機の変速段を一段シフトダウンさせる、あるいはホイールブレーキ装置15、15のブレーキ圧をさらに高くすることにより第1所定量に第2所定量を加えた車両減速度が得られるように自動変速機あるいはホイールブレーキ装置15を制御し、第1所定量は第2所定量より小さくされる。これにより、最初のD→B操作による減速度制御の実行が抑制されることになる。
したがって、第2実施形態に係る車両においても、DポジションとBポジションの間の操作力を軽くした結果、シフトレバーの不用意なBポジションへの操作が起きやすくなっても、これによる予期せぬ急減速やショックの発生等の車両の予期せぬ挙動が抑制され、乗員に違和感を与えることが少なくなる。
このホイールブレーキ装置15、15による減速度制御は、車両を直接的に制動するものであるので、自動変速機の変速段をシフトダウンさせることによりエンジン回転数を上昇させてエンジンの回転抵抗を増大させる減速度制御に比して、減速度の小さな制御を精度良く行うことができる。
一方、最初のD→B操作の後、B→D→B操作が行われたときは、上記のような不用意な操作ではなく、より大きな減速度を得るために運転者が意識的に操作したものと判断されるから、この場合は、即ち要求減速度レベルがレベル2のときは、第1所定量に該第1所定量より大きな第2所定量を加えた車両減速度を得るための制御が行われる。
その結果、シフトレバーのDポジション、Bポジション間の操作力を軽くして、ブレーキモードでの軽快な操作性と耐誤操作性とを両立させながら、運転者の要求に応じた減速度が得られる車両が実現される。
この実施形態ではまた、要求減速度レベルがレベル2のときに自動変速機による減速度制御を許可するか禁止するかが判定され、自動変速機による減速度制御が禁止される場合、レベル1からレベル2になるときに第1所定量に第2所定量を加えた車両減速度を得るようにホイールブレーキ装置15、15がさらに制御される。これにより、自動変速機による減速度制御を行うとエンジン回転数が許容回転数より上昇する場合など、自動変速機による減速度制御が禁止される場合においても、ブレーキモードでの軽快な操作性と耐誤操作性とを両立させながら、運転者の要求に応じた減速度が得られる。
なお、前述した実施形態では、変速機による減速制御が可能であるか否かの判定を、減速度制御後のエンジン回転数が許容回転数以下であるか否かに基づいて行っているが、変速機による減速度制御後のエンジン回転数の上昇量や車速等に基づき急減速やショックが生じる場合にも、変速機による減速制御を禁止するようにしてもよい。