本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には、同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、電気特性の優れたトランジスタの構造、及びその作製方法について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に示すトランジスタの上面図及び断面図である。図1(A)は、本実施の形態に示すトランジスタの上面図であり、図1(B)は、図1(A)の一点鎖線A−Bに対応する、トランジスタのチャネル幅方向の断面図であり、図1(C)は図1(A)の一点鎖線C−Dに対応する、トランジスタのチャネル長方向の断面図であり、図1(D)は図1(A)の一点鎖線E−Fに対応する、トランジスタのチャネル長方向の断面図である。図1(C)は、酸化物半導体膜においてチャネル領域が形成される領域、即ち中央部の断面図であり、図1(D)は、酸化物半導体膜において端部における領域の断面図である。なお、図1(A)では、明瞭化のため、トランジスタの構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜107、絶縁膜117、絶縁膜119等)を省略している。
図1(A)乃至図1(D)に示すトランジスタは、基板101上に設けられる酸化絶縁膜103と、酸化絶縁膜103上に設けられる酸化物半導体膜111と、酸化物半導体膜111に接する、ソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極121a、121bと、酸化物半導体膜111の少なくとも一部と接するゲート絶縁膜107と、ゲート絶縁膜107上であって、且つ酸化物半導体膜111と重畳するゲート電極115とを有する。
また、酸化絶縁膜103、ゲート絶縁膜107、及びゲート電極115上に絶縁膜117、絶縁膜119が積層されていてもよい。また、絶縁膜119上に、一対の電極121a、121bに接する配線123a、123bを有する。
図1に示すトランジスタにおいて、酸化物半導体膜111は、第1の領域111a及び第2の領域111b、111cを有する。第1の領域111aは、n−型の酸化物半導体であり、第2の領域111b、111cは、i型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体である。第1の領域111aは、酸化物半導体膜111の端部を除く領域であり、ゲートと重畳するチャネル領域、並びにソース領域及びドレイン領域として機能する。第2の領域は、酸化物半導体膜の端部であって、かつ少なくともゲート電極と重畳する領域であり、高抵抗領域として機能する。なお、酸化物半導体膜111の端部とは、少なくとも酸化物半導体膜111の側面を含む。さらには、酸化物半導体膜111の上面の一部を含む領域を含んでもよく、代表的には酸化物半導体膜111の側面から、10nm以上500nm以下、好ましくは20nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上200nm以下の領域である。
なお、図1(A)においては、第2の領域111bと、第2の領域111cとは分離されているが、酸化物半導体膜111のチャネル長方向及びチャネル幅方向における端部に第2の領域が形成され閉曲線状であってもよい。
第1の領域111aは、第2の領域111b、111cと比較して、導電率が高い。代表的には、第1の領域111aの導電率は、1×10−9S/cm以上10S/cm以下である。
また、第1の領域111aは、第2の領域111b、111cと比較して、キャリア密度が高い。
図1(C)に示すように、酸化物半導体膜111において、チャネル領域を含む第1の領域111aをn−型の酸化物半導体とすることで、チャネル領域のキャリア密度を高めることができ、エネルギーバンド構造におけるフェルミ準位が伝導帯側に近づく。この結果、トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を上昇させることができる。
また、チャネル領域を含む第1の領域111aをn−型の酸化物半導体とすることで、チャネル領域と、第2の領域111b、111cとの接合部においてバンドの曲がりが生じるため、該接合部においてエネルギー障壁が形成される。つまり、第2の領域111b、111cにおけるi型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体の伝導帯より、第1の領域111aにおけるn−型の酸化物半導体の伝導帯が下がることによって伝導帯のエネルギー差が生じ、それがエネルギー障壁となる。その結果、酸化物半導体膜の端部における寄生チャネルの発生を抑制することが可能である。
ここで、n型酸化物半導体である第1の領域111aと、i型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体である第2の領域111b、111cとが接した状態におけるエネルギーバンド構造について、図17を用いて以下に説明する。
図17(A)は、本実施の形態におけるトランジスタの上面図を示しており、図17(B)は該トランジスタの一点鎖線A−B断面における酸化物半導体膜111のエネルギーバンド図を示す。
図17(B)は、真空準位(Evacとする。)、第1の領域111a、第2の領域111b、111cのエネルギーバンド構造の関係を示している。ここで、IPはイオン化ポテンシャル、Eaは電子親和力、Egはバンドギャップを示す。また、Ecは伝導帯の下端、Evは価電子帯の上端、Efはフェルミ準位を示す。
第2の領域111b、111cは高純度化された酸化物半導体であり、極めてキャリア密度が低いためEfはEcおよびEvの概ね中央にあるとする。また、第1の領域111aはキャリア密度の高いn−型の酸化物半導体であり、第2の領域111b、111cと比べてEfがEcに近い位置にあるとする。
図17(B)に示すように、第1の領域111a及び第2の領域111b、111cが接触すると、フェルミ準位が一致するようにキャリアの移動が起こり、それぞれのバンド端が曲がる。
このように、第1の領域111aと第2の領域111b、111cとが形成されることにより、第2の領域111b、111cの伝導帯より、第1の領域111aの伝導帯が下がることによって伝導帯のエネルギー差(qVbi(ビルドインポテンシャルともいう。))が生じ、それがエネルギー障壁となる。その結果、酸化物半導体膜の端部における寄生チャネルの発生を抑制することが可能である。
また、図1(D)に示すように、酸化物半導体膜111において、端部である第2の領域111b、111cを、i型(真性または実質的に真性)である酸化物半導体とすることで、第2の領域を高抵抗領域とすることができるため、酸化物半導体膜の端部における寄生チャネルの発生を抑制することが可能である。
本実施の形態においては、第1の領域111aにドーパントを添加することで、第2の領域111b、111cよりキャリア密度を高めることが可能であり、導電率を高めることができる。
第1の領域111aは、ドーパントとして、ホウ素、窒素、リン、及びヒ素の一以上が含まれる。または、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンの一以上が含まれる。なお、ドーパントとして、ホウ素、窒素、リン、及びヒ素の一以上と、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンの一以上とが適宜組み合わされて含まれていてもよい。
また、第1の領域111aに含まれるドーパントの濃度は、上記導電率を満たすような濃度とすればよく、代表的には5×1018atoms/cm3以上1×1021atoms/cm3以下、好ましくは5×1018atoms/cm3以上5×1019atoms/cm3未満とする。
第1の領域111aはドーパントを含むため、第2の領域111b、111cと比較して導電性を高めることができる。なお、ドーパント濃度を増加させすぎると、キャリアの移動が阻害されてしまい、ドーパントを含む一対の第2の領域111b、111cの導電性を低下させることになる。
酸化物半導体膜111において、第1の領域111a及び第2の領域111b、111cが同じ結晶構造を有していてもよい。例えば、第1の領域111a及び第2の領域111b、111cが、単結晶構造、多結晶構造、または非晶質構造であってもよい。または、第1の領域111a及び第2の領域111b、111cがCAAC−OSで形成されていてもよい。
または、酸化物半導体膜111において、第1の領域111a及び第2の領域111b、111cが異なる結晶構造を有していてもよい。例えば、第1の領域111aが非晶質構造で、第2の領域111b、111cが単結晶構造または多結晶構造であってもよい。または、第1の領域111aが非晶質構造で、第2の領域111b、111cがCAAC−OSであってもよい。
なお、本実施の形態に示すトランジスタは、酸化物半導体膜111において、第2の領域111b、111cとしてCAAC−OSが適用される場合に特に有用である。CAAC−OSで形成された酸化物半導体は、側面(端面)から酸素が脱離しやすいからである。なお、この点については、下記の参考例1において詳述する。
以下に、トランジスタの他の構成の詳細について説明する。
基板101の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等を、基板101として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板101として用いてもよい。
また、基板101として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、酸化絶縁膜103及びトランジスタを形成してもよい。または、基板101と酸化絶縁膜103の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板101より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、半導体装置は耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
酸化絶縁膜103は、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜を用いることが好ましい。加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜は、加熱により酸化物半導体膜に酸素を拡散させることができる。酸化絶縁膜103の代表例としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等がある。
酸化絶縁膜103は、50nm以上、好ましくは200nm以上3000nm以下、好ましくは300nm以上500nm以下とする。酸化絶縁膜103を厚くすることで、酸化絶縁膜103の酸素脱離量を増加させることができると共に、酸化絶縁膜103及び後に形成される酸化物半導体膜との界面における界面準位を低減することが可能である。
ここで、「加熱により酸素の一部が脱離する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上であることをいう。
ここで、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量の測定方法について、以下に説明する。
TDS分析したときの気体の脱離量は、スペクトルの積分値に比例する。このため、絶縁膜のスペクトルの積分値と、標準試料の基準値に対する比とにより、気体の放出量を計算することができる。標準試料の基準値とは、所定の原子を含む試料の、スペクトルの積分値に対する原子の密度の割合である。
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、及び絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の脱離量(NO2)は、数式1で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるスペクトルの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCH3OHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子及び質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
NO2=NH2/SH2×SO2×α (数式1)
NH2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。αは、TDS分析におけるスペクトル強度に影響する係数である。数式1の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記絶縁膜の酸素の脱離量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cm2の水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定する。
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の脱離量についても見積もることができる。
なお、NO2は酸素分子の脱離量である。絶縁膜においては、酸素原子に換算したときの酸素の放出量は、酸素分子の脱離量の2倍となる。
上記構成において、加熱により酸素放出される絶縁膜は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiOX(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiOX(X>2))とは、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数及び酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した値である。
酸化絶縁膜103から酸化物半導体膜111に酸素が供給されることで、酸化絶縁膜103及び酸化物半導体膜111の界面準位を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して生じうる電荷などが、上述の酸化絶縁膜103及び酸化物半導体膜111の界面に捕獲されることを抑制することができ、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。
即ち、酸化物半導体膜111に酸素欠損が生じると、酸化絶縁膜103と酸化物半導体膜111との界面において電荷が捕獲され、当該電荷がトランジスタの電気特性に影響してしまうところ、酸化絶縁膜103に、加熱により酸素脱離される絶縁膜を設けることで、酸化物半導体膜111及び酸化絶縁膜103の界面準位を低減し、酸化物半導体膜111及び酸化絶縁膜103の界面における電荷捕獲の影響を小さくすることができる。
酸化物半導体膜111としては、少なくともインジウム(In)若しくは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。または、InとZnの双方を含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それらと共に、スタビライザーの一または複数を有することが好ましい。
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)等がある。
また、他のスタビライザーとしては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等がある。
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属酸化物であるIn−Zn系金属酸化物、Sn−Zn系金属酸化物、Al−Zn系金属酸化物、Zn−Mg系金属酸化物、Sn−Mg系金属酸化物、In−Mg系金属酸化物、In−Ga系金属酸化物、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系金属酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系金属酸化物、In−Sn−Zn系金属酸化物、Sn−Ga−Zn系金属酸化物、Al−Ga−Zn系金属酸化物、Sn−Al−Zn系金属酸化物、In−Hf−Zn系金属酸化物、In−La−Zn系金属酸化物、In−Ce−Zn系金属酸化物、In−Pr−Zn系金属酸化物、In−Nd−Zn系金属酸化物、In−Sm−Zn系金属酸化物、In−Eu−Zn系金属酸化物、In−Gd−Zn系金属酸化物、In−Tb−Zn系金属酸化物、In−Dy−Zn系金属酸化物、In−Ho−Zn系金属酸化物、In−Er−Zn系金属酸化物、In−Tm−Zn系金属酸化物、In−Yb−Zn系金属酸化物、In−Lu−Zn系金属酸化物、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系金属酸化物、In−Hf−Ga−Zn系金属酸化物、In−Al−Ga−Zn系金属酸化物、In−Sn−Al−Zn系金属酸化物、In−Sn−Hf−Zn系金属酸化物、In−Hf−Al−Zn系金属酸化物を用いることができる。
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系金属酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)、あるいはIn:Ga:Zn=3:1:2(=1/2:1/6:1/3)の原子数比のIn−Ga−Zn系金属酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系金属酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
例えば、In−Sn−Zn系金属酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系金属酸化物でも、バルク内欠陥密度を低くすることにより移動度を上げることができる。
また、酸化物半導体膜111に形成することが可能な金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
また、酸化物半導体膜111は、酸化物半導体膜は、例えば非単結晶を有してもよい。
非単結晶は、例えば、CAAC(C Axis Aligned Crystal)、多結晶、微結晶、非晶質部を有する。非晶質部は、微結晶、CAACよりも欠陥準位密度が高い。また、微結晶は、CAACよりも欠陥準位密度が高い。なお、CAACを有する酸化物半導体を、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)とよぶ。
酸化物半導体膜は、例えばCAAC−OSを有してもよい。CAAC−OSは、例えば、c軸配向し、a軸または/およびb軸はマクロに揃っていない。
酸化物半導体膜は、例えば微結晶を有してもよい。なお、微結晶を有する酸化物半導体を、微結晶酸化物半導体と呼ぶ。微結晶酸化物半導体膜は、例えば、1nm以上10nm未満のサイズの微結晶(ナノ結晶ともいう。)を膜中に含む。または、微結晶酸化物半導体膜は、例えば、1nm以上10nm未満の結晶部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体を有している。
酸化物半導体膜は、例えば非晶質部を有してもよい。なお、非晶質部を有する酸化物半導体を、非晶質酸化物半導体と呼ぶ。非晶質酸化物半導体膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質酸化物半導体膜は、例えば、完全な非晶質であり、結晶部を有さない。
なお、酸化物半導体膜が、CAAC−OS、微結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体の混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶質酸化物半導体の領域と、微結晶酸化物半導体の領域と、CAAC−OSの領域と、を有する。また、混合膜は、例えば、非晶質酸化物半導体の領域と、微結晶酸化物半導体の領域と、CAAC−OSの領域と、の積層構造を有してもよい。
なお、酸化物半導体膜は、例えば、単結晶を有してもよい。
酸化物半導体膜は、複数の結晶部を有し、当該結晶部のc軸が被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃っていることが好ましい。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。そのような酸化物半導体膜の一例としては、CAAC−OS膜がある。
CAAC−OS膜は、完全な非晶質ではない。CAAC−OS膜は、例えば、結晶部及び非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜を有している。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OSに含まれる非晶質部と結晶部との境界、結晶部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OSには明確な粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OSは、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、例えば、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃い、かつab面に垂直な方向から見て金属原子が三角形状または六角形状に列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸及びb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、80°以上100°以下、好ましくは85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−10°以上10°以下、好ましくは−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。なお、酸化物半導体膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OSへ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。結晶部は、成膜したとき、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行ったときに形成される。従って、結晶部のc軸は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃う。
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
また、酸化物半導体膜111は、複数の酸化物半導体膜が積層された構造でもよい。例えば、酸化物半導体膜111を、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の積層として、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、異なる組成の金属酸化物を用いてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜に二元系金属酸化物乃至四元系金属酸化物の一を用い、第2の酸化物半導体膜に第1の酸化物半導体膜と異なる二元系金属酸化物乃至四元系金属酸化物を用いてもよい。
また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の構成元素を同一とし、両者の組成を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=2:1:3としてもよい。
この時、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜のうち、ゲート電極に近い側(チャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの含有率をIn>Gaとするとよい。またゲート電極から遠い側(バックチャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの含有率をIn≦Gaとするとよい。
酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、Inの含有率を多くすることにより、より多くのs軌道が重なるため、In>Gaの組成となる酸化物はIn≦Gaの組成となる酸化物と比較して高い移動度を備える。また、GaはInと比較して酸素欠損の形成エネルギーが大きく酸素欠損が生じにくいため、In≦Gaの組成となる酸化物はIn>Gaの組成となる酸化物と比較して安定した特性を備える。
チャネル側にIn>Gaの組成となる酸化物半導体を適用し、バックチャネル側にIn≦Gaの組成となる酸化物半導体を適用することで、トランジスタの電界効果移動度および信頼性をさらに高めることが可能となる。
また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、結晶性の異なる酸化物半導体を適用してもよい。すなわち、単結晶酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体、またはCAAC−OSを適宜組み合わせた構成としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の少なくともどちらか一方に非晶質酸化物半導体を適用すると、酸化物半導体膜111の内部応力や外部からの応力を緩和し、トランジスタの特性ばらつきが低減され、また、トランジスタの信頼性をさらに高めることが可能となる。
一方で、非晶質酸化物半導体は水素、水等のドナーとなる不純物を吸収しやすく、また、水素により酸素欠損が生じやすいためn型化(低抵抗化)されやすい。
酸化物半導体膜111の厚さは、1nm以上50nm以下、更に好ましくは1nm以上30nm以下、更に好ましくは1nm以上10nm以下、更に好ましくは3nm以上7nm以下とすることが好ましい。
酸化物半導体膜111において、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度は、1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは2×1016atoms/cm3以下であることが望ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流の上昇の原因となるためである。
酸化物半導体膜111の第1の領域111aには、5×1018atoms/cm3以下の窒素が含まれてもよい。
酸化物半導体膜111は、水素濃度を5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とすることが好ましい。酸化物半導体及び水素の結合により、キャリアである電子が生じてしまう。これらのため、酸化物半導体膜111の第1の領域111a中の水素濃度を低減することで、しきい値電圧の変動を低減することができる。
ゲート絶縁膜107としては、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn系金属酸化膜などを用いればよく、積層または単層で設ける。また、ゲート絶縁膜107において酸化物半導体膜111に接する側に、酸化絶縁膜103に示すような、加熱により酸素が脱離する酸化絶縁膜を用いてもよい。ゲート絶縁膜107に加熱により酸素が脱離する膜を用いることで、酸化物半導体膜111及びゲート絶縁膜107の界面における界面準位を低減することが可能であり、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。また、ゲート絶縁膜107のゲート電極側に、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜を設けることで、酸化物半導体膜111からの酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜111への酸素の侵入を防ぐことができる。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
また、ゲート絶縁膜107として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
ゲート絶縁膜107の厚さは、5nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは10nm以上30nm以下とするとよい。
ゲート電極115は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極115は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
また、ゲート電極115は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
また、ゲート電極115とゲート絶縁膜107との間に、In−Ga−Zn系酸窒化物半導体膜、In−Sn系酸窒化物半導体膜、In−Ga系酸窒化物半導体膜、In−Zn系酸窒化物半導体膜、Sn系酸窒化物半導体膜、In系酸窒化物半導体膜、金属窒化膜(InN、ZnN等)等を設けることが好ましい。これらの膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、酸化物半導体の電子親和力よりも大きい値であるため、酸化物半導体を用いたトランジスタのしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。例えば、In−Ga−Zn系酸窒化物半導体膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜111より高い窒素濃度、具体的には7原子%以上のIn−Ga−Zn系酸窒化物半導体膜を用いる。
一対の電極121a、121bは導電材料として、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
絶縁膜117、119は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の無機材料、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、エポキシ樹脂等の有機材料、BPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass)等を用いればよく、積層または単層で設ける。なお、絶縁膜117を積層構造とし、ゲート電極と接する側の絶縁膜として、酸化絶縁膜103と同様に、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成してもよい。また、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜上に、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等の、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜を設けることで、酸化物半導体膜111からの酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜111への酸素の侵入を防ぐことができる。
配線123a、123bは、一対の電極121a、121bに列挙する材料を適宜用いる。
なお、本実施の形態に示すトランジスタは、電力を制御する電力用半導体素子、代表的にはパワーMOSFETとして用いることができる。
次に、図1に示すトランジスタの作製方法について、図2を用いて説明する。なお、各図において、(A)、(C)、(E)、(G)、(I)は図1(B)に示すA−B断面図(トランジスタのチャネル幅方向)の作製工程を説明し、(B)、(D)、(F)、(H)、(J)は図1(C)に示すC−D断面図(トランジスタのチャネル長方向)の作製工程を説明する。
図2(A)、図2(B)に示すように、基板101上に酸化絶縁膜103を形成する。次に、酸化絶縁膜103上に酸化物半導体膜104を形成する。
なお、酸化絶縁膜103を形成する前に、加熱処理またはプラズマ処理により、基板に含まれる水素または水を脱離させることが好ましい。この結果、後の加熱処理において、酸化絶縁膜及び酸化物半導体膜中に水素または水が拡散することを防ぐことができる。なお、加熱処理は、不活性雰囲気、減圧雰囲気または乾燥空気雰囲気にて、100℃以上基板の歪み点未満の温度で行う。また、プラズマ処理は、希ガス、酸素、窒素または酸化窒素(亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素等)を用いる。
酸化絶縁膜103は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。
加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜をスパッタリング法により形成する場合は、成膜ガス中の酸素量が高いことが好ましく、酸素、または酸素及び希ガスの混合ガス等を用いることができる。代表的には、成膜ガス中の酸素濃度を6%以上100%以下にすることが好ましい。
加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜の代表例として酸化シリコン膜を形成する場合、石英(好ましくは合成石英)をターゲットに用い、基板温度30℃以上450℃以下(好ましくは70℃以上200℃以下)、基板とターゲットの間の距離(T−S間距離)を20mm以上400mm以下(好ましくは40mm以上200mm以下)、圧力を0.1Pa以上4Pa以下(好ましくは0.2Pa以上1.2Pa以下)、高周波電源を0.5kW以上12kW以下(好ましくは1kW以上5kW以下)、成膜ガス中のO2/(O2+Ar)割合を1%以上100%以下(好ましくは6%以上100%以下)として、RFスパッタリング法により酸化シリコン膜を形成することが好ましい。なお、石英(好ましくは合成石英)ターゲットに代えてシリコンターゲットを用いることもできる。なお、成膜ガスとしては、酸素のみを用いてもよい。
また、酸化絶縁膜103としてCVD法で酸化絶縁膜を形成する場合、原料ガス由来の水素または水が酸化絶縁膜中に混入される場合がある。このため、CVD法で酸化絶縁膜を形成した後、脱水素化または脱水化として、加熱処理を行うことが好ましい。
該加熱処理の温度は、酸化絶縁膜から水素または水を放出させる温度が好ましく、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
また、該加熱処理は、電気炉、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、酸化絶縁膜からの水素または水の放出の時間を短縮することができる。
加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水素、水等が含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。なお、加熱処理は真空雰囲気で行ってもよい。
熱処理によって、酸化絶縁膜の脱水素化または脱水化を行うことができ、酸化物半導体膜への水素または水の拡散を抑制することができる。
さらに、CVD法で形成した酸化絶縁膜に、酸素を導入することで、加熱により脱離する酸素量を増加させることができる。酸化絶縁膜に酸素を導入する方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマ処理等がある。
また、脱水化または脱水素化のための熱処理は、複数回行ってもよく、他の熱処理と兼ねてもよい。
酸化物半導体膜104は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブレーション法等により酸化絶縁膜103上に形成する。
酸化物半導体膜104は、1nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上30nm以下の厚さで形成する。
なお、酸化物半導体膜を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板温度を150℃以上750℃以下、好ましくは150℃以上450℃以下、さらに好ましくは200℃以上350℃以下として、酸化物半導体膜を成膜することで、酸化物半導体膜中への水素または水等の混入を低減しつつ、CAAC−OSを形成することができる。
また、CAAC−OSに含まれる結晶部の配向を高めるためには、酸化物半導体膜の下地絶縁膜である、酸化絶縁膜103の表面の平坦性を良好にすることが好ましい。代表的には、酸化絶縁膜103の平均面粗さ(Ra)を、0.1nm以上0.5nm未満とすることが好ましい。なお、本明細書等において、平均面粗さ(Ra)とは、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で算術平均粗さを曲面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」で表現できる。また、平坦化処理としては、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理、ドライエッチング処理、真空のチャンバーに不活性ガス、例えばアルゴンガスを導入し、被処理面を陰極とする電界をかけて、表面の微細な凹凸を平坦化するプラズマ処理(いわゆる逆スパッタ)等の一または複数を適用することができる。
ここで、酸化物半導体膜を成膜するスパッタリング装置について、以下に詳細を説明する。
酸化物半導体膜を成膜する処理室は、リークレートを1×10−10Pa・m3/秒以下とすることが好ましく、それによりスパッタリング法により成膜する際、膜中への不純物の混入を低減することができる。
また、スパッタリング装置の処理室の排気は、ドライポンプ等の粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプ及びクライオポンプ等の高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素及び水の排気能力が低い。そこで、水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプ及び水の排気能力の高いクライオポンプを組み合わせることが有効となる。
処理室の内側に存在する吸着物は、内壁に吸着しているために処理室の圧力に影響しないが、処理室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速度に相関はないが、排気能力の高いポンプを用いて、処理室に存在する吸着物をできる限り脱離し、予め排気しておくことが重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、処理室をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくすることができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性ガスを導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。
このように、酸化物半導体膜の成膜工程において、更に好ましくは酸化絶縁膜の成膜工程において、処理室の圧力、処理室のリークレートなどにおいて、不純物の混入を極力抑えることによって、酸化物半導体膜に含まれる水素を含む不純物の混入を低減することができる。また、酸化絶縁膜から酸化物半導体膜への水素、水等の不純物の拡散を低減することができる。
酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水となると共に、酸素が脱離した格子(あるいは酸素が脱離した部分)には欠損が形成されてしまう。このため、酸化物半導体膜の成膜工程において、水素を含む不純物を極めて減らすことにより、酸化物半導体膜の欠損を低減することが可能である。このため、不純物をできるだけ除去し、高純度化させた酸化物半導体膜をチャネル領域とすることにより、トランジスタの信頼性を高めることができる。
スパッタリング法において、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
なお、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。また、スパッタリングガスには、水素を含む不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
なお、酸化物半導体膜をスパッタリング装置で成膜する前に、スパッタリング装置にダミー基板を搬入し、ダミー基板上に酸化物半導体膜を成膜して、ターゲット表面、または防着板に付着した水素、水等を取り除く工程を行ってもよい。
また、酸化絶縁膜103及び酸化物半導体膜は大気に触れず連続的に成膜することで、界面に大気中の水素、水等の不純物の混入を抑制することができるため、好ましい。例えば、マルチチャンバー型のスパッタリング装置において、第1の処理室で酸化絶縁膜103を形成する。次に、予備加熱室で酸化絶縁膜103が形成された基板101を加熱し、基板101及び酸化絶縁膜103に含まれる水素、水等の不純物を脱離させる。なお、このときの加熱温度は、酸化絶縁膜103から酸素が脱離しない温度範囲内とすることが好ましい。次に、第2の処理室で酸化物半導体膜を形成することで、大気に触れず連続的に酸化絶縁膜及び酸化物半導体膜を成膜することができる。
ここでは、基板としてガラス基板を用いる。まず、マルチチャンバー型のスパッタリング装置の予備加熱室において基板を加熱して、基板に含まれる水分等を脱離させる。次に、大気暴露せずに第1の処理室において、酸化絶縁膜103として厚さ300nmの酸化シリコン膜を形成する。次に、第2の処理室において、200℃に加熱しながら厚さ20nmの酸化物半導体膜(In−Ga−Zn系金属酸化物)を形成する。
次に、基板101に加熱処理を行うことが好ましい。当該加熱処理により、酸化物半導体膜104の脱水素化または脱水化をすることができる。
また、酸化絶縁膜103に含まれる酸素の一部を、酸化絶縁膜103及び酸化物半導体膜104の界面近傍に拡散させることができる。この結果、酸化絶縁膜103及び酸化物半導体膜104の界面近傍における界面準位を低減することができる。
加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、酸化物半導体膜からの水素または水の放出、及び酸化絶縁膜103から酸化物半導体膜104への酸素拡散の時間を短縮することができる。
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素を含む不活性ガス雰囲気で行う。または、不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気で加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気及び酸素雰囲気に水素、水などが含まれないことが好ましい。処理時間は3分〜24時間とする。
ここでは、酸化絶縁膜103上に酸化物半導体膜を形成した後、上記脱水素化または脱水化のための加熱処理を行うため、脱水素化または脱水化のための加熱処理において、酸化絶縁膜103が全て酸化物半導体膜で覆われており、酸化絶縁膜103に含まれる酸素を酸化物半導体膜104に効率よく拡散させることができる。
また、上記脱水素化または脱水化のための加熱処理を、後に形成する酸化物半導体膜105を形成した後に行ってもよい。この結果、加熱処理工程数を削減しつつ、酸化物半導体膜105及びゲート絶縁膜107からの水または水素を脱離させることができる。
また、脱水化または脱水素化のための加熱処理は、複数回行ってもよく、他の加熱処理と兼ねてもよい。
次に、図2(C)及び図2(D)に示すように、酸化物半導体膜104を加工して酸化物半導体膜105を形成した後、酸化絶縁膜103及び酸化物半導体膜105上にゲート絶縁膜107を形成する。次に、ゲート絶縁膜107上にマスク109を形成する。
酸化物半導体膜105は、酸化物半導体膜104上にマスクを形成した後、該マスクを用いて酸化物半導体膜104の一部をエッチングすることで、形成することができる。また、酸化物半導体膜105として印刷法を用いることで、素子分離された酸化物半導体膜105を直接的に形成することができる。
ここでは、酸化物半導体膜104上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いて酸化物半導体膜104をドライエッチングして、酸化物半導体膜105を形成する。
ゲート絶縁膜107は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。
また、ゲート絶縁膜107として、酸化絶縁膜と、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等の金属酸化膜との積層構造である場合、酸化絶縁膜上に、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ハフニウム等の金属膜をスパッタリング法、蒸着法等により形成した後、該金属膜に酸素添加処理すればよい。この場合、金属膜の厚さを5nm以上30nm以下、好ましくは10nm以上20nm以下とすることが好ましい。酸素添加処理としては、金属膜に酸素ラジカル、オゾン、酸素原子、酸素イオン等を添加すると共に、金属膜を酸化する処理であり、代表的には、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマ処理等を用いることができる。なお、イオン注入法として、ガスクラスタイオンビームを用いてもよい。また、プラズマ処理においては、基板101が搭載される支持台または電極にバイアスを印加することで、エネルギーを有する酸素を基板101側に引き寄せることが可能であり、金属膜、更には、金属膜の下地となる酸化絶縁膜への酸素を添加することができる。
酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する金属酸化膜をスパッタリング法で形成すると、粉状の汚染物質が発生しやすく、歩留まり低下の一因となるが、金属膜に酸素添加処理することで金属酸化膜を形成することで、粉状の汚染物質の発生を抑制することができ、歩留まりを高めることができる。
この後、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理により、金属酸化膜の金属原子と酸素の結合をより強固にすることが可能であり、後の加熱処理において、金属酸化膜からの酸素脱離を抑制することができる。このときの加熱温度は300℃以上500℃以下、好ましくは400℃以上450℃以下とする。
酸化物半導体膜105に接する絶縁膜として、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を形成し、該加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜上に酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する金属酸化膜を形成することで、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜から酸素を酸化物半導体膜105に効率よく拡散させることができる。酸化物半導体膜105に直接酸素を添加するのではなく、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜からの固相拡散により、酸化物半導体膜105に酸素を添加することができることができるため、酸化物半導体膜105へのダメージを減らすことができる。また、酸化物半導体膜105の側面における酸素欠損が当該酸素の拡散により補償される。この結果、図1(A)の破線125で示す、ゲート電極115と重畳する酸化物半導体膜105の側面を介して発生するソース電極及びドレイン電極の間の寄生チャネルの発生を抑制することができる。
また、CAAC−OSは、被形成面または表面に沿って酸素が移動しやすい。このため、素子分離した酸化物半導体膜105の側面から酸素の脱離が生じやすく、酸素欠損が形成されやすい。しかしながら、酸化物半導体膜105上に加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜と、当該酸化絶縁膜上に金属酸化膜を設けることにより、酸化物半導体膜105の側面からの酸素脱離を抑制することが可能である。この結果、酸化物半導体膜105の側面の導電性の上昇を抑制することを抑制することができる。
ここでは、CVD法により厚さ200nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
マスク109は、フォトリソグラフィ工程、印刷法、インクジェット法等を用いて形成することができる。
次に、酸化物半導体膜105にドーパントを添加する。この結果、図2(E)及び図2(F)に示すように、酸化物半導体膜105の端部を除く領域において、第1の領域111aと、酸化物半導体膜105の端部に第2の領域111b、111cが形成される。第2の領域111b、111cは、第1の領域111aと比較して、ドーパントの濃度が低く、さらに好ましくはドーパントを含まない。
酸化物半導体膜105にドーパントを添加する方法として、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。また、添加するドーパントとしては、窒素、リン、若しくは砒素などの15族元素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、またはキセノンから少なくとも一つを選択する。
また、上記酸化物半導体膜105へのドーパントの添加は、酸化物半導体膜105を覆って、ゲート絶縁膜107が形成されている状態を示したが、酸化物半導体膜105が露出している状態でドーパントの添加を行ってもよい。
さらに、上記ドーパントの添加はイオンドーピング法またはイオンインプランテーション法などによる注入以外の方法でも行うことができる。例えば、添加する元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、被添加物に対してプラズマ処理を行うことによって、ドーパントを添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置などを用いることができる。
なお、ドーパントの添加処理は、基板101を加熱しながら行ってもよい。
本実施の形態では、ドーパントを酸化物半導体膜105に添加して第1の領域111aを形成するため、第1の領域111aの導電率を制御することができる。また、マスクを用いて酸化物半導体膜105にドーパントを添加する領域を制御できるため、スイッチング特性を有するトランジスタを歩留まり高く作製することができる。
ここでは、イオンインプランテーション法により、リンを酸化物半導体膜105に添加する。
この後、加熱処理を行う。当該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上325℃以下とする。または、250℃から325℃まで徐々に温度上昇させながら加熱してもよい。
当該加熱処理により、第1の領域111aの導電率を高めることができる。なお、当該加熱処理において、第1の領域111a、及び第2の領域111b、111cは、多結晶構造、非晶質構造、またはCAAC−OSである。
次に、図2(G)及び図2(H)に示すように、ゲート絶縁膜107上にゲート電極115を形成する。
ゲート電極115は、導電膜を形成し、導電膜上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜をエッチングし、ゲート電極115を形成する。
ゲート電極115となる導電膜は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で形成する。
ここで、露光装置の解像限界以下の幅にまで微細化されたゲート電極の作製方法の一例について説明する。ゲート電極135の形成に用いるマスクに対してスリミング処理を行い、より微細な構造のマスクとすることが好ましい。スリミング処理としては、例えば、酸素ラジカルなどを用いるアッシング処理を適用することができる。ただし、スリミング処理はフォトリソグラフィ法などによって形成されたマスクをより微細な構造に加工できる処理であれば、アッシング処理以外の方法を用いてもよい。また、スリミング処理によって形成されるマスクによって、トランジスタのチャネル長が決定されることになるため、制御性の良好な処理を適用することが好ましい。スリミング処理の結果、フォトリソグラフィ法などによって形成されたマスクを、露光装置の解像限界以下、好ましくは、1/2以下、より好ましくは1/3以下の幅にまで微細化することが可能である。例えば、形成されたマスクの幅は、以上2000nm以下、好ましくは50nm以上350nm以下を達成することができる。また、スリミングしたマスクを後退させながら、導電膜をエッチングすることで、露光装置の解像限界以下の幅にまで微細化されたゲート電極135を形成することができる。
ここでは、厚さ30nmの窒化タンタル膜と、厚さ200nmのタングステン膜とをスパッタリング法により形成する。次に、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いて窒化タンタル膜及びタングステン膜をドライエッチングして、ゲート電極115を形成する。
次に、図2(I)及び図2(J)に示すように、絶縁膜117及び絶縁膜119を形成する。次に、ゲート絶縁膜107、絶縁膜117、及び絶縁膜119のそれぞれ一部を除去して、酸化物半導体膜111の第1の領域111aが露出する開口部を形成する。次に、開口部に一対の電極121a、121bを形成する。次に、絶縁膜119上に、一対の電極121a、121bに接続する配線123a、123bを形成する。
絶縁膜117及び絶縁膜119は、スパッタリング法、CVD法、塗布法、印刷法等により形成する。なお、絶縁膜117に、イオン注入法またはイオンドーピング法、プラズマ処理等により、酸素を添加してもよい。
また、絶縁膜117を形成し、加熱処理を行った後、絶縁膜119を形成してもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
また、該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、酸化絶縁膜からの水素または水の放出の時間を短縮することができる。
加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい。
ここでは、絶縁膜117として、CVD法により厚さ30nmの酸化窒化シリコン膜と、スパッタリング法により厚さ70nmの酸化アルミニウムとを形成する。次に、電気炉を用い、酸素雰囲気において400℃で1時間の加熱を行う。次に、絶縁膜119として、塗布法により、厚さ1.5μmのポリイミド膜を形成する。
一対の電極121a、121b、及び配線123a、123bはそれぞれ、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜上にマスクを形成して導電膜をエッチングして形成する。導電膜上に形成するマスクは、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。この後マスクを除去する。また、一対の電極121a、121b、及び配線123a、123bをデュアルダマシン法で形成してもよい。この場合、一対の電極121a、121b、及び配線123a、123bは同じ材料で形成される。
ここでは、スパッタリング法により厚さ50nmのチタン膜、厚さ300nmのアルミニウム膜、及び厚さ5nmのチタン膜を順に積層形成する。次に、チタン膜上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いてドライエッチングを行い、一対の電極121a、121bを形成する。次に、マスクを除去した後、一対の電極121a、121bと同様の工程により、配線123a、123bを形成する。
以上の工程により、電気特性の優れたトランジスタを作製することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、電気特性の優れたトランジスタの構造、及びその作製方法について、図3及び図4を用いて説明する。本実施の形態に示すトランジスタは、実施の形態1に示すトランジスタと比較して、サイドウォール絶縁膜を有する点が異なる。また、一対の配線が、サイドウォール絶縁膜及び酸化物半導体膜の露出部に接する点が異なる。
図3は、本実施の形態に示すトランジスタの上面図及び断面図である。図3(A)は、本実施の形態に示すトランジスタの上面図であり、図3(B)は、図3(A)の一点鎖線A−Bに対応する、トランジスタのチャネル幅方向の断面図であり、図3(C)は図3(A)の一点鎖線C−Dに対応する、トランジスタのチャネル長方向の断面図であり、図3(D)は図3(A)の一点鎖線E−Fに対応する、トランジスタのチャネル長方向の断面図である。図3(C)は、酸化物半導体膜においてチャネル領域が形成される領域、即ち中央部の断面図であり、図3(D)は、酸化物半導体膜において端部における領域の断面図である。なお、図3(A)では、明瞭化のため、トランジスタの構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜133、サイドウォール絶縁膜139、絶縁膜137、絶縁膜143等)を省略している。
図3(A)乃至図3(D)に示すトランジスタは、基板101上に設けられる酸化絶縁膜103と、酸化絶縁膜103上に設けられる酸化物半導体膜111と、酸化物半導体膜111に接する、ソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極141a、141bと、酸化物半導体膜111の少なくとも一部と接するゲート絶縁膜133と、ゲート絶縁膜107上であって、且つ酸化物半導体膜111と重畳するゲート電極135とを有する。
また、ゲート電極135の側面に接するサイドウォール絶縁膜139を有する。また、酸化絶縁膜103、ゲート電極135、サイドウォール絶縁膜139、及び一対の電極141a、141b上に絶縁膜143を有してもよい。また、ゲート電極135及び絶縁膜143の間に絶縁膜137を設けることが好ましい。
図3に示すトランジスタにおいて、1の領域111a及び第2の領域111b、111cを有する。第1の領域111aは、n−型の酸化物半導体であり、第2の領域111b、111cは、i型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体である。第1の領域111aは、酸化物半導体膜111の端部を除く領域であり、ゲートと重畳するチャネル領域、並びにソース領域及びドレイン領域として機能する。第2の領域は、酸化物半導体膜の端部であって、かつ少なくともゲート電極と重畳する領域であり、高抵抗領域として機能する。
なお、図3(A)においては、第2の領域111bは閉曲線状であるが、実施の形態1に示すように、第2の領域は分離されていてもよい。
図3(C)に示すように、酸化物半導体膜111において、チャネル領域を含む第1の領域111aをn−型を呈する酸化物半導体とすることで、チャネル領域のキャリア密度を高めることができる。この結果、チャネル領域のフェルミ準位が価電子帯側に近づき、チャネル領域と、ソース領域及びドレイン領域との接合部における障壁が下がる。この結果、トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を上昇させることができる。
また、図3(D)に示すように、酸化物半導体膜111において、端部である第2の領域111bを、i型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体とすることで、第2の領域を高抵抗領域とすることができるため、酸化物半導体膜の端部における寄生チャネルの発生を抑制することが可能である。
本実施の形態においては、実施の形態1と同様に、第1の領域111aにドーパントを添加することで、第2の領域111bよりキャリア密度を高めることが可能であり、導電率を高めることができる。
以下に、トランジスタの他の構成の詳細について説明する。
絶縁膜137は、ゲート電極135及び一対の電極141a、141bの接触を防ぐために、ゲート電極135上に設けることが好ましい。絶縁膜136は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等を用いればよく、積層または単層で設ける。なお、サイドウォール絶縁膜139よりもエッチング速度の遅い絶縁膜を選択することで、後のサイドウォール絶縁膜139を形成する際に、ゲート電極135の膜減りを低減するためのエッチング保護膜として機能させることができる。
サイドウォール絶縁膜139は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等を用いればよく、積層または単層で設ける。なお、サイドウォール絶縁膜139として、酸化絶縁膜103と同様に、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成してもよい。
トランジスタの一対の電極141a、141bの端部が、サイドウォール絶縁膜139上に位置し、更に酸化物半導体膜111において、ドーパントを第1の領域111aの露出部を覆っている。このため、チャネル長方向におけるソース−ドレイン間の距離(より正確には、ソース電極及びドレイン電極と接する酸化物半導体の間の距離)を、サイドウォール絶縁膜139の厚さで制御することができる。つまりマスクを用いてパターンを形成するのが困難な微細なデバイスにおいて、酸化物半導体膜111と接する一対の電極141a、141bのチャネル側の端部を、マスクを用いずに形成することができる。また、マスクを使用しないため、複数のトランジスタにおける加工ばらつきを低減することができる。
次に、図3に示すトランジスタの作製方法について説明する。図3に示すトランジスタは、実施の形態1に示す図2(A)乃至図2(E)の工程を経た後、図4(A)及び図4(B)に示すように、ゲート絶縁膜133となる絶縁膜130上に、後にゲート電極135となる導電膜131、及び後に絶縁膜137となる絶縁膜132を積層形成する。
絶縁膜130は、ゲート絶縁膜107と同様に形成することができる。
導電膜131及び絶縁膜132は、それぞれスパッタリング法、CVD法、蒸着法等を用いて形成する。
次に、図4(C)及び図4(D)に示すように、ゲート電極135及び絶縁膜137を形成する。
ゲート電極135および絶縁膜137の形成方法を以下に示す。絶縁膜132上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて絶縁膜132の一部をエッチングして絶縁膜137を形成する。つぎに、絶縁膜137をハードマスクとして導電膜131をエッチングし、ゲート電極135を形成する。
次に、図4(E)及び図4(F)に示すように、ゲート電極135の側面にサイドウォール絶縁膜139を形成する。また、絶縁膜130を加工してゲート絶縁膜133を形成する。ここで、サイドウォール絶縁膜139の形成方法について説明する。
まず、絶縁膜130及び絶縁膜137上に、後にサイドウォール絶縁膜139となる絶縁膜を形成する。絶縁膜は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。また、当該絶縁膜の厚さは特に限定はないが、ゲート電極135の形状に応じる被覆性を考慮して、適宜選択すればよい。
次に、絶縁膜をエッチングすることによりサイドウォール絶縁膜139を形成する。サイドウォール絶縁膜139は、絶縁膜に異方性の高いエッチング工程を行うことでセルフアラインに形成することができる。ここで、異方性の高いエッチングとしては、ドライエッチングが好ましく、例えば、エッチングガスとして、トリフルオロメタン(CHF3)、オクタフルオロシクロブタン(C4F8)、テトラフルオロメタン(CF4)等のフッ素を含むガスを用いることができ、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)等の希ガスまたは水素(H2)を添加しても良い。さらに、ドライエッチングとして、基板に高周波電圧を印加する、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いるのが好ましい。
なお、サイドウォール絶縁膜139となる絶縁膜より、エッチング速度の遅い絶縁膜を用いて絶縁膜137を形成することで、絶縁膜137がゲート電極115のエッチング保護膜として機能するため好ましい。
また、サイドウォール絶縁膜139の形成工程と共に、異方性の高いエッチングを用いて絶縁膜130をエッチングし、酸化物半導体膜111を露出させることで、ゲート絶縁膜133を形成することができる。
次に、図4(G)及び図4(H)に示すように、一対の電極141a、141bを形成する。
一対の電極141a、141bは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜上にマスクを形成して導電膜をエッチングして形成する。導電膜上に形成するマスクは、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。この後マスクを除去する。
一対の電極141a、141bは、少なくともサイドウォール絶縁膜139及びゲート絶縁膜133の側面と接するように、形成することが好ましい。即ち、トランジスタの一対の電極141a、141bの端部が、少なくともサイドウォール絶縁膜139上に位置し、酸化物半導体膜111において、露出部を全て覆っていることが好ましい。更には、一対の電極141a、141bの端部が絶縁膜137上に位置してもよい。この結果、ドーパントが含まれる第1の領域111aにおいて、一対の電極141a、141bと接する領域がソース領域及びドレイン領域として機能する。また、酸化物半導体膜111の端部に形成される第2の領域111b、111cは、第1の領域111aと比較して導電率が低いため、高抵抗領域となり、当該領域でのリーク電流の発生を抑制することができる。また、サイドウォール絶縁膜139の厚さによりソース−ドレイン間の距離が制御できるため、酸化物半導体膜111と接する一対の電極141a、141bのチャネル側の端部を、マスクを用いずに形成させることができる。また、マスクを使用しないため、複数のトランジスタにおける加工ばらつきを低減することができる。
なお、第1の電極141a、141bを形成した後、エッチング残渣を除去するため、洗浄処理をすることが好ましい。この洗浄処理を行うことで、一対の電極141a、141bの短絡を抑制することができる。当該洗浄処理は、TMAH(Tetramethylammonium Hydroxide)溶液などのアルカリ性の溶液、希フッ酸、シュウ酸などの酸性の溶液、または水を用いて行うことができる。
次に、図4(I)及び図4(J)に示すように、酸化絶縁膜103、絶縁膜137、サイドウォール絶縁膜139、一対の電極141a、141b上に絶縁膜143を形成する。絶縁膜143は、実施の形態1に示す絶縁膜117と同様に形成することができる。
この後、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
なお、絶縁膜143の一部を除去し、開口部を形成した後、一対の電極141a、141bに接続するコンタクトプラグ、及びコンタクトプラグに接続する配線を形成してもよい。開口部を形成する際、ゲート電極135を挟んで設けられる一対の開口部を2回に分けて個別に形成することにより、露光装置の解像限界よりも開口部の間の距離を小さくすることができる。例えば、ゲート電極135に限りなく近づけて一方の開口部を形成した後、ゲート電極135に限りなく近づけて他方の開口部を形成する。特に、ゲート電極135の加工の際にスリミング処理を行った場合では、ゲート電極135の幅が露光機の解像限界よりも小さいため、このような方法を用いて開口部の間の距離を解像限界よりも近づけることにより、より微細なトランジスタを形成することができる。
以上の工程により、電気特性の優れたトランジスタを作製することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、電気特性の優れたトランジスタの構造、及びその作製方法について、図5及び図6を用いて説明する。本実施の形態に示すトランジスタは、実施の形態2に示すトランジスタと比較して、酸化物半導体膜の端部を覆う保護膜を有する点が異なる。
図5は、本実施の形態に示すトランジスタの上面図及び断面図である。図5(A)は、本実施の形態に示すトランジスタの上面図であり、図5(B)は、図5(A)の一点鎖線A−Bに対応する、トランジスタのチャネル幅方向の断面図であり、図5(C)は図5(A)の一点鎖線C−Dに対応する、トランジスタのチャネル長方向の断面図であり、図5(D)は図5(A)の一点鎖線E−Fに対応する、トランジスタのチャネル長方向の断面図である。図5(C)は、酸化物半導体膜においてチャネル領域が形成される領域、即ち中央部の断面図であり、図5(D)は、酸化物半導体膜において端部における領域の断面図である。なお、図5(A)では、明瞭化のため、トランジスタの構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜133、サイドウォール絶縁膜139、絶縁膜137、絶縁膜143等)を省略している。
図5(A)乃至図5(D)に示すトランジスタは、基板101上に設けられる酸化絶縁膜103と、酸化絶縁膜103上に設けられる酸化物半導体膜111と、酸化物半導体膜111の端部を覆う保護膜153と、酸化物半導体膜111に接する、ソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極141a、141bと、酸化物半導体膜111の少なくとも一部と接するゲート絶縁膜133と、ゲート絶縁膜107上であって、且つ酸化物半導体膜111と重畳するゲート電極135とを有する。
また、ゲート電極135の側面に接するサイドウォール絶縁膜139を有する。また、酸化絶縁膜103、ゲート電極135、サイドウォール絶縁膜139、及び一対の電極141a、141b上に絶縁膜143を有してもよい。また、ゲート電極135及び絶縁膜143の間に絶縁膜137を設けることが好ましい。
図5に示すトランジスタにおいて、第1の領域111a及び第2の領域111b、111cを有する。第1の領域111aは、n−型の酸化物半導体であり、第2の領域111b、111cは、i型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体である。第1の領域111aは、酸化物半導体膜111の端部を除く領域であり、ゲートと重畳するチャネル領域、並びにソース領域及びドレイン領域として機能する。第2の領域は、酸化物半導体膜の端部であって、かつ少なくともゲート電極と重畳する領域であり、高抵抗領域として機能する。また、第2の領域111bは、保護膜153と接する。
なお、図5(A)においては、第2の領域111bは閉曲線状であるが、実施の形態1に示すように、第2の領域は分離されていてもよい。
保護膜153は、酸化絶縁膜103に示すような、加熱により酸素が脱離する酸化絶縁膜、または酸素のブロッキング効果を有する酸化絶縁膜を用いる。熱により酸素が脱離する酸化絶縁膜の代表例としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン等がある。また、酸素のブロッキング効果を有する酸化絶縁膜の代表例としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等で形成することができる。
保護膜153は、酸化物半導体膜111の端部における電界を緩和すると共に、ドーパントを酸化物半導体膜111に添加するときのマスクとして機能する。このため、保護膜の厚さは、ゲート絶縁膜133の厚さの5倍以上が好ましく、代表的には、25nm以上1000nm以下、より好ましくは100nm以上1000nm以下とする。また、保護膜153は、酸化物半導体膜111及び一対の電極141a、141b間での絶縁性を保つために、少なくとも酸化物半導体膜111の側面を覆うことが好ましく、さらには酸化物半導体膜111の側面及び上面の一部を覆う。このとき、酸化物半導体膜111の上面において、側面から10nm以上500nm以下、好ましくは20nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上200nm以下の領域を覆う。この結果、酸化物半導体膜111の端部へのドーパントの添加を防ぎ、酸化物半導体膜111の端部にかかるゲートによる電界を緩和すると共に、酸化物半導体膜111及び一対の電極141a、141b間での絶縁性を保つことができる。
また、保護膜153が酸化物半導体膜111の端部を覆うことで、酸化物半導体膜111の側面と、一対の電極141a、141bとが接触せず、当該領域におけるリーク電流の発生を抑制することができる。
図5(C)に示すように、酸化物半導体膜111において、チャネル領域を含む第1の領域111aをn−型を呈する酸化物半導体とすることで、チャネル領域のキャリア密度を高めることができる。この結果、チャネル領域のフェルミ準位が価電子帯側に近づき、チャネル領域と、ソース領域及びドレイン領域との接合部における障壁が下がる。この結果、トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を上昇させることができる。
また、図5(D)に示すように、酸化物半導体膜111において、第2の領域111bが、加熱により酸素が脱離する酸化絶縁膜で形成される保護膜153で覆われる。このため、加熱により第2の領域111bに酸素を拡散させることが可能であり、酸素欠損が当該酸素の拡散により補償され、酸素欠損が低減し、酸化物半導体膜の端部がi型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体となる。または、第2の領域111bが、酸素のブロッキング効果を有する酸化絶縁膜で形成される保護膜153で覆われる。このため、第2の領域111bにおける酸素の脱離を抑制することが可能であるため、第2の領域111bがi型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体となる。第2の領域111bを、i型(真性または実質的に真性)を呈する酸化物半導体とすることで、第2の領域を高抵抗領域とすることができる。また、第2の領域111bは保護膜153で覆われているため、当該領域にかかるゲート電極の電界が低減される。これらのため、酸化物半導体膜の端部における寄生チャネルの発生を抑制することが可能である。
本実施の形態においては、実施の形態1と同様に、第1の領域111aにドーパントを添加することで、第2の領域111bよりキャリア密度を高めることが可能であり、導電率を高めることができる。
次に、図5に示すトランジスタの作製方法について説明する。図5に示すトランジスタは、実施の形態1に示す図2(A)及び図2(E)の工程を経た後、図6(A)及び図6(B)に示すように、酸化物半導体膜105上に後に保護膜153となる絶縁膜150を形成する。次に、絶縁膜150上にマスク151を形成する。
絶縁膜150は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。
次に、図6(C)及び図6(D)に示すように、マスク151を用いて絶縁膜150をエッチングして、保護膜153を形成する。この後、保護膜153及び酸化物半導体膜105を酸素プラズマに曝すことで角が選択的にエッチングされ、酸化物半導体膜105及び保護膜175に酸素を添加すると共に、保護膜177の端部を湾曲させることができる。保護膜177の端部を湾曲させることで、後に形成するゲート絶縁膜の被覆性を高め、断切れを低減することが可能であるため好ましい。
次に、保護膜153をマスクとして、実施の形態1と同様に、酸化物半導体膜104にドーパントを添加する。この結果、図6(E)及び図6(F)に示すように、ドーパントを含む第1の領域111a、及び、第1の領域111aと比較して、ドーパントの濃度の低い、更には、ドーパントを含まない第2の領域111bを形成することができる。
この後、実施の形態1と同様に加熱処理を行う。
次に、図6(G)及び図6(H)に示すように、酸化物半導体膜111、及び保護膜153上に、後にゲート絶縁膜133となる絶縁膜130を形成する。次に、実施の形態2と同様の工程により、ゲート電極135及び絶縁膜137を形成する。
次に、図6(I)及び図6(J)に示すように、実施の形態2と同様の工程によりサイドウォール絶縁膜139、一対の電極141a、141b、絶縁膜143を形成する。
なお、ここでは、保護膜153を形成した後、ゲート絶縁膜133となる絶縁膜130を形成したが、ゲート絶縁膜133となる絶縁膜130を形成した後、保護膜153を形成してもよい。また、各工程の間に、実施の形態1及び実施の形態2と同様に、適宜加熱処理を行ってもよい。
なお、絶縁膜143の一部を除去し、開口部を形成した後、一対の電極141a、141bに接続するコンタクトプラグ、及びコンタクトプラグに接続する配線を形成してもよい。開口部を形成する際、ゲート電極135を挟んで設けられる一対の開口部を2回に分けて個別に形成することにより、露光装置の解像限界よりも開口部の間の距離を小さくすることができる。例えば、ゲート電極135に限りなく近づけて一方の開口部を形成した後、ゲート電極135に限りなく近づけて他方の開口部を形成する。特に、ゲート電極135の加工の際にスリミング処理を行った場合では、ゲート電極135の幅が露光機の解像限界よりも小さいため、このような方法を用いて開口部の間の距離を解像限界よりも近づけることにより、より微細なトランジスタを形成することができる。
以上の工程により、電気特性の優れたトランジスタを作製することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態3とは異なる、酸化物半導体膜の第1の領域及び第2の領域の作製方法について説明する。本実施の形態では、ドーパントを酸化物半導体膜に添加せず、酸素を添加することで、第1の領域及び第2の領域を形成する。
図7(A)に示すように、基板101上に酸化絶縁膜103を形成する。次に、酸化絶縁膜103上に酸化物半導体膜191を形成する。ここでは、酸素が脱離された酸化物半導体膜を形成することで、導電率及びキャリア密度の高い酸化物半導体膜191を形成することができる。即ち、n−型の酸化物半導体膜191を形成することができる。
酸素が脱離された酸化物半導体膜は、200℃以上基板歪み点未満の温度、好ましくは300℃600℃以下で加熱しながら形成することができる。成膜時の温度を高くすると、堆積物である酸化物半導体への水素または水の混入を低減すると共に、酸素が脱離する。この結果、酸素欠損を多く含み、導電率及びキャリア密度の高い酸化物半導体膜を形成することができる。
次に、実施の形態3と同様に、酸化絶縁膜103及び酸化物半導体膜191上にマスク171を形成する。
次に、マスク171を用いて酸化物半導体膜191をエッチングして、図7(B)に示すように、素子分離された酸化物半導体膜193を形成する。次に、マスク171を残存したまま酸化物半導体膜191に酸素を添加する。酸素の添加方法は、実施の形態1に示すドーパントの添加方法を適宜用いればよい。当該酸素の添加により、第2の領域195b、195cの酸素欠損量を低減することが可能であり、第2の領域195b、195cはi型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体となる。この結果、図7(C)に示すように、n−型の酸化物半導体である第1の領域195a、及びi型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体である第2の領域195b、195cを有する酸化物半導体膜195を形成することができる。第1の領域195aは、酸素欠損量が第2の領域195b、195cより多いため、導電率及びキャリア密度が第2の領域より高い。
なお、ここでは、酸化物半導体膜191として酸素欠損量の多い酸化物半導体膜を形成したが、酸化物半導体膜191として、導電率及びキャリア密度の高い酸窒化物半導体膜を形成してもよい。酸窒化物半導体膜の代表例としては、In−Ga−Zn系酸窒化物半導体膜、In−Sn系酸窒化物半導体膜、In−Ga系酸窒化物半導体膜、In−Zn系酸窒化物半導体膜、Sn系酸窒化物半導体膜、In系酸窒化物半導体膜等がある。酸窒化物半導体膜において、窒素濃度が0.01原子%以上30原子%以下であることが好ましい。当該濃度の窒素を含むことで、酸窒化物半導体膜のキャリア密度を増加させることができる。なお、窒素濃度が高すぎると、当該窒素がキャリアの移動を阻害し、導電率が低下するためこのましくない。
酸化物半導体膜191として酸窒化物半導体膜を用い、図7の工程を経ることで、第1の領域195a、及び第2の領域195b、195cを有する酸化物半導体膜195を形成することができる。第1の領域195aは、第2の領域195b、195cより酸素含有量が少なく、第2の領域195b、195cにおいては、酸素含有量が多いため、第1の領域195aは、導電率及びキャリア密度が第2の領域より高い。
この後、実施の形態1乃至実施の形態3のいずれかの工程を経て、トランジスタを作製することができる。
ここでは、酸化物半導体膜193に酸素を添加するマスク171として、酸化物半導体膜191を素子分離するマスクを用いることで、マスクの形成工程数を削減できる。なお、酸化物半導体膜191を素子分離するマスクと異なるマスクを再度形成して、酸化物半導体膜193に酸素を添加してもよい。または、酸化物半導体膜193を形成した後、マスク171を除去して、絶縁膜を形成し、当該絶縁膜上にマスクを形成した後、酸化物半導体膜193に酸素を添加してもよい。当該工程により、酸化物半導体膜193へのダメージを低減することができる。
以上の工程により、電気特性の優れたトランジスタを作製することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態3とは異なる保護膜の作製方法について、図8及び図9を用いて説明する。本実施の形態においては、酸化物半導体膜をエッチングするマスクを用いて保護膜を形成することで、実施の形態3と比較して、保護膜の形成工程において、マスク数を削減することができる。
図8は、リフトオフ法を用いた保護膜175の形成方法である。
図8(A)に示すように、基板101上に酸化絶縁膜103を形成し、酸化絶縁膜103上に酸化物半導体膜104を形成する。次に、酸化物半導体膜104上に酸化物半導体膜104を素子分離するためのマスク171を形成する。なお、マスクは、保護膜175となる絶縁膜の段差被覆率が低下し、段切れが生じる程度の厚さとすることが好ましい。また、マスク171は、フォトリソグラフィ工程により形成されたレジストマスクの他、ポリイミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機材料、アルミニウム、チタン等の導電膜を適宜用いて形成することができる。
次に、図8(B)に示すように、マスク171を用いて酸化物半導体膜104をエッチングして、素子分離された酸化物半導体膜105を形成する。
次に、図8(C)に示すように、酸化絶縁膜103、酸化物半導体膜105の端部、及びマスク171上に絶縁膜を形成する。なお、当該絶縁膜は、段差被覆性の低いスパッタリング法を用いることが好ましい。ここでは、マスク171により段差が形成されているため、絶縁膜は段切れが生じてしまい、酸化絶縁膜103及び酸化物半導体膜105の端部を覆う絶縁膜173aと、マスク171を覆う絶縁膜173bとに分離する。
次に、図8(D)に示すように、マスク171を除去する。このとき、マスク171上に形成される絶縁膜173bも除去される。この結果、酸化物半導体膜105の端部を覆う保護膜175を形成することができる。
なお、この後、酸化物半導体膜105及び保護膜175を酸素プラズマに曝すことで角が選択的にエッチングされ、酸化物半導体膜105及び保護膜175に酸素を添加すると共に、図8(E)に示すように、端部が湾曲した保護膜177を形成することができる。保護膜177の端部が湾曲していると、後に形成するゲート絶縁膜の被覆性を高め、断切れを低減することが可能であるため好ましい。
次に、図9を用いて、図8とは異なる保護膜の形成方法について説明する。図9は、エッチバック法を用いた保護膜185の形成方法である。
図8(A)及び図8(B)の工程の後、図9(A)に示すように、酸化絶縁膜103を形成し、酸化物半導体膜104、及びマスク171上に塗布法により絶縁膜181を形成する。
次に、マスク及び絶縁膜181を等方的にエッチングして、図9(B)に示すように、残存するマスク183及び残存する保護膜185を形成する。図9(B)において、破線184はエッチングされる前のマスク171を示し、破線186はエッチングされる前の絶縁膜181を示す。
次に、図9(C)に示すように、エッチングされたマスク183を除去することで、酸化物半導体膜105の端部を覆う保護膜185を形成することができる。このような工程により形成された保護膜185は、基板全体において凹凸が小さいため、後に形成されるゲート絶縁膜への凹凸の影響が少なく、被覆率を保持することが可能である。
なお、この後、酸化物半導体膜105及び保護膜185を酸素プラズマに曝すことで角が選択的にエッチングされ、酸化物半導体膜105及び保護膜185に酸素を添加すると共に、図9(D)に示すように、端部が湾曲した保護膜187を形成することができる。保護膜187の端部が湾曲していると、後に形成するゲート絶縁膜の被覆性を高め、断切れを低減することが可能であるため好ましい。
この後、実施の形態1乃至実施の形態3のいずれかの工程を経て、トランジスタを作製することができる。
以上の工程により、電気特性の優れたトランジスタを作製することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態2及び実施の形態3と異なる一対の電極の形成方法について、説明する。
実施の形態2と同様に、図2(A)乃至図2(F)、及び図4(A)乃至図4(F)に示す工程を経たのち、酸化物半導体膜111、絶縁膜、及びサイドウォール絶縁膜139上に導電膜を形成し、導電膜上にレジストを塗布する。
次に、レジストを加工して導電膜を露出するマスクを形成する。マスクの第1の形成方法として、レジストを加熱した後、導電膜を露出させるように全面をエッチングする方法がある。加熱されたレジストのエッチングは、ウェットエッチングまたはドライエッチングを適宜用いることができる。
マスクの第2の形成方法として、レジストの全面を露光した後、現像する方法がある。ここでは、ゲート電極115及びサイドウォール絶縁膜139が形成される領域は凸形状であるため、当該領域上方にあるレジストの厚さが薄い。そこで、当該領域のレジストが除去され、ゲート電極と重畳しない酸化物半導体膜の上方にあるレジストが残存するような露光量によって、レジストを全面露光すると、導電膜の一部を露出するマスクを形成することができる。次に、マスクを用いて導電膜をエッチングすることで、一対の電極141a、141bを形成することができる。
なお、レジストの代わりに、CVD法または塗布法により導電膜上に絶縁膜を形成した後、該絶縁膜及び導電膜を化学的機械的研磨処理することで、分離された一対の電極を形成することができる。なお、該工程の場合、絶縁膜137として化学的機械的研磨されにくい絶縁膜を用いて形成することで、選択的に導電膜を分離すると共に、ゲート電極135のエッチングを防ぐことができる。
本実施の形態により、一対の電極141a、141bを形成するマスクを、フォトマスクを用いずとも形成することが可能であるため、フォトマスクのアライメント精度、縮小投影露光による加工技術の精度に関わらず、歩留まりの高く微細構造のトランジスタを形成することができる。
この後、実施の形態1乃至実施の形態3のいずれかの工程を経て、トランジスタを作製することができる。
以上の工程により、電気特性の優れたトランジスタを作製することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態2及び実施の形態3とは異なるサイドウォール絶縁膜の形成方法について、説明する。
実施の形態2と同様に、図2(A)乃至図2(F)、及び図4(A)乃至図4(D)に示す工程を経たのち、絶縁膜130、ゲート電極135、及び絶縁膜137上に絶縁膜を形成する。当該絶縁膜は、絶縁膜119に示す材料を適宜適用することができる。また、当該絶縁膜は、後の工程で平坦化処理したときに、ゲート電極135が露出しない程度の厚さとする。
次に、絶縁膜の平坦化処理を行った後、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、当該マスクを用いて絶縁膜130、及び平坦化された絶縁膜のそれぞれ一部をエッチングして、ゲート絶縁膜133及びサイドウォール絶縁膜139を形成する。なお、本実施の形態においては、サイドウォール絶縁膜139は、ゲート電極221及び絶縁膜137の側面だけでなく、絶縁膜137の頂部も覆う。
この後、実施の形態1乃至実施の形態3のいずれかの工程を経て、トランジスタを作製することができる。
以上の工程により、電気特性の優れたトランジスタを作製することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、本明細書に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の一例を、図面を用いて説明する。なお、ここでは、半導体装置の一例として記憶装置を用いて説明する。
図10は、半導体装置の構成の一例である。図10(A)に、半導体装置の断面図を、図10(B)に半導体装置の上面図を、図10(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。ここで、図10(A)は、図10(B)のC1−C2、及びD1−D2における断面に相当する。なお、図10(B)においては、明瞭化のため、トランジスタの構成要素の一部(例えば、基板300、ゲート絶縁膜308、絶縁膜328、絶縁膜329、絶縁膜330、ゲート絶縁膜346、層間絶縁膜335、絶縁膜349、絶縁膜350、絶縁膜352、配線356等)を省略している。
図10(A)及び図10(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ360を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ362を有するものである。トランジスタ362は、適宜実施の形態1乃至実施の形態7で示したトランジスタと同様な構造を有する例である。
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、情報を保持するために酸化物半導体膜を用いた実施の形態1乃至実施の形態7で示すトランジスタを適宜用いる。なお、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成は、ここで示すものに限定されない。
図10(A)におけるトランジスタ360は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板300に設けられたチャネル領域316と、チャネル領域316を挟むように設けられた不純物領域320と、不純物領域320に接する金属間化合物領域324と、チャネル領域316上に設けられたゲート絶縁膜308と、ゲート絶縁膜308上に設けられたゲート電極310と、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
基板300上にはトランジスタ360を囲むように素子分離絶縁膜306が設けられており、トランジスタ360を覆うように絶縁膜328、絶縁膜329、及び絶縁膜330が設けられている。なお、トランジスタ360において、ゲート電極310の側面にサイドウォール絶縁膜を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域320としてもよい。
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ360は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。トランジスタ360を覆うように絶縁膜を3層形成する。トランジスタ362及び容量素子364の形成前の処理として、該3層の絶縁膜にCMP処理を施して、平坦化した絶縁膜328、絶縁膜329、絶縁膜330を形成し、同時にゲート電極310の上面を露出させる。
絶縁膜328、絶縁膜329、絶縁膜330は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。絶縁膜328、絶縁膜329、絶縁膜330は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等を用いて形成することができる。
また、絶縁膜328、絶縁膜329、絶縁膜330は、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁膜328、絶縁膜329、絶縁膜330を形成してもよい。
なお、本実施の形態において、絶縁膜328として窒化シリコン膜、絶縁膜329として、水、水素、酸素等の拡散防止膜として機能する金属酸化膜、代表的には酸化アルミニウム膜、絶縁膜330として、実施の形態1に示す加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜、代表的には酸化シリコン膜を用いる。このような構造とすると、後の加熱工程において、窒化シリコン膜に含まれる水素を半導体材料を含む基板300、特にチャネル領域316に拡散させ、当該領域の欠陥の水素化が可能であると共に、酸化シリコン膜の酸素を酸化物半導体膜344へ拡散させ、酸化物半導体膜344の酸素欠損を低減することができる。
絶縁膜330表面において、平坦化処理を行うことが好ましい。本実施の形態では、研磨処理(例えばCMP処理)により十分に平坦化した(好ましくは絶縁膜330表面の平均面粗さは0.15nm以下)絶縁膜330上に酸化物半導体膜344を形成する。
図10(A)に示すトランジスタ362は、酸化物半導体膜344と、酸化物半導体膜344に接する、ソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極342a、342bと、酸化物半導体膜344の少なくとも一部と接するゲート絶縁膜346と、ゲート絶縁膜346上であって、且つ酸化物半導体膜344と重畳するゲート電極348とを有する。また、ゲート電極348上に設けられる絶縁膜349と、ゲート電極348の側面に接するサイドウォール絶縁膜336a、336bと、を有する。
なお、トランジスタ362として、実施の形態1乃至実施の形態7に示す、酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタを適宜用いることができる。また、トランジスタ362においてチャネル長は短く、5nm以上60nm未満、好ましくは10nm以上40nm以下とする。トランジスタ362は、酸化物半導体膜をチャネル領域に用いているため、スイッチング素子としての良好な電気特性示すトランジスタである。
トランジスタ362は、オフ電流が小さいため、当該トランジスタを用いることにより、長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
トランジスタ362上には、層間絶縁膜335、絶縁膜350が単層または積層で設けられている。本実施の形態では、絶縁膜350として、酸化アルミニウム膜を用いることによって、トランジスタ362に安定な電気特性を付与することができる。
また、層間絶縁膜335及び絶縁膜350を介して、トランジスタ362の電極342aと重畳する領域には、導電膜353が設けられており、電極342aと、層間絶縁膜335と、絶縁膜350と、導電膜353とによって、容量素子364が構成される。すなわち、トランジスタ362の電極342aは、容量素子364の一方の電極として機能し、導電膜353は、容量素子364の他方の電極として機能する。なお、容量が不要の場合には、容量素子364を設けない構成とすることもできる。また、容量素子364は、別途、トランジスタ362の上方に設けてもよい。
トランジスタ362及び容量素子364の上には絶縁膜352が設けられている。そして、絶縁膜352上にはトランジスタ362と、他のトランジスタを接続するための配線356が設けられている。図10(A)には図示しないが、配線356は、絶縁膜350、絶縁膜352及びゲート絶縁膜346などに形成された開口部に形成された電極を介して電極342bと電気的に接続される。ここで、該電極は、少なくともトランジスタ362の酸化物半導体膜344の一部と重畳するように設けられることが好ましい。
図10(A)及び図10(B)において、トランジスタ360と、トランジスタ362とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ360のソース領域またはドレイン領域と酸化物半導体膜344の一部が重畳するように設けられているのが好ましい。また、トランジスタ362及び容量素子364が、トランジスタ360の少なくとも一部と重畳するように設けられている。例えば、容量素子364の導電膜353は、トランジスタ360のゲート電極310と少なくとも一部が重畳して設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
なお、電極342b及び配線356の電気的接続は、電極342b及び配線356を直接接触させて行ってもよいし、電極342b及び配線356の間の絶縁膜に電極を設けて、該電極を介して行ってもよい。また、間に介する電極は、複数でもよい。
次に、図10(A)及び図10(B)に対応する回路構成の一例を図10(C)に示す。
図10(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ360のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ360のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ362のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ362のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ360のゲート電極と、トランジスタ362のソース電極またはドレイン電極の一方は、容量素子364の電極の他方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子364の電極の他方は電気的に接続されている。
図10(C)に示す半導体装置では、トランジスタ360のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
情報の書き込み及び保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ362がオン状態となる電位にして、トランジスタ362をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ360のゲート電極、及び容量素子364に与えられる。すなわち、トランジスタ360のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ362がオフ状態となる電位にして、トランジスタ362をオフ状態とすることにより、トランジスタ360のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
トランジスタ362のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ360のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
次に、情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ360のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ360をnチャネル型とすると、トランジスタ360のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値電圧Vth_Hは、トランジスタ360のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値電圧Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ360を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位V0とすることにより、トランジスタ360のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ360は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ360は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ360が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ360が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル領域に酸化物半導体膜を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁膜の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ安定で高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態9)
本実施の形態においては、実施の形態1乃至実施の形態7に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置について、実施の形態8に示した構成と異なる構成について、図11及び図12を用いて説明を行う。なお、ここでは、半導体装置の一例として記憶装置を用いて説明する。
図11(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、図11(B)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、図11(A)に示す半導体装置について説明を行い、続けて図11(B)に示す半導体装置について、以下説明を行う。
図11(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ362のソース電極またはドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ362のゲート電極とは電気的に接続され、トランジスタ362のソース電極またはドレイン電極と容量素子454の第1の端子とは電気的に接続されている。
次に、図11(A)に示す半導体装置(メモリセル450)に、情報の書き込み及び保持を行う場合について説明する。
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ362がオン状態となる電位として、トランジスタ362をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子454の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ362がオフ状態となる電位として、トランジスタ362をオフ状態とすることにより、容量素子454の第1の端子の電位が保持される(保持)。
酸化物半導体膜を用いたトランジスタ362は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ362をオフ状態とすることで、容量素子454の第1の端子の電位(あるいは、容量素子454に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ362がオン状態となると、浮遊状態であるビット線BLと容量素子454とが導通し、ビット線BLと容量素子454の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電位の変化量は、容量素子454の第1の端子の電位(あるいは容量素子454に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
例えば、容量素子454の第1の端子の電位をV、容量素子454の容量をC、ビット線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル450の状態として、容量素子454の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
このように、図11(A)に示す半導体装置は、トランジスタ362のオフ電流が極めて小さいという特徴から、容量素子454に蓄積された電荷は長時間にわたって保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
次に、図11(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
図11(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図11(A)に示したメモリセル450を複数有するメモリセルアレイ451a及び451bを有し、下部に、メモリセルアレイ451(メモリセルアレイ451a及び451b)を動作させるために必要な周辺回路453を有する。なお、周辺回路453は、メモリセルアレイ451と電気的に接続されている。
図11(B)に示した構成とすることにより、周辺回路453をメモリセルアレイ451(メモリセルアレイ451a及び451b)の直下に設けることができるため半導体装置の小型化を図ることができる。
周辺回路453に設けられるトランジスタは、トランジスタ362とは異なる半導体材料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
なお、図11(B)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ451(メモリセルアレイ451aと、メモリセルアレイ451b)が積層された構成を例示したが、積層するメモリセルの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルを積層する構成としても良い。
次に、図11(A)に示したメモリセル450の具体的な構成について図12を用いて説明を行う。
図12は、メモリセル450の構成の一例である。図12(A)に、メモリセル450の断面図を、図12(B)にメモリセル450の上面図をそれぞれ示す。ここで、図12(A)は、図12(B)のF1−F2、及びG1−G2における断面に相当する。なお、図10(B)においては、明瞭化のため、トランジスタの構成要素の一部(例えば、層間絶縁膜335、ゲート絶縁膜346、絶縁膜349、絶縁膜456、絶縁膜458、配線460等)を省略している。
図12(A)及び図12(B)に示すトランジスタ362は、実施の形態1乃至実施の形態7で示すトランジスタと同様な構成とすることができる。
絶縁膜330上に設けられたトランジスタ362上には、絶縁膜456が単層または積層で設けられている。また、絶縁膜456を介して、トランジスタ362の電極342aと重畳する領域には、導電膜462が設けられており、電極342aと、層間絶縁膜335と、絶縁膜456と、導電膜462とによって、容量素子454が構成される。すなわち、トランジスタ362の電極342aは、容量素子454の一方の電極として機能し、導電膜462は、容量素子454の他方の電極として機能する。
トランジスタ362及び容量素子454の上には絶縁膜458が設けられている。そして、絶縁膜458上にはメモリセル450と、隣接するメモリセル450を接続するための配線460が設けられている。図示しないが、配線460は、絶縁膜456及び絶縁膜458などに形成された開口を介してトランジスタ362の電極342bと電気的に接続されている。但し、開口に他の導電膜を設け、該他の導電膜を介して、配線460と電極342bとを電気的に接続してもよい。なお、配線460は、図11(A)の回路図におけるビット線BLに相当する。
図12(A)及び図12(B)において、トランジスタ362の電極342bは、隣接するメモリセルに含まれるトランジスタのソース電極としても機能することができる。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
図12(B)に示す平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
以上のように、上部に多層に形成された複数のメモリセルは、酸化物半導体膜を用いたトランジスタにより形成されている。酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ安定で高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態10)
先の実施の形態で示した半導体装置の一例としては、半導体装置は、中央演算処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、記憶装置、イメージセンサ、電気光学装置、発光表示装置等がある。また、該半導体装置をさまざまな電子機器に適用することができる。電子機器としては、例えば、表示装置、照明装置、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、時計、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯無線機、携帯電話、スマートフォン、電子書籍、自動車電話、携帯型ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナー、加湿器、除湿器、空調設備、食器洗浄器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、工具、煙感知器、医療機器、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム、電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、装軌車両、原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛生、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船等がある。本実施の形態では、先の実施の形態で示した半導体装置を、携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器に応用した場合の例を図13乃至図16を用いて説明する。
携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器においては、画像データの一時記憶などにSRAMまたはDRAMが使用されている。SRAMまたはDRAMが使用される理由としてはフラッシュメモリでは応答が遅く、画像処理では不向きであるためである。一方で、SRAMまたはDRAMを画像データの一時記憶に用いた場合、以下の特徴がある。
通常のSRAMは、図13(A)に示すように1つのメモリセルがトランジスタ801〜806の6個のトランジスタで構成されており、それをXデコーダー807、Yデコーダー808にて駆動している。トランジスタ803とトランジスタ805、トランジスタ804とトランジスタ806はインバータを構成し、高速駆動を可能としている。しかし1つのメモリセルが6トランジスタで構成されているため、セル面積が大きいという欠点がある。デザインルールの最小寸法をFとしたときにSRAMのメモリセル面積は通常100〜150F2である。このためSRAMはビットあたりの単価が各種メモリの中で最も高い。
それに対して、DRAMはメモリセルが図13(B)に示すようにトランジスタ811、保持容量812によって構成され、それをXデコーダー813、Yデコーダー814にて駆動している。1つのセルが1トランジスタ1容量の構成になっており、面積が小さい。DRAMのメモリセル面積は通常10F2以下である。ただし、DRAMは常にリフレッシュが必要であり、書き換えをおこなわない場合でも電力を消費する。
しかし、先の実施の形態で説明した半導体装置のメモリセル面積は、10F2前後であり、且つ頻繁なリフレッシュは不要である。したがって、メモリセル面積が縮小され、且つ消費電力が低減することができる。
図14に携帯機器のブロック図を示す。図14に示す携帯機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。アプリケーションプロセッサ906は、中央演算処理装置(CPU907)、DSP908、インターフェイス(IF)909を有している。一般にメモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成されており、この部分に先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込み及び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。また、CPU907に含まれる、データや命令を記憶するための主記憶装置、及び高速でデータの書き込みと読み出しができるレジスタ、キャッシュなどの緩衝記憶装置に、先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することにより、CPUの消費電力が十分に低減することができる。
図15に、ディスプレイのメモリ回路950に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用した例を示す。図15に示すメモリ回路950は、メモリ952、メモリ953、スイッチ954、スイッチ955及びメモリコントローラ951により構成されている。また、メモリ回路は、画像データ(入力画像データ)からの信号線、メモリ952、及びメモリ953に記憶されたデータ(記憶画像データ)を読み出し、及び制御を行うディスプレイコントローラ956と、ディスプレイコントローラ956からの信号により表示するディスプレイ957が接続されている。
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成される(入力画像データA)。入力画像データAは、スイッチ954を介してメモリ952に記憶される。そしてメモリ952に記憶された画像データ(記憶画像データA)は、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介してディスプレイ957に送られ、表示される。
入力画像データAに変更が無い場合、記憶画像データAは、通常30〜60Hz程度の周期でメモリ952からスイッチ955を介して、ディスプレイコントローラ956から読み出される。
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データAに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像データB)を形成する。入力画像データBはスイッチ954を介してメモリ953に記憶される。この間も定期的にメモリ952からスイッチ955を介して記憶画像データAは読み出されている。メモリ953に新たな画像データ(記憶画像データB)が記憶し終わると、ディスプレイ957の次のフレームより、記憶画像データBは読み出され、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介して、ディスプレイ957に記憶画像データBが送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データがメモリ952に記憶されるまで継続される。
このようにメモリ952及びメモリ953は交互に画像データの書き込みと、画像データの読み出しを行うことによって、ディスプレイ957の表示をおこなう。なお、メモリ952及びメモリ953はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割して使用してもよい。先の実施の形態で説明した半導体装置をメモリ952及びメモリ953に採用することによって、情報の書き込み及び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
図16に電子書籍のブロック図を示す。図16はバッテリー1001、電源回路1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。
ここでは、図16のメモリ回路1007に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用することができる。メモリ回路1007の役割は書籍の内容を一時的に保持する機能を持つ。機能の例としては、ユーザーがハイライト機能を使用する場合などがある。ユーザーが電子書籍を読んでいるときに、特定の箇所にマーキングをしたい場合がある。このマーキング機能をハイライト機能と言い、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどによって、周囲との違いを示すことである。ユーザーが指定した箇所の情報を記憶し、保持する機能である。この情報を長期に保存する場合にはフラッシュメモリ1004にコピーしても良い。このような場合においても、先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込み及び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
以上のように、本実施の形態に示す携帯機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力を低減した携帯機器が実現される。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(参考例)
以下、CAAC−OS膜の側面(端面)から酸素が脱離しやすい点について詳述する。
ここでは、酸化物半導体膜の一例として、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(以下、IGZOと呼ぶ。)膜における、過剰酸素(化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素)及び酸素欠損の動きやすさについて、科学技術計算結果を参照して説明する。
なお、計算は、原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:2となるIGZOの一つのIn−O面に過剰酸素または酸素欠損が一つ存在するモデルを構造最適化によって作成(図18乃至図21、及び図23及び図24を参照。)し、NEB(Nudged Elastic Band)法を用いて最小エネルギー経路に沿った中間構造に対するエネルギーをそれぞれ算出した。
計算は、密度汎関数理論(DFT)に基づく計算プログラムソフト「OpenMX」を用いて行った。パラメータについて以下に説明する。
基底関数には、擬原子局在基底関数を用いた。この基底関数は、分極基底系STO(Slater Type Orbital)に分類される。
汎関数には、GGA/PBE(Generalized−Gradient−Approximation/Perdew−Burke−Ernzerhof)を用いた。
カットオフエネルギーは200Ryとした。
サンプリングk点は、5×5×3とした。
過剰酸素の動きやすさについての計算では、計算モデル内に存在する原子の数を85個とし、酸素欠損の動きやすさについての計算では、計算モデル内に存在する原子の数を83個とした。
過剰酸素または酸素欠損の動きやすさは、過剰酸素または酸素欠損が各々のサイトへ移動する際に越えることを要するエネルギーバリアの高さEbを計算することにより評価する。すなわち、移動に際して越えるエネルギーバリアの高さEbが高ければ移動しにくく、エネルギーバリアの高さEbが低ければ移動しやすい。
まず、過剰酸素の移動について説明する。過剰酸素の移動の計算に用いたモデルを図18乃至図20に示す。計算は、以下の6つの遷移形態について行った。計算結果は、図21に示す。図21では、横軸を過剰酸素の移動の経路長とし、縦軸を図18乃至図20の(B)に示す状態のエネルギーに対する、移動に要するエネルギーとしている。
図18(A)のA1で囲まれる領域の拡大図を図18(B)に示し、図18(B)に示すモデルから図18(C)に示すモデルへの遷移を第1の遷移とする。図19(A)のA2で囲まれる領域の拡大図を図19(B)に示し、図19(B)に示すモデルから図19(C)に示すモデルへの遷移を第2の遷移とする。図20(A)のA3で囲まれる領域の拡大図を図20(B)に示し、図20(B)に示すモデルから図20(C)に示すモデルへの遷移を第3の遷移とする。図21(A)のA4で囲まれる領域の拡大図を図21(B)に示し、図21(B)に示すモデルから図21(C)に示すモデルへの遷移を第4の遷移とする。
第1の遷移は、過剰酸素がInO2層から(Ga,Zn)O層へ拡散する遷移である。第2の遷移は、過剰酸素が第1の(Ga,Zn)O層から第2の(Ga,Zn)O層へ拡散する遷移である。第3の遷移は、過剰酸素がIn層に沿って拡散する遷移である。第4の遷移は、過剰酸素がIn層を横切って拡散する遷移である。
なお、図18、図20、及び図21中の”1”と表記されている酸素原子を第1の酸素原子とよぶ。図18、図20、及び図21中の”2”と表記されている酸素原子を第2の酸素原子とよぶ。図19乃至図21中の”3”と表記されている酸素原子を第3の酸素原子とよぶ。図19中の”4”と表記されている酸素原子を第4の酸素原子とよぶ。
図22から明らかなように、第1の遷移のエネルギーバリアの高さEbの最大値(Ebmax)は、0.62eVであり、第2の遷移のエネルギーバリアの高さEbの最大値(Ebmax)は、0.29eVであり、第3の遷移のエネルギーバリアの高さEbの最大値(Ebmax)は、0.53eVであり、第4の遷移のエネルギーバリアの高さEbの最大値(Ebmax)は、2.38eVである。そのため、第1の遷移乃至第3の遷移では、第4の遷移よりもエネルギーバリアの高さEbの最大値(Ebmax)が低い。そのため、第1の遷移乃至第3の遷移に要するエネルギーは第4の遷移に要するエネルギーよりも小さく、第1の遷移乃至第3の遷移のほうが第4の遷移よりも起こりやすいといえる。
すなわち、図18(B)、図20(B)、及び図21(B)のモデルに示す第1の酸素原子の移動は、図21に示ように、第3の酸素原子を押し出す方向よりも、図18及び図20に示すように、第2の酸素原子を押し出す方向に移動しやすいといえる。また、図19(B)のモデルに示す第3の酸素原子は、第4の酸素を押し出す方向に移動しやすいといえる。従って、酸素原子はインジウム原子の層を横断して移動するよりもインジウム原子の層に沿って移動しやすいといえる。また、酸素原子はインジウム原子の層を横断して移動するよりも、InO2層から(Ga,Zn)O層へ、及び第1の(Ga,Zn)O層から第2の(Ga,Zn)O層へ移動しやすいといえる。
次に、酸素欠損の移動について説明する。酸素欠損の移動の計算に用いたモデルを図23及び図24に示す。計算は、以下の2つの遷移形態について行った。計算結果は、図25に示す。図25では、横軸を酸素欠損の移動の経路長とし、縦軸を図23(B)及び図24(B)に示すモデルの状態のエネルギーに対する、移動に要するエネルギーとしている。
図23(A)のA5で囲まれる領域の拡大図を図23(B)に示し、図23(B)に示すモデルから図23(C)に示すモデルへの遷移を第1の遷移とする。図24(A)のA6で囲まれる領域の拡大図を図24(B)に示し、図24(B)に示すモデルから図24(C)に示すモデルへの遷移を第2の遷移とする。
酸素欠損の第1の遷移は、酸素欠損がIn層に沿って拡散する遷移である。酸素欠損の第2の遷移は、酸素欠損がIn層を横切って拡散する遷移である。
なお、図23及び図24中の点線で描画している丸は、酸素欠損を表している。
図25から明らかなように、第1の遷移のエネルギーバリアの高さEbの最大値(Ebmax)は、1.81eVであり、第2の遷移のエネルギーバリアの高さEbの最大値(Ebmax)は、4.10eVである。第1の遷移では第2の遷移よりもエネルギーバリアの高さEbの最大値(Ebmax)が低い。このため、第1の遷移に要するエネルギーは第2の遷移に要するエネルギーよりも小さく、第1の遷移のほうが第2の遷移よりも起こりやすいといえる。
すなわち、図23(B)及び図24(B)に示すモデルの酸素欠損は図24(C)に示すモデルの酸素欠損の位置よりも、図23(C)に示すモデルの酸素欠損の位置のほうが移動しやすいといえる。従って、酸素欠損もインジウム原子の層を横断して移動するよりもインジウム原子の層に沿って移動しやすいといえる。
次に、前記した6つの遷移形態の起こりやすさを別の側面から比較するために、これらの遷移の温度依存性について説明する。前記した6つの遷移形態は、(1)過剰酸素の第1の遷移(2)過剰酸素の第2の遷移(3)過剰酸素の第3の遷移(4)過剰酸素の第4の遷移(5)酸素欠損の第1の遷移(6)酸素欠損の第2の遷移、である。
これらの遷移の温度依存性は、単位時間あたりの移動頻度により比較する。ここで、ある温度T(K)における移動頻度Z(/秒)は、化学的に安定な位置における酸素原子の振動数Zo(/秒)を用いると、以下の式(1)で表される。
なお、前記式(1)において、Ebmaxは各遷移におけるエネルギーバリアの高さEbの最大値であり、kはボルツマン定数である。また、Zo=1.0×1013(/秒)を計算に用いる。
T=300K(27℃)の場合のZは、以下の通りである。
(1)過剰酸素の第1の遷移 T=300KにおいてZ=3.9×102(/秒)
(2)過剰酸素の第2の遷移 T=300KにおいてZ=1.2×108(/秒)
(3)過剰酸素の第3の遷移 T=300KにおいてZ=1.2×104(/秒)
(4)過剰酸素の第4の遷移 T=300KにおいてZ=1.0×10−27(/秒)
(5)酸素欠損の第1の遷移 T=300KにおいてZ=4.3×10−18(/秒)
(6)酸素欠損の第2の遷移 T=300KにおいてZ=1.4×10−56(/秒)
また、T=723K(450℃)の場合のZは、以下の通りである。
(1)過剰酸素の第1の遷移 T=723KにおいてZ=4.8×108(/秒)
(2)過剰酸素の第2の遷移 T=723KにおいてZ=9.2×1010(/秒)
(3)過剰酸素の第3の遷移 T=300KにおいてZ=2.0×109(/秒)
(4)過剰酸素の第4の遷移 T=300KにおいてZ=2.5×10−4(/秒)
(5)酸素欠損の第1の遷移 T=723KにおいてZ=2.5(/秒)
(6)酸素欠損の第2の遷移 T=723KにおいてZ=2.5×10−16(/秒)
前記計算結果に鑑みると、過剰酸素は、T=300KにおいてもT=723Kにおいても、インジウム原子の層を横断して移動するよりもインジウム原子の層に沿って移動しやすいといえる。また、酸素欠損も、T=300KにおいてもT=723Kにおいても、インジウム原子の層を横断して移動するよりもインジウム原子の層に沿って移動しやすいといえる。
また、T=300Kにおいて、インジウム原子の層に沿った過剰酸素の移動、InO2層から(Ga,Zn)O層への過剰酸素の移動、及び第1の(Ga,Zn)O層から第2の(Ga,Zn)O層への過剰酸素の移動は起こりやすいが、他の遷移形態は起こりにくい。T=723Kにおいては、上記過剰酸素の移動のみならず、インジウム原子の層に沿う酸素欠損の移動も起こりやすいが、過剰酸素についても酸素欠損についてもインジウム原子の層を横断する移動は困難である。
従って、例えばCAAC−OS膜のように、インジウム原子の層が当該膜の被形成面または表面に平行な面上に存在する場合には、過剰酸素及び酸素欠損のいずれも当該膜の被形成面または表面に沿って移動しやすいといえる。
以上説明したように、CAAC−OS膜では当該膜の被形成面または表面に沿って移動しやすい。そのため、当該膜の側面からの酸素抜けが問題となる。酸素抜けが生じると過剰酸素の数が減少してしまい、酸素欠損を埋めることが困難になる。酸素欠損が存在すると、CAAC−OS膜の端部の導電性が高まるおそれがある。
そこで、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を酸化物半導体膜、特に酸化物半導体膜の端部に接するように形成し、加熱処理して、酸化物半導体膜の端部に酸素を拡散させることで、酸素欠損が当該酸素の拡散により補償され、酸素欠損が低減し、酸化物半導体膜の端部がi型(真性または実質的に真性)の酸化物半導体となる。この結果、酸化物半導体膜の端部が高抵抗領域となり、酸化物半導体膜の端部における寄生チャネルの発生を抑制することができる。
なお、前記説明では過剰酸素または酸素欠損がインジウム原子の層を横断する場合について説明したが、酸化物半導体膜に含まれるインジウム以外の金属についても同様である。